大魔王と呼ばれる者が現れてから遥か時が経った時代
絶対的な力を持つ魔の祖達によって魔界と呼ばれる世界が多くの魔族の知る姿へと生まれ変わった後
初めは魔の祖達が自らの血肉を使う事で魔族を産み増やしていったが
何時からか魔族は通常の生物の様に交配し増え始めていた
そうして魔族達は増え争いに満ちながらも多くの国々が生まれ繁栄をしていくと
その中で種族の壁を越え愛し合う者達が現れ始めたのだった
だがそうした異種同士の子は両親の力を不完全にしか受け継ぐ事は無く
力こそ全てという魔界に於いては酷く弱々しい存在でしかなった
後に魔王となる少女もまた人型の鎧魔族と夢魔との間に出来た1人である
例え力が支配する魔界に於いても子に注がれる愛情は人間界のそれとそう変わる事は無く
少女が苦労をせず済むようにと両親からの厳しい教育と他の魔族からの差別はあったものの
愛情を注がれすくすくと育ち弟も出来満ち足りた日々を送っていた
しかしそんな日々も魔王同士の戦争によって儚くも崩れ去ってしまう
両親を敵国の兵士に殺され更に目の前で弟を貪り食われ自身も剣によって壁に貼り付けられ死を目前とする
敵国の魔族達は少女が死にゆく様を盛大に笑いながら見続け
少女が死ねば次の略奪先へと向かうべく去って行くのだった
だが死した少女の魂は肉体を離れ魔界へと還る事は無く
その果てしない怒りと憎しみと悲しみを抱えたまま肉体を離れず
動く事も出来ない亡骸として死により濁りきった瞳で魔族達の去って行った方向を見つめ続けた
そして一家の死に気付いた魔界のハゲワシ達が亡骸を貪り食おうとしたその時
突如1人の老魔が少女の亡骸の前に現れて問いかける
「何故その身を離れぬ?そなたにはもう何も無い…何もだ」
口すら動かす事が出来ない中少女はその問いを魂の叫びで返した
「それでも何時かこの体を動かして全てを奪った奴らにこの手で同じ事をしてやる」と
それを聞いた老魔は満足気に顔を歪めると少女の亡骸にどす黒い球状の何かを埋め込んだのだった
埋め込まれたそれは後に少女は知る事となったが
少女の家族を皆殺しにした国の王…
力を持ちながら自らが傷つく事を嫌い、戦争によって国々を束ねる事によって自ら大魔王を名乗ろうとしたが
自らにけして届く事の無いその愚行に大魔王が処断し抜き去った魔王の生命と力であった
大魔王に滅ぼされたとはいえ魔王の力は絶大なものであり少女の魂はその力に焼かれ続けるが
少女の深い悲しみはその熱を和らげ
少女の怒りの熱は魔王の力が起こす熱さえも凌駕し
自らのモノへと取り込み始めるのだった
取り込み始めれば動かなかった指先は動き始め、濁りきった瞳は生気に満ちる
何時しかその両足は大地を踏みしめていた
その様を笑みのまま見守っていた老魔は少女が見つめていた方向を指差し告げる
「望むがままに在れ」と
暫くの後撤退中のある兵団が突如一つ消え去る事となったが
その兵団が所属する国では魔王が大魔王に滅ぼされる大事件により大きな混乱が起こっており
存在そのものが忘れ去られる事となったのだった
更に後に大魔王の腹心と呼ばれる魔王が生まれる事となる
後の魔界史に於いても例の無い大魔王が直々に名を与えた
父の仮面と母の美貌を持ち大魔王と同じく憎悪の熱により髪が白く焼け果てた魔王
落涙のカレンジュラが
魔王時代 †
勇者が現れてから †
部下の数々の失敗を見てきたカレンジュラは勇者のその強さに興味を覚える
そしてその目で見る事に決めたカレンジュラは魔法戦士のカレンという
偽りの人間の姿で勇者に接近、その力の秘密を常に探り続けた
しかし共に苦難を乗り越え続けた事により勇者に情が湧いてしまったカレンジュラは
勇者暗殺の機会が幾度もありながら実行する事が出来ず
最終的に勇者に魔王軍へ降るよう説得を行うが失敗
説得が出来ないと分かると次に会った時が決戦の時と告げその場を去っていった
そして更に成長した勇者達が大魔王を倒すべく魔王城へと乗り込んで来るが
待ち受けていたカレンジュラは既に神々は魔王軍に滅ぼされかつて分かたれた三界が一つになる事は防げない事
そして天界の玉座にて大魔王が勇者達を待っている事を告げると勇者達との決戦へと挑んだ
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