名簿/478508

  • ――【Epilogue 2】 せつな・シークエンスからの手紙 -- 2013-04-07 (日) 22:07:45
    • ……迷ったな。 -- ロレン 2013-04-07 (日) 22:10:58
      • ああ、迷った。 -- エスト 2013-04-07 (日) 22:11:24
      • ……やっぱり、さっきの分かれ道は右だったんじゃないか?
        (額の汗を拭うと、エストが水筒を渡してくるのでそれを受け取る)
        -- ロレン 2013-04-07 (日) 22:12:38
      • かもしれない。 -- エスト 2013-04-07 (日) 22:14:20
      • ……まさか、出発して二時間で迷うとは。(首筋を掻く)
        エスト、無理して着いて来なくていいぞ。ちゃんと道が分かったら迎えに行くから。
        -- ロレン 2013-04-07 (日) 22:20:09
      • いや、いい。行く。
        待っているのは性に合わないし、待っている間にフォックステイルが暴走したときにお前が側にいてくれないとエストは困る。
        -- エスト 2013-04-07 (日) 22:21:19
      • ああ……そうか。そうだな。
        (地図を開く。眉間にシワを寄せて、かつてこの国に自分が来た時のことを思い出し、その逆を辿っていく)
        (大学を卒業し、すぐに『アイアンシールド』を生み出した国へと一度帰国しようと思った旅に、何故かというか当然というか、エストも着いて来ることになった)
        (後ろを振り返ると、道端で拾った木の棒を片手に、地面に線を引きながら歩くエストの姿がある)
        -- ロレン 2013-04-07 (日) 22:23:49
      • (顔を上げると、ロレンがこちらを向いていたので首を傾げる)
        何だ。戻るのか?
        -- エスト 2013-04-07 (日) 22:24:40
      • いや。……なんか、悪いなと思ってな。
        (口下手同士の二人旅というのは、一時間でも二時間でも無言が続く時がある。大学での騒がしさを思えば、静かすぎて不安になるのも無理は無いだろう)
        なあエスト。(正面を向いたまま、言葉を投げる)
        -- ロレン 2013-04-07 (日) 22:27:13
      • ……エストが邪魔なら、待ってるが。(ぽつりと呟く) -- エスト 2013-04-07 (日) 22:27:48
      • ……いや、別に。邪魔っていうか、な……。 -- ロレン 2013-04-07 (日) 22:28:28
      • ………? -- エスト 2013-04-07 (日) 22:28:50
      • ………。 -- ロレン 2013-04-07 (日) 22:29:11
      • ………? -- エスト 2013-04-07 (日) 22:30:16
      • (間が持たない)
        ……なんかな、罪悪感が。今頃な。謎のな。
        -- ロレン 2013-04-07 (日) 22:31:59
      • 何だ、罪悪感って。何のだ。 -- エスト 2013-04-07 (日) 22:32:24
      • いや……なんか上手く説明出来るかわからないけどな、他に縋りようがない相手に依存するように誘導したような、
        そうせざるを得ない相手の善意に浸け込んで、いたいけな少女を連れ回してるようなそんな気分になってきて、な。
        どうにも、素直に他人に好意や善意を向けられたことがないせいか、疑心暗鬼が胸の中に湧いて来るっていうか。
        -- ロレン 2013-04-07 (日) 22:34:49
      • ………。良くわからんぞ、エストは。
        なんでそれで、ロレンが罪悪感を覚えるんだ。エストは、エストの意思でロレンについていくんだ。
        隣国でも、何処でも。エストの居場所は、お前の隣しかもうないからな。
        -- エスト 2013-04-07 (日) 22:36:21
      • そう仕向けたのが自分かもしれないと思うと、徒に他人の好意を利用して無聊を慰めているように思えてきて……。
        オレは、別にそういうつもりで言った言葉じゃなかったんだが、何か、結局はその言葉でエストを縛ってたのはオレの方なんじゃないかって。
        ただ、今更エストに自由にしろっていうのも、また無責任な言葉なんじゃないかって思うと、気が重い。
        -- ロレン 2013-04-07 (日) 22:38:38
      • そうか?
        エストは、そうは思わない。
        例えそうだったとしても、今のエストはちゃんとロレンのこと好きだからな。
        それが、理由じゃダメか。
        -- エスト 2013-04-07 (日) 22:41:03
      • (その)
        (別に今回が初めてではない真っ直ぐな求愛に、何故か心臓が跳ねた)
        (ぐしゃりと前髪を掴み、表情を隠し、歯ぎしりをする)
        (たまに、フォックステイルの攻撃力は、アイアンシールドの防御を貫通してくることがある)
        (本当に……こういうのは、何年と耐えられるものじゃないと思う)
        (何年と耐えられる人間がいたとしたら、その人間を尊敬してもいいくらいだ)
        ……はぁ。なあ、エスト。
        -- ロレン 2013-04-07 (日) 22:43:24
      • ん? 何だ? -- エスト 2013-04-07 (日) 22:43:51
      • ……オレは、思ったより早く、お前のことを好きになるかもしれない。
        (顔を逸らして言った本音に、自分でも小さく笑いが出た)
        -- ロレン 2013-04-07 (日) 22:44:33
      • そっか。
        (狐は、小さく、にへ、と笑った)
        ……がんばる。
        -- エスト 2013-04-07 (日) 22:45:11
      • ……手柔らかに頼む、フォックステイル。 -- ロレン 2013-04-07 (日) 22:45:47
      • ああ、任せておけ、アイアンシールド。
        子供は何人産めばいい。エストは二人欲しい。残念ながら姉妹であることは確定しているけど。
        -- エスト 2013-04-07 (日) 22:46:50
      • 手柔らかに頼む。何段飛ばしてんだお前。 -- ロレン 2013-04-07 (日) 22:47:36
      • こうするか、ロレンの血が濃く出て、アイアンシールドの特性を受け継いだら、その子にはレィリって付けよう。
        エストの血が濃く出て、フォックステイルの特性が出たら、アヤカって付けよう。
        エストは、今から楽しみにしてる。
        -- エスト 2013-04-07 (日) 22:49:30
      • 話を先に進めるな。防御が間に合わない。
        ……(小さく笑い、冗談に付き合うように肩をすくめ)まさか、子供について誰かと話すような機会に恵まれるとは思わなかった。
        オレの呪われた血脈は、オレの代で終わらせようとさえ思ってたのにな。
        -- ロレン 2013-04-07 (日) 22:52:37
      • エストもだ。……でも、今は少しだけ思うんだ。エストが、ロレンやせつな達に逢ったように。
        きっと、そういう人の中で生きていくのが困難な存在でも、受け入れてくれる『仲間』って、どこかにいるんじゃないかって。
        異端を異端のまま、受け入れてくれる誰かがいるんじゃないかって。
        -- エスト 2013-04-07 (日) 22:55:23
      • ……そうかもしれないな。偏執的な露出狂とか、度を過ぎた暴力魔とか、そういう滅多なことでもない限り、異端は人の中で生きていけるだろうしな。
        ………。
        ……まあ、でも仮にだが、そういうことになった時、多分アイアンシールドの影響で娘やお前に顔忘れられるだろうが、それはいいのか。
        -- ロレン 2013-04-07 (日) 22:58:11
      • 大丈夫だ。エストは、絶対、絶対にロレンのことは忘れないし、
        娘がロレンの事を忘れたら、父親はエキノコックスで死んだ、とかそういう設定にしておく。
        -- エスト 2013-04-07 (日) 22:59:07
      • おい完全にブラックジョークだろそれ。 -- ロレン 2013-04-07 (日) 22:59:32
      • で、いつ作る。今から、はちょっと厳しいかもしれない、もう少しエストが大きくなってから、やろう。
        でも、ロレンが是非ともというなら、エストは、ちょっと頑張ってみようと思う……!(尻尾と耳が生える)
        -- エスト 2013-04-07 (日) 23:01:01
      • おいやめろ尻尾生やすんじゃない、本気モードで言うことかお前。(捕食姿勢に入るケモノから一歩引くように下がると、何かにぶつかる)
        (振り返ると、そこにはいつの間にか男が立っていた)ああ、すいません。
        -- ロレン 2013-04-07 (日) 23:02:27

      • しっかり前見て歩きな、青年。人の目はな、真っ直ぐ未来を見据える為に前についてるんだぜ。
        -- 2013-04-07 (日) 23:04:51
      • (眉根を寄せる。目に痛い赤色の髪をした長身の男は、胸を張ってそんなセリフを吐いた)
        はぁ、まあ、気をつけます。
        -- ロレン 2013-04-07 (日) 23:05:56
      • ああ、ちっと待ってくれ、青年。こっちの国初めてでな。
        少しばかり道を聞きたいんだが。いわゆる……迷子、ってやつだ(ビシィとロレンを指差し)
        -- 2013-04-07 (日) 23:07:24
      • こんな堂々とした迷子初めて見た。 -- エスト 2013-04-07 (日) 23:07:52
      • ……オレたちも人のことは言えないけどな。
        まぁ、分かる範囲でなら、何処に行きたいんですか。
        -- ロレン 2013-04-07 (日) 23:08:50
      • ……そうだな、そういや、何処に向かってたんだっけか。
        スマン、ドわすれした、何処だ。
        -- 2013-04-07 (日) 23:10:03
      • 知るか!! -- エスト 2013-04-07 (日) 23:10:21
      • がっ……。
        ガッ、コウ……っていう、ところ、です。
        -- 2013-04-07 (日) 23:11:17
      • (男の陰から別の声がして、驚く。見れば、男の長身に隠れるようにして、別の少年がいた)
        (こちらと視線が合うと、ヒッ、という声とともに長身の男の背に隠れる)
        (まあ、人見知りが強い人間も存在するだろうしな)ガッコウ、学校、か。
        (二人を姿を見る。どう見ても、魔術に携わるような人間には見えない、どちらかというと……旅人、冒険者のように見える)
        -- ロレン 2013-04-07 (日) 23:14:37
      • ああ、それだそれ。何かな、こう、旅人や冒険者も受け入れてくれるようなガッコウってやつを、今探してんだよ。
        なんかそういうの、このへんにねーかな。
        -- 2013-04-07 (日) 23:16:24
      • ……それは、多分こっちの国じゃなくて、隣国なんじゃないですかね。
        そういえば、シークエンス教授が隣国で、そんな『ガッコウ』の教師をやってたって言ってたような……。
        まあ、うろ覚えだけど、ちょっと分からんです。すいません、力になれそうもなくて。
        -- ロレン 2013-04-07 (日) 23:17:44
      • おお、そうか!隣国か、どうにも話が違うと思ったぜ!
        良かったな、でも大体方向性は合ってたみたいだ、一から性根入れ替えるには絶好の場所かもしれねーぞ。
        何時までもエミナエミナ言ってねえで、しゃきっとしやがれ、弟分!
        -- 2013-04-07 (日) 23:19:05
      • うう……やっぱ無理だよ、アニキ……!
        オレ、他の人と一緒にガッコウとか、絶対、無理だって……!!
        -- 2013-04-07 (日) 23:20:00
      • しゃきっとしろしゃきっと(ぐしぐしと弟分の頭を撫で、ロレンに向き直り)
        ありがとな。ちっとそっちの方向当たって見るぜ。これは、少ないけど、取っておいてくれ。
        -- 2013-04-07 (日) 23:22:12
      • ……いや、別にそんなつもりじゃ……。
        (手のひらの中の硬貨に、違和感があった。何故か円形をしていない)
        (手のひらを開いてみると、そこには、形容しがたい何かが乗っていた)
        ……あの、これは。
        -- ロレン 2013-04-07 (日) 23:23:24

      • それか?
        ――ファミリーバッヂ、だよ。
        -- 2013-04-07 (日) 23:24:03

      •     ◇  ◆  ◇  ◆  ◇

      • 旅に出たロレンくんとエストに関しては、今のところ連絡はありません。
        ただ、何か大きな事が起こった時、定住する場所が決まったときは連絡をくれるようお願いしておいたので、
        あの二人があたしのことを忘れない限り、どこかの空の下であたしたちは繋がっているのだと思うと、少しだけ寂しさも安らぎます。
        あたしは人の事が言える程器用な人間ではないですが、それ以上に輪をかけた不器用なあの二人が、
        国を出た時より更に高くなった背でどんな景色を見るか、自分たちの人生にどんな意味を見出すのかは、
        少しだけ楽しみでもあります。本当の自分と向き合うって、結構たいへんだとあたし自身もも思ったから。
        -- せつな 2013-05-04 (土) 04:59:36
      • ちなみに今、おじちゃんにも何か書く?って聞いてみたところ、いつもの顔で別にいいって返ってきました。
        横でアグニさんやプロミーが笑ってて、多分二人は照れ隠しだと思っているんだろうけれど、
        きっとおじちゃんは面倒なだけなんだろうなと思いました。
        しばらくそちらにも帰っていなかったので、おじちゃんもおじちゃんで帰省する気満々だからか、
        今特に伝えたいことはないんじゃないかなと、少しだけ優秀な生徒の一人として弁解しておきますね。
        プロミーたちも、久しぶりに皆に会えるのが嬉しいらしく、カレンダーには結構前から×が並んでいます、実は。
        -- せつな 2013-05-04 (土) 05:03:37

      •     ◇  ◆  ◇  ◆  ◇

      • (高台の上、ぶすくれた表情で胡座をかき、肘を膝について頬杖を付く)
        (姿はボロボロで、あちこち煤で汚れ、遥か下に大学の全貌を見ながら嘆息する)
        -- プロミネンス 2013-05-04 (土) 05:09:56
      • (ブンッ、と空中に画面が浮かび)『フッ……流石姉上と言ったところです。怒りに身を焼きながらも冷静な対処、やはり至高の存在と言える。
        実に味わい深い炎で名残惜しいが、これ以上の説得は流石の私も無理であるとしておきましょう。
        何も私も、姉上の居る座標帯を焦土と化したい訳ではありませんからね。』
        -- ミラージュ 2013-05-04 (土) 05:18:11
      • ……やかましい。
        こちらが広域熱源ジャミングしてるから好き勝手散々光学兵器打ち込みおって、あれのどこが説得じゃ!
        お陰で大団円のその現場を逃したんじゃぞわらわは! 責任取れ愚弟!(空中の画面を殴る)
        -- プロミネンス 2013-05-04 (土) 05:20:36
      • ハアアアン!!』(殴られ、恍惚の表情と共に吹き飛ぶ、光学映像)
        『……生で味わいたい感触ではありますが、それはそちらへと着艦した後にとしましょうか、姉上。
        やがて艦隊はそちらへと着きます、遠方での説得に応じていただけない連れない姉上も、
        実際の顔を付きあわせての説得となれば話は別かもしれませんゆえ。お覚悟を』
        -- ミラージュ 2013-05-04 (土) 05:24:34
      • ……やはり来るのか、めんどいのう。お前の言う説得というのは小脇に抱えて無理やり連れ帰ることであろう。
        何故そうまでしてわらわに固執する。貴様には母上から離れてまでわらわを付け狙う理由があるまいに。
        何故……そうまでしてわらわを追ってくるのだ。
        -- プロミネンス 2013-05-04 (土) 05:27:28
      • 『単に、私が私の欲した物は側にあるべきと思うが故ですよ、姉上。存外に私は執着心が強い方でね。
        それに、私や母上と姉上は家族でもあるのですから。家族は集まって暮らしたほうが良いと思うのですが。
        姉上の遠征が何年も続けば、迎えに行くも道理ではないでしょうか?』
        -- ミラージュ 2013-05-04 (土) 05:37:06
      • わらわはそうは思わん。家族というものは、離れていても家族だ。
        人は、一つの立場に甘んじることなく、他の集団にも己の居場所を作れる生き物だ。
        そういうのを、わらわは大人になると表現している。
        いい加減、乳離れせんか、ミラージュ。わらわはお前の所有物ではないぞ。
        -- プロミネンス 2013-05-04 (土) 05:39:05
      • 『立派なお言葉ですよ、姉上、それゆえに愛も深まるというもの。
        私は拒絶されればされる程燃えるタイプですから、ご心配なく。今直ぐそちらに参ります故。
        しかし、先の勝負は言ってはなんですが、精彩を欠く内容でしたね。そちらには姉上の守りたい者でもいらっしゃるのですか?』
        -- ミラージュ 2013-05-04 (土) 05:40:42
      • ……ああ。
        所属してみて初めて分かったが、わらわはこの『学舎というモノ』を好いているようだ。例え相手がお前であろうが、それを守るためならわらわは何度も立ちふさがろうぞ。
        実にな、楽しき日々だった。阿呆のような毎日であるが故に、王座にて王冠を頂いている者には知りようのない価値がそこにあった。
        ミラージュ。王は強いだろうが、民はもっと強いぞ。わらわは、それこそが、王が誇るべきモノであると、今は思う。
        -- プロミネンス 2013-05-04 (土) 05:43:13
      • 『変わられましたね、姉上。が故にその変化を側で見られなかったことは悔やまれる。
        学び舎などというものに意味を見出すような御人ではなかったと記憶しておりますが……。
        良いでしょう。やはり姉上には直接会って話をする必要があるようです。
        待っていてください、私は必ず、貴方を取り戻します、姉上』
        -- ミラージュ 2013-05-04 (土) 05:45:17
      • 好きにせい。
        何度だって退けてやろうぞ。
        (少女は炎を纏って空を睨み、王の瞳でにやりと不敵な笑みを向けた)
        -- プロミネンス 2013-05-04 (土) 05:46:16


      • (遥か上空)
        (星の間にミラージュの乗る艦は存在する)
        (その玉座とも言える席で、男は姉と同じように不敵に笑った)

        ……学び舎、か。
        面白い。興味が沸く話だな……。
        姉上、必ず迎えに行きます……。
        -- ミラージュ 2013-05-04 (土) 05:51:19

      •     ◇  ◆  ◇  ◆  ◇

      • あたしの周りの人たちは、そんな感じです。
        皆卒業して、それぞれの道を歩んでいるんだなと思うと、あたしも頑張らなきゃって思います。
        まだ不安なことや心配なこともたくさんあるけれど、そうやって積み重ねていくことが人生なんだって、
        おじちゃんも昔言ってたような気がしますし。最近はあんまりそういうこと言わないようにしてるみたいだけど。
        -- せつな 2013-10-06 (日) 17:09:23

      • さっき、少し書いたけれど、今度の休みには三人揃ってそちらに帰ります。
        お母さんには伝えてあるので、ジィ姉に特にお世話になるようなことはないかもしれないけれど、色々聞かせてくれると嬉しいです。
        久しぶりにアニキの顔や、有葉ちゃんや、まだ見たことのない芙衣の顔を見れるのを、あたしも、せっちゃんも、楽しみにしています。

        では、長くなりましたので、手紙はこのくらいにしておきます。
        また、困ったことがあったときは、頼りにしていますので、よろしくお願いします。

        ジィ・K・本城様
        ――せつな・シークエンスより。
        -- せつな 2013-10-06 (日) 17:16:58



      •                   ―――Epilogue 了 -- 2013-10-06 (日) 17:18:13
  • ――【Epilogue】 せつな、シークエンスからの手紙 -- 2013-03-19 (火) 04:20:10
    • ――拝啓。親愛なる義姉、ジィ本城様へ。
      いつも、メールで済ませていたことを改めて文字に起こして見ると、思ったより文字が書けなくなってて驚きました。
      それでも、久々に筆を取って手紙を誰かに書く、というのは面白く、楽しみながら今これを書いています。
      大学にいた頃は、毎日のようにノートを取って、参考書とにらめっこをして四苦八苦していたはずなのに、
      いざ卒業してみると少し名残惜しいように感じられるのはあたしが贅沢なのかなってちょっと思いました。
      -- せつな 2013-03-19 (火) 04:25:46
      • こちらは、相変わらずと言えば相変わらずです。
        おじちゃんは最近「漸く忙しくなってきた」と文句を言いながらお仕事に出かけています。
        ぶつぶつと言いながらも、おじちゃんの性格から言ってお仕事がないよりお仕事がある方が燃えるタイプだと思うので、
        身体を壊さない程度に頑張ってほしいなって、あたしも思います。
        大学の体制もおじちゃんが評議長になってからの数年で大きく転換期を迎え、
        今では色んな種族の入り交じる不思議な空間になっています。
        そちらの国では当たり前の情景も、おじちゃんとこちらの国に来てすぐの時には絶対に実現しなかったことだと思うので、
        それを見る度に、おじちゃん頑張ってるんだなーって思って、あたしも少し嬉しかったりします。
        -- せつな 2013-03-19 (火) 04:30:15

      • そうそう。
        大学で思い出したんですが、カルマ君がようやく助教授になれたらしいです。
        凄く嫌そうな顔でゼニスが話してくれました。
        ウィッカは喜んでたみたいだし、あたしも嬉しいんだけど、やっぱり『十四教室の出身』として一括りに扱われるのはなんだか嫌みたいで、
        出来るだけ早く個人の名前で呼ばれるようにするわ、って言ってて何か可笑しかったよ。
        それでなくてもゼンアード・元評議長の娘っていうことで名前で呼ばれないと嘆いていたので、
        あたしも陰ながら応援することにしました。ゼニス真面目だからなぁ。
        -- せつな 2013-03-19 (火) 04:34:45

      •     ◇  ◆  ◇  ◆  ◇

      • ……はぁ? なんで? -- ゼニス 2013-03-19 (火) 04:38:43
      • なンでもクソも、逆に聞けば俺が院生試験受けンのになンか問題あンのかよ。 -- カルマ 2013-03-19 (火) 04:39:49
      • うん。だってバカじゃない、貴方。オブラートに包んで言わせてもらうけど、バカじゃない。疑問形にもならないわ。
        ついこの間までキクラゲを干した豚の肝臓だと思ってたくらいバカじゃない。
        減量しながら筋肉付けるにはササミがいいっていうのを聞き間違えてサラミ食べて脂肪だけ増えたくらいバカじゃない。
        ハメ殺しの窓をいやらしい意味だと思ってたくらいバカじゃない。
        それが……院生? どこの院に行くつもり……? 病院……?
        -- ゼニス 2013-03-19 (火) 04:45:43
      • テメェ! しかも全部捏造じャねえか! 思ってねェよ!!
        あと仮にも女子が大学でハメ殺しとか言うんじャねェよ!! 慎め!
        -- カルマ 2013-03-19 (火) 04:47:33
      • あー、あははー……これは現在進行形で勘違いしてるなーカルマくん。
        うんー、でも、わたしは個人的には嬉しいなーって思うんだけどねー。皆バラバラになると思ってたから、尚更ねぇ。
        -- ウィッカ 2013-03-19 (火) 04:50:09
      • まあ、カルマ、気を落とさないで、来年もあるし。あんたらしくないわよ。 -- ゼニス 2013-03-19 (火) 04:50:51
      • 工程を五つくらいスッ飛ばしてンじャねェよ!! 落ちてねェし落ちる気もねェよ!!
        ッたく、一応同じゼミ生だからって教えてやったのに、なンなンだテメェ畜生。ワリィかよ!
        -- カルマ 2013-03-19 (火) 04:52:35
      • あれぇ? でもカルマくん、卒業後は旅に出るって言ってませんでした?
        あ、あと院生試験って、思いついた時に受けられるわけじゃなくて、一年くらい前から申請がいるんですけど、大丈夫なのかなぁ?
        -- ウィッカ 2013-03-19 (火) 04:54:06
      • ぶっちャけ思い付きじャねーンだよ。一年くらい前から悩ンでたンで、一応申請だけは出してたンだ。
        ンで、旅に出るつもりも満々だったンだが。……なンかな、ロレンと被るの癪じャねーか。
        -- カルマ 2013-03-19 (火) 04:55:48
      • 小学生か。 なんなのその男子の意地の張り合いみたいなの、理解できないんだけど。いいじゃない、一緒に旅に出て旅先で偶然合えば。
        ただしその時には多分ロレンは子持ちでしょうけど。どこで差がついたんでしょうね。
        -- ゼニス 2013-03-19 (火) 04:57:31
      • なンかそれだきャ、オメーに言われたくねーンだけど。 -- カルマ 2013-03-19 (火) 04:58:22
      • バカね。男は恋の数だけ削れていくけれど、その削れた物を輝きに変えて身にまとうのが女なのよ。
        破れた恋の数だけ女は綺麗になるの、覚えておきなさい。そして跪いて私の足の下の地面を舐めなさい。
        -- ゼニス 2013-03-19 (火) 04:59:47
      • 地面じャねェか。 テメェの足の下にあるだけの、縁もゆかりもねェ地面じャねえか。 -- カルマ 2013-03-19 (火) 05:00:37
      • んー。じゃあ、カルマくんとしては、ずっと研究したい内容があったってことなのかなぁ?
        カルマくん、卒論書かなかったし、メインの研究テーマ、なんでしたっけー?
        -- ウィッカ 2013-03-19 (火) 05:01:55
      • ああ、まあ、元々な、俺はあれだ、別に召喚術云々で十四教室にいたわけじャねーンだよ。知ってンだろうけど。
        最初に異種族の受け入れしてた教室があそこだったってだけで、別にメインの研究テーマとかなく、ただのモルモットとして大学にいただけだからな。
        ……ンで、まあ、なンだ、正直このままその結果持って里に戻っても別にいいと思ってたンだが……少しだけ自分のことに興味湧いて来たンだよ。
        オーガの生態とか、なンか、本能とか、よっくわかんねェ上に親父と同じ道程でスゲェむかつくけどなンかそンな感じのことだよ!!ワリィか!!
        -- カルマ 2013-03-19 (火) 05:05:25
      • 悪いのは、あんたの頭よ。 -- ゼニス 2013-03-19 (火) 05:08:59
      • 鬼かテメエ!! -- カルマ 2013-03-19 (火) 05:09:23
      • ……まあ、でもバカなりにしっかりと考えてるなら別に止めたりはしないわよ。
        思いつきで言ってるなら是が非でも説得しようと思ってたけど。ちょうどウィッカの胸も近くにあるし。
        -- ゼニス 2013-03-19 (火) 05:12:23
      • えっ!? わたしのおっぱいは特に説得に関係ないと思うんだけど…!
        というか、わたしが居るから、わたしのおっぱいも近くにあるのであって、偶然そこにあるものではないんだけどゼニスちゃん…!?
        -- ウィッカ 2013-03-19 (火) 05:13:34
      • 正直貴方の胸があれば国くらいは買えると思う。(ギリィ) -- ゼニス 2013-03-19 (火) 05:14:21
      • そんなに!? あっ、痛い! 歯ぎしりの音に見せかけて思い切り掴むのやめてー! 痛い痛い! -- ウィッカ 2013-03-19 (火) 05:15:05
      • ……どンな内部構造していればそンな形に変形するンですか。(敬語)
        っつーか、テメェらこそどうなンだよ。まあ、なんとなくゼニスもウィッカも分かるっちャ分かるが。
        -- カルマ 2013-03-19 (火) 05:16:37
      • あっ……ダメ、だから、ゼニスちゃん……ちょっと気持ちよくなっ……ん……あ、えっと……。
        え、えっと、わたしは、とりあえず行けるところまでは行ってみようと思っ、てる……よー。
        マージョリースの名前を背負ってはいるけど、んっ……今まで、ずっと魔術師であるってことと、正面から向き合ってなかったから……あっ、ダメだって、ほんとに……!
        だからね……一人の魔法使い、ウィッカ・エリザベート・マージョリースとして、行ける、ところまで……行って……イって……イ……。
        -- ウィッカ 2013-03-19 (火) 05:22:34
      • テメェゼニス真面目な話してんだから執拗に乳の先端責めてんじャねェよ!! オメーはよ!!
        バカはテメエじャねェか!! おいやめろバカ!! ウィッカの表情が本格的に雌のソレになって来てンぞ!!
        -- カルマ 2013-03-19 (火) 05:24:24
      • ………ごめん、完全に無意識だった。(愕然とする) -- ゼニス 2013-03-19 (火) 05:24:56
      • ああ、分かるわ。(分かる) -- カルマ 2013-03-19 (火) 05:25:18
      • わ、分かられてしまうのも、どうかと思うのですがぁ……ふへぇ……(クタクタ)
        (着衣の乱れを直しながら)……うん、そんなに大きな目標がわたしもあるわけじゃないけど、それでも胸を張って魔術師やっていこうかと思ってるよー。
        お母さんがくれた名前どおりとは、中々いかないだろうけど、少なくとも自分で納得出来る生き方としてねー。
        -- ウィッカ 2013-03-19 (火) 05:27:30
      • そんなものだと思うわよ、誰もが。そういう真っ直ぐな気持ちで行う努力は、けして無駄にはならないと思うし。
        色々、ウィッカも大変でしょうけど、頑張っていけるといいわね。
        -- ゼニス 2013-03-19 (火) 05:30:02
      • やけに他人事みてェに言いやがって。そういうオメーはどうなんだよ。 -- カルマ 2013-03-19 (火) 05:30:41
      • 何となくよ。 -- ゼニス 2013-03-19 (火) 05:31:42
      • 家帰って真っ直ぐな気持ちで行う努力取りに行ってこいや!! -- カルマ 2013-03-19 (火) 05:32:34
      • バカね。何となくでいいのよ。
        私はね、何となくそうしておいた方がいいと思ったから、院に進むの。
        そうしておいたほうが、恐らく後々私の進む道の助けになるんじゃないかって、そう私の女の勘が告げているのよ。
        もちろん、別の方法や道で行うことも出来たでしょうけど、やはり基礎的な学力という物は他人に信用させる一つの大きな柱となってくれるからね。
        -- ゼニス 2013-03-19 (火) 05:34:34
      • あン? つまりはアレか? 院に行くこと自体が目的って分けじャなくて、別に目的があるっつー話か。 -- カルマ 2013-03-19 (火) 05:35:49
      • ええ。
        十年以内に評議長になることを狙ってるからね。(にこり、と邪悪さの欠片も見えない笑顔)
        -- ゼニス 2013-03-19 (火) 05:36:50
      • わぁ。それ個人的に応援していいですかー?
        (純粋で純粋で純粋な笑顔)
        -- ウィッカ 2013-03-19 (火) 05:37:37
      • (『女子力』にドン引きする)
        ……いや、まあ、なンか、オメーなら実現しそうで怖ェ。
        っつーか、シークエンス評議長、マジ同情するわ……。女マジおっかねェな……。
        -- カルマ 2013-03-19 (火) 05:39:20
      • 事情は理解出来ているからね。大学や国の改編期に旗印として掲げられたのがあの干物なんでしょう?(干物呼ばわり)
        もちろん彼は十全にその役割を果たしてくれているし、この国は少しずつ良くなって行っていると思うわ。
        でもね、私思うのよね。
        これから大きく体制が変わっていく中で、どうせ旗印に掲げるなら若く綺麗な、しかも異種族の血が混ざっている女性がやるべきなんじゃないかって(いい笑顔)
        -- ゼニス 2013-03-19 (火) 05:41:52
      • 言い切った!! 言い切られると言い返せねェくらいバッサリ言い切った!! -- カルマ 2013-03-19 (火) 05:42:27
      • あ、いいかもしれないねぇー。評議長も「反対派」の前々評議長がいてー、「中庸派」のゼンアード評議長がいてー、「推奨派」のシークエンス評議長がいたので、
        ゆるやかに軟着陸出来たところだからー、今度は「革新派」のゼニスちゃんが評議長の椅子に座れば、この国にわたしたちみたいな人の受け入れ体制できるかもしれないしねー。
        わたし応援するよー。
        -- ウィッカ 2013-03-19 (火) 05:44:58
      • それにね、初の女性評議長という事にでもなれば、話題性もあるだろうし、嫌な話だけど前評議長の七光りもあるだろうしね。
        俯瞰的に見て、私が適役なんじゃないかって思ったから、もう少し学を深めようと思っているだけ。
        それをすれば、引いては私は父への復讐も完遂することが出来て、一石二鳥どころの話ではないもの。
        やだ……天職見つけちゃった……。どうしよう……。
        -- ゼニス 2013-03-19 (火) 05:49:06
      • なんつーか。
        男にフラれたのを私は仕事が恋人とか言って仕事に打ち込むことで忘れようとするOLみてェだな。
        -- カルマ 2013-03-19 (火) 05:50:13
      • (カルマの骨を折る) -- ゼニス 2013-03-19 (火) 05:50:44
      • 結果だけじゃなく過程をしっかり示せよ!! 折れたぞ!? なんでだよ!? どこのだよ!! ぐああ!!(のたうつ) -- カルマ 2013-03-19 (火) 05:51:29

      •     ◇  ◆  ◇  ◆  ◇

      • もしかしたらゼニスは来年か、来年の後期辺りには自分の教室が持てるかもしれない、なんて話も出ています。
        今のところ十四教室の助教授に収まっているけど、シロマル先生の口添えで第七教室の室長になれるかもしれないそうです。
        その場合カルマ君が十四教室の副室長になり、シロマル先生が引退した後はもしかして室長?なんて話も出ています。
        一足早く第三教室の室長になったウィッカも合わせて、自校卒業生が室長になったゼミとして、多分また話題になっちゃうかもしれないです。

        シロマル先生で思い出したけど、やっぱりシロマル先生は宮廷から声が掛かっているようで、
        断り続けるのも保って三年だなって言っていました。
        何かおじちゃんの時代にうちの大学の生徒さん(誰かは教えてもらえなかった…)が土壇場で宮廷推薦を断ったらしく、
        しばらく宮学分離状態が続いていたらしいけど、その関係もあって今度はどうも完全なる引き抜きとして召し上げられてしまうかもってため息を吐いてました。
        元々デスクワークが得意じゃないと言っていたので、少しだけ心配ですが、どうも隠すのが部屋なあたしなので伝わっちゃったらしく、
        元生徒に心配されてちゃオシマイだな、と先生は笑っていました。
        -- せつな 2013-03-30 (土) 10:03:24

      •     ◇  ◆  ◇  ◆  ◇

      • (モニタに初老の老人の顔が映っている。胡散臭い微笑と共に右手にバッジを持ち、口を開く)
        褒章だ。それも、第一種だぞ? 別にキミが要らないのならこのままゴミ箱に捨てていいんだがな。
        これを、私はキミに手渡しなら渡してもいいと思ってるんだが、如何だろうか、シロマル・ルーデンス・グレナデン『教授』。
        -- 布織 2013-03-30 (土) 10:09:25
      • ……はぁ。 -- シロマル 2013-03-30 (土) 10:09:53
      • はぁ、て。国に所属して働く誰もが尻尾振って喜ぶ第一種褒章を前にして、はぁ、て。
        若者の欲望離れが深刻化してる、その現場の最先端に立ってる気分だわ。 -- ゼンアード 2013-03-30 (土) 10:11:57
      • いや……なんていうか。俺は、まだそんなもん貰えるような何かをした覚えもないし……、
        それに、それを受け取ってしまったらその為に今まで人を騙したり人を育てたりしてきたんじゃないかと思って、何か嫌な気分になるんで。
        -- シロマル 2013-03-30 (土) 10:15:44
      • 成る程な。……気持ちは分からなくもない。ただ、褒章というものは目的や終点ではなく、単なる結果の評価に過ぎない。
        そう、肩肘を張らずに受け取ってもいいものではないかと私は思うんだがね。
        キミが人生を支払って齎した結果を、この国は評価をすると言っているんだ。気分を害す必要などなかろう。
        -- 布織 2013-03-30 (土) 10:18:07
      • (少し考えるように俯き)
        ……いや、やっぱいいです。
        俺が、シークエンス教授を騙して彼を評議長に仕立てあげたのは、別にそうすれば国の為になるとか、誰かに褒められるためにやったんじゃないですから。
        単にあの時。俺が立たされている場所から、どんなに手を伸ばしても、俺が欲しかった結果に辿りつけなかった。
        その為に、俺はあの人を頼った……。いや、違うな……あの人を、利用しただけだった。
        それは、ゼンアード元表議長も同じだったはずです。だから俺たちは……教授に責められこそすれ、誰かに褒められることは絶対に許されない。
        -- シロマル 2013-03-30 (土) 10:22:13
      • (肩を竦め、尻ポケットから煙草を出し、火を着けた) -- ゼンアード 2013-03-30 (土) 10:23:18
      • ……まさかね、私も同じ理由で二度褒章を断られるとは思わなかったが、キミがそう言うのなら仕方ない。
        私の机の中に眠らせておこう。余談だがそこそこに良い机に座っているのでね、それなりに褒章を眠らせて置く事もできるだろう。
        気変わりしたらいつでも声をかけてきて欲しい。
        -- 布織 2013-03-30 (土) 10:27:56
      • 俺はともかくお前が義理立てする必要なんかねーのによ。教唆したのは俺なんだから。
        全く同じ理由で断られたらそこまで俺が仕込んだみてーじゃねーか……。 -- ゼンアード 2013-03-30 (土) 10:29:12
      • それに……フオリさんとこ行って、無事に帰って来れる気がしないんですけど。
        絶対あんた何か罠張ってるでしょう。そんな餌で釣ってくるってことは。
        -- シロマル 2013-03-30 (土) 10:34:39
      • 口さがないのが許されるのは経験上22くらいまでだぞ、シロマル君。
        失礼だな。単にこの部屋の外で尻で椅子を磨くのに執心な者の中から一人を選び、もう少し美味しい餌を撒いて少し遠くに行ってもらうだけだ。
        偶然空いた椅子を遠路はるばる来ていただいた外来客の疲労の残る足を慮って用意しようという、私なりの持て成しはしようと思うがね。
        -- 布織 2013-03-30 (土) 10:38:04
      • 気ぃつけろ、シロ。こいつ惚れた相手への執着すげーから。 -- ゼンアード 2013-03-30 (土) 10:40:01
      • ああ、なんか分かるわ。ぶっちゃけ他人を勘違いさせるタイプだ、フオリさん。 -- シロマル 2013-03-30 (土) 10:42:24
      • 人を見た目や振る舞いで判断するものじゃない。3回程痛い目に逢ったくらいだな。3……いや、4……? -- 布織 2013-03-30 (土) 10:44:04
      • 学べよ学び舎の主。 -- シロマル 2013-03-30 (土) 10:44:32
      • 多分その微妙な数字で迷うってことは、口からデマカセってわけじゃねーなそれ。具体的に痛い目にあったエピソードと結びつけて思い出してんだろ。
        まぁ、オレとしちゃあそういった思惑もなかったわけじゃねーから、精々苦しむがいいぜ、若者。
        オレはもう交通事故起こす程の速度で走り回るのは疲れたから、遠くから野次馬根性発揮して楽しませてもらおうかと思うしな。 -- ゼンアード 2013-03-30 (土) 10:47:09
      • 事故とか、良く言うわ……。
        大体、どの辺りまであんたの思惑通りなんだ、ゼンアード元評議長。
        -- シロマル 2013-03-30 (土) 10:49:16
      • 辞めろよ人を悪の親玉みてーに。どっちかっつったら親玉こいつだろ。(モニタのフオリを親指で指し)
        思惑通りなこともあったし、思惑以上なこともあった。辿る経路は違っても、大体望みの場所に着地できた、ただそれだけがオレの結果だ。
        あいつは……まあ、なんだ。セータはな……第八教室に初めて来た時、何処にでもいる凡俗の魔術師だったよ。
        周りのメンツが強烈過ぎる個性持ってたから、さして目立つキャラクターしてなかったしな。
        ただ、胸の内側に譲れない信念があったからか、必死で周りの人間の才能に食らいついてきたんだ。
        オレは、他人の才能は伸ばしてやれても、意欲を植え付けることはできねえから……こいつとなら上手くやれるかなと思ったんだ。 -- ゼンアード 2013-03-30 (土) 10:53:52
      • ……俺から見ても似たような存在でしたよ。第八教室って異色の空間の中にぽつんと凡人がいる感じで。
        ただ、なんか、あの人は内側にいながら、内側を外側から見てた。他人より劣るからこそ、他人の優れた部分を、問題のある部分を捉える事が出来た。
        そこだけは……俺は、どう頑張ってもあの人には追いつけそうもないです。
        -- シロマル 2013-03-30 (土) 10:56:50
      • だな。……お前は優秀だからな。分からないやつの気持ちは分からないだろう。
        それが悪いっていうわけじゃなくてだな……それを自覚してるなら、別にセータの真似したり、あいつの通った道を辿る必要なんてねーんだよ。
        それに、そうやって自分にねーもんを羨めるなら、オメーもまだヒトの範疇だ。だったら、成長できねーわけねーからな。
        あいつが常備薬だとしたら、オメーは特効薬になれるかもしれねー、そう思えば、自分は教師に向いてないかもしれないなんて泣き言、出てこねーだろ(ニィと笑い) -- ゼンアード 2013-03-30 (土) 11:00:49
      • 分かってますよ。自分が教師に向かないかもしれない、なんてずっと思いながらそれを続けてられるようなシークエンス教授みたいな才能も、俺にはねーですから。
        常備薬と特効薬、か……結構、いい例えかもしれないですね。
        今の評議長職もそうですけど、あのヒトは自分の立ち位置を弁えてる。手を出さないほうがいいところで手を出さないことを選べているように、俺からは見えるんです。
        客観的に物事を捉える事が出来るから出来てるのかもしれないけど……なんか『そこにいること』だけで他人に影響を及ぼすことができる。
        本当に状況がどうしようもなくなってからでしか効果を発揮しないけれど……それでも、最後に頼ればなんとかしてくれるんじゃないかって思えてしまう。
        別に一緒にいて楽しいんじゃなく、楽だからこそ、本人が嫌がってても自然と人が集まるんじゃないかなとか、最近思いました。
        -- シロマル 2013-03-30 (土) 11:06:05
      • オメーも、大概惚れてんのな。(苦笑し)
        ……そうだな。まぁ、大体そんな感じかもしれねーな。
        あいつは、なんだ……その最後の手段として使われねーことも望んでるから、自分が動くまでもないことには手を出さないか、別で手を回すんだ。
        なんだろうな……これは、常備薬っていうよりむしろ。 -- ゼンアード 2013-03-30 (土) 11:07:39

      • 消火器、みたいな生き方なんだな、彼は。 -- 布織 2013-03-30 (土) 11:08:18

      • ………。
        -- シロマル 2013-03-30 (土) 11:08:42
      • ………。 -- ゼンアード 2013-03-30 (土) 11:09:01
      • ………。 -- 布織 2013-03-30 (土) 11:09:58
      • ……いや、流石にこの例えは、シークエンス教授怒るんじゃないですかね。 -- シロマル 2013-03-30 (土) 11:10:37
      • ……だな。褒め言葉でもなんでもねーしな。お前消火器みたいだな!って言われて喜ぶやついねーだろうし。
        なんか、言われてすげー納得しちまったが。ああー……って感じで。 -- ゼンアード 2013-03-30 (土) 11:11:35
      • では、これもまたここだけの話にしておこう。
        どうも口さがないのが許されるのは22までらしいからな。
        -- 布織 2013-03-30 (土) 11:12:42
      • んじゃ、オチもついたところで、失礼します。すいません、いい返事聞かせられなくて。
        あんまり授業に遅れるとゼンアード教授の可愛い可愛い娘さん、凍土の如く怒るんで。
        -- シロマル 2013-03-30 (土) 11:14:11
      • 可愛いが1個足りねーよ。 -- ゼンアード 2013-03-30 (土) 11:14:34
      • 細けーよ!!何基準だよ! -- シロマル 2013-03-30 (土) 11:15:06
      • ツンドラってやつだろ? -- 布織 2013-03-30 (土) 11:15:35
      • あの、歳が歳なんでマジボケなのか凍土と掛けて上手いこと言ったのか分かんねーボケやめてもらえますか。 -- シロマル 2013-03-30 (土) 11:16:15
      • いつでも来るといい。それまで、これは机に仕舞っておこう
        (第一種褒章のバッヂを揺らす) -- 布織 2013-03-30 (土) 11:17:10
      • ……それを受け取るときは、自分の力で取ろうと思ってるんで。
        それまで、待っていてくれるなら、その時は『本物』を用意して待っててください。

        褒章の国名の綴り、間違ってますよ。(指差し、軽快に笑いながら評議長室を去っていった)
        -- シロマル 2013-03-30 (土) 11:18:52
      • (言われ、褒章の綴りを見る。確かに、一文字重複している。国名を間違える褒章など存在しないので、それは偽物ということになる)
        ……そこそこ良い出来だと思ったんだがな、私は。
        (初老の老人は、悪戯がバレた少年のように、小さく笑った) -- 布織 2013-03-30 (土) 11:20:44
      • (肩を竦めて笑い、咥えていた煙草を消して、釣られるように笑った)
        (そのフェイクの褒章はフオリ自ら作ったものであるという。分かりやすい餌に釣られるかどうかを試したらしい)……良く言う。
        シロマルが見抜く方に賭けておいて。
        (パチン、と1G金貨を机に置き、笑いながら部屋を去る) -- ゼンアード 2013-03-30 (土) 11:23:43
      • 負けたのに嬉しそうだな、ゼンアード。
        (意地悪な質問が、老人から投げられる) -- 布織 2013-03-30 (土) 11:25:31
      • ……自分が賭けた何かが、何倍にもなって返ってきたことを。
        喜ばない教師なんていねーから、ですかね。
        (部屋の外、意地悪な問いかけに、シニカルな笑みを返して、男は扉を閉じた) -- ゼンアード 2013-03-30 (土) 11:27:53

      •     ◇  ◆  ◇  ◆  ◇

      • シロマル先生も、もう宮廷への推挙を断ること自体は諦めているようで、今急ピッチでカルマ君とゼニスに引き継ぎを行なっているらしく、
        時期が時期だけにあたしもあたしで余り動き回れなかったこともあって、しばらく三人とは会えていません。
        あたしも退院してしばらく経つので、そろそろ十四教室の卒業生で大学に残ってる人たちと集まって、
        また昔みたいに騒げたらって思います。

        十四教室の卒業生と言えば、この間卒業からずっと行方を晦ましてて少し心配だって言ってたション君が、
        ふらっとそちらの国に寄ったらしくて、あたしにも連絡がありました。
        何でも、ション君もション君でロレン君やエストと同じように世界を回っているようで、元気にしてたとのことです。
        ……それならそれで一言言ってくれればいいのに、と思うけど、男性ってそういうところあるよね、って一番近くにいる男の人を見て思ったりします。ふふふ。
        -- せつな 2013-03-31 (日) 10:24:07

      •     ◇  ◆  ◇  ◆  ◇

      • (荷物を運び込み、エプロンの裾で額の汗を拭う。道沿いの花壇の花に、後で水をやろうと思う。人ですら暑いのだ、彼らもきっと暑かろう)
        (最後の一箱を運び終え、一息つく前に、店の先に出る。何度やったかは分からないが、何度やっても飽きないことはある)
        ……うむ。(腰に手を当て、僅かだけ上を向く。そこには、自分でデザインした文字が看板の上に踊っていた)
        -- 芝虎 2013-03-31 (日) 10:31:55
      • にゃー……。やっぱり、ちょっち感慨深い物があるよね。
        (文字を目で追う。そこには、『Strawberry hometown』という文字が描かれている)
        (大学を卒業をしてすぐ、自分は大学の隣国にある実家へと戻り、半ば強引に親に自分の夢を伝えた)
        (その結果、ストロベリーサウンズの家からは放逐され、明日をもしれぬ身となったのだが、もとよりその覚悟を以って大学生活を送ってきた自分にとっては十分な想定が出来ていた)
        (大学の間に貯めたお金と、いくらかの借金をして、この建物を賃貸し、夢であった喫茶店を開くことにした)
        (魔術と全く関係ない分野に進むことを、親も、先生も嘆いていたけれど、どうしても自分はこの夢を叶えたかったので、後悔はしていない)
        -- 芝虎 2013-03-31 (日) 10:37:22
      • (大学生活を通じて、うちは思う。ずっと、うちが生きていくことが辛いと思っていたのは、体質のせいでも罪悪感のせいでもなく)
        (ただ、自分がそこにいていい保証が、どこにもなかったからだ。他人の家に、他人として暮らしていく生活が、自分自身の心をすり減らしていく感覚が、どうしようもなく辛かったのだ)
        (だったら、うちは、自分の叶えられなかった夢を、誰かの現実にしようと思った)
        (何時までも、変わること無くそこにあり続けて、何処にも行く宛のない、拠り所のない誰かがいつかたどり着くかもしれない場所)
        (そういうものにうちはなろうと、なってみせようとそう思ったのだ。誰でもないうちでも、誰かが帰ってくる場所にくらいはなれるんじゃないかと、そう思ったのだ)
        -- 芝虎 2013-03-31 (日) 10:42:52
      • (こちらの国に帰ってきて、その夢を叶えようと思った矢先に、この家屋に出会えたのは幸運だった。元より、誰かが夢を叶えようとしたその跡地だったのかもしれないと、うちは思う)
        (その誰かも、多分志半ばでその夢を諦めねばならない何かがあったのだろうけれど、だったら生きている自分がその夢を継ぐことで、その誰かも喜んでくれればいいと思う)
        (だから、うちはその看板に記されていた、知らない誰かの店名の上に、自分の苗字を足して、『Strawberry hometown』という名前を付けた)
        (ようやく開店の準備が出来た、生まれて間もない喫茶店であるけれど、こうやって、いなくなった誰かの遺志を継ぎ、次へと繋げていくことが、弱い弱い自分たちが達成できる、唯一の永遠であると思うのだ)
        (だから、ごめん、シバトラ。うちはもう少し、大好きだったキミの立場を借りたまま、誰かの夢が帰ってこれる場所を、ここで守ろうと思う)
        ……よし。感傷終了。さて、今日からがんばりますかーっ!!

        (っと。早朝というのも早すぎる時間にもかかわらず人の気配を感じて振り返る)
        (そこには、なんとも懐かしい顔がいた)……あ、れ?
        -- 芝虎 2013-03-31 (日) 10:51:06
      • (帽子の唾を上げる)……なんや自分、こんな朝早うから独り言て。大丈夫かいな。
        話には聞いててんけど、マジでこっちの国で店構えてんなぁ……驚くわ。
        -- ション 2013-03-31 (日) 10:53:13
      • いやいやいや!! こっちの台詞だから!!
        ふらっと一年近くいなくなったと思ったらいきなりのエンカウントって自覚あんの!? ……いやー、何処かで生きてるとは思ってたけど、流石のうちもちょっち驚いた。
        ちゅーか、何してんの。せつなとかめっちゃ心配してたんだかんな。しね!
        -- 芝虎 2013-03-31 (日) 10:54:58
      • 生きてて欲しいんか死んで欲しいんかどっちかにせんかい。まぁ、色々やっててん。便りがないんは良い便り言うてな。
        せつなにはちょっと前に連絡入れてん、したら自分こっちの国におる言うんで戻ってきた次いでに寄ろうか思うてたら、
        なんやストロベリーホームタウン言う店が新しく出来よるいう噂聞いて風俗店やと思って来たら自分やん、というな。待て、今のはボクが悪い。その荷物で殴られたらホンマに死んでまう。
        -- ション 2013-03-31 (日) 10:57:29
      • うちの感傷台無しにしてくれて他人の空似でないことは証明されましたが。(ドスンと荷物を下ろす)
        ちゃっかりしてるっていうか、ん、まあうちも卒業するまでこの夢については語らなかったからお互い様かにゃー。
        ほんで、なんじゃろ。しばらくこっちいるの? いるんだったらお金持って店に来てくれたらお客様としてもてなすけど。
        -- 芝虎 2013-03-31 (日) 10:59:35
      • 金取るんかい。旧知の仲やろ。奢ったれやそこは。
        あー、まあスマンけどすぐまた旅出るねん。今もこんなとこでのんびりしとるわけにいかんお忙しい身分にあらせられるんでやな。(バックパックを下ろし、その中からファイルを取り出しながら言う)
        ちょっと顔見てこ思うただけやねん、んで、時間あればちょい話せるかなとか。まあちょっと話せたんでもうええけど。
        -- ション 2013-03-31 (日) 11:01:55
      • 何を業界人のようなことを。今のうちにサインもらっておいたほうがいい系の生き方してるん?
        サバサバしてんなションち。うちが誘ってるんだからお茶の一杯くらい有料で付き合ってくれてもいいじゃん?
        ま、顔見るくらいでいいなら一生分焼き付けていくがいいさ。(胸を張って笑った)
        -- 芝虎 2013-03-31 (日) 11:06:02
      • (その様子は、大学で同じゼミに籍を置いていた頃と何も変わっておらず、少しだけ安心した)
        まあ、じゃあお言葉に甘えて一言だけ言うとこかな。

        自分さ。
        『もうそろそろ、普通の人間として生きて、ええんちゃうかな』

        (相手の目を見て、心をこめて、その『言霊』を送った)
        -- ション 2013-03-31 (日) 11:25:31
      • (その言葉は、深く心に沈んでいくような感覚を齎した。違和感を覚える前に、身体に変化が表れる)
        (――疼きが、明確に止まる)
        (常に身体の中に生じていた、熱さにも似た疼きが、すっと、水に溶けていくようになくなった)
        (その変化が余りにも、魔法のように劇的すぎて、声も出せないままションちの顔を見る)
        -- 芝虎 2013-03-31 (日) 11:34:15
      • (その表情は、一言で言えば『傑作』だった)
        (ありえない程の幸福を与えられて、戸惑う子猫のように見えて、ただその表情を目の前のシバトラ・ストロベリーサウンズにさせることが出来たというだけで)
        (この数年、魔法医師の免許を取るために奔走していたことも)
        (職業の自由を奪われるのが怖くて、法を犯してまで16階梯に上がらずにいたことも)
        (その全ての苦労が、その一瞬で報われてしまうほど……シバトラにその表情をさせることが出来たことは、傑作だった)
        ……ほい、診断書。(ファイルを押し付け)前もって記載しといたわ。
        んで、そん中に医師バッチも入ってんねんけど、もう要らんし記念に持っとき。
        どうせ、次の階梯審査が控えてるから次ボクが16階梯になったら取られるし、要らんねん。
        正式な魔法医の診察と診断、処置によって治療が完遂した最初で最後のクランケやから、今後も自分、胸張って生きてけるやろ。
        ほな、邪魔したな。あー……疲れたわ。(大きく伸びをして、笑う)
        (ようやく、肩の荷を降ろせたような、そんな初めて感じる清々しさが感じられて、自然に笑えた)
        -- ション 2013-03-31 (日) 11:47:52
      • (余りにも、全てが唐突過ぎて、混乱していた)
        (ションちが、たったそれだけの為に今までずっと姿を晦ましていたのか、とか)
        (彼が必要以上に金銭に厳しかった理由とか)
        (そういうものが立て続けに自分の頭の中で繋がっていき、その全てが自分を向いていたのだと理解して)
        (自然と口から疑問がこぼれ落ちた)
        ……なんで……?
        -- 芝虎 2013-03-31 (日) 11:50:10
      • (なんで、か。それは、自分も聞きたいところだった)
        (最初に、そのサキュバス体質の発露で全裸で部屋に駆け込んできた時からだろうか)
        (シークエンス教授にせつなと共にシバトラの体質について聞いた時からだろうか)
        (なんとなく、自分はそうするために自身の『言霊』という物を受け継いで来たのだとそう思っていた)
        (それは、使命感であり、理由ではない。だったら、理由とはなんだろうと思う)

        (どうしても、それを言うには気障ったらしい言葉になってしまう)
        (シバトラがそんな過去を背負っていてなお、朗らかに生きてるんが無性に腹が立ったとか)
        (そんな辛い状況におりながら、他人に心配されたくないから笑顔でいられる強さが気に食わんかったとか)
        (一時期惚れとった相手のためなら、別に苦労してもええやろと思ったからとか)
        (そういうのは、ボクらには似合わんと思うたから)

        ――見せてもろうた、『ラベンダー畑』のお礼やんな。
        (肩を竦めて、笑いながら言霊使いは嘘を吐いた)
        -- ション 2013-03-31 (日) 11:57:04
      • ラベっ…!!(ぐぁぁ、と顔に熱が上がってくるのを感じる)
        (込みあげてきていた涙や感動が、一気に怒りや喜びと混ざって、どうしようもない空気にうちは小さく笑った)
        ……ばーか!! あんたって、ホント、バカ!!!
        (大声で叫び、1G金貨を笑いながら投げる)
        -- 芝虎 2013-03-31 (日) 12:01:07
      • 男にとっては最高の褒め言葉やんな。おっと。(片手で金貨を受け取る)
        なんやの、お釣りかなんか?(指で金貨を弾く)
        -- ション 2013-03-31 (日) 12:02:15
      • ……そんな感じかな。
        そこの喫茶店、今日開店するんだけど、初日だけ今からやるんだって。
        仕方ないから、優しいシバトラちゃんは、旧友に奢ってやるのよ、ありがたく思えよな!!
        -- 芝虎 2013-03-31 (日) 12:04:08
      • そか。(弾いた金貨を手のひらの中に仕舞う)
        (店の中に入っていくシバトラの耳が赤いことに気づき、ボクは気づかれんように小さく笑い、折角優位に立てる状況を、少しだけ楽しむため、問いを投げた)
        最初の客、ボクでええん?
        -- ション 2013-03-31 (日) 12:05:44
      • ……あんたが、いいのよ。言わせんなアホ。 -- 芝虎 2013-03-31 (日) 12:06:30

      •     ◇  ◆  ◇  ◆  ◇

      • ション君、今や大学の四人目の16階梯としてそこそこ有名になってて、同じゼミ生として教室にいたっていうの凄いことのように思えてしまいます。
        時々ニュースにもなってるけど、現在は凄く北の方で魔術師として活躍しているらしくて、それを聞く度違う世界の人になっちゃったんだなと思うんですが、
        そう思った直後とかに、端末にギャグみたいなメールとか来るので近いんだか遠いんだかわからない人になりつつあります。
        トラの店も、アニキたちに宣伝してもらってから順調らしいし、皆それぞれの道を歩いているんだと思うと、
        あたしも頑張ろうって思えます。今頃ですがおじちゃんについて大学に来て、本当に良かったと思ってます。
        -- せつな 2013-03-31 (日) 12:17:45
      • (二枚目に続く) -- せつな 2013-03-31 (日) 12:18:10
  •  
  •  
  • 【問8 8】追試 -- 2013-03-17 (日) 07:22:19
    • (それからの一週間、何が変わったかと言われれば……大きく変わったと言える)
      (人生というものは意外にも簡単に変化するもので、そんなスイッチが切り替わるように何かが変わってしまうような物語は、もはや人生だ)
      (ただ一つ、学んだことは、自身の何かが変化したところで、それは枝葉の話であり、大本の大樹にはさほど影響がないということだ)
      -- シークエンス 2013-03-17 (日) 07:25:41
      • (僕は、アグニと同じ存在となった)
        (アグニのように、この世の裏側に『スアルーガの門』を通じて続いている『混沌』の中のセータ・シークエンスという属性……)
        (まあ、僕ではない僕みたいな訳の分からないものになってしまった)
        (だからといって僕自身の精神に何か変化があったかといえばアグニ程劇的な変化はなく、反応としてしっかりとセータ・シークエンスの反応を返せていると思う)

        (ただ一つ。身体的な物を除けば)
        (僕は、僕の身体を動かすことに、苦戦していた)
        (今まで出来ていたはずの簡単な動作も、リハビリを超えて漸く出来るようになるという始末)
        (実際、歩行という行為が十全に行えるまで丸三日を要した)
        (分かるか、この歳で既にせつなに肩を借りながら歩行のリハビリをする僕の苦しみが)
        (しっかり歩けるようになったとき、もういい歳なのに涙腺が緩んだんだぞ)
        -- シークエンス 2013-03-17 (日) 07:31:18
      • (話を戻す。そんな身体の状態だ、仕事は少しの間休みを貰った)
        (一瞬で承認が下りた当たり、未だこの国にとって僕という『存在』はともかく、『個人』は必要ないらしい)
        (だいぶ口惜しかったが、この身体で何を言っても説得力は欠片もない)
        (その後、見知らぬアドレスからリハビリを頑張ってくれ、と一言だけの味気ないメールが端末に届いた)
        (題名が「らぶりー☆ふぉーりんより」となっていたのであの爺は復帰次第殺す)

        (そんなこんなで、僕は二週間経った今でも自宅療養状態になっていた)
        (歩行は出来る、生活もそれほど苦ではなくなったが、前にも増して不器用になった)
        (それはそうだろう、各動作を意識して動かさないと指先ですら上手く動かないのだ)
        (着火器ですら苦戦していた僕は、箸も持てないという状態にまで陥っていた)
        (箸が持てないのは不味い。歩行練習以上に、せつなに物を食べさせてもらうという行為に感じる苦痛が、僕の胃をイジメ抜くからだ)
        (そしてそれをわざわざ見に来るせつなと同じゼミ生がいる限り、僕の胃はオーケストラを奏で続ける)
        (だから今日も、晩御飯を前にして、僕はこちらの皿からあちらの皿まで豆を運ぶといった基礎トレーニングを行なっている)
        -- シークエンス 2013-03-17 (日) 07:38:48
      • (――だが、侮るな)
        (僕はこう見えても国営立魔道大学舎・評議長、セータ・シークエンスだ)
        (既に、豆くらいは箸で掴み、掴めはしないが、落ちないように橋を作って下から掬い、隣の皿に移すくらいのことは出来ている)
        (20個余りの豆を汗だくになって運ぶ自分の姿は、さぞ滑稽だろうが、それも今日までだ)
        (あと1個、あと1個こちらの皿に落とさず渡せたら、僕は、もう普通に箸が使える証明としていいと思っている)
        (だから――)
        -- シークエンス 2013-03-17 (日) 07:43:44

      • ……うーん?
        -- せつな 2013-03-17 (日) 07:45:02

      • (――と)
        (せつなが、晩御飯を持って来ながら呟く、どこか上の空な様子で僕の肘を押したので)
        (カン、カンカン……と箸の先から豆がこぼれ落ちて)
        (僕の280回目の挑戦もまた、失敗に終わった)
        (悔しいのでノーカンにしようと思う。指で摘んで皿に放る)
        ………。(小さく嘆息して、せつなに尋ねる)……どうした?
        -- シークエンス 2013-03-17 (日) 07:48:31
      • ……あ、ごめんね、おじちゃん。

        あたし、どうしても……一つだけ、分からないことがあるんだ。
        -- せつな 2013-03-17 (日) 07:50:13
      • (僕の嘆息は深くなる)
        (既に、問題は全ての解答を終了した。セディユは深層心理から切り離され、少なくとも10年20年では戻ってこない)
        (戻ってくるとするなら、それはせつなの次の世代が大人になる頃ということになる)
        (それまでには多分、僕の関係ない人間が僕の知らないところでこれを解決してくれるのを祈るばかりだ)
        (エクアと共に隣国へと戻っていったギアが、使命感を帯びてその研究に当たると言っていたから、完全に知らない人間ではないかもしれないが)

        (結果として不自由さは残ったが、僕自身も生きているといえば生きている)
        (何処かに行くなというせつなの願いも、何処にも行くことが出来ないという皮肉な形で今は達成されているし)
        (何も問題がないと言っていいだろう)

        (胸部にせつなが施した『スアルーガの門』の処置はそのままにしてある)
        (これを閉じた時に生命維持に支障が出ないとも限らない)
        (見栄えは悪いし、腹部のそれと違って自由に閉じれないから、僕の人生から全身浴という選択肢が永久に失われた)
        (元々長湯する方ではないのでそれほど大きな損失ではないから問題なし)
        -- シークエンス 2013-03-17 (日) 07:55:45
      • (今のところ剣馬の方にセディユ機関が接触してくることもないらしい)
        (引き続きアグニは剣馬に着かせているが、夫婦生活に支障があるということで、たまにこちらに戻ってきていたりする)
        (夫婦生活に支障があるという単語が既に僕には無駄にダメージ大きい)

        (せつな自身の卒業論文も順調で、エストナ魔術師階梯・根源魔術分野・11階梯魔術師として大学に名を刻むだろう)
        (まあ、僕が喜ぶことでもないが、やはり自分の生徒が優秀な成績を残すことは嬉しくあったりする)
        (それも問題なく進んでいる、いよいよ以って何が分からないと言っているのか、僕には理解出来なかった)

        まだ、何か躓いている問題でもあるのか、せつな。
        ……一人で抱え込むのを辞めたなら、教えてみろ。解ける問題かもしれんしな。
        -- シークエンス 2013-03-17 (日) 07:59:49
      • うん……。
        あの、先に一つだけ、聞いていいかな、おじちゃん。
        おじちゃんは、ギアさんの召喚術の前に飛び出してきた時、最初から自分の生命を代償に、
        あたしにスアルーガの門で召喚してもらうことを狙ってたんだよね?
        -- せつな 2013-03-17 (日) 08:02:12
      • ……まあ、そう、だな。狙っていたと言えば語弊になるが……。
        僕は、あの状態では、ああいう選択肢を選ぶしかないと、覚悟はしていた。
        -- シークエンス 2013-03-17 (日) 08:03:14
      • じゃあ、もう一つだけ。
        と、いうことはだよ?
        おじちゃんとしては、もしその選択肢を選んだ時、
        結果的に今の状態に落ち着くだろうって想定は、あったんだよね?
        -- せつな 2013-03-17 (日) 08:04:43
      • そっちの質問も……イエスと返せば語弊があるが。
        一応、選択肢として考えてはいたから、多少のズレはあるが想定の範囲内ではあった。
        分の悪い賭けではないと思っていたしな。何度も言うが、僕はせつななら出来ると思っていたからな。
        (そういう類の話か、と小さく肩を竦めて、自分の生徒を認めた)
        -- シークエンス 2013-03-17 (日) 08:07:17

      • ………。
        ………?
        ………うん?
        -- せつな 2013-03-17 (日) 08:07:58
      • (だが、いつもなら喜ぶはずの僕の褒め言葉にも、せつなは小さく首を傾げ、まだ納得できない表情を見せる)
        (少しだけ僕も考えてきたが、何を問題にしているかも分からない)
        -- シークエンス 2013-03-17 (日) 08:08:56
      • むむむ……余計わかんなくなってきた。
        ちょっと整理していいかな……。
        つまり、前提条件はこうだよね。
        おじちゃんは、自分の生命を犠牲にしてあたしを助けることで、結果としてあたしが再召喚した今の状態になることを知っていた。
        これでいいのかな?
        -- せつな 2013-03-17 (日) 08:10:29
      • ……まあ、かなり大幅に省略すると、間違ってはないな。
        何なんだせつな、何か問題があるのか、それに。
        -- シークエンス 2013-03-17 (日) 08:11:29

      • ……うん。
        じゃあ、何でおじちゃん、あんなこと言ったんだろうって。
        それが……考えても、考えても、わかんなくて。
        -- せつな 2013-03-17 (日) 08:15:36

      • (その言葉に――)
        (背筋に、戦慄が走った)
        (一気に冷や汗が湧き、そして、自分の無知蒙昧さというか油断というか)
        (そういったもの全てを後悔し、せつなの思考と記憶の優秀さを呪った)
        -- シークエンス 2013-03-17 (日) 08:18:18

      • おじちゃん、言ったよね。
        約束は、守れそうもないって。
        それが、ずーっと頭の片隅から離れなくて、ずーっと考えてても分からなくて……。
        そもそも、あたし、おじちゃんと約束みたいなことしたかなあ、ってところまで分からなくなってきて。
        ずーっと記憶を遡って考えてるんだけど……全然わかんなくて。
        あ、でも、おじちゃんが……その、ギリギリになってでもあたしに伝えたい言葉だったんなら、あたし一人で解決すべきかなって。
        この二週間ずーっと考えてて……ごめんなさい。
        -- せつな 2013-03-17 (日) 08:21:27
      • (言った)
        (確かに言った)
        (確実に死ぬだろうという一撃を食らい、僕の口はそんなことを口走った)
        (覚えている)
        (それこそが、自己が連結している証左だと喜べばいいんだろうか)
        (でも、その代償としては、この状態は余りにも針の筵じゃないだろうか)
        (挙動不審になりながら、せつなの様子を伺う)
        (まだ、何かピンと来ていないような表情で頭を捻っている)
        -- シークエンス 2013-03-17 (日) 08:23:59
      • ……一つだけ、一つだけあたしが思い当たることが、あるんだけど。
        でも、関係なかったら、少し恥ずかしいことだし、恥ずかしい割に全然違うないようだし、
        そのおじちゃんから貰った前提の上では矛盾しちゃうんだよね。
        約束らしい約束って、その、卒業まで待っていてくれるって約束かなと思ったんだけど、
        でもそれって、ほら! おじちゃんが死んじゃうのを覚悟しての話なら、その、繋がるけど、おじちゃん自分が帰って来ることを確信してたなら、
        約束も守れるなってそう思ったから、多分違うことなんだろうなって、思って! わかんないなぁ……むむむ。
        -- せつな 2013-03-17 (日) 08:27:04

      • (もう、その時点で全ての条件は出揃っている)
        (過去問と合わせれば、完璧に解答は導ける内容になっている)

        (僕は、アグニとの同化で、アグニが必死に隠してきた事実の一部を知ることになった)
        (頑なにその感応反応を恐れて僕と同化しなかった理由は、自分が妹であることを隠したいという理由だった)
        (完全なる区別のある他者だったバージルと僕でさえ記憶の共有が出るほどの感応反応を、同化なんて事を行った上で隠し通すことは不可能なのだ)
        -- シークエンス 2013-03-17 (日) 08:30:06
      • (だから僕はあの瞬間、せつなと同化召喚をしなければせつなも自分も危ないと思ったあの瞬間)
        (自分の内部に存在している何かが、せつなに知られることを全て覚悟した)
        (それは、自身でも自覚のない何かである可能性が非常に高かったから、保険として僕はせつなに告げていたのだ)
        (今となっては、思い出すのも顔から火が出そうなその言葉を)
        -- シークエンス 2013-03-17 (日) 08:31:58

      • (しかし。ここで矛盾が生じる)
        (その感応反応が起こっていてなお、その言葉の意図にせつなが気づかないのは明らかなる矛盾だ)
        (指摘するのも憚られるような、単純な矛盾であり、もしかしたら感応反応は起こっていないのではないかという説が頭に閃く)
        (でも、例えそうだったとしても、それは僕と同化したときに『感応反応』に関する知識が一つでも流れていればせつななら辿り着ける解答でもあるだろう)
        (いや、もっと言い換えてもいい、せつな程の優秀な生徒であるなら、類推で解答にたどり着いてもいいくらいの問題だ)
        (なのに、せつなは)
        (未だ、疑問符を浮かべて首を傾げている)
        (それは……不自然が過ぎるのではないかと。僕はそう思った)
        -- シークエンス 2013-03-17 (日) 08:35:27

      • ……せつな。
        お前は本当に、その問題、分からないのか
        -- シークエンス 2013-03-17 (日) 08:36:29

      • ……え!?
        ……うん。
        -- せつな 2013-03-17 (日) 08:37:05

      • (僕は思う)
        (ずっと、問題を出すのは教師の仕事だと思っていた)
        (それを回答するのが生徒の仕事で、それに解答を与えるのもまた教師の仕事であると)

        (いつか、僕はせつなに言った)
        (――前提を疑えと)
        (当たり前のように存在する、ルールそのものを疑えと)

        (だから、僕は思う)
        (この問いは、本当は誰が、誰に投げかけているモノなのかと)
        回答を求められているのは……どっちなのかと
        -- シークエンス 2013-03-17 (日) 08:40:02

      • (もう一度だけ、尋ねる)

        ……本当に、分からないんだな。
        せつな。

        (――僕は、左手を、せつなの頬に添えた)
        -- シークエンス 2013-03-17 (日) 08:41:31

      • うん。
        -- せつな 2013-03-17 (日) 08:42:05

      • (その返答は、あまりに即答で)
        (そして、頬に触れてもせつなはまだ何も分からない顔をしていたので)
        (僕は、確信する)
        (この問題は、僕が回答すべき問題であることを)
        (せつなの口元が少しだけ笑ったように見えたのは)
        (きっと気のせいではないと思う)

        (僕は――回答を口にした)
        -- シークエンス 2013-03-17 (日) 08:45:23



      •                   ―――回答 了 -- 2013-03-17 (日) 08:46:57
  • 【問8 7】それぞれの正解・不正解 -- 2013-03-17 (日) 05:54:18
    • ……本当に。
      貴方という人間は、他人に甘すぎる。
      -- ギア 2013-03-17 (日) 05:56:46
      • (せつなの右手が、僕の意思によって動かされ懐の煙草を探ろうとして、引っ込む)
        (小さく嘆息して、振り返る。辞めたのはもう何年も前だというのに、最後まで懐を探って煙草の箱を探す癖だけは抜けなかった)
        (目線の高さがせつなの身体の中にいても変わらないのが悲しいが、せつなの声で呟く)
        ……違うな。
        僕は、ただ身内に甘いだけだ。
        僕は、最初から言っていたし、思っていただけだ。
        僕は、僕の生徒だけは、助けると。
        -- シークエンス 2013-03-17 (日) 05:59:47
      • それが……たったそれだけのことが、貴方が生命を差し出して、
        俺なんかを助けようとした理由ですか。シークエンス教授。
        何もない、空虚そのものである俺と、普遍存在であるセディユを【傷】にして【繋がり】を切り離すなんて魔法で。
        ……そんな姿になってまで。
        -- ギア 2013-03-17 (日) 06:01:46
      • 言わなきゃ伝わらないなら、何度でも聞かせてやろう。アグニも、お前も……そんなところに引っかかるんだな。
        僕が、僕の生命を差し出して、助ける相手としての条件は。
        ――僕の生徒であるという、ただそれだけで、十分なんだ。
        十分、過ぎるんだよ。

        僕は全て僕のわがままで、誰かを助け、そして訪れた結果がこれだ。後悔なんて有るわけがない。
        ずっと、僕が憧れていた生き方を、否定してくれるな、ギア。
        お前がどんな事情でセディユに肩入れしていたかも、僕を殺したかも、せつなを傷つけようとしたかも、僕は問わない。
        ただ、僕の生徒だったというその理由だけで、救われろ
        それが、僕という人間がここまで生きてきた意味そのものだからな。
        -- シークエンス 2013-03-17 (日) 06:05:13
      • (レネスが。シロマルが覚えていた感情を。長い遅れを以って、俺も実感することになる)
        (どんな形であれ、一度その学び舎で師弟の、生徒と教授の関係にあった者には)
        (どんなに力をつけても、どんなに相手が衰えても――最後まで、超えることが出来ない壁となる者であってくれることを)
        ……(唇を噛む。千切れる程に)
        (口の中を血の味が満たし、生まれて初めて俺は、悔しいという言葉の意味を、知る事が出来た)
        -- ギア 2013-03-17 (日) 06:07:57
      • 冗句じゃないが、刹那的な応急処置だ。いくら根源魔法だからといって、永遠に万能というわけじゃない。
        いずれ、僕が死んだ後、20年30年もすれば構成が綻び、世界と切り離したセディユという存在はまた人の深層心理に潜むことになる。
        僕程度の人間が生命を掛けても、いや……僕程度の人間が生命を掛けたにしては上出来な対処法だと思う。
        その20年の努力を……僕が成せなかったことを、お前たちに託してもいいんじゃないかと、今日そう思えた。
        スアルーガの門を自力で開いてみせたせつなを見て。僕は、僕の四十年余りが正しかったと思うことが出来た。
        こんな簡単なことに気付くまで、僕は40年以上も掛かってしまったんだ。
        例え、誰かが死んでも、そこで話は終わりじゃない。
        ずっと、受け継がれ、続いていくんだ。人の中に残り、本人も気づかない何かになって花を咲かせるんだ。
        -- シークエンス 2013-03-17 (日) 06:13:01
      • 僕は40年余りで孤独になってしまったと思っていた。親友は去り、消え、大切だった場所はもう僕達の匂いがしない。
        身体は衰え、昔抱いていた夢は重くて捨ててしまった。心は荒み、他人の輝きに目が開けていられなくなる。
        でも。僕がここまで来れたのは……こうやって何か大切なモノを守ることが出来たのは。
        そのいなくなってしまった誰かが作ってくれた僕だったからだ。
        だから、死は完全な離別なんかじゃない。
        あいつらがいたから。あの馬鹿騒ぎがあったから。失い難い場所が、記憶が、思いがあったから。
        ――僕なんかでも、何かを成せたんだよ。
        だから僕も、後は誰かに託してもいいんじゃないかって、そう思ったんだ。
        -- シークエンス 2013-03-17 (日) 06:16:50
      • (せつなに身体を明け渡す。中々に自身の身体の形を意識して姿を形成するのは難しかった)
        (懐を探ると、自分で作りだした煙草が収められていて、小さく笑う。身体の一部、精神体の一部であるのだからそれは煙草でもなんでもないのに)
        (尻を指先で叩いて咥え、指先で火を付けた。不器用な僕でも一発で着く当たり、都合がいい。煙草の味などはしないが)
        ……もう、いいだろう。老人の説教程眠くなるものもない。
        ギア。お前の話は、ここで終わりだ。
        お前はこれから、お前の話を自身の力で紡いでいく必要がある。
        そこには、僕という登場人物は、不要なはずだ。
        元気でや――。
        -- シークエンス 2013-03-17 (日) 06:24:16
      • (何かを、格好良くキメようとしたおじちゃんのその身体を)
        握り潰れる程の勢いでひん掴む
        -- せつな 2013-03-17 (日) 06:25:18
      • (目の前で多少不定形だった恩師の顔が握りつぶされた時の生徒の表情) -- ギア 2013-03-17 (日) 06:25:58
      • ……!?
        せつな!? せつなさん!? (強引に引っ張られていく叔父霊)
        -- シークエンス 2013-03-17 (日) 06:26:45
      • (無言でおじちゃんの死体の場所に行き、霊をそこにぶち込む)
        アグニさん。おじちゃんの門が失われても、まだあたしの門が開いてるから会話出来るよね。
        答えて。……最初、おじちゃんが燕舞天神社の裏でお腹に致命傷を負った時それは確かに致命傷だったんだよね?
        -- せつな 2013-03-17 (日) 06:30:54
      • (はぁ、と嘆息する)
        (一度感応化した相手と同化召喚状態になった相手は、互いの思考の一部を共感化してしまう)
        (バージルとやらの深層心理に入り込もうとした時に、元主様(セータ)がその記憶の一部を共有してしまった現象に似た感覚を、常に持ち続けることになる)
        (故に、元主様が何を考えているか、儂には分かっておったから手を出さなかったのだが……もしかしたら最悪の結果を招いたのかもしれんと小さく笑う)
        左様。何せその一撃は内臓の一部を損傷する、致命傷であったからな。
        -- アグニ 2013-03-17 (日) 06:34:25
      • (頭のなかで構成を追いながら、二年前、トラの事件の時全てを参照したおじちゃんの腹部の傷についての考察を思い出す)
        (あそこに書かれていたことが真実であるならば、真実であることを信じながら、あたしは呪文を紡いでいく)
        もう一つ質問。じゃあ、おじちゃんが助かったのって、傷口を『スアルーガの門』で埋めたからだろうけど、
        本来おじちゃんの身体の中にあった臓器は、どうやって補っていたの。答えて。
        -- せつな 2013-03-17 (日) 06:37:55
      • 答えよう。
        それは、儂が補った。儂というよりは、正確には儂の大本となった『混沌』そのものでの。
        儂が、セータ・シークエンスの妹の属性の具現体であるのと同じように、セータ・シークエンスの失った臓器という属性を以って、その部分を補った。
        これで満足かの、せつな。
        -- アグニ 2013-03-17 (日) 06:40:41
      • うん
        十分。
        ありがとう、アグニさん。
        あたしはだったら……おじちゃんの心臓くらい、補ってあげることが出来るよね
        (呪文は完成する。スアルーガの門を、おじちゃんの身体に直接開く、おじちゃんがアニキにしたのと同じ事を、あたしも行う)
        (兄妹だから出来ないわけがないなら、教師と生徒なんだから、出来ないはずがないって、今のあたしなら思えるから)
        (横たわる、血の気のないおじちゃんの胸に突き刺さった鉄柱が、おじちゃんの胸に開いた胸の『門』に飲み込まれていき、消えた)
        (後には、ただ胸板に穴の開いたおじちゃんの身体だけがある)
        -- せつな 2013-03-17 (日) 06:44:18
      • ……とんでもないことをする娘子じゃの。
        いや……。
        (笑う。どうしても、笑いを止めることが出来なかった)
        (自分が命を落とし、混沌の中のイブミア・シークエンスという属性へと昇華された後、自分が最初にやったことは、兄の安否を確かめることだったから)
        (そして『混沌』からそれは見えてしまう。最愛の兄が腹部を貫かれて殺される、その映像を)
        (だから儂は。私は……『混沌』を兄の生命を維持する臓器へと作り替えて、彼の腹部の口となった)
        本当に。二度も同じ思いを誰かにさすなど。……戯けもいいところじゃな。

        じゃが、問おう。
        仮に、それを以ってセータ・シークエンスの胸の穴を無効化したとしても、その生命が戻るわけではない。
        そこはどうする?
        -- アグニ 2013-03-17 (日) 06:48:35

      • (首を振る)
        あたしは。
        あたしは、まだ魔術師としても、人間としても未熟だって分かったから。
        何もかもを自分で出来るわけじゃないし、何かを決めたと思ってもそれが正解かどうかずっと迷ってた。
        でも、もう背伸びするのは辞めた。そうやっておじちゃんと一緒に歩いても、結果として、迷惑掛けるばっかりだから。
        だからあたしは。おじちゃんに任せる
        -- せつな 2013-03-17 (日) 06:50:56
      • おじちゃん。
        あたし、ずっと言おうと思ってたんだ。
        おじちゃんがあたしを見て、どう思っていたのか、ちゃんと分かる歳になったから。
        ずっと辛かったんだよね。自分のやりたいことのためにアニキを犠牲にしようとしたこと。
        だから、そうやって傷つけようとした相手を側に置くことで、その罰を受けようとしたんだって。
        あの時、あたしはおじちゃんが何処かに行ってしまうのが嫌で、良くわかってないのに「許す」って言っちゃったから。
        そんな中途半端な許しで、何年も生殺しにしてしまったことが、あたし自身の罪だったんだって、ようやくわかった。
        -- せつな 2013-03-17 (日) 06:53:26

      • だから、もう許すなんて言わない。
        軽々しく許してしまったら、おじちゃんはそうやって自分を傷つけ続けるって知ったから。
        あたしのために、誰かのために自分の生命を投げ出してしまうって知ったから。

        だからおじちゃん。
        今度は自分で選んで
        あたしなんかの許しを理由にして生きないで。
        おじちゃんは誰かに許されないと生きてけない程罪深い人間なんかじゃない!!
        あたし知ってるよ!?
        おじちゃんの優しいところも!!
        おじちゃんの格好いいところも!!
        ずっとおじちゃんがあたしを見てくれてたのと同じように、あたしもおじちゃんを見てたから!!
        だから、勝手に自分を罪人だと思って自分で傷つける生き方なんて、もうしないで欲しいんだ!!
        あたしは、おじちゃんに、生きていて欲しいから!!
        だから、おじちゃん、選んで!!
        生きたいって、思って……!!
        -- せつな 2013-03-17 (日) 06:58:27

      • アグニさんが、おじちゃんが、門の向こうの『属性』になった時、それがどれだけ『本人』なのかあたしには分かんない!
        でも、あたしはそれでも、おじちゃんに何処かに行ってほしくない!
        アニキみたいに、お父さんみたいに! もう一度戻ってくるとは限らないなら尚更!
        だから、おじちゃん。おじちゃんに決めて欲しいんだ。
        おじちゃんがその身体をアグニさんがしていたように間接的にでも動かして、生きていたいって思うなら。
        立ち上がって、あたしと家に帰ろう……?
        もう。
        もう、誰かがいなくなるなんて。
        嫌だよぉ……
        (ぼろり)
        (ぼろりと、涙が流れる)
        (アニキが旅に出た時出た涙と同じ涙が)
        (強さの裏に閉じ込めておいた幼い頃の本城せつなの涙が)
        (ぼろぼろと頬を伝った)
        -- せつな 2013-03-17 (日) 07:02:45

      • (その泣き声を聞きながら)
        (一分待ち、二分待った)
        (セータ・シークエンスの身体は動かない)
        (それは、軽々しく決めていいことではないから)
        (実際のところ、自分がイヴミア・シークエンスと同様の思考をしているからといって、それが本人と証明しきれないというジレンマは儂の中にもある)
        (だからこそ儂は、アグニとして、彼をぬか喜びさせない形で彼の元へと戻ることを願った)
        (自己の同一性の証明が出来ないという事実は、ションの事件で元主様の目の前で二つに裂けたグレナデン姉とやらの魔術が記憶に新しい分、辛い)
        (昨日の自己が今日の自己と連結しているかという証明が出来ないのと同じで、一度途切れた意識を再構築したところで、それが本人かどうかは本人が決めるしかない)

        (五分待ち、十分待った)

        (――セータ・シークエンスは、起き上がらなかった)
          -- アグニ 2013-03-17 (日) 07:07:35




      • ………つな。
        -- シークエンス 2013-03-17 (日) 07:09:51
      • (僅かに聞こえたその声に)
        (涙でぼやけた視界で、あたしは、おじちゃんの顔を見る)
        -- せつな 2013-03-17 (日) 07:10:38
      • (それだけは)
        (どうしても、伝えないといけない)
        (辛さを乗り越え、喉の奥からようやくようやく絞り出したような声で、呻く)
        ……ごめん
        -- シークエンス 2013-03-17 (日) 07:11:53
      • (謝る言葉に、視界が、またぼやけた)
        (あたしは小さく頷こうとしたところで、おじちゃんの言葉が割り込んでくる)
        -- せつな 2013-03-17 (日) 07:12:36
      • ……からだの。
        うごかしかたが。わからん。
        (必死で)
        (脳に直接信号を飛ばして身体を動かそうとしているのだが)
        (どうしても、それが出来ない)
        (遠隔操作で動かしている人型の機械で、更に人型の機械を動かしているようなものらしく)
        (僅かに腕が持ち上がる程度で、正確に身体を動作させることが出来ない。かなり、辛かった)
        -- シークエンス 2013-03-17 (日) 07:15:11

      • (――それは)
        (あたしが、本当に聞きたかった言葉じゃなかったけれど)
        (それでも、不器用に伝えてくれたおじちゃんの言葉が嬉しくて)
        (あたしは、動かないおじちゃんの胸に飛び込んで、大声で泣いた)
        (喉が枯れるまで、目が真っ赤に腫れるまで、ずっと、ずっと泣いた)
        -- せつな 2013-03-17 (日) 07:16:37
      • (大学の構内。大声で喚けば、セディユの深層心理が隔離された今、人だって通るし不審がられる)
        (そうでなくても往来で血だらけで抱きあう男女がいて、その片方が評議長であれば騒ぎにもなる)
        (すぐに医療班が呼ばれ、ある程度の処置はされるだろうし、もう、あまりここには問題は残っていない)
        (だから、もういいだろう)
        (最後くらい、僕の自由にさせてくれても)
        (僕は、僕の身体が動かないという理由を以って、せつなが胸で泣くこの状態を静かに受け入れ)
        (唯一動く左手で、せつなの頭を、一度だけ撫でてから、静かに目を閉じた)

        (ごめん)
        (僕は、生きたいよ。せつな)
        -- シークエンス 2013-03-17 (日) 07:19:46



      •                   ―――せつな・本城の問題 了 -- 2013-03-17 (日) 07:21:05
  • 【問8 6】解答 -- 2013-03-11 (月) 03:51:14
    • 力なく、自分の身体にもたれ掛かって来るおじちゃんの身体。
      それを片手と胸で支えていたから、あたしは鼓動がなくなるその瞬間までを感じ取ってしまっていた。
      何か、取り返しの付かない物が指の隙間から抜け落ちていくような喪失感と共に、静かに『それ』は消えていった。
      -- せつな 2013-03-11 (月) 03:56:50
      • 温かい腹部が、目も眩むような凄惨な赤に彩られている。
        それらが全て、自分を庇ったおじちゃんの身体から流れ出た物であることに気づき、身体が震え始める。
        自分のせいで。
        ――自分が、ぼんやりしていたせいで。
        ――――おじちゃんが、死んでしまった。

        声も出ない。
        涙も出なかった。
        驚きに竦んだ身が、ただ目の前の事実を完全に受け入れられずに、
        静かに喘ぐような息を漏らす。
        息が苦しい。
        あたしは。
        あたしはまだ……おじちゃんに。
        ……何も伝えていないのに。
        -- せつな 2013-03-11 (月) 04:03:24
      • ……ずっと、側にいてくれた。
        どんなに苦しくても、辛くても、おじちゃんはあたしを真っ直ぐ見てくれていた。
        あたしが幼い頃に与えた許しという罰に、少しずつ身を焼かれながら。
        それでも……あたしとの約束を守って、側にいてくれたんだ。
        きっと、楽しい事ばかりじゃなかったと思う。
        おじちゃんはアニキに、自分の妹であるイヴミアさんを生き返らせるために近寄った。
        それが悪いことだと知りながら、それを選ばざるを得なかった。
        だからこそ、それから先、罰を与えられなかったことに苦しみながら、ずっと側にいてくれたんだ。
        あたしは。
        あたしはそれに甘えていた。
        お父さんみたいに、アニキみたいに、どこかにいかないでいてくれれば。
        あたしは、それだけでよかったから。
        中途半端な許しだけを与えて、それでも笑顔を向けてくれるおじちゃんに、この十年余り、ずっと甘え続けていた。
        -- せつな 2013-03-11 (月) 04:09:38
      • だからあたしは今度こそ。
        おじちゃんにあたしが唯一出来る……今までずっと側にいてくれた恩返しとして。
        おじちゃんに、本当の意味での赦しを与えることが出来るって。
        幼稚さからくる思考を停止した停滞からでなく、自分という人間が相手を認められる成長で。
        セータ・シークエンスを認める事が出来るって……。
        そう、思ったのに。
        -- せつな 2013-03-11 (月) 04:12:45
      • 強く、その身体を抱いた。
        まだおじちゃんの身体は温かく、温もりも、匂いも、感触も。
        ただそこに当たり前にあってくれれば幸せだった物の形を確かめるように、あたしはその身体を強く抱きしめた。
        包丁で切った指先の止血布が剥がれ、おじちゃんの身体を貫く鉄柱が肉を裂く鈍い音がする。
        それでも、止められない。
        腕の中にまだ最愛の片鱗が残っているうちに。
        おじちゃんの感触が残っている間に。
        もう、手遅れになってしまったけれど。
        ……ずっと好きだった、大好きだったおじちゃんに、ごめんなさいと、小さく謝った。
        ごめんなさい。
        ごめんなさい。おじちゃん。
        あたしは。
        あたしはもっと、お話がしたかった。
        ずっと側にいて、他愛ないことで笑って、同じものを食べて、同じ物を見て。
        同じ方向を向いて歩きたかった。同じ世界を見て、同じ世界を感じたかった。
        あたしは……追いつきたかった。
        ずっと道の先で待っていてくれたおじちゃんの隣を。
        あたしは、ようやく歩けると思っていたのに。
        -- せつな 2013-03-11 (月) 04:19:47

      • 最期に、おじちゃんは言った。
        出来ないはずがないって。
        あたしのことを、認めてくれた。
        エストの時とは違う、自分で先走って、出来ると思い込んでのことじゃない。
        ちゃんと、あたしのことを十年以上見てきてくれたおじちゃんの評価として、おじちゃんは『出来る』と言ってくれた。
        だったら。
        あたしには。
        泣いてる暇も。
        嘆いてる暇も。
        悔やんでる暇もない。

        ゆっくりと近寄ってくる、ギア先輩の顔を見ず。
        あたしは、恐怖と覚悟と悲しみと決意の間にある心を抱きしめるようにして。
        静かにおじちゃんの身体を横たえた。
        -- せつな 2013-03-11 (月) 04:26:39
      • あたしなら、出来る。
        あたしなら、出来るって、おじちゃんは言った。
        それは、おじちゃんがあたしに課した、最期の問題だった。
        もう、一手のミスも許されない。
        その僅かに残してくれたヒントで、正解にまでたどり着かなければ、この絶望的な状況をひっくり返す事は出来ない。
        これは、おじちゃんがあたしに課した問題だ。
        そして、あたしなら解けると太鼓判を押してくれた、あたしの問題なんだ。

        「おじちゃんは、あたしに、出来るって言ってくれた」

        口に出す。
        それは、魔術師が最初に魔術と邂逅した時と同じように、自身を奮い立たせる呪文となる。
        -- せつな 2013-03-11 (月) 04:37:52
      • あたしは、雪菜で良かった。
        雪の下で強く根を張る、植物のような強さを培う事が出来た。
        あたしは、刹那で良かった。
        その準備には一時も掛からず、雷の速度で展開された氷のように固着する炎の明るさで、一瞬で魔法陣が描かれる。
        あたしは、施綱で良かった。
        本当に大切なモノを手放さないでいられるだけの強さを――『手に入れること』が出来たから。

        おじちゃんは、言った。
        おじちゃんは、あたしに言ったんだ。
        出来ないはずがないって。

        ――兄妹なんだから
        ――――出来ないはずがないって!!
        -- せつな 2013-03-11 (月) 04:46:12

      • きっとおじちゃんならこう言うんだ。

        「始まったと思ったときには、もう遅い。魔術師にとって、全ての行動は布石なんです。
         その無駄に思える動作一つであっても、その単調に見える日常の一つであっても。
         後付で、力づくで、自分の中の想定の内部に捻じ曲げることを、人は魔術と呼び。
         それを、行使する者を、魔術師と呼ぶんです」

        指先を持ち上げる。
        指先から止血布が剥がれ、そこにはがある。

        「魔術師の行動の全ては布石であり、全ての布石を行使できるのが魔術師と呼ばれる種類の存在なんです。
         兄妹だから、出来るんです。
         兄妹だから、出来るんです。
         兄と同じように、あたしも、門を持つ事が出来て……!
         そして、妹のように、それは門から生まれ出ずる

        既にそれは終わりを告げていて。
        言葉自体を呪文にして、あたしの中に存在していた。
        全ての言葉が布石となって、全ての呪文が魔法へと変わる。
        それが、あたしの扱う魔法であり。
        -- せつな 2013-03-11 (月) 04:53:20

      • ――僕が扱う、魔術でもある。
        さあ、ここで閉幕だ。
        僕の生命を代償にして、それは放たれる。
        もしこういう場面が百回あったとして。
        僕はその百回共に、こう名乗ると決めていた。
        それは僕の生涯の中で、唯一独自の呪文として昇華した開闢の魔術。
        自らの【傷】という属性を唯一乗りこなすことが出来た証左である『スアルーガの門』への干渉呪文。

        そしてそれは、せつなの。
        魔術師、本城せつなの産声でもある。

        さあ。
        言おう。
        その指先の傷口から、僕も見ていてやるから

        あたしは指先を上げる。
        身体の中に、隣の世界から流れこんでくるセータ・シークエンスという属性が、あたしの中に入ってくる。
        感応現象が、おじちゃんがあたしを、世界を、自分をどう思っていたのかが、伝わってくる。
        だからもう、迷わない。
        最後の呪文は、おじちゃんがおじちゃんの人生の中で練り上げた。
        たった一つだけ、他人に誇る事が出来る、おじちゃんの生き方としての呪文。
        -- せつな 2013-03-11 (月) 04:58:39

      • ――傅け此門、我は『魔術師』(open ――I'm『Wizard』) -- せつな 2013-03-11 (月) 05:02:27


      • ―― きっと、そうしてくれると思っていた。
        せつなならば、この問題を回答し、解きほぐしてくれると僕は信じていた。
        だからこそ、僕は僕の一部を、アグニと同じように隣の世界に存在する『混沌』に前もって食わせておいた。
        そこに属性として吸収させれば、スアルーガの門を通じて僕はイヴミアと同じように『混沌の中に存在するセータ・シークエンスという属性』へと転じる事が出来る。
        それは、僕そのものではない。
        僕の脳とは乖離した存在でしかなく、僕という反応を返すただの属性だ。
        かつてアグニが言っていた。
        自分は、イヴミアという存在とは違うと。
        その意味が、こうなってみて初めて分かる。
        僕は僕だが、僕ではない。
        それでも。
        僕は構わない。僕が何者であれ、こうやって、大切な者を守れるのならば。

        視界の端で、せつなの髪色が漆黒に染まる。
        罪を犯した自分がブレインミキサーに願った黒髪化の影響か、アグニと同化した時のように金色の輝かしい変化ではないようだが。
        誂え向きだと、真紅の瞳で、真っ直ぐにギアを見る。

        ――その顔が、何かを覚悟したようにこちらを見てくるのと同時に。
        僕は、僕の呪文を唱えながら、一歩を踏み出した。
        -- シークエンス 2013-03-11 (月) 05:15:22

      • ――有限なる世界に齎されし無限の回廊よ(an infinite corridor is made limited -- a person)
        我は此処に願う、拓く彼の門の容を(I hope to open a gate. And I hope to open a gate. )
        万物の開闢、塵を塵へと、灰を灰へと返せ(Dust the dust.Ash the ash.)
        傷は疵に、疵は創に、創は瑕に、瑕は傷に(Crack Crack Crack And the Crack)
        傷は疵に、疵は創に、創は瑕に、瑕は傷に(Crack Crack Crack And the Crack)
        傷は疵に、疵は創に、創は瑕に、瑕は傷に(Crack Crack Crack And the Crack)
        傷は疵に、疵は創に、創は瑕に、瑕は傷に(Crack Crack Crack And the Crack)
        ――傅け此門、我は『魔術師』。(open ――I'm『Wizard』)


        最後に。
        僕は、せつなは。ぱちんと指を弾いた。

        それが――この問題に差し出された、単純にして、唯一の解答だった。
        -- せつな 2013-03-11 (月) 05:19:14
      • 【疵】は【傷】として切り離され、
        【間違った繋がり】は【正しい繋がり】へと昇華する。

        たった一度の魔力の行使で、世界は有るべき姿に収められる。
        ギアとすれ違いながら使われた【傷】と【繋ぐ】根源魔法は正しく魔術師の思惑通りに効果を発揮し。

        ――その問題は、静かに幕を下ろす。
        -- せつな 2013-03-11 (月) 05:46:42
  • 【問8 5】回答 -- 2013-03-01 (金) 02:03:39
    • (――『ギア』という名前を与えられたことが、自分が何者でもない証左だった)

      (俺は、俺の出自を知らない)
      (気づけば、何か大きな力によっていつだって役割を与えられてきて、それを忠実にこなしてきた)
      (その大きな力がセディユ機関という国内の主要機関に根を張る巨大な存在であることを知ったのも、つい先日のことのように思える)
      (俺は、俺の人生に疑問など抱く余地はなかったし、そんな権利があるとも思っていなかった)
      -- ギア 2013-03-01 (金) 02:14:42
      • (俺は、セディユ機関に何かを強要された訳ではない)
        (所属として機関に属していることは間違いなかったが、勅命として何かを命じられたことは一度もなかった)

        (人が、一人の人生に於いて成せることは小さい)
        (絶大な権力を持つ者でさえ、その権威を死後まで永遠に続かせるなどということは、質量保存法則すら超越し得る魔術エントロピーを以ってしても不可能に近い)
        (黄金歴200年以前に於いて人間の脳内が唯一の魔術不可侵領域であったように、人の営みというものをロジックとして成り立たせるには、人という存在は不完全に過ぎる)
        (だから、セディユ機関の長は人間個人の力を利用するのではなく、群像の力を利用することを選択したのだ)
        (故に、その群像が各々自己の生活を保持している自然の状態こそが、集団の無意識の中に潜むセディユという存在には都合が良かったのだ)
        (だから、機関の人間は何かを命じられてそれに従って動くのではなく、いつか他人に貸与すべき容れ物として、人の中に溶け込むことを是とした)
        (社会を解きほぐす回路としての役割ではなく、それはまさに『歯車』(ギア)と呼ぶに相応しい生き方だった)
        -- ギア 2013-03-01 (金) 02:20:52
      • (俺は、俺であることを問題なく行なってきた)
        (潤沢に与えられる資金で、自身の意思で魔術を学び)
        (俺の意思で大学に入り、専攻として召喚学を学んだ)
        (ハイスクールからの知り合いであったレネス・ファイルカスタムにゼミに誘われた時も、自分の意思でそこに所属することを決めた)
        (そこでシロマルやエクアと出会い、シークエンス教授と出会った)
        (自らの意思で、エクアの為に自身の頬を焼き、相貌失認である彼女に自己を承認してもらうことを願った)
        (卒業し、歳を重ねる内に自らの中に生じた愛情とも執着とも言えない何かに突き動かされ、エクアを愛した)
        (その、模範のようなギア・ハークマンの人生は、全て誰かに成り変わられるかもしれないという可能性の裏で築き上げてきた物だった)

        (だから俺は。誰に、何を言われようが、何をされようが、一つの文句をも上げないことを、自分に誓っていた)
        (俺は、他人の気持ちや思いを、全て無駄にし、反故にし、唾を吐いているに等しい存在だった)
        (己の罪が自分の人生を誰かの為の物として生きていることであるとするならば、己の罰こそが、けして幸福を安寧の中で享受出来ないことだと、愚かしい頭でも理解出来ていた)
        -- ギア 2013-03-01 (金) 02:35:49
      • (だから、それを履行することにも、何の躊躇いもなかった)
        (かつての恩師の腹に鉄塊を突き立てたその瞬間にも、ギア・ハークマンという有り様は微塵も揺るがなかった)
        (歯車が歯車として疑問なしに力点から作用点までその運動を伝えるかのように、俺の心は何の感慨も抱かなかった)
        (それは、俺に人の心がないことを理由にした物ではない)
        (かつて、エクアの境遇を知った時、俺は神を確かに呪ってみせた)
        (レネスが俺の頬を焼いた事を以って、ファイアカスタムを名乗り始めた時にはエクアに対する確かな克己心と競争心がそこにあった)
        (人としての感情が欠落しているなどという単純な動作をしているわけではない)
        (ただ、それら全てを、セディユという優先事項によって上書きされることを、精神が承服しているだけに過ぎない)
        (エクアは。そして、未だ生きているであろうシークエンス教授は、俺のこの生き方を知って、徒労と蔑むだろうか。道化と憐れむだろうか)
        (いつか完全に瓦解することが決まっているにも関わらず、高く石を積む者を、愚かと嘲るだろうか)
        (そういう風にしか生きられないことを理由として、ただ今まで己のあるがままに生きてきたことを――認めてくれるだろうか)
        -- ギア 2013-03-09 (土) 04:01:43
      • (どの道。俺は賽を投げた)
        (シークエンス教授に瀕死の重傷を負わせ、単独で逃げ得るであろう教授にトドメを刺すために、本城せつなに接近した)
        (セディユはエクア達の精神を上手く誘導し、せつなを舞台に上げる準備までを整えてくれている)
        (久々に訪れた大学内の知り合いを尋ねるという名目でエクアと別れ、先にシロマルに会いに行くと言うテレシアと別れた)
        (それだけでも、俺の目から見れば僅かに異質な行動であるのだが、セディユという深層心理はそういった僅かな違和感しか齎さない程度に人の行動を掌握し得る)
        (何となく)
        (気が向いたから)
        (特に、深い理由はなく)
        (行動にそんな接頭語を付けさせ、単独では他者を見分ける事が出来ないエクアに単独行動をさせ、誰より先にシークエンス教授に会いたいであろうテレシアを旧知の友人であるシロマルへと向かわせた)
        (本城せつなと共に大学キャンパスを歩き、他愛ない会話を交わしながらシークエンス教授を探すこのシチュエーションは作られたご都合主義が齎す格好の状況であり)
        (スアルーガの門の技術を、シークエンスと本城の名を伴って消す絶好の機会を俺に齎している)
        -- ギア 2013-03-09 (土) 04:08:14
      • (三十年の間、その技術が熟成するのを、セディユは待った)
        (シロマルやゼンアードがセータ・シークエンスを評議長に据えるという計画の遥か以前より、その男はセータ・シークエンスという存在に目をつけていた)
        (彼の技術や素養は甚だ未熟ではあったが、置かれた特殊な状況が、セディユの欲する『裏側の混沌』に繋がる道を繋げることを可能にした)
        (人一人分の人生の長さを掛けて、ゆっくりと実現したそれを、今このタイミングで彼は簒奪しようとしている)
        (施術主であるセータ・シークエンスが死亡すれば、彼の技術は永遠に誰かに継承されることはない)
        (スアルーガの門について残っている文献は数多いが、それには汎用性がなく、偶然と限定に依るところが大きく、再現性の低い技術に留まっている)
        (その上で、本城剣馬というセータ・シークエンスと同じように身体に門を所有する彼のスペアさえ居れば、セディユの指は『混沌』の内部まで届きうる)
        (故に、ここで本城せつなを餌にして彼を葬るのが、俺の役目であり……セディユ機関が配置した、俺の役割であった)
        -- ギア 2013-03-09 (土) 04:15:04

      • (最初から、俺に自由意思はなかった)
        (束縛という箱庭の中で与えられた自由は、指先一つで簡単に弾ける儚い物であった)
        (俺には俺の配役を全うするしか道はなく、そこに介在する数多のイレギュラーが俺に何かを求めてきたとしても)
        (俺は、俺という反応を返すだけの、ただの容れ物に過ぎなかったのだ)
        (物語は、いつだって生者が動かす)
        (主観と成り得る何かが、語り手に成り得る何かがそこにあるから、物語は物語として成立するのだ)

        (だから、俺には、最初から、物語なんて紡げず。……課された問題なんて、解くことは出来なかったんだ)
        (それが、俺の――俺が犯す罪への、たった一つしか選べない、不正解であることが自分でも理解できている、『回答』だった)
        -- ギア 2013-03-09 (土) 04:19:39

      • (――『せつな』、という名前の意味を、親に尋ねたことがある)

        (父母の名前も兄の名前も漢字であるにも関わらず、家族の中で何故あたしだけがひらがなの名前なのか)
        (昔はなんとなくそんなことにすら疎外感を覚えていたし、納得できる答えが返ってくるなら、聞いてみたかったのだ)
        (当時、あたしはアニキの真似をすることが大好きだったから、剣馬にも負けない『刹那』なんて文字を当てはめてくれればよかったのに、と思っていたし)
        (それでなくとも、もし文字を当てはめるなら『雪菜』なんて文字になるという話は既に聞いていたから、なおさらひらがなで表現される自分の名前に理由が欲しかったのだ)
        -- せつな 2013-03-09 (土) 04:26:27
      • (その質問は、純粋な疑問であるが故に回答し辛い子供特有の質問であったと思う)
        (物事に全部が全部納得出来るような答えがないなんてことは、大学で四年間研究をしてきたあたしには痛いほどわかっているし)
        (実際そっちの方が柔らかい感じがして女の子らしいと自分でも思う)
        (だから、その時母がした回答が、子供に納得させる為に考えた後付の理由なのか、最初からそうでなければならなかった本当の理由なのかは分からない)
        (でも、母はこう、あたしに言った)

        『せつなにはね、色んな受け取り方が出来るように、そうしたの』

        (その言葉の意味を、小さかったあたしは理解出来なかった)
        (決まっていない物が決まっていないままに存在できるなんてことを知らなかったし、他人に自分の名前が決まった文字で表せないことを説明するのは、少し恥ずかしいと思ったからだ)
        -- せつな 2013-03-09 (土) 04:32:36
      • (でも、その言葉の意味を、あたしは学園に通っているときに、おじちゃんに教えてもらった)
        (おじちゃんはあたしの名前の意味を、刹那でも雪菜であると同時に、施綱でもあるんじゃないかと言ってくれた)
        (今まで、必死に他人を繋ぎ止めておきたい、大切な物を失いたくないと思って生きてきたあたしに、その関係を自分から繋ぎ直す事も出来るんじゃないかって、そう言ってくれた)
        (昔、おじちゃんがアニキと本気で殺し合った後に、もう失いたくない一心で告げた許しの言葉が、おじちゃんには関係を修復して繋ぎ直すあたし自身の本質であるように思えたらしい)
        (それは、あたしの根源属性である『繋ぐ』という属性によって裏付けされ、あたしは、あたしの生き方をおじちゃんがちゃんと見ていてくれたことに……ようやく気づくことが出来たはずだった)
        -- せつな 2013-03-09 (土) 04:37:38
      • (おじちゃんに見られていることを意識し始めたあたしは、優秀な生徒であり続けた)
        (期待に応えることは心地いいことであったし、応えることでさらなる期待が掛けられるそのサイクルを、あたし自身楽しんでさえいた)
        (あたしはおじちゃんの様になりたいと思っていたし、おじちゃんのように誰かを助け、問題を解決してあげられる人になりたかった)
        (そしてそれを……他ならぬおじちゃんに、見ていて欲しかったんだと思う)

        (見られているということは、側にいてくれるということだ)
        (あたしはただ……その視線を、失いたくなかっただけなのかもしれない)
        -- せつな 2013-03-09 (土) 04:43:11
      • (それは、あたしの本質とは異なる、ただの依存だ。切れても離れても繋ぎ直すあたしの本質とかけ離れた甘えだ)
        (あたしは、だからエストの一件の後におじちゃんと距離を置いたのも、純粋におじちゃんの期待を裏切ったことを、伝えられたくなかったからで)
        (あたしの力不足だった回答に、おじちゃんが解答を与えてくれることが怖かっただけだったと、ようやく気づくことが出来た)
        (期待に応えなければ、おじちゃんの理想の生徒でなければ、おじちゃんはあたしを見てくれなくなるかもしれないなんて怖さが、あたしを臆病にしてしまった)
        (あたしが理想にしたおじちゃんも、何度も間違え、何度も自省を促され、時には取り返しの付かない過ちを犯しながらも)
        (――傷だらけになって前に進もうとした結果が、問題解決の数であったことを理解出来ていなかった)
        (テレシアさんにおじちゃんの昔話を聞いて、ようやくあたしは理解することが出来た)
        (間違ったり、力が足りなかったことよりも)
        (それを認められない自分の弱さが、何よりの問題であるのだと)
        -- せつな 2013-03-09 (土) 04:49:47
      • (――叱られよう)
        (ちゃんと、何が問題であったのかを、教えてもらおう)
        (あたしは多分、褒められ過ぎていた)
        (数値の上での評価は、教師としても褒めやすかったせいで、あたしはおじちゃんに認められすぎていた)
        (ダメなんだ。それじゃ)
        (褒められているうちは、あたしは、おじちゃんにはなれない)
        (あたしが魔術師の姿として理想とした、セータ・シークエンスになることが出来ない)
        (胸を張って……おじちゃんと並んで歩くことが、出来ない)
        (だから、今は認め、そして認めたことを伝えて、ちゃんと怒られる必要があるんだ)
        (その上で、出来たことはちゃんと出来たと褒めてもらい、自分の力にしたい)
        (今あたしは、自分が何を出来るかもしっかりとはわかっていない)
        (それは、自分を省みる目ではなく、ずっと見ていてくれたおじちゃんの目から見なければ、本当に理解することは出来ない、わかりづらい部分であるだろうから)
        (だから聞こう)
        (ちゃんと、話そう)
        (今まで話せなかったことも、今まで話したかったことも)
        (――おじちゃんと、しっかり、話そう
        -- せつな 2013-03-09 (土) 04:54:17

      • (そんなあたしの覚悟や思いをしっかりと受け止めてくれたかのように)
        (大学内を歩いていたあたしの元に、おじちゃんが駆け寄ってくる)
        (その様子に少し違和感を覚えたけれど、ちゃんと自分の思いを伝えられる覚悟と悦びが胸にあったので)

        (あたしは、片手を上げて、笑顔でおじちゃんの名前を呼んだ)
        -- せつな 2013-03-09 (土) 04:56:40

      • (――『セータ』という名前の少年は、いつだって何かを犠牲にして生きてきた)

        (イヴミアという名前の妹に、生命を救われた時から何一つ成長出来ていない)
        (自分が力不足であることを理由にして、他人の庇護を、憐憫を、同情を、愛情を利用して、己を維持して来たように思える)
        (より深く傷つかない為に他人を傷つけて遠ざけたり、賢しく納得してみせることで離別や死別を無理やり嚥下しながら、大人になってきた)
        -- シークエンス 2013-03-09 (土) 05:06:37
      • (アキに告白された時だって、二人で傷つく事も出来た)
        (  と剣を交えた時だって、  を傷つけずに助かる事も出来た)
        (既に死が決定づけられていたキーが大学を訪れた時だって、抗う選択肢はあったはずなんだ)
        (幼少期の芝虎の問題だって、僕がもう少し優秀な魔術師であれば、夢の様な解決方法を思いついたかもしれない)
        (エクアの問題も、最初から僕がエクアの性質に気づけていれば、レネス達に覚悟を強いることはなく)
        (テレシアの問題も、解決したように見えて、その実テオドールに犠牲を強いただけだ)
        (ホイムの問題だって、問題を先送りにしただけで、結局解決らしい解決を与えてやる事は出来なかった)
        (ランドの問題も、生徒の力を借りる事を是と出来なかった己の未熟さで、危うくランドを危険に晒したし)
        (バージルの問題でも、僕は右目を失う必要はなかったかもしれない)
        (シロマルの問題なんて、問題として提示される前に、解答に辿り着ける場所に、僕はいたはずなんだ)

        (イヴミアだって)
        (――僕は、助けたかったんだ)
        -- シークエンス 2013-03-09 (土) 05:12:31
      • (本当は、僕は覚めてなんかいない。心の奥底では誰かの助けになりたくて仕方がなかったのに、その力がなかったから仕方がないと斜めに構えていただけだ)
        (助けられなかった、最善の手を打てなかった慰みに、自身の心に【傷】を負うことでその罰を罪と相殺していただけなんだ)
        (ぼんやりとする頭の片隅で、傷口から血がこぼれ落ちるように、僕の本心は次々とこぼれ落ちていく)
        -- シークエンス 2013-03-09 (土) 05:15:00
      • (力が欲しかった)
        (僕は消火器になりたかった)
        僕は――英雄になりたかったんだ
        (困った人を助け、泣いてる人に手を差し伸べられる、強い、強い人間に)
        (そうすれば、僕は、僕が大切だと思っている誰かと、ずっと一緒にいられるだろうから)
        (僕が強ければ、アキも、キーも、誰一人失わず)
        (僕は、セータ・シークエンスとして、幸福に生きられただろう)
        (助けたかった)
        (幸せにしたかった)
        (僕と知り合って、本当に良かったと言って貰えるほど、あいつらを幸せにしてやりたかった)
        (僕が打つ手はいつだって次善だ。どれだけ周到に用意していても、僕という凡才が打つ手はいつだって最善手とは程遠い)
        (でもそれでも)
        (僕は、何一つ失わないくらいの強さで……誰かを、守ってやりたかったんだ)
        -- シークエンス 2013-03-09 (土) 05:18:44
      • (ボロボロの身体で、片足を引きずりながら走る)
        (焼いた傷口から溢れ出るようにして、出血がぶり返している。新しい傷口が開いたのかもしれない)
        (目は霞む、血を流しすぎて暗い視界の中、せつなが手を振っている)
        (せつな)
        (僕は、たくさんの物を失ってきた)
        (僕の愚かしさや弱さのせいで、お前の周りからも何かを奪おうとした)
        (僕の罪は許されない)
        (例えそれは、僕の生命を以ってしても……僕の人生を以ってしても、贖い切れないだろう)
        (これから僕がお前に付ける傷の深さを考えれば、僕の人生を例え後五回繰り返そうが、けして贖い切れないほどの罪が僕に振りかかるだろう)
        (今まで積み重なってきた罪悪にそれを加えれば、僕の地獄行きはほぼ決まっていると言っていい)

        (――それでも、僕は言う)
        (僕は……せつな。お前を、守ってやりたいんだ)
        -- シークエンス 2013-03-09 (土) 05:26:54
      • (手を伸ばす)
        (まだ届かない)
        (いつだって、僕の手は、自分の力だけで何かに届くことはない)
        (足がもつれる)
        (地面に倒れれば、間に合わない)
        (地面に倒れる途中、意識が遠ざかる)

        (あと三歩)
        (三歩だけ、進ませてくれ)
        (今度こそ)
        (――これで、最後でもいい)
        (僕が心から助けたい相手を)
        僕の生徒を、助けさせてくれ


        (――完全に崩れた姿勢はまるで誰かが支えているかのように、次の一歩で持ち直す)


        世話の焼けるやつだな、セータ。お互い様かもしれんけどな。ハハ。

        ……そうだな。

        勝手に、いなくなりやがって……本当は、僕はお前と、もっと話がしたかったのにな。
        ……レオ
        (その忘れたはずの名前を、呼ぶ)

        (持ち直した一歩がよろけるのを、再び何かの力が支えた)
        (それは、心の底から理解してくれていなければ、とてもじゃないが出来ない程の、完璧な支え方で)

        しょうがないにゃー、セーたんは。これが最後だぜ。

        ……お前も、つくづく僕に甘いよな。
        僕の頼みを断るのが、僕がお前にする最後の願い事だって、言っただろうが。
        ……キー

        (姿勢は整った)
        (最後の一歩)
        (鉄柱に貫かれた足と、走ってきた心臓では心もとない距離を)
        (僕は跳ばないといけない)
        (思い切り踏み込んだ所で)

        (誰かが、背中を押した)

        (いつか僕がしたように。優しく、突き放すように)


        お前は……最後まで、本当不器用な奴だよな。――なぁ、セータ。


        それは。
        (涙で。前は見えない)
        (たくさんの優しさに支えられながら)
        (僕は最後まで、誰かに……皆に支えられて、最後の一歩目を踏み出した)

        お互い様だったろうが……。
        アキ……!!

        (僕の身体は、全てのくびきから解き放たれて、最速で助けたい者の元に)
        (40年という長い遅れを取り戻して、辿り着いた――)
        -- シークエンス 2013-03-09 (土) 05:52:47




      • (――何かの交錯があった)
        (いつの間にか地面に倒れていたようで、頭の裏がズキズキと痛い)
        (痛む身体を起き上がらせようとして、小さくむせる)
        (見上げる)
        (そこには、おじちゃんの顔があった)
        (おじちゃん)
        (セータ・シークエンス)
        -- せつな 2013-03-09 (土) 06:04:03
      • (コインを弾けば、いつだって選んでない方の面が上を向いた。欲を出せば裏目に出ることは僕の人生で常だった)
        (何か二つの物を同時に所持し続けられるほど器用ではなかったし、その一つだって僕の手に余って落としてダメにしてしまう事は多かった)
        (それでも、その跳躍はせつなの身体に届いていて)
        (ギアが放った鉄柱召喚の魔法の範囲外に避難させることが出来たらしく)
        (僕は、安堵で小さく息を吐いた)
        -- シークエンス 2013-03-09 (土) 06:07:06
      • (状況が、理解出来ない)
        (優しく微笑んでいるおじちゃんに、なにか伝えなければならないのだろうけれど)
        (それを上回る混乱が喉から声を出してくれない)
        (顔が近い。互いの吐息が掛かるほど、不自然に二人は近づいてしまっていた)
        (逃げるようにして視線を逸らすと、ふと、温かい感触が腹部を覆っていることに、気がつく)
        (視線を下へと動かす)

        (おじちゃんの胸)
        (――そこに、一本の鉄柱が、完全に心臓を貫通する形で生えていた

        ――え……?
        -- せつな 2013-03-09 (土) 06:10:37

      • (その攻撃が、本当はせつなを狙っていないことに、僕は気づいていた)
        (案の定、僕がせつなの身体に飛びかかる直前で、せつなの方に向いていた魔力の指向性はこちらへと方向を変え)
        (正確に、僕の心臓を貫く形で魔力障壁をぶち破って鉄柱を召喚魔法にて顕現させていた)
        (それでも、同じ場面が百回あったとしても、万が一にでもその魔術が、せつなに向くことがあるのならば、僕は百回同じ事を繰り返しただろう)
        (その攻撃は防ぐ暇も、かわす余裕もない。無防備に貫かれた心臓が鼓動を止め、意識が静かに遠のく)
        (粘性を帯びた死への時間の中、まだ正確に状況を理解していないであろう、せつなの表情が見えた)

        (本当なら)
        (まだ、伝えたいことも)
        (話したいことも、たくさんあったんだ)
        (僕という人間が、せつなより長く生きているなら、その成功談や失敗談は、必ず彼女の役に立つ)
        (他愛ない昔話でさえ、僅かな慰みになるとするなら……かわして無駄な言葉など、一つもないんだから)
        -- シークエンス 2013-03-09 (土) 06:16:29

      • (心臓が完全に停止する、最後の二拍で、僕はせつなの耳元に、告げるべき言葉を一つだけ告げる)
        (言葉は短く、そしてシンプルに)
        (そう、いつだって、僕はせつなを見て、そう思っていた)
        (伝えた言葉は『せつなに、出来ないはずがない』という、シンプルな言葉)
        (それだけ伝えられたらせつなは)
        (きっと、独力でこの状況を打破し、問題を解決する回答に至る事が出来る)
        (僕が見てきた本城せつなという名前の生徒ならば、それが出来ないはずがないんだ)
        (だから僕は、大きく息を吸い、最後の瞬間を、静かに待った)

        (死神は無粋なのか気が利いていたのか)
        (もう一言だけ、せつなに言葉を告げるくらいの生を、僕に与えてくれた)
        (もう一言)
        (何か伝えられるだなんて幸運を)
        (――僕が正しく、使いきれるわけがないのに)

        (漆黒の闇に包まれた視界の中、もう力の入らない身体で、せつなに凭れ掛かりながら)
        (僕は、せつなに、最期の言葉を告げた)
        -- シークエンス 2013-03-09 (土) 06:21:32

      • ――約束は、守れそうもなくて、ごめんな、せつな。

        (死の間際の言葉にしては、破れた肺で吸った息にしては……明瞭に伝えられたと思う)
        (その言葉を最期にして)
        (僕の意識は、静かに死という虚無に落ちていった)
        -- シークエンス 2013-03-09 (土) 06:24:15
  • 【問8 4】いつからか、せつな・本城と共にあり続けた問題 -- 2013-02-23 (土) 21:49:15
    • (自己紹介は、すぐに当然の如く思い出話へと昇華することになった)
      (同じ時間を歩んで来なかった人間が分かり合うには、何か共通の話題を見つける必要があって、それが偶然セータ・シークエンスという人間の生涯であったから)
      (互いに互いが不在だったときの思い出話によって、互いの距離を少しずつ縮めていった)

      (テレシア・レヴ・イヴラスカヤという名前の青年は、異性のあたしから見て、不思議な魅力を持っていた)
      (屈託なく笑う反面、どこかおじちゃんを思わせる狡猾さも見え隠れして、いつの間にか手玉に取られていて、でもそれが全然嫌味じゃない)
      (本人に言うと、それが人の上に立つための一つの資格なのかもしれないね、と笑っていたが、その言葉にも説得力があった)
      -- せつな 2013-02-23 (土) 21:58:06
      • (話した時間は短いが、色んなことを聞き、色んなことを喋った)
        (昔の人見知りをしていた頃の自分では考えられないほどに今日のあたしは雄弁で、それが逆に心のなかに鬱屈したものを貯めていた証拠のようになってしまっていた)
        (いつからか当たり前のように存在していた団欒の風景が、あたしから饒舌さを奪っていたのだとしたら)
        (きっとそれはゼニスたちにも伝わってしまっているんじゃないかと思い、少しだけ申し訳なくなった)

        (色んなことを聞いた)
        (おじちゃんが室長を務めていた時の話)
        (室長を辞め、宮廷魔術師に招聘され、その話を蹴って再び教室に戻ってきた後の話)
        (実家に呼び戻されそうになったテレシアさんの話)
        (英雄制度という因習に惑い続けたホイムさんの話)
        (自らの背中に刻まれた罰の形に苦しめられたランドさんの話)
        (そして……おじちゃんが右目を失う理由となった、バージルさんの話)
        -- せつな 2013-02-23 (土) 22:04:00
      • (色んなことを喋った)
        (ハーフエルフであることで父と見えない壁を作っていたゼニスの話)
        (アイアンシールドという異能に弄ばれたロレン君の話)
        (己が犯した罪の形に幸福になることから逃げていたトラの話)
        (そして……助けたくて、助けられなかった、エストの話を)

        (いつしか、話すうちに頬に涙が伝っていて)
        (自分で、頬を撫でて、少しだけ驚いた)
        (少しだけ震える声で、本当ならば、他の誰かに聞いてもらいたかった言葉を呟く)

        助け、たかったんです。……あたし、本当は、エスト、を。

        (ようやく、表に出る事が出来た自分の気持ちに後押しされるように、頬を、涙が伝った)
        -- せつな 2013-02-23 (土) 22:08:02
      • (肩を竦める)……そっか。
        まあ、私はね、そんなに優しくはないからはっきりと言うけれど。
        世の中には「やること」と「やらないこと」の他に「できないこと」っていうのは必ずある物だから。
        それを悔やむのはせっちゃんの勝手だけど、その助けたいって気持ちだけは、私の目から見ても評価出来ると思う。
        自分が本当は何をしたいのか、ずっと分からずにいる人間よりは、一歩先に進んでると思うからね。
        -- テレシア 2013-02-23 (土) 22:11:17
      • でも……あたしは、気持ちだけで、エストを助ける事が出来なかった。
        ウィッカや、おじちゃん、トラの力を借りても……あたし一人じゃどうにもならなかった。
        自分の大切なモノが奪われてしまうのを、見ていることしか出来ませんでした……。
        -- せつな 2013-02-23 (土) 22:12:50
      • ………。(ふう、と嘆息し)
        こういうの、詐欺師の手口だから余り使いたくないんだけど。
        じゃあ、一つ、聞くよ。
        せっちゃんがもし何か窮地に陥ったとする。そうだね……例えば、溶接された扉がある部屋の中に閉じ込められたとするよ。
        せっちゃんがドアをどれだけ叩いても、同じ部屋の誰かの力を借りても、全然扉が開かなくて、終いにはその部屋の人達が「何故起こした、何も知らないまま死にたかった」なんて言ってせっちゃんを責めたとする。
        そんな時にね、外側からせっちゃんと同じように扉を叩く人がいるとするよ。
        まあ、その扉は叩いた所で全く意味がなくてビクともしないのだけどね。
        音だけで、必死に中にいる誰かを助けようとしているのが分かるくらい、強く、強く叩いているんだ。
        -- テレシア 2013-02-23 (土) 22:17:03
      • 外側から扉を叩く誰かは、中にいるせっちゃんたちを「助ける」なんて言葉では励まさないんだ。
        自分の力が、誰かを助けられる程万能でも絶対でもないことを、その誰かは知っているから。
        それでも、言葉に出さない分必死で扉を叩くし、叩いて意味が無いとわかれば別の方法を試してみたりする。
        火で燃やしてみればいいかもしれない。
        何か道具を使えばいいかもしれない。
        扉を開けることが出来る誰かに助けを求めてみればどうだろう。
        自分が苦しんでみたらどうだろう。
        傷ついてみたらどうだろう。
        右目を失ってみたら、どうだろう。
        ――自分を犠牲にしてみたらどうだろう。って
        -- テレシア 2013-02-23 (土) 22:21:43
      • (くるりと、目を瞑り淹れてもらったレモンティを混ぜる)
        ……例えばね、そうやって何度も何度も失敗を繰り返して、苦労に苦労を重ねた上で、傷つき倒れる誰かを。
        せっちゃんは、何で助けてくれないって、責めたり出来るかな。
        もっと貴方に力があれば、私を助けてくれることも出来たのにって、そう思うかな。

        私は、問題の細部は知らない。
        それでもね、私はそういう生き方をしている人を、一度好きになり、恋破れた人間だから。
        だから、そうやって悲しんでいることに対して、本当に親身になって相談に乗ってあげる事はできないの。

        私が思うにね、貴方に必要なことは失敗に対して後悔することじゃなくて、その失敗を繰り返さないためにどうすればいいか悩むことだと思う。
        それはきっと、悔やむことよりももっと真剣に失敗と向き合わないといけないから、とても苦しいことだと思うけれど。
        -- テレシア 2013-02-23 (土) 22:28:17
      • (その言葉は、どこかおじちゃんを思わせる優しさと厳しさを含んでいて、唇を噛んでしまう)
        (頬の涙を拭い)ごめんなさい。……あたし、弱かったです。
        だから多分、強くなりたいんだと、思います。
        そっか……あたしは、きっと、あたしを育ててくれたおじちゃんに、報いたかったのかな。
        ……おじちゃんが自慢の生徒だったって思ってくれるくらいには……きちんと、強い人間になりたかったのかな、って。
        -- せつな 2013-02-23 (土) 22:32:58
      • ……50点かなって、私の乙女としての感覚がそう告げてるんだけど、まあ、あの甘い教授のことだから10点くらいはおまけしてくれるでしょうね。
        にしても。
        ……なんで教授の側にこんないい子が……? そして側にいるにも関わらず何故こんなに純真なままなのかしら?
        私のみならず、何故か私が顔も知らない一人目の誰かも大きく頷いてる気がするわ。
        でも、まあ若い内はそういうものかもしれないわね。せいぜい今の内に若さを最大限利用するといいわ……。
        -- テレシア 2013-02-23 (土) 22:37:12
      • ……???
        ……愚痴になってしまって、すいません。でも、なんか少し、楽になりました。
        ありがとうございました、テレシアさん。ちょっと、頑張ってみます!
        -- せつな 2013-02-23 (土) 22:40:09
      • しっかりしているようでしていない子だわ……一時の感情に流されるようじゃ、乙女失格よ、せっちゃん。
        女の子はね、昔から一歩引いた位置で男の後ろを、みたいな形が理想って言うけれどね、
        あれは別に奥ゆかしさじゃなくて最後の一歩だけは男に踏み込ませる為に一歩だけ距離を置いているのよ。
        だからせっちゃんはそんな自分から前傾姿勢で頑張るのではなく、もっと情景を俯瞰で見ることね。
        意図的に貴方が目を逸らしている部分も、そうすれば見えるかもしれない。
        ま、私は適当なこと言っているだけだから、あんまり真に受けない方がいいっていう注意もしておくけれど。
        -- テレシア 2013-02-23 (土) 22:44:39
      • う……気をつけます。……そうだよね、ちょっとすっきりして、浮かれてたかも。
        えっと……でも……あたしは、やっぱり話してみる必要があるんじゃないかって、少し思っただけで。
        あたしは……四年間で何かに成れる、成らなきゃいけないって思ってたけど。
        それは、成りたいと成れるはまた別物なんじゃないかって、思ったから……あたしを客観的に見てくれてるおじちゃんに、相談に乗ってもらわないことには、前に進めない気がするから。
        -- せつな 2013-02-23 (土) 22:47:31
      • しっかりしていないように見えてちゃっかりしてる子だった。……こういう天然は怖いわ。
        私達が計算で行なっていることを自然に行うことが出来るから……。

        それにしても……シークエンス教授が女囲うような時代になったか。私も精神的に落ち着くはずだわ。
        まあ、落ち着くわよね……一応二児の父だし。二児の内片方早めに嫁いでいったし。
        -- テレシア 2013-02-23 (土) 22:59:03
      • え。
        結婚されてるんですか!? ……どっちと!?
        -- せつな 2013-02-23 (土) 22:59:44
      • なんとなくニュアンスは伝わったけれど、伝わったことも腹立たしいのでほっぺた伸ばしておくわね、せっちゃん。
        ホホホ、若いと良く伸びること。ちなみに普通に私より可愛いお嫁さんだから安心するといいわよ。
        ……そういえば、教授何か昔、隣国に気に……いや、何かこれは触れない方がいいかもしれない。
        女としての勘がそう告げている気がしてならないわ。
        -- テレシア 2013-02-23 (土) 23:02:41
      • 隣国に気になる女性がいるって話をしていたね。
        ……彼女は一体どうなったのだろう?
        -- エクア 2013-02-23 (土) 23:05:10
      • ふひゃい!!(ほっぺたを伸ばされたまま驚く) -- せつな 2013-02-23 (土) 23:05:52
      • ……えっちゃん先輩、音もなく入ってくるのはどうかと思うのですが。
        ていうかシークエンス教授いなかったんですけど、どういうことです? 謀りました? 私を?
        -- テレシア 2013-02-23 (土) 23:07:24
      • はっはっは、何をバカな、可愛い後輩を謀る先輩が何処にいるというのかねテレシア君。先輩は味方だよ。
        それにそこにいるじゃないか、お久しぶりです、シークエンス教授。おや、胸が成長されて、二次性徴ですか?(揉む)
        -- エクア 2013-02-23 (土) 23:09:27
      • ふひゃー!!(ほっぺたを引っ張られたまま逃げられない) -- せつな 2013-02-23 (土) 23:09:56
      • 普通に人違いなので辞めてください。(チョップ)
        自身の特性を最大限に利用してセクハラに走らないように。ブラックジョーク過ぎて周囲が突っ込めないからって突っ走られると迷惑ですので。
        ……せっちゃん、こっちのエロい妊婦はまあ、私の先輩で第八教室の元生徒、エクァールトさん。
        こちら、シークエンス教授が自分好みに育て上げたせつなさん、らしいです。
        -- テレシア 2013-02-23 (土) 23:12:41
      • エロい妊婦、エクァールトです。ボクのことはエクアでいいよ。
        ふふ……中々の物をお持ちで。人は自分にないものを求めるというから、十年若ければもう少し関係は進んでいたかもしれないね。
        -- エクア 2013-02-23 (土) 23:15:53
      • ひゅあい。
        ぺぁ。(漸く解放され)……ぁ、あー……えーと、とりあえず、好みに育てられてないですっ!
        -- せつな 2013-02-23 (土) 23:16:48
      • 先輩はエロいの否定しないんだ。あと解放されてとりあえず最初にツッコミするのは割りと調教済みなのではと私思うわ。
        あんまり悪ふざけしていると、お腹の子に障るんじゃないかしら。
        ただでさえ人より身体小さくて妊娠に適してない身体なんですから、その辺気をつけた方がいいと思いますよ。えっちゃん先輩。
        -- テレシア 2013-02-23 (土) 23:18:43
      • 妊娠どころか性交にも適していないと医者に太鼓判を押された140cm強のボクだが、以外と人間の身体は神秘にできているようでね。(謎ポーズ)
        しかし良い物だと思うよテレシア君。出来れば君にも妊娠する楽しさを分けてやりたいくらいだ。
        -- エクア 2013-02-23 (土) 23:20:39
      • 分けて貰えるものなら分けて貰いたいというか、その能力さえあれば結婚はまだしも、まだワンチャンスあったんですが。(悪い顔)
        まあ、過ぎたことは仕方ないですし、いつまでも過去の話を引きずるような女には誰にも靡かないと思いますから、毅然としますけどね。
        ……そういう意味では、ワンチャンスあるんじゃないかな、せっちゃん。悔しいことに。
        -- テレシア 2013-02-23 (土) 23:23:06
      • ああ、そういう関係なのかい。(せつなを見て笑顔で)
        それはそれは、うちのシークエンスが兼ね兼ねお世話に。教授も隅にも置けないね。
        -- エクア 2013-02-23 (土) 23:24:22
      • そういう関係ってどういう!?
        というか『も』が入ってるせいでおじちゃん隅にすら置いて貰えないみたいになってるよ!?
        -- せつな 2013-02-23 (土) 23:25:31
      • おじちゃん、ということはあれかい、金銭が間を仲介してくれる感じの話なのかな。 -- エクア 2013-02-23 (土) 23:28:28
      • 援助……! は、してもらってるけど……!!
        交際……!! も、うう……家族ぐるみでの交流が……。
        -- せつな 2013-02-23 (土) 23:29:39
      • ……落ち着きなさいよ。顔真っ赤だからとりあえずクールダウン。
        (ふぅ、と嘆息して)……先輩のノリに一般人を付き合わせると少なからず相手に負担を与えるので気心知れてからにしてください。
        -- テレシア 2013-02-23 (土) 23:31:42
      • ボクなりの配慮なのだけどね。混乱させたのなら謝ろう。
        せつな君といったかな。……ボクもまあ、こうなってみるまで自覚がなかったのだが。
        他人を愛せるということは、とても強いことだと自分で思うよ。それは、お腹の子供にでもそうだし、異性にもそうだ。
        ひいては友人や、キミの助けを求める誰かと言い換えてもいい。
        自分からの気持ちがはっきりと強いベクトルで出ている限り、そのベクトルに従うだけで、いつも結果はちゃんとついてくるものさ。
        -- エクア 2013-02-23 (土) 23:39:59
      • 私も同意見。割りと私もえっちゃん先輩も自分本位だからかもしれないけれどね。
        自分がどうしたいかで動けば、行動の理由を他人に押し付けなくて済むからね。
        だから、自分がどうしたいかをしっかり見つめて、それでも分からないなら分からないことを伝えればいいと思うわよ?
        少なくとも、何もしないで失敗を恐れていれば、成功が転がり込んで来ることもないし、失敗から学ぶことも出来ない。
        ちゃんと気持ちと決別できたから前に進む事が出来たのだとしたら、
        あの日、あの時、私が気持ちを伝えたことは、誰にも否定させないし、死ぬまで誇りに思っていこうと思ってるもの。
        -- テレシア 2013-02-23 (土) 23:47:59
      • それが……結果的に、相談した相手を……凄く、苦しめちゃっても、ですか……? -- せつな 2013-02-23 (土) 23:52:48
      • そういう風に生きてきた相手なら、きっとその苦しみも受け止めてくれるんじゃない?
        子供に対する大人でも。
        生徒に対する先生でも。
        女に対する男だって。
        ……きっと、問題を抱えて相談してもらえることって。
        案外、嬉しいんじゃないかって、私は思うからね。
        -- テレシア 2013-02-24 (日) 00:09:55
  • 【問8 3】最初から、セータ・シークエンスと共に、ずっとあり続けた回答 -- 2013-02-16 (土) 23:27:41
    • その五竜の中に、最初に存在したのは、自分たちを生み出した何かへの恐怖心だった。
      生命は、自己の存在に対して疑問を持つことを容易には行えない。
      何故自分が存在し、何故世界が存在するのかという疑問は容易に恐怖へと代わり、その多くは忘却という行為で消化される。
      生きているのだから生きているという回答はけして逃げではなく、回答を探ることすら許されない問題への一つの解答であると思う。
      だが、その五竜は、その恐怖へと抗う方法を探した。
      『神への挑戦』と言えば格好良く、もしくは陳腐に聞こえるかもしれないが、
      彼らは彼らの権能を以って、神と比肩するという反逆を、本気で企てていた。 -- 2013-02-16 (土) 23:34:42
      • 五匹の竜は、人の属性を司っていた。五感と呼ばれる外部からの入力装置を司るそれぞれの竜は、神への挑戦と冒涜として『人間のレプリカ』を作ろうとした。
        人と全く同じ組成を持ち、人と同じ機能を持つ、本物と寸分違わぬ生き物を、
        彼らなりに人間というものに触れ、その内部や組成を理解・分析することで、人間と同じ物を彼らの権能で作ろうとしたのだ。
        人と同じ多様性を持ち、人と同様に緩やかな変化を受け入れ、人と同様に同一性を持たない存在。
        彼らはその『人間のレプリカ』に対し、寄せては返す波が絶え間なく岸の形を変えながらも、同じ波を以って岸へたどり着くことはないことから、
        『不同の人』(レス・リス・ウェーバー)と名付けた。
        人ならざるこの存在は、人と全く同じ組成をしていたから、人と同じように子を成せるどころか、
        本物の人間との間にも繁殖を行う事が出来、彼らの『完全なレプリカを作る』という計画は、当初の目的を達成することが出来た。 -- 2013-02-16 (土) 23:42:13
      • だが、彼らは満足しなかった。
        ただ、人間と同じ物を作れたからといって、それが彼らを創りだした神と比肩したことにはならないことを、薄々感じていたせいかもしれない。
        だから、彼らは自らをその高みに上げることを諦め、神を冒涜することで相手を自分たちの位置まで貶めようと画策する。
        人間が神の創りだした代物だというのであれば、その自然に『不同の人』という不自然を混ぜ込むことによって、到達する未来には絶対的なズレが出来る。
        運命というものが神の定めた青地図だとするのならば、それに抗うために彼らはその『不同の人』にそれぞれの力の権能を授けることにした。

        『黒竜』は、瞬間を俯瞰する目を。
        『赤竜』は、空間を把握する耳を。
        『白竜』は、次元を飛び越え触れられる指を。
        『青竜』は、存在確率を嗅ぎ分ける鼻を。
        そして唯一権能を与えなかった『空竜』は、実態のない存在となって、その賭けの障害になりそうな対象を捕食する胴元となった。

        定められたルールは三つ。
        一つ、権能は、その血筋の末端にだけその能力を表出させる。
        二つ、血筋の末端が死亡をしたときには、別の末端の人間へと権能は受け継がれる。
        三つ、より長く、自身の権能を存在させられた竜の勝利である。
        賭けは成立し、権能を持つ『不同の人』は人間の中に自然に混ざり、その権能を以ってある者は王となり、ある者は自らの不幸を嘆きながら汚泥の中で死んでいった。 -- 2013-02-16 (土) 23:53:19
      • 人の一生など、竜の間では瞬きをする間に生まれ、死んでいくような刹那の出来事であり、
        その竜の定規を以ってすれば、その何百年、何千年、何万年掛かるであろう賭けも、賭けとして成立するほどの僅かな戯れに過ぎなかったのだろう。

        だが、一人だけ。
        この計画を、人の身でありながら知覚していた『人間』が存在していた。
        彼らが人間の組成を知る為に、その身を、心を理解するために彼らによって呼び寄せられた最初の人間。
        名前も持たず、ただ野垂れ死ぬだけの刹那の生命であったはずの彼に――彼らは、セディユと名前を付けた。 -- 2013-02-16 (土) 23:57:19
      • セディユは彼らの分析のために、仮初の永遠を与えられることになる。
        人の身では耐え切れない程の永い間を人として生きることを強要され、人ならざる権能を与えられることにより、
        彼ら竜と同じように『人竜・セディユ』という存在に、押し上げられることとなる。
        五感を超越した第六感として存在することになった彼は、五竜の完全なる手慰みとして大いにその人生を弄ばれることになる。
        筆舌に尽くしがたい程の喜悦と悲哀と絶望とを無理矢理に口に詰め込まれ、嘔吐するたびに彼の中に澱のような何かが溜まっていった。
        だが、五竜が『不同の人』を作り出し、賭けを行い始めた時には、既に五竜にはセディユの存在に対する興味など微塵も残っては居なかった。
        世界の何処にいたとしても、『空竜』の牙で人噛みすれば生命を奪えるような些細な存在に、彼ら竜は既に興味をなくしていたのだ。

        セディユは五竜と別れ、静かな眠りにつく。
        再び目覚めた時、彼は彼自身ではなく、人間のレプリカとして作られた『不同の人』の中に、遍く同時に存在していた。
        気づいた時には彼の肉体は完全に朽ち、ただの傍観者として、『不同の人』の深層心理に存在する現象と化していたのだ。
        そしてそこに至って、その存在の変化すら、五竜によって仕組まれたものであったことに気づいた。
        彼は、『観客』であり、『傍観者』であり、『ストーリーテラー』であった。
        『世界』に触れる事は許されず、ただ人間の深層心理までを理解出来るだけの、『語り手』となってしまっていた。

        セディユは慟哭した。
        誰の深層心理にも存在する男の声は、誰にも届きはしなかった。 -- 2013-02-17 (日) 00:06:29
      • 彼は、自分の力が他人に影響を及ぼすようになれるまで、人の深層心理の中に何百年、何千年と同時に存在していた。
        物語を運ぶ登場人物の心理を理解し、自分の中に形として成す。自分がどんな言葉を掛け、どんな感情を揺らしてやれば、望みの結末に辿り着けるかを考察した。
        サンプルは無限に存在し、しかもそれを当人が生きてさえいれば、セディユという存在は同時に知覚出来た。

        彼が、自分の声が誰かに届くことを知った時、彼の計画は動き出す事となる。
        天啓、悪魔の囁き、口を突いて出た台詞、誘惑の蛇、なんだっていい。
        自分が正常に思考していれば到底辿り着けない解答に、ふと巡りあうことが、一度もない者などいないだろう。
        その一つに、自分の言葉を、思想を、理念を混ぜ込ませることができたなら。
        ――彼は、『不同の人』と交わり生まれた、全ての人間の群体(region)そのものであった。
        その力を以って、人間の方向性を定めることでセディユは。
        彼を生み出した竜がそうしたように――自らを生み出した存在に対して、抗う存在と成る。
        彼は人そのものであり……人とは全く違う、何かであった。 -- 2013-02-17 (日) 00:15:49

      • (僕やミュー、ジィが施されたブレイン・ミキサーという施術は、『こうあれかしという姿へ自身を変化させる権能』なんかじゃなく)
        (『不同の人』と交わったことのない血統を持つ相手に無理やり竜の権能を付与し、その深層心理の中にも偏在することが出来るようになるための研究だった)
        (結果としてそれは僕を生み出した第二世代である程度完成し、成功を収めた。さっき、僕の深層心理として話しかけてきたセディユが、何よりの証拠だ)

        (思考によって覚醒し、指を動かそうとすると、遅れて身体の芯に触れられているような激痛が走り、喉の血で噎せながら咳き込む)
        (空間にその苦悶の声が反響し、自分が居る場所が外でないことに気付く。霞む瞳で周囲を見渡すと、僅かな灯りが申し訳程度に灯されていることに気付く)
        (いつもの癖でそれを魔術的に分析すると、やはりその灯りは魔力によって編まれた人造の灯りだった)
        -- シークエンス 2013-02-17 (日) 00:22:04
      • (腹を貫かれた事を思い出し、僅かだけ動く指先で探ると、そこには鉄柱はなかった)
        (僅かだけ広がった腹の口……『スアルーガの門』が口を開けているだけで、外傷らしい外傷はない)
        (首を曲げ、視界を下に下ろすと、芯を貫かれているような痛みの正体が、大腿を貫いている鉄柱だと気づき、痛みの所在が明らかになると異物感にのたうち回りたく程の悪寒が背筋を走る)
        (脂汗をかきながら、現状を分析し、過去の情景と照らしあわせて出来る限り把握した結果、僕は口を開いた)
        ……アグニ。(その名前を、呼ぶ)
        -- シークエンス 2013-02-17 (日) 00:33:05
      • 傷は深い。
        安静にしておれ、元主。
        ……今際の際のような顔色をしてなお、自分で解答を見つけ出す生き方は理解できんの。
        説明くらい、儂にさせんか、戯け。
        (シークエンスの腹の口の中で憮然とした声で呟く)
        -- アグニ 2013-02-17 (日) 00:37:10
      • 喋ってないと意識飛びそう、でな……ぐッ……悪い、助かった……。
        ゲッホ……! ……崖下か、ここ……?
        -- シークエンス 2013-02-17 (日) 00:51:23
      • 中腹の、ウロといったところかの。中途半端に都合良く出来ておる人生で良かったな、元主。
        ……じゃが、先も言ったとおり、安静にしておれ。門を広げたことで強制的に魔力も食らわれ、外傷も酷い。
        今動けば、確実に死ぬぞ、お主。
        -- アグニ 2013-02-17 (日) 00:53:25
      • (喉奥が血で張り付いているのを指で掻きだし、唾とともに吐く)……アグニ。二つ、頼みが有る。
        そっちの空間を通って、剣馬に連絡を取ってくれ。(無理やり喋ると喉奥からヒュー、ヒューと音がした)
        ……今からじゃ最悪間に合わないかもしれないが……もし、僕の連絡が途絶えたら、その時はそのまま剣馬を隣国で守れ。
        もう一つは――。
        -- シークエンス 2013-02-17 (日) 00:57:08
      • 待て、元主。このような状況で反論するのも憚られるが、承服しかねるぞ。
        お主、よもや自分一人でこの状況をどうにか出来ると思っておるわけではなかろうな。
        何故、儂に力を求めぬ。隣国に儂というカードを飛ばす理由は何だ
        -- アグニ 2013-02-17 (日) 00:59:08
      • ………詳しく、説明してやりたいが、手短に言うぞ。
        僕達が言葉で話している限り、全ての深層心理に偏在出来るセディユという相手には、どんな手を打とうが裏を掛かれる。
        現に、今こうやって話している内容もあいつはギアの中に存在していてなお把握することが出来る。
        だったら、ここでアグニを僕が保有していれば、あいつは確実にもう一つの『スアルーガの門』を身体に所有している剣馬を先に消しに行く。
        そうなれば、状、況の分からない剣馬が、その周囲の、人間が危険に晒される可能性が大、きい……。
        (無理矢理に身体を起こすと、喉奥からまだこれほど血が残っていたのかという程の量で逆流してくる)
        (大腿を貫いている鉄柱を引きずるようにして、その洞穴の壁に背中を預けると、貧血に視界が眩んだ)
        -- シークエンス 2013-02-17 (日) 01:04:48
      • ……理由になっておらぬぞ。
        儂は、剣馬を守る理由を聞いているのではない。ここで、元主を守らぬ理由を聞いているのだ。
        深層心理下に存在する者が敵なのだとしたら、今ここでそれを口に出し、実行した後で、奴はお主を消しに来る。
        その時、儂が剣馬側におれば、数秒のラグがお主を殺すことになる。
        この洞穴に存在することも、あ奴が知っておるというのであれば尚更だ。
        この場所で隠れていたとしても、お主の状況は好転せんではないか。
        それとも、何だ。儂は……兄を見殺しにすれば良いのか。
        見殺しにすれば……良かったのか。
        (強く、歯噛みし、真っ直ぐシークエンスの顔を見て言った)
        -- アグニ 2013-02-17 (日) 01:09:00
      • (その視線に、胸が痛む)
        (アグニは……僕の妹の属性を、混沌から救い上げた存在だ。妹、イヴミアそのものではないにしろ、その感情もいくらか残っているのかもしれない)
        (イヴは一度、混沌に飲まれそうになった僕を助けるため、その身を犠牲にした)
        (半身を失った僕は苦しみ、苦しみ、二十年という時間を苦しみ抜いて生きてきた)
        (でも、だからこそ……)……イヴ。
        『スアルーガの門』を剣馬の身体を使ってもう一度開く前、別れ際に僕はこう言ったな。
        お前に対して、ずっと言いたかったことがあるって。
        でも、それを今は、隠して……げほっ……もう一つの言葉を伝えるって……。
        (意識が、朦朧とする。痛みだけが、傷だけが辛うじて自我を繋いでくれている)
        ……ありがとうって。
        ……僕は、もう一つの言葉を、だから、今伝えるよ。
        ……ごめん、イヴ。
        今度は、僕が守りたいんだ。
        -- シークエンス 2013-02-17 (日) 01:14:25
      • 大戯けがッ!!
        (洞穴が震える程の怒号で、炎の化身は叫ぶ)
        (目尻に溜まった涙を隠そうともせずに、なりふり構わず大声で怒鳴り散らした)
        ……儂は……私は、そんな言葉を聞くために、またお兄ちゃんの元に現れたんじゃないッ!!
        そんな形で守ってもらったって、嬉しくないことくらい、他ならぬお兄ちゃんが一番良くわかってるはずなのにッ!!
        何度も何度も、その苦しむ姿を見て、私がやったことが間違いだったんじゃないかって、思ったものッ!!
        誰かを身を呈して救うっていう自己犠牲が、綺麗さ以上に残酷さを孕んでることに、あの時の私は気づかなかったからッ!!

        だから。
        だから私は、妹のワガママさで一つだけ言わせてよ……。
        そんな気持ちを、妹に、誰かに味わわせないでよッ!!
        -- アグニ 2013-02-17 (日) 01:18:24
      • (思い返せば)
        (僕の人生は、常に勇敢な誰かの説教と共にあった)
        (サラは、僕に言った。他人を頼らず生きていくのは辛いよと、彼女の強さで)
        (テレシアは、僕に言った。勝手に他人を守って、勝手に満足するのは辞めろと、彼の強さで)
        (剣馬は、僕に言った。自分一人で解決しようとする思い上がりだけは許せないと、彼の強さで)

        (せつなは、僕に言った。……僕の罪を、穢れを、許してくれると。彼女の、言葉で)

        ……僕は、もしかしたら、恵まれた人生を送ってきたのかもしれないな。
        今、こんな状況で自覚するとは……皮肉なもんだな、アキ。
        (かつて、自分を好きだと言ってくれた、かけがえのない友人の名前を呟き、小さく嗤った)

        アグニ。……違う。僕は、守りたいんだ。
        ……次に狙われるのは、恐らく剣馬の妹である、せつなだから、な。
        今度は自己犠牲なんて、綺麗で残酷な感情じゃない。
        僕自身のエゴで……僕は、生徒を、生徒の幸せを守りたい。
        だから、力を貸して欲しいんだ……アグニ。
        剣馬が生徒の幸せの一部であるなら……僕はそれも、守ってやりたいんだよ。……頼む。
        -- シークエンス 2013-02-17 (日) 01:25:16
      • (何かを言いたげに口を動かしていたが、小さく嘆息する)
        ………。(無言で姿を表し、腕組みをした状態で血塗れの兄の姿を見て)
        (静かに目を閉じた)……バカたれが。
        死にそうな顔色で、よくもそんな台詞を吐けたもんじゃの。
        ……自己犠牲の為の嘆願であるなら、蹴り飛ばしていたところじゃが……本当に、お主は理論の上でしか生きられない、生粋の魔術師じゃの。
        ……分かった。伝えよう。
        そして、守ろう。火の化身、イグナイト・ヴィシュヌバレヌ・ミトラパーカ・アータルアーリアの名に於いて。
        無茶ばかり、しおるな、お主は。
        -- アグニ 2013-02-17 (日) 01:31:01
      • ……悪いな、アグニ。……ここにきて、強く、婆口調に戻すくらいには自分を保ってくれてることを、感謝する。
        正直、血の繋がってない幼いままの妹が言うお兄ちゃんは、僕みたいな人間には中毒性が高い。
        ……出来の悪い兄の為に、もう一つだけ、頼む。
        (千切れかけた服の袖を完全に引き千切り、それに力の入らない手で捻りを加えながら、呟く)
        ……僕はな、痛みに耐えて魔術を行使するっていうのが、昔から苦手分野でな……。
        これだけの怪我を負っていてなお、正確に魔術式を追うことは出来そうにない。
        だからアグニ……僕が合図をしたら、僕の腿の傷口を焼いてくれ
        ……こんな場所で僕は、くたばってられない身分でな……。
        -- シークエンス 2013-02-17 (日) 01:37:56
      • (もはや、何も言えない)
        (ただ、首を縦に振り、依りを掛けた服を舌を噛まない為に食いしばる歯の間に挟み、鉄柱に手をかけた兄の姿を見た)
        (その瞳に宿る強い意思のような物を見て……再び、嘆息する)
        -- アグニ 2013-02-17 (日) 01:40:56
      • (両腕に、力は入らない。鉄柱は食い込み、肉を食い破り骨の横を通って貫通していた)
        (大腿を流れる動脈に栓をする形で突き刺さっているため、恐らく鉄柱を引き抜けば致死量の出血を引き起こす)
        (内蔵を傷つけられ、既に致死量ギリギリまで出血を重ねている自分が、これ以上の出血傷を受ければ失血死は免れない)
        (動脈を、一時的に燃焼で塞ぐ。行えば、腿から先の足部の壊死は免れないだろう)
        (片目、片腕に続き、片足も自前のそれを失うことになるのかと思うと、少しだけ気は重い)
        (だが……僕は、そうとしか、生きられないようなんだ……レオ
        (朦朧とした意識で、誰かの名前が浮かんだが、すぐに誰の名前だったか思い出せなくなった)
        (ただ、自分の意識の中で、その名前もわからない誰かにつけた傷を、そいつが許してくれたような記憶が存在することが)
        (僕が、僕の根源属性である『傷』を認める背中を押してくれるから)
        (バージルを助けるという理由でならば)
        (イヴを助けるという理由でならば)
        (――教え子を助けるという理由でならば)

        僕は……何を失っても、後悔なんて、しない……ッッ!!

        (両腕に力を込め、魔術を鉄柱に流しこみ、僅かだけ付与したベクトルの属性によって、鉄柱が太ももより引きぬかれた)

        (同時に、痛みが生じ、灼熱が身体の内側を焼いた)

        ――ッッッッ……!!!!!!

        (食いしばった歯の間から血の味がして、強く布地を噛む)
        (口の端から漏れだした涎が頬にまでべったりと伝わってきて、千切れかける意識を円周率を数えることでギリギリ繋ぎ止める)
        (地面に打ち上げられた魚でももう少し優雅な跳ね方をするであろう暴れ方で痛みを堪え、静かに肘を地面に着く)
        (正確に、傷口の表面だけを焼いてくれたアグニのお陰で、まだギリギリ立って、歩み進めるくらいの状態となったらしい)
        (口から唾液と血塗れの布を取り、洞穴の壁にもたれかかるようにしながら立ち上がり、頭を振った)
        -- シークエンス 2013-02-17 (日) 01:52:39
      • (苦悶の声を殺し、静かに立ち上がる兄の姿を見て、目を伏せる)
        ……元主。一つだけ、儂にも聞かせろ。
        ……お主は、何故そこまで出来る。
        自己満足や、自己の欲求だけで行うには、元主の自己犠牲は病的が過ぎる。
        ……お主にとって、せつな・本城とは、何なのかの。
        ……それだけを、聞かせてくれ。
        -- アグニ 2013-02-17 (日) 02:10:36

      • (朦朧とした意識の青い顔で、小さく嗤った)……ッ……はぁ……くっ……ぐ……ぎ……
        はぁ……はぁ……ッ……どいつも、こいつも。
        僕に、どんな回答を求めてるんだよ。
        ……僕に、どんな解答を告げることを求めてるんだよ。
        一つだけ、回答するならな。
        せつなは……僕の生徒だ。
        ぐっ……それで満足か……?
        -- シークエンス 2013-02-17 (日) 02:21:29

      • 儂が聞いているのはな。
        果たして、ただの生徒相手に、命を張れるものかと。
        そう、尋ねておるのじゃがな。
        -- アグニ 2013-02-17 (日) 02:25:57
      • ああ。
        それで、充分なんだよ。
        僕が生命を張る理由としては。

        僕は……昔、消火器になりたかったんだ。
        たくさんの火を消して安全を齎すことは出来なくても……自分の手の届く場所にいる誰かの助けになれる。
        そんな、存在になりたかったんだ。
        ……はは、今気づいたよ。

        (両手を見る。血に塗れて汚れているけれど)
        (まだ、誰かに伸ばす事が出来る、僕の両手だった)

        僕は、なりたいモノになれていたんだな。
        僕が生まれた時から、ずっと共にあり続けた、僕の夢に。
        いつの間にか、なれていたんだ。キー。
        ……僕を助けてくれたあの日から、ずっと僕はお前になりたかったんだよ。
        だから、僕は。
        生徒を助けたいという理由だけで、充分なんだ
        ……死ぬ直前まで来ておいて出た言葉なんだ。
        これは疑わざる本心だと思ってくれて、いいんじゃないか……イヴ。

        アグニ。
        剣馬を、頼む。
        (足を引きずりながら、前へ、前へと進む)
        -- シークエンス 2013-02-17 (日) 02:33:46

      • (瀕死の重傷を負ってなお、出た言葉であるのだから信じろと、不器用な兄は言う)
        (本人の言う通り、それは虚勢ではなく真実であるのだろう)
        (ただ、それが真実であることが、それ以外が虚偽である証拠には成り得ない)
        (真実を覆い隠しているモノが、別の真実であることだってあるだろうに)

        ……不器用者め。
        (一言だけ呟き、火の化身はシークエンスの腹の傷を通って剣馬の門へと急いだ)
        -- アグニ 2013-02-17 (日) 02:37:31
  • 【問8 2】最初から、セータ・シークエンスと共に、ずっとあったはずの問題 -- 2013-02-16 (土) 03:21:06
    • (空も海も近いその場所は風が強く、嘆息と共にコートの襟を立てた)
      (評議長になった月、祝いだからと姪の夫である本城剣馬の発案で本城家一同から送られたものだ)
      (どうにも、自分の中身くらいは正確に捉えている僕を包む衣服としては重厚で豪奢が過ぎる代物だが、たまには着てやらなければ報いれない)
      (それに、隣国から帰国したかつての教え子達を出迎えるという用事は、このコートを引っ張りだすに十分な理由ではないかと思った)

      出迎えさせておいてふらりと物見遊山とは……偉くなったものだな。エクア。
      (声を掛けるとその少女のような外見の元教え子は、記憶の中の動作と同じようにふわりと振り返った)
      -- シークエンス 2013-02-16 (土) 03:28:31
      • おや。これでもボクなりに気を利かせた物なのだけれど。
        どうしても先に見たい物がある、という理由は、他人に偏屈に見られるボクが口にしても違和感がないと思わないかい?
        例えばそれが、ボクたち夫妻に随伴すると興奮気味に連絡をくれた、かつての後輩抜きで、静かな再会を喜ぶための猶予を与えてくれる方便だったとしても。
        (静かに微笑み)出来の悪い生徒を叱らないでくれる、ボクたちの室長だったように思うのだけれど。シークエンス教授。
        -- エクア 2013-02-16 (土) 03:32:23
      • ……感謝すべき、とでも口にすれば、テレシアは怒るだろうな(肩を竦める)
        (振り返ったエクアの腹が膨れていることは、前もって知っていたので驚かなかったが、直視は何故か憚られた)
        (視線を逸らして崖から先の地平線を見ながら言う)ギアはどうした。
        いくらそれが方便だからって、こんなところで海風に当たっていれば、なんだ……母体に障るだろう。
        -- シークエンス 2013-02-16 (土) 03:36:38
      • 馬車の手配をしてくれているよ。あれは揺れるからね、妊婦仕様にするには、少しばかり準備がいるらしい。
        気になるなら触ってみるかい、教授。ほら、母乳を出すために完全に洗濯板だったむ――
        -- エクア 2013-02-16 (土) 03:38:35
      • 僕はお前の乳の僅かな膨らみを気にして挙動不審なわけじゃない。
        相変わらずだな、お前も。まあ、人間20を超えて早々本質が変わるわけがないということは知っていたが。
        ……結婚すると聞いても誰も驚いてくれなかった、と腹を立てていた頃より少しは妻らしく、母親らしくなったか、エクア。
        ハークマン婦人と呼んだほうが気分がいいか?
        -- シークエンス 2013-02-16 (土) 03:42:01
      • (崖から遥か見える地平線に視線を凝らしながら)んー。……どうだろう。
        そういえば、こういう景色を見て思い出したのだけど……ボクは、昔人間がそんなに好きではなかったんじゃないかな?
        ほら。ボクは他人の顔が分からないから、そこに誰がいようが、それぞれがどんな違いがあるかも視界からじゃ分からない。
        だから、風景の中にどれだけの人がいても、それは二人なら二人という数字だし、十人なら十人という数字でしかなかったんだ。
        そこに誰もいないこういう絶壁から望む大海原が好きだったし、大学の屋上で眺める広い空が好きだった。
        うん。ボクはだから……今でも、妻となって母親となろうとしてる今でも、エクァールトという本質は変わっていないのかもしれない。
        その点について、どう思われますか、シークエンス教授?(小さく笑って言う)
        -- エクア 2013-02-16 (土) 03:50:28
      • (相貌失認。エクァールト・ハークマン。旧姓イヴライア・ヘルベチクァは、先天的な相貌失認症の患者だった)
        (他人の存在は捉えられるが、顔の形貌で他人を見分ける事が出来ない
        (それが原因で、全てから手を離そうとした記憶は、エクアの中にも、僕の中にも輪郭だけは残っている)
        ……境遇という前提条件を廃した上で、僕個人の見解を述べるとするなら、
        正直、分からないでもない。
        僕もそうだった、なんて思わせぶりな台詞を人妻や母親に吐いていいものかと悩むが……。
        その点を寄せ合うくらいには、僕とエクアは似ていたのだと思うよ。
        僕も他人が嫌いで、だから他人じゃない相手を他人から守ろうとしていた。
        必死に見えただろうが、全部打算で利己的な目的の為の献身だったんだ。
        テレシアに責められるまで、右目を失ったことすら、自分の歪んだ露悪と英雄願望の表出であると気づけなかったくらいだ。
        -- シークエンス 2013-02-16 (土) 03:56:08
      • それは、ボクとしては是非とも孕む前に聞いておきたかった言葉だね、もったいないことをした。
        ただ、教授。
        それでも、一人では生きられなかったよ。
        (妻となり、母親となる女は、困ったように笑った)
        人は、人にかぎらず、生き物が生きている限り、自己以外の他者の存在がなければ生きてはいけないのだと思う。
        これだけ人間が怖くて、余り好きにはなれなかったボクですらそう思うんだ。
        いや、恋愛感情という物の強さと怖さがそこにあると思うよ。
        それは、親愛程優しく接してはくれない、もっと感情むき出しにボクらの心から順番に蝕んでいく強い力だ。
        -- エクア 2013-02-16 (土) 04:00:41
      • ……だろうな。……80年近く生きている人生の先輩が、未だに新しい出会いに一喜一憂しているのを見ると、
        人のサガというやつは死ぬまで僕を苦しめてくれるようで、苦笑しか出てこない。
        他者を拒絶する、という行為自体が他者の存在を必要とする自己矛盾命題である以上、人は人の存在を知覚せずには生きられないだろうな。
        本能とか、そういうこととは切り離して考えたとしても、だ。
        -- シークエンス 2013-02-16 (土) 04:04:13
      • ……おやぁ?
        まるで、親愛と恋愛の違いなども嗜まれている理解者のような口ぶりに、申し訳ない元教え子ながら口元の綻びを隠しきれませんで。
        もっともらしい理論で、話題の中心を若干ズラすやり方は、会議の机の上では通じるかもしれないけれど、
        少なくともベッドの上では睦言にすらならないと思うけど?
        -- エクア 2013-02-16 (土) 04:06:25
      • (何か不快なことを言われているような気がして憮然として)……言ってる意味が分からん。 -- シークエンス 2013-02-16 (土) 04:07:08
      • 聡明なるシークエンス評議長その人を以ってしても、何を問われているか分からないということは、それだけ根深い問題なのでしょうね?
        んふっふー。こういうの、女はいつまで経っても好きなものだから、気をつけておいたほうがいいと思うよ、教授。
        その興味は対象への情報を集める熱量へと容易に進化するものなのです。すなわち、今教授の置かれている状況はボクも割りと把握した妊婦なのですが。
        二回りも違う女の子と暮らして、何も起こらないなんてこと、あるんですか?
        (にっこにこ笑いながら)
        -- エクア 2013-02-16 (土) 04:10:40
      • 懐かしい胃痛を感じる。そういえば昔、大地のことでも似たような責められ方した気がする……!!
        ……まあ、遠隔地で情報だけ聞いていれば、そんな色っぽい話に聞こえるかもしれないが、
        悪いな。からかって遊べるような楽しげな動きをするには僕の身体は錆び付いててな。
        せつなは……お前と同じ、教え子の一人だ。
        -- シークエンス 2013-02-16 (土) 04:13:33
      • では、逆に聞こうじゃないか。その、せつな君と言ったかな。
        それが仮に、教え子でなかったとしたら、どうなんだい?
        -- エクア 2013-02-16 (土) 04:16:13
      • 結果は同じだ。
        教え子でなかったとしたら、せつなは姪の夫の妹で、幼い時から知ってるだけの隣人の子ということになる。
        -- シークエンス 2013-02-16 (土) 04:17:24
      • では、この際その条件も取っ払ってみるというのはどうだろう。
        シークエンス教授であればそれでも理由を並べ立てるのは簡単だろうけれど、仮にその全ての衣を剥がした後に、
        最後に残る感情がそこにあるかないかは、考察する意味があることだとは思わないかな?
        -- エクア 2013-02-16 (土) 04:18:45
      • ないな。
        (理論で踏み込んでくるというのならば、理論で切り返すしかない)
        与えられた諸条件が求められる解答に対して恣意的が過ぎる。
        余計な諸条件を殺ぐという曖昧な前提があって騙されやすいロジックだが、であれば「人間ではなかった場合」など完全に結論を導くことが出来ない条件まで含まれるべきだ。
        故に、これは結論のための聞きかじりのレポートで、僕の講義で出してくるやつがいたら問答無用で『可』だよ。
        -- シークエンス 2013-02-16 (土) 04:21:14
      • 世にある仮定と結論を示す類のレポート全否定とは、いやはや。
        ……余計なお世話だったと、そう思われるかもしれないけれど教授。
        ボクは、まあ超上から目線で言うけどさ。
        ――ギアくんと結婚して良かったと思っているよ。
        もちろん、それによって全てが大団円、大解決という訳にはいかないのが人生の難しいところだけれど。
        この結論に導くために、諸条件を恣意的に減らしていったところで、神様は咎めないと思うし、可なら合格もできるんじゃないかなって思うんだ。
        さっき教授は言ったよね。
        人を遠ざけたいという欲求こそが他人を必要としなければ人が成り立たない証左であると。
        だったら、教授の近くにそれだけ長くいる女の子を、なんとも思えないことこそが。
        教授の自己防衛なんじゃないかなって、ボクはそう思っただけなんだよ。
        まあ、あれだね、お世話になったから、幸せになってもらいたいなって、そういう老婆心ってやつ、かな。
        -- エクア 2013-02-16 (土) 04:26:07
      • 他人に分け与える程に両手から幸福が溢れ落ちていることは結構なことだと思うが、
        そういうのは器の底が抜けていない前途有望な若者に言ってやるべき言葉だと思うぞ。
        こちらの弁を切り返して反論に使用する手管は認めるが、主婦や母親にそういう狡猾さを求める男はそんなにいないだろうしな……。
        (足音に振り返ると、そこには自分より遥かに長身の男が目深に被ったフードを取って小さく会釈してきた)
        -- シークエンス 2013-02-16 (土) 04:29:41
      • ……………。 -- ギア 2013-02-16 (土) 04:30:28
      • ………いや、何か喋れよギア。
        エクアの半分くらいは頑張れよ。むしろエクアの言葉が半分になれよ。
        -- シークエンス 2013-02-16 (土) 04:31:10
      • ……む。
        ………学校はどうだ……楽しいか?
        -- ギア 2013-02-16 (土) 04:32:07
      • 普段会話しない親子かッ! お陰様でそこそこ楽しませてもらってますがッ?
        ……しゃきっとしろ、ギア。お前も父親になるんだろ。(顎でエクアを指す)
        -- シークエンス 2013-02-16 (土) 04:33:23
      • まあ、そうとは限んないけどね。 -- エクア 2013-02-16 (土) 04:34:00
      • えっ…… -- ギア 2013-02-16 (土) 04:34:33
      • おいやめろばか。ジョークが黒すぎるわ、真っ黒すぎて妊娠という光も全部吸収するわ。
        おまっ、お前やめろよ男って繊細なんだぞ!!
        待てギア!! そっちは崖だ!!
        -- シークエンス 2013-02-16 (土) 04:35:52
      • はっはっは、こういうジョークは妊娠中にしか言えないので妊娠中に言うしかないのだよ、教授。
        ギア君も許してくれ、紛れもなくボクは君の精――。
        -- エクア 2013-02-16 (土) 04:37:05
      • 胎教に悪いわ。やめろ。画面内に一人は下ネタ担当がいないと落ち着かないみたいな空気を作るな。
        ……真面目に心配になってきた。
        まあ、ボクは自分で言うのもなんだけど、人の子としては恵まれてもいたし、不幸でもあった。
        僕はもうお前たちの室長じゃないから何も偉そうなことは言えないし、
        それ以上になんだ、人生の敗北者である自覚はあるから、聞き流してもらって構わんが、
        ……頑張って育ててやれよ。お前たちの子供なんだからな。
        -- シークエンス 2013-02-16 (土) 04:39:41
      • (満面の笑みで)……勿論。
        その覚悟がない相手と、ツガイになったつもりはないし。
        期待しているよ、ギア君。(パートナーの胸をぽん、と叩き)
        -- エクア 2013-02-16 (土) 04:43:11
      • ……任されよう。(一回だけ頷いた) -- ギア 2013-02-16 (土) 04:43:47
      • (その様子に僅かだけ脱力し、嘆息する)……
        ギアも、相変わらずみたいで、少し安心した。(小さく肩を竦める)
        -- シークエンス 2013-02-16 (土) 04:48:56
      • ……久方ぶりで、多少緊張していてな。どういう言葉遣いで喋っていいものか、迷っていた。
        エクア。風で冷えるだろう……宿で馬車を待たせている、向かうといい。
        -- ギア 2013-02-16 (土) 04:50:50
      • ん。ありがとう。色々迷惑をかけるね。
        お言葉に甘えて先に行っているよ。
        ………。(少し歩いて振り返り)
        教授。さっきボクが言ったこと、解答を出せなんて言わないからさ。
        少しは考えてみる余地があるんじゃないかと思うんだ.
        これって、多分ボクが学生をやってたころから、セータ・シークエンスと共に、ずっとあったはずの問題なんだから、さ。
        (言って笑い、手を振って妊婦は去っていった)
        -- エクア 2013-02-16 (土) 04:53:05
      • 知ったような口利くようになったな……というよりは、昔から知ったような口を利く部分が変わってないだけか。
        挨拶周りと病院の手配が終わったら、大学の方も回るといい。それなりに、まあ色々驚くだろうからな。
        お前たちや僕が学生をやっていた頃より、だいぶ変わっている。少なくとも、人の成長よりは顕著だろう。
        -- シークエンス 2013-02-16 (土) 04:55:27
      • ……そうか。いや……どの道、エクアも行きたがるだろう。
        レネスと連絡を取ってみることにしよう。
        ……色々、すまない教授。迷惑を掛ける。
        -- ギア 2013-02-16 (土) 04:56:53
      • それこそ今更だ。
        何を謝る必要がある。……少しばかりの足労が堪えるようになった自分の身が悲しくはあるがな。
        -- シークエンス 2013-02-16 (土) 04:58:14
      • ………本当に、すまない。

        教授。
        俺は、セディユ機関の人間だ
        -- ギア 2013-02-16 (土) 04:59:18

      • (そのギアの言葉を、僕の緩みきった脳は、完全に捉えることが出来ず)

        (理解より先に――ゴン。と)
        (何かに、押されたような衝撃が身体の中から響き)
        (その違和感に首を傾げようとしたところで)

        口腔から血が溢れ。地面に鮮血の花が咲いた)
        -- シークエンス 2013-02-16 (土) 05:01:34

      • (視界が霞み、どこかぼんやりとした脳が、何度か言葉を反芻する)
        (セディユ機関。聞いたことがある。聞いたことがあるが、どこで聞いた)
        (痛い。胸が熱い。全身にだるさが生まれる)
        (腹部に灼熱を流し込まれたような感覚。だが、それも何故か遠い)
        (腹に触れる。昔はここに『スアルーガの門』があって。でもいまは、そこに鉄柱が生えている)
        (鉄柱が生えている? 指でなぞる。鉄の感触)
        (内臓からこぼれ落ちた血が、鉄柱を伝って地面に滴っている)
        (客観的に自分を見れば、標本のようだろう。そんな場合じゃないのに、そんな場合じゃないから、そんなことを考えて)

        (――再び血を吐いた)
        (今度は、黒い、内臓を傷つけられたときの血の色をしていた)
        -- シークエンス 2013-02-16 (土) 05:05:28
      • (召喚術には3つある。
        一つが物質召喚、召喚術の基礎に辺り離れた場所の物質を召喚し、それに運動エネ
        ルギーや状態変化を付与して使役する術で
        ある。二つ目が精霊召喚、これはもと
        もと自然界に存在する召喚獣として使役しうる対象との契約を用いて、魔術とする形である。最後に概念召喚。これは
        概念そのものを召喚し、対象に付与するという召喚術で、これ自体の分類は第八教室初代室長であるゼンアードギュスネイブ
        ルによって分類された魔術でありそれが召喚術であるかどうかはまだ正式な認可を通っておらずこれから先もまた承認はおりないであろうと目されているギアハーク
        マンはとりわけこ
        の中では物質召喚に長けており相手の体内を貫く形で鉄柱を召喚して相手を絶命せしめる術を主なこうげきしゅだんと
        しても
        ちいて
        いた
        ことをい

        さら
        なが






        し)

        (その口から)
        (『セディユ機関』という言葉を放ったことに意識が行った途端)
        (身体の中に、消えていたはずの炎が灯った)

        ギ……ァアァァッ……!!(名前を呼ぶと、喉奥に溜まっていた血液が撒き散らされた)
        -- シークエンス 2013-02-16 (土) 05:12:05
      • む……そうか……『スアルーガの門』の影響で、
        外傷の一部がこれほど離れた土地であろうとも門化した……ということ、か。
        ……苦痛を長引かせることになって、重ねて謝るべきだろうな。
        ……すまないな、教授。
        -- ギア 2013-02-16 (土) 05:17:18
      • お、まえ……。
        おま、え、は……。(意識が明滅する。明確な死の足音が心臓の鼓動の弱まりとなって自覚できた)
        -- シークエンス 2013-02-16 (土) 05:18:38
      • ……順を追う暇はなさそうだな。
        (頬の火傷に触れ、静かに目を閉じた)
        セディユ機関という名前を知っているならば、『セディユ』という男の存在にも、ある程度の知識があることを前提に話そう。
        もともと、セディユという『人間の深層心理に点在する何か』は、ただの人間だったんだ。
        だが、昔、神と同等の力を持ったと思い上がった五竜によって、人の形をした人ならざる存在――
        『人間のレプリカ』が生み出された際、人でありながら竜の権能を与えられた何かへと変質を遂げた。
        肉体が滅んだ後も、彼はその五竜が作り上げた『人間のレプリカ』の血を引く何かの意識に普遍的に存在する現象へと姿を変えたのだ。
        最初の五竜の間で行われた、特別な権能を付与した『人間のレプリカ』の子孫の系譜が何処まで続くかという賭けのために、その『人間のレプリカ』は人と交わり子を成せる能力を持っていた。
        そんな馬鹿げた賭けのために徒に人間に異能を授けた傲慢を、セディユという男は赦すことが出来なかった。

        だから、その五竜そのものを。
        ありとあらゆる手段で表に引きずり出し、全てを滅ぼすことを決めたんだ。
        -- ギア 2013-02-16 (土) 05:29:41
      • (じゃあ)
        (ギアの意識の表層で)
        (ギアの身体と、ギアの声を使い)
        (饒舌に語るこいつが)
        (――こいつこそが)
        -- シークエンス 2013-02-16 (土) 05:31:37

      • ティルデは楽にやれたよ。
        元々あれは、若き竜として存在していたし、己が起こした行為の罪深さに自覚的だった。
        アスタリスク・レスリスウェーバーの深層心理で時折浮き沈みしてやるだけで、自壊を選び、
        今やその瞳の権能は僅かに娘であるシリウス・ブラックタンに遺伝しただけで、失われている。

        ナブラも無力化済みだ
        ナンバー・レスリスウェーバーとシャープ・レスリスウェーバーはどちらもレプリカの血を引いていたからな。
        不自然に成らない程度に感情を内側から演出してやることで、竜としての権能を捨てさせ、
        今や竜そのものとは程遠い存在となっている。
        フェアブレンネン・プルプルファオストとして俺の動向を伺っていたようだが、
        普遍的に存在する人の意識の中にいる存在に竜の権能もなしで手が出せるわけがない。
        -- ギア 2013-02-16 (土) 05:37:32

      • ナチュラルは賭け自体に参加せずに、今や永久凍土の大地にその身を横たえているだけだ。
        あれは何にも影響をされない、ただの存在であり、現象ですらない物体だ。

        アンパサンドも時間の問題だな
        ギルド・レスリスウェーバーの脳を利用して権能を利用しているようだが、
        所詮人の器だ、時間さえ経てば俺の肉体と同じようにいずれ風化し、誰にも直接の影響を与えることが出来なくなる。

        唯一……ブラケットだけが。
        この世界の裏側に存在する混沌そのものとなった青竜だけは。

        何かのきっかけで以って世界同士を切り繋ぐ必要があったんだ。
        だから俺は、こう考えた。
        -- ギア 2013-02-16 (土) 05:44:38
      • 『その力を求める誰かが、偶然にもその門の扉を開くのを、ただ待っていようと』
        (身体の中から声が聞こえてきて、嫌悪感と怒りで痛みと虚脱感が上塗りされる)
        貴様ァァアアアア!!!
        (その言葉が本当ならば、この男は。深層意識の裏に存在する何かは)
        (動かしうる者全てを動かしうる力を以って、最初から決められたシナリオを淡々とこなすかのように)
        (――自分の描きたい最後の絵を完成させるために、人の欲求までをも利用する)
        (……実態のない最悪そのものだった)
        -- シークエンス 2013-02-16 (土) 05:48:58
      • ……ありがとう、シークエンス教授。
        俺は、ようやくブラケットを引きずり出す術を得た。
        教授が完成させた『スアルーガの門』という技術で、ブラケットから任意の要素を引きずり出せる確証を得ることが出来たよ。
        だからもう、教授と共に、ずっとあった問題は、回答する必要がないんだ。
        ――『招』。
        (呪文に呼応して、鉄柱が電磁加速の速度で虚空から撃ち出される)
        -- ギア 2013-02-16 (土) 05:57:19

      • (もはや)
        (避ける避けないではなく、呼吸すら絶え絶えの身体が)

        (後ろから何かに引っ張られるような力を以って、僅かに動く)
        (両腕を掠め、右腿を貫いた各鉄柱の勢いに押し出されるようにして)
        (僕の身体は、ふわりと崖から泳ぎ)

        (人生の最後を思わせるような落下速度で)
        (―――)
        -- シークエンス 2013-02-16 (土) 06:00:32
  • 【問8 1】せつな・本城の問題 -- 2013-02-11 (月) 19:50:55
    • ……っ。
      (痛みより先に、違和感が来た)
      (包丁を置き、指先を見ると、指先にすぅと赤い線が浮かび上がりそこに血の粒が盛り上がってくる)
      (見なければ良かったと思った時には、指先の過敏な神経が痛みを伝え始めて、じんじんとした痛みが痒みを伴って訪れる)
      (傷はそれほど深くないが、このままにしておけるほど浅くもない)
      (先の料理の工程をひと通り頭の中で描いて問題ないことを確かめてから、火を止め、少しだけ止血布を取りにキッチンから離れた)
      (自炊を本格的に初めてから四年。今更包丁でミスをするとは。少しだけ反省する)
      (と同時に、何故そんな基本的なミスを犯したのか、という点に思考を巡らせると、余り良くない結果が解答として返ってくる)
      はぁ……。
      (胸の内の懊悩を外に吐き出すように、溜息を零し、おじちゃんの押入れの中から止血布を取り出して指に巻いた)
      -- せつな 2013-02-11 (月) 19:57:56
      • (すぱぁん! とふすまを開けて隣の部屋から現れる)
        ………っ(切羽詰まった表情でせつなを見つけると、何と言っていいものやら、目と手が泳いだ)
        -- プロミネンス 2013-02-11 (月) 20:00:14
      • ひぃう!! (ビクッとして顔を上げると、そこにはプロミーがいた。あ、こっちの家の方にいたんだ、気づかなかったと言うより先に)
        (数年の付き合いなのに、今まで一度も見たことのない表情をしていることが、とても気になった)
        ……プロミー、どうしたの?
        -- せつな 2013-02-11 (月) 20:02:39
      • (あわあわと手を動かしてどう説明したものやら迷っていたが、どうも詳しい説明を諦め、真実だけを簡潔に告げることにした)
        ……弟がな、来るっぽいのじゃ
        あああ……いつか来るとは思っておったが、こんなに早いとは聞いておらぬぞ……何処でバレた……。(頭を抱える)
        -- プロミネンス 2013-02-11 (月) 20:07:12
      • ……え。プロミー、姉弟いたんだ……。
        ……?? 何か、不味いの?(救急箱を元の場所に仕舞いながら)
        -- せつな 2013-02-11 (月) 20:09:55
      • ……んむ。……話していいものやら話すべきではないのやらで、わらわも混乱しておるが……。
        相当に不味い。居場所がわかればすぐにでも連れ戻す気でおるであろうことが、明白なのじゃ……。
        最悪の場合、実力行使で連れ戻される可能性もある……。この数年、血眼で探し回っていたようであるしの……(寒気を感じたのか震えながら言う)
        -- プロミネンス 2013-02-11 (月) 20:17:33
      • あー……心配性な弟さんなんだ? -- せつな 2013-02-11 (月) 20:18:45
      • 心配性、というかの……!! そういう、なんか分類出来ぬ感じの弟なのじゃ!!
        愛情を何かと履き違えているというか、奴め恐らく実力行使に出るとなれば此方の都合など全く意に介さず一気に殲滅戦に出ると確信できる……!
        最悪大学を含めたこの地域一帯が地図から消滅することになる。うん。困る。(何度も頷く)
        -- プロミネンス 2013-02-11 (月) 20:21:10
      • しょ!? えっ!? 弟さんおかしくない!?
        えっそれ、ちょっと問題の規模が大きすぎるよ!? プロミー、どうしようそれ、おじちゃんに相談したほうがいいんじゃ……! 不味いどころの話じゃないよね!?
        -- せつな 2013-02-11 (月) 20:22:39
      • しかもお家の命令を背負っている部分もあるであろうし、婦警(FK3)もどちらに味方するか分からんゆえ、
        放っておけばケンマにも被害が及ぶっていう……ううう……。
        ん? 何故あの眼帯に相談する必要がある? こういう状況であるなら、尚更。
        -- プロミネンス 2013-02-11 (月) 20:24:51
      • えっ……(言われて、ドキンとする。それが、無意識に自分がおじちゃんを頼ろうとしての発言だと、プロミーにすら見抜かれていたのだとしたら)
        ……で、でも……その、不味いって。問題を解決するには。
        (胸に痛みが走る)……おじちゃんの力がいるんじゃないかな、って。
        -- せつな 2013-02-11 (月) 20:26:13
      • ………。(一瞬きょとんとして)
        ああ、いや、違うぞ。わらわが言いたいのは。
        ……わらわがいなくて、せつなが大丈夫かと、そう尋ねているのじゃが。
        よりにもよって、せつなが不安定な時期に、わらわが居なくて……せつなが上手くやれるのか、少しだけ心配ではあるからのー。
        弟の問題は、わらわ一人でどうにかなる部分もある。奴は弟ではあるがわらわは姉でもある。
        だったら、弟に出来ることを姉が出来ぬ訳はない。抗うくらいは出来ようものだが……その間、本来の使命であるせつなの護衛につけなくなる。
        シークエンスと、その、なんか気まずくなっている今、わらわが居なくても大丈夫か……?
        -- プロミネンス 2013-02-11 (月) 20:29:15
      • (言われて、初めて自覚することもある)
        (そのプロミーの気遣いは、これ以上ない程に的を射ていて、少しだけあたしは言葉に詰まった)
        -- せつな 2013-02-11 (月) 20:31:25
      • そ、っか。ごめんね、プロミー。
        心配、掛けちゃってたんだね。ちょっと、思うところがあって……。
        あたしは、うん、大丈夫だから……プロミーはプロミーの問題を解決したほうが、あたしも嬉しいかな。
        何か力になれることがあったら、言ってね。もしかしたら、役に立たないかもしれないけど。力に、なるから。
        (自分でも思う、なんて説得力のない言葉だろう、と)
        -- せつな 2013-02-11 (月) 20:36:07
      • 恩に着るし、ここぞという場面で側におれんわらわを許してほしい。……問題が解決すれば、すぐにでも力になろうぞ。
        (ごにょごにょと口の中で何かを呟き)せつな。
        一つだけ、友達として忠告、というかなんというか、言っていいかの。
        どうも最近のせつなは、わらわが思うに、冒険者を志して最初に挫折する前のせつなに、戻ってしまっているように見える。
        自分の手で全部の助けを求める相手を救うなんて無茶なことを考えていた時のせつなと、同じ顔してると思う。
        それが、何を原因にしての変化か、わらわには分からんが、わらわも……その、シークエンスも、恐らく助力くらいは喜んでするんじゃぞ。
        ……まあ、今のわらわが言ってもどうかと思うが。(ぽりぽりと頬を掻く)
        -- プロミネンス 2013-02-11 (月) 20:40:43
      • (それは、とても正しい評価だと思った。それを、はっきり言ってくれることも含めて)
        うん。あたしも……本当にダメだと思った時は、助けて貰うことにしてるし。
        ごめんね、こっちこそ……プロミーも大変なのに、変な気使わせちゃって。
        -- せつな 2013-02-11 (月) 20:43:02
      • ふふん、この程度、わらわは何でもないわ。忘れておったがアグニとかいうアホも味方してくれるかもしれんしの。
        ……弱みを知られないよう、弟がいるっていうことは、くれぐれもあの阿呆には伝わらんようにしてほしい、頼む。
        (奥の部屋からアラートが聞こえる)あああーーーーーー、うっさいのぉ!! どこでわらわのアドレス調達したんじゃあの愚弟!!
        直接メール投げてきよる!!(隣の部屋に戻っていく)
        \こっちの星で名乗る名前決めたとかこやつマジでわらわが帰るって言うまでこっちにおるつもりか!! セブンスレイってなんじゃい!! 着拒!/
        -- プロミネンス 2013-02-11 (月) 20:48:09

      • (隣の部屋から聞こえてくるそんな声に苦笑しながらも、やはりプロミーから言われた言葉が心の中を渦巻く)
        (客観的に見て、自分の状態というものはおかしく見えるのだろうか)
        (見えるのだろう……自分でも、今の状態が自分にとって良い状態だとは到底思えてはいなかった)
        -- せつな 2013-02-16 (土) 02:38:20
      • (自分が不安定な理由に思い当たらない訳ではない。だけど、それは一言で言い尽くせない程多様な問題であることも自覚があった)

        (二ヶ月前、自分は同じ大学に通うエスト・フォックステイル・新山を救おうとした)
        (彼女が抱えている問題を、解決しようとした)
        (愚かしくも、ずっと憧れていたシークエンス先生のように、シロマル先生のようにである)
        (誰かの力に……自分の大切な人の力になってあげたかったのだ)

        (でも、あたしは失敗した)
        (おじちゃんに、ロレン君に、ウィッカに、トラに協力してもらって、なおその目的は達成出来なかった)
        (あたしは、エストに負けた)
        (その後、ロレン君が場を治めてくれたと伝聞で聞いたけれど、それがなければ、あるいはエストは大見得を切ったあたしのせいで彼女はあたしの前からいなくなっていたかもしれない)

        (守れなかった)
        (自分が、一番守りたかった誰かの繋がりを、誰かとの繋がりを、他ならぬあたしが守り切ることが出来なかった)
        -- せつな 2013-02-16 (土) 02:41:06

      • (――指先が、ジンと痛い)

        (先月実施されたエストナ式階梯試験に通りあたしは召喚術の階梯を11階梯に上げた)
        (多重召還と量的魔力行使の二重錯綜問題は少しだけ苦戦したけれど、それでも事前に対策を取ればそれ程難のある問題ではなかった)
        (……おじちゃんは褒めてくれた)
        (自分の階梯を超えたと同時に、11階梯とは努力だけでは到達できない才能の上限を超えた階梯だと)
        (そこを以って魔術師と自称する者も多く、自分が終に成ることが出来なかった魔術師の入り口であると)
        (……でも自分は、その褒め言葉を素直に喜ぶことが出来なかった)
        (理由の一つは、その11階梯の魔術師であっても。本当に助けたい友人の一人も助け得なかったことだ)
        (いくら試験に通って何かに認めてもらっても、傍に転がる問題の一つも解決できない11階梯に意味があるのか)
        (あたしが3年半で培ってきた物は、一体何だったのか)
        (それにすら解答を返せないような人間が、11階梯を名乗ることの意味が、あたしには分からなくなっていた)

        (――そしてもう一つ、理由があるとすれば)
        (おじちゃんがそれを本心で褒め、本心で喜んでいる訳ではないということが……付き合いが長いから、あたしには分かってしまっていることだ)
        (もちろん、おじちゃんはあたしの先生として、あたしの成長を喜んでくれるし、今回あたしが11階梯に上がったことを実際喜んでくれてもいる)
        (でもそれ以上に、その言葉は今のあたしと同じように、本当に話さなければならない内容とかけ離れているために、その言葉には重みがなかった)
        (ただの単語の繋がりであり、意味を成さない呪文であった)
        (本当は、話したいことも、話さないといけないこともあるのに、どちらからも切り出せずに、少しずつ二人の関係は疎遠になっていっている)
        (実際の距離や話している言葉は変わらない。どこにでもある日常の会話は外から見たら何も変わりない二人に見えるだろう)
        (でも、本当に話さなければならないことを棚上げして、どこか空虚な会話を続ける二人の間には、二人にしか分からない距離が空き始めていた)
        -- せつな 2013-02-16 (土) 02:44:25
      • (指先が痛む)
        (大学生活は四年目も半ばを過ぎ、卒論ももう纏めに入っている)
        (大学生活は大学の認可さえあれば研究生として二年の延長、院生として四年の延長を許されている)
        (ただ、あたしが隣国の大学に行くことを決めたとき、お母さんやアニキと約束したのは、大学生としての四年間の自由だけであり)
        (つまりは、もうあたしがこの大学を卒業する日が徐々に迫っているということになる)

        (それが、あたしの気を重くしている原因の一つである)
        (卒業後。あたしは隣国に帰らないといけない)
        (他のみんなはどうするか、まだ知らない。それでもそこに別れが存在するのは確実で、それは逃れられない決定した予定でもある)
        (それ自体はいい。あたしももうアニキがいなくなって泣いていた子供ではない)

        (でも、そうやって別れて、また本城の家に戻る段階になっても、あたしは何も修めてはいなかった)
        (魔術師としては確かに成長したかもしれない。それでも、大学生活で何かを掴めたかと言われれば、素直に首を縦には振れない)
        (正確に言うならば、縦に振れるつもりでいたけれど、エストの一件で何一つ出来なかった記憶が、あたしの首を縦に振らせてくれない)
        (自信は、安心は……失敗で打ち砕かれた)
        (あたしは、この大学生活で、何も……何一つ、修めていないのではないか)
        (そんな気にさえなっていた)
        -- せつな 2013-02-16 (土) 02:46:53
      • (おじちゃんは、三年前、あたしに言った)
        (「せつながどうするか決めるのは、卒業してからでも遅くない」と)
        (「それからの道を決めるのは、ゆっくり視野を広げてからでも遅くない」と)
        (――それまではおじちゃんは待っていてくれる。と……)

        (普段なら、心臓の一つも高鳴るところなのだろうが、胸だけが苦しくなる)
        (四年も経てば、自分で決めたこの道で四年も歩めば、自分も何かを掴むことができる程度には、おじちゃんの傍で成長できると思っていた)
        (でも、現実は、明瞭になった視野で互いの距離の遠さを知るだけの結末が残った。残ってしまった)
        (あたしはこの四年間。何を積み重ねて来たんだろう)
        (こんな、何も成しえていない自分が胸を張って、卒業を迎えたからという理由でおじちゃんに、回答を求めることが出来るのだろうか)
        (そんな暗澹とした気持ちが今も胸の中で蟠っていて、それは静かにため息となって外に漏れた)
        -- せつな 2013-02-16 (土) 02:48:49

      • ピンポン
        (と、インターフォンが鳴り、少し地面から飛び上がってしまう程驚き、あたしはドアを見る)
        (おじちゃんが帰って来たんだろうか、でもそれにして早い、こんな顔見せられない、とひと通り考えを巡らせた上で)
        (自分の家に、部屋に帰って来るのにインターフォンを鳴らす人などいない、という単純なことに気付く)
        (来客、ということは、応対しないといけない)
        (エプロンを外して畳み、キッチンの下に仕舞うと、ドアに近づき、声を掛ける)
        は、はぁ〜い……? (自分の存在を示す気の抜けた声が出る)
        -- せつな 2013-02-16 (土) 02:55:30

      • ……女の声、ね。
        -- 2013-02-16 (土) 02:58:42

      • (何かをぼそりと呟いたような声が聞こえて来たものの、誰何の声はドア越しに届かなかったようで)
        (静かに覗き穴を覗くと)
        (――そこには、ブロンドの美人が立っていた)
        (すれ違う者全てが振り返らざるを得ないであろう美貌を自覚していなければあの角度では立てない)
        (ジィ義姉も綺麗な方だけれど、人造の美と自然の美の違いのように明確な違いが見て取れてしまう)

        (恐る恐るドアを開けると、そのあたしより少し目線の高い美人はにこりと笑うと)

        ドアの隙間に、足をねじ込んで来た
        -- せつな 2013-02-16 (土) 03:02:05

      • ごめんね。お邪魔するわ。
        へえ、彼結構綺麗にしてるじゃない。
        昔は無精髭もそのままのだらしない感じだったのに。
        ――それとも、貴女が綺麗にしてくれているのかしらね。
        -- 2013-02-16 (土) 03:04:08

      • (思わず、その傍若無人さに自分の警戒心が先立ち、魔力が形を形成せずに因縁の形で表出する)
        (あたしが止める間も無く雷の形を形成した魔力は、金髪の美人の右手に難なく掴まれる
        (出会って一瞬、放たれて須臾。構成すら歪な魔力の表出を指先で掴むその正確な魔術の行使を見て)
        (自分がもし本気を出したとしても勝てる相手ではないことを、本能的に悟った)

        (友好的な口ぶりの相手ほど疑って掛かれというおじちゃんの言葉が蘇るが……それ以上に)
        (彼女が口にした断片的な情報によって擽られた興味の方が、僅かに上回った)

        あの……。
        どちら、様ですか……?
        -- せつな 2013-02-16 (土) 03:08:48

      • 私? そうね。
        名乗る時は一番誇れる名前を仰々しく突きつけることが、
        『彼』の教えだからそうさせてもらうわね。
        (髪をかき上げ、敵意も悪意も全て笑顔に変えるしたたかさで微笑んだ)
        -- 2013-02-16 (土) 03:11:20

      • この部屋の主、セータ・シークエンスに。
        ――昔、フラれた、二番目の男よ。


        -- テレシア 2013-02-16 (土) 03:12:33
  • 【問8 0】セータ・シークエンスの問題 -- 2013-01-30 (水) 22:35:43
    • (魔術師『セータ・シークエンス』の書庫は仄暗い)
      (元教え子である、せつな・本城が自分に向けて指摘してくれた事実だった)
      (大学の個人貸与される教員書庫のA領域……つまり、本人閲覧書庫の中に入ると、確かにその空間は文字を追うには仄暗かった)
      (蔵書を増やすことに執心していた20代の頃に比べれば目も霞んでいることを差し引いても、そこは余りにも暗かった)
      (20代の後半、そういえば視力の低下によりグラスを掛けていた時期があったが、原因はこれだったのかと、更に20年の歳を重ねてようやく気付くことになる)
      (当時は……そんな誰でも気付く程のことにすら思考を分け与える暇なく、この32万冊を屍を貪る餓鬼のように読み漁っていたことを思い出す)
      -- 2013-01-30 (水) 22:43:45
      • (あれから、蔵書は増えていない。本の中に望む解答がないと知るまで、愚かな僕は七年も掛かってしまった)
        (蔵書が増えないのも無理からぬことで、現在をしてもセータ・シークエンスは魔術を専門に取り扱う大学に勤務しているが、既に魔術師としては死を迎えていたからだ)
        (研究室を持たず、専門分野の開拓もなく、新しい何かを見つけることもない)
        (どちらかといえば自分は経営者であり、同時に労働者でもあった)
        (階梯も功績を加味しても10で止まり、実質の階梯はせいぜいが9、常に単一動作で行える魔術は8階梯が関の山だ)
        (かつて一度使用出来なくなった魔術回路を無理矢理に継ぎ接ぎしての魔術師だったのだ、良く持った方であるし、良くその階梯を名乗れたものだと思う)
        (先の春の階梯試験にて、元教え子のせつな・本城がようやく自分を超える11階梯の魔術師に認定された)
        (そこにある複雑な感情を他人に理解しろというのは酷な話だが、単一の形容詞で表現できるほど単純ではないため、このくらいは墓まで持って行こうと思っていた)
        -- 2013-01-30 (水) 22:52:18
      • (蔵書から一冊を取り出し捲っていると、そのせつなの貼った付箋に気がつく)
        (几帳面にも、芝虎の一件の後全ての蔵書から自分のメモ書きや走り書きを、使用前の状態に戻したと聞いたが、その忘れ物であるらしい)
        (この書庫でせつなが何を信じ、何を知り、何を想像したかは知る由もない)
        (ただ、そこに存在していたのは教師としての義務感や、旧知としての愛情、といった綺麗な感情だけでないことも自覚していた)

        (恐らく自分の中にせつなへの罪悪感というものが、長年の澱のように自分の中に溜まっているのではないかと、そう自己分析をする)
        (それが故に……或いは自分は、せつな本城という罪の形を自分の身辺に置いているのではないかという邪推まで誘う)
        (そこにあるのは、以前せつなを見て思った執着や愛着などの感情とは断じて違う)
        (……僕が、僕の罪や傷の形を忘れないための、外部装置とでも思っているんじゃないかと、時々恐ろしくなる)
        (許されたいという願望と、許されないことへの罪悪感の具現化をした存在が……自分にとっての、せつな本城なのではないかと)
        -- 2013-01-30 (水) 23:00:12

      • ………。

        (マイナスの方向に思考が進みそうだったので、考えを中断する)
        (余り突き詰めて考えてしまえば、不器用な自分は今までどおりせつなと接することが出来なくなる)
        (ただでさえ、今せつなは自分がエストを救えなかったことを、どこか気にしている様子がある)
        (挙動にこそ出ていないが、どこか動作の端々にそれらしき思考が見え隠れする)
        (こういう時、気づいてしまえる自分の器用さと、それを隠し切れない自分の不器用さの、アンバランスさに頭が痛い)
        (気遣えば無理をし、更にその兆候をわかりにくくするのが、せつなの生き方であり、せつなの自然体だった)
        (だったら、根源の属性を傷に持つ者としては、その傷が自然に治癒するまで、如何に痛みを堪える様が悲痛であろうが、見守る他ない)
        (卒論で少しばかり疎遠になったことを有難いと思う程度には、自分も汚い大人であると思った)
        -- 2013-01-30 (水) 23:10:13

      • (エストの件に、せつながあれ程の執着を見せ、今も引きずっていることには理由が存在する)
        (せつなは根源属性を『繋ぐ』という動作に持つ魔術師である)
        (魔術師学会でもやや『生来説』が優勢であるものの、『後天説』という派閥があるように、魔術師はその生まれのみならず、歩んできた人生によって根源たる属性が変化をする者が存在する)
        (恐らくは、せつなもその類の魔術師であり、彼女と『繋ぐ』行為を結び付ける出来事というのは、少なからず思い当たる事があった)

        (本城せつなという少女は二度、家族との別れを経験していた)
        (一度は父と、そして、戻っては来たがそれとほぼ近い時期に、兄と)
        (その家族との離別はせつなに大きなショックを与え、それが故にせつなという少女は他人より『別れ』や『諍い』に強い嫌悪を示す)
        (諍いは別れを生み、別れが悲しみを生むことを知っている為に、献身し、時にはその身を捧げる)
        (何処かの右目を失った人間が行う、打算での献身と違い、本人の信念に基づいた立派な誰かを助ける理由であると、僕は思う)
        (だからこそ……本質的に、自分とせつなとは、相容れる存在ではないのだ)
        -- 2013-01-30 (水) 23:29:41
      • (自分は――彼女の兄の、本城剣馬を殺そうとしたことがある

        (正確には、己の目的の達成のための、犠牲にしようとしたことが、拭い去れない事実として存在していた)
        (誰よりも別れを嫌う少女に別れを齎し、誰よりも諍いを嫌う少女の最も親しい二人が命をかけて争う)
        (本城せつなにとっての、最悪の存在がそこにいた)

        (目を瞑り、本を閉じる。二度ほど、意味なく頭を横に振った)
        (手に持っていた本……ジェラード・ブラックタンという隣国の境界登録召喚士が書いた媒介召喚法。何度も読みなおしたそれを、Gの棚に戻す)
        (そう)
        (この蔵書林を作り上げた時の魔術師『セータ・シークエンス』には、『理由』が存在した)
        (32冊を思考領域の魔術拡充に依って理論を分解し、幾重にも分析を重ねた『情熱』が存在した)
        (異国の本までを使い、百凡であった魔術師であるはずの己が、根源属性である傷を利用した『スアルーガの門』などという空間開闢能力にまで到達した――『執念』が存在した)

        (10代が、幼馴染の中で幸福に暮らす、幼馴染としての僕の物語だとするなら)
        (20代の魔術師として歩み始めた当時は……兄としての、僕の物語であると言える)
        (全ての理由は『妹』であるところの、イヴミア・シークエンスの蘇生という絶対命題へ帰結する時期に)
        (この、妄執渦巻く本の林は作られたのだ)
        -- 2013-01-30 (水) 23:40:54

      • (一つの言い訳の為に、何処まで遡るべきかは、少し悩むところであった)
        (ただ、この誰にも語る事が出来ない物語の端書をするならば、やはり序章は自分の生まれを説明することになる)

        (僕は、母親が僕を孕んだ時から、既に外の世界で生きられないことを約束されていた
        (何せ、人として不完全な形……具体的に言えば、『二つの個体に分かれてしまっていた
        (羊水という液体の中で辛うじて生を保っている状態であり、その庇護下でしか生きられない不完全な生き物だったそうだ)
        (何かの奇跡でも起こらない限り死産は免れず、当時のエストナの遠隔魔術治療でもどうしようもない状態に陥っていた)
        -- 2013-01-30 (水) 23:50:50
      • (当時の父母。名を記せば驚く者もいるかもしれない)
        (世界的な数学者アイプシロン・シークエンスとその妻は『セディユ機関』という組織に所属し、研究を行なっていた)
        (機関が研究を行なっていたのは、竜の権能を人間に移植することが出来ないかという物だった)
        (その研究は、竜の権能である外界への絶対支配を内側へと変換した『己の望む姿へと己を変貌させる』という技術『ブレインミキサー』にまで到達をしようとしていた)
        (当時、この技術は、生まれる前の胎児にそれを施すファーストフェイズの完成の目処がついており)
        (記憶障害等脳に影響が出る可能性が12%を超えているものの、非融和による死亡確率は1%を切る、成功時のリターンに対してはリスクの少ない技術であるという認識が、機関内に存在していた)
        (当初死亡率が92%を超えていた、最初の被験成功者シルコンフレクス・レスリスウェーバーの時代に比べれば、いくらかその認識も無理からぬ話であると納得も出来そうになる)
        (そしてその13%を切るリスクは、死産を目の前にしたシークエンス夫妻にとっては、87%の希望にしか見えていなかったことと思う)

        (僕は、ここから先、結果までを、詳しく聞いた訳ではない。結末としてミュー・シークエンスという同じくセディユ機関に勤めている実姉に、僕の身体にどういうことが起こったかは聞き、ある程度は理解しているつもりではあるが)
        (そこにどんな決断があったのか)
        (具体的に、どの程度の施術が施されたのか)
        妊娠状態の母親の胎盤を外に完全に取り出しての長時間施術となるそのブレインミキサー手術に挑んだ理由が)
        (母親の愛情から来た献身なのか、組織の研究にその身を捧げた狂信なのか、施術を決定した父アイプシロンの狂気に従った従順なのか)
        (それは、今の僕には知る由もない)
        -- 2013-01-31 (木) 00:07:01

      • (――施術は成功した)
        (『こうありたい、という姿に変遷する』ブレインミキサーの権能は正しく発動し、『生きたい』という意思によって僕の身体は正しく形成することになる)
        (僕はブレインミキサーのセカンドフェイズである、ある程度脳の機能が完成してからの施術によって『ブレインミキサー』を発症した、最初の存在だったらしい)
        (故に、名を第二の未知数を示すエータを文字り、セータと名付けられた。第一世代の最初の成功体が『ピリオド(単一点)』という名であることを聞いたとき、失笑が漏れたものだ)

        (だが、神を冒涜するかのような権能の付与は、ありえない生を生み出した代償としてか、その副産物としてか……目的と結果を大きくズラすこととなる)
        (どんな状態だったかを詳しく聞くことは吐き気を催すので聞きはしなかったが、ブレインミキサーの処置が行われた時の自分は、余りにも綺麗に二つに分かれすぎていたらしい)
        (だから、そのブレインミキサーが齎した『生きたいという意思に反応して生きる権能』は、その2つの個体それぞれに結果を齎すことになる)
        (つまり、セータ・シークエンスは2つに分かれ、それぞれの不足分をブレインミキサーという権能で補うことで、2つの個体となったらしい)
        (染色体XYを二つに分け、互いがXを補う事でXYの男児とXXの女児となり……片方に当初の予定どおりセータと)
        (もう片方に……アダムの脇腹から生まれたと言われている、イヴを文字ってイヴミアと名付けた)
        (イヴミア・シークエンス……現在、アグニという炎の化身となって僕の家で暮らしている、僕の半身だ)
        -- 2013-01-31 (木) 00:25:22

      • ………。

        (嘆息する)
        (僕らは最初から、そうやって一つの魂を二つに分けることで二つの個体として生まれてくることになる)
        (それが故に、幼い身ながら互いを求め合うこととなり、その禁忌に溺れていった)
        (互いの喪失した半身を求め合い、それが禁忌だという感情も理解できないままその行為には明確な罰が与えられる)

        (燕舞天神社の裏。僕らの密会は凄惨な血の匂いと死によって分かたれる)
        (元々、あの場というものは早池峰の血筋が代々守り続ける必要があるほど、怪異が現出しやすい場所でもあることを、後で聞いた)
        (だからこそ人が寄り付かず、父母に隠れて会っていた僕らには好都合で、そして最悪の結末を齎すのに最適の場所だったとも言える)
        (綻びよりい出た怪異……後に、それは隣の世界に横たわる混沌と化した竜であることを知ったが、その化け物は妹を食らい、僕の腹に大穴を開けた)
        (互いに致命の傷であるにも関わらず、僕の方は魔術の根源属性と死してなお僕の身を案じた妹によって一命を取り留めることになる)
        (その時はまだ、そのことに気づかずに……ただ、自身の身に降りかかった不運を嘆きながら)
        (自分の向ける場所のない衝動を自分の面影を見たスタッドのような異端に向けるだけの、ただのガキであったことを思い出して、疼痛を呼び起こす)
        (正当に捻くれるだけの理由に抗うだけの何かも、空洞になった肚には何一つなく……僕は、捻くれた大人になるための準備を、ゆっくりと進めていった)
        -- シークエンス 2013-02-02 (土) 02:58:42
      • (その自分の不自然な生が瓦解したのは、冒険で二度目の死を迎えた時だった)
        (僕の肚の傷は背中まで到達し、ようやく僕は何かによって生かされていることに気づくことが出来た)
        (肚に開いた口は、口などではなく、それ自体が後に『スアルーガの門』と僕が呼ぶことになる、混沌に対して開いた門そのものだったのだ)
        (僕はそこから、僕の妹を不完全な形で創りあげてしまう。……そう、誰かの手によって)
        (僕は、そいつの名前を思い出せない。アグニとの最初の邂逅に、とても大切な誰かが側にいたはずなのに、そのことを朧気にでも思い出せないのだ。……歳は取りたくないと、そう思う)
        (そうして、僕は混沌の中に存在していた妹の破片を取り出し、妹に似た何かを作り上げることに成功してしまう)
        (本人にも自覚があるように、『アグニ』は、あらゆる属性を内包する混沌から『イヴミア』の要素を抽出した妹ではない何かであることは知っていた)
        (それでも僕は……もう一度、イヴに会いたかった)
        (イヴに、謝りたかったんだ)
        (幸せな20代を過ごしてしまったことを)
        (恵まれた幼馴染に囲まれて、僕だけがのうのうと暮らしてきたことを)
        (そして、曖昧な理論と契約でアグニがその形を維持出来なくなるその時から……僕の人生を全て捧げてでも、その妹の偶像を完成させることを、強く誓っていた)
        (例え、何かを犠牲にしてでも)
        (アグニ以外の、全てを犠牲にしてでも)
        -- シークエンス 2013-02-02 (土) 03:06:55

      • (20代で遅れて隣国の大学に入り、我武者羅に召喚学を学んだ)
        (この世界にあるあらゆる召喚術を修める気概と、病的なまでの衝動に任せ、最初の一年は今や思い出すことも出来ないほど学び散らした)
        (一年でそれを終えたのは、目的に到達したからではなく、独力でそれを成すことの不可能さを思い知ったからだった)
        (根源属性が『傷』という負の属性であったことに加え、一度魔力回路を切断された僕は魔術師として優秀どころか不出来である現状が、全ての道を閉ざした)
        (二年目、三年目と進むに連れて情動や気概だけで前に進むことが出来ないようになり、僕は一度立ち止まることになる)
        (そんなとき声を掛けてきたのが、ゼンアード・ギュスネイヴル前評議長……当時の第八教室室長だった)
        (助教授であることより、専門が召喚術であることより、先に大学での二つ名が『交通事故』であることを知っていたので、それはそれは第一印象は最悪で、その印象は今に至るまで一貫して変わることはない)
        (一時期は宮廷魔術師奨励生にまで名を連ねたはずの真面目だけが取り柄の三流魔術師は、それこそ出会い頭の事故のようにその男に巻き込まれていくことになる)

        (あの頃を思い出そうとすると、今でも酷い頭痛が走る)
        (僕が入った当時の第八教室は、僕の後輩としてシロマル達が入ってくるまで、ゼンアード以外の10人が全て女性だった。僕の人生で10代の頃に次いで女っ気が多く、そして生涯で最も血を見た三年間だった)
        (具体的に思い出そうとすればするほど、吐き気を催す)
        (誰だって、腕を折られ、全力で殴られ、口論になれば集中砲火され、腕を折られ、全力で弄られ、地味顔に地味顔と言っただけで昏倒させられ)
        (爆発して、引き裂かれて、実験させられそうになり、全身の毛を剃られ、腕を折られ、腕を折られ、留年になり、腕を折られるような思い出を思い出そうとすれば無理からぬ話だろう……)
        -- シークエンス 2013-02-02 (土) 03:18:46
      • (大学院を卒業後は、そのまま研究室に残ることを選び、レネスに室長を明け渡すまでの短い期間、助教授となり第八教室の室長を務めた)
        (問題児揃いの第八教室は天才シロマル・ルーデンスの出現によって徐々に株を上げ始めた頃だったが、結局はエクアの起こした事件で奇行が目立ち始め)
        (最終的にランドやバージルといった僕の後輩が色々やらかしたせいで【女子高生最強】柊侍童という16階梯の怪物を生み出した教室であるにも関わらず、名誉は完全に地に落ちてめり込んだ)
        (今でも明確に思い出せる、ぎりぎりの記憶がこの辺りだ。歳は取りたくないと思う)
        (その後、僕はシロマルの退学を巡って事件を起こし、大学を追われることになる)
        (その間も、ゼンアードの人脈で大学の書庫は利用させてもらっていたし、退学自体は自分の目的達成の障害にはなりえなかった)
        (それに、どんな縁があるかは知らないが、若いうちに貯蓄していた不幸の払い戻しがここに来て帰ってきたのか、大学側より隣国……つまり、冒険者の街がある国の学園への道を斡旋してくれることとなる)

        (後に……忘れられないカテン・ナイトウェストと出会うことになる……ゴルロア学園への道が、ここで開いたのだ)
        (元気でやってるんだろうか……結婚とかしてないだろうな……まさかな……順番で言えば僕だろ……)
        -- シークエンス 2013-02-02 (土) 03:32:06
      • (この隣国への招待は、結果として僕にとって一つの天啓の足がかりとなる)
        (姪であるジィ・キスマークの家に厄介になることになり、そこで本城家と繋がりを持ち、聖杯戦争の存在を知る)
        (万能の願望器という眉唾な噂の為にいくつもの生命が散らされるその戦争自体には何ら興味はなかったが)
        (――そこに挑む、本城剣馬……せつなの兄には、並々ならぬ興味を引かれた)

        (一つ。聖杯戦争を通じて、剣馬がセイバーを僕の召喚理論に基づいて召喚せしめたこと)
         (二つ。スアルーガの門の開門の条件であるところの、この地で生まれ、この地で生きた者であったこと)
           (最後に――その名前の中に、剣を宿していたこと)

        (アグニは、僕の腹から召喚をされたとき、自身を『剣魔』と名乗ったのだ)
        (僕の不幸続きの人生で、これだけの偶然が容易に起こるとは思えず……そこには、神の意思のような物まで垣間見えた)
        (これを利用しなければ、僕は永遠に解答に辿り着けない)
        (剣馬は、僕の為に、僕の目的を達成するために神が遣わした何かであると、信じて疑わなかった)
        (自分の努力で物事を達成出来ない卑屈さと、その人生に付き合ってきたことによる疲労によって)
        (僕は、容易にそれを奇跡と信じ、それを成す罪を背負い、自らの生命で贖うことによって……『イヴミア』を生き返らせようとした)

        (例え)
        (剣馬が、姪・ジィの恋人であったとしても)
        (――本城せつなの……別れを誰よりも怖がる無垢な少女の、たった一人の兄だったとしても)
        -- シークエンス 2013-02-02 (土) 03:40:29

      • (その計画は実行され)
        (妹は『アグニ』として現世に生まれ、無尽蔵とも言える剣馬の魔力を吸うことで現界し続けることとなり)
        (剣馬は『スアルーガの門』をその腹に、僕と同じように宿すことになり)
        (僕は、せつなやジィに赦された)

        (――赦された、ことになっている)
        -- シークエンス 2013-02-02 (土) 03:44:14

      • (それこそが、僕が犯した……最後の過ちだった)
        (僕は、赦されたんじゃない……赦されたかったんだ)
        (剣馬に)
        (ジィに)
        (イヴに)

        (――せつなに)

        (瞳を閉じる)
        (僕は、キーや、アキより、長く生き過ぎた)
        (自分が一番なりたくなかった大人に、魔術師に、人間になってしまった)
        (本当に大切な物まで傷つける不器用さで、厚顔無恥に生きてきただけの、ただの恥さらしだ)

        (僅かに、胸に痛みが走る)

        (もし、これから先の僕の人生の物語を綴ることが許されるなら)
        (それがどんなに無惨な内容であっても、必ず約束されていることがある)
        (僕のこの、長く続けてきた物語は……セータ・シークエンスの問題は……僕の罪を、僕の死で贖うことで締めくくられるだろう)

        (じゃあ、始めよう)
        (これが――僕が語る、本当に最期の話になるだろうから)
        -- シークエンス 2013-02-02 (土) 03:52:22
  •   -- 2013-01-30 (水) 22:35:11
  •   -- 2013-01-30 (水) 22:35:07
  • 【問7 7】フォックステイルの解答 -- 2013-01-27 (日) 18:20:03
    • (校門より外へと出ると、珍しいことに出迎えがあった。そんな上品な人生を送っているつもりはなかったので、それもまた愉快だった)
      (それでなくてもいくらか楽しめた茶番の余韻で上機嫌だというのに、戦争屋としたことが生の感情が外に漏れてしまいそうになる)
      (肩を竦めて苦笑をすると、その相手はいつも通りの不機嫌さで此方を睥睨してきた)
      -- キリス 2013-01-27 (日) 18:47:45
      • ……散々此方を待たせておいて、随分と上機嫌だな、フォックステイル。
        それとも、此方が貴様の落ち度を探そうとしてそう見えているなら謝るが、貴様の個人的な遊戯に私はどれだけ待たされればいい
        -- 2013-01-27 (日) 18:52:48
      • 阿呆の真似事などしてみれば、少しは楽しめた物でな。失礼、充分に愉しむ事が出来た故に嗤い顔にもなる。
        待たせた事を謝ることも出来るだろうが、それよりは更にそれをコインとしてベッドして支払い金額を釣り上げる方法で報いることは出来るだろうか。
        それだけ、この度の遠征には価値があるとワタシの目は視ているのだが信頼に足らぬかね?
        -- キリス 2013-01-27 (日) 18:55:23
      • 足らんな。
        元より実利と結果のみが価値であると先人も言っている。未来の馳走では腹は膨れん。
        その首と身体が泣き別れる程に私の不興を買う前にこちらが希望した場所まで案内して欲しい物だが。
        ……上機嫌であったが、件の同族の娘を連れて来たわけではないのか?
        -- 2013-01-27 (日) 18:58:47
      • フラれたよ。こっ酷くな。三文芝居の茶番まで見せられて実に退屈で面白い時間だったさ。
        結局序列五位・新山は悪の戦争屋になど靡かずに己の道を己の信じた仲間と歩むという話だ。実に重畳なことじゃないか。
        -- キリス 2013-01-27 (日) 19:02:02
      • ではその下らぬ茶番すらなしに幾日も剣を夜露で錆びさせていた私は更なる戯けであるようだな。
        ……下らぬ。貴様は一体何をしたかったのだ、キリス・フォックステイル皇木。
        -- 2013-01-27 (日) 19:03:48
      • ふむ。親愛なる同郷者に聞かれたのであらば答えようじゃないか。
        ワタシはな、最初からどんな結末が訪れようが良かったんだよ。戯れにステージを揺らしこそしたが、それによって生じる反応はどのような反応でも良かったんだ。
        元来、戦争屋という生き方がそもそも、そうやって『フィールドを微細に動かす』か『フィールドに種を撒くか』程度のことしか出来ないのだよ。
        今回もそれをやっただけにすぎない。ワタシが行ったのはただ有るように進もうとしていた道を明確にするために諸問題を整理しただけにすぎないのさ。
        -- キリス 2013-01-27 (日) 19:07:09
      • 要領を得んな。貴様の話は回りくどすぎる。
        結局、貴様はあの娘子……序列五位・新山といったか。
        あれを戦争屋としての商品にしたかったのではないのか?
        -- 2013-01-27 (日) 19:09:14
      • それも、想定した未来の一つだ。高々未来の一つに過ぎないのさ。
        爆弾一つ落とせば覆るような戦場を商売のフィールドとして生きているワタシが、ただ一つの結末に向けて策を練ると思うか?
        そんなものは、結末の決定仕切った詰まらぬ寓話にでも任せておけばいいんだよ。
        ワタシはな、結局はどちらでもいいのさ。どちらだろうが自分の方に利が転がってくるように動いていただけだ。
        この大学に送り込まれた序列五位・新山はな、新山の中でもかなり異端の存在にあってな。
        五位の長老の言によれば人間と共生しうるかもしれない可能性の産物であるそうなのだ。
        まあ、恐らく失敗はするだろうが、仮にそれが成功したところで面白いじゃないか。新しいフォックステイルが生まれれば、ワタシはまたそれの利用価値を探る事が出来る。
        金の卵を産む鶏を誰も殺さないように、あれがそういう『可能性』を秘めているのであれば、その可能性が方向を持ったときに改めてその価値を『ワタシが決めよう』と、そう思っただけなのだよ。
        -- キリス 2013-01-27 (日) 19:13:42
      • 発想が下種の極みだな。フォックステイルを統べるフォックステイルとは言い得て妙だ。
        噂には聞いていたが、貴様のやり方はやはり私は好かない。
        詰まりは、序列五位・新山もまた貴様の盤面の上で遊ぶだけの駒に過ぎないと言うわけだろう。
        -- 2013-01-27 (日) 19:16:15
      • 褒め言葉として頂いておこうじゃないか。
        物の価値は市場の需要と供給のバランスで決定するが、戦場での価値は市場が存在しないという前提で以って大きくその価値を上下させる。
        それに明確な値段を付けて取引を行うのがワタシ達『戦争屋』の生業であるが故に、その言葉も何の臆面もなく懐に仕舞おうじゃないか。
        生命にまで1G単位で値段の付くあそこはまさに、お前のように戦場でしか自身を確かめることのできない狂人が生きる場所であると思い、こうして背中を晒して先導しているわけだが?
        -- キリス 2013-01-27 (日) 19:19:55
      • 抜かせ。
        我が槍を以ってしても、無傷で貴様の八尾を掻い潜ってなおその背中を貫けるとは思っていない。
        貴様の存在は狂っている。私などよりよっぽど狂人の類だ。
        フォックステイルの中でも五指に入るほど優れたる武と力を持ちながら、その剣を振らぬことを選ぶなどと正気の沙汰とは思えん。
        何が貴様をそうさせる。
        ……否。何が貴様をそうさせた。
        -- 2013-01-27 (日) 19:23:43

      • 愛情に、様々の価値観や呼び名があるように。
        恋愛感情にも正答は存在しないという前提を以ってして。
        ワタシが、この世界にいる誰よりも『戦争』という物を愛しているから、というのは理由にならんかな。
        生まれてこの方、この熱い想いを処女の初恋のように胸の中で燻らせているという純愛が、ワタシを突き動かしているんだよ。
        ワタシはな、戦争になら抱かれてもいいと思っている。
        戦争を心の底から愛している。
        無碍に散らされる生命も、そこにある悲哀も、人々の怒りも、後に残る清寂も。
        血沸き肉踊る闘争も、潰えた未来への希望も、後に何も残らぬ無為さも、それを起こす人間の素晴らしさも。
        何もかもが子宮から脳髄を貫く程の圧倒的な愛情がこの身を震わせる程の狂おしい愛らしさに満ち溢れている。
        だからワタシは、キミを戦場に導く、『戦争屋』であるんだよ。
        充分だろう……?
        -- キリス 2013-01-27 (日) 19:29:39

      • ……充分だな。
        貴様が狂人であることの証左には。
        ……であるなら、その戦争に恋焦がれる貴様が案内する戦場は、私の無聊を慰めるに相応しいものであろうという期待を以って、
        貴様への不信を不問にするとしよう。
        利用したくばしろ。私は、もう二度と蔵で錆びる槍とはなりたくない。
        -- 2013-01-27 (日) 19:32:08
      • いいだろう。期待に万全に答えることも、信頼を築く一つの方法論であるだろうからな。
        ワタシ自身は信用に足らぬとしても、『戦争屋』としてのワタシは十全に事を成そうじゃないか。
        -- キリス 2013-01-27 (日) 19:34:04
      • 戯れもこの辺りにしよう。
        元々、貴様のように弁舌の場で刃を交わすことを生業にしているわけではない。
        ……ここから、何処に向かうのだ。
        それとも、この国へは完全な寄り道であったのか。
        -- 2013-01-27 (日) 19:35:30
      • そこまで酔狂ではないさ。ちゃんとここが最短の順路であることは保証しよう。
        ここより我らは、北へと向かう。
        こういう仕事をしているとね、ある程度の地図の範囲の火種がどんな形で延焼しようとしているか、自ずと分かってくるもんでな。
        フォックステイルの耳は闘争の音を聞き逃さないという故事の通りに、そこに芳しい匂いを放つ火種を見つけているのだ。
        -- キリス 2013-01-27 (日) 19:37:57
      • そうか……。
        では、行こうか。
        その戦場でなら、私は本来の私を再び取り戻せるやもしれん。
        失った槍を振る理由を、そこでならな。
        -- 2013-01-27 (日) 19:38:53
      • 重畳。
        では、行こうか。
        その国の名は『大爛帝国』。古き因習と血脈に縛られた愚かな国ではあるが、だからこそその匂いはワタシ達の鼻には芳しい。
        果実とは、いつも腐りかけが最も芳醇な薫りを漂わせるものだからな。

        さあ、行こうか。
        ――ハリウカ・バチスカーフ
        -- キリス 2013-01-27 (日) 19:41:16

      • ……承知した。
        私を闘争まで導くその手腕にだけは、期待しておこう。
        フォックステイルが序列一位・皇木……キリス・フォックステイル・皇木。
        -- ハリウカ 2013-01-27 (日) 19:42:41



      •                   ―――エスト・フォックステイル・新山の問題 了  -- 2013-01-27 (日) 19:44:29
  • 【問7 6】 それぞれの回答 -- 2013-01-27 (日) 16:38:55
    • (――二の腕までを、狐毛に覆われた拳が放つ必殺の一撃は)
      (結論としては、せつなに届くことは、なかった)

      (躊躇ったわけじゃない)
      (戸惑ったわけでもない)
      (最後に残った頚木を力ずくで外そうとしたエストの意思は……何かによって阻まれていた)

      (エストはそれを見た瞬間)
      (今まで歩いてきた道が)
      (ここまで歩んできた道が)
      (――本当に何もかも無駄な足掻きであったことを、知った

      (ロレン・アイアンシールド)
      (せつなを守るように、せつなとこちらの世界を区切るように)
      (片手でエストの拳を受け止めて、そこに立っていた)
      -- エスト 2013-01-27 (日) 16:42:18
      • (その攻撃を受け止めた衝撃が、まだ手のひらに残っていた)
        (攻撃減衰のアイアンシールドの能力を以ってしても、完全に防ぎきれないその攻撃は、もはや武力というより兵器のそれに近い)
        (五指のうち、四指までを犠牲にして、その攻撃を受け止めた手を下ろすかは迷ったが)
        (自分がその攻撃を受け止めたという事実は、想像以上にエストに衝撃を与えたのか、目の前でエストは小さく項垂れていた)
        (背後で、せつなが力尽きる音を聞いたが、振り返らない)
        (折れ曲がった右手に簡易治癒を施すと、その空間には無言が横たわった)
        -- ロレン 2013-01-27 (日) 16:45:40
      • ……そっか。
        そう、だったな。……忘れてた。
        気づかない、振りをしてたのかもしれない。
        エストは……最初から、この場所にいたらいけなかったんだ。
        こんな人並みの幸せを望んだらいけなかったし、自分がどういう存在であるかをもっとちゃんと知っとくべきだった。

        甘えてたんだな。
        せつなや、他のゼミ生は、凄く優しかったから。
        その優しさが、エストは羨ましかったから。
        一緒にいることで、何かエストも返せたらと……いつか、対等な友人として話が出来るんじゃないかって、勘違いしてただけだったんだ。
        でも。
        やっぱり、無理だ、ロレン。
        エストの世界は、こっち側だった。
        ロレンが間に境界線として入ってくれたから、ちゃんと理解することが出来たよ。
        エストは、化け物だ
        皆と一緒にいたら、ダメな化け物だったんだ。
        -- エスト 2013-01-27 (日) 16:49:31
      • (その、悲痛な独白を、ただ受け止める)
        (言葉を返さず、目線だけは逸らさず、心から直接漏れだしているかのようなエストの言葉に、耳を傾ける)
        (本人は気づいていないだろう。顔は笑っているのか泣いているのか分からない、奇妙な面相をして、足は何かの感情で震えている)
        (何も言えない。自分を正確に理解することがどれだけの恐怖を引き起こすかは、オレも知っていたから)
        -- ロレン 2013-01-27 (日) 16:52:22
      • 最初から、本当に最初から全部ダメだったんだ。
        もうこれ以上、皆と一緒には居られない。
        皆のことは大好きだけど……大好きだから、エストはさよならする。
        これは、エストが決めたことだ。
        エストが決めて、エストが歩んでいく人生なんだ。
        ……ごめんなさい。こんな簡単なことを決めるために、たくさんの人を傷つけて。
        せつなにも、ロレンにも、先生にも……どれだけ謝っても、謝りきれない。どれだけ感謝しても、感謝しきれない。
        ……でも、1つだけ、最後に言わせてくれ、ロレン。

        ――エストの友達を、エストから守ってくれて
        (小さく、頭を下げた)
        ありがとうございました。
        -- エスト 2013-01-27 (日) 16:56:22
      • ………。
        大したことは、してない。
        元々、何かを守ることしか能のない人間なんだ、オレは。……こっちこそ、でしゃばって悪かったな。
        ……こんなの、見てられなかったからな。
        -- ロレン 2013-01-27 (日) 16:58:26
      • (振り返り、出口の方を向いた)
        能がないなんて言うな……格好良かったぞ。
        きっと……せつながちゃんと今のロレンの姿見てたら。
        ロレンのこと、好きになってくれるくらい、多分……格好良かったって、エストは思ったから。
        きっと。……ロレンは、頑張ったら、頑張れるから。……頑張れ。
        (もう、頭が働かない)
        (元々器用に出来ていない自分が、これ以上目元に溜まった涙を隠したままロレンと話続けることなんて出来ない)
        (無言のさよならを投げて、出口へと歩き出す)
        -- エスト 2013-01-27 (日) 17:01:05

      • ………。
        (こういうとき、しっかりと相手に何かを伝える言葉を選ぶために)
        (もっと普段から誰かとコミュニケーションを取っておくべきだったと、そう思った)

        エスト。
        ……勘違いするな、オレが見てられなかったのは、せつなの姿じゃなくて。
        お前の姿だよ。
        -- ロレン 2013-01-27 (日) 17:03:36
      • (その言葉に、足を止める。足が、止まってしまう)
        (ようやく自分で決めて、自分で踏み出した足を、僅かな優しさが引き止める)
        (震える。怒りと、悲しみと、色んな言いようの無い感情に、打ち震えた)
        -- エスト 2013-01-27 (日) 17:05:02
      • ……もちろん、せつなも心配だったが、お前がそんな顔して友人を傷つける姿だって、見たくなかったんだ。
        少しでも力になれたらと思ってせつなに力を貸したのも、どっちもに傷ついて欲しくなかったからだ。
        ……エスト。
        こんなのが終わりでいいのか。
        そんな納得の仕方でいいのか。
        いや……今のお前にそれを聞いたりしても意味がないことは知ってるから、オレの意見を言う。
        ……オレは、納得出来ない。こんな終わり方。
        -- ロレン 2013-01-27 (日) 17:07:51
      • もう、やめて……これ以上、エストを惑わせないで………ッ!!
        理想や夢を並べるだけなら、誰でも出来るんだ……!! でも、今エストが選ばなきゃならないのは、現実で……!!
        ようやく、自分で踏み出す事が出来そうなのに、そんな……!
        (振り返り、自分で口にして、自分で、涙が流れた)
        そんな同情みたいな感情で、エストを惑わせないで……!!
        -- エスト 2013-01-27 (日) 17:10:25
      • (同情、と言われ、俯く。確かに……それも、少なからず自分の中に感情として存在していたから)
        (オレ達人間ではない者が、人間の社会に溶け込む為に支払う犠牲というものは、けして安くないことをオレ自身も知っていたから)
        (同属が傷を舐め合うように、その傷口同士を近づけて、その形の近似で慰め合う同情心に似た感情もないわけではない)
        (それでも)
        (心に対するアイアンシールドすら張られているかもしれない自分が、こうやって表舞台に出てきて、場を諌めるその理由の全てが)
        (――ただの同情心だけではないことに、オレは少しだけ賭けてみたくなったんだ)
        -- ロレン 2013-01-27 (日) 17:14:00
      • ……そうかもな。同情心なのかもしれない。
        でも、お前が一つだけオレに言葉を伝えたように……一つだけ、オレにも言わせてくれ。

        (エストの濡れた目を見て、嘆息しながら、その言葉を呟く)
        暫く。そのお前の矛先のない暴力を……オレだけに向けてみろ。
        お前の側に、いてやるから。
        -- ロレン 2013-01-27 (日) 17:17:06
      • (その言葉は、いつか本当に言って欲しかった言葉で)
        (だからこそ、今こんな状況で、同情心を発端にしては絶対に言われたくない言葉だった)
        そんなの……他の誰が許せても、エストが許せない!!
        お前に、ただの友達に、そんな迷惑を掛け続けながら、友達だって、エストが、グッ、エストが言えるわけ、ないだろっ、ヒグッ……!
        おま、お前は、せつなが、好きなのに……もう、エストに、構うなよ……ヒッグ……エストは、お前に迷惑掛けてまで、お前たちの側に、いたく、ないッ!
        お前のことも、大好きだったけど……ヒグッ……そんなの、今、ここで、そんな風に言うお前は、大嫌いだっ!!

        (惨めさで、涙が止まらない。己を犠牲にしてでも自分を繋ぎとめようとしてくれるロレンの善性が、今は何よりエストを傷つけた)
        (同情で側にいて欲しいなんて、一度も思っていなかったから)
        (愛情で側にいて欲しいって、ずっと思っていたから)
        (だから、そんなことを言うロレンは大好きだけど大嫌いで、側にいたいから側にいたくなかった)
        -- エスト 2013-01-27 (日) 17:22:14
      • (強い痛みが分からないことが、こんなに不便なことだとは思っていなかった)
        (痛みを知らないから、相手がどれだけ傷つくかも分からない。現に今、こうやって助けようと思って踏み込んだ相手の心を、自分という刃は容易に傷つけた)
        (そうか。……やっぱり、本質的にオレ達は似ているのかもしれないな……そう、心の中で呟いた)

        上手く言えないから。
        少しだけ、長くなるかもしれないけど……聞いてくれないか、エスト。
        (エストの目を見て、大きく息を吸い、吐き、言う)
        -- ロレン 2013-01-27 (日) 17:25:03
      • ……お前が、どこまで本気だったのかは知らないけど。
        オレは、お前に好きと言ってもらったこと、正直に言えば嬉しかった、んだと思う。
        心の何処かで、自分が誰かを好きになることは出来ても、自分が誰かに好きになってもらえるなんて、思ってなかったからな。
        それでなくても、ゼニスと距離を縮めたジュニアスクールの時、あいつの傷口を広げる結果になったことで、そういった感情に答えることが、ずっと怖かったんだ。

        それにな。
        そういうの、ズルいだろうと、ずっと思っていた。
        どう考えても、オレの存在や能力は、お前の為に存在していると言っていいくらい、エストの境遇に合致してた。
        エストは、オレを選んだわけじゃなくて、オレ以外選べなかったんじゃないかって、ずっと思ってた。
        それに、せつなの事もある。
        ……間接的に聞いてるかもしれないが、オレはせつなが好きだ。その気持ちは今も存在している、と思う。
        それがどれだけ叶わない想いであっても、自分がそうやって誰かを想えることを誇りに思っていたし、
        シロマル先生やお前が言ったとおり、ベクトルが減衰する能力を自分の身に有していた自分がそうやって誰かを想えること自体に、
        オレは価値が有ることだと思っていた。
        だから……それの代替として、お前の感情を利用して阿ることは、オレの中では絶対にありえないことだったんだ。
        -- ロレン 2013-01-27 (日) 17:31:10
      • (それは、以前せつなに対して吐露した自分の心情やロレンへの愛情の理由と酷似していた)
        (自分はロレンのことを好きなのではなく、必要としていただけなんじゃないかという疑念を裏打ちされるようで)
        (弱い自分の心は、容易に軋む音を奏でた)
        -- エスト 2013-01-27 (日) 17:32:39
      • 誰かに好きと言って貰ったから、それを理由に相手を好きになることは……ただの代替行為なんじゃないかって。
        自分に好意を向けてくれたことだけで、オレはお前のことを好きだって、思ってしまいそうになった。
        それは、ただの取引になってしまうんじゃないかって。


        だから、お前と真剣に向き合うこともしなかったし、せつなの気持ちと比較するようなこともなかった。
        いずれ、その気持ちも迷いも……何もかもアイアンシールドという能力が減衰させていくんだと、そう思ってた。

        でもな。
        オレは、少なくとも、お前がいなくなると寂しいんだ。
        それが同情なのか、友情なのか、愛情なのか分からないけど……三年半一緒にやってきた仲間がいなくなるのは、辛い。
        それは、オレが、オレの人生の一部を賭けるに値する程の何かなんだ。
        こんな、何の役にも立たない、何かを守る力にお前が意味をくれるっていうなら。
        オレは喜んでお前の側にいるよ。お前が側にいるための、力になるよ。
        ……これじゃ、気持ちとして、弱いか、エスト。
        (エストに向かって、呟く)
        (せつなに対しては短く済ませられた言葉よりは煩雑で、ごちゃごちゃとしてしまったけれど)
        (しっかりと、今度は伝えられたと思った)
        -- ロレン 2013-01-27 (日) 17:40:12

      • ………。
        (その言葉の意味を、自分は半分も理解出来なかったと、正直思う)
        (それでも、その言葉は……誰よりも、何よりも、ロレン・アイアンシールドに言って欲しかった言葉で)
        (それが、同情でも憐憫でもなく、必要と思ってくれる名前の付けられない感情から出ているというだけで)
        ……エ、エス、トは、きぅ、きっと……ロレンを、傷、傷つける、ぞ……!
        (涙と鼻水でグチャグチャになった顔で言う)
        -- エスト 2013-01-27 (日) 17:43:24
      • 好きにしろ。
        他人よりは頑丈に出来てること、知ってるだろ。
        -- ロレン 2013-01-27 (日) 17:44:01
      • ぜっ、絶対、いつか、重しに……エッ、エストのこと、重しに、思える、思えちゃう、ときが、来るぞ……っ!
        み、みんなにっ、迷惑かけて……ロレンは、一人ぼっちに、ぼっちに、なっちゃう、かも、しれない、んだぞ……!!
        -- エスト 2013-01-27 (日) 17:45:17
      • 自分で背負うと決めた重しだ、後悔なんかしない。
        それに、『お前』がいて、『みんな』なんだよ。……そんなこと気にするな。
        -- ロレン 2013-01-27 (日) 17:46:17
      • エストが、側に、いれば……!!
        エストのこと、嫌いに、なる、かもしれないっ……!!
        -- エスト 2013-01-27 (日) 17:47:11
      • でも。
        お前のことを、好きになれるかもしれないだろ。
        -- ロレン 2013-01-27 (日) 17:47:57

      • (その言葉は)
        (流石に、限界だった)
        (ロマンチックさの、欠片もない)
        (自分がどういう存在かも何もかも忘れ、大声で)
        (――ただ、大声で)

        う、ああああぁああぁああああああああああああぁあーーぁんっっ!!!

        (大声で、上を向いて、溢れ出る涙を隠さずに、力いっぱい泣き叫んだ)
        -- エスト 2013-01-27 (日) 17:50:38

      • (締まらない。それだけの実力が、自分にはないから)
        (問題の回答は答え合わせで示し会えるけれど、解答を出すには余りにも若すぎるから)
        (互いに傷つけ、間違いあいながら、そうやって進んでいくべきであるんだと、今ようやく思えた)
        (未来のために、今を楽しむことを諦めたらいけない。……せつなが、あの日、自分の告白への返事としてくれた言葉の意味も、ようやく今ここで知ることになった)
        (泣きじゃくるエストに近寄り、その頭を撫でてやると、子供扱いされたのが嫌だったのか、振り払われた拳が顎を掠め、意識が飛びかけたが)
        (それはまあ……これから、何十回も、何百回も……もしかしたら死ぬまで続いていく日常になるかもしれないのだから)
        (それこそ、オレたちが抱えている問題に比べたら……些細な問題であると言えた)
          -- ロレン 2013-01-27 (日) 17:55:01

      • 模擬戦教室横・モニター室 -- 2013-01-27 (日) 17:55:43

      • (一部始終を隣室にてモニター越しに眺めながら、僕は小さく嘆息する)
        (気づけばキリスという女はこの茶番に嫌気が刺したのか姿を消しており、誰もその姿を気に留めないほど各々の感情に心を動かされていた)

        (自分が動かなかった理由は、単純に言えば二つある)
        (一つ、エストとの対戦中に於いて、せつな自身によって僕の手出しは禁止されていたこと)
        (こちらは、完全な制約ではなく、二つ目の理由と併せて僕を椅子に縛り付けたことになる)
        (その二つ目の理由は、ロレンがモニター室を退出していく姿を、注意力散漫な僕は意識の端に捉えていたことだ)
        (僕がいざとなればそうしようと思っていたように、ロレン青年もまた、僕と同じようにあの場に割って入ろうとしていた、ただそれだけのことだった)
        (やたらと、自分の若い頃に似ているあの青年であれば、どうにか場を纏め切れるのではないかという、間違った自負もそこにはあった)
        -- シークエンス 2013-01-27 (日) 18:00:31

      • (――ただ、今自分はそのモニター室で、それが間違った観測であったことに、気づくことが出来た)
        (同時に……今この場にいる誰よりも打ちのめされて、一言も言葉を発せないまま椅子に深く腰を掛けていた)
        (全てが丸く収まった大団円の様相を呈しているにも関わらず、暗澹とした気持ちが表情に出ないように、静かに目を伏せた)
        -- シークエンス 2013-01-27 (日) 18:02:19

      • (ロレンが自分に似ているだなんて、とんだ見込み違いだ)
        (それを言い出した芝虎に、同意したせつなに対して、心の中で老害が悪態をついた)

        (あいつは――選んだ

        (かつて自分が尻込みし、何も選ばないままに過ごした過去に向かって、手を伸ばした)
        (その事が、今、胸の中で灼熱となって燻り煙を上げている)
        (自分に対しての無辜の気持ちを、子供特有の偽りの賢しさで是と出来ず、今も心に傷として残している自分とは、全く違う生き物だった)
        (好きだと言われたことを理由にして、その好意に好意を返すという行為にあいつは是という言葉を返した)
        (向こう20年以上、好きになれたかもしれないと。延々苦しむこともない、選んだ方のセータ・シークエンスが……そこにいた)
        (それが、どれだけ凄い選択であるかも知らずに、あいつらは簡単にそれを選び、順応する)
        (レオが、剣馬が、シロマルがそうであったように)
        (あいつは……ちゃんと、選べる人間だった
        -- シークエンス 2013-01-27 (日) 18:07:57

      • (いつか、自分を犠牲にしようとした相手を迷わず救おうとした本城剣馬に言った言葉を)
        (静かに、苦味の成分の多い苦笑と共に、歳を重ねただけの自分は、小さく呟いた)

        ――やっぱり……僕は、お前達のことが嫌いだよ。

        (それは多分、誰がどう聞いても、検討の余地もない程)
        (人生に於いて、誤った回答である)
        -- シークエンス 2013-01-27 (日) 18:11:16
  • 【問7 5】 エスト・フォックステイル・新山の問題 -- 2013-01-26 (土) 23:12:05
    • (模擬戦教室内)
      (勝負は一瞬で決し、せつなは意識を刈り取られ、地面に倒れ伏している)
      (誰も、何も言わない無音の世界がそこにはあり、それは、最初から予測できていた結果であったから、何の感慨も生まれては来なかった)
      (勝てるわけがないのだ)
      (だから、エストはずっと本気を出してこなかったんだから)
      (尻尾を仕舞い、耳を収め、乱れた服を元に戻すと、もう自身には争いが起こった形跡すらない)
      (自分にとっての終わりは、自分が思っていた通りに……自分が思っていた以上にあっさりと訪れることになった)

      (その時、モニター室と回線が繋いであるスピーカーが、掠れた音を出した)
      -- エスト 2013-01-26 (土) 23:16:00

      • 模擬戦教室横・モニター室 -- 2013-01-26 (土) 23:18:51
      • (一部始終を見届けた後……それを待っていたかのようにマイクを持ち、立ち上がったキリスという女を見て)
        (恐らく、今こちらのモニター室にいる人間の誰より早く、その悪趣味な意図に気づき、何も言えずに全ての言葉を飲み込む)
        -- シークエンス 2013-01-26 (土) 23:21:42
      • 苦労だったな、序列五位・新山。いや実に良き戦いであったと言える。
        悲しいかなフォックステイルに勝てる人間というものは往々にしてその辺りに転がっているわけではないという何よりの証拠となってしまったが、
        致し方ないことであるとワタシも思うよ。これは、仕様がないことなのだ、序列五位・新山。
        何故俯く?
        何故そんな顔をする?
        コレは誰でもない、お前こそが、お前の歪みが齎した結末であるんだぞ?
        (ルージュの引かれた唇で、嬉々として言葉を投げる)
        -- キリス 2013-01-26 (土) 23:25:00
      • (そう……最初から、この女は、せつなの足掻きなど意にも介していなかっただけのことだ)
        (最初から、状況に応じて手札の中から一番相手に突き刺さる言葉を選び)
        (それを以って暴を律するのが、この女の目的であり――やり口であったのだ)
        (気づくべきだった。この状況になってしまってから何を言おうが、完全にこのキリスという女が、場の空気を支配してしまっている)
        -- シークエンス 2013-01-26 (土) 23:27:59
      • 見ろ、歪が起こった。両の眼が開いているなら見てみろ!
        これがお前が欲し得ようと足掻いた結果そのものだぞ、序列五位・新山!
        共に歩もうとお前に手を伸ばした友は他ならぬお前の拳にて地に横たわり、血反吐の中に無残にも倒れ伏す、これが徒労と言う名の努力の結果でなくてなんだと思う!
        どう足掻こうがどう努力をしようがどんな道順を巡ろう必ずお前はこの結末へと辿り着くのだよ!
        何故だか理解できるか、序列五位!
        それはお前がお前であるからだ。
        フォックステイルとして生まれた事だけで、お前がここに到達することは必然であるのだよ新山!
        何を思考しようが何度施行しようがお前はここに辿り着く、誰に助けを請おうが誰が助けてくれようが、必ずだ!
        それは、他ならぬお前自身の中に歪が存在するからであり、お前がお前である限り、フォックステイルがフォックステイルである限り逃れ得ない結末と運命であるのだ!
        お前がどれだけ努力しようが、周囲がどれだけ努力しようが、その全てを無駄にしてしまうのが、お前という力そのものなのだよ、序列五位・新山。
        ――お前は、お前で有る限り、人という中で幸せに暮らすなんてことは、夢物語なのだ。
        善人は壊れ、悪人は恐れるだろうな。
        如何に我らが人の皮を被ろうが、本質が化生である限り、我々は決して人とは相容れない存在なのだよ!!
        -- キリス 2013-01-26 (土) 23:32:22
      • (頭の芯が、怒りで冷えていく感覚を覚えていた)
        (その言葉は、少なからず、そして人によっては深刻に)
        (エストだけではなく、他の十四教室生をも波及的に苦しめる言葉だった)
        (それを以って、他の教室生の気勢と言葉を殺ぐためであることも、性格が悪い分戦略として有効であることも理解出来、自己嫌悪に嘆息する)
        (見上げると、その言葉は多分に漏れずモニターの中にいるエストにも突き刺さっているらしく、エストは俯いたまま顔を上げようとしない)
        -- シークエンス 2013-01-26 (土) 23:36:00
      • 学べ。
        そして自覚しろ。
        お前という存在が、周囲にどう影響を与え、どういう結果を齎すか。
        ここがお前の学び舎であるに相応しい場所であるとするなら、お前が学ぶべきはけして自身が世俗に相容れないということであるのだよ。
        人は武器を好む事は出来ても、武器を愛する事は出来ない。ましてやその鋒が自分を向いている武器を愛せる者など自殺志願者か狂人なのさ。
        我らフォックステイルは居るだけで不幸を撒き散らす。
        我らフォックステイルは生きるだけで周囲の障害なのだ。
        そんな存在と酔狂にも共に歩こうとする者がいるわけがない、そんな善人こそお前の手が括り殺してしまう犠牲者なのだよ。
        未だかつて『序列一位・皇木』以外のフォックステイルの歴史に、人と共に歩めたという記録は一切残っていないのだからな
        認めろ、序列五位・新山。
        我らは、この世界では異物なのだ。
        どんなに取り繕おうが、どんなに言い繕おうが、他ならぬお前の意思が、欲望が、欲求こそがそのお前が愛する世界を壊してしまう。
        愛情というものは相思相愛でなければただの欲望であることを自覚するべきであるのだ。
        お前がこの安穏とした世界を愛そうが、お前はその世界にけして愛されない。

        お前を本当に必要としてくれる世界は――ワタシの居る暴と欲の渦巻く戦争という名の第三世界なんだよ。序列五位・新山。
        -- キリス 2013-01-26 (土) 23:43:22
      • (モニターの中)
        (雨に濡れた子狐が、誰かに救いを求めるように、わななく手をそのままに)
        (カメラを見上げる)
        -- エスト 2013-01-26 (土) 23:45:01
      • (モニター越しにエストを見て、嗤う)
        これも、繰り返す必要があるのなら何度でも言おう。
        ワタシには、お前が必要なんだ、序列五位・新山。
        お前という武力を欲している世界に、ワタシは住んでいる。ワタシはこの世界を愛し、世界に愛されているからこそ、今日この地に五体満足に居られる。
        フォックステイルが人としてではなく、フォックステイルそのものとして必要とされる世界を、知っているのだ。
        その世界でお前は英雄と成り、お前が人として愛した者すら間接的に守る事が出来るのだよ。
        お前という暴が必要とされるが故に、お前が暴で壊しかねない世界を守る事が出来る。
        それこそが、ワタシが戦争という世界に理と利を以って挑んでいる大きな理由でもある。

        さあ、頚木を外せ。
        自らを包む優しき誰かの手を、己が刃で傷つけていることを自覚しろ。
        序列五位・新山――いや……エスト。
        ワタシと共に、来い。
        -- キリス 2013-01-26 (土) 23:49:38
      • (二度、三度。何かを迷うかのように、視線と手が泳ぎ)
        (何かに耐えるような苦しげな表情になり)
        (迷子の子供のように泣きそうな顔で、何かに縋ろうと、視線を漂わせる)
        -- エスト 2013-01-26 (土) 23:51:51
      • (そのエストの様子は、見るに耐える物ではなく)
        (静かに視線を落とし、逡巡する。この部屋に、純粋な人間である者は自分しかいない)
        (周囲を見回しても、誰もが何も言えず、完全に場はキリスという狂人の言葉に飲み込まれてしまっている)
        (なら、そろそろ、それが舌戦という場で行われる争いならばこそ、僕の出番かと予備のマイクに手を伸ばす)
        (手を伸ばすが――そのマイクは、誰か他の人間の手が、掴み、引き寄せていった)
        -- シークエンス 2013-01-26 (土) 23:54:59

      • (マイクを片手に、立ち上がる)
        (モニターの前にいる……自分の教え子の姿を、はっきり見据えながら)
        エスト。
        これから、俺が言うことをよく聞き、この問題の回答は自分で決めろ。
        十四教室の室長として、お前の担当教師として……シロマル・ルーデンス・グレナデンという存在として、お前に言う。
        -- シロマル 2013-01-26 (土) 23:59:34
      • (肩を竦める。はっきりと自身の目的達成の感覚を得た充足で、深く椅子に座った)
        (どんな優しい言葉も、慰めの言葉も逆効果になるように、既に魔法は掛けられている)
        (何を言おうが無駄である確証があるからこそ、シロマルという男が何を言うのかに強い興味があった)
        -- キリス 2013-01-27 (日) 00:01:48
      • ……甘えるな、エスト
        キリスというこの女の言葉を、俺は何一つ否定しない
        ……世界が、善意と同じかそれ以上に悪意で満ちていることは俺も良く知っている。お前より先に生まれてきたからな。
        人は、自分より優れた者を嫉み、その凋落を願う。遥かに高みに居る者に対しては、畏敬を抱くか、勝手な偶像化で距離を遠ざけるんだ。
        優れたその力が、どんな努力で、何を犠牲にして得られたかを全く介さず、ただそれがアドバンテージであるかのように嘯き、嫉むために嫉むんだ。
        エスト、お前が誰かにとっての羨望先であり、恐怖そのものであることを、俺は否定してやったりなんかしない。
        それは優しさなんかじゃない、ただ心の表面を傷つけないための嘘だ。
        -- シロマル 2013-01-27 (日) 00:09:12
      • これからのお前の人生は、辛く苦しい物になると思う。
        それすら、認めなければならない事実なんだ。
        俺の人生がそうであったように、力を持つ者の苦しみに、苛まれ続けていく人生になると思う。
        ……今回のこれは、その始まりに過ぎない。
        お前はこれから何度も何度も何度も……こうやって苦しみながらも、選び続けなければいけないんだ。
        でもそれは……強者が心や己の存在を認めて欲しいのと同じように、弱者が現状に抗う苦しみと何も変わりはしないんだよ。
        それぞれの人生には、それぞれの事情がある。
        皆大なり小なり自分の悩みや苦しみを抱えて生きてるんだ。
        他人と幸福を比べることが無意味で有るのと同じで、他人の苦しみを完全に理解することができない俺たちにとって、他人より不幸なんて嘆くこともまた無意味なんだよ。

        その中で、俺達は答えを選んで行かなければならない。
        試験の問題より複雑で難解な、時に正解がなかったり、時に正解だと分からなかったりする道を……これから何度も選んで行かないといけないんだ。
        -- シロマル 2013-01-27 (日) 00:15:12
      • (モニターの中のエストを見て、乗り出し、叫ぶ)
        ――俺は選んだぞ!!
        何もかもが敵に見え、笑顔で刃を向けてきた境遇を呪いながらも、選び続けてここまで来たんだ!!
        一人じゃ絶対に辿り着けなかった。
        どんなに強くて優れている部分があったとしても、人の心がある限り、人は一人じゃ生きられないからなッ!!
        何日も寝ずに教え子の価値を誰かに伝えようとした馬鹿がいた!!
        大切な時間や空間を守るために己の身や名誉を迷わず犠牲にした馬鹿がいた!!
        そいつらと生きてきた人生はけして楽なばかりじゃなかったけれど、俺が選んでたどり着いたこの場所を、
        ――俺は今誇りに思ってる!!
        シロマル・エフェクトなんて二つ名よりも、シロマル・ルーデンス・グレナデンとして今お前に何かを伝えられる自分の人生を誇りに思う!!
        エスト。
        この女は言った、今まで人間と共に歩めたフォックステイルは存在しないと。
        だったら、お前がその最初に、そのパイオニアになるくらいの努力は、俺にもさせてくれ!!
        俺は、教師として、お前の先人として……簡単に何かを諦めてほしくないんだ!!
        お前の努力の後に出来た道に、俺がそうしてきたように誰かの笑顔がある幸せを、お前にも知ってもらいたいんだ!!
        -- シロマル 2013-01-27 (日) 00:23:48

      • 模擬戦教室 -- 2013-01-27 (日) 00:25:56
      • (言葉と、想いと、様々なものに打ちのめされて、混乱する頭に足元がふらつく)
        (何故、自分は生まれてきて、普通に生きたいというだけで、こんなに苦しまなければならないのか)
        (それはキリスの言う通り人間の世界で無理やり生きているから起こった歪みであり)
        (でもその歪みはシロマルの言う通り自分の人生には一生付きまとってくる苦しみで)
        (でもその苦しみはキリスの言うことを聞けば取り除けるんじゃないだろうか……)
        (でも。だって。だから。いくつもの理由と言葉が脳裏を過ぎていく中)

        (背後で……僅かな、衣擦れの音を聞き、振り返る)
        -- エスト 2013-01-27 (日) 00:30:07
      • (何故自分がここにいるか)
        (何故、こんなに苦しいのか、覚醒したての自分には理解できなかった)
        (何人ものいなくなってしまった人達のことを思い出して、とても悲しい夢を見た気がする)
        (首の後ろに貼り付けていた文字魔法(ルーン)が意味を消失し、空中に消えていく残滓を視界の端に捉え)
        (そして、その先に――エストを見つけた)
        (朦朧とした意識で、微笑む)
        (良かった……やっぱり、夢だった。エストちゃんは、いなくなってなんか、いなかったと。そう思いながら)
        -- せつな 2013-01-27 (日) 00:34:17
      • (その笑みに)
        (根源的な――『恐怖』を覚える)

        (それはフォックステイルにとって、けして勝てない相手が存在するということを理解する怖さであり)
        (対象が何をしても破壊しつくせないという事柄に対する恐れであり)
        (自己という暴力を以って接しても、笑顔というものを自分に向けることが出来る人間が存在するという……怯えでもあった)

        (ストレスが)
        (――閾値を超える

        (服の一部が破れ飛び、一気に、三本の尻尾が尻に表出した
        -- エスト 2013-01-27 (日) 00:38:04

      • 模擬戦教室横・モニター室 -- 2013-01-27 (日) 00:39:44
      • (状況は――更に面白い方向に進んだ)
        (笑みが漏れる。愉悦を隠しきれない。全てが思うままという遊戯もまた樂しからずやである)
        ハハハ!! 序列五位・新山ッッ!!
        殺ってしまえ!! 一度踏み外せば、少なくとも迷うことはない、それはこちらの世界の領分だッ!!
        -- キリス 2013-01-27 (日) 00:46:23
      • こっ、テメエ!! -- カルマ 2013-01-27 (日) 00:49:02
      • ちょう、『黙りや』、自分。 -- ション 2013-01-27 (日) 00:49:37
      • カルマ、取り押さえて、こいつ!! -- ゼニス 2013-01-27 (日) 00:50:31
      • (モニターに齧り付くようにして身を乗り出し、大声で叫ぶ)
        エストッ!!! やめろッ!!!
        -- シロマル 2013-01-27 (日) 00:51:58
      • (映像の中)
        (エストが紫電を撒き散らす勢いで地面を蹴り、せつなへと向かう)
        (せつなが、そのエストに対して起こした行動は――皮肉にも、芝虎のときと同じだった)
        (両手を広げ、受け入れる姿勢を取る)
        (だが、今回は芝虎の時とは違う。それを受ければ、何の魔力障壁も貼ることができない今、せつなの身体は衝撃に耐えることができない)
        (そして、今から自分が動いた所で、絶望的に助けが間に合うことはない)
        (奥歯が唇を噛み、静かに血が流れた)
        -- シークエンス 2013-01-27 (日) 01:00:24
      • (粘性を帯びた時間の中で、僅かだけ……僅かだけ、違和感を覚えた)
        (……何故、背後にいるシークエンス教授は、何も言わず……この期に及んでも動く気配すらないのか

        (その答えが出る前に――エストの拳が、明確な殺意を孕んだ状態で)
        (せつなへと、到達した)
        -- シロマル 2013-01-27 (日) 01:03:34
  • 【問7 4】 エスト・フォックステイル・新山の問題 -- 2012-12-16 (日) 22:55:58
    • (トン、トン、と一定のリズムでその場で跳ねる)
      (闘士としては余りにも軽すぎる体重は、耳を澄まさなければ聞き取れないほど小さな音で一定のリズムを刻む)
      (かつてロレンと評議長が争った、モニター出来る戦闘用の教室で静かに柔軟を終えた)
      -- エスト 2012-12-16 (日) 23:02:06
      • (お互いに、シンプルな兵装。普段の組手と何ら変わらない装備を申し出たのは、あたしの方だった)
        (魔術の使用はOK、相手を死に至らしめることはNG、どちらかの降参を以って終わりとする、実戦形式の組手と何ら変わらない合議ルールが敷かれた)
        (手首を振り、軽く呪文を唱え、指先から意味を与えられない魔力が表出するのを見て、ちゃんと通魔していることを確かめる)
        (恐らく、軽い一手のミスですら、致命になりかねない勝負になるから、確かめられることはなんでも確かめておきたかった)
        -- せつな 2012-12-16 (日) 23:04:45
      • (せつなの姿を視界に捉えると、今になってもなお、胸の中に黒々とした物が渦巻く)
        ……いいんだな、せつな。
        エストは……そんなに、器用じゃないから。きっと、上手くやったりは、できないと思う。
        -- エスト 2012-12-16 (日) 23:06:40
      • (その不安げな声に笑顔を返す)うん。……逆に、そこはお願いしたいかな。
        エストちゃんが、全力でやってくれないと、何の証明にもならないから。……受け止めてあげるよ。
        あたしも、今回は、必死に。(静かに、構えを取る)
        -- せつな 2012-12-16 (日) 23:08:15

      • 模擬戦教室横・モニター室 -- 2012-12-16 (日) 23:13:50
      • ほう、流石国営大学だ。いい設備が整っている。
        強ち新山の長がこの大学に序列五位・新山を押し込めたのも厄介払いというわけでは無さそうだな。
        -- キリス 2012-12-16 (日) 23:18:42
      • この見るからに相容れない、遠慮なくモニターを一番見やすい中央に陣取った、頭のおかしい女が例のフォックステイルか。
        ……何なんだ。何故こんなに頭のおかしい女しか訪ねて来ないんだこの大学。何が原因だ。
        -- シークエンス 2012-12-16 (日) 23:20:27
      • いや、まあ、多分やけど、他人巻き込んで女運が最悪な人がおるんやないですかね。 -- ション 2012-12-16 (日) 23:21:14
      • 多分そいつァその最悪な女運のせいで結婚とかしてねェだろうな。 -- カルマ 2012-12-16 (日) 23:21:57
      • ……誰か知らんが死ねばいいのにな。 -- ロレン 2012-12-16 (日) 23:22:33
      • 十四教室での僕のアウェー感異常だろ。なんでこうなった? お前の教育の賜物かシロマル。 -- シークエンス 2012-12-16 (日) 23:25:24
      • いや……なんかよく分からない黒幕みたいな立場に収まってる上で要所要所でキーパーソンみたいな動きするからじゃないですかね。
        隠居しきれてない前作主人公って大体ヘイト貯めるもんだし。
        -- シロマル 2012-12-16 (日) 23:26:31
      • なんでこうなったか、教えてあげましょうか? うふふ。 -- ウィッカ 2012-12-16 (日) 23:27:38
      • ご、ごめんなさい……(怯える) -- シークエンス 2012-12-16 (日) 23:28:08
      • ……謝っちゃったけど。威厳の欠片もないけど。
        ……何かあったの? ウィッカと。別に聞きたくはないけれども。
        -- ゼニス 2012-12-16 (日) 23:28:58
      • まあそんな叔父さんのマイナス人生も、それを取り返すかのごとき超プラスガールであるうちの登場によって! -- 芝虎 2012-12-16 (日) 23:31:39
      • 芝虎、50Gやるからちょっと黙っててくれ。 -- シークエンス 2012-12-16 (日) 23:32:24
      • 割りとなんでも買える金額!! そんなにうちの相手するの嫌なの!? -- 芝虎 2012-12-16 (日) 23:32:57
      • シロマルエフェクト君。
        ところで、一つ質問があるのだけれど。序列五位・新山の訓練風景というか、こういった模擬戦闘を実際に君も目にすることはあったという前提で語るが、
        その際、彼女は今のような服装で戦っていたのかい?(モニターを見ながら呟く)
        -- キリス 2012-12-16 (日) 23:36:43
      • まあ……色々だな。あくまで俺らの本業は魔術であって、体術は補助的な物だったりするから普段着のままというのも多いけどな。
        エストは大体は制服のまま戦ってたか……?(ゼニスに向かって聞く)
        -- シロマル 2012-12-16 (日) 23:45:56
      • ……そうね。うちのゼミではカルマとエストが飛び抜けて体術強かったから、大体が指導組手みたいな形になっていたしね。
        それが、何か? キリスさん。
        -- ゼニス 2012-12-16 (日) 23:47:03
      • ほう。ほうほう。それはそれは、中々に面白い観測結果であるとワタシは言おう。
        だとするならば、少しばかり面白い物が見れるであろうね。そんな彼女が本気で戦うのだから。
        -- キリス 2012-12-16 (日) 23:48:20
      • 人間にも分かる言葉で喋れ。動きやすい服装で戦うから、本気で戦えるとか言うつもりか? -- シロマル 2012-12-16 (日) 23:48:45
      • (愉しげに顔の前で手の指を組み合わせて)違うよ。
        狐の獣人というものには、面白いことにある種根源を別にする種族であったとしても、普遍的なルールのようなものがあってね。
        古い血であるフォックステイルの民もまた、そのルールに従っているというだけの話さ。
        -- キリス 2012-12-16 (日) 23:51:27
      • ……普遍的な、ルールか。 -- シークエンス 2012-12-16 (日) 23:51:56
      • 尻尾の数が、狐の獣人の実力と比例関係にある。ただそれだけのルールだよ。
        今まで、尻尾を出すことを意識した服装で戦ってこなかったのなら、少しばかり面白い物が見れるだろうね。
        まあそれはもちろん……序列五位・新山に尻尾を備えられるだけの実力があれば、という前提はあるだろうけどね。
        -- キリス 2012-12-16 (日) 23:53:25

      • 模擬戦教室

      • (構えを取らず、自然体でせつなに相対する)
        本当は……そんなこと無理だって、エストは知ってるんだ。
        そんな都合のいい未来なんて得られないし、きっともうエストは、与えられた優しさを踏みにじることでしか、何処かに進み出せないって知ってるから。
        だから、せめて――。

        (ふわりと、身体が、金色の光に包まれる)
        (僅かだけ指先でスパッツの背部を下ろし、尾ていを露出させると、そこに一本の尻尾が生じた)

        ――せめて、死なないでくれ。
        -- エスト 2012-12-17 (月) 20:27:27

      • (その攻撃は、知覚の外から訪れた)
        (瞬きをしたわけでも、意識を外した訳でもなかったはずなのに、五感全ての知覚からエストの姿は消失していた)
        (踏み込みの音が届くより前に、相手の身体は眼前に迫っており)
        (腹部にねじ込まれる拳の感覚の方が、鼓膜を打つ彼女が床を踏み込んだ破砕音よりも先に来た)

        (気道が詰まり、胃液がお腹の中から逆流を起こす)
        (浮遊感が襲いかかり、次いで視覚が誤作動を起こしたかのようにその全てを遠くへと追いやる)
        (それが「殴打により後ろに吹き飛ばされている」という自分の状態が齎していると気づいた時には)
        (既にエストは、空中を舞う自分の身体に追いついており)
        (高く上げた足で、地面に縫い止めるようにして、殴打したお腹に向かって踵を振り下ろしていた)
        -- せつな 2012-12-23 (日) 22:51:19
      • (必殺の一撃が突き刺さり、食い込み、必殺である感触を得ていながら、心のどこかで違和感を覚えていた)
        (それは、この程度で終わって欲しくないという願望が齎した幻想かとも思ったが、違う)
        (もっと、自らの経験が推測した正確なる感想であることを確信し、目測もつけないまま反対の足を振り上げ、振り下ろす)

        (今度は、明らかな違和感。打点が高い。せつなの身体に突き刺さる前に何かに当たり、そしてその『蹴撃』は止められていた)
        (瞳をやると、そこには人間の手によって受け止められ、掴まれている足が見えた)
        (おかしい)
        (せつなに、自分の攻撃を受け止めるような膂力や魔力はないはずだ)
        (まして、一尾状態のフォックステイルである自分の攻撃など、止められる者といえば防御特化のロレンか実力では一番近いカルマがギリギリであるはずなのに)
        (また)
        (また、エストは騙されていたのかもしれない)
        (エストの知らないところで、せつなにすら手加減されていたのだと思うと)
        (奥歯が悔しさで鳴り、最初にせつなの身体を踏み抜いた右足を力任せに振り上げ、今度は殺意を載せた勢いで地面に倒れるせつなに叩きつける)
        -- エスト 2012-12-23 (日) 23:06:33
      • (転がるようにして、その一撃から身を躱す)
        (余裕などない)
        (考える暇もない)
        (最初から、何もかも可能性を網羅した上でいくつかのことにを予め想定した上で対処していなければ今の二撃で確実に死んでいた)
        (おじちゃんならきっとそうするだろうということをしていたがために、生きながらえた)
        (息が荒い)
        (心が苦しい)
        (誰かと、本気で戦うことが、こんなに負担のあることだと思ってなかった)
        (一呼吸で息を整え、両手に纏っていた魔力を軽く振って散らす)
        (ふらつく)
        (余りにもこの魔法は、魔力の消費が大きい)
        (二度と使うはずのなかった、自分の根源に密接に関係してくる『根源魔法』に魔力の殆どを刈り取られて、視界が霞む)
        (睨みつけるようにして意識を高め、両手で円を描くようにして右手の魔力と左手の魔力を『繋げる』)
        -- せつな 2012-12-23 (日) 23:29:25

      • (それは、或いは――初めてのことだったから)
        (本質的に、何かを諦めたことがない自分にとって、最初に手放した何かであった)

        (ふわりと)
        尻尾が二股に分かれる
        (二尾。腕先、膝までを獣の体毛が覆う先祖返りを起こす)
        (零れ出す殺意が目を血走らせ、撥条のように撓んだ筋肉が地面を叩き)
        (――音速の壁を超えて、空気が破裂音を残して置き去りになる)
        (純粋な破壊力の塊となって地面を蹴った音がせつなへと到達剃る前に、その腹部へと拳を叩き込む)
        -- エスト 2013-01-26 (土) 22:49:05
      • (次に来る攻撃が、直線であることも)
        (そのタイミングであることも)
        (そこを狙ってくるであろうことも、相手がエストなので理解は出来ていた)
        (相手を見縊っていた訳でも、見誤っていたわけでもなく、その攻撃は直線で、そのタイミングで、当たりをつけた場所に叩きこまれたにも関わらず)

        (根源魔術で他者と魔力を繋いで作った『擬似アイアンシールド』を貫いて、腹部へと突き刺さっていた)
        (足を踏ん張る間も無く背後の壁へと叩きつけられて、目の前が明滅する)
        (事前にロレンくんに協力してもらった『アイアンシールド』が無ければ、その一撃は腹部を貫いていたかもしれない)
        (痛みと、気道を遮断された苦しみが同時に襲ってきて、意識が飛びかける)

        ……ッッ!!(踏みとどまる)
        (自分が言い出したことだ)
        (自分が助けるって誓った相手だから)
        (その全力を受けてなお立っていられる誰かがいなければ)
        (自分が何度も心が折れかけた時に、アニキが、ジィ姉が側にいてくれたことが今の自分を支えているから)
        (その繋がりだけは、絶対に途切れさせたくない)

        (空中の自分の血を指先で掠め取り、それを媒介に術式を床に投影する)
        (ルーンが指先から『雷の速度』を以って『氷のように定着』する)
        (ウィッカの魔力『五属性の魔法(マジック・オブ・マージョリース)』を応用し、氷と雷、それぞれの性質を入れ替えた『刹那の魔法』)
        (多重投影された魔法陣が『炎の苛烈さ』で発現し、通常二工程以上必要な魔術の励起を、魔力の多重消費によって無理矢理に行うインスタントマジック)
        (根源魔術で繋がりを持てる魔力が限られている為に、改めて『芝虎の魔力』である『精神支配(サキュバス・ジャック)』を強制励起)
        (かつて自分が正面から食らい、意識を飛ばされたそれを、当たりも付けずに放出しようとしたところで)
        (――正面に、誰も居ないことに気づいた)
        -- せつな 2013-01-26 (土) 23:02:15
      • (そこに有るのは、悲しさだった)
        (ただ、ひたすらに、自分のやってきたことが全て無駄であったという、哀しさだけだった)
        (この状況を楽しみ、愉しめない自分の有り様が、一撃の攻撃も許していない自身の傷となり)
        (天井で三角飛びをして回り込んだ、せつなの『後ろ』で小さく呟いた)

        ありがとな。
        ……さようなら。

        (上手く、笑えたかは、分からない)
        (それでも、ちゃんと、最後だけは伝える事が出来たと、そう思う)

        (手のひらで優しく、せつなの意識を刈り取る一撃を)
        (――正確に、延髄に向けて後ろから放った)

        (最初から――勝負は、始まってすらいなかった)
        -- エスト 2013-01-26 (土) 23:11:03
  • 【問7 3】 エスト・フォックステイル・新山の問題 -- 2012-12-15 (土) 22:48:30
    • (ばぁん!と寮の隣の部屋に入ってきて)
      おじちゃん!!
      あたしに、身体の使い方を教えて!!
      -- せつな 2012-12-15 (土) 22:57:33

      • (――絶命する)
        -- シークエンス 2012-12-15 (土) 22:58:23
      • し、死んでる……。
        し、死んでる場合じゃないよおじちゃん……!!(揺さぶる)
        こういうときどうしたらいいんだっけ……人口呼吸……?
        -- せつな 2012-12-15 (土) 22:59:53
      • (柳のように揺れる)待て、待て、死人に鞭打つな、いろんな意味で追撃になる。
        いや、ちょっと、待て、流石にその発言は僕も死ぬわ。(凄い嫌そうな顔で)
        ……芝虎に何か吹きこまれたとか、そういう話か……?
        -- シークエンス 2012-12-15 (土) 23:01:31
      • 違うよ……これは、あたしが決めて、あたしがどうしてもやりたいことだから……。
        突然こんなことお願いされても困るだろうけど、あたし……頑張るから。
        おじちゃんの知ってること、全部教えてほしいんだ……。
        -- せつな 2012-12-15 (土) 23:02:54

      • (――深く絶命する)
        -- シークエンス 2012-12-15 (土) 23:03:17
      • 蝉より儚い!!
        死なないでおじちゃん……!! 本当に時間なくて、その、あたしも必死なの!
        -- せつな 2012-12-15 (土) 23:04:35
      • (生き返る)……いや、ちょっと、ちょっと落ち着こうな。まず僕が落ち着くまで時間をくれ。
        (頭を抱える)確かに、まあ、なんだ……卒業まで時間がないのは僕も理解しているが、その、なんだ……。
        (首筋を掻きながら)……よく考えた結果なのか、これは。
        -- シークエンス 2012-12-15 (土) 23:06:51
      • うん……本当は、魔術のことはともかく、そっち方面にはおじちゃんはあんまり詳しくないだろうから、
        他の人に教えてもらうのがいいんだろうけど……でも、そんなこと言ってられないから、やっぱりおじちゃんしかいなくて……。
        -- せつな 2012-12-15 (土) 23:08:24
      • (血を吐く)
        ……確かに、詳しくなさは何の否定も出来ないが、な……。(重ねて血を吐く)
        -- シークエンス 2012-12-15 (土) 23:09:27
      • 本当は一人でやるべきなんだろうけど、どうしても今回だけは失敗できないから、
        最後は自分だけで頑張るから、一度だけ、本番前に力を貸して欲しいんだ……ダメかな。
        -- せつな 2012-12-15 (土) 23:10:31
      • 一人で頑張るってそんなジィじゃないんだからお前……。
        い、いや、ちょっと待て、本番……本番って何だ。
        僕に教わった後、せつなには本番が待ち構えているのか……!? 相手は!?
        -- シークエンス 2012-12-15 (土) 23:11:47
      • えーと……怒らないでね。
        エスト、ちゃん
        -- せつな 2012-12-15 (土) 23:12:28
      • 大地がレグネグとーーーーーっ!!!???
        (――二度と還って来れないレベルに絶命する)
        -- シークエンス 2012-12-15 (土) 23:13:33
      • 落ち着いておじちゃん!! 誰かはわからないけどきっとそれ別のトラウマだよ!!
        おじちゃん!! おじちゃーーーーん!!
        -- せつな 2012-12-15 (土) 23:14:16

      • (間) -- 2012-12-15 (土) 23:15:54

      • そうか……。まあ、それをせつなが選んだのであれば、僕にそれを止める権利はない。
        正直に言えば最適な手ではないが、その限られた状況で打てた一手としては、上々だろうとも言える。
        ……しかし。困難なのはこれからだな。
        全力のエストを、せつなが相手にして勝つことは、難しいだろうからな
        (齎された悪しき状況に神妙な顔で呟く)
        -- シークエンス 2012-12-15 (土) 23:19:48
      • (あ、上のやりとりなかったことになってる、と思いながらも言わない、空気の読める子)
        ……うん、でも、そうだね。あたし、どうしても許せなかったんだ。
        だから、お願い……本当は、おじちゃんに頼ることもしない方がいいんだろうけど、
        それでも、絶対にエストちゃんをこのまま行かせたくないから……。
        -- せつな 2012-12-15 (土) 23:21:28
      • ……その辺、本当に剣馬そっくりだな、せつな。
        まあ、事前に知れて良かったと思うことにするよ、色々、知恵も貸せるだろうからな。
        日程的にフォックステイルについて調べることも出来そうであるから、まずは――。
        -- シークエンス 2012-12-15 (土) 23:26:59
      • ちょっと待っておじちゃんっ!
        ……知恵の方は……うん、今回は、いいよ。
        ……ごめんなさい、ワガママ言って。今回、この件に関して、あたしは必死でやりたいんだ。
        きっとここでおじちゃんに甘えちゃうと、最後におじちゃんがどうにかしてくれると思って、気持ちが緩んじゃうから。
        -- せつな 2012-12-15 (土) 23:28:28
      • ……そうか。……じゃあ、任せよう。
        ただ、その結果について必要以上に思いつめるようであれば……僕にも僕としての意地があるから、手くらいは出させてもらうぞ。
        もし、せつながせつなの方法でダメだったときは、その時点で改めて他人の手に委ねるんだ。
        この問題は、せつなの問題である以上に、エストの問題であるわけだからな。
        -- シークエンス 2012-12-15 (土) 23:31:02
      • うん。
        どの道、あたしがやる、って言っちゃった件だから……あたしがどうにか出来なかったら、エストちゃんの信頼は裏切る結果になっちゃうし。
        ……そういう意味では、あたしも必死にやるよ。(ぐっ、と拳を握る)
        -- せつな 2012-12-15 (土) 23:32:01
      • (そのせつなの姿を見て、成長を喜ばしく思う反面、一人で巣立っていく子供を見るときの寂しさのような物が胸に去来して)
        (内心、少しだけ笑ってしまう。……どの様で父親面しているのだろうかと)
        あんまり詳しくない身分でな……。(聞こえないように独り言を呟いて肩をすくめた)
        -- シークエンス 2012-12-15 (土) 23:34:02
      • ……おじちゃん、一つだけ聞いて、いいかな。
        ………ずっと聞きたかったんだけど、聞けなかったこと。
        一度、トラの事件のとき……おじちゃんの書庫を貸してもらったよね。
        -- せつな 2012-12-15 (土) 23:35:34
      • ああ、貸したな。
        ……何か面白いものでも見つけたか?
        (何処か、返ってくる答えが分かる問いを敢えて投げる)
        -- シークエンス 2012-12-15 (土) 23:37:00
      • うん……。沢山の、本。
        召喚物だったり、魔術の解析本だったり、色んな国の言葉で書かれてたりして、殆ど読めなかったけど。
        凄い、沢山書き込まれてて……怖いくらいだったよ。
        (おじちゃんの、目を見る。片方を失い、反対の瞳は優しげにこちらを見ている)
        (あたしは……その目が失われた理由も、知らない)
        -- せつな 2012-12-15 (土) 23:40:26
      • 必死さが、透けて見えているだけだよ。本の中に答えが存在しないと理解できるまでの六年間、必死に読み漁った本を捨てられていないだけだ。
        ……あの頃、自分は一人でも何かが成し遂げられると思っていたんだ。
        丁度、今のエストのように、だな……。努力が、独力での目的達成を可能にすると、本気で思っていた。
        結果として僕が導いたのは、他人を犠牲にする最悪の手段だったが、な……。
        -- シークエンス 2012-12-15 (土) 23:43:27
      • (ドキンと、心臓が跳ねる)
        (それは……今に至っても、触れることが出来なかった……)
        (兄である、本城剣馬と、セータ・シークエンスが『殺しあった』理由)
        (失いたくない二人が、生命のやり取りを交えた争いをしていたという事実だけで、今でも足が震える)
        -- せつな 2012-12-15 (土) 23:45:08
      • (嗚呼、そうか。……本当に、どの面を下げて父親面しているんだ、自分は)
        (争いを嫌い、何かを失うことを何よりも恐れる少女の……たった一人の兄を、自らの欲望の為に奪おうとした人間が)
        (せつなという一人の人間にとって、一番相容れない類の人間が)
        (幼い時から贖罪のように、その成長を見守ってきただけで、相手の警戒心を殺いだ結果がこの距離だ)
        (本来なら……道が交わることもないだろう、他人同士であるのに)
        (余りにも、自分はこの空間の居心地が良すぎて、忘れていた)
        (自分は一度――本城剣馬を殺そうとしたことがあるという、決定的に本城せつなと相容れない事実を)
        -- シークエンス 2012-12-15 (土) 23:48:30
      • (一度、その事実を、本城せつなは許していた)
        (あの頃自分は、まだ幼かったし、結果としてアニキもおじちゃんも生きて帰ってきてくれたのだから、それでいいと思っていた)
        (でも、本当にそれを、許すべきなのだろうかという問いは、大人になった今でも残っている)
        (簡単に、許しを与えることで、解決できる問題ではないことを……今ならわかるから)
        おじちゃん。
        (だから、でも、今は少しだけ、その解答の得られない問題を先送りにして、小さく笑った)
        ……その時、体術とかも研究してたりしない?
        -- せつな 2012-12-15 (土) 23:51:16
      • (――本当に、この子は優しい子だ。薄汚れた自分の心ですら理解出来るのだから、本物であると思う)
        (互いに傷つかないために、望まぬ欺瞞すら口にだせるせつなという少女の成長は、やはり少しだけ胸を痛くさせる)
        (成長を間近で眺めることを選んだが故の誘いだったが、自分などが評価しなくても、いずれせつなは誰かに認められる人生を送っていただろうと思う)
        (それを、独善的な理由で自らの手のひらの中の籠に押し込めたのは他ならぬ自分だ)
        (自分の行為が、羽色の綺麗な鳥を観賞用としてその羽根の根を手折るような、下種な思惑がないと、本当に言い切れるだろうか)
        (答えは出ない。出ないから、せつなは先延ばしにしようとしてくれている)
        (だったら、僕は今だけは、他の問題を片付けるために、いずれ語らねばならないその問題を、先送りにした)
        残念ながら、な。
        まあ、出来ることは、全て教えると約束しよう。
        魔術は三年で抜かれたが……多分、体術は今週中にでも抜けるだろうな。
        (肩をすくめて、不器用に、大人と大人は小さく笑いあった)
        -- シークエンス 2012-12-15 (土) 23:56:12
  • 【問7 2】 エスト・フォックステイル・新山の問題 -- 2012-12-11 (火) 21:41:02
    • (積もり積もった違和感の集まりに、形を与えられたような気分だった)
      (普通の生活を送っているつもりでいる中で、自分でも違和感を覚える瞬間は、何度もあったのだ)
      (例えば、組手という物が実戦と決定的な違いは、決着に至る一手前で攻防を終了するところにある)
      (将棋で言う『詰み』、チェスで言う『チェックメイト』とは、後一手で戦が終了する時に宣言されるモノであり、戦が完全に終了した際の合図ではない)
      (だから、決定的な一打については振り抜かれずに、拳を引くモノである)
      (だけれど自分は、ここ数カ月の間、常にその拳を何らかの形で振り抜こうとする自分を抑制し切れなくなっていた)
      -- エスト 2012-12-11 (火) 21:48:01
      • (決定的な終わりはすぐ近くまで迫ってきていた)
        (つい最近)
        (その箍が外れたのではないかと思うことは、もう起こってしまっていた)

        (組手の相手はウィッカ)
        (体格に差はあるが、相手との実力差はかなりあるので、エストは力を抜いて相手をしてるつもりだった)

        (だが、最後相手の防御の隙を突こうと踏み込み、トドメの一撃を寸止めしようとして)
        (その拳が大きくウィッカの顎を掠めることになる)
        (――目測を謝るなんて、フォックステイルという戦闘民族にはあり得ないにも関わらず、だ)
        -- エスト 2012-12-11 (火) 21:53:38

      • ……と、とと。
        -- ウィッカ 2012-12-11 (火) 21:54:36

      • (拳の一撃は、身構えていたウィッカの脳を僅かに揺らし、二三歩後ろに後退らせる)
        (不可解に振りぬかれた拳に、フルフルと頭を振り、僅かだけ焦点のずれた瞳で笑う)
        (驚いたのだろう。振りぬかれると思っていなかった拳に)
        (そしてそれと同じようにエストも、その振りぬかれた拳に驚いて硬直していた)
        -- エスト 2012-12-11 (火) 21:56:34

      • ……何か、今日やる気満々ね、エスト。
        -- ゼニス 2012-12-11 (火) 21:57:16
      • まー、多分あれじゃろ、ロレンの前でちょっといいカッコ見せたい的な乙女ゴコロだよ、察せよ。 -- 芝虎 2012-12-11 (火) 21:58:19
      • 煽られるの危機感だけなんだが。 -- ロレン 2012-12-11 (火) 22:00:04
      • あはは……ごめんねぇエっちゃん、ちょっと避け切れなかった。
        全然だいじょうぶだよぉ?
        -- ウィッカ 2012-12-11 (火) 22:01:31

      • (フォローの言葉が、心に痛い)
        (優しい仲間は、その過剰攻撃を冗談として昇華してくれる器用さを持ちあわせてくれていた)
        (だけど、その時エストの心の中はぐちゃぐちゃに混乱していた)
        (拳を振り抜いた)
        (振り抜いてしまった)
        (振り抜いてしまったにも関わらず)

        (自分の中には、言いようのない悦びに似た感情が芽生えて、今にも頬が綻びそうになっていたから)
        -- エスト 2012-12-11 (火) 22:04:18

      • 視界遮られて邪魔やしちょっとそのおっぱい外してやればええんちゃうん。
        -- ション 2012-12-11 (火) 22:05:06
      • 手伝うぞ。 -- カルマ 2012-12-11 (火) 22:06:01
      • オレも。 -- ロレン 2012-12-11 (火) 22:06:20
      • え、遠慮したいなー、じわじわ寄ってこないでほしいなー。
        生の装備なので、絶対外れないと思うし、前に試したとき二時間頑張っても外れなかったでしょうー……!?
        -- ウィッカ 2012-12-11 (火) 22:07:30
      • まあちょい理性とか外れそうやったけど。 -- ション 2012-12-11 (火) 22:08:00
      • うちの辞書には理性という文字は落丁し、隠語にはマーカーがされ、膣内と書いてナカと読むのでナ行を探して欲しい。 -- 芝虎 2012-12-11 (火) 22:09:57
      • ごめん、トラ……素直に死ねばいいと思った。
        アホな話してないで、次どの組み合わせでやるの。何なら私が出てもいいけど。
        -- ゼニス 2012-12-11 (火) 22:11:46
      • ああ、えっと、じゃああたし出ようかな。
        エストちゃんと暫く組手してなかったし。
        -- せつな 2012-12-11 (火) 22:12:41
      • 出るぞ……! せつな……! -- 芝虎 2012-12-11 (火) 22:13:26
      • (せつなタックル。→→P) -- せつな 2012-12-11 (火) 22:13:57
      • ぐえーっ!
        流石に四年も経つとあの可愛かったせっちゃんがツッコミまで出来るように! ツッコミってそういう。
        -- 芝虎 2012-12-11 (火) 22:15:05
      • ちょっとトラそろそろ黙らないと上の口に突っ込むわよ。 -- ゼニス 2012-12-11 (火) 22:15:56
      • 『上の』っていらないよね!? 日常的に何処かの他の口に何か突っ込まれてるみたいな言い草やめい!! -- 芝虎 2012-12-11 (火) 22:17:13

      • (聞こえない)
        (普段は、鬱陶しいながらも悪くは思えないその声が、エストには届かない)
        (ただ、自分の中に生じた欲求とその欲求が生み出した行為の狭間で苛まれて、両手を見る)

        (今は、冗談で済んだ)
        (冗談で済ませてくれた)
        (でも、もしいまの攻撃が掠っただけでなく、思い切り命中していたら)
        (その一撃によって、相手を傷つける結果になっていたら)
        (笑い話で済まされない程の攻撃になってしまっていたとしたら)
        -- エスト 2012-12-11 (火) 23:22:19
      • (フォックステイルは他人を傷つける)
        (故に、誰とも相成れず、ただ独り強きに在り続ける)
        (アイゼンロニーの古い言葉の意味が、ようやく現実感を帯びて自分の身に振りかかっている)

        (そしてその時になって初めて、エストは何かを怖いと思った)
        (他人を傷つけることを)
        (誰かを傷つけてしまうことを)
        (……疎ましいとも思っていたはずの皆を……害してしまうことを)
        -- エスト 2012-12-11 (火) 23:24:59
      • (この手が、決定的な何かを壊してしまう前に、エストは自分の存在を認めるべきだったんだ)
        (だけど、それでも、四年という月日が齎した心地良い温度は、いつまでもそこに未練たらしくそこにしがみつくことを選ばせた)
        (或いは、その欲求は戦い事態に触れなければどうにかなるものかもしれない)
        (そんな安易で幼稚な考え方をしていたからこそ)
        (その拳は、解放を求めて鬱屈した感情ごと何かを破壊することを求めてしまう)
        -- エスト 2012-12-11 (火) 23:45:52
      • (取り繕おうと、壊れかけた物を誤魔化そうと、足掻けば足掻くほど、自分の中で決定的な何かは壊れ続けた)
        (壊れ続けたからこそ、壊し続けた)
        (人の目を盗み、バレないように、暴かれないように、その破壊は行われ続けた)
        (慣習化した破壊行動と破壊衝動は、いつしか自らの中で歯止めが効かない程に膨れ上がり)
        (気づけば白濁した視界が拓けたときに、目の前に存在していたのは自分が大学生活を送ってきた教室の、それはもう言い訳できない程の破壊の跡だった)
        -- エスト 2012-12-11 (火) 23:48:30
      • (一度壊したモノは、容易には元に戻らない)
        (子供でも知っていそうなその常識を踏まえた上で、自分の体は学び舎の破壊という結果を齎した)
        (それでも、そのドアさえ直す事が出来れば、またやり直すことが出来るかもしれない)
        (誤魔化すことが出来るかもしれない)
        (幼稚さが、自分を甘やかした)
        (だからこそ、キリス・フォックステイル・皇木と名乗った序列一位の女の言葉は)
        (――深々とエストの胸に突き刺さることになる)
        -- エスト 2012-12-11 (火) 23:50:55
      • (でも)

        (心の何処かで、自分はこういう終わりが訪れることを知っていたのかもしれない)
        (だから、ある程度の距離を置き、誰とも心を通わせず、適切な距離を保ってきたはずなのに)
        (なのに、今に至って)
        (別れの一歩を踏み出さないといけない今になって)
        (どうしようもなく、その手を放し難くて)
        (エストは、俯いたまま校門を前にして、静かに肩を落とす)

        (あと、一歩だけ踏み出してしまえばきっと)
        (こんなに苦しい思いをしなくて済むのに)
        -- エスト 2012-12-15 (土) 21:32:38

      • ……問題は、なかろう。序列五位・新山。
        相成れぬ存在というものは世の中に存在する。
        捕食する者と捕食される者を共に籠の中に入れておけば、淘汰が起こるのは自然なことであるのだよ。
        故に、自らの牙を折ってまでそこにとどまろうとする不自然に、身体を瓦解させる前に。
        その矛を向ける先を、ワタシが示してやろう。……同胞としてな。
        -- キリス 2012-12-15 (土) 21:34:31

      • (大学の門の先)
        (序列一位・皇木が両手を広げて薄く笑みを浮かべながら待ち構えている)
        (アイゼンロニーに生まれた者は全て、戦力として消費されるを是とする)
        (或いは、新山の長老が自分に大学入りを薦めたのも……自分の甘えに自覚を与えて、人から離すためだったのかもしれない)
        (だったら、最初から自分が努力してきた全ては無駄で……ただの、徒労だったのかもしれない)
        (絶望と共に、一歩を踏み出そうとして)

        (――その手を、後ろから掴まれた)
        -- エスト 2012-12-15 (土) 21:37:02

      • エストちゃん。
        ……少しだけ、待って。
        -- せつな 2012-12-15 (土) 21:38:49

      • (そのせつなの手は、強制こそしないが納得するまで離さないような強さで握られており、自分の心の弱い部分を刺激する)
        (言い返そうと振り返った所で、言葉が後ろから自分を追い越して投げかけられる)
        -- エスト 2012-12-15 (土) 21:40:13

      • いやはや。
        いやはやいやはや。
        中々に残酷なことをするではないかい、せつな本城女史。その行為が序列五位・新山をどれほど傷つけるか理解していないわけでもないだろうに。
        それとも何かな、君はこの難問を物語のように華麗に華やかに解決できる素晴らしき案を持っているとでも言うのかな。
        いやはや、それこそかのご高名であらせられるセータ・シークエンス評議長の問題解決力を以っても無理ではないかと箴言しておこうではないか。
        -- キリス 2012-12-15 (土) 21:43:04
      • エストちゃん。
        状態や状況に、凹んじゃだめだよ。
        まだ、何かを決めて、絶望してしまうには、早すぎるから。
        -- せつな 2012-12-15 (土) 21:44:26
      • しかし、それは精神論でしかない。
        現状というものを解決するのはいつだって論理や実値であると、大学では教えてないのかい、せつな本城女史。
        -- キリス 2012-12-15 (土) 21:45:25
      • (序列一位・皇木の言葉尻に載るのは本当に嫌だったが、せつなに向かって告げる)
        (まるで、癇癪を起こした子供のようだとも思うが、言葉は止められない)
        ……悔しいけど、あいつの言うとおりだ。
        どうしようもないことは、この世にあるんだ。
        他人をきずつけて、面白いと思う心がエストの中にある限り。
        ……エストは、ここにいちゃ、ダメなんだ。
        -- エスト 2012-12-15 (土) 21:47:14
      • でも。……じゃあ、逆に聞いて、いいかな。
        エストちゃんは、皆と一緒にいたいんだよね。
        だったら……あたし達も、同じ気持ちだから。
        だから、この問題について、あたしたちも、悩ませてくれないかな。
        ……もう、すぐに答えを出さないといけないくらい、辛い問題、なのかな。
        -- せつな 2012-12-15 (土) 21:49:02

      • (その優しさは)
        (その、せつなの、良い人さは)
        (今まで受けた、どんな攻撃より、自分を傷付けた)
        ……せつなに。
        エストの辛さなんて、分かるわけ、ないだろ

        (ぼろり、と。悔しいが、いろんな感情が湧いてきて、押し出されるように涙が零れた)
        -- エスト 2012-12-15 (土) 21:51:05
      • (少しだけ、その言葉の含む、向けられたことのない毒にびくりとするが)
        (それでも、手は、手だけは、離さなかった)
        -- せつな 2012-12-15 (土) 21:52:00
      • (面白いことになったとばかりに、口の端を持ち上げる) -- キリス 2012-12-15 (土) 21:52:31
      • せつなに。にんげんで、もんだいなくて、エストみたいじゃない、せつなに、わかるわけ、ないんだ。
        すっごいつらいんだぞっ……!! ずっと、ずっとお腹が空いてるみたいになって、つらくて、でも、だめでっ……!!
        みんなが普通なのに、エストだけこうなんだっ!! でも、エストが我慢しないとだめで、それはせつなには分かんないだろ!!
        ……エストは。皆を傷つけたくないから。
        だから、エストなんか、最初から大学になんていなきゃよかったんだ!!
        -- エスト 2012-12-15 (土) 21:54:47
      • フォックステイルでも落ちこぼれで、傷つけたくないとか言うから、だから追い出されて、
        でも、おじいが大学にいったら、もしかしたらどうにかなるからっていうから、来たけど、
        どうにもならなくて、もう、どうしようもなかったなら、エストは最初から大学なんてこなかった!!
        なんで優しくするんだ、なんで一人でいさせてくれないんだ!!
        エストはめんどくさいって言ったり、嫌だっていったりしてたろ!!
        ウィッカが無理やり引っ張って行ったり、シバトラが理由言ってきたり、そういうのにも、エストは、エストの中の誰かは、いっつも攻撃したくてしかたなかったんだ!!
        -- エスト 2012-12-15 (土) 21:58:11
      • ホントはいっしょにいれないのに、いっしょにいるから、ずっといっしょにいれるって勘違いして、
        ダメなエストでも、どうにかできるかもしれないってがんばって、がんばったんだ!!
        でも、ダメだったんだから、もう絶対ダメなんだよ!!
        エストだって、皆といっしょにいたいけど、皆とふつうにしてたいけど、
        それは、エストには許されないことなんだ!! やっちゃ、ダメなんだよ!!
        そんなことしたいって、思っちゃダメだったんだ!!
        -- エスト 2012-12-15 (土) 22:00:28
      • それは……それだけは、違うよ、エストちゃん。
        誰にもダメだって言われる前から、自分でダメだって言い訳してるだけだよ。
        そんなの……そっちのほうが、ダメなんだよ、エストちゃん。
        -- せつな 2012-12-15 (土) 22:01:44
      • そんなの……。
        そんなのせつなのほうが自分勝手だ!!
        エストが決めたことなのに、せつながダメだっていうほうが、おかしいよ!!
        せつなは、せつなは普通だから、そんなこと言えるんだ
        エストが壊したくない相手だから、そんなこと言えるんだ!!
        せつながエストだったら、絶対せつなだってそうしてるのに、そんなの………ずるい……っ。
        -- エスト 2012-12-15 (土) 22:03:24
      • ずるい……せつなは、ずるい……!!
        エストが欲しいものを、全部持ってるから……!!
        エストが頑張って、頑張って、それでも手に入らないものを、全部持ってるから……!!
        ふつうのことも、ロレンのことも、皆のことも……!!


        (叫びすぎたせいか、げほ、げほと涙と鼻水混じりの咳が出た)
        (口元を拭うと、烈火の如き怒りは徐々に収まり、最後に訪れたのは惨めさだった)
        …………本当は、ずっと、羨ましかったんだ。
        …………エストは、多分……ロレンのことも、そんなに好きじゃなかったんだよ。
        エストは、ずっと、自分の中に誰かを攻撃したいっていう気持ちがあったから。
        それを受け止めてくれる相手なら、別にロレンじゃなくても、良かったんだ。
        ……ごめん、せつな。
        エストは、弱虫でした。
        ………ロレンと、少しでいいから、仲良くしてあげてほしい。
        あいつ……多分、エストと同じくらい、一人ぼっちだから。
        -- エスト 2012-12-15 (土) 22:08:07

      • ……それは。
        諦める言い訳だよ、エスト

        (その言葉は、自分が思っているよりも、怒気を孕んでいた)
        (今までの人生、本当に恵まれていたから……誰かに怒ることなんて、一度もなかったのに)
        (でも、その言葉だけは……絶対に、今の自分は許してはならない言葉だったから)
        -- せつな 2012-12-15 (土) 22:13:53

      • (顔を上げると)
        (そこには、見たことのないせつなの表情があった)
        -- エスト 2012-12-15 (土) 22:15:55
      • 自分の気持ちがなくなったこと以外で、誰かを好きって気持ちを諦めたら、ダメだよ、エストッ!!
        好きなんでしょう、ロレン君のことも、皆のことも、今まで自分がいた場所も!!
        だったら、そんなに簡単に手を離しちゃダメだよ!!
        諦める理由を考えるんじゃなくて、少しでも、一秒でも長く、一緒にいれるように苦しんだ方が、何倍もいいんだよ!?
        -- せつな 2012-12-15 (土) 22:19:32
      • 気持ちを諦めてしまえば、きっとずっと楽になれたと思う。
        でも、その何倍も、きっと後悔するんだと、あたしは思うから……。
        だったら、楽に気持ちを諦めてしまうよりは、苦しみながらずっと悩んでいた方がいい……!!
        どんなきっかけでも、
        どんな勘違いでも、
        どんな錯覚だって、一回好きって思った気持ちを誤魔化して生きられるほど、人間って器用に出来てないから!!

        (エストの背後、キリスと名乗ったフォックステイルの女性に向けて、言う)
        あたしは、華麗になんて助けられない。
        おじちゃんほどの知識も、シロマル先生みたいな力もない。
        それでも、あたしは。……エストの味方です
        -- せつな 2012-12-15 (土) 22:24:01
      • (ひとりぼっちだと)
        (ずっと)
        (ずっと、思っていたから)
        (その暖かさだけは、触れてはいけないモノだと思っていたから)
        ぅ、ぅぅ……うぁ……ああぁぁぁぁああぁっ……!!
        (ボロボロと、決壊した堤防のように涙が滴り落ちる)
        (止める事の出来ない、我慢をすることが出来ない自分の弱さが、涙という形を伴って瞳から流れ落ちた)
        -- エスト 2012-12-15 (土) 22:26:22
      • ………いやあ。
        実に美談だ。素晴らしい。これが物語であれば拍手喝采をしていたところだが、すまない、ワタシは伸びる劇しか褒めないのでね。
        故に、そのような喜劇に心を動かされるほど純粋でもないのだよ。

        さあ、聞かせてもらおう、せつな本城女史。
        序列五位・新山にして破壊衝動の権化であるところのエスト・フォックステイル・新山の味方と謳う君にだ。

        ……このどうしようもない現状を、どのように解決するつもりなのかな。
        (両手を広げ、女は尋ねた)
        -- キリス 2012-12-15 (土) 22:28:33

      • エストが、あたしたちの中でも生きていけることを、証明すればいいんでしょう。
        暴力衝動を抑えない、本当のエストでも、一緒にいられることを証明すればいいんだったら。

        (人差し指で、数字の1を作る)
        方法は、一つ、ですよね。
        -- せつな 2012-12-15 (土) 22:30:16
      • では、聞かせて貰おうか。
        その、たった一つの冴えたやり方をね――。
        -- キリス 2012-12-15 (土) 22:30:54
  • 【問7 1】 エスト・フォックステイル・新山の問題 -- 2012-12-11 (火) 00:02:07
    • ……は?
      (声も出る)
      (自分の慣れ親しんだ研究室のドアが、盛大にぶち壊れていて、尚且つそれが明らかに人為的な何かによって破壊された跡があれば、誰でも)
      (更には、それを行ったであろう人間が、自分が座るべき椅子に勝手に座り、勝手に紅茶を淹れ、勝手にくつろいでいれば数え役満と言ってもいい)
      (大学で教師をしていると様々な変態と出会うことになるという、シークエンス恩師の言葉が脳裏をよぎる)
      (だが、それにしても目の前の誰かの異端さは、看過し難いものがあった)
      (スーツを着込んだ金髪の女性はこちらの姿を確認すると朗らかに微笑んで肩を竦めてみせ、長い足を組み替えて、曰く)
      -- シロマル 2012-12-11 (火) 00:05:57
      • お邪魔しているよ、若人。 -- キリス 2012-12-11 (火) 00:08:09
      • ……ホントにな。おい、何なんだあんた。何の恨みがある。
        ていうか、誰だあんた。……警備員とか何してるんだ、この大学。
        -- シロマル 2012-12-11 (火) 00:10:00
      • よしたまえ君、人生は短い、そのように色々様々な思索を巡らせた所で人一人が掬い上げられる解答というものは実に少ない。
        故にシンプルに答えを返そう。
        ワタシはフォックステイルが序列一位。『皇木(スメラギ)』のキリス・フォックステイルという者だ。
        噂はかねがね伺っているよ、シロマルエフェクト君。
        -- キリス 2012-12-11 (火) 00:12:21
      • こんだけ話通じない奴久しぶりに見た。
        (そしてこの状況に冷静に対応する自分が嫌になる。こうやって人はシークエンス評議長のように汚れていくのだなと危機感を覚える)
        (机に書類を置きながら、相手の訳の分からない言葉から分かる言葉を拾い上げる)……っていうか、フォックステイルってことは、エストの関係者、とかか?
        -- シロマル 2012-12-11 (火) 00:14:21
      • 察しがいいじゃないか。いや、これは別に褒めたわけではないよ。ワタシは褒めて伸びる相手しか褒めない。
        アイゼンロニーの民に同属意識はあまりないのだが、個人的にワタシは序列下位の者は好ましく思っている個体でね。
        序列五位、『新山』が世話になっているようだね。一度顔も見てみたいところだ。
        -- キリス 2012-12-11 (火) 00:16:15
      • 色々置いておいて、最初に聞いていいか。……序列ってなんだよ、分かるように喋れ。
        いや……やっぱりいい。それより先に無残なこの現状に対する釈明――。
        -- シロマル 2012-12-11 (火) 00:17:38
      • 知りたいのであれば教えようじゃないか。聞いたのは君なのだから心して聞いてくれたまえ?
        まず、そうだね、我々の生まれ育ったアイゼンロニー獣王国には建国時代から脈々と続く旧御三家という血筋が存在する。
        それぞれ『千血のバチスカーフ』『妖腕のフォックステイル』『偽術のクラインライン』といえば、どれか一つくらいは聞いたことがあるんじゃないかな? シロマルエフェクト君。
        -- キリス 2012-12-11 (火) 00:20:40
      • まぁ……名前くらいは。実際に関係したことは、ないけど。
        一応は何かと有名な国だし、教師やってればアイゼンロニーの名くらいは耳にする機会もあるしな……。
        -- シロマル 2012-12-11 (火) 00:24:28
      • 重畳。
        ではその辺りの説明は短く省かせてもらおう。
        この旧御三家はその物々しい名前を冠している十分な理由を持ち合わせている。
        彼女らの祖先は方向こそ違えど、個としての強さを追求するためにあらゆる犠牲や苦難を乗り越えることを信条としてきた。
        例えば交配による異能をその身に集めるバチスカーフの生き方であったり、
        彼我の攻防を単純化する偽りの術を先鋭化させ、特化するクラインラインのようにね。
        それと同じようにフォックステイルは、自らの力を高める為に、欲望を操作することに特化した種族であったのだよ。
        -- キリス 2012-12-11 (火) 00:28:23
      • ……それは、食欲とか、性欲とか、そういう類の……? -- シロマル 2012-12-11 (火) 00:29:17
      • そうだな。だがもう少しシンプルにしてもいいだろう。
        性欲を暴力に転化したり、食欲を暴力に転化することも、けして彼女らにとって難しいことではなかった。
        だが、性欲は快楽が満たされれば満足できてしまうし、食欲なら満腹になってしまえば転化するまでもなく昇華されてしまう。
        そこで、フォックステイルの祖先は考えたのだよ。新しく暴力に密接につながりのある欲望を身につければ、その身を永遠に暴力の中に置いておけるだろうとね。
        -- キリス 2012-12-11 (火) 00:31:45
      • 会って数分だが言わせてくれ。キチガイかお前ら
        頭がおかしいにも程があるだろ、ちょっと待て、じゃあその欲望って。
        -- シロマル 2012-12-11 (火) 00:32:33
      • うーん、褒められているとしか思えない。我らフォックステイルの探求はまさに気狂いの沙汰でなければ到達できない領域だったのだよ。
        彼らは食欲や性欲と同じように、自らの中に『暴力欲』という物を身につけることに特化した。
        結果、彼らは常に他者を害したいという欲求の中に生き、自らの暴力性に歯止めを掛けなくなる。
        愛する人が出来ればその顔を殴り、信頼出来る仲間が出来ればその頭を斧でかち割り、そうしてフォックステイルは強くなってきたわけだ、うん。
        -- キリス 2012-12-11 (火) 00:35:17
      • 断言するが数年以内に滅ぶだろうな、その種族。
        本人の悲劇度より、周囲の人間の迷惑が偲ばれる……。
        -- シロマル 2012-12-11 (火) 00:36:29
      • そうだな。だが、強さとは恐らくだが孤高であるとも思うのだよ、ワタシは。
        故に我らが先祖が採った道という物はけして間違いではなかったと、今日のワタシも思っているところだが。
        例え犠牲になる誰かがいたとしても。
        -- キリス 2012-12-11 (火) 00:37:52
      • その犠牲の一つが俺の研究室の扉な訳だがな、後でしかるべき請求をするからな、フォックステイル。
        ……じゃああれか、お前のその暴力欲が研究室の扉をぶっ壊したと、そう言いたいのか。
        -- シロマル 2012-12-11 (火) 00:38:52
      • 待て待て、論点がずれているぞ若人。まずは我らがフォックステイルが序列を敷いているその理由について聞きたいのではなかったのか。
        まあ、そういったわけで御三家の中では割りと乱暴な方法で強さという高みに登ろうとしたのが、我らフォックステイルなわけだが、
        やはりその試みにも、ある程度の所で頭打ちになるときが来るわけだ。どんな試行も繰り返せば上限は決まっているからな。
        そこでフォックステイルは一つの新しい試みに出る。
        フォックステイル内部で自らの『暴力欲』に様々な付加を行い、より効率の良い強さを求めるという幾つかの試みだ。
        それはまだ経過途中ではあるのだが、その時々での研究の進み具合を省みて、より強きに至った集団を序列の上位とする、
        いわば競争制度のような物が出来たのだよ。
        全部で流派は6つ。
        上位より『皇木(スメラギ)』『妃崎(キサキザキ)』『泉川(イズミカワ)』
        『彩塔(サイトウ)』『新山(ニイヤマ)』『古池(フルイケ)』という6つの流派が現在主流となっている。
        その序列の一位が「暴力欲を支配する、『皇木』」の流派というわけだ。
        -- キリス 2012-12-11 (火) 00:49:31
      • おい、ちょっと待て。
        全力全開で支配出来てねえだろ、あのドア! ドア見ろよ! 思いっきり殴られてぶっ壊れてるだろ!
        -- シロマル 2012-12-11 (火) 00:50:50
      • ふふ、まあ少女がやったことと思い許してくれたまえよ、若人。 -- キリス 2012-12-11 (火) 00:51:43
      • どう贔屓目に見ても少女って歳と外見じゃないだろ、あんた。
        ……っていうことは、上位である『皇木』には、『新山』、エストは逆らえないとかそういうのか?
        -- シロマル 2012-12-11 (火) 00:52:50
      • いやはや生徒思いの教師であって、序列下位を任せるに値する教師が新山のについていると知って少しばかり安心してしまったよ。
        そしてその安心を返すようで悪いが、心配せずとも序列の上下によって立場や地位の上下まであるわけではないよ。そこは安心していい。
        だが、まあワタシは少しばかり特別な職に就くフォックステイルでね。
        もし、シロマルエフェクト君の許可が降りるのであれば、彼女を少しばかりお借りしたいと思っている。
        -- キリス 2012-12-11 (火) 00:55:40
      • ……ああ、成る程。
        そういう類の、話か。
        (小さく嘆息し、多少の敵意の滲ませながら尋ねる)
        念の為に聞かせてくれ。キリス・フォックステイル・皇木さん。
        何の職の立場から、エストや俺に打診しようとしているんだ。
        -- シロマル 2012-12-11 (火) 00:56:59
      • 申し遅れたわけだが、臆面もなく言おう。

        ワタシの稼業は――『戦争屋』だ。
        -- キリス 2012-12-11 (火) 00:58:19

      • (僅かだけ)
        (両者の間に、無言の間が生まれる)
        (場所、彼我の実力差を得られる情報から計り、初撃の為に体の力を抜くことで、臨戦態勢に入ったことを、相手に伝える)
        (場合によっては、実力で排除するという脅しを込めて)
        -- シロマル 2012-12-11 (火) 00:59:53

      • 弁解の機を与えられていて悪いが、概ね若人の思い描いている虚像と現実は近い物であろうね。
        ワタシは戦争を売買する立場にある。
        戦争をするための力を。
        戦争をするための理由を。
        戦争をするための人を取引するのが、ワタシの仕事だ。
        「強さを支配する強さ」とは、すなわち暴を統べる事による強さであると定義する、序列が一位・皇木の流派に相応しい職であると自負している。
        -- キリス 2012-12-11 (火) 01:02:25
      • ……ああ、じゃあこれは。
        エスト・フォックステイル・新山の教師である俺に対して……喧嘩を売ってくれていると思っていいのか。皇木。
        (薄く微笑むキリスと向かいあい、射抜くように殺意を向けた)
        -- シロマル 2012-12-11 (火) 01:04:27
      • 剣呑だな。ここはシンプルにしてはいけないところだぞ、若人。
        先も言っただろう、もし、君の許可が得られれば。
        序列五位・新山の意思が伴えば、と言い換えてもいい。
        その前提がない限り、ワタシも彼女を売り物にすることなど考えはすまいよ。
        なにせワタシは売り手であるのだからな、満足の行かない製品を他人に押し付けるを良しとはしない。
        -- キリス 2012-12-11 (火) 01:06:43
      • じゃあ、明確に言ってやるよ。
        俺は、少なくともそれに賛同はできない
        もちろん、エストの意思や決定には従うが、大学生活も残り少ない今、自らを戦争の中に置くような選択を、エストがするとは思えない。
        -- シロマル 2012-12-11 (火) 01:08:05
      • 成る程成る程。
        うん、やはり君はいい教師であるな、シロマルエフェクト君。
        だがしかし、大学という狭い空間で培った常識というものは、一つの視点から物事を観測するには適しているが、
        その視点を様々な立場から見るという事に関しては実にままならぬ物になってしまうようだな。
        そもそもが、戦争を食い物にしているワタシのような存在が、本当に何の理由もなく、ただここを訪れると思っているのかい?
        -- キリス 2012-12-11 (火) 01:10:26
      • 意味が、分かりかねる。 -- シロマル 2012-12-11 (火) 01:10:56
      • では、シンプルに、順序よく答えよう。

        フォックステイルの序列五位・新山は「そのままの強さを追求する」という流派であるのだよ。
        つまりは、最初に暴力欲という物が出来、それが頭打ちになった時点で、何も選ばなかった流派であるのだ。
        つまりは彼女達は先人の道のりを貴しとして、何もしなかったのだ。
        序列二位・妃崎など、理性のくびきを断ち切り、暴力性に全てを委ねるまでに何かを選んだというのに、彼女達は何も選ばなかった
        -- キリス 2012-12-11 (火) 01:14:21
      • それは逆説、我々序列一位・皇木のように、自らの『暴力欲』というものに制御を掛けたというわけでもない。
        つまりは、一番原初に存在したフォックステイルという種族の姿をそのまま残す存在となったわけだ。
        さて、ここで簡単な質問をしよう。
        彼女達は、妃崎のように緩めることも、皇木のように締めることもできない自らの『暴力欲』を、どのように処理しているのだろうな?
        -- キリス 2012-12-11 (火) 01:16:58
      • 彼女らはその術について、余りに無知だ。知ろうとせず、ただ古きを良しとして自らの暴力欲を諸手を上げて肯定した。
        そんな新山が――どうして、普通の大学生活を送れていると思う
        もう、分かっただろう。
        シロマルエフェクト君。……君は、他人をベストコンディションにする能力を常に発揮しているそうだね。
        で、あれば、今ワタシが君と話をしながら、自らの中に湧き出る『暴力欲』にその身をゆだねてしまいそうになるような責め苦に、
        三年間という長い間、耐え続けた序列五位・新山は。
        ――果たして、もう限界が近いのではないかと、何故思えない?
        -- キリス 2012-12-11 (火) 01:20:08
      • (その言葉は、胸に重く、深く突き刺さった)
        (エストが、特別な種族であること走っていたが、あの小さな身体に、それほどの情動を秘めていたなんて、思ってもいなかった)
        (歯噛みする。気づけたはずのその歪みに、自分は気づくことが出来なかった)
        -- シロマル 2012-12-11 (火) 01:21:36
      • だからね。
        これは、彼女のためでもあるのだよ。
        もう、限界が近いというのならば。
        いつか彼女というフォックステイルは必ず親しい人間を傷つけるだろう。
        そうなる前に、然るべき所で然るべき生き方を見つける方が。

        君にとっても、幸せなことだと、ワタシは思うのだがな。新山。
        例えば、今はまだ、ドアを破壊するような破壊行動で、衝動を抑えられているのなら、尚更な
        -- キリス 2012-12-11 (火) 01:22:56
      • (そこで、その言葉が自分を飛び越えて、背後にいる誰かに向けられていることにようやく気づく)
        (何処か、そこにいることを確信しながら、俺は振り返る)
        (そこには、愕然とした表情で……傷だらけの両手をそのままに、工具を持つエストの姿があった)
        -- シロマル 2012-12-11 (火) 01:25:03
      • ………。
        (何かを諦めるように、小さく俯いた)
        -- エスト 2012-12-11 (火) 01:25:52
      • ……エスト。 -- シロマル 2012-12-11 (火) 01:26:16

      • ……言っただろう、若人。
        ――少女がやったことと思い許してくれたまえよ。修理費くらいは、餞別にくれてやるからな。
        -- キリス 2012-12-11 (火) 01:27:07

Last-modified: 2013-10-06 Sun 17:18:13 JST (3854d)