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もし、あのときこうしていればと考えたことはあるだろうか
人には人の運命がある それは可能性であって未来であり決定事項だと
ここにいるティエナにも可能性はあった もしこうはならなかったという未来が
これもその可能性の分岐点の一つ、ティエナは魔術を学ぼうと志したときのこと
ティエナは悩んだ 師を得ようかえまいかと 独学で知るには限度がある
そこで彼女は街で見かけた魔術師へと声をかけた これも分岐点の一つ
しかし彼女の選択、それを見誤る事となった
声をかけた魔術師はティエナに下心を持ち二つ返事で師になることを了承した
師を得たティエナだったがその男には裏の顔があり、魔術師というよりも催眠術師と言ってもいい
彼がティエナに施した教育、それは男のエゴイズムを肥大化させた調教だった
度重なる彼女への性的要求、ティエナは不快感を覚えながらもこれに従うしかなかった
彼女には首輪がつけられていた 男との契約によって結ばれた逃亡を抑止する枷が
ティエナは男から加えられる虐待の中で思った なぜ自分はあのときこの男を選んでしまったのかと
しかし彼女の後悔も男からの洗脳によって薄れていく事となった
苦痛の中で男から掛けられる言葉、自身を牝として肯定する言葉
始めは彼女もそれに抗ったが、肉体と精神 その両者が衰弱したことで彼女の意思もまた脆くなっていた
一度、男の言葉を飲めば堕落までは早かった 男の言うがまま男のされるがままにするのは気持ちいい
やがてティエナは男の優秀な弟子となり、彼のパートーナーとなっていた
その目元に浮かんだ隈とくすんだ髪の毛、それは彼女がそうはならなかった筈の可能性
数多あるifの可能性の中でここにまた一人 泥へと沈んだ魔術師がいた
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