昔々ある所にたぬきちと言う名の化けダヌキがいた
これが大層悪戯好きで村人を困らせていたようだ
時には美女に化けて男を誑かし、田んぼに落として泥まみれにしたり
時には座布団に化け、誰かが座ろうとした所で毬栗の様なトゲトゲしたものに化けたり
怪我こそする者はいたがその村には小さい子供がおらず
悪さをコラッと叱りはするがまるで子供のいたずらのように扱っていたそうな
しかしある嵐の日に村の若者が度胸試しで水門を開いた事で田んぼは壊滅し
いくつもの家が大水に流され何人も命を落とす出来事があった…
なぜ?一体誰がこんな酷い事を?村の生き残りは犯人探しに躍起になっていた
罪を咎められる事を恐れた若者がたぬきちがやったのではないかと言うと
「今までの悪戯を考えれば今回も…」「ここまで酷い事をするだろうか?」
「ここまでになると思わずやったのかもしれない」「所詮は妖怪だったんだ」
結局この時は結論が出ず、後日たぬきちに聞いてみようと言う事になった
それから数日…
あの日以来たぬきちは姿を現さない、それもそのはず嵐の晩に住処が流されてしまったせいだ
そうとは知らない住人たちは次第にいら立ち、犯人だから出てこられないのだと結論付けてしまう
退治すべきだとの意見も出たが可愛がった事もあるたぬきちを己の手にかける事はためらわれた
だがあくる日の事、運悪く旅の陰陽師が村にやって来てしまう
村人はこれ幸いと陰陽師にたぬきちの、化け狸の退治を依頼する
ようやく新しい住処が出来上がったたぬきち
久しぶりに村に行こうとした所で見知らぬ男に襲われる、それは村人が雇った陰陽師だった
逃げて回るたぬきちだったがついには捕まってしまい石へと封印されてしまう
それから長い時間が流れ…封印の地より近くにあった遺跡が見つかる事で封印石もまた発見される
もしも封印されている間に恨みが募ればどれほど邪悪な存在になっていたかは分からない
陰陽師が村人に雇われた事を口にしなかったのが幸いか
誤解のままに封印された化けダヌキはずっと、石から出たいとだけ願っているのだった
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