フルールでもなくグリンディでも無いフラウのお話を少しだけ †
振り返ってみれば、悲しみに浸る暇もない目まぐるしさだった と彼女は笑う。
周囲からの圧力も、学ぶべきことも数えきれないほどあった。
辛かった思い出や悲しかった思い出を挙げていたらキリが無い。
それでも、それを乗り越えてこれたのは言うまでもなく、夫と…
…学び舎での大切な思い出のお陰。随分磨り減った腕輪をそっと指で撫でる。
「なにもかもが そこには、全てがありました」
風が吹けば花弁がくるくる舞って地面に落ちる。
それにしても今日はやたらに花が舞う日だと訝しがる記者に、時間なのでと頭を下げて
「今日久々に会うんです」
ですから失礼、とチラチラ空のほうを気にしながら去っていく。
空は快晴、雲ひとつ無い青空。
5年は本当にあっという間だった。
ただ、やってきた飛空艇と…その主の顔を見ればその歳月がいかなもの思い知る。
…最も、向こうもこちらを見て随分驚いていたようだが
無理もないと、夫と顔を合わせて笑う。
巷では、淑女だなんて呼ばれていることは安全な空の旅のため、もう少し伏せておいたほうが良さそうだ。
飛空艇の中、思い出話に花を咲かせる面々を背後に窓を眺める。
聞こえてくるちょっと大げさなぐらいの笑い声に、言ったなアイツ、と苦笑いが漏れた。
真偽を問う声に振り返れば、慣れた様子で唇に指を。
「私にも立場がありますので…… しゃーなしーだな?」
かつてのように、にんまし笑顔を浮かべて鬱陶しい帽子を脱ぎ捨てる。
未だ疑っている様子の友に蹴りの一つでもくれてやろうか、と駆け出し…
フラウ・エハードのお話はまだまだ続くけれど ひとまずこれでさようなら †
ありがとうございました。
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