ARA個人イベント『Amore e morte』
- 終幕
- バルターの全天結界。闇の裡に輝く光の帳。
黄金に輝く瞳、竜眼を目にして呪術師はなおも笑う。面白い、と。 闇の刃、月光の矢が呪術師の更なるマナを注がれて暴威を増す。 それに拮抗するのは、マルレーネの水晶柱、六属性が束をなすプリズムの輝き。 錯綜する光の筋が、全天結界で減衰した闇の刃を打ち砕き、月光の矢を打ち払う。 ジンの行為は、果たして地味ながら効果を挙げた。死体を投げる、物理的に障害を排除する行為。 オリヴェールの歩みを阻むものを取り除いてゆく。 フルラの旋律魔術は、呪術師の張った防御結界によってあっさりと阻まれた。 だが、効果を為したのは何よりもその鼓舞。意志の篭った、力強い言葉。 それがオリヴェールの脚に力を籠めさせる。 シリウスの星の大剣が、最後の一押しとなって道を切り開く。 人の壁が、開けた。呪術師までの歩みを阻むものは何もない。 初めて呪術師の目に動揺が見えたが、それもまた一瞬のこと。 まだ優位は己にある。彼の手勢を端から殺してみせるだけの余力は残している。 だが、業腹だ。彼はプライドの高い人間だった。 高貴な人間の、高潔なまでの真っすぐな意志。それを真正面から挫くことに執心した。 ≪驕慢を挫く威容≫。 根源的な恐怖を巻き起こす、ゼノバスの暗黒の神威が重力にも似た圧力となってオリヴェールを跪かせようとする。 白い影は歩むのを止めない。 ≪痛苦齎す紅毒≫。 射抜いた対象に、強烈な痛みを与える術式。その苛烈さは並の人間ならばショック死を免れない。 白い影は歩むのを止めない。 ≪狂える脳髄≫。 射抜いた者を狂気の底に突き落とす恐るべき呪術の矢。 白い影は歩むのを止めない。 呪術師が気付いた時にはもうその目前。 ≪死の淵で枯華持つ女≫。 呪術師が切り札たる術式を展開するその眼前で、 オリヴェールもまた、必殺の術式を展開する。 --
- ≪極光≫と名付けられたその術式は。
目の眩むような閃光とともに漆黒の天を裂き、偽りの夜帳を切り裂いた。 夜が明ける。 死者は蠢きを止める。 邪なる呪術師は立ち竦む。 太陽の輝きが二つの影を照らす。 死にぞこないが、と叫びながら。 呪術師は展開した術式にあらためてマナを注ぎ発動する。 死したる恋人の姿を投影した、死神の虚像が顕現する。 零距離。光と闇と、二つの必殺が拮抗する。 一対一ならあるいは、押し負けていたかもしれない。だが。 オリヴェールには背中を押す仲間がいる―― -- オリヴェール
- (次々と魔術を受けても、なお動きを止めず必殺の一撃を放つオリヴェールを見て)
・・・これ以上俺ができる事はないかな。ヴァーさん、後はアンタが決めな(薄く笑って静かに呟く) (手に持った槍を地面に突き立て戦いの姿勢を解くと、『太陽食み』へ軽く手を振る) …できれば俺が殺してやりたかったけど、それは無理そうだ。さよなら術師さん (珍しく他人を卑下した笑みを浮かべつつ別れの言葉を手向け。オリヴェールの行いを見守った) -- ジン
- (金の瞳はマナを吸引し続け、結界は問題なく維持されたまま。)
(しかし、極光の術式を見ればそれを引き上げ。) (金の竜眼で極光の術式を余す所無く読み解き、マナを注いで支援する)
(一方で、折り畳んだ空間に手を突っ込みその刀を引き抜いた。) (この日のために、ユイから聞いた鍛冶屋に打たせていた逸品) (虹色に輝く竜を意味する名を冠したミスリル製の名刀。そう、オリヴェールが使う抜剣術に適合する刀だ。)
(銘を───虹霓)
兄上───この剣で! (決着を、と。虹の刀は空を舞い、オリヴェールの手元に収まるように舞い降りた。) -- バルター
- (最後の一振りでオリヴェールの道を切り開ききった がらんと音を立てた星の大剣は色褪せて消える)
(しかしゼノバスも想像を絶する術師である 肺が引きつり呼吸を切らすシリウスの目の前で、オリヴェールが悪夢の如き術の数々で打ち据えられる) (重圧が、痛覚が、狂気が、白い皇子を苛む それでもシリウスは彼が立ち上がることを信じていた 真なる彼の運命たる星読みを読み解いたシリウスこそは) (だからこそ、ゼノバスの眼前に立ち塞がり、彼方のオーロラに似た光を発する術式を起動した瞬間、勝ちを確信した) ええ、先輩ならばどのような運命が立ち塞がろうとも貫き通せますとも(そう信じるからこそ、シリウスは描いた 他の誰にも掛けられぬというほどの星座魔術を) 其は試練を越えし不倒の英雄 Hercules(十二もの試練を超えた英雄の中の英雄 その形を術式としてオリヴェールの力へと変える) (常人どころか半端に超人なぐらいでは絶えられぬ程の超絶強化術式 それはもはや『英雄作成』とされる領域 まさに英雄が誕生する瞬間を祝福するように) -- シリウス
- (もはや走ることも叶わぬ、学友の姿。彼のその白い姿に、眼にも見えるような恐怖が落ちた)
(ただ歩くだけの、それだけしかできぬ学友の姿に、凄まじき苦痛が見舞われたのが分かった) (それでも、止まらないその……弱さなど、欠片もない、強い姿には、狂気など) (闇夜は切り裂かれた。忌むべき暗黒の天蓋は、塵芥と消えた。煌々と輝く、太陽は、白きその姿を浮かび上がらせ…) (場違いに、思ってしまった。それは、死を迎えるために闘う、白衣を着た、医師のようで) (思い出した。いつかのこと。医者になりたい、と言っていた、皇子でもなんでもない、一人の男の子のことを) 『木漏れ日に歩めば』 (穏やかな、旋律。音叉剣が風の音を止め、新たなる音楽を奏でる。それは天気のいい昼に、ただ、散歩をするような) (そして、大理石のような、白く濁った結晶が生まれる。それは死に立ち向かう者のための刃) (それは、メス。剣ほどもある、メスとしては巨大すぎるそれ。死に関連する呪いを物理的に断ち切る効果を持った刃) (白き刃を生成し終えた瞬間、それをつかみ取り、彼へと投げ放った) ……そんな糞指揮者、やっちゃえ!君は…夢を叶えるんだ!! (木漏れ日の、その先。歩いていったその先に、暖かい…彼の未来があるのだと、願って) (彼に贈った曲を、彼の刃に変えて、ただ、彼を信じた) -- フルラ
- いやはやぁ……何と言う精神力、それともぉ…執念……(見ていて此方が痛くなりそうですよーぉ、とオリヴェールの様子に苦い表情)
ですからぁ、必ず勝って下さいねーぇ……とどめは、お任せ致しますゆえにぃ… (重力魔法でオリヴェールの身体にかかる負荷を和らげ…同時に身体強化の術式を発動させる マナの流れもより円滑となることだろう) おやぁ……いーい刀ですねーぇ……(バルターの渡した刀を見れば、その刀身に目を見張る)一目見るだけで、業物と分かりますよーぉ… ではぁ……「狭霧」の出る幕ではありませんでしたねーぇ、ふふ。(ポーチに入れたままの、柄だけとなった刀。それを左手で撫でるようにして 事の成り行きを見守るのだ) -- マルレーネ
- バルター。竜眼の齎す莫大なマナと、虹霓、竜の名を持つ剣を左手で掴む。
単に血の繋がりというだけではない、友情をすら手にするように。 フルラ。死をすら超克せんとする、医薬の刃。投げられたそれを右手で掴む。 木漏れ日の裡を、ただ穏やかに。そんな幻想を現実(かたち)にした、白く輝く刃。 シリウス。英雄を作り出すその術式を、総身に受けて。 新たな生への祝福を受ける。その太刀筋は壮烈に、かの英霊の如く雄邁に。 マルレーネ。身体強化の術式は力の流れを安定させ。 重力の軛を絶ち切られた肉体は、翼が生えたかのように軽く淀みない。 ジン。その信頼を背に受ける。 それはどのような魔術よりも勇壮に、オリヴェールの四肢に力を籠めさせた。 「――輝く友誼の剣」 白き光を纏って、交叉する剣閃が呪術師を、その作り出した死神の虚像ごと切り裂く。 千々に砕けた呪術師のむくろは、蠢動する恐ろしい何かが奥底に待つ、奈落の暗黒の底に飲み込まれ消えた。 運命に打ち克つ。それを遣り遂げたオリヴェールが顔を上げ、君たちを振り向いた。 朝日に照らされたそのかんばせに、もはや死の影は何処にも無い。 オリヴェールは晴れ晴れとした表情で、君たちに微笑みかける。 彼を支えるかけがえのない繋がり――友愛が、彼に新たな生を歩ませたのだ。 -- オリヴェール
- 第三幕
- 魔物と化した住民たちが、美しい翡翠の剣の前に次々と骸を晒す。
男がいた。老人がいた。女がいた。子供がいた。その何れもが、ことごとくが魔に堕して歪んでいた。 ジンの振るう槍が冷徹に彼らを打ち払い、また貫く。 彼らに魂の救済は無いかもしれない。だが、終わらせてやらなければならない。 不死鳥の聖なる輝き、その炎が、彼らの作り出した道筋をさらに割り開いていく。オリヴェールの駆ける道を。 マルレーネの狙撃はまた的確だ。然るべき者を足で潰し、それ以外の者を面で制圧する。 次いで、魔弾が次々と人であったものたちを貫いていく。掃除だ。 バルターの言うように、掃き清めるかのように、道が開いてゆく。 『結構、結構!! 即断即決、実に結構』 『だが、隙だらけです』 悪神ゼノバスの力を借りる、邪悪な信仰に基づく暗黒術式。≪闇色の刃≫。 闇そのものが硬質な物体となり、無数の刃と化して君たちに暴風の如く襲い掛かる。 連鎖詠唱。夜空に輝く月の光が収束し、天より降り落ちる無数の矢と化し、頭上より降り注ぐ。 ≪月の頸木≫と呼ばれる暗黒魔術。 そして、倒れ伏した住民たち。骸となっても動くことをやめず、這うようにして君たちに殺到する。 君たちの足を止めるためだけの犠牲となって。 それらを時に斬り払い、時に防御術式で弾きながら近づくオリヴェールを眺めて、呪術師は言葉を紡ぐ。 『ところで。竜態にはなられないのですか、オリヴェール殿下?』 瞠目したオリヴェールの表情を見ると、さも愉快気に笑った。 若者の精神を掌の上で弄ぶかのような、極めて歪んだ笑みだ。 『まあ、首都アルミネラの目と鼻の先で大暴れともゆきませんか。結構、結構』 『では私にも勝ちの目が十分にある――』 オリヴェール目掛けて、呪術が飛んだ。 それは無数の鱗の如き防御術式を、霊体の如くすり抜ける。 『≪悪霊の鈎爪≫。心の臓を潰せば、貴方と言えどひとまず走れないでしょう』 --
- (『太陽食み』が放つ呪術の極致、遠隔に心臓を握り潰され、オリヴェールが血を吐いて前のめりに倒れる)
(ミスリルの短剣を取り落とし、竜鱗の術式は弾け飛ぶ。闇夜に浮かぶ白い影が、藻掻くようにして地面を這った) (だが泥濘と血漿に塗れても、その紅の瞳は死んでいない) ひるまず、援護、を!! (血を吐き散らしながら、脚に力を籠めて立ち。一歩、また一歩と呪術師への距離を詰める) (オリヴェールが彼の元へ到達するまではあと僅か) (自らの手で、確実に殺すために。幾重にも幾重にも術式を組み上げながら、オリヴェールは呪術師の元へ迫る) -- オリヴェール
- …!! 闇を降ろしたのはそういう事か!
(しくじった。とばかりに舌打ち。降り注ぐ闇の刃) (さらに、月の矢が降り注ぐ。対応せねば全滅だ。) 消し飛ばすべきだったか…(復活していく村人を見て顔を顰め) 兄上!!(呪術の質が不味い。止める間もない、おそらく兄は心臓を潰されている。覚悟を決めた。) (瞳が金に染まる。竜眼を全開にする。マナを吸引し、引き込む。)
全天結界…! (短杖が4本。空に舞い上がる。闇夜を貫くように輝くそれが、空に球を描くような結界を張リ巡らせる) (闇の刃と月の矢を防ぐ光の結界を維持し続け、そのままオリヴェールを追うように駆けだした) -- バルター
- ヴァーさん!!(吐血したオリヴェールに声を投げ)
このっっ…(激しい怒りの感情を覗かせた表情で『太陽食み』へ向き直り、思わずそれに飛び掛かろうとした自分を歯噛みして抑え込むジン) (視界の端でオリヴェールが奴の元へと近づこうとしている)ふー・・・(自身を落ち着かせるように深く深く息を吐き出す。彼の意思を汲み取り、それを叶えようと) ・・・OK了解だ。道を切り開けばいいんだね任せといて・・・やり方は荒っぽいけどね(改めて何時もの表情へと変わり) じゃ、行くよ…肉壁…あ、これ技名じゃないな。まんま…(言って、倒れた骸を槍の端で引っ掛け向かってくる攻撃を防ぐべく、次々とブン投げる) うーむ…地味…(言いながら新たに壁を増やそうと槍を担いだまま走り回っては、死体を投げつけて行った) -- ジン
- んふーぅ、これはなかなかに厄介ですねーぇ…人海戦術もあったとはいえ、一人でこれほどの術を行使できるとはぁ…正直油断してましたよーぉ
(純粋な闇の刃と、月光の矢。規模が尋常ではないと見るや)ではではぁ……タレットクリスタル、迎撃用ぉ〜意…! (掌を上にした左手を、くいと曲げると 地中より突き出す4つの水晶柱。マナで形作られたそれは、同様にマナで出来た紫水晶弾を雨あられと撃ち上げて、闇色の刃と月の頸木に対する迎撃を行う) …なーんでしょうかぁ、今…聞いてはならないような話が聞こえてしまったような気がしますがーぁ…(竜態、との言葉に容易に推測ができるその意味。だがそれは知るべきではない情報にも思え) 殿下ぁ、奴の言葉に耳を貸してはなりませんよーぉ…くれぐれも…(要らぬ心配だろう、とは思いながらマナを集中させる) 撃ち漏らしは、こちらでー……せぇ、のっ(先ほど上空に浮かべておいた結晶の一つに向けて斉射する、六属性を束ねた光の筋。それがまた次の結晶へ、別の結晶へと空中を反射し…線でテオドアの魔法を相殺していく) -- マルレーネ
- 六属性を一度に、とは…!(噂に違わぬマルレーネの魔術の冴えに感嘆の声を漏らすものの、亡者は、止まらない)
(そして直上からは月の光が、形を持って襲いかかるような、それ。音を形とした結晶剣で、こんな光など認めぬと次々に切り払うも) オリヴェール!!!(叫んだ。眼の前からは闇色の刃。怒涛の暗黒魔術に文字通り手を取られ、彼に迫る呪術を止めるなど叶わない) (倒れ伏す、彼。被弾覚悟で駆け寄ろうか、一瞬迷うも…いつもの彼とも違う、強い、声。ああ、そんな音色を放たれては) 征け!!君を、君の生命を!取り戻すために!!!(翡翠色の結晶剣を、呪術師に向けて突き出すように構え) (共鳴。旋律が、強く、勁く、剛く。鳴る。そして結晶剣が、輝く。緑色の、爽やかな一迅の風が如くの光が溢れ) …『此れ成るはテンペスト』!!(生まれるは竜巻。指向性を持った暴風。その嵐を構成する風は、全てが風刃) (闇の刃を木の葉のように蹴散らし、横向きに突き進む大きな竜巻が呪術師へと、その身を粉微塵に切り刻まんと) (彼を、彼の道を、少しだけでも開く。こちらへ注意を引ければ儲けもの、そうでなくとも少なくとも対処の手を割かせる…!) -- フルラ
- (不死鳥の輝きは心を失った住人を焼き払っていくが、それでも彼らは暗黒の契約により止まろうとはしない)
(そして動きがひときわ鈍いシリウスは格好の標的であり)くっ、離せ!(掴まれてしまえば離れる術を無くす) (そこに降り注ぐゼノバスの連続詠唱による暗黒魔術 硬質化した闇が、月光の矢衾が、一行を襲う 無論動けなくなったシリウスは格好の標的) (足元に群がる住人たちをどうにかしなければ逃げるすべはない だがそれには近接術が必要だ 先程のさそり座のようなただ殺すだけの術ではなく、大きく叩き伏せ吹き飛ばす術が) (ふたご座の片割れは?残念ながらボクシングは足が肝 その要の足を取り返すために術を打たねば) (では大英雄の星座では?……残念ながらシリウスの脆弱な身体は大英雄の加護を受けるには脆すぎる 自殺行為、などではない 明確な自殺だ) (観念して目を伏せ、シリウスは一つの星座を描く)これに頼りたくはなかったんだが……!(しし座に似た、しかしその鬣は炎のよう) 兄上、力をお借りします Leo Floga(それは少なくともミネラの星図にはない星座 しかししっかりと形を成し、星光が燃え上がる) (燃え上がる獅子に手を突っ込めば、そこから大剣が生じる シリウスの身の丈に迫るほどの大剣が)でぇ、いやぁぁっ!!(足に絡みついた暗黒の眷属を切り払えば、炎が上がり他の接近を阻む) (闇の刃に対して振りかざせば、その勢いで月光の矢をも弾く)ふーっ……戦技科の科目取っておいてよかった……!(身体は悲鳴を上げるが、それでも未だ大きな支障はなく) (ゼノバスが放った術がオリヴェールの心臓を鷲掴みにしても、無事だと信じる だからすべきことは一つ)この身に変えても道は切り開きます……!(慣れない大剣技 それでも届かせて見せる 借り受けた思いとともに、燃える大剣を振り下ろし迫った) -- シリウス
- 第二幕
- 檻の如き魔力の光芒。対物銃の如き暴威を齎す土魔術の極致。
旋律で操られた、巨獣の如き風の大爪。 君たちの攻撃で、小屋はあっさりと崩れ去る。 崩壊の混乱の中、 蠍の尾の如きシリウスの指先が、致命の一撃としてテオドアを貫いたかに思えた。 しかし。シリウスは気付くと、一行の元へと放り投げられてしまっていた。 一拍の静けさの後。 瓦礫を跳ね上げるようにして飛び出した人影がひとつ。 身を汚した土埃を払いながら、呪術師は住処だったものの上へと降り立つ。 襤褸衣のような漆黒のローブを纏った、痩せぎすの美丈夫だ。 外見的特徴から種族はヒューマンのようだが、どこか妖しげな、年齢不詳の雰囲気を醸し出している。 『ごきげんよう、オリヴェール殿下。もう余命幾ばくも無いというのに、随分無理をしておられる』 『ああ、用件はおっしゃらなくて結構』 切れた唇から垂れる血を拭いながら、呪術師は老獪に、そして童のように嘲笑(わら)った。 『それにしても手癖の悪い学友をお持ちだ――蠍の毒は本当に危ない』 『……ほう。バルター殿下に、ファウゼン師まで連れていらっしゃったか』 『私は実に不利、というわけだ。重畳、重畳――』 男がぱんぱんと手を鳴らすと、消音の術式の効力下だというのに、集落中の住民がわらわらと集まってくる。 その瞳は正気ではない――いや、君たちには本能的に、直感的に、原初的に分かってしまう。 彼らは既に悪神の眷属として闇に堕ちている。 住民がめいめいの凶器を――大半は農具を、あるいは包丁を、歪に伸びた爪を。 暴力的に振りかざしながら、猛然と襲い掛かってくる。 呪術師はその背後で、指揮者の如く優雅に一礼した。 『では、甘き夜を始めましょう』 周囲が、徐々に、徐々に暗くなってゆく。 『太陽食み』。君たちはその二つ名の意味を思い知る。 太陽は黒々とした何かに覆われ、夜明けは漆黒の闇夜へと姿を変えた。 --
- 住民は助からないものと思って対応を。まずはこの軍勢を突破する。手伝ってほしい。
(オリヴェールは極めて端的に、また冷徹に指示を下す) (短く詠唱すると、光り輝く竜の鱗の如き薄片が周囲を取り巻いた。最高位の防御術式、『竜の光鱗』) (続いてミスリルの刃を振るえば、魔力の波濤が吹き荒れて迫りくる住民たちの前衛を割り散らす) (その間隙を逃すまいと走る) -- オリヴェール
- まさか……そんな!(住人がこちらに集まってくるのを見れば、ああ、理解した。彼らはもう…人界の者では、ない)
趣味が…ほんっっとうに悪いね!!そんなんじゃ客の一人もつかないよ!!(頭にくる。特に指揮者めいた男のその礼にだ) 大人しくあんたのオーケストラの聴衆になるつもりは…ないっ!(音叉剣を横に構えれば、そこから…風の音に似た、吹きすさぶような旋律が) 『Eolice in corsa』(その旋律に呼応して音叉剣を包み込むようにして、音という存在を物質化した緑色をした結晶が成長していく) (翡翠のような色と艶をもった、それ。結晶剣と化したそれを振りかざし、オリヴェールが蹴散らした前衛の穴を広げるべく、刃を振るい突っ込んでいく) -- フルラ
- うーむ…コイツがヴァーさんの言ってたやつ…?
なんともまぁ…(何事かを言いかけたが周囲に集まってきた住人を見やり) っと、話す暇も無いか…(静かに槍を構えた後、その射程内に入る者達の首元めがけ容赦なく突きを入れ込む) 悪いね、加減はしないよ。俺は (オリヴェールの忠告を受けずとも、武器を持って来るのならば彼は相手が子供だろうと躊躇わず殺すだろう) -- ジン
- (蠍の毒針は標的を仕留めんと寸前まで迫った が)うぐっ!?(跳ね上げられるように投げ飛ばされていた 貫いたという偽の感触を残し)
得体の知れない術……踏み込みすぎたか(身体の弱い貴公子が暗殺者の真似事などするものではない ヨロヨロと立ち上がりながらメガネを直す) (そして、テオドアの手拍子に現れる周辺住人たちに苦い顔をする)……他人を支配し操る力。どう裏返しても善神と立ち位置を同一にするとは思い難いが(暗黒神ゼノバスの祝福を受けた男にディノクとのやり取りを思い返す が、今は眼前に集中すべき) なら更に前方を切り開きましょう(ざっと描いたのは翼を開いた鳥の星座) Phoenix(星明かりに燃え上がる不死鳥の星座がオリヴェールの切り開いた道を更に焼き払い進む道を作る テオドアの首へ迫る道を) -- シリウス
- …当然だがノエ君が使うものとは練度が違うな…!
(あまりにも美しく、凄絶な殺意に満ちた石の槍の射出を見届けて感嘆する) (シリウスが自分の意図を組んだ動きをしている事に頼もしさを感じ) …シリウス先輩!(投げ返された。動きを見て思わず声をかけ) きちんと名前を憶えているとは褒めてやりたい所だが…元暗部にしては悪辣さが足りないな (闇の信徒と化した住民を見据えて溜息を吐き) もうちょっとこう、ないのかね。助けを求めて寄ってきた所で自爆させるとか。 (夜と化した空に一瞬目をやり。内心厄介だなとその力量に舌打ちしつつも。) 暗幕を張る裏方としては一流だが、作家としては二流だな。これではただの掃除だろう
(4本の短杖がバルターの周囲に戻り、固定砲台として前進するオリヴェールに向かう村人を優先して狙い撃ちし。) (指を弾けば、魔弾が数十、数百と数を増やしていく。そして掃射。容赦なく闇に染まった村人を穿っていく。) -- バルター
- 既に術中、でしたかーぁ……余り気分のいい物ではありませんよーぉ、これは…(ゆっくり歩みながらも喋る…だけではない)
全てを救おう、とはなさいませんかぁ……ふふ、唾棄すべき英雄願望などではなく、安心しましたよーぉ… (オリヴェールを追おうとする住人を優先的に、先ほどの石の槍にて狙撃。足さえ狙えば後続が巻き添えで倒れるだろうと) 犠牲なくして得られる成果は、大したものではないですからねーぇ……しかしぃ、日蝕まで引き起こすとはぁ…予想外でしたねぇ…これはー…(素直に感心した様子で、杖を一振り。周囲を取り巻いていた水晶が分離し、上空へと) へーぇ……あれはあれは…(フルラの剣に目を細めつつも、次の術を行使)殿下の邪魔はさせませんからねーぇ(右側の一団に火、土、光の3属性を束ねた範囲魔法を) (左側の一団に水、風、闇の3属性を束ねた範囲魔法を。それでいて必要以上の破壊は行わぬように、味方の進路を狭めまいと) -- マルレーネ
- 第一幕
- 空に下弦の月の輝く夜明け前。
首都アルミネラから馬で数時間走った場所から、街道を迂回して森に入る。 鬱蒼とした叢を抜けると、小規模な集落の裏手に着いた。 一行はは移動に際して隠密の結界を張っている。 テオドアによって暗殺防止の、広域感知の術式が張られている中ですら。その外縁部では獣一匹分の気配としか映らない。 『禁書庫で暗殺用の隠密術式を盗み見たんだ』とはオリヴェールの言である。 現代で使う者はそうおらず、こちらが攻撃に出る瞬間までは大丈夫だろう、とのことである。 幾つかある建物のうち、ひと際静まり返った粗末な小屋。 暗黒のゼノバスを狂信する呪術師、『太陽食み』テオドアはその小屋に潜んでいるという話だった。 『ご案内はここまでです』 『オリヴェール様、ご学友の方々……ご武運を』 一行を先導していた執事、クラウス・ハーゼンバインが優雅に一礼して闇へと消える。 これが戦闘前の最後のタイミングだ。 心の準備を整えたまえ。 --
- 呼吸が整ったら教えてくれ。皆の気持ちが整い次第、仕掛ける。
(予め泥を塗って乾かし、艶を消したミスリルの短剣を携えて、オリヴェールは緊張した面持ちで囁く) -- オリヴェール
- 姿隠しの術もありますよ。必要な人はこちらに Chamaeleon(尾の長い爬虫類の星座がシリウスの姿を背景に覆い隠していく)
音は立てられない故、少し出遅れそうな事をご容赦を(迷彩効果を持つ星座魔術だが、音までは隠せない) -- シリウス
- (祈りの言葉をなげかける執事にひらりと手を振って感謝を返せば、音叉剣を下ろしその手に握る)
……私はいつでも。消音の魔術のタイミングには注意しないとね。なんせ、私の魔術はこういうコトには相性がちと悪い。 (言いつつも、表情を引き締め、心の弦を張る。調律は充分だ。心せよ、この一戦には彼の生命そのものがかかっているのだから) -- フルラ
- (オリヴェールの短剣を見て眼を細める)
短杖の展開は戦闘開始してからの方がよさそうですね。 (風の精霊で消音させる事も考えつつ。準備は出来ていると頷く) -- バルター
- よくもまぁ、こーんな結界を…ということは、下手な干渉は無用ですねーぇ(術式自体を無効化すれば、対象に気取られる可能性が高そうだ)
えぇ、先導有難うございましたーぁ 吉報をお待ちしていてくださいねーぇ…?(執事へとそう返し…改めて小屋を見る) ん……皆さんの準備が整いましたらぁ、いつでも。 ボクはそれに合わせますのでぇ…(杖を手にしている以外、普段と何も変わらぬ様子で頷いた) -- マルレーネ
- 私が張る消音の術式は、『外に音を漏らさない』タイプだ。
フルラの魔術は存分に行使できるはずだよ。 (補足もそこそこに、皆の意志を確認すると) では、行こう(3,2,1……と指でサインを送り、オリヴェールは一息に結界を展開した) (魔道具の補助もあり、それは無詠唱ながら確実に効力を発揮し、周辺の霊的な場を制圧してゆく――) -- オリヴェール
- ほの白んだ薄明けの日差しに、粗末な小屋がひとつ見えている。
集落の外れ、衆目を避けるように建てられた木製の、今にも崩れそうなあばら家だ。 拡張聴覚、熱源視覚、その他君たちが用いるだろう感知手段はいずれも、 小屋の内部にいるのはベッドに横たわっている一人だけだと示している。 転移妨害、そして集落の民間人に気付かれないようにする消音の結界があばら屋を飲み込むと同時に、 ベッドに寝転んでいた人影が跳ね上がるように起き上がった。 奇襲にはギリギリのタイミングだ。戦局を有利に運ぼうとするなら、躊躇わず攻撃を行うべきだろう。 --
- 小屋ごと攻撃を!
(オリヴェールが短く叫ぶ) -- オリヴェール
- 短杖・起動
(4本の短杖の調子を確かめるように展開する。) (即座に小屋の周囲に飛び、窓から、ドアを貫いて。屋根を貫いて。逃げ道を塞ぐように4本の光条が走る!) (他のメンバーの攻撃を当てるための牽制の意味合いが強い。オリヴェールの言葉に即反応して放った、速度重視の牽制。光の檻である。) -- バルター
- 流石ですねーぇ……肝心の対象を視認できないのがぁ、少々厄介ですがー…(左目を瞑り…)嗚呼、そこですかーぁ。
(予備動作なし。ベッドから起きた人影を壁ごと穿つように放たれる何か…それは地属性の基本魔法、石の槍だ) (が、それを肉眼で捉えられる者が居たなら分かるだろう 空気抵抗を極限まで減らす為の滑らかな流線形。回転しながら描く軌道…そして何より、衝撃波を引き連れての超音速と、それに耐えうる強度) (射出の音よりも先に着弾が訪れるそれは、この世界には存在しない狙撃銃の如し 一点だけを正確に狙う一撃) -- マルレーネ
- (しっかりと消音の魔術がかかったのを確認したのち、吹き抜ける風のような旋律が小屋を包むように響く。音叉剣が共鳴し、その音色が強く、濃くなる)
『風よ、風よ、岩さえも割れ』!(まるで見上げるような巨大な獣が、その人一人など容易に押しつぶす掌に備えた、五指の爪) (仮に攻撃を察知され、ベッドから移動しようとも痛撃を与えるべく、鋭い風刃で作られた大きな爪が、ぐわ、と伸びる) (そして、ちっぽけな小屋など五つに割ってしまうような、縦に奔る幅広い風の大爪が、五本、振り下ろされるように放たれた) -- フルラ
- (バルターの輝く短杖が小屋へ飛び込んだのを確認し、迷彩により姿を隠したシリウスは至近へと忍び寄る)
(バルターの術が牽制であることを空気で感じ、重い一撃を見舞うべく必殺の間合いへ 空気が荒れた瞬間こそ、密やかに事を進められる) (マルレーネの石槍が音を超えて飛び込んだ瞬間を狙い定め)Scopius(ごく小さく、燃える心臓を持つ蠍を描いた) (次の瞬間、シリウスの指先は毒の尾針と化し、テオドアへと迫るだろう 刺されば猛毒を成す神話の毒針) -- シリウス
- 序幕
- 首都アルミネラ、城壁外。
君たちは申し合わせた通りに、夜闇に紛れて集合した。 この時間の集合となったのは、第一皇子派、第二皇子派に知られ妨害を受けないよう、呪術師の暗殺は秘密裏かつ電撃的に行う必要があったためだ。 集合場所の傍らには人数分の馬が繋がれている。 『今から出発すれば、夜明け頃には着く算段です』 案内役を務める、オリヴェールの数少ない信頼できる従者の一人。 隠密行動と情報収集に長けた執事、クラウス・ハーゼンバインが説明する。 暗闇で分かりにくいが、オリヴェールの顔色は悪い。ここ数日で急激に容態が悪化したようだった。 メンバーと作戦の確認が済み次第、出来るだけ早く出発すべきだろう。 --
- やあ、みんな。集まってくれて嬉しいよ。
(オリヴェールはそう言って微笑する。忍び寄る死の翳りを夜の暗闇に紛れさせながら) (強い咳止めか何かを服用しているのか、話し声には澱みが無い。――どこか弱弱しい響きはあるが) 作戦を確認しておこう。といっても簡単だ。 今から出発して、夜明けには呪術師の潜む集落に着く。 相手がゼノバス神の信徒なのもあり、太陽の上り始める頃が時の利がよいだろう。 森を抜けて彼の潜む小屋の裏手まで近づき、消音と転移妨害の結界を張ると同時に奇襲をかける。 集落の民間人に被害が及ぶ前に、すみやかにこれを殺害する。 ――止めを私が刺すのが絶対条件だが。 標的の呪術師、『太陽食み』テオドアは生死問わずの手配犯だ。 これを殺すことに一切の法的問題は無いので安心して欲しい。 ……こんなところかな。質問があれば聞こう。 -- オリヴェール
- 暗殺者を暗殺しかえす。ゼイムの暗闘も極まってますね……いえ、今回は先輩の命がかかっている以上容赦の理由もないですが
質問ですが、一度はゼイム皇家に仕えながら放逐された理由が気がかりですね。仮にも悪神の呪いを持つ呪術者を紐もなく放逐とは 殺したら呪いが消えるから生かさず殺さず放逐、というところでしょうか?(口元に指を当て、謎に首をひねった) -- シリウス
- ………ちょっと危ないね。余り無理はせず。そのために私達がいるんだから(顔色の悪い学友を慮る言葉を投げ)
転移魔術を使わないのは、察知される危険性を考慮して、かな。転移に反応する魔術罠でもあっちゃおじゃんだし(と馬を横目に) ともあれやっぱり気になる所は…あちらさんの腕前かな。説明は聞いたけども…実際、どうなんだい、君の所感としては。 -- フルラ
- 兄上、だいぶ顔色が…(心配はしつつ。しかしそれ以上は言わず)
消音、転移阻害の結界の維持は…(手伝おうか…と言いたげだが飲み込み) (作戦を聞き終えて) それにしても『太陽食み』テオドアとは大物が出てきたものだね (面子的に不安はないが。と周囲のメンバー、そして最後にファウゼン師を見て頷く) -- バルター
- なるほどーぉ、それで夜襲とはならなかった訳ですねーぇ…(杖を抱いて説明に聞き入る)
相手がゼイムの大罪人とはぁ……なんとも耳の痛いお話ですよーぉ それに連なる者も、炙り出せるといいんですがねーぇ… (はふ…と欠伸を噛み殺し)条件については承知致しましたよぉ、殿下…時間との勝負、この面々であればぁ…可能でしょうねーぇ -- マルレーネ
- 放逐を兼ねてはいるのだろうが。それはそれとして、彼自身、ミネラで何らかの『仕事』がある、ということまでは掴んでいる。
(シリウスへの返答はこのようなものだった) 転移に対する妨害、あるいは転移先を偏向する仕掛けでもあったらたまらないからね。 こうしてファウゼン師を迎えてなお、正面から戦えば安心は出来ない。なるべくならその前に決着を、というのが理想だね。 (フルラに対する回答はしごく現実的なものだった。楽観は出来ない、という) 結界の維持に関しては魔道具の補助も借りるから安心して欲しい。戦闘中でも、特に意識することなく維持は出来るはずだ。 (バルターの顔色に対する指摘には苦笑が返るばかりだ) ……あらためてご協力に感謝します、ファウゼン師。貴方と肩を並べて戦えるとは、これほど心強いことはない。 (執事がオリヴェールに耳打ちする。『そろそろお時間です』と) では、少々急ぎ足だが出発しよう。補足すべき点があれば道中で話す。 -- オリヴェール
- 成る程、「仕事」ですか。それはますます見過ごすことができなくなりましたね(恐るべき陰謀をミネラでも渦巻かせようというのなら、止める他ない)
ゼイムに名高いファウゼン師もいれば、後は密やかに速やかに畳むだけでしょう。気は緩めずに、ですが(星明かりは煌々と輝くが、それを使えば明らかに目立つ 夜にあっても軌跡を自分で描く必要がある 気を張り直し出発を待つ) -- シリウス
- …君がそう分析したなら、そうなんだろうね。逆を言えば、安心しなきゃ充分勝ち目があるってことだ(なんて少し冗談めかして言う)
(だが、のんきそうな顔とは裏腹にマルレーネについても先程ある程度の話を聞いたが、彼女がいてもなお、危険は避けえない。その事実に内心気を引き締める) ああ、それじゃ…いこうか(夜闇の中…馬にまたがり、その時を待った) -- フルラ
- いえいえぇ、殿下とご学友の皆さまにはぁ…ボクの弟子がたいへんお世話になっておりますゆえにぃ…
さてぇ、それでは出遅れないよう出発いたしましょうかーぁ…(ノエ以上に小さな身で、ひょいと身軽に乗馬し) -- マルレーネ
- 君たちは闇夜に馬を走らせる。街道を利用し半日とかからない行程だが、緊張からかそれ以上の疲れを感じるかもしれない
(場面移動:第一幕へ) --
- 確かによい魔道具もありますね。いい仕事だハーゼンバイン
(とはいえ、事故があれば自分が結界維持に回る気構えくらいはしつつ馬に騎乗する) -- バルター
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