便利屋事務所 Edit


「この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません」

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便利屋規則 Edit

  • 厄介事引き受けます。
    • 汚れ仕事から猫探しまで、分かれさせ屋から縁組まで。
      • お値段は要相談
  • という汚い看板が下がっている。

便利屋 Edit

  • 基本的に何でも請け負うが、解決に導けない問題については放り投げる。
    クローズまでを以って仕事という基本理念に拠る。
    • 過度に美味しい話は信じない者の集まり

事務所ロケーション Edit

  • 2F
    • 十二畳
    • デスクが二つに応接机とソファ
      • ここで依頼人から話を聞く
    • 喫煙可
      • 全体的にヤニ臭い
  • 共用冷蔵庫が一つ。
    他事務所から移転の際にかっぱらってきたものなので無駄に大きい。
    • 万年金欠の事務所のため、中身は水しか入ってないことが多い。
    • 水だけは飲み放題。
      水道さんありがとう。
  • 大体が所員が仕事がなくて管巻いてる事が多い。
  • 車庫にトヨタ・タンドラ(2ドア車)が入っている。
    ガソリンが入っているかどうかはその時々の経済事情による。
    • 後部座席に機銃を備え付ける台座があるが、
      こちらも弾丸が込められているか、そもそも機銃自体があるかが経済事情に大きく左右される。

事務員相談 Edit

おわり。--所員
実におもしろかった、お疲れ様 -- R

事務所内・外 Edit

編集:【便利屋やってます・籠】差分:【便利屋やってます・籠】

お名前:
  • 【KNOCKIN' ON HEAVEN'S DOOR 終】
    • ………。 -- スネイル
      • ………。 -- レィジー
      • ………。 -- カイセ
      • ………。 -- ウィレム
      • ……カイセ、かなぁ。 -- スネイル
      • ア"ア"ーッ! 三連続で逃したっ! 足まで折ったのにっ!
        オレ結構今回頑張ったから絶対褒めて貰えると思って昨日ウキウキして寝れなかったのにっ……!
        -- レィジー
      • 或いは、俺に単独でジャック・ザ・リッパーを圧倒出来る実力さえあれば……。
        クッ……歴史はいつも勝者が作ってきたということは知っていたのに、百の言葉を以ってもこの無念、後世に伝えたい程悔しい……!
        -- ウィレム
      • 正当に頑張った者が正当に評価される……こんなに喜ばしいことはない。
        さあ、褒めてほしい、撫でてほしい、よくやったと声を掛けてくれ、スネイルさん。愛してますよ。
        -- カイセ
      • レィジー、足が悪化する、飛び回るな。ウィレムも、そんな本気で泣く程自戒するな。
        ああ、まあ、依頼外とはいえ、頑張ったな、カイセ。賞金の振り込みは来週になるらしいが。
        -- スネイル
      • ……世界の、恵まれない子供に分けてあげてください。 -- カイセ

      • そん なに。とスネイルは撫でながら呟く。
        背景で、緩やかに自傷行為に走り始めたレィジーとウィレムを他所に、恍惚とした表情で頭を撫でられる我が事務所の策士。
        少年と少女の中間のような顔立ちと、何故か少しずつはだけていくスーツの首筋から覗く鎖骨が妙に生々しい。
        カイセの性別事情を知っているだけに、視線を逸らしながらひと通りの褒美を済ませ、小さく嘆息した。
      • ジャック・ザ・リッパーを名乗る者は今まで何人もいたが、ザック・ザリップスを名乗る酔狂な者がいるとは思わなかった。
        調べれば分かることとはいえ、そういう悪知恵が働く人間が近場にいたと思うと頭が痛い。
        聞けば、自前の名刺まで作っていたという。そんな物を持ち歩くような人間でないことくらい、知り合いならだれでも分かるというのに。
        世界が腐っているのは知っていたが、腐るならばそんな中途半端な腐り方ではなく、朽ち落ちる程まで徹底して欲しい。
        俺はため息を吐いて、今回の顛末を締めくくった。

      • そういえば、オレ知らなかったんだけど。
        この事務所、前の代にそのジャック・ザ・リッパーいたんだってな、スネイルさん。
        -- レィジー
      • お前、もう少し発言に気を使ったほうが、いらない敵を作らないと思うぞ。 -- スネイル
      • なんだよー、やっぱ知ってたじゃん、ずりーよオレだけ知らないとか。
        知ってたらもっとこう、楽しくなってたかもしれないのにさぁ!!
        -- レィジー
      • ボクも、ある程度は知っていましたけど、スネイルさんが話題に挙げないので遠慮してました。
        もし、可能なら事務所の風評対策や方針に活用出来そうなので、聞かせて貰いたいのですが。
        -- カイセ
      • 人物像は、ある程度ならヌマル組長から聞いている。ただ、それだけだ。
        興味が無いわけじゃないが、俺はそれ程聞きたいわけじゃないな。食指が動かない。
        -- ウィレム
      • ……いつかは話さないといけないとは思っていたが、結局今になって、だな。
        すまん、先に話していれば多少なりとも混乱は避けられたかもしれない。
        ただ……俺も、あいつのことはどう話していいのか、少し整理が付かないところがあったんでな。
        -- スネイル

      • その時、胸ポケットが震えた。
        話す意思があるとわかった途端、三人が前傾姿勢になってくるのを手で押しのけ、鳴り出した端末を開く。
        そこに踊っていた名前に嫌気を感じながら、通話ボタンを押す。

      • 『可愛いルゥちゃんだと思った? 残念!! イケメンでしたー!!
         おっとこの残念はイケメンに掛かっているわけじゃなくて残念なスネイルの気持ちを代弁した残念であることを注釈しとくよ。
         レィジーくんいるー!? キミの足を治療したデランデルお兄さん(イケメン)だよー!!』
        -- デランデル
      • わーい!! デランデルお兄さんだ!! 今すぐ死んで!! お願いします!! -- レィジー
      • 『――俺が死ぬとき、それはこの世から愛が潰える時。
         世界から愛(I)が消えたとしても、その前にはHがあるという。おいおいしかもその前にはGがあるって意味深じゃない?
         下ネタも嗜むイケメン、下イケ。流行るーっ!!』
        -- デランデル
      • うわー!! すげー!! 生理的に無理ーっ!! -- レィジー
      • おい、イケメン。あんまりうちの所員で遊ぶな。
        レィジーも、はしゃぎ過ぎだ。足悪化したらどうする。何の用だデランデル。ウィレムとレィジーの治療費は振り込んだだろう。
        -- スネイル
      • 『前の所員の時と違って、明朗会計で助かるよ。延滞も殆どないし。
         いやー、なんか昔を思い出すよね、その少年だらけの大所帯。その代わりスネイルが一気におっさん臭くなったけど。
         角が取れて丸くなっちゃったんじゃないの、昔はキレたナイフみたいだったのに』
        -- デランデル
      • ……他人の古傷を簡単に抉ってくれるな。お前こそもう少し歳相応に落ち着いたらどうだ。
        料金の催促でなければ何の用だ。おい、カイセ、暇だからって俺のサングラスを取るな。
        ウィレム、晩飯の前に携帯食料で腹を満たすな。これから作る。少し待て。
        -- スネイル
      • 『なんか今久しぶりに会った友達が昔みたいに遊ぼうと誘ったら家庭を理由に断ってきたみたいな寂しさを感じてる。なんだろうこの切なさ。
         あー、なんかキティ帰ってきたって聞いたけど、そっちにいるの?』
        -- デランデル

      • その発言に、嘆息する。少し騒がしくなってきた所内に、反対の耳を塞ぎながら言葉を返す。

      • ……今丁度、その話をしていたところだ。あの一件を片付けたのはうちの所員でな。
        偽物が出てくるまでになるとは、いなくなっても人騒がせな奴だと、俺も思うよ。
        -- スネイル
      • 『あー、れ? 偽物だったの?
         なんだよ、がっかりさせんなよー、生きてたのかと思ってイケメン喜んだのに。言ってやりたいこといっぱいあるのにさー。
         あれ? でもなんか俺ヌマル組長、じゃない、組織会長にサシで飲んだとか聞いたけど、それも偽物だってこと?』
        -- デランデル
      • ……? ヌマル組織会長と……?
        それは、いつの話だ? 偽物と会長が呑んだのか?
        -- スネイル
      • 『そりゃ、ついさっきだよ。だから通信してみたんだもん。帰ってきてるって分かったらそりゃそっちに通信掛けるって。
         なんか、帰ってきてすぐ会長に捕まったらしくて、しばらく呑んで、さっき開放したらそっち行くって言ってたって上機嫌で。
         今事務所どうなってるのかって聞いてきたからスネイルが使ってることバラしたら滅茶苦茶笑ってたけど目だけ笑ってなかったってさ』
        -- デランデル

      • 頬を、嫌な汗が伝う。
        何か、会話に決定的なズレを感じていた。
        それを整合してしまうと、どうにも嫌な結論が導き出されてしまう類の、何かが。
        俺の掛けていたサングラスを奪い合って殴り合いをし始めた三人に注意することすら出来ず、俺は固まったまま端末に尋ねる。

      • ……一つだけ聞かせてくれ。
        片手、義手だったかどうか、聞いたか……?
        -- スネイル
      • 『ああ、それそれ。
         何か自慢気に見せてくれたって言ってた。キティこそいくつになっても変わんないよな。メカ気取りかよ。
         本人も、いつも長ドス指してた方の、「利き手と反対の手」だから、まだ良かったって言ってたとか。そういう問題じゃないだろうに』
        -- デランデル

      • ――その、脳天気なデランデルの声の裏で。
        誰かが、階段を上がってくる音が聞こえた。
        ここの事務所は、安普請なので、誰かが階段を上がってくるときや降りる時は、必ず音が鳴る。
        いつもは、依頼者が来る時の心構えをする時間を与えてくれるその音が。
        何故かその時は死刑台に死刑囚が上がってくるのを上から見ているような、不吉な気持ちにしてくれた。

      • ……デランデル。後でかけ直す。
        来客があったみたいだ。
        -- スネイル

      • 強引に言い、端末の通信を切り、ポケットに仕舞う。
        俺は、息を整え、蛇腹剣とショットガンの位置を確かめる。
        その間にも、階段のぎしり、ぎしりという音は2Fへと徐々に登ってきている。

      • ――ウィレム。レィジー。カイセ。
        仕事を与える。これは、俺からの依頼だ。断ってもいい。
        -- スネイル

      • 俺が神妙な顔で言うと、三人は即座にソファに正座し、話を聞く姿勢になる。
        静かに、声を落として、所員に告げる。

      • 今から、この事務所に『敵』が来る。お前たち三人が束になって、漸く勝てるか勝てないかくらいの『強敵』だ。
        そいつは、俺たちの事務所を奪いに来る。平和で、善良で、穏やかな日々を壊しに来るんだ。
        だから、依頼をする。その強敵から、この事務所を守り、その相手を死なない程度に痛めつけろ。
        死ななければどうなってもいい。多少本気で掛かってもいい。それくらいの相手だからな。
        ……出来るか。
        -- スネイル

      • 俺が言うと、所員は三人とも同じタイミングで、無言で頷いた。
        三人の目が仕事人の目へと変わる。カイセは短剣を握り、ウィレムが銃を構え、レィジーが折れた足のギブスを叩き壊しながらステップを踏む。
        俺も、蛇腹剣を抜き、事務所のドアを向けて構えた。

        ――何年待ったと思ってる。
        ――何年、お前の代わりを務めてやったと思ってる。
        それに比べたら、安い歓迎だと思え。俺が思っているより甘い日常を送っていたなら、それを切符に地獄へ落ちろ。
        俺は、笑い出しそうな頬を抑えながら、この事務所の所長として、その数字をカウントする。

        何も知らない哀れな子猫は。
        ――その『天国への扉』をノックするために、一段一段、階段を登ってきている。

      • ――ミッションカウント。
        -- スネイル
      • 5。 -- スネイル
      • 4。 -- スネイル
      • 3。 -- スネイル
      • 2。 -- スネイル
      • 1。 -- スネイル

      • 【――0。】
  • 【KNOCKIN' ON HEAVEN'S DOOR 6】
    • 分かった。任せろ。もう大丈夫だ。全部委ねて楽になれよ。
      諸条件さえ貰えれば、後はこっちでどうにかする。面倒事は全部引き受けよう。
      どんな厄介な事案でも、一つ残らず正しく納め、バラして解して並べ替え、見栄えのいい華を添えてやろうじゃないか。
      伊達で策士なんか名乗れるか、酔狂で脚本家なんて謡えるか、生半可で参謀なんか背負えるか。
      カイセ・ミツェーリという名前を冠している時点で、そんな甘えは許されない。笑って嗤って哂わせてやろうじゃないか。
      レィジーは足を折っていて近接戦闘が出来ない。ウィレムは指を折っていて精密射撃が出来ない。
      悪条件は出揃って、出揃ったところでこんな物だ。こんなものスパイスにもなりはしないのに、丁寧に配置してくれてどうもありがとうと言いたい。
      後はもういい、こっちで勝手に読む。待たせることもない、即興がボクの持ち味だ。
      適当に演奏してくれれば、それをセッションに仕立て上げてみせるさ。そうして共に流す汗が、皆の笑顔が、全てを愛するボクの喜びであり、悦びであるのだから。
      ――さあ、始めよう。誰もが望む結末を、策士たるボクが書き改めてあげるから。

      • ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

      • 男は、その部屋に入り、電灯のスイッチを押す。僅かに遅れた反応で、廃ビルの中に電灯が灯る。
        立ち並ぶ廃ビルの中で、唯一電気の通っていたその部屋を、男は根城にしていた。
        彼の生活には電気が欠かせない。少なくとも他の手段で満たす事が出来る水道よりも重要なライフラインだった。
        それがなければ彼という人間は維持出来ないと言っても過言ではない。
        いくつかの転がる家具を跨ぎながら、部屋の奥へと進む。
        妙な子供に絡まれたせいで、余計な時間を食ってしまった。
        懐から便利屋ザック・ザリップスという名前の印刷された名刺を名刺入れごとテーブルに置き、上着を脱ぐ。
      • ――ふと。
        そこで、置いた覚えのない物がテーブルの上に乗っていることに気づく。
        それを手に取ると、手にとった瞬間を狙ったかのように、それは音を奏で始める。
        男はその置いた覚えのない端末を耳に当て、通話のボタンを押す。

      • ――初めまして。
        カイセ・ミツェーリと言います。ザック・ザリップスさんの番号で間違いないでしょうか?
        -- カイセ
      • ……誰だお前。
        いつの間にこんなもん置いていった。
        -- ザック
      • それぞれに簡単に答えるなら、ボクは先ほどイジメられた二人の少年のお目付け役みたいな感じかな。
        普段実はボクらは三人一組、スリーマンセルで動いていてね。ボクが作戦指揮、金髪のレィジーが近接戦闘、赤毛のウィレムが遠距離狙撃と、それぞれの役割を担ってるんだ。
        なのでまあ、あいつらがケチョンケチョンにやられるっていうのも無理からぬ話だなと納得してもらえると嬉しい。何せ無策で突っ込んでいったようなものだしね。
        二つ目の質問にも簡単に答えると不在時かな。
        まあボクが透明人間でもない限り在宅時にそこに置くっていうのは流石のボクでも難しい話になってくるしね。
        -- カイセ
      • 質問を一個増やしてやる。
        重度の自殺願望とかあるのか?
        -- ザック
      • 特には。殺したいと思ったことはあっても死にたいと思ったことは余り無いね。
        呆れて切られる前に目的を先に伝えておこうと思う。
        今から三人で、貴方を殺しにいく。気をつけたほうがいいよ。
        何回も言うようだけど、ボクらはそれぞれ一人でもまあそこそこにはやれるけど、三人が同じ方向を向いたときが一番強いとボクは思ってるから。
        真正面から不意打ちで、正々堂々騙し打つから、そのつもりで。
        -- カイセ

      • ミシリ、と。
        端末が音を立ててヒビ割れる。
        つながったままの通話で、男はその声の主に問う。

      • お前、オレを舐めてるのか?
        -- ザック
      • 舐めてるよ。正直。
        お前じゃ、ボクには勝てない。ボクは今のこの条件下で、お前に勝てないと思わないから。


        ――偽名を使うような臆病な殺人鬼に、ボクが後れを取るとでも?
        -- カイセ

      • 無言。
        電話越しの相手が薄く嗤ったのが、見えるようだった。

      • ……反論もなしか。本当に面白くもなんともない男だな。
        ただ偶然強かっただけ、ただ偶然腕力に恵まれていただけ、ただ偶然レィジーやウィレム単体では勝てなかっただけ。
        本当に、全然全く面白くないよ。今回ばっかりはボクが脚本家で良かったな。
        その部屋の中に撒き散らされた死体。ああ、お前にとっては家具のつもりなのかもな、その作品の為にジャック・ザ・リッパーを騙ってるだけの変質者を、ボクが怖がるとでも?
        さっきも作りかけの家具を跨いでたみたいだけど、本当に愛着のある作品なら地面になんて置かずに机の上にでも置けばいいのに。そんなところに置くから、勘のいい誰かが気づくのさ。
        -- カイセ

      • ウィレムやレィジーから聞いたよ。条件としてはそれで充分だった。
        色々ダメ出ししてみてもいいかな、ついでだし。整合性が取れていないのは気持ちが悪いんだよ。
        初代ジャック・ザ・リッパーについて少しでも調べてみたかい?
        ボクが、お前の正体がジャック・ザ・リッパーかもしれないって情報をウィレムに教えて貰ってから今までの間でも調べられたことを、何で調べないんだ?
        なあ、ザック・ザリップスのつもりなんだろう、お前は。
        だったら、彼が光を反射しない烏色の髪の毛をしていることも知ってるだろう。昼下がりの太陽の光を反射するなんておかしいんだよ。染めた黒髪と生まれながらの黒髪の違いだな。
        それにな、ザック・ザリップスが元所員のシズとの戦闘で失った四指は左手の物なんだよ。何でお前は右手が義手なんだ?
        調べれば調べるほど破綻が見えてくるのは、お前が長い間根城をそこにするつもりがないからで、いざとなればトンズラしようとしてる何よりの証拠だ。
        ザックの名前を借りれば罪はその男に擦り付けられるし、そのネームバリューがあれば民間でお前を捕まえようとする者への牽制になる。
        ここから貧民街も近いから、お前の作品の素材、言うなれば餌も豊富にある。
        最初から逃げることを前提にしか考えていない、ただ強いだけのお前に、ボクらが負けるとでも?
        舐められないとでも思ったか。だったらそれは、間違った視点だよ。ザック・ザリップスですらない、何か。

      • ――言うが早いか、死の悲鳴が長く聞こえ、咄嗟に後ろに跳んだが逃げ遅れた手の中の端末が空中で弾け飛ぶ。
        違う、最初から精密な射撃で、手の中の端末だけを狙った一撃だった。
        狙撃手というだけはある、だが今ので弾道は読めた。
        そして潜伏位置も把握出来た。持久戦に持ち込むのならばそれもいい、いくら頭がキレるとはいえ、子供と大人では体力にも差がある。
        男はミシリと盛り上がる筋肉を抑えるように腕を鳴らし、大きく息を吐いた。
      • 相手もそのつもりはないだろう。何らかの策を以ってくるつもりだということは理解できる。
        その気になれば狙撃で一撃で終わらせる事もできたはずなのに、そうしなかったことには理由があるはずだ。
        例えば、端末に気を取られている状態でなければ標的に当てる事が出来ない程度には、狙撃手は傷めつけられていること。
        先ほどの交錯で指に対して行った蹴りはそれなりの手応えがあった。今の狙撃もヘッドショットを狙ったのだとしたら、狙撃手のダメージは大きい。
        今の一撃は最悪食らっていても即死の攻撃ではなかった。その精度では、金髪の少年が近接戦闘を仕掛けた合間には、自分だけを狙う事は出来ない。
        ましてそれが、足をへし折られている少年であるならば、味方への誤射を恐れて引き金など引けまい。
        少しずつ、状況が自分に有利な材料だらけであることに内心笑み、腕を鳴らす。遮蔽物で身を隠し、狙撃を避けている今、採ってくる策など、一つしかない。

      • ――暗闇が生まれた。
        電灯のスイッチを誰かが触り、暗闇に乗じて影が踊り出る。
        読めている。男は姿勢を低くしてその小さな影が繰り出してきた攻撃を避け、カウンターを放つ。
        狙うは軸足。片足を折っているなら、そちらの足で跳ぶ事は出来ないし、その足で防御など出来ないだろう。
        だが、その小さな影は、僅かな動作で浮き、手に持ったナイフで正確に頸動脈を狙ってくる。

      • ……ッ、てめえ……ッ!!
        -- ザック
      • ―――ッ。 -- ウィレム

      • 浅く、ナイフが侵入してくる感触があった。首筋の血管を皮一枚剥ぎ取るその一撃に、首元から血が溢れる。
        片手でそれを押さえ、トドメを刺そうとしてくる赤毛に向かって力まかせに蹴りを見舞うと、それを見越していたかのように赤毛の少年は後ろへ跳ぶ。
        ――男の肩口に衝撃が走った。
        馬鹿な。狙撃手はここにいる。誰が狙撃をしているんだ。
        痛みで吠えながら地面に落ちた作品を力任せにウィレムに向かって投げ、廃ビルの一室が揺れる。ウィレムは怯まず、ナイフを構えて飛びかかる。

      • ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

      • ……だからさ。
        舐めるのはこっちだって、言っただろう?
        充分、忠告したつもりだったんだけどな。
        -- カイセ

      • ザックとウィレムが争うビルより彼方、狙撃銃に次弾を装填しながら、カイセは鼻歌混じりに独り言を呟いた。
        スコープ越しに見る世界は、普段見ている世界より狭く、中々に興味深い。

      • 確かにさ。ウィレムはうちの優秀な優秀な、ボクの愛する狙撃手だよ。
        でも、狙撃手が一人いるからって、他の人間が狙撃出来ないと思うのは、かなり浅はかだと言う他ない。
        それに、狙撃手が近接戦闘を出来ないと思うのもそうだし、近接戦闘が出来る奴が指揮を出来ないと思うのもそうだよね。
        ボクが作戦指揮、近接戦闘、遠距離狙撃っていうのを強調したからって、その通り、セオリー通りに行くわけないだろう。
        そういうのを、奇策って言うんだよ、もう機会はないかもしれないけど、覚えておくといい。
        -- カイセ

      • カイセはスコープ越しに二人の戦闘を眺め、小さく呟く。
        耳にしている小型のレシーバーからは、レィジーからの詳しい状況と射撃指示が送られてきている。
        全く、何をやらせてもそこそこにこなす所が、あいつの忌々しいところだ。本気で愛しているし、本気で死ねばいいと思う。カイセは笑顔のまま内心で毒づく。

      • ボクらみたいな人間はね、他人を必要とするときは、その他人がいるとプラスになるときだけなんだ。
        ボクらみたいな生き方をする者が、他者がいなければ存在も出来ないとでも思ったのかなぁ。
        そう思われてたら、心外だ。ボクは、他人と同じ時間と同じ楽しみを共有するために、他人を愛しているだけで、その誰かがいなければ存在できないなんて、一言も言っていないのにな。
        お前みたいな、他者を食い物にして自分のやりたい事だけを家具だのなんだの言って創りあげようとする人間には、一生理解出来ないだろうけどね。
        ……ボクは、そういう意味では、他の二人を信頼しているんだよ。他に信頼していることなんて、もう一つしかないけどね。
        -- カイセ

      • その笑顔は、どんな言葉を口にしても崩れることはない。
        ただ、冷酷に、冷徹に世界を見極め、策と柵の中に納めようとする、変質的な彼の、彼女の妄執だけがそこにあった。

        ――その時、どこか別のビルの上から指示を出しているレィジーが「マズイマズイ」と騒ぎ立てる声がレシーバーから聞こえてくる。
        策士が慌てた声を出すなよ、と思いながら、スコープでウィレムたちの姿を見る。

      • ……まあ、そうだな。
        奇策っていうのは、奇襲には向いてて、意表は突けるけど、地力で負けてると中々思い通りには行かないものだからな。
        -- カイセ

      • ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

      • ウィレムという少年が行うCQBは、訓練を重ねた大人と比肩して遜色ない練達の技術と認めて良かった。
        だが、そこ止まりだ。如何にプロの技術を持っていようが、膂力と体力で負けていては、話にならない。
        基礎的な能力では先に手を合わせたレィジーの方がまだ手こずらせてくれた。
        あちこちから出血はしているものの、男はウィレムが息を荒らげているのを見て、潮時を見極めていた。
        狙撃は遮蔽物を以ってすればどうとでもなるし、ウィレムの近接はそれを専門にする者よりも劣る。
        意表は築かれたが、それだけだ。
        そもそもが、意表を突く作戦で来たのならば、最初の狙撃でトドメを刺すべきだった。
        だが、今の狙撃手にはその技術がない。
        先ほど肩口に食らった狙撃も、本当ならばヘッドショットを狙ったそれであったのだと断言できる。

      • ……無能な指揮官の下、色々させられるのはご苦労だな。
        -- ザック
      • ……それは、同意する。 -- ウィレム
      • 『おい』 -- カイセ
      • 成る程な……その耳のやつで通信取り合ってるのか。
        どこかで眼の役割をした策士が状況を伝えているから、正確な狙撃ができる、か。中々いいチームだな。
        残念ながら、練度が全然足りない上、負傷者二名を抱えた状態で、オレを殺すことは出来なそうだが。
        -- ザック
      • 『そう言ってくれるなよ、信頼に値する、愛するボクの仲間なんだ』 -- カイセ
      • 勝手に外と会話出来る音量に切り替えるなよ。耳が痛い。 -- ウィレム
      • 万全の時なら、どうなってたか分かんないが、悪いな、お互いの人生が掛かってるんだ。
        そろそろ潮時だと思うことにする。挑発すれば正面から向かってくると思ったなら悪いな。
        ――大人は、有利な状況でも、平気で逃げるんだよ。
        -- ザック

      • 言いながら。
        男は、ウィレム達を追いかけていたときと同じように、廃ビルの壁を蹴破った
        戦いの中、蹴破れる大きさの壁が背中になるように、誘導していたことには気付かなかったらしい。
        土煙をまき散らしながら、男は壁の向こうへと跳ぶ。

      • カイセは、狙撃のスコープを覗いたまま、言う。

      • 『まあ、どれだけ愛していようが、二点だけだけれどね、信頼出来る事は』
        『一人で大抵、何でも出来る事と』
        『絶対に、思い通りに動かす事は出来ない事、だよ。
        思い通りに動かないことすら、策に含めれば良い話だけどな』
        -- カイセ

      • ウィレムは、ナイフを仕舞い、フードを取りながら、言う。

      • 与えられた役割を、全うするだけだ。
        それが、面白いことが前提だがな。
        俺も。――あいつも。
        -- ウィレム

      • レィジーが。
        壁をぶち破ってくることを見越して、カイセの指示を裏切って、作戦指揮の役割を放棄し
        ただ、そうした方が面白そうだという単純な理由だけで、屋上に待ち構えていたレィジーが。

        屋上から、折れた方の足を突き出して、男の延髄に向けて飛び降りながら――言う。

      • ヒルベルト流暗殺術ッッッ!!
        ロケットパーーーーンチィッ!!!
        -- レィジー

      • 狙い通り。
        延髄は踏み抜かれ、加速度を一箇所に受けた男は脛骨を粉砕され、一瞬で絶命し。
        壁が崩れる土煙の中に、それはそれはいい笑顔のしろスーツの少年と共に、消えていった。
        地面に大きな肉が叩きつけられる嫌な音が響いたが、ウィレムは聞こえない振りをした。

      • 『……やっぱり、つまらないよなぁ。2点。』
        -- カイセ
      • 採点が甘い。1点だ。 -- ウィレム
      • 『前回より1点増えてるけど、評価できる点って何よ』 -- カイセ
      • 簡単だ。……必殺技は、技名を叫ぶ。
        常識だろ。
        -- ウィレム
      • 『納得した』 -- カイセ
      • ……スネイルさんになんて言い訳しよう。
        まさに1Gにもならない仕事だった。……レィジーが死んでるかどうかで賭けるか。
        死んでるに1G。
        -- ウィレム
      • 『適当に言い訳しとくよ。
        じゃあこっちは、死んで欲しいに1G』
        -- カイセ

      • 軽口を叩きながら、階段を降りていく。
        どんなに願っても、どんなに期待しても、いざというときだけは期待を裏切る少年は、きっと生きているだろうといううんざりした気持ちを抱えて。

      • 【つづく】
  • 【KNOCKIN' ON HEAVEN'S DOOR 5】
    • ウィレムとヌマルの酒宴は二時間ほど続いた。後半はエールを回していただけで、少なくともウィレムは酔いを感じることもなく、解散となった。
      戦術論、組織論、酒の席に載せるには余りにも重い話題の半分以上を地面に吐き捨てながら交わした酒は、それなりに面白かったと言える。

      酒場からの帰路の途中、背後から一定間隔を保って追ってくる誰かの存在に気づく。
      その相手は自らの存在を特に隠すことなく、尾行していることが相手にバレていることを知りながら跡を着いてくる。
      ヌマルの刺客、長崎剣友会の者かと訝しんだが、ここに於いてヌマルがそんな刺客を自分に差し向ける理由が思い当たらない。
      しばらく泳がせるように路地裏をいくつか右折左折と繰り返したが、やはりその気配は着いてくる。
      厄介な事になりそうだと、フードを被りながらウィレムは小さく嘆息した。
      • ウィレムが腕を振ると、袖の内側に縫い付けられた小型の銃が二丁手の中に収まる。
        互いの距離は10mもない。基本的に銃という武器は先手必勝の武器だ。
        対処を取られる前に一瞬で決めるか、距離の制圧力で相手の武力を抑えこまなければ逆にそのレンジが不利となる。
        祈るように心臓に一発、眉間に一発、確実な死を以って追跡に応えようと振り返ったところで、誰かが振り回す脚が思わず屈んだ頭の上を通過して、流石の少年も焦りを感じた。
        背後から蹴りを加えてきた少年もまた、自分の攻撃した相手が「顔見知り」だったことに驚いた様子で蹈鞴を踏み、顔面から地面に倒れこんでひっくり返る。

      • 何ッでっ、ウィレムだよっ!
        -- レィジー
      • こっちのセリフ以外の何物でもないだろ。 -- ウィレム
      • 違っ、聞け、お前着けられ――。 -- レィジー

      • 何事かを弁明しようと両手を広げたところで、その言葉が途切れる。
        同時に、地面が破砕する破壊音が響き、ウィレムの視界に大きな影が入り込んでくる。上から下まで黒尽くめの男が、あろうことか斜め上からレィジーの背中に着地したことが理解できた。
        背骨ごと地面を踏み抜かれ、馬車に潰された蟇のようになったレィジーの姿は無視して、ウィレムはその黒い影を見る。

      • ――ああ。
        相変わらず物騒だな。ここ。
        流石に、いきなり蹴り入れてくる餓鬼がいるとは思わなかった。
        -- ???

      • 黒い影がフードを取る。昼下がりの太陽の光を反射して、汚らしく纏められた長髪が零れる。
        無精髭も汚らしく、ウィレムが良く見ればその黒い影は何の変哲もないガタイのいいおっさんで、眠たげな目をこちらに向けてきていた。
        ウィレムは眉根を寄せて、その男を睨みつけていると、黒尽くめの男はそれに気づいたように口元だけで嗤った。

      • 悪いな。囮に丁度良かったから、利用させてもらった。
        ずっとこの金髪がオレの後着けて来てな。どうにかしてやろうと思ったんだが、まあ助かった。
        この街じゃ礼を言う方が足元を掬われるってのは良く知ってるが、一応礼を言っとく。
        -- ???
      • 15:20:23。 -- ウィレム

      • 男の言葉に返事をせず、ウィレムは唐突にそんな言葉を口にした。
        はぁ? と問い返す男の足の下で、潰れた蟇のような声が笑声と共にその言葉に応える。

      • 15:22:44。
        -- レィジー

      • ――瞬間。いくつかの交錯があった。
        躊躇わず撃ち出したウィレムのデリンジャーは黒尽くめの男の眉間と心臓に向かって放たれた。
        まるでそれを分かっていたかのように両腕でその弾を受け止めると鮮血の尾を引きながらウィレムに向かって男は身体を倒した。
        それに合わせて足の下にいたレィジーが吠え、大声で叫びながら両手で軸足を払った。
        体勢を崩した男はレィジーの顔面を踏みつけようとしたが、驚異的なバネで起き上がったレィジーは一気に男の顔の位置まで飛び上がって、顔面を蹴りつけようと足を振り回す。
        全く同じタイミングでウィレムがデリンジャーを捨てて脇差しのハンドガンに手を伸ばしたところで、何かが物凄い速度で飛んでくるのを、今度はかわしきれずに正面から受け止めてしまい、もんどり打って倒れる。
        自分の身体の上に覆いかぶさってくるそれが、蹴り足を掴まれて投げられたレィジーという名前の役立たずであったので、
        拳銃を向ける先をそいつの頭にしてやろうかと思ったが耐えて、正面に向ける。
        男はいない。声は上から響いてきた。

      • ああ。成る程な。
        尾行に気づいた時間と、尾行を始めた時間か。
        オレが金髪の尾行を巻くために赤毛を尾行してたんなら、その時間が前後するのはそりゃ不味いわな。
        ……咄嗟に思いついた嘘にしては上出来だったと思ったんだが、何なんだお前ら? ただの餓鬼じゃないのか?
        いきなり撃ってきやがって。この義手、どんだけ金掛かってると思ってるんだ。
        -- ???

      • 路地裏に、カラン、カランとデリンジャーの弾が落ちてくる。片方は血に塗れ、片方はへしゃげている。
        貫通力の少ない弾丸とはいえ、正面から食らって平然としている男の正体が掴めない。
        ウィレムは周囲を伺いながらレィジーの身体を押しのけ、純粋に苛立ちで一発鳩尾につま先を叩き込んでから再び周囲を見回す。

      • 目的は何だ。俺に何か用か。
        -- ウィレム
      • 別にお前みたいな餓鬼に用事もクソもないんだよ。オレは単に道とかこの街とか、今どうなってんのか聞こうとしただけだ。
        そしたら等間隔開けて足早に逃げやがるからなんか面白くなって追いかけてたらいつの間にか金髪が尾行してきやがって。
        ムカついたから蹴り加えて去ろうと思ったらお前が銃ぶっ放してきたんだろうが、なんか腹立ってきたぞ、この野郎が。
        -- ???
      • どっちがガキだよ。もう少し感情のコントロール出来るようになってから大人名乗れよ、バーカ!!死ね!! -- レィジー

      • いつの間にか復活していたレィジーが隣で叫ぶので、ウィレムは片耳を塞ぐ。

      • アァ!? ガキにガキとか言われたくないんだが、何様だこのクソ白スーツ坊主が!!似合ってねえんだよハゲ!!
        いきなり顔面蹴りつけてこようとするのは大人とか子供以前に人間のクズだろうが!!
        言っとくけどな――オレは争い事が、大嫌いなんだよ!!
        -- ???
      • いきなり他人の背中踏みつけといて争い事が嫌いとか訳わかんねーこと言ってんじゃねーぞ!! 『減塩しお』くらい意味わかんねーわ!!
        いってえ背骨折れるかと思っただろ、ていうか二、三本折れたわ背骨!! 弁償しろよ!!
        -- レィジー
      • 誰がするかよ!! ちなみにいくらだ!! -- ???
      • 額に拠るのかよ。 -- ウィレム
      • 50Gは貰わないと気が済まない!! だって二、三本折れたんだぞ! -- レィジー
      • 本で数えるなら人間の背骨は誰もが一本だが。 -- ウィレム
      • ねえよ!! そんな金!! -- ???
      • 額に拠ったよ。 -- ウィレム

      • 呆れて言葉をこぼしながら、ウィレムはハンドガンを構え直す。
        恐らく、男はどこかの廃ビルの中に潜んで、こちらの動向を伺っているのだろう。
        さっきのレィジーに浴びせた急降下もどこかの窓から飛び降りることで実現した物だと踏んだ。
        一瞬でそこまで飛び上がる脚力は超人のそれと言ってもいいが、その程度ならコツを掴んだレィジーでも可能だ。
        レィジーでも可能だということは、自分の銃でも充分に殺す事が出来るということだ。

      • しかし、まあ。
        ――借りは返すのが主義だからな。
        -- ???

      • その言葉を引き金にして、周囲に掘削音のような物が響く。
        音の出処を探り、振り返った時に気づく。男はビルのどこかに逃げ込んだわけではなかった。
        男は、その脅威的な脚力で壁に穴を開けながら壁を走っていた。重力の加速も手伝って、破壊と言っていい程の速度でビルの側面を荒らしながら、ウィレムへと向かってくる。
        咄嗟に銃を上げようとしたのが不味かった。
        掲げた腕お思い切り蹴られ、それに引っ張られるようにして身体が回転し、肩が嫌な音を立てて外れる。
        反対の腕で懐から銃を取り出そうとしたところで、顔面を何か温かい物が覆い、地面に叩きつけられた。
        顔を掴まれ、地面に叩きつけられたと気づいた時には、既に視界を横切るようにしてレィジーが躍りかかっていくところで、舌打ちをしながら距離を取る。
        男は、岩をも砕くレィジーのコツを飲み込んだ打撃を、鼻歌混じりに捌いている。
        その異常な光景に、脳裏に閃く物があった。
      • 酒の勢いで、ヌマルが口にした言葉があった。
        何でも、この街ではジャック・ザ・リッパーという殺人鬼が今も生息していて、人を殺して回っているのだという。
        その正体は未だ流言飛語飛び交っているがこれといった確証なく、ヌマル組織会長の古い友人も疑われたことがあるのだと。
        そして、そのジャック・ザ・リッパーが、最近また活動を活発にしてきていると。

        他者を尾行し、人気のないところに誘い出し、有無を言わせぬ力で狩り取る。
        久しぶりに戻ってきたという、黒尽くめの男の言葉から推測して、その男の正体は。
        ウィレムは銃を向け、その男に向かって銃弾より先に言葉を放つ。

      • お前は。
        ――昔この街にいた、ジャック・ザ・リッパーか。
        -- ウィレム

      • ――その言葉に。
        男の動きが止まり、動きが止まったから、レィジーの放った蹴りが顔面に突き刺さった。
        男はゆっくりとその足を掴み、ウィレムにその目を向けた。

      • ……ア?
        -- ???

      • ――野生の獣が。獲物を標的と見定めた時のような、そんな眼だった。
        思わず銃を構え、先ほど蹴られた指の痛みに一瞬だけ気を取られた瞬間、男は一歩で間合いを詰めてきた。
        引き金から指を離して回避行動を取る。男は、レィジーの足を掴んだままその身体を叩きつける事で攻撃をしてくる。
        レィジーの体重などものともしない膂力で、少年の身体は大型の槌のように振り回される。
        地面に二度三度叩きつけられるそれをギリギリでかわすと、そこで漸く拘束から逃れたようでレィジーが顎を蹴りつけてウィレムの方へと跳ぶ。
        男は蹴られた顎を押さえながら、ゆらりと身体を揺らした。

      • お前。
        今なんつったよ。そっちの赤毛。
        ……オレが、何だって? -- ???

      • 事情は分からない。
        ただそれが、相手の逆鱗だということは理解できたし、自分がそれに触れてしまったことも理解できた。
        指先の痛みに意識を向けなければ飲んだ酒すら吐き戻してしまいそうな圧迫感に、喉が大きく鳴った。
        血だらけのレィジーが額を拭いながら、同じ心境でその男を見ている。
        男は大きく息を吸うと、小さく嗤って、義手であるのだろう、銀色をした右手の指の隙間からこちらを見、呟いた。

      • オレをジャック・ザ・リッパーと呼んだか……?
        ――正解だよ。糞ガキども。
        -- ザック

      • ――弾かれるように、ウィレムは後方へと跳ぶ。同時に跳躍したレィジーが彼の腕を掴み、ビルの壁を登る。
        策などではない。ただ単純に、その圧力に押し出されるように『逃げる』ことを選択した。
        そうするべきだと本能が訴えかけて来るのを、無視し続ける事が出来なかった。
        少なくとも、俺達以上に修羅場を潜って来ているであろうあの男、ジャック・ザ・リッパーを相手にして、満身創痍の二人では分が悪い。
        元より、スネイルからは1Gにもならない揉め事は起こすなと言われていたが、そんなレベルの話ではなかった。
        ただ単純に、真正面からやりあった時にただじゃ済まないことが理解出来たからこそ、何の合図もなしに二人共逃走を選択できただけの話だ。
        窓からビルの2Fに逃げ込み、窓から窓へと飛び移るようにして逃げるが、足元を揺るがすような破壊音が追いかけてくる。

      • おいマジで洒落にならん、あいつ直線で向かって来てやがる。
        壁を蹴り飛ばして破壊しながらまっすぐここに来ようとしてるぞ!? 馬鹿も極まるとすげぇな!?
        -- レィジー
      • お前も大概だと思うがっ……規格外だ、あいつは異常過ぎる……っ!
        あんなのと戦りあうくらいなら地雷原でタップダンス踊ったほうがマシだ……っ。
        -- ウィレム
      • 裏掻くぞ、一か八かだ。進行方向を誤魔化すっ!
        一二の三であいつが来る方向に向かって走り抜けるぞ、ウィレム!! カウント頼む!!
        -- レィジー
      • お前にしては気が利いてるな、いくぞっ、一、ニの、三ッ……! -- ウィレム

      • ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


      • 破壊音。
        2Fと1Fの間にあった床が天井にまで吹き飛び、粉々に砕ける。
        2Fの床に空いた穴から身体を覗かせ、腕の力だけで登ると、そこには誰もいない。
        男は顎鬚を撫でると、感心したようにほう、と呟いた。

      • ……ダミーの掛け声か。
        足音が聞こえるくらい反射音の凄い路地裏でやたら大きく叫ぶと思えば……中々咄嗟の判断にしちゃあ面白いな。
        逃げ足だけは一人前以上だ、一度ブラフに騙されてから追いかけることは不可能だろうな。
        ……久しぶりだな、この獲物を逃す感触。まあ、人生そんなもんかもしれないけどな。
        -- ザック

      • ガラガラと落ちてくる瓦礫の破片を手で払い、服についた砂を軽く払うと、男は大きくあくびを零した。
        肩を回し、ゴキゴキと骨を鳴らしてから大きく伸びをする。数日、ここを根城にしているがやはりそれほど寝心地は良くない。
        それでも、男にはここを拠点としなくてはならない理由があった。
        廃ビルの立ち並ぶそこは、貧民街にも近く、何かと食事に不便をしないのだ。
        やむを得ないとはいえ、余り表に顔を晒すことが出来ない自分は、そうやって生きていくしかない。
        たまに迷い込んださっきの子供のような相手を誂うのが唯一の楽しみといえば楽しみだ。
        男はその行為が、子猫が毛玉にじゃれつくような物であると理解しているし、結果、毛玉が使い物にならなくなることも知っていた。
        それでも、自分の性質を理解してさえいれば、その性質と上手く折り合いをつけて生きていくことは出来ると思っている。
        男はどこか上機嫌に廃ビルの中を歩いて行き、次の遊び相手が迷いこんでくるのを待った。

      • ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


      • ――上の階から音もなくレィジーが降りてくるのを見て、ウィレムは静かに息を吐いた。男の追撃に備え、ひと通り使えそうな武装を改め終えている。
        金髪の少年は首を振り、今のところ追走はしてきていないことを示すが、表情は苦々しい物になっている。
        少しばかり体重の移動がおかしいのがウィレムにも見て取れた。掴まれ、振り回された右足を捻っているか、もしくは最悪骨が折れている。
        なるべく負担がかからないような歩法で歩いているが、すぐに実戦となると流石のレィジーでも難しいだろうと冷静に読む。
        それは、レィジー自身も思っていることであるのか、どんな敗北の後でもいつもならリベンジと息巻くはずの少年の表情は硬い。
      • 白スーツの少年は迷彩服の少年の隣に座る。対照的な二人は片方が天井を見上げ、片方は床を眺めている。
        語るべきことはいくらでもあるはずなのに、言葉が出てこない。上手く感情を表現する言葉が見つからないのか、不自然な沈黙が横たわる。
        空気に耐えかね、レィジーが口を開く。

      • ……指は。
        -- レィジー
      • 中で折れてるだろうな。
        安心しろ、射撃は中指や反対の手でも出来る。
        -- ウィレム
      • ウィレムが後ろにいる、っていう前提を崩さない程度に100発100中に、か?
        こんなところで意地張り合ってもしかたないし、言うけど、オレ足首折れてる。
        無理やり歩いてるけど近接戦闘無理だぞ。次アレに遭遇したらどうなるかわかんね。
        -- レィジー
      • ……撤退するか。久々に負けたな。 -- ウィレム
      • だな。それが無難だ。何の得にもならない、面白みもないことやる必要なんかないしな。 -- レィジー

      • 再び沈黙が横たわる。
        レィジーがため息を吐き、ウィレムに問う。

      • あれが何か、知ってるのか?
        ジャック・ザ・リッパーとか言ってたけど、例の噂になってる?
        -- レィジー
      • その噂、元をたどれば一人の男が発端らしい。恩師を殺して、他にも何人か殺したとかなんとか。
        馬鹿みたいな腕力持ちで、最悪なことに俺たちが来る前の便利屋事務所の所員だったってな。
        酒の席で丁度ヌマル組長が言ってた。
        -- ウィレム
      • 組長って呼んだら餃子巻きにするぞって言われてるだろ。……前所員か、なんでスネイルさん言ってくれなかったんだろ。
        あー……なんなんだあいつ、コツ掴んでから近接戦闘で負けたのって初めてだぞ。
        -- レィジー
      • 相当な修羅場潜って来てるんだろう。銃弾を素手で掴むやつ初めて見た。義手とか言ってたな。
        良く分からないが、あれが噂通りのジャック・ザ・リッパーなんだったら、俺はもしかしたらその標的に選ばれたのかもしれないな。
        始末着けておくべきかもしれないが、公権力に任せよう。
        -- ウィレム

      • 言いながら端末を取り出し、自警団の番号を押す。
        ついでに二重賞金を掛けてもいいかもしれないと思いながら、コールを待つ。
        と、その後ろから、コール音を邪魔するようにレィジーが独り言を投げてくる。

      • ……きっとあいつ、自分が絶対に勝てると思ってるんだろうな。
        噂通りなら殺人鬼だし、しかもあの強さだからな。
        絶対に死ぬことはないと思ってるし、もしかしたら負けるとも思ってないんだろうなぁ。
        -- レィジー
      • ………。 -- ウィレム
      • 今が一番楽しくてさ、自分の好きなことやって生きてる実感があってさ、毎日充実してるんだろうな。
        それが、他人の迷惑の上に成り立ってるとか全然考えてもないんだ。
        生皮剥ぐ楽しさとか、骨から肉をそぎ落とす楽しさとか、悲鳴とか断末魔を聞く楽しさとか、そういう物しか頭になくて。
        加害者って気持ちいいもんな。ド級のマゾでもない限り、殴られるより殴るほうが楽しいに決まってるし。
        ああー、そんな奴の命乞い、聞きたいなぁー……。
        -- レィジー
      • ………。 -- ウィレム
      • 今この瞬間、絶対にオレたちには殺されないって思ってるだろうから、そんな相手から殺されかけたとき、あいつどんな顔するんだろうなー。
        言ってやりたいなぁ……お前に対して命乞いをしてきた被害者の声に、お前は一回でも耳を傾けたか?って。
        言ってやって、悔しがらせて、少しだけ救いみたいなものをちらつかせた後、世の中がゴミだらけだっていうこと、こんなガキたちに説教された時の顔、見たいなぁ……。
        ああ、いいや。見よう。
        -- レィジー

      • 金髪の少年は足を引きずりながら立ち上がる。
        窓際に歩いて行き、振り返って赤毛の少年を見た。

      • 見たい?
        -- レィジー
      • 見たい。 -- ウィレム

      • ウィレムはパチンと端末を畳み、懐に仕舞い直す。
        ――利害の一致がそこにあった。
        何かを成す為に同じ方向を向くのではなく、同じ方向を向いていたから並んで歩く有り様が、そこにある。
        悪童に唆された悪鬼が笑みを零し、悪鬼の悦ぶ顔で歓ぶ悪童が笑みを零した。
        深い理由など要らない。
        ただ、面白いと思ったことを喰らい尽くし、蹂躙し尽くす。
        やりたいからやる、以上の理由を必要としない無邪気が深い深い笑みを滴らせた。

      • 面白そうなことになってるな。
        ――混ぜろよ。
        -- カイセ

      • 二人の背後、笑みを零す二人と同じくらい暗い笑みを顔面に張り付かせた、黒スーツの少年が窓枠に立っている。
        元より、二人の位置を完璧な俯瞰視で確認しているカイセという少年にとって、イレギュラーな場所など存在しない。
        その言葉すら、嘆願どころか確認の物ですらなく、ただ混ざりたいと思うから混ざってきただけの、自分本位のそれだ。
        金髪の少年と、赤毛の少年は、そこにカイセがいることに驚きもせず、振り返ることすらせずに、嗤いながら言う。

      • ――勝手にしろ。 -- レィジー
      • ――勝手にしろ。 -- ウィレム

      • 着いてこられるならな。

        最初から三人ともが「そのつもり」であり。
        誰に対しても「そのつもり」だった。

      • 【つづく】

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事務所ログ2 Edit

お名前:
  • 【No One Lives Forever】 -- 2013-10-09 (水) 22:47:39
    • (明かりを点ける)
      (緩慢に反応した電灯が、気だるげに仕事を始め、緩やかに室内を照らす)
      (昼間から酔っぱらいの喧騒が遠くに聞こえている。どこかの親切な輩が鎮圧したのかガラスの割れる音を最後に、人の声は消えた)
      (静かにその『便利屋事務所』という擦れてギリギリで読めない看板の掛かった部屋へと足を踏み入れる)
      (積もった埃の臭いが鼻先に漂い、家主の長期の不在を親切に知らせてくれた) -- 2013-10-09 (水) 22:52:11
      • (家主は戻らなかった。あの夜を最後に)
        (まるで闇に魅入られた者がそれを欲す余り、暗がりに足を踏み入れて戻れなくなるように、ザックという男は忽然と姿を消した)
        (事務所の更新手続きの直後に失踪したこともあって、日数の経った今でもこの事務所は法的に彼の物であるが、それも時間の問題だ)
        (――『前例』があるように、またこの土地と建物が発する腐臭に釣られて群がってくる小蝿が、やがてその身を食い尽くすだろう)
        (跡形もなく。土は土に、灰は灰に) -- 2013-10-09 (水) 22:56:32
      • (シズという男の正体は、分からず終いだった。ただ、目撃者の証言によれば、あいつはザックと共に海へと消えたらしい)
        (吟遊詩人と俺の前で謳ったあいつが何を以ってザックを道連れにしたのかは分からない)
        (それを想像するには、俺はあいつのことを何も知らなすぎたし、あいつもだから、あえてそれを知らせようとはしなかったのだろう)
        (ギリギリまで、その思惑を隠して、本当に欲しい物を奪っていくのが、あいつの仕事のやり方だったから)
        (ただ、もし、ザックがシズに『選ばれた』のだとしたら。その決断をさせたのだとしたら)
        (あいつは、それはそれで嬉しかったんじゃないかと思う)
        (あいつの背中を、長い間見てきた俺だから言える。あいつは他人と居ても、いつだって孤独だったから)
        (だからあいつは、本人に自覚はなくとも、そういう孤独を共有できる相手を、側に置きたがったのだから) -- 2013-10-09 (水) 23:03:32

      • ――嘘つきだらけだな。 -- スネイル 2013-10-09 (水) 23:04:40

      • (それは、分かっていた事だった。嘘を吐くのが上手いことが、この業界で長く生きるコツだ)
        (それは他人に吐く嘘だったり、自分に吐く嘘だったり、時には顔も知らない誰かに吐く嘘だったりする)
        (そういう嘘を作ることが上手い奴が、他人をその嘘に巻き込み、正直者が損をするんだ)
        (善良な第三者はいつだって主役に振り回されて蚊帳の外へと追い出される)
        (――今回の事件に限って言えば、俺は最初から蚊帳の外だった。たった一歩を、踏み込まなかったばっかりに)
        (ザック。シズ。ランディ。この事務所の中で、便利屋を営んでいた者たちは、もう誰一人として帰ることはない)
        (永遠に生きる者などいないし、永遠に生きれたとして、その中でデランデルの語るような物語の中のような冒険譚を、どれだけの人間が紡げるだろう)
        (糞溜めのような世界で、なんとか空気を吸うために必死で藻掻く糞虫が俺たちだ)
        (輝ける一握の人間の為の土台が俺たちだ。しかも、ご丁寧にクソッタレたその人生は最悪の終わりを迎える以外に強制終了をする手段はない) -- 2013-10-09 (水) 23:10:26

      • (――と、唐突に電話が鳴る)
        (どうやら、電話の契約も切れていなかったらしい)
        (一度破壊の跡が生々しく残すその電話は、けたたましく音を奏で始める)
        (俺は何かに導かれるようにその受話器に手を伸ばすと、耳に当てて返答をした) -- 2013-10-09 (水) 23:13:10

      • ――こちら、便利屋。 -- スネイル 2013-10-09 (水) 23:14:23

      • (何故、そう口走ったかは分からない)
        (ただ、その言葉は自然に喉から出てきて、ありえたはずの今を思い、喉の奥に苦い物が走った)
        (電話は、公共機関からだった。こちらが、家主の不在を説明する前に、その男は興奮気味に用件を伝えてきた)
        (その剣幕と、勝手に電話を取った罪悪感に後押しされ、その用件をメモに残す) -- 2013-10-09 (水) 23:16:40
      • (それは、依頼の電話だった)
        (なんでも、長崎剣友会の内紛によって治安のバランスが崩れたことで、再び裏社会の低年齢化が深刻化してきているらしい)
        (その象徴ではないが、現在俺たちのいた路地裏は三人の少年によって牛耳られているという)
        (どうにか、元路地裏の出身として少年たちの補導に当たってくれないかという依頼だった)
        (俺は、面映ゆいものを感じた。かつて、そうしてオルカに補導され、捕縛されてきた少年を、二人知っていたから)
        (俺が何かを返す前に、概要は後で端末に送るというお役所仕事な対応を以って、その電話は切れた)
        (クライアントはいつだってプレイヤーの意図なんかお構いなしに事を進めていく) -- 2013-10-09 (水) 23:20:23

      • (家主の不在を嘆く)
        (いつだって、俺はあいつの尻拭いだ)
        (あいつが居なくなった後でも、それは変わらないらしい)
        (日々が、人の死で何も変わらないのと同じように)
        (誰かが居なくなっても、この世界は廻り続けるのと同じように)
        (失った部分は補完され、足りない部分は補足される。そうして、世界はただ一歩の後退も許さないまま、前へ前へと進んでいく)
        (俺はサングラスを指で持ち上げると、大きく嘆息をした)
        (これではまるで――主役不在時の主役の役割(外伝のPC1)じゃないか)
        (嘆息に、誰も返事を返してくれなかったので、俺は一人でその書き留めた少年たちの名前を呟いた) -- 2013-10-09 (水) 23:24:57

      • ――ウィレム・サクマ。

        ――カイセ・ミツェーリ。

        ――レィジー・ヒルベルト。 -- スネイル 2013-10-09 (水) 23:31:26

      • (覚えるまでもない。きっとこいつらにとって、名前よりも何よりも、生き様こそが重要で)
        (そういうはしゃいだ子供は、鼻っ柱を一撃してやる方が、百の説法を浴びせるよりも効くだろう)
        (己を何者だと思っているかは知らないが、所詮は井の中の蛙であることを知り、大人として正しく腐らせてやらなければならない)

        (俺はサングラスを上げると、ショットガンを背負い、蛇腹剣の柄に手をやった) -- 2013-10-09 (水) 23:34:06

      • (急がねばならない。夜には、またルゥがあの屋敷で俺を待つことだろう)
        (そういえばデランデルも同席したがっていた、勝手にすればいいと俺は思う)
        (別件の依頼についてもそろそろ話を先に進めなければならないし)
        (単車の月賦の支払いの為に入金にも行かねばならない)
        (やることは山積みだ)
        (それでも、この依頼はこなさなければならない)
        (……何故かって?) -- 2013-10-09 (水) 23:37:03

      • ――仕事だからさ。 -- スネイル 2013-10-09 (水) 23:37:40

      • 【つづく】
        【――死ぬまで】 -- 2013-10-09 (水) 23:38:31
  • 【never beginning story】 -- 2013-10-09 (水) 22:55:35
    • (染みの酷い、天井が見えた)
      (見慣れた天井だ。もう何回見上げたかしれない天井だ)
      (見上げて安心する、酷く小汚い天井だ) -- 2013-10-09 (水) 23:00:08
      • (顔を包帯で覆った男が笑う。あざ笑う)
        (一通り嘲笑い、コケにしたあと、『回覧板』だけおいて帰っていく)
        (一度も振り返ることもなく。その結果を見てただ嘲笑い、帰っていく) -- 2013-10-09 (水) 23:03:41
      • (慣れたものだという様子でベッドの上で男は嘆息し、ベッドから起き上がりもせずに『回覧板』をひっつかむ)
        (そして、寝転がったまま一瞥してからゴミ箱に放り投げ、寝返りをうった)
        (もう済んだ事だ。夢は終わった)
        (否も応も関係ない。願おうが願うまいが関係ない。夢は終わった)
        (なら、それだけだ。それ以上もそれ以下もない)
        (夢の続きを望んで横になったところで、同じ夢は見れない)
        (子供でもわかる簡単な話だ) -- 2013-10-09 (水) 23:13:19
      • (大きく溜息をついてから、再びまどろみに落ちようとすると……柔らかな声がかかる)
        (声に導かれるまま、首だけをそちらに向ければ……そこに居たのは銀髪の少年だった)
        (限りなく白に近い、銀色の少年がそこにいた)
        (彼は問い掛けてる。どうしてあんなことをしたのかと) -- 2013-10-09 (水) 23:18:13
      • 仕事だからですよ -- 2013-10-09 (水) 23:22:48
      • (そうそっけなくいえば、少年はそっと首に手をかけて、きつく首を絞める)
        (そして、笑顔のまま、優しくまた言葉をかける)
        (嘘を吐かないでと) -- 2013-10-09 (水) 23:23:45
      • (皮膚に食い込むほど、爪跡がはっきりわかるほどきつく首を絞められても、男は咳き込みもしない)
        (慣れてしまっているからだ)
        (やがてゆっくりと拘束がとかれ、発言の自由を与えられた男は漸うゆっくりと喋り始める) -- 2013-10-09 (水) 23:26:48
      • 本当に、仕事だったからですよ
        それが僕の仕事だったからです
        今回は仕事が特に多かったんですよ
        まず、テロリストであるランディ・レッドフォードの監視
        彼はこの辺じゃあ名前が通ってませんが、故郷だと中々有名な人でしてね
        ただの凡人だの普通の人間だのいっておきながら、大したカリスマを持った男でしたよ
        国一つ1人で傾かせる程のね
        そんなのがこの辺に乗り込んできて裏世界を纏め上げでもしたらどうなるか……そう懸念した人は多かったわけですよ。外にも中にもね
        おかげで、荒稼ぎさせてもらいました -- 2013-10-09 (水) 23:34:11
      • 次に、裏社会の掃除
        ここ最近、少しばかり長崎剣友会の力が大きく成り過ぎていましたからね
        彼等は暴力装置であればいい。それ以上をする必要はない。本心ではきっと彼等もそう望んでいる
        だからこそ彼等の上層部が我々委員会に組織の規模縮小を依頼してきた
        彼等の内面は我々が想像している以上にシンプルだ
        彼等はヤクザであってヤクザではない
        金も、面子も、任侠も……本心では求めて居ない
        全て、争う為の建前でしかない
        刃を振るい、銃弾を捻じ込み、臓腑を喰らい、そして最後に……己ですら肝を吐いて死ぬ
        今の混沌こそが彼等が求めた構造であり、腐り落ちない為の本当の自浄作用なんでしょう
        獣を支える為の力は、暴力だけで十二分……いいや、暴力だけであるべきだ。それが獣というものです -- 2013-10-09 (水) 23:45:42
      • 結構苦労したんですよ?
        デュラハンの首送りつけてみたり腐った幹部連中を炊き付けてみたり、ピュアテイルに媚を売ったり……
        育英会の方には流石に顔をだせないんで、ランディを通して間接的にコンタクトを取ったりと色々しました
        まぁ、おかげで仕上がりは上々といったところですけどね -- 2013-10-09 (水) 23:50:19
      • そして最後に自分の存在の抹消
        そういう工作員がいたという記録を根こそぎ抹消すること
        生きた事すら、死んだ事すら、その全てを曖昧にしてあやふやにして無かった事にすること
        まるで『瞬く』かの如く、消え去る事
        どんな記録からも消える事。記憶した人間すら『瞬く』間に忘れる人間像を作る事
        まぁ、最後のこれはいつも通りの仕事ですけどね -- 2013-10-09 (水) 23:55:02
      • (聞き終わり、銀髪の少年は悲しそうに慰めの言葉を呟く)
        (そしてそっと頭を撫でて、男の満足する言葉を送ってくれる)
        (いつも通りだ) -- 2013-10-09 (水) 23:57:03
      • ははは、ありがとうございます
        でも、大丈夫ですよ。いつもの事ですから

        いつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつも(いつもって言葉の意味忘れちゃうくらい)……そう、いつもの事ですから

        何も問題はありません。何もありません。そう、なぁんにも
        (乾いた笑顔を貼り付けて、男は目を閉じる) -- 2013-10-10 (木) 00:06:05
      • (銀髪の少年は、満足したように、それでもどこか悲しそうにその言葉を聞く)
        (聞きながら、静かに問い返す)
        (あのザックという青年はどうだったのかと)
        (猛獣のようでいながら……その実、猫ようなきまぐれさとそっけなさを持った彼はなんだったのかと。興味深そうに) -- 2013-10-10 (木) 00:09:02
      • (その質問に対して、男は……黒髪の男は、うんざりと言った様子で……それでも、口元を吊り上げたまま、目を閉じて呟く)

        アイツは……仕事とは関係ありませんよ

        たまたま、お互いのやりたい事と、お互いの敵意がかち合ったから斬り合った
        そういう義務があったわけじゃない
        それによるメリットがあったわけでもない
        ただ、そうしたいからそうした。それだけです
        僕はアイツを殺したかった
        アイツも僕を殺したかった
        叩き潰して磨り潰して泥沼の奥底まで(シズ)めてやりたかった
        そうするべきだと、思いました

        だから、そうしたんです -- 2013-10-10 (木) 00:22:04
      • (少し冷たい声で、それでも面白そうに少年は呟く。理由になっていないと) -- 2013-10-10 (木) 00:23:41
      • そうかもしれませんね
        でも、アイツとばっかりは、まぁそういう理由なんですよ
        殺しても殺し足りない
        殴っても殴り足りない
        裏切っても裏切り足りない
        アイツが猫を装って韜晦を続けているように見えて、気に入らなかったのかもしれません
        本当に猫だったのか、それとも虎だったのか、今となっては分からず仕舞いですがね -- 2013-10-10 (木) 00:28:12
      • (珍しく熱の篭る男を前にして、近親憎悪って奴なのかな、と面白そうに少年は聞き返す)
        (面白そうに) -- 2013-10-10 (木) 00:31:41
      • いえ、それだけは絶対ないです
        (きっぱりという)
        そう思いたいですが……まぁ、否定したくなるということは、どこかそうなのかもしれないですね -- 2013-10-10 (木) 00:35:11
      • (剥きになるってことはそういうことじゃないかなと、面白そうに笑って呟く)
        (そして、でもやっぱり仕事以外にも理由があったねと少年は小さく呟き、柔らかく微笑んでから……男の望む言葉を紡ぐ)
        (黒髪の男はそれで満足する。それでいい。そうであるべきだ)
        (少年がそう言うのならそれでいい) -- 2013-10-10 (木) 00:40:40
      • (それきり、男はまたまどろみに落ちていく)
        (深い、深い、海の底に(シズ)むように、眠る)
        (また、別の夢を見るために)
        (この幸せな悪夢を見続けるために) -- 2013-10-10 (木) 00:47:10
      • 【つづく】
        【何も終わらないし始まらない】
        【ただただ、つづく】 -- 2013-10-10 (木) 00:49:39
  • 【track for cut down#4】 -- 2013-10-06 (日) 21:37:46
    • (委員会。裏の三大組織の1つ。その中でも最も目立たない組織)
      (裏方に徹底し、流通管理だけを黙々とこなす装置。外側の大型資本が母体らしいが、詳しい事は何もわかっていない)
      (剣友会とのパイプはザック、育英会とのパイプはランディ……そして、この委員会とのパイプを持っていたのはシズであった)
      (時には追っ手を始末しながら、埠頭の倉庫街をザックと進めば……)
      なんだ、早い迎えだったじゃねぇか
      (そこにいたのは……包帯で顔を巻いたあの男) -- シズ 2013-10-06 (日) 21:45:13
      • アナタこそ、手筈通りといったところですかね
        相変わらずつまらない仕事をしていますね、クココココ(そう、嘲るように男は笑う) -- 包帯男 2013-10-06 (日) 21:45:46
      • ああ、久しぶり。案外早い再会だったな。そして一番最悪の再会だわ。
        ……どう考えても、窮地に陥ってるオレたちに助言をくれるタイプの人間じゃあないよな、アンタは。 -- ザック 2013-10-06 (日) 21:47:42
      • ええ、私はお金と私の楽しみにならない事には一切手を出しませんからネ
        今回はお金になるから手を出しにきただけですが……『アナタ』の窮地を救う事にはきっとならないでしょうネ
        強いて言うなら、説明はその男がしてくれるでしょう。ねぇ……?

        『委員長』

        -- 包帯男 2013-10-06 (日) 21:55:08
      • (包帯男の言葉に被さるようにして、シズのダガーが音もなくザックの喉元を狙い、薙ぎ払われる) -- シズ 2013-10-06 (日) 21:55:57
      • (回避ではない。防御でもない。ただ何度も自分を狙ってきたことのある軌道だったから、そう動くのが自然だっただけの動作で)
        (その攻撃は、「外れた」。後ろに、無様に蹈鞴を踏むような形でよろめいた動作で、偶然外れただけだ)
        ……………。
        ……………シズ
        (オレは、その男の、名前を呼んだ) -- ザック 2013-10-06 (日) 21:58:34
      • (さらに一歩踏み込み、ダガーを振るいながら、静かに呟く)
        ザック……前にいっただろ
        確実な賞金首の仕留めかたは……賞金首と親しくすることだってな
        (いつも、この前も、いや、ずっと前から)
        (やってきたこと。先日、ランディともこなして、1人の少女を殺めた手法) -- シズ 2013-10-06 (日) 22:05:20
      • (二撃目は、その殺意を感じ取れたからこそ、長ドスで受け、獣は牙を剥いた)
        ……シズ。
        お前もか……。

        お前もオレを――騙したのかぁ!!

        (大声で叫び、大振りの長ドスの一撃を相手に向けて力の加減なく振り回す) -- ザック 2013-10-06 (日) 22:13:44
      • (空中で器用に身を捻り、ザックの膂力に合わせて跳ねるように距離を取れば……わかるだろう、すでにザックは周囲を、黒尽くめの集団に囲まれていた)
        (委員会のアサシン共だ)

        そうですよ、ザック君。僕は……君を騙しました

        剣友会の抗争の件ですけどね、いつかヌマルさんも戻るかもしれないっていったじゃないですか
        あれ、嘘なんですよ。本当は戻るかどうか分からないんです。ムネトさんがいなくなったせいで裏側の抑え役が完全にいなくなりましたからね。そこに来て先日のシュネライト騒動ともなれば、蜂の巣をつついたような騒ぎになるのは必至です
        今、剣友会は荒れに荒れています。ヌマル1人に媚びうってりゃ安泰ってわけじゃなくなっちゃったんですよ
        そこで君ですよ、ザック君
        どうせ無自覚なんでしょうけど……外からみりゃ君は実質的なヌマルの右腕なんですよ。その首を他の幹部に放り投げりゃ、我々『対外流通管理委員会』が取り入るには十分過ぎる程の土産になる
        (そこで一度大きくためいきをついて、いつもの口調に戻り)

        ……まぁ、そういうわけだわ。騙された理由も死ぬ理由もこれでわかったろ?
        ランディがいなくなったせいで、監視で小遣い稼ぎもできなくなっちまった。お前もあの事務所も、もう用済みなんだよ

        (いうなり、アサシン達が手にもったボウガンがザックへ放たれる)
        (殺す気だ。確実に) -- シズ 2013-10-06 (日) 22:28:43
      • (いつもそうだ。いつも事は自分以外の場所で起こる)
        (平和を望んでも、平穏を望んでも、いつだって外側から何かの力が加わって、オレの積み上げてきた物は一瞬で瓦解する)
        (身を縮めて、急所を守るようにしてボウガンを受ける。いくつかは避け、いくつかは払い落とせたが、腕の半ば、太ももの半ばを貫通し、膝をつく)

        そう、かよ。
        ……そうだよな。
        オレたちにとっては、今更の話なんだ。
        仕事の上で対立したことだって、互いを僅かな金で売り買いしたことだってあった。
        このクソッタレた世界で、それが当たり前だったっていうことも知ってた。
        隣人はすぐ裏切るし、昨日感謝を述べてきた口で今日オレを罵ることだってあった。
        分かってた。
        分かってた、つもりだったよ。 -- ザック 2013-10-06 (日) 22:48:07
      • そう、今更の話だ
        俺たちに、絆なんてものはない
        たまたま、同じ場所にいる理由があったから……そうしていただけだ
        そういう、ただのロクデナシの集まりが『便利屋』だ
        俺もランディも……スネイルじゃないし、デランデルでもない……ましてオルカであろうはずもない
        俺達はな……他人なんだよ
        どうしようもないくらいに。取り返しが付かないくらいに、他人なんだ
        (近寄ることもなく、一定の距離をとり、口を開く……いつものように)
        (いつも事務所で、そうしてきたように)
        今日だって、今まで通りだ。何も変わらない
        お前を殺せば俺の懐が潤う。だから殺す。それだけだ。全く今まで通りだ
        ビジネスライクに考えろよ、ザック
        生き残りたいなら俺を殺してみろ。出来ないなら俺の為に死ね
        俺の金蔓になれ、野良猫 -- シズ 2013-10-06 (日) 22:58:21

      • ああ、そうか。お前は、何でも知ってるんだな。何も教えなかった癖に。
        ……オレを、猫って呼んだか。
        よりにもよって、お前は今……オレをネコだと言いやがったか。
        (全身の筋肉が盛り上がる。怒りと、理不尽さと、嘆きを、全て飲み込み、覚悟に変えたことでそれは力になる)
        (盛り上がった筋肉に押し出されるようにして、ボウガンの矢が抜け、余りに余った血が吹き出す)
        (人より優れた心臓が、全身に酸素を行き巡らせ、戦闘態勢となった獣がそこにいた)

        一つだけ、教えてやるよ。
        ――オレを猫と呼んでいいのはな。由来を知ってる奴だけなんだよ。
        「分別なく他人に攻撃をしてまわる様はただの子猫みたいに見えたから」
        お前が知っているのは、その辺までか。実はな、この話には続きがあるんだ。
        「ただ、子猫は、もしかしたら虎の子かもしれない。育って、虎になれないうちは、いつまでも子猫と呼び続けるぞ」
        オルカは……そう言ったんだ。

        だからな。その名前は、オレを利用し、金に変える赤の他人が、口にしていい言葉じゃないんだよッ……!!
        (オルカ)が自分の名から付けた(キティ)という名前を――てめえが語るんじゃねえッッ!!

        (踏み込みは、まるで猛獣が飛びかかるかの如き速度でシズの下へと虎を走らせ)
        (空気を切り裂く音すらその場に置き去りにした一閃が奔った) -- ザック 2013-10-06 (日) 23:16:49
      • 代わりにお前の過去もべらべら聞きゃしなかっただろう。勝手に調べただけでな
        それが俺の仕事だからな
        (風を置き去りにし、音すら置き去りにしそうな猛虎の一撃を、大きくバックステップして交わす。受けすらしない)
        (そういう男だ。ただ逃げ回る。その間にも包囲網は縮まり、委員会のアサシン達がボウガンや投げナイフでザックを攻撃する)
        (リスクを避け続けろ、シズはそういう男だった)
        気にいらねぇなら、黙らせて見ろ
        お前も俺も、ランディも、ずっとそうやってきたはずだろう
        これはいつも通りの仕事だ。いつも通りのクソみたいで、最低で最悪の仕事だ、何も変わらない
        いつも通り……俺にてめぇの我侭を通して『魅せろ』、ザック!
        (壁を蹴り、三角飛びして空中でムーンサルトをしながらザックの背後を取り、ダガーを投げる。毒の塗られたダガーだ)
        (一切の容赦が無い、ただ殺すことだけを考えている) -- シズ 2013-10-06 (日) 23:56:36
      • (襲い掛かる矢も、ナイフも、軌道上から逃れるという単純な方法でかわす)
        (つまり、その疾駆は加速し続けていた。猛獣が獲物に近づくにつれて速度を上げるように)
        (時になぎ払い、時に素手で叩き落としながら倉庫の壁に叩きつけるようにして動きを変え、竹林の中を縦横に飛び回る猛虎のような動きで避け続ける)
        ああ。
        知ってたよ。世界がクソッタレだってことも、最低で最悪の仕事ばかりなことも。
        でもな。
        (振り返り、空中を飛ぶシズの目を見る)
        (二つの目が合い、軌道上に存在する毒ナイフが近づき)
        (僅かな傷も許さないその殺すことだけを考えた一撃を、『自らの牙』で受け止めると、それを叩きつけるように吐き出し)
        (身体のバネだけを使って大きく空中へと跳んだ)

        ――それでも。
        オレは、楽しかったんだよ。

        (歯を食いしばりながら、長ドスを斜めに振り抜ける) -- ザック 2013-10-07 (月) 00:26:34
      • (シズとザックの距離が縮まれば、周囲の取り巻きは手を出せなくなる。下手に手を出せばシズにあたるからだ)
        (それが分かっているシズはひたすら間合いを取ろうと縦横矛盾に動き回るが、ザックは追従してくる)
        (猫科の猛獣を思わせる、柔らかくも力強いその武に、誰もが目を見開く)
        (しかし、シズだけは目を細めて……)
        はッ……土壇場で甘えた事いってんじゃねぇ
        (両手にもったダガーの刃を交差させ、火花を散らして長ドスの斬撃を受け止める)
        (空中では受ける事しか出来ない。いつかのように、碧眼と黒瞳が至近距離で交錯する)
        さっきもいったろ、楽しい夢は醒めるもんだ

        (着地後。後退のフェイントを一度だけいれてから、その反動を利用して一歩深く踏み込み)

        醒めたくねぇってんなら……俺が目玉抉り出してでも、醒めさせてやるぜ

        (右手のダガーで長ドスの刃を滑らせながら、更にもう一歩)

        ザックっ!!

        (左手のダガーで、喉笛を狙う) -- シズ 2013-10-07 (月) 04:01:40
      • ――土壇場だからだよ。はっきりさせておきたかったんだ。
        お前らと居るのは、楽しかった。でも、それだけだ。
        一人で、自分の力だけでオレに向かってこなかった時点で――お前の負けなんだよ。
        オレたちは、少なくとも世界オレたちだけはそうあるべきだったのに、お前は最後の最後でオレを裏切った――。
        お前の周りの他人と同じように扱ったッ!! デランデルがそうしたように、オレを活かす為に殺そうとしたッ!!
        それが、何より許せない……お前にとってオレは、その程度の存在なのかってな、オレにとってのお前は、その程度の存在だったのかってなぁ!!

        (迷わず素手で)
        (その喉元を狙ったダガーを、左手で親指以外の四指で無理やり掴み、奪い)
        (その毒が体を巡る前に、根本から覚悟と共に四指を切り落とした
        (自分の中の、大切な何かを切り捨てるように)

        ――シズ
        さよならだ。
        楽しかった

        (長ドスを、渾身の力を以って振り下ろした) -- ザック 2013-10-09 (水) 19:52:43
      • (刃が、突き刺さる)
        (根元まで。鍛え上げられた刃が突き刺さる)
        (喉元を狙ったダガーは指ごと地面に叩き落とされ、今まで開いていた彼我の距離が一気に縮まる)
        (赤黒い鮮血が舞い、内腑の汚臭が鼻腔を踏み荒らす)
        (シズの身体に埋まった長ドスは、どこまでも互いの距離を近付ける。鼻が付きそうな距離にまで、顔を寄せ合う)
        (今まで一度もないほど、近くにまで)
        (本来ならば致命傷。人としての機能が保てるはずも無い。勝負あったと思われる距離。だがしかし)

        へ、やっと我儘らしい我儘いいやがったな……でもなぁ、見縊るんじゃねぇ


        (心臓は、ギリギリ外れている)
        (シズは、笑った。不敵に。シニカルに。敵意と殺意をこめて、確かに)
        俺にとっちゃあお前は気兼ねの必要もねぇくらいに他者だからだよクソが
        お前は仲間じゃあねぇ、友でもねぇ、まして道具ですらねぇ

        誰でもない、俺にとって、たった一人、身勝手な殺意をぶつけるに値する他人がてめぇなんだよ
        裏切り? その程度? お前のそういうてめぇ勝手な思い込みが最初っからきにいらねぇんだよ
        他の野郎はともかく、俺まで同じ物差しで計ろうたぁいい度胸だ
        (血を目に吹きかけて、刹那、逡巡を間を作り)
        俺が、何も教えないといったな
        お前も同じだ。自分から踏み込もうともしないで、俺にだけ踏み込めだの踏み込むなだの勝手な話だろう?
        ……だけどな、安心しろよ

        いくらお前が我儘言おうが、それを魅せる限りは……お前を殺すために、こっちからいくらでも距離をつめて踏み込んでやるよ
        こんな風にな
        (左手を突き出して、胸倉を……いいや、五爪で喉を引き掴み、ザックの身体を引き寄せる。さらに刃が身に沈み込む事など、構いもせず)
        (既に指の痺れた右手でもザックの首を締め上げて……そのまま空中での姿勢制御を諦める)

        ――ザック
        じゃあな
        俺も楽しかったぜ

        (さすれば、2人の身体は中空で勢いに任せるまま海中へと没する)
        (倉庫街近隣の海辺は潮の流れが激しい。一度、重りのついた人間が落ちれば引き上げるのは容易ではない)
        (男達の影は、夜の帳が降り始めた倉庫街の暗い海に……深く、深く、沈んでいった) -- シズ 2013-10-09 (水) 22:25:27

      • 【つづく】 -- 2013-10-09 (水) 22:42:21

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事務所内・外(過去ログ) Edit

編集:【便利屋やってます】差分:【便利屋やってます】

お名前:
  • 【よくある話 4】 -- 2013-10-06 (日) 17:27:51
    • (宵闇に紛れて、街の外れまでやってくる。いつかのお嬢様の時のようなヘマはない。どこかのだれかと違って、俺は追っ手はきちんと完全に撒く)
      (街の出口。巨大なゲート前に美少女をつれて、溜息をつく)
      (フードの内側にまで侵入して来た雨が、前髪から雫となって垂れる) -- シズ 2013-10-06 (日) 17:34:57
      • お疲れ様ね(無愛想にそれだけいって、抱いていたすねこすりを渡してくる)
        (此処を通るときはこいつを連れていると目立つので、シズに預けてこっそり外に出して貰う手筈なのだ) -- 美少女 2013-10-06 (日) 17:48:55
      • (コイツ……即ちすねこすりを受け取り、小さく頷く)
        (ここを抜ければ、もうお互い会う事も無い。仕事も終わりだ。成功報酬はあとで指定の口座にでも振り込んでおいてくれ。と、事務的に伝える)
        (仕事は、もうすぐ終わりだ。必要以上に喋る事もない) -- シズ 2013-10-06 (日) 17:57:20
      • いいのかしら。私、報酬をこのまま振り込まないかもしれないわよ -- 美少女 2013-10-06 (日) 17:59:29
      • (ああ、きっと振り込まないだろうな。知ってる。でも構わないよ) -- シズ 2013-10-06 (日) 17:59:55
      • 前金しか持ってない事わかってたのね -- 美少女 2013-10-06 (日) 18:00:14
      • (着の身着のまま来た組織に追われる女に、それ以上を期待するほうがどうかしてる) -- シズ 2013-10-06 (日) 18:00:47
      • そう -- 美少女 2013-10-06 (日) 18:01:05
      • (そうだよ) -- シズ 2013-10-06 (日) 18:01:16
      • なら、何も遠慮しなくていいのね。便利屋さん -- 美少女 2013-10-06 (日) 18:02:25
      • (ああ、何も遠慮しなくていい。これでさよならだ美少女。コイツは適当なところに流しておく) -- シズ 2013-10-06 (日) 18:03:43
      • 何でもお見通しなのね -- 美少女 2013-10-06 (日) 18:04:08
      • (美少女ほどじゃない) -- シズ 2013-10-06 (日) 18:04:25
      • そうなの -- 美少女 2013-10-06 (日) 18:12:50
      • (そうなんだよ) -- シズ 2013-10-06 (日) 18:13:02
      • じゃ、その子。良い人の所に、頼むわね -- 美少女 2013-10-06 (日) 18:13:51
      • (払いが良い客は愛玩用に欲しがる金持ちだけだ。約束するよ。さぁ、いけよ) -- シズ 2013-10-06 (日) 18:14:31
      • (いわれて頷き、美少女が歩みを進める)
        (雨の中、ゲートに向かってゆっくりと。ゲートとは名ばかりの打ち捨てられた大門に、もう検問官はいない。こんな腐った街なのだ。出入りなんてその気になればフリーも同然だ)
        さようなら。便利屋さん -- 美少女 2013-10-06 (日) 18:31:57
      • (ああ、さようなら。美少女)
        (そう呟いて、踵を返そうとした直後……丁度、日が昇り、朝焼けに美少女の姿が照らされた瞬間) -- シズ 2013-10-06 (日) 18:34:06

      • (空気を鋭く切り裂く音だけが響く。7.62mmの鋼鉄の弾丸が螺旋を描き、ハニカムで偽装されたスコープのレンズ越しに)
        (──女の胸を撃ちぬいた)
         
        (いい仕事だ、と自分と目標を導いたシズを静かに称える)
        (この手法は何度やってもおもしろいように成功する。そこに面白さを求めたら人として破綻するが、シズの実力は確かであり)
        (こうして行える虚無的な恐ろしさを俺は他に知らない)
        (セミオートライフルのボルトが自動的に次弾を装填し、スコープ越しに女を覗く)
        (動けば、頭を撃ちぬくために) -- ランディ 2013-10-06 (日) 18:55:25
      • (……そう、面白いように成功する)
        (最も効率的な、賞金首の殺し方)
        (逃がしてやるといって取りいって、そいつから報酬をせしめた上で始末する)
        (一粒で二度美味しい、いつも通りの……よくある話だ) -- シズ 2013-10-06 (日) 18:59:25
      • (胸から、真っ赤な大輪の華を咲かせて、美少女の矮躯が舞う)
        (余りの衝撃に反転する美少女の体。そして、否が応にもこちらを向く少女の顔)
        (だいたいの場合。その顔は動揺と恐怖と絶望に塗れた、酷い顔をしている。シズも、ランディも……そして恐らくザックですら見慣れた、この裏路地にありふれた最後の顔)
        (しかし、美少女のそれは……違った)
        (彼女は、笑っていた。穏やかに。全て認め、受け入れた上で笑っていた)
        (彼女の小さな唇が震える。小さな言葉を呟く為に。今際の際に最後の言葉を囁く為に)

        ――――

        (届くはずがない。雨音でその声は誰にも届くわけが無い。本来なら、誰もその言葉を聞く事はない)
        (だが、シズにも、ランディにも……その言葉は届いてしまう。なまじ読唇術が出来るばかりに)


        ありがとう、さようなら


        (そう満足気に、優しく笑う彼女の言葉が) -- 美少女 2013-10-06 (日) 19:05:17

      • (死に際の言葉として不可解である。しかし、わかっている)
        (この街のごみ溜めのような世界の端で。それでも何かを失わず。それでもとそうあった人間の顔)
        (そして、静かになった女に歩み寄り。シズに向かい合う)
         
        すまん
        (頭を撃ちぬくべきだったのか。聞かせたシズへか、女へか。言葉が先に出た)
        (出るはずのない言葉は、出た) -- ランディ 2013-10-06 (日) 19:13:57
      • (静かに……静かにハーフマスクをとって、呟く)
        きにすんなよ。いつもの事だ
        (はっきりと、シズと分かるその声で)
        俺こそ……悪かったな。ランディ
        今の今まで付き合わせて

        なぁ、ランディ、お前もうこの仕事終わったらいくんだろ?
        お互い女絡みの仕事はロクなことがないな -- シズ 2013-10-06 (日) 19:22:38
      • ザックには事務所の権利、公的な手続き書類を渡して去ろうと思う。
        すまない、シズ
        俺はお前に何も渡せない。何も渡せるものがないんだ。
        お前に伝えるべきものも、お前に遺すべきものが俺には無い。
        今のお前が、お前の結果「その様」になって、お前が承知していることだとしても
        俺はお前に何かを一つ尽くしたかった。
        こんな、女を殺した仕事の金ではなく…
         
        すまない…シー・ライムレス -- ランディ 2013-10-06 (日) 19:36:09
      • やっぱり気付いてやがったのか(小さく、苦笑を漏らす)
        まぁ、お前ほどの男が監視者の事を調べないわけがないよな
        (元々、ランディの監視のために俺はここにきていた)
        (それが仕事だから。それが、委員会が俺に課した仕事だったから)
        やめろよ、その名前で俺を呼ぶ奴はもう1人だけだ
        そして、その1人はお前じゃない
        ランディ、俺はお前とザックのお陰で十分楽しませて貰った
        仕事であることも忘れて……一時、大昔無茶やってた頃の事をなぞる事ができた
        金の次程度には、いいもの貰った気がするぜ

        まぁ、それも今日までだ。残念ながら、お前を監視する仕事はお前がこの街にいる間だけの話だ
        外に出て行くなら管轄外だ。これでさよならだな -- シズ 2013-10-06 (日) 19:42:59

      • そうだな。シズ・ブリンク…そう、お前はシズだ。俺にとっては、そうだ。便利屋にいた仲間の一人。
        三人のうちの一人…シズ
        そうだな
        俺も楽しかった。泡沫の夢と、枯れ木に芽吹く緑と知っていても尚
         
        じゃあなシズ。その女の目、閉じてやれよ
        (ライフルを背負い、手振りもせず。振り返りもせず便利屋に向けて歩き出した) -- ランディ 2013-10-06 (日) 20:41:00
      • ああ、じゃあな、ランディ
        俺も『数十年振り』に仲間が出来て、楽しかったぜ
        達者でやれよ。『依頼人』は、お前の事諦めてないだろうからな

        (そっと、美少女の目を伏せ、矮躯を抱き上げて……ランディを見送る)
        (これも、幾度もあった別れの一つ)

        (感慨はない。感傷もない)

        (少なくとも、俺たちはそういう関係だった)

        (そういう関係で……あるべきだった) -- シズ 2013-10-06 (日) 20:49:06
      • 【つづく】 -- 2013-10-06 (日) 20:49:31

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事務員 Edit

肩書名前専門一言
所員ザック厄介事ねえよ
所員ランディ調査等ない
所員シズ裏取り(無言)

覚書 Edit

  • 考えてること
    • 護衛
    • 娼館沙汰
    • 裁判補助

単語集 Edit

オルカ何でも屋「組織名」 Edit

  • オルカが始めた何でも屋稼業。
    請け負う内容は今の便利屋よりやや公務寄りでツテや信頼も厚かった。
    元々腕の立った冒険者であったオルカが冒険者を引退してから始めた慈善事業が商売化して今の形に収まった。
    • 個人経営でありながらその実績は甚だしく、公共機関からの依頼斡旋も非常に多かった。

初代何でも屋・オルカ「人物名」 Edit

  • 本名オルカ・セルフランセ。
    赤みがかった茶色の長髪にハンチング帽を被った元冒険者の何でも屋。

    前髪に隠れて目立たないが、眉のすぐ上に横に刃物で切られた裂傷を持っていた。
    ザック・スネイル曰く「人間の範疇を完全に超越したゴリラ女」。
    成人したザック10人分程度の戦力を誇る。
    • 性格は豪放磊落にしてそれでいて気配り上手。基本的に教育は厳し目。
      信念のない行動や節度のない我儘に対しては非常に容赦がない。
      その性格から何度か新人冒険者の育成を任されたこともあった。
      • 孤児であったザック・スネイルを引き取り、どこからかデランデルを引き取ってきた経緯を持つ。
        前者については市の非行少年保護法に基づいたちゃんとした依頼での行動であったが、後者については本人が特に語ろうとしなかった。
    • 公の記録では迎えた孤児の一人、ザック・ザリップスによって殺害されている。
      この罪によりザックは数年間の間刑務所に服役することになった。(少年法に基づきかなりの減罪がされた)
      • 享年34歳。
        早すぎる死は沢山の人間に悼まれた。

合理屋・スネイル「人物名」 Edit

  • 本名 不明
    • 元オルカ何でも屋に身を寄せていた三人の子供の内の一人。
      煉獄の炎のように赤い硬い短髪に度の入ったサングラスを掛けた万年スーツ姿の男。
      ランディと同じ意味で『そちら』側の人間だとひと目で分かる外見をしている。
      • かつてオルカが所持していたドスの刃を短く研ぎ直した物を、曰くつきである刀の柄に無理やり差し込んだ短刀のような刀を使用する。
        この刃は蛇腹状に切り離すことができ、刃同士は柔軟性に富んだ鋼糸で繋がれている。
        また、中距離攻撃手段として背中に散弾銃を担いでいる。所謂ソードオフショットガン。
        メンテナンスの仕方が悪いため、精度は低め。
    • 飄々とした話し方が特徴であり、良く他人を煙に巻くような物言いをする。
      どうせ皆最後は死ぬんだ、というのが口癖であり、かなりの厭世家でもある。
      • ザックとは浅からぬ因縁のせいか、互いに互いの存在を認められない程に嫌悪し合っているため、積極的に顔を合わせない。
        他の便利屋に対しては必要に応じて、またザックを苦しめる為になら積極的に利用し、交流を持とうとする。
      • かつての恩人オルカの幻想を、ザックと違う意味で追い続ける運命を背負った男。
    • かなりの味覚偏屈で、余程のことがなければドロドロした物やネバネバした物しか食わないという信念を持っている。
      最も好きなのは天下上品のラーメン。こってりに途中で辛味噌を店側に迷惑な程足す。

闇医・デランデル「人物名」 Edit

  • 本名 不明
    • 闇世界の医者であり、外科内科お構いなしに切り刻むのが専門。
      切り刻む前より明らかに体重が減っているのに何故か全快しているという奇妙な治療を施す。
      • 腕は確かだがこの業界の常で、技術を持つ者は変人であるという法則に外れていない。
      • 老若男女、経歴略歴、怪我の程度や損壊の規模、分け隔てなく治療する。
      • 常に白衣を着ているが、膝から下がかなりエグい色に真っ赤に染まっているため、
        暗闇で会うと一種のホラーである。
      • 闇医者の例に漏れず、法外な値段を請求するが、本人曰く闇医者業界では一番コスパいい、らしい。
    • かつてオルカ何でも屋に身を寄せていた三人の内の一人。
      オルカの死を経て独立をし、この町で闇医者を開業した。
    • くすんだ金色の髪に人懐っこい笑顔を張り付かせた表情が特徴。ギリギリイケメンとは言えなくもないが、どちらかといえばベビーフェイスな方である。
    • モツ料理が好き。
      食べる方も、作る方も。

長崎剣友会「組織名」 Edit

  • 裏社会一帯を統べる三つの大型組織の内の一つ。
  • 大小23の組織を運営・管理する。
    • 主な事業は公共設備投資・金融・用心棒・傭兵・訓練派遣。

ヌマル若頭「人物名」 Edit

  • 本名 鵺丸 心
    • 長崎剣友会きっての武闘派にして剣友会の若頭衆最大派閥の長。
      別名『鬼のヌマル』シンプルな異名が許されるほどの説得力を持つ。
      • 搦め手を嫌い、鉄火場に正面から立ち向かう姿は若い衆の心を掴んで離さない。
        ザック以上の耐久を持ち、数々の切削創や銃創を受けながらも胆力でそれを乗り越えてきた。
    • 敵対勢力には容赦がなく、他人の口を割らせるためなら拷問をも厭わない。
      代表的な拷問に『餃子巻き』があるが、説明は割愛する。
      • まったくカタギに見えない自らの疵顔はあまり好きではないらしく、
        若い衆に勲章だと褒められると照れ隠しに拳でイワされる。
    • 長崎剣友会の稼ぎ頭でありながら、任侠の在り様に常に疑問を持ち続けている知性派でもある。
      • 特に上からの命令に唯々諾々と従っているように見えて、その内側で牙を研いで時を待っているのではないかとザックは疑っている。
    • 家で、一匹猫を飼っている。

エイナス育英会「組織名」 Edit

  • 裏社会で特に恐れられている三つの大型組織の内の一つ。
    • シャドーギルドと呼ばれ、暗殺を得意とする現代の忍者組織
  • 表社会では福祉、特に育児や奨学金、孤児院や保育関係を運営
    • 財政会有力者らのイメージ戦略のために彼らと強いパイプが存在する

オセイロ「人物名」 Edit

  • 本名 不明
    • エイナス育英会代表。白いローブに白いフードの巨漢の男性
      • 顔を隠しており、その姿を見た者はいない。
      • 空手百段
    • その真の姿はあどけない少年であり、ヒュプノシスによって上記の偽装体を操り表社会でも暗躍している
      • 無邪気にして邪気、自らの敵は徹底的に滅ぼす。子供の味方であり家庭内的女性に強い執着を見せる。
      • 非合法組織に対して強い関心があり、調査を重点的に行わせている

委員会「組織名」 Edit

  • 裏社会で特に恐れられている三つの大型組織の内の一つ。
    • 土地固有の組織ではなく、外部から食い込んできた大型資本の一部。
  • 表社会に出る事はなく、裏社会での物流のみを淡々と管理し、そこから得られるあがりのみに興味を持つ。
    • 他の組織とは違い、徹底して裏方、縁の下に徹する。

R.I.A「組織名」 Edit

  • フリーランスの電脳将校の集まり。1人の人物を中心に集まっている電脳将校組織
    傭兵組織にも近い。
    • 商業目的ではなく、ある目的のために結成された。電脳戦闘集団。
      電脳専門、次世代の民間軍事会社とも言われている。
      • 対テロ、電脳犯罪、また電脳産業に関する暗部に個人的に干渉しているらしいが、フリーランス故に個々の正体を掴むのは困難を極める

Load 「人物名」 Edit

  • 第73期戦術電脳将校 本名不明。
    • R.I.Aの中心人物 心のままに動く派
      • 好物はスライスチーズ

Fairy 「人物名」 Edit

  • 第73期戦術電脳将校 本名不明。
    • R.I.Aの統合情報将校 万年貧血気味系
      • 生活のうち殆どを端末に接続しているので、机に突っ伏していることが多い

シルク情報局「組織名」 Edit

  • 電脳上にしか存在しないとされている、電脳組織。
    主に情報産業の分野に於いて広く取引を行っている。
    掲げられているスローガンは蚕からフェニックスまで
    • 金さえ払えば意中の女性が履いている下着の色まで知ることが出来る、徹底した情報収集を得意とする集団。
      元々電脳上でたった一人の少年の呼びかけの元集まった人間が作り上げた架空組織であったが、
      口コミにより膨れ上がり、立派な電脳法人として成長していった。

情報屋・キャロル 「人物名」 Edit

  • 通名 クリスマス・キャロル。 本名は不明。
    • 便利屋付きの情報屋。
      やりとりは文字媒体でのみ行われ、音声での交信を行う事は出来ない。
      なので便利屋の面々ですら、男なのか女なのか、老人なのか子供なのかすら分かっていないある意味謎の人物。
      • 適正な価格で正確な情報を適切な速度で与えてくれる、いわば当たりのエージェントであるのだが、
        いかんせん性格がかなりの魔王であり、ザック曰く「人の心がない」。
    • 偶然かは分からないが、他人の勤務時間中に連休の真っ最中であることを主張することが多く、
      その悪魔の仕打ちによって苦しめられている取引相手も多いと噂が立つ。
      自分の情報で他人が動くことに悦びを感じる性格らしく、情報屋は天職であると便利屋相手によく雑談を送ってくる。
      • 余談ではあるが、情報を流布することは、状態を確定させることと同義であるため、自然の状態に左右されやすい妖精などと非常に相性が悪い。
        場合によっては妖精が死に至る。

水道さん「公共設備」 Edit

  • 捻ると水を出してくれる。
    すごい。
    • 水道さんいつもありがとう。
      これからもよろしくお願いします。

夜給亭「店舗」 Edit

  • 事務所から徒歩30分のところにある三丁目では有名な中級料理屋。
    和食・洋食・中華とメニューも幅広く、予約をすればコース料理も食べられる。

Last-modified: 2013-11-17 Sun 04:53:39 JST (3816d)