姉は妹を抱えて
幽鬼みたいな顔で、階段を下りていく
一人居間にいた兄の首を絞めて、気絶させて
胸を切り裂いて、心臓を取り出す
兄の無限の命の源の石、あの宝石があれば、あれを妹に与えれば…!!
かつて一番上の兄が異国の魔法使いと禁術をかけた
その媒体になった石が心臓にあるから兄は生きていると言っていた
それを使えば誰でも同じになれるとも
…でも、見つからない
血を絞り取ってみても、細かく刻んでみても
石なんてどこにも入ってない
どうして どうして どうして? 兄は嘘をついていたのか
そうしている間にも妹の息は細く、弱くなって
せめて流れる血を少しでも止めようと、妹を抱きしめる
「ごめんね」
後ろから兄の声がした 心臓を取り出したはずの兄の
虚ろな瞳で、振り返る 目の前には傷一つない兄の姿
「石はもう、とけてなくなってしまったの」
ばけものだ
子供の形のばけものは、言った
「助ける方法はあるんだ、一つだけ」
「君達にいつも使っていた再生の魔法、あれは魂の記憶で形を取り戻す魔法なの」
「形を取り戻すには魂が必要だ」
「君はスーの事なら何でも覚えているだろう?」
方法は、ひとつ
カミラの魂をスーに譲り渡す事
妹が、腕の中で、弱々しく笑った
「…だいじょ…うぶ… あねさ…ま… スーは…だい…」
かすれた声で繰り返す ただ姉を悲しませないように
中途半端にかかった再生魔法のせいで、苦痛に苛まれながらも
「私…私は……」
足元には兄を切り裂いたナイフ
「この子のためだったら、何だってできる」
手にとって、自分の… ……
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