名簿/500802

アーロンデルク家出身フランツィスカ 500802 †

ID:	500802
名前:	フランツィスカ	名前:	フランツ
出身家:	アーロンデルク	出身家:	アーロンデルク
年齢:	15	年齢:	55
性別:		性別:
前職:		前職:
理由:
状態:
方針:
難易度:
信頼性:
その他:	ステータス/戦歴/名簿

参加してます

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物語の始まり †

ある朝、フランツ・アーロンデルクが気がかりな夢から目ざめたとき、自分がベッドの上で一人の可憐な少女に変ってしまっているのに気づいた。
彼は絹織のように柔らかな背中を下にして横たわり、頭を少し上げると、ふたつの丘陵にわかれてこんもりと盛り上がっている自分の薄桃の乳房が見えた。
腹の盛り上がりの上には、かけぶとんがすっかりずり落ちそうになって、まだやっともちこたえていた。
ふだんの大きさに比べると情けないくらいかぼそい二本の足が朝の陽射しにきらきらと光っていた。

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3行 †

流されるままに生きてきただけの入り婿が！
ある朝起きたら美少女に！？
悪魔のイタズラか神の思し召しか。強くてニューゲーム！自分を見つけ直すストーリー！

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かつてフランツが使っていた部屋 †

フランツィスカ>名簿/500802　&br;　&color(#800000){};

お名前:

＜冒険を始めたい人も冒険を続けてる人も出会いは冒険者ギルド！冒険者たちよ、集え！＞
（……というチラシが届いている） -- チラシ 2013-08-08 (木) 00:20:31
（あれも一種の活字中毒なのだろう　文学少女の変形と思えば、可憐な魅力に変わることだってあるのかもしれない）
（本が好きなのかと聞いてみようか？　いや、いや待てよと訴える自分がいる　果たしてあれは、そんなに可愛らしいものなんだろうか？）
（マニアックな業界紙を舐める様に読む少女　その仕草は独特な緊張感に包まれていて）…お嬢様、フランお嬢様
（オヤジ臭いのだ　あまりにも堂に入っていて、見惚れてしまいそうなほどに）昨日の切り抜きをお持ちいたしました
今朝のご猟果はいかほどに？（もう何冊目かもわからないスクラップ帳を書架に納めながら、ふと呟いてしまった　「惜しいな」、と） -- アリステア 2013-07-09 (火) 00:16:31
- （椅子にどっかりと腰を落としたフランツィスカ。俯き視線は落としたまま、執事の問いに対して「ん。」とだけ応えてページをめくる。）
  （歳頃にしては肉付きの薄い細足を組み変え、読み進めるペースは常に一定。フランツ時代から続く日々のルーティーンワーク。）
  （決まった時間で決まった文量を確実に咀嚼していくために必要なのは本人の集中、そのための落ち着いた環境。さらにその環境を作ってくれる、優秀な召使である）
  
  …んー……？　何がだ？アリステア。
  （普段ならどうだったろうか。恐らく気付くことなど無かったろう。）
  （しかしこの紙の擦れ合う音以外を廃した室内において、そのつぶやきは直接話し掛けているのと大差無かった。）
  （椅子の背もたれに片肘をかけ、ゆっくりと上半身を振り向かせたフランツィスカ。棚と向かい合うアリステアへ、何となしに問いかける。） -- フランツィスカ 2013-07-09 (火) 00:46:27
  - 聞こえてしまいましたか（失策だったと困ったような顔をして振り返り）何、つまらぬ気の迷いにございます
    何が惜しいかと、不審がられることもございましょう　ですが、それが何よりの証拠　お気づきにはなられませんか？
    （見た目と仕草がちぐはぐなのに、その所作はいかにも自然に見えてしまう　頭でっかちの小娘が背伸びしているのとは訳が違うのだ）
    （つまりは、本物なのだろう　ただ読みたいから読んでいるだけ　そこには何の気負いも、衒いも入り込む余地はなく）
    謎かけをしている訳ではございません　ただ、私の本心が漏れ出てしまったまでのこと　良い機会ですから申しましょうか
    恐れながら、お嬢様　フランお嬢様はオヤジ女子にございます　見目麗しき容姿と壮年男性のごとき精神をあわせ持つ女性をそう称するのだそうで
    近ごろは私どもの世代より若いオヤジ女子が増えているのだとか　さすがはお嬢様、流行の最先端を行かれる方にございますが
    スパイスが効きすぎてはせっかくの美食も台無しとなってしまいましょう　ですから、忍びないことと申したのです -- アリステア 2013-07-09 (火) 01:16:41
  - ふん。何を言うかと思えば…
    （片方の眉を吊り上げながら鼻を鳴らして一笑し、再び視線を紙面に戻す。）
    所詮私は美食足りえん。そも、食べられるかどうかもあやしいものさ。
    アリステア、お前の忠告は気持ちだけ受け取っておくよ。
    （ぱらり。タイミングが良いのか悪いのか。めくった先の記事は、ちょうど若者向けの流行をランキング形式に纏めたもので。）
    …ま、女子は女子らしく、とは思うがな。　なに…私は構わんのだ…
    （ぱらり。記事の内容に僅かに眉を顰める。この辺の感性はフランツィスカとなっても変化があまりない部分である。）
    
    （ふと思う。自分もこの記事の若者達のように思われていたとするなら…鏡の向こうを覗くように、自分が自分の振る舞いを見てたなら…）
    ……なあんて、少しわがままかね。アーロンデルクの子女としては。
    （組んでいた足を解く。内股気味に腿を閉じ、その上に雑誌を伏せて、宙に向かって独り言のように吐き出して。）
    
    （なおフランツィスカの内股は、３０秒くらいしかもたなかった。）
    -- フランツィスカ 2013-07-09 (火) 01:55:36
  - いえ、じいやのわがままにございます　青いことを言う未熟者めとお笑い下さい（冗談めかして）
    なさりたい様になさるのが一番かと　ですが、じいやはこうも思うのです　老人の真似なら老いた後にも出来ましょう
    あえて申しますが、お嬢様くらいの時分に枯れてしまって何となさいます？（お兄ちゃん心配ですという顔をして）
    お嬢様は不思議な方です　世のことごとの、吸いも辛いもご存知のようなことを仰います　借り物ではなく、ご自分のお言葉で
    フラン様は私など遠く及ばず、聡くておいでです　いずれ大成なさるでしょう　ですから尚更のこと、今を楽しんでいただきたいと思います
    若さとは限りあるもの　普遍の価値にございます　この宝を手にしている間は、その尊さに気付かぬものなのです
    気はずかしさもございましょう　それはお嬢様が慎み深さと恥じらいをお持ちの証　そのお姿も素敵です　よくお似合いにございます
    ご心配には及びません　お嬢様のお美しさはじいやがよく心得ておりますれば（自信満々に言い切り、そして）
    （やっとこさ本題を切り出した　それほどまでに慎重を要する話題なのだ）たまにはお召し物を替えてみられては？ -- アリステア 2013-07-10 (水) 02:52:14
  - （ともすれば行き過ぎともとられかねない執事の進言。しかし主は…フランツィスカはその言葉に大いに感じ入る。）
    （この青年はいつだってそうであった。自らが仕える者のある種の弱点を容易に看破してしまうのだ。）
    
    そう………か。ふふ、すまんな。つい忘れてしまうのだ。自分が何者であるのか、どれほど機会に恵まれたのか。
    お前の言う通りだアリステア。今、この身こそがまさしく宝であり、奇跡なのだから…
    
    ただ…その、年頃の娘の服装についてはどうにも疎くてな…
    （言葉通り、フランツィスカとして所有する身にあった服といえば普段着代わりの制服に寝間着程度。）
    （アーロンデルクの者として公式に表に出ることも無く、クローゼットは夜会服や礼服の類すらなくフランツのコート類がそのままという有様だ。）
    お前の見立てでかまわん。私に見合った服などあるなら…ひとつ、教えてほしいのだが… -- フランツィスカ 2013-07-11 (木) 00:40:52
  - 光栄に存じます、お嬢様（変化の風が吹き抜ける　それは埃を吹き払い、朽ちた鎧戸をも吹き飛ばしてしまいかねない荒ぶる力だ）
    （執事が恭しく頭を垂れれば背後の扉が開け放たれ、仕立師らしい若い女が一ダースは下らない助手たちを引き連れて現れる）
    こちらはミス・ブレイスウェイト　お名前くらいはご存知でしょう？　ご本人の前でくだくだしい口上は無用にございましょう
    （先の社交シーズンの話題をさらった新星、保守的なモチーフと大胆な作風で名高い新進気鋭のカリスマがそこにいた）
    ブレイスウェイト様にはお嬢様のお召し物を手かげて頂きます　ご参考までに、あの者たちの装いをご覧下さいませ
    お気に召したものはございますか？　想像して御覧なさい　お召し物を替えられ、姿見の前に立たれたご自分のお姿を
    細々とした名前などわからずとも良いのです（遠来の客人に紹介の時間を与えて、変なスイッチが入る寸前で制止をかける）
    しかし、お嬢様は確たる意志をお示しにならなければなりません　あれが良いこれは駄目だと、ご自分のお考えを信じて断じるのです
    何も難しいことはございません　好きな物を好きだと仰るまでのこと　お心のままに楽しまれませ、フランお嬢様
    私の考えはすでに申し伝えておりますれば、後はブレイスウェイト様が良き様になさるでしょう
    では、また後ほど　軽食のご用意がございますので、ご所望の際には手近な者にお声がけを（餓狼の群れにお嬢様一人残して華麗にフェードアウト決めて） -- アリステア 2013-07-11 (木) 02:07:00
  - あ、ああ……わ、わかった。わかったよアリステア…！　うああ…っ！
    （執事の一挙手一投足。それに光のエフェクトがかかる様子をフランツィスカは幻視した。）
    （差し込むキラキラに、思わずパントマイマーのように両の掌を顔の前で広げて、どうにか目を焼かれまいとする。）
    
    （そして朝の室内はにわかに人で満たされる。ずらり居並ぶ仕立て師と助手。恭しくも仰々しいアリステア。）
    （頭がくらくらとして、まるで最前列の先の先、舞台上で劇を見ているような錯覚すら覚える。）
    
    （その錯覚と眩暈の中でするりと滑り込む執事の言葉は、フランツの心にも着飾ることへの憧れを生み出させるほどで。）
    （すっかり衣服を見る目が『どれがマシか』から『どれを諦めるか』に変わっていることに、当の本人も気づかない。）
    （太陽に照らされた植物がごとく、フランツィスカの好奇の蕾は徐々に膨らんでいく。）
    
    そう…だな。お前の言うとおり…かもしれな………ん？
    -- フランツィスカ 2013-07-18 (木) 20:36:28

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フランツ・アーロンデルク †

55歳のある日に突如失踪したとされるアーロンデルク家の婿養子。
秀でた商才を持ち、街で二番目に大きな銀行の頭取を務めると同時に自らの商会を持つ商人でもあった。
失踪の一週間前に妻を亡くしており、その事が原因で行方をくらましたのではないかと噂される。

他者からの評価としては
「品行方正」「金の亡者」「冷徹人間」「努力の人」「立場を鼻に掛けることがない」「つまらない男」
「怒ったところを見たところがない」「体格の割りに小さく見える」「いつ寝てるの？あの人」
など。
しかし彼自身が自分を評価するのはただ一言
「流されるままに生きてきただけ」
のみである。

身長181cm、体重86kg。年より老けて見られる深い隈と皺。
趣味なし。好物なし。嫌いな物なし。
子供なし。犯罪歴なし。酒・煙草・ギャンブル暦なし。

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フランツィスカ・アーロンデルク †

フランツの失踪後しばらくしてアーロンデルク家に現れた15歳（自称）の少女。
アーロンデルクの傍流の生まれと名乗るものの、その出自には不明な点が数多い。
屋敷へやってきたのは、曰く「家の危機に際し、自分の力を役立ててもらうため」であり、
「自分には金稼ぎの才能がある」とうそぶく。
普通に考えれば、15の少女にできる事など知れているのだが…

身長150cm、体重43kg。体格に見合った小心の持ち主だが、奥底には何か意地のような、固い決意を宿している。
トレードマークの眼鏡は元は老眼鏡のようで、抜群の記憶力の持ち主であればそれがある男の持ち物であるとわかるかもしれない。
趣味なし。好物なし。嫌いな物なし。
経験なし。犯罪歴なし。酒・煙草・ギャンブル暦なし。

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その他設定箇条書き（ふえたりへったり） †

「フランツ→フランツィスカになって変化したこと」
- よく眠るようになった。
  - 平均4時間半の睡眠がほぼ倍の8時間に。
- 食べ物全般がおいしくなった、ような気がする。
  - 特に甘いものがおいしく感じるお年頃みたい。
- 自分の意見を述べるようになった。
  - （※当人比）
  - かつては一般論を軸に、私生活においては押されれば引くのが常であったという。

「フランツ時代から変わらないこと」
- 話し方。女言葉を使おうと努力はしたが結局断念したらしい。
  - ただし羞恥をこらえれば、ちょっとだけ。なんとか。二言三言くらい。
- 毎日大量の新聞（朝刊・夕刊・経済等々）を読む。
  - 特にトイレに籠って読む。
  - 1部1部を読み進める時間は早いが、量があるので時間としては長い。
  - たまにドアドンされてビクッてしてる。
- 各種の癖。
  - 意識しているものもされていないものもあるが、なかなか直せないようだ。

「フランツィスカになってからのこと」
- メガネを掛けている。ただし度なし。
  - 「フランツィスカ」としての仮面として着用しているふしがある。顔を隠す一種の精神防衛反応の表れか。

「その他」
- 『F資金』という名の、フランツ時代の資産を秘密裏に整理した金を隠し持っている。
  - フランツィスカはこのことを誰にも打ち明けてはいない。よって知るものも彼女しかいない。
  - が、この街の経済界の実力者たちの間では「フランツの遺産」が存在するのでは？と実しやかな噂になっている。こちらの噂を耳にすることはあるだろう。
  - その総額は各地に散らばるアーロンデルク家の一族郎党・家の各種経営運営維持費用の一切についてを向こう４、５年は確実に賄える程度と推測されている。
- 普段着代わりの制服はいわゆる洋上学園のもの
  - 学園に通っているわけではない。
  - フランツィスカに変わった日、裸にコートとスリッパという出で立ちで夜明けの町を彷徨う中、たまたま最初に見つかったそれなりの服、ということらしい。
  - なおスカートに対しては意外なほど早く順応した。

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【或る日の新聞記事】 †

『自殺か　誘拐か　フランツ頭取、忽然と失踪す』
黄金暦251年8月、クローバーロード銀行の頭取であるフランツ・アーロンデルク氏が滞在先のホテルから忽然と姿を消した。
部屋に荒らされた形跡は無く、血痕等争いの後もなかった。ホテルの従業員もそういった音や声は一切聞いていないという。
氏は一週間前に妻であるグレーテ・アーロンデルクさんを失っており、空の部屋には氏が普段は嗜まない酒と煙草が残されていたことからも、
愛妻の不慮の死を苦にしての失踪であるとの見方が有力である。

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【或る日のゴシップ誌の三文記事】 †

『続報！名門貴族家の危機！？フランツ氏失踪事件の闇に迫る！PARTⅡ』
（中略）本誌はフランツ氏が失踪する数時間前に、氏がホテルの部屋に呼び寄せたという娼婦その人にインタビューすることに成功した。
（中略）フランツ氏の（中略）さすが高級娼婦（中略）その流れるような金の髪…起伏にとんだ（中略）
「部屋に入ると真っ暗で、最初はそういう趣味かな、と。そういうお客様もよくいらっしゃいますもの。」
（中略）
「あの方は…写真でみるよりよほど小さく見えましたわ。悪い意味ではなくて。たぶん、そういう生き方をしてらしたのではないかって、そう思いますの。」
（中略）
「そしてあの方は私に葉巻とお酒を勧めて…そう、ご一緒した、といえばそうなのですけれど。」
「結局グラスは匂いを嗅いだだけで、葉巻はお香かマッチかみたいにずうっと皿の上に置いたままで。」
「それから少しだけお話をして……明日の天気のこととかですわ。それでおしまい。返されましたの。」
「わたくしも自信がなくなりそうでしたけれど…あの方のお顔。親とはぐれた子供みたいな…」
（後略）

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【フランツ来歴】 †

[幼年時代（誕生～5歳）]
うらさびれた山奥の寒村において、農家の六男として生まれる。
5つを数える頃に一番近い街（not酒場の街）の商店へと奉公に出された。
[少年時代Ⅰ（5～12歳）]
計算に明るく、安い賃金でよく働き店主夫妻にもかわいがられる。
次第に商才も発揮するようになり、店主が仕入れ旅などで長期間店を不在にするときは代理として店を切り盛りするようになる。
12を数える頃、店主夫妻から再三来た養子の誘いを断り都会（酒場の街）へと出る。
その理由の一つには、才能を発揮するにつれて強くなる奉公仲間からの風当たりにもあったかもしれない。
[少年時代Ⅱ（12～18歳）]
7年に及ぶ奉公を終え、纏まった金を手に酒場の街へとやってきたフランツ。
昼間は経験を活かして商店で働き、仕事を終えてから夜学へ通う日々を送る。
ひとつの商店に長居することはなく、その店の現状での伸びしろを見極め、
それがある程度為された段階で次の店へと移る事で名を売っていく。
[少年時代Ⅲ（18～22歳）]
18歳で大学入学。いったん全ての仕事を止め、勉学に専念する。
20歳ごろから再び商売の道に戻り、人に金を貸し、投資することを開始。
街の中に自らがオーナーである小さな商店を幾つも持つようになる。
程なく大学を卒業。街で二番目に大きい銀行へと就職する。
[青年時代Ⅰ（22～34歳）]
目立ちすぎず、ただ失敗もせず、ひっそりと銀行内でキャリアを積んでいく。
奉公時代の経験で、出た杭が打たれることを身に沁みて理解していたため。
ゆっくりだが順調に、誰かのミスの繰上げで出世していった。
商売のほうも手堅く行い、自らの資産を着実に増やしていく。
[青年時代Ⅱ（34～40歳）]
支店長を務めるようになった頃、一つの縁談が持ち込まれる。
相手は貴族…アーロンデルク家の本家筋の娘であった。
自らの商売や立場を先へと進めるため、フランツにはアーロンデルクの名前は有用であり、
またアーロンデルク家にとっては、若く商才に溢れた男を一族に迎える事で財源を安定させたい狙いもあったのだろう。
噂では、この頃にはもうアーロンデルク家の栄光に陰りが見え始め、屋敷は常に資金繰りに悩まされていたとも言われる。

縁談が纏まると、伝手を頼り商会長の養子として戸籍を変え、しかるべき立場になった後に婚姻。婿入りする。
かくしてグレゴール・アーロンデルクとして貴族となったフランツは、後ろ盾を得たことをきっかけに、
銀行家として、商人として一気に頭角を表していく。
[壮年時代Ⅰ（40～50歳）]
結婚後何年かが経っても、妻との間に子はなかった。そもそも、まともな夫婦生活がなかった。
フランツは仕事が忙しく屋敷に帰る暇がなく、妻は夫の稼ぎを消費するのに忙しく屋敷に帰る暇がなかった。
たまに顔を会わせたときなど、逆に居心地が悪いくらいだったという。

そして昼夜を問わず働き続けた結果、深い隈と皺と引き換えに頭取と商会長の地位を共に持つまでに至る。
生み出した莫大な富はアーロンデルク家の維持費としてほとんどが消えて行った。
[壮年時代Ⅱ（50～55歳）]
毎日同じ事の繰り返し。それを打ち砕いたのは突然の妻の訃報だった。
悲しむより先に胸に去来したのは「アーロンデルクの中での立場が悪くなる」という打算的な考え。
時を同じくして訪れる没落の危機。フランツの耳には確かに、自らの足元が揺らぐ音が聴こえた。
漠然とした不安に苛まれこれまでの自分の人生を振り返れば、さしたる目的も無く、
ただ目の前の事に流され続けていただけの自分に気付く。

しばらくしてフランツは、人生で初めての纏まった休みを取った。

5つ星ホテルのスイートルーム。夜空を彩る星、地を照らす街明かり。
一般労働者が一年働いて一杯飲めるかどうかという酒、葉巻。
男なら誰もがその手に抱くことを願うような極上の美女――その全てにもはや酔うことすらできなかった。
フランツは一人ベッドに横たわり、意識の落ちるに任せて眠った。

　　　　　　　　　　　　　　　　　―そして夜が明け―

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