冒険者/0037

  • (空は蒼く蒼く、どこまでも澄み渡り透き通っていた)
    (視界に広がる港町の景色は、東国で見たものとはかなり違うが、その雰囲気は何処か似ている)
    (それは海から吹き込んでくる冷たい潮風がもたらす潮の匂いのせいかもしれない。国が違えど、海はどこまでも繋がっている)
    (桟橋の先に座り、ぷらぷらと足を遊ばせ、船を待つ少女の姿がそこにはある。その少女の白い肌には、もはや紋様は無く)
    (去年も来ていた貰い物の上着を掻き抱くようにして身を震わせる。もう冬も深まってくる頃合いだ)
    ……大体、三年、くらいか。なんだかもう何十年もこの国で過ごした気がするよ。
    (年下に見られがちだった少女の背も、僅かに伸び、痩せた細身の肢体には柔らかな肉も付き始め)
    […長かったな。東国で逃げ回って這いずり回ってた十年よか、よっぽどよ]
    (上着の襟元から覗く左胸から、すぅ、と朱い鮮やかな色の鬼の貌が浮かび上がる)
    ね。不思議なもんだね…あの頃の方がずっとずっと大変でキツかったのに、今となっちゃ少しの間に思える。
    […人間ってのァ、忘れる生き者だからな。ましてやオメーは忘れっぽいからなァ…。船の時間、忘れてねェだろうな?]
    だ、大丈夫だよ!まだ結構余裕あるし!……あ゛…船便の札、受け取るの忘れた…
    (慌てて懐から懐中時計を取り出して時間を確認。結局、東国への道行きの手配も動念に任せた少女は、しまったという顔を浮かべ)
    [馬鹿か!?だったらこんな所で遊んでねェでとっとと船着き場行ってあの坊主捕まえろや!]
    あうあ…、だ、大丈夫大丈夫、今行っても早すぎて過ぎて動念居ないだろうし…それに……"そろそろ"なんでしょ?
    (複雑な表情を浮かべ…そんなことを少女は呟く。一際冷たい風がひゅう、と桟橋を過ぎた)
    -- 2016-10-02 (日) 22:51:15
    • (白い雲が流れ行く。天気は上々、風も穏やか。良い船出日和だ)
      [チッ…それこそ忘れてろよ。余計なことばっかり覚えてやがって]
      …忘れるはずないじゃん。それに…分かっちゃうし。色々とね。
      (左胸から感じる力の流れは、今も刻一刻と弱まっているのを感じる。元々が常軌を逸した力の更に冗談のような産物)
      (その半分の力の源が無くなったのにも関わらず、今まで持ったのも奇跡的なのだ)
      楽しかったね。今まで。美味しいものもいっぱい食べたし、見たこともないものもいっぱい見たし、
      聞いたこともないようなこともいっぱい聞けた。…本当に、とても…楽しかった。
      (遠く、水平線を見て、物思いに耽る。あの小さな島国から出てみて、始めて分かったことが沢山あった)

      […そうだな。こっちに来たのァ正解だった。東国に居たままじゃ知らねぇモンばっかだったわ]
      …悲しいこともあった。胸が張り裂けそうなことも。…でもそれでも、色んな人に出会えて、言葉を交わして、
      時には刃を交えて、一緒に怒って、笑って…何もかもが、全て、大事なことだったんだと思う。
      (瞳を閉じて、様々な出来事を思い起こす。それは万華鏡のように胸の内で輝き、もう決して消えることは無いのだろう)

      [ところでよ、テメー気付いてるか?] …ん?なにが?お昼ごはんは…もう食べたよね
      (きょろきょろと、一人で辺りを見回して何かあったかと首をひねっていれば)

      […こっちに居た間、背、割と伸びたぜ。一寸ばかりだけどな。]
      (そう言えば、とそれで気付く。僅かだが僧服が小さく感じたように思えていたのは気のせいではなかったか)
      気づかなかったよ…案外、ちゃんと見てたんだね。

      [そりゃァな。何しろ俺の身体でもあったしな。…ま、今となってはそれも笑い話みてェなもんだが]
      ……ね、身体、今でも欲しい?ほら、自由になったら旅に行きたいなんて言ってたじゃない。
      (そう問われれば、鬼の貌は目を細め、少女の身体を眺め回すようにして考え込んでいたが)

      [いや…今は、いい。…結局、鬼でも人でもない俺ァお前の身体が一番で、ここが俺の世界だったんだろう]
      [それも…悪くねェ。ここまでやれただけで…御の字さ]
      (心からそう思っている声色で、静かにそう呟き)
      そっか…(少女はそれを聞いて、また遠く視線をやり、水平線を眺める)
      -- 2016-10-02 (日) 23:06:19
      • (遠く、汽笛の音がする。あれはどこへ行く船だろうか。きっと、遠い何処かなのだろう)
        あ、そうだ、今更だけどさ、あんたの名前考えたんだよ。朶鬼は違うしねぇ。

        [ホント今更だなオイ!…別にいいけどよ。なんもねぇよりかは幾分マシか。冥土の土産にゃまあまあだな」
        んーとね、あんたの名前はー…(ぽつり、と少女が呟く、胸の貌の名を)
        […いいんじゃねェの。アレだ、思ったよか収まり良いもんだな、名前があるってのは]
        (それを聞いて、少女が微笑む。良かった、などと呟いて、少し満足げにして)
        ……ありがとね。ずっとそこに居てくれて。
        (ぼそり、と静かに俯き、胸に顔を合わせるようにして少女は言った)

        [……うるせェよ。好きで居たわけじゃねェ]
        (そして、いつもの調子で、奇妙な隣人は、顔をそむけるようにして返した)
        (物心付いた頃からずっと居てくれた最初の友人にして家族、もしくは…もう一人の自分)
        (こいつが居てくれたからこそ、一人ぼっちだったけれども、孤独ではなかった)
        (今思えば、それにどんなに救われたことか、もはやそうでなかったことが考えられない程に)

        […俺が居なくなっても無茶すんじゃねェぞ。毒キノコなんか食うなよ、ただでさえ今の身体じゃ毒にゃ弱ェんだ]
        わかってるわかってる。縦に裂けても食べられない奴は食べられない。覚えてるよ。
        [野営の時は火を絶やすな。ただし獣を寄せることもあっからよく考えてやれよ。熊でも羆は火ィ怖がらねぇぞ]
        出来ればその辺りの生き物を把握しておけ、だっけ。長旅になるとずっと移動だから難しいんだよねぇ。
        [それから…](言葉は続く。日々のお小言から、益体もない笑い話や、過去に食った美味い物の話やら)
        (その様子は傍目から見れば、桟橋に座った少女が延々と独り言を呟いているようにしか見えなかったろう)
        (しかし、少女の声は変わらぬがそれに相対する太い声は、どんどんと小さく、か細くなっていく)
        それでね、そんときに鳥がばーって羽ばたいて……

        [ああ…]
        …ん?
        [……握り飯が、食いてェなァ]
        (それきり、言葉は消え。朱い鬼の貌は、ふ、と跡形もなく無くなった) -- 2016-10-02 (日) 23:20:07
      • (空は蒼く蒼く、どこまでも澄み渡り透き通っていた)
        (白い雲が流れ行く。天気は上々、風も穏やか。良い船出日和だ)
        (遠く、汽笛の音がする。あれはどこへ行く船だろうか。きっと、遠い何処かなのだろう)

         
        (しばらくのまま、少女は桟橋にじっと座り、そこに居た)
        (だが、ある時、すっくと立ち上がり、歩き出す)
        (旅路は続く、道が続く限り。時が続く限り。生きて、いる限り)
        (────命尽きる、その時まで、ずっと、ずっと) -- 2016-10-02 (日) 23:30:30
  • -- 2016-09-08 (木) 22:19:51
  • -- 2016-09-08 (木) 22:19:47
  • -- 2016-09-08 (木) 22:19:43
  • (安宿の部屋の中突如闇で出来た扉が現れ老木が一人潜り抜けてきた、扉を構築する闇が瘴気湛える物ではなく純粋な闇なのは少女への気遣いか)
    (老いた魔族は緋乃に視線を向けて)…全てが終わったようだな、成る程これは幾人かにとっての最善であった事だろう
    だが…惜しいな、またもや優れた悪意が一つ世から消え去ったか。何より…(紋様が存在しない半身を見る) -- 老いた魔物 2016-09-07 (水) 22:33:41
    • (荷物の整理などしていれば、突然現れた深淵なる闇の扉に、そこから現れる傲然たる魔。扉に気付けば一瞬だけ緊張を走らせるが)
      (しかしかつて見た魔王が纏う身を苛むような闇ではないことに、それも無用の物とすぐに分かり、ふう、と一息ついて苦笑して)
      ……魔王さん相変わらずびっくりするような出方してくるね。ああ、でも惜しむことなんてないよ、あいつは壊すことと喰らうことしか考えてなかったし出来なかった。
      もし魔王さんが新しい世界を作ったとしても…あいつはその世界さえ壊しにかかったろうからね。…ん?(と視線を受けるその肌は年頃の少女らしい白さを湛えている)
      -- 緋乃 2016-09-07 (水) 22:49:40
      • 悪い結果というモノは常に突如現れるものだからな、ならば余もまた然り。
        魔とはそういうものだ、自らの在りようのままに在るしかないからこそ魔なのだ…ならば余はその在り方を歓迎する
        無論余に歯向かうという過ちを三度犯せば許す事は無いが…それで余が滅びるならばそれも歓迎しよう、力在る者に言う事は無い
        (力こそ全てを標榜し己を上回るならば破滅であろうとも秩序に溢れた平和であろうとも肯定する、ただし負ける筈は無いが、とそう言って憚らぬ王はため息を一つ)
        力を大きく失ったようだな、余を楽しませたあの境地は酷く遠ざかったという訳だ…余はそれが何よりも惜しい -- 老いた魔物 2016-09-07 (水) 23:05:52
      • (鷹揚に語る魔の王。壊世の鬼さえも、この王にかかっては野に在るが儘の獣の一匹に過ぎぬのだろう。だからこその、王)
        滅びるのもいいなんてそういう所…枯葉にもちょっと似てるね。あの子のもだけど…やっぱ理解できないなぁ(苦笑して言う。生きること、何よりもそれを望んだ少女だからこそ)
        (そしてその言葉に、ああ、と得心する)今の私じゃ…お爺ちゃんの姿の魔王さんにもとてもとても敵わないだろうね。それはちょっと悔しいけど…
        でも、後悔なんてしてないけどね。私は…あの力を失って、それ以上に大きなものをいっぱい得たから(晴れやかな表情でそう言う少女の黒い両の瞳には強い意志がある)
        (その瞳に篭った物を老いた王は知っている。それこそはあの日、王を追い込んだ少女の瞳に宿っていた物と同じなのだから)んー、それに…(と少し考える様子を見せて)
        -- 緋乃 2016-09-07 (水) 23:26:18
      • 魔がそうであるようにそれこそが人間よ、我等は過去を見過去に生き全てを過ぎ去りしモノにする…
        それに抗い今を生き明日を見る事こそがそなた達の本質なのだからな…(故に全てに絶望をしない限りは魔を理解する事など無いのだと)
        時とそれに付随する可能性、少なくともそれら二つだけでもそなたには価値があろうな…ふむ?
        (緋乃の瞳に映る物が今も尚変わらぬ事に複雑な…それでいて何処か安心したように瞳を細めると考える緋乃に瞳で問う) -- 老いた魔物 2016-09-07 (水) 23:41:49
      • (色々と思い出すようにして、ぐ、ぱ、ぐ、ぱ、と手を握ったり開いたりしつつ、己の身体の動きを確かめるようにし)
        …鬼の力は失ったけど、あの最後に使った力は私自身の力。鬼の力を使って極限まで磨き上げた…私自身の魂の力。
        出来るかどうかはあの時のぶっつけだったし、出来たのも準備万端にして魔王さんの神殿でよっぽど追い込まれてた、ってのはあると思うけどね。
        だから…(先程まで動かしていた拳を、握り締めて老王へと突き出す。それは不遜なれど不敵で、傲慢なれど豪放で)
        私が…これからもっともっと修行して…あの時の私を越えたりできたら…今度は私が勝っちゃうかもよ?(にやり、と悪戯気に笑い言う)
        (もし叶うとしても、人の身で成し得るそれは何十年先か、余程の奇縁と奇跡に恵まれなければ不可能であろう)
        (だが、魔の時は長い。それは…彼の王にとっては明日の事でもあるのかもしれない)
        -- 緋乃 2016-09-08 (木) 00:05:11
      • そうか…(言葉少なだがその表情は確かに楽しげで、何かを思い出し懐かしさを湛えていた)
        (かつて老王はどうしようもなく過ぎゆく時の中を独り過ごした)
        (隔絶された空間の中ただただ生まれ滅び行く世界を幾度も見てきた)
        (だからこそ理解した…自らに全てを教えた者の言葉を、育ちゆく者はそれだけで素晴らしいのだと)
        そなたにはこれより目的があるだろうが…もし修行場が必要となれば余の遺跡に立ち入るが良い
        期待しているぞ(拳を交わす事は無い、だが何の気まぐれか緋乃の拳を包むようにぽんとその手を置いて)
        (踵を返し闇の扉を潜れば魔の気配だけを残し去っていった) -- 老いた魔物 2016-09-08 (木) 00:24:20
      • (手に置かれた老王の手。その手は節くれ立ちごつごつとしていて…しかしどこか、暖かさを感じ)
        あ、修行は多分ずっと続けるけど…その前に寄らせてもらうと思うよ。ちゃんとお礼言っておかなきゃな人も居るしね。
        (ちらりと荒れ寺から掘り出した大盃を横目で見る。その盃は空となり、それでもどこか不思議な雰囲気を纏わせて)
        ん、それじゃ、またね。……良い世界、作ってよね?(にしし、と無邪気に笑い老王の背を見送る)
        (その逞しき背中は広く、大きく。あらゆる過去を背負い、あらゆる存在を背負ってきた覇王の背)
        (悠久の時、余すこと無く、一欠片さえ捨てる事無く全てを背負い続けてきたその背を心へと焼き付けんと)
        (闇の扉に消えゆく偉大なる王の背を…扉が消えるまで、いつまでも見つめていたという)
        -- 緋乃 2016-09-08 (木) 00:41:49
  • -- 2016-09-07 (水) 21:44:04
  • -- 2016-09-07 (水) 21:43:59
  • -- 2016-09-07 (水) 21:43:54
  •   -- 2016-09-06 (火) 23:36:59
    • (まるで爆心地の如くな、しかし何故だか墓石だけはきちんと立っている、かつて己が住処としていた荒れ寺の跡地)
      (そこでがらがら、ばきばきと瓦が割れ、木が折れる音が響く。時折、少女の威勢のいい掛け声なども響き)
      …んっしょ!…うう…前ならこのくらい指一本でも持ち上げられたのに…。柱って意外に重かったんだ…。
      (ぶちぶちと愚痴りつつ無事な持ち物を掘り出している少女、イェチンが一度きちんと整頓し丁寧に仕舞ったのが功を奏したか)
      (汚れてはいるものの、だいたいのものは無事だった。栗の木は折れてしまっていたし、ハイエースはぽんこつになってしまったが)
      -- 2016-09-06 (火) 23:37:12
      • (日が暮れる頃には粗方のものを掘り出してまとめていたが、まだ見つからないものがあった。それはここへ来た目的の一つでもある)
        せやっ……っと(もう何枚か数えるのもやめた瓦を持ち上げればそこにあったのは不思議に中身が溢れることもなく、そしてホコリ一つ混ざっていない大きい盃)
        (照来水鑑。望むものの場所を湛える酒を飲んだ者に示す神秘の盃。あと一口分ほど残ったそれを、じ、と見つめ)
        -- 2016-09-06 (火) 23:37:24
      • (夕日を受けて煌めき、煌めきが揺らめくたびにここではない何処かを映すその酒を、ぐい、と口をつけ傾ける)
        (途端に口に広がる豊穣で、鮮烈で、優美な香り。喉を、胃の腑を焼く酒の火は心地よく)
        (そして…大地が見えた。悠久の時を湛えた大地が。また…そこには門が。彼が追い求め止まなかったものが)
        (一時、ほんの一時だけ思いを馳せる。彼方を見つめ、彼もそうしたのだろうかとその残滓を追う)
        (しかし…振り切るように視線を切ると、気合を入れ直し、発掘作業を再開した)
        -- 2016-09-06 (火) 23:37:35
  •   -- 2016-09-06 (火) 23:36:55
  •   -- 2016-09-06 (火) 23:36:51
  • ……ヒノ嬢ちゃん、あいつは…ラクソの野郎はどうだった……? (死んだのは察している。敢えて手を出さなかったのも彼の意思を尊重する為だ) -- レクトール 2016-09-05 (月) 23:15:22
    • ……随分、迷っちゃってたみたいだけど…最後は、人として行ったよ。…私達のよく知ってる、術師の兄さんとして、さ。
      (その目元は泣き腫らしたのが容易に分かるであろう様子を見せ。言葉は重く、しかし力強く言い切るそこには、どこか晴れやかさを)
      (左目は黒く、肌には紋様が無く、それだけで冒険者たちが、彼がやり遂げたことは察せられるだろう)
      -- 緋乃 2016-09-05 (月) 23:28:11
      • そう、か…… (普段のこの男ならまず緋乃に気を遣うところだが…それだけ落蘇とは懇意だったということか。緋乃の返答を噛み締めるように目を伏せて暫し沈黙した)
        ……嬢ちゃんのその姿を視るに、奴はやり遂げたってことか。ったく…救われるよりも、救う側で在りたかったのかねぇ…バカヤロウが
        (今更呪術師の選択には異を唱えない。バカヤロウの一言とて、色々な感情を飲み込んだ結果…それでも漏れずにはいられなかった行き場の無い言葉だ)
        ヒノ嬢ちゃんが無事でよかったよぃ。コリン少年の件でも一緒に戦った仲だし、嬢ちゃんの問題も把握はしていたからな
        ……ただまぁ、ラクソっちとジャッカルドを信頼してたんで静観させてもらってたわ。メンゴメンゴ (と最後にはおどけて見せた) -- レクトール 2016-09-05 (月) 23:39:57
      • ううん…、兄さんも救われたがってた。それこそ、ずっとずっと昔から。でも兄さんは…誰の手も取ることをしなかった。
        (遠く視線を彷徨わせ、少年の日の彼を思う。きっと彼の心はそこに囚われ続けていたのだ)…ほら、兄さんって捻くれ者な所あるじゃない?素直じゃないんだよ。
        (レクトールが戯ければ、口元を無理矢理にあげて冗談めかして言い)ふふ、でも鳥のおじさんが来てたら危なかったかもよ。
        あの鬼、お腹ぺっこぺこだったから焼き鳥にして食べられちゃってたかも(があぉ、などと口を大きく開いて脅すような仕草。その開いた口の左側にもかつてあった鋭い犬歯はない)
        -- 緋乃 2016-09-05 (月) 23:53:40
      • そらそうだ。子供の内は兎も角、救われたいから素直に救ってくれと言うような生き物じゃねーのよ、男ってのはな……(それはもしかしたら、自分も含めた話かもしれない)
        素直じゃないのも大抵の男はそうだ。ジャッカルドもだろぃ? (落蘇とは、お互い深い部分を曝け出すことはなかった。後悔が無いと言えば嘘になる……)
        俺ぁそんな危ないのにゃあ元々近付かねーよ。遠くから鉛玉だけしかご馳走できんね…なんつってな? そうそう、折角無事に戻って来れたんだヒノちゃんは
        ジャッカルドに元気な姿、見せてやってくれ。あいつにゃあ俺も色々と負担をかけちまったが…野郎も素直じゃないんで俺からの労いは受けてくれん
        病み上がり…いや、憑き上がり?のヒノ嬢ちゃんには悪いが、そういうのは女子が適任なんでな。頼むぞぃ? -- レクトール 2016-09-06 (火) 00:03:14
      • …そうなの?難しいねぇ男って…。ただ、随分遅くなっちゃったけど…兄さんの手を取ることはできたよ。ほんの少し繋げられただけだけど…。兄さんは、一人じゃなかった。
        (噛み締めるように言う。全ては遅すぎたのかもしれない。しかしそれに決して意味が無いことはなかったのだと、彼の最後の表情を思い起こし)
        ……って、ああ、すごい納得した…。おじさんの素直じゃなさは筋金入りだからね(レクトールが師の事を話せば、くすくすと自然な笑みを漏らして笑い)
        なんか病み上がりっぽかったのにあんな所に無理して来ちゃって…、まさか私も怒られるなんて思わなかったよ。…いや、色々皆にかけた迷惑的には当然なんだけどね?
        ともあれ、私が今生きてるのはおじさんのおかげでもあるし、そうするつもりだったし。……また怒られるかな(などと苦笑いを漏らしつつ)
        -- 緋乃 2016-09-06 (火) 00:17:03
      • そうなのよぃ。まぁヒノ嬢ちゃんも色恋がマイブームになる頃にゃあ色々苦労すると思うぜ…今の内に同じ男として謝っておこう!(※謎の代表面)
        …ジャッカルドも相変わらず無茶するなぁ。ははっ!ああ、怒られてやってくれ…若者を心配してヤキモキすんのも俺達老害の特徴なんだ…
        まぁ、意外と怒らないかもしれんけどな? どちらにせよ奴の愛情だ。形はどうあれ受け取るのが嬢ちゃんの仕事だよん -- レクトール 2016-09-06 (火) 00:33:44
      • なぜ鳥のおじさんが謝るの…?んーでもなるのかなー…(と、銀髪の少年の事などふと思い出しつつ)今は流石にあんまり考えられないけど、そういうのも…いいかもね。
        (以前は縁が無いと言わなかったであろうそんなことを言う。少女が人として生き、幸せになること、それは彼の望んだことでもあるだろうから)
        ううー…なにそれ若いのは怒られるのが仕事なのー?まあ今回の私に関してはまったくもって拒否権なんて無いってのはじゅーじゅー承知ですけども!
        …あと、愛情とか言うとそれこそおじさんが怒るよ?鳥おじさんを(今ではそれも素直に受け取れるが…リカルドは顰めっ面をしそうだと。表面的には、だが)
        -- 緋乃 2016-09-06 (火) 00:46:13
      • だからこそ、ジャッカルドがいない所でこうして話してるんじゃあないか?はっはっは! 仮に嬢ちゃんにチクられてもすっとぼけるぞ俺ぁ
        (他にもリカルドの身体について話すべきかどうか迷ったが、今する話ではないか…と思いとどまる。残った話題といえば…)
        あー……奴の墓、というか弔いはどうする? 嬢ちゃんは何かしたいのかぃ? (落蘇の葬送について緋乃の意向を尋ねた) -- レクトール 2016-09-06 (火) 00:54:39
      • (レクトールがそう言えば、懐から小さな白い袋を取り出し見せる。どこか薄汚れたその白い袋は彼が遺した白装束から作ったものであり)
        …この袋の中に、灰になった兄さんが入ってる。もう未練はなさそうだったけど…、故郷のことを気にしてたからさ。ひと目見せてあげようかなって。
        (複雑な笑みを見せ、そう言って、ふと思う)鳥おじさんも兄さんの遺灰、要るかな?兄さんも…鳥おじさんなら良いって言うだろうし。
        -- 緋乃 2016-09-06 (火) 01:06:23
      • 故郷、か……(自分の場合は出来ることなら二度と帰りたくない故郷。だが落蘇にとって故郷は帰りたくて仕方の無かった場所…)
        ……いいんじゃねーの? きっとアイツも喜ぶさ…なーんてのは勝手な俺の妄想に過ぎんがね
        (遺灰が要るか?と問われれば少し躊躇って) んー……嬢ちゃんは遺灰、ラクソっちの故郷に持ってった後どうするつもりなんだ? -- レクトール 2016-09-06 (火) 01:13:08
      • (しかし、その魂に触れた身としてはある種、故郷は彼を囚えどうしても振り切れなかった忌まわしき場所でもあることを知っている)
        (だからこれは)……そうだといいんだけどね。私がそうするってのもただの私の思いつきだし(そしてただの感傷であることも)
        私が兄さんの故郷を見てみたいってのもあるんだけどね…遠くからでも見せられたら、そこで灰は撒いて…本当に最期のお別れをするつもり。
        -- 緋乃 2016-09-06 (火) 01:22:49
      • (緋乃のこともあるので敢えて言わなかった。墓だの葬式だのは、結局死者のためじゃなく生者側のための儀式だろう? なんて捻くれた台詞は…
         だが、その気遣いは実際不要だったのだろう。彼女自身も自覚していたのだから……)
        ――いい、いいんだ。嬢ちゃんの好きにするのが一番いいさ……死人に口なし。満足に逝けた奴にゃあ選ぶ権利はねーのよ (※落蘇に厳しい)
        なるほど、最後は風任せか!なら、俺も風に流せば大丈夫そうだねぃ?
        実は極東の風習というか言い伝えで、遺骨を分ける…即ち「分骨」するとあの世で身体もバラバラになるってのを聞いてね
        まぁそれも地方によるし、今回は遺灰だけなんで問題ないかもしれんが…気になってさ。風に流すなら、いずれは一つになる…風自体が世界を巡る一つの流れだからな
        …それに、俺も落ち着いたらラクソの故郷に行くのもいいかもしれん。そこで風に流せば尚良さそうだ…頂いておくよ
        (そう結論付けて緋乃から遺灰を分けてもらうことにした。自分もいつかは燃え尽きて灰になれる…という願掛けもあったかもしれない) -- レクトール 2016-09-06 (火) 01:34:04
      • (強く言い切ったレクトールの言葉に少し、安心を覚える。彼の気遣いが身に染みる。彼はもう居ない、それはもう動かしようのない事実だ)
        (だからこそ後から残された人間が何をしようとそれは結局は彼にはもはや無関係だ。だが、それでも、そうだとしても)
        うん…ありがとう(彼の願いは、残された人間へのもの。ならばそうして気持ちの整理をつけ…生きるということも彼の願いを叶えることになるだろう)
        (一つ、レクトールへゆっくりと頷いて、小さな瓶を部屋から見繕って白い袋の灰を分けて移す)
        あー…、兄さんのところの風習は詳しくは知らないけど…、それは大丈夫だと思うよ。話し聞いてた感じ、仏様を拝んでるって訳じゃなかったからね。
        仏様を拝んでても宗派によっちゃむしろ骨を積極的に分けるって所もあるし。それに…兄さんはよく自然に感謝を捧げてた。なら、自然に帰してあげなきゃね。
        (幾度も見た彼の儀式、術を思い出し、そんなことを静かに微笑んで言って…瓶に収めた遺灰をレクトールへ手渡した)
        -- 緋乃 2016-09-06 (火) 01:51:30
      • (遺灰の瓶を受け取りつつ) そうそう、宗派っつーやつ? 東洋の宗派は色々あり過ぎて正直俺からすればよく分からんのだわ…元々信仰心とか無い身なもんで
        だからちぃと心配だっただけよ、うむ。同じ東洋人のヒノ嬢ちゃんのお墨付きがありゃあ尚更問題ねーな? …俺も、自然に還すって考えは好きだし
        そんじゃ、リカルドともよろしくやれよぃ? もしこっぴどく泣かされるようだったら俺に告げ口に来い!へっへっへ〜♪
        (などと冗談っぽく笑い、手をヒラヒラ振って帰っていくレクトールの後姿……「火」というよりもむしろ「風」に近く見えたかもしれない) -- レクトール 2016-09-06 (火) 01:59:53
  • <><><><><><><><> -- 2016-09-05 (月) 23:04:56
  • <><><><><><><><> -- 2016-09-05 (月) 23:04:51
  • <><><><><><><><> -- 2016-09-05 (月) 23:04:47
  • (上弦の月は天に高く。雲ひとつ無く闇夜に包まれた山を静かに、無慈悲に冷たい光で包み込んでいる)
    (隠れた半分は虎が喰らったのだと歌った詩人はどこの出だったか。そう表したくなる程に、半分半分の月が見下ろし)
    (月光に照らされるは辺りの地形に隠されたような盆地。そこは曲りなりにもあった細い山道からも外れ、人が寄り付くことなどない)
    (そしてそこをまるで敷布のように埋め尽くすのは紅い花)
    (彼岸花。その名が示す通り本来ならば秋の彼岸に咲くそれは異界の花ではない。しかし異形の花である)
    (この地は山に流れ込む地脈の瘤が存在する力の濃い場所。それが鬼の瘴気に当てられ満開の花を咲き誇らせ)
    (春の温かい風にゆらり揺れる大量の紅い花弁は血のように赤く、血の海がうねるよう)
    (正しく、狂い咲いたと言える異形の光景の中に、激しく息を荒げる何者かが割り込んでくる。それは紅い海を切り裂いて、進む)
    (地脈の流れを追い、より強い力を取り込まんと現れたそれは、海の真ん中まで進み…ある時、夜空を見上げて立ち止まった)
    -- 2016-09-04 (日) 15:12:29
    • (中天に見えるは濃紺の夜空を纏う淡い半ばの月 眼下に広がるは目の覚めるような紅い色 濃密な瘴気に当てられれば幻想的なこの光景も一種の地獄を思わせるほど異形めいていた)
      (男はただひたすら無言で彼岸の彼方にいる鬼を追い求める 闇夜に紛れてはいるがその縋りゆく姿はもはや人を捨て去るが如くであった)
      (白い着物から漏れ出す黒いモヤも、この瘴気に負けず劣らずのおぞましい気配を漂わせている それはまるで毒気のある液体が揮発し周囲に舞い散るように、近づく度に異形の花をじわりと枯れ散らしていった)
      (優れた鼻を持つ獣のように男は鬼を追いかけていく そして鬼の動きが止まったと同時にこちらもその足を瞬時に止めた)
      (男は黙って様子を伺い瞬きもせず目を離さない 足元の紅い色がその姿に映え、血を浴びたかのように錯覚させる) -- 落蘇 2016-09-04 (日) 15:35:11
      • (しばしの間、鬼は空を見上げていた。その瞳に映るは半月)
        (完全なる鬼でもない、ましてや人でもあり得ぬ自分の身を省みたか。それとも)
        (追ってくる気配には既に気付いている。禍々しき気を纏い、それもまた、魔とも人ともつかぬ奇妙な存在が迫り来ているのを)
        (荒い呼吸で紅に染まった大地に立ち尽くしていた鬼が視線を下ろし、白装束の男へと向けた)
        (その表情は疲れの色濃く、敵意を向ける余裕も無く、ただ男を見つめるその視線は、かつての少女を思い起こさせる)
        (胸の傷は完全に塞がってはいないものの、殆ど癒えかけているが、それは肉の身としてのこと)
        (力を大きく削られた鬼の気配は、男が川で見た時よりも弱々し気な物に感じるであろう)
        (しかし、鬼にも分かっている。今や追われる者となったその身が生き残るには…彼の者を倒さねばならぬと)
        -- 2016-09-04 (日) 15:52:54
      • (空に座する弓張月に思いを馳せる異形の者 対して人であった男にはそのような心の機微すらすでに無く)
        (その疲労を隠す余裕すらないのか、鬼は取り繕うことなく男と対峙した しかし底から沸き上がる諦めぬという意思が消えぬ限り、こちらも余裕など全くない)

        (男の右袖が唐突にぶわりと膨れ上がった)

        (限界まで、そして限界を通り越し破裂するように切り裂かれた白の袖から、大岩のような腕が鬼に向かう)
        (さながらそれは石岩に属する妖怪の力を具現化させた様であり、これが男の持つもう一つの力であった)
        (即ちその身に封印した様々な忌み者の力を己が身に写し戦う術である)
        (それは現在施している封印の開放にもなる為、日常では決して使われることがなかったが、今の男にその配慮はない)
        (封具であった服の右側は破れ空虚な右半身が露わになる)
        (全ての色という色を混ぜ合わせ、すでに色とも呼べぬ闇で辛うじて形作っていた人型は、今や見るも無残な土塊の異形でしかない)
        (相手との距離を瞬時に無とするほどの巨岩の腕が、躊躇なく全力で鬼を潰しにかからんと迫っていった) -- 落蘇 2016-09-04 (日) 16:20:17
      • (だが、僥倖であるとも言える。魔の気配を色濃くさせる男はそれだけ鬼に近しく大きい力を内包している)
        (ならば、男を倒し喰らうことが出来れば力を取り戻すこともできるであろう)
        (…ここが正念場だ、と、鬼は拳に力込め白装束の男を睨みつける。胸から溢れた黒血が身体に纏わりつく)
        (肉を喰らうためでなく、敵を叩き潰すでなく、生きるために…生を掴むための戦い)
        (前へ進むための、それを始めて鬼が選択した、その瞬間だった)
        (そしてその瞬間は、落蘇が異形と化した瞬間でもあった。己の黒血によく似た、とても良く似た色の右半身が顕になる)
        (同時に身体に纏わせた黒血を硬質化。水晶のようになったそれを傷付いている胸を重点的に全身に纏い黒結晶の鎧と化す)
        (今まで力任せに暴威を振るうだけであった鬼は今や護りを固める意識を持ち、大岩の腕をしかと見極め)
        (最小限の動きで、ぎりぎりまで岩腕を引きつけ円を書くように横へと逃れた)
        (どずん、と今まで鬼が居た場所を激しく打ち、重い音を立てる岩腕。地はひび割れ、その打撃の重さがよく知れる)
        (それとほぼ同時に鬼が左腕を振る。伸びた黒血より生まれるは長大な刃となった黒腕)
        (鬼を中心に鋭く、大きく振るわれた刃が、彼岸花の花弁を宙に紅く舞い散らせながら男を切り裂かんと)
        -- 2016-09-04 (日) 16:52:44
      • (自身の異形の腕が目的を捉えるに至らず、虚しく大地を穿つのみとなったのを全身で感じ取る)
        (だがしくじったという逸りは微塵もない 当たらなければ次を狙うだけだ もはや用済みとなった岩腕を舞い上がる花と共に砂塵のよう消し去りながら次の対処へと向かう)
        (男は鬼の動きを見ているようで見ていなかった 人の目がこの戦いに一体何の役に立とうか 充血した白目の中に浮かぶおぼろげな黒い瞳がゆらりと揺れた)
        (一閃、血しぶきのように舞い踊る花の中、凶悪な刃が迫り来る どこまでもどこまでも鋭いその刃に、男は右側を振るい上げた)
        (何かがぶつかり合う音が周囲に木霊する 刃物同士の鋭さに似たしかし鈍器のように重々しい音であった 男もまた長大な刃を具現化させ、黒の刃を受け止めていた)
        (それは灼熱のマグマの色をしていた ふれあう先からじゅわりとした嫌な音が耳を撫でる まさに溶岩で出来た刃であった)
        (地の属性の腕の次は火の属性を持つ刃 その放たれる熱風は男の残された人の部位を焼くことはなかったが、口元の布を剥がすようにめくれさせ半分だけの唇が顕になった)

        (その薄い唇がやおらぱかりと口開く 静かに、しかし一瞬で辺りに響き渡るような歌声が周辺一帯に波紋に放たれた 妖かしが奏でる魔曲のように、月明かりの花園の中で男は灼熱の刃を構えて歌い始める)
        (それは長い長い叫び声のようであった 旋律というには滅茶苦茶な音程であったが狂った規則性をもって歌となっていた これに効果があるのはこの音を理解できる存在、人では理解し得ない妖かしの者)
        (歌の響きは乾いた地面に染みこむ水のように鬼の全身に容赦なく溶けこむだろう どれほど外側を硬質化させようが、音の波長はその隙間をぬって内部へと侵入し内からその身を蝕み自由を失わせる事だろう)
        (妖かしの身にこそ絶大な効果をもたらす波長の歌 たくましい腕も鋭い刃も持たぬ忌み者が唯一持ち得た精神攻撃は、さながら死を知らせるバンシーのように鬼を苛ませようとしている) -- 落蘇 2016-09-04 (日) 17:33:51
      • (一瞬、鬼が顔を顰める。振るった黒刃は肉を切る事無く異常な熱に負けて沸騰するように溶け、落ちていく)
        (底が知れぬ。岩の次は火、強力なその力は少女の中で朧気に見た符を操る術ではない。何かしらの術を紡いでいる様子は見えない)
        (油断はならぬと身構えれば、今まで一言も喋らなかった男の口が開き…)
        ─────ッッ!(身を尋常ならぬ音が震わせる。さざなみのように周囲の紅い花が揺れるが、花はただ僅かに震えるのみ)
        (しかし鬼の身に届いた音は岩に染み通る振動の如く、魔性の血に染まった少女の身を震わせ、震わせ、震わせ──滅する)
        (体中が沸騰するかのような熱さに襲われる。鬼としての意識を直接揺さぶり、霧散させようと音が侵食する)
        (不味い、この呪歌は不味い)
        ███▓█─▓████──ッッッッ!!!!!!!(無理やりに身体をねじり、のけぞり、溜め…声を放つ)
        (それは静かに恐ろしく響く男の声とは対照的に、激しく音を持って破壊せんとする音の洪水)
        (そして…ただの咆哮ではない。鬼気を大量に込めたそれは、呪歌の振動と相殺しかき消して)
        (更にまた呪歌を歌わせてはならぬと、両腕を大きく弧を描き振り上げる)
        (さすれば大量の黒血が夜空へと浮かび、それが月を隠し黒い星の如く空を埋め尽くす)
        (そして黒い星は数百の黒槍となり…あらゆるを串刺しにせんと死の雨が男へと五月雨の如く降り注いだ)
        -- 2016-09-04 (日) 18:10:40
      • (声の響きは鬼の音にかき消され、見えない音が霧散された 怯んだ隙を狙おうとしたがやはり絡めて過ぎたか)
        (再び静寂が訪れた矢先に濃紺の空を覆い隠す黒が目に入る あの数では逃げようがない、ならば逃げなければよいだけ)

        (男の半分残った口元が、不敵につり上がった)

        (男はまた口を大きく広げる しかしそれは呪歌ではなく力の解放であった)
        我が身は凍てつく猛炎
        (今度は人の声、人としての力で男は立ち向かおうとしている 迫り来る力の暴力が今まさにその身体を貫かんとした瞬間、男の周りに発動された力の波動が次々に黒の雨を蒸発させていく)
        あらゆる全てを封じ滅する
        (力はとどまることを知らず広がり高まっていく かつて少女の身体の中を見る為に施した結界のように、自身と鬼を中心とした巨大な空間が形成されていく)
        (男の力を最大限に引き出す為の空間 それは静謐と荘厳に満ちた深く暗い神秘の森 異形の力を宿した男がつくり上げる空間は、どこまでも神聖な気に溢れていた)-- 落蘇 2016-09-04 (日) 18:46:51
      • (致死の雨を降らせるも、男から得体の知れぬ力の波動が広がっていく)
        (それは先程振るわれた魔の力でも、妖しの術でもない、ある種よく知った…人の、人間の力)
        (溢れんばかりに満ち、その身から解き放たれ、急速に広がる空間に取り込まれれば、それだけで鬼を浸すような気が身体を舐める)
        (あの黒雨をいとも簡単に霧散させたのも容易く理解できるその清浄な空間。直感的に理解する。危険だと)
        (自らの奥底にまだ残っている力を総動員させ、身体に纏った黒水晶へと送り込む、そして)
        ███▓▓▓─███▓█─▓████─████████▓─▓─██████───!!!!
        (吼えた。途端に、ぼ、と音ならぬ音を上げて黒い炎が燃え出し、心臓の傷が徐々に塞がっていく)
        (もはや残りの鬼気に直接火を付けて燃え上がらせているような有様ではあるが、だからこそ必死に鬼は力を振り絞り、顕す)
        (そして鬼神の黒炎が、ばちばちと男が創り出した清冽なる空間と干渉し燃やさんとせめぎ合う)
        (それにより空間に侵食されるような事はなくなったが…これで終わりではあるまいと、世界を壊す炎を纏い鬼は男を睨みつける)
        -- 2016-09-04 (日) 19:08:47
      • (変わり果てた少女の姿をその目に留めたまま、男は詠唱を繰り返す)
        (目前の鬼もまた力を蓄えていくのが判る 男はそれごと滅するつもりで言葉に力を込めていった)
        (無表情であるが余裕がある訳では決して無い 男もまたこれが最後の一撃たらんと覚悟を持って睨みつける)
        我が身、我が力、この一心を持って奉る 名も無き全てよご照覧あれ
        (空間が鬼を中心として燃やし尽くされようとしているのを、まるで我が身が燃やされるが如く感じながら、男は最後の一声を高らかに発した)

        【封忌消喪の術】

        (瞬間、全ての音が色が匂いが、吸い込まれ消し去ったように感じなくなった)
        (鬼の力を鬼の存在をその周囲全ての存在を、この世から消し去るほど圧倒的な喪失感)
        (男は鬼の力を無にしようとしていた しかしあくまで力だけであり鬼の存在は保とうとしていた)
        (男の全てを消し去ろうするほどの力を発揮しながら、男は未だ鬼をその身に封じることに固執していた)
        (もはや手段と目的は噛み合わず、本来の力は歪みねじれ、それを表すように作り上げた空間がひしゃげていく) -- 落蘇 2016-09-04 (日) 19:38:20
      • (僅かにでも隙あらば、即座に黒炎を放ち男を存在ごとこの世から消し去る心積もりであった)
        (しかし男には寸毫程の隙もなく、その気は刻々と高まっていく)
        (今身を護る力を緩めれば、次の瞬間どうなっているか分からぬと、逡巡を覚えたのは鬼の方)
        (そしてその僅かな逡巡が──鬼の命運を決めた)

        (周囲の空間がぎしり、と軋む。軋むならまだいい、その空間は男の詠唱が完成すると共にがらりとその質を変えた)
        (それは、あらゆるを失わせ尽くを滅する虚無の力。鬼神の炎と同質であり、しかし異なる力。歪んでいようとそれは強大であり)
        ███▓▓─███▓█─▓████─████████▓─▓─████───!!
        (雄叫びを上げ、それに全力で抵抗する。身体から発せられる黒炎が火やぐらのように燃え上がり、巨大な炎となる)
        (空間が炎を喰おうとすれば、畝る炎がその空間を炙り滅し、炎が空間を焼き喰おうとすれば、その空間が炎を滅し)
        (お互いがお互いを滅し失わせ消し去ろうとする力同士が激しく鬩ぎ合い、押し合い、へし合う)
        (それは鬼の周辺で小爆発のようにぶつかり合い、幾つもの虚無の孔を作り出し、それが強制的に空間を巻き込み弾け、辺りの風景がぐしゃぐしゃに歪む)
        (彼岸花の群れは鬼の頭上にあり、半月は鬼の右手の直ぐ側にあり、天に光る夜空の星々は鬼の足元に広がっている)
        (何もかもが崩れ狂った万華鏡となったその場所で……世界を壊し喰らう鬼の力は、世界に、男に、封忌師に…虚無へと還された)

        (一瞬か、一拍か、一刻か、はたまた一夜か…、しばらくの時が経ち大きく、ばきん、と何かが砕けたような音が狂った世界から響く)
        (その後に立っていたのは…烈火の如く燃え上がらせていた黒炎も、身体を鎧っていた黒水晶も、額に生やした黒角さえも失った鬼の姿)
        (外へ引き出せる力を全て使い果たした鬼は…そのまま、後ろ向きにぐらりと倒れ込み…最後の瞬間、天に輝く半月を瞳に収め、どう、と倒れる)
        (そして、その身の内にあった少女の魂は…その時、己が信じた男の力を感じ…微笑んでいた)
        -- 2016-09-04 (日) 20:17:43
      • (この場限りであるものの、今この場はありえぬ世界と化していた)
        (その術はもはや忌み者を封じるに留まらず、あらゆる全てを消し去る禁忌 それは封じる事への異常なまでの執念が生み出した外道の技であった)
        (平等に公平に厳正に全てを同一とする故郷の教えを捻じ曲げ昇華した成れの果て 本来は恥じ入るべきであるその考えを男は良しとした)
        (男が指す忌み者というのは所詮男の主観にすぎない 鬼であろうと少女であろうと封じるに値する思えばそれが全てとなるのだ)

        (独善的な思考をそのままに、倒れた音を耳にした男はゆっくりと前に進んだ その歩みは右側を引きずり時には支えを失って倒れそうになるほど不安定だったが、それでも歩みは止まることはない)
        (淡い月明かりの下、右半身を失い不完全な影法師の姿が、倒れた身体にそっと寄り添う)
        (見下ろす顔の中、ギラつく瞳孔で見つめる黒い眼差しが眼下の物体に注がれる そして右側の黒いモヤがその全身を覆い尽くすように広がり)
        (しかしぴくりと眉が跳ね上がった 男はすぐさまモヤを通してその身体の中を『視た』)
        (―ああそういえばあったな こんなものが)
        (未だ封印にしがみつく少女の存在を視ながら、男は意識を集中させ少女もろともその封印を消し去ろうとして)
        (すっと意識が消失した)

        (男の力を感じた少女ならば、まもなく次の気配にも気づくだろう 男の力が、存在が、自分のすぐ目の前にあることを)
        (ただしその姿は少女の記憶とは違う、とても幼い、十ほどの少年であった)
        (顔だけ露出している白装束は似ているが、最も違うのは右側もちゃんとあることだ 鋭い黒の両目は少女を見据え、その右手がゆっくりと少女に向けられた) -- 落蘇 2016-09-04 (日) 20:53:21
      • (そこは少女の内なる世界。周囲は空も、地も、全てが何もなく、ただ人の心、魂だけが浮かび上がる概念の世界)
        (少女はそこに立っている。自らが認識する存在の基底に従い、疲れの色濃いものの、在りし日の姿のままで)
        (その手に握られているのは仄かに輝く水色の縄…よく見れば古びた蔦のようにも見えるそれは、天まで伸びている)
        (それを握る少女の手の内側は、擦過傷塗れで、幾度も血が吹き出し、固まった跡が分かる)
        (しかし、少女はそれを放すことだけはしない。しなかった)
        (ふと。気付けば、隣に少年が居た)
        (そちらへ振り向けば見知らぬ少年の顔、しかし少女は知っている。その少年が成長した姿を知っている)
        (その瞳の黒さを、知っている)
        ……私を、消そうとしてるのかな?術師の兄さん…あはは、言いづらいな。術師の坊やって言うべきかな。
        (穏やかにさえ聞こえる声で、向けられた右手をちらりと見て言う。しかし続く視線は、その黒い瞳をひた、と見据えて)
        -- 2016-09-04 (日) 21:10:17
      • 違います
        (生真面目で堅苦しい響きを伴って、少年はそう静かに答えた)
        私は貴方の知る落蘇ではなく、私も貴方に対して何の馴染みもない
        ですが貴方の敵ではない むしろ私はあの者の敵です
        (そう言って少年の瞳は不可思議な空間の、自身の頭上に向けられた その先にいるであろう自分の醜い姿を思い浮かべ、無意識に眉根にシワを作る)
        あれは哀れな男 子供ではいられず、さりとて大人になることも出来なかった無残な道化
        あの男は己が我欲の為に貴方を殺すことも厭わない 封忌師としてこれ以上の無様な行為はあまりにも度し難い
        …故に私が現れました あのようになる前の私 人であった頃の落蘇が私 貴方に出会う前のなんのつながりもない他人です
        (少年は実に冷めた顔で小さな右手をヒノの手にかざす 自身の力をヒノに少し譲渡し傷を癒やし力を分け与える)
        本来ならばこの場に存在すること自体ありえないのですが、今のあの男は人の思考、妖かしの思考と混同した矛盾の精神 封じようと食らい、拒絶しようと求めている
        その矛盾を整理しようと私が出来上がったのです 本来の目的、あの鬼を封印し貴方を救う 実に単純で判りやすい目的であったのに -- 落蘇 2016-09-04 (日) 21:34:48
      • (若く、そして堅苦しい声で語られる言葉を聞いてきょとん、とした表情を少女は浮かべる。少年の言葉を理解しきれていないのだ)
        …ええと…今の兄さんとは違うけど、やっぱり君は兄さんだってことなのかな…?ずっとずっと昔の…故郷に居た頃の。
        (触れた手に包み込むような暖かさを感じる。常に感じていた痛みは和らぎ、傷も収まっていく)
        よく分からないけど…ありがとう。ええと…まあ、私が知らない時のだろうと、兄さんなら兄さんでいいか。うん。
        でも…君はあの兄さんを敵だって言ったけど、助けることは出来ないのかな。せめて…人として。
        (この場所から、彼のことはずっと見ていた。右半身を失い、あれだけの力を使い、もはや真っ当に命を繋ぐことは難しいだろう)
        (それでも…矛盾した、どっちとも取れない存在のまま終わるのでは…寂しすぎる)
        (先ほど少年がしかめっ面で見上げた場所を、憂いを秘めた表情で見上げる。どんなに歪んでいようと…彼は己の信じた、彼なのだから)
        -- 2016-09-04 (日) 21:50:18
      • 人として助ける? それはつまり人として死なせてあげようということでしょうか
        あの男がどのような最後を遂げようとそれはこれまでの行い、天の判断に任せるしかないでしょう
        (呆気無いほどの冷徹な言葉は、少年の年齢からは似つかわしくないものであった しかしこれが本来の落蘇という人物なのだろう)
        (だが国から放逐され、望まない結果となったが妖かしを取り込み、もはや人としての生も歩めぬ存在に成り果て)
        (それでも残された数すくない寿命を頼りに、別の生活を送ることとなった彼は、以前とは違う性質となってしまったのだろう)
        (少年の言葉の刺々しさは、そんな己を否定したい思いがにじみ出ていた 苛立ちと腹立たしさ、根底は同じ自分であるのに恥べき行為の数々、これが自分などと認めたくないという思いが、男に対して頑なに否定的になっている)
        (だがそれを踏まえて、もう終わりにしてほしいという気持ちも込められていた それは少年と、そして男自身の願いでもあるのだろう)
        (切り離し捨て去りたいと願っても、やはり所詮は同じなのだ 少年の存在は男が望んだ現象 せめてまだ正しかった過去の自分の手で終わりにさせてほしいと願った具現化だった)
        あの最後の術で更に寿命が縮まったことでしょう 馬鹿なことを もはやあの男は己の望むことすら出来はしない
        (捨て去るように言いながら、少年は水色の光を放つ縄をヒノに習うように隣でつかむ)
        さあ我々の手であの男の望みを叶えようではないですか 貴方を蝕む鬼をこの封印ごとあの男にぶつけてしまいなさい -- 落蘇 2016-09-04 (日) 22:28:05
      • (その冷徹な言葉に肩を落とす、しかしならばやることは変わらない。彼を最後まで信じ抜き、出来ることをするだけだ)
        (少年が隣で封印の縄を掴めば、重なりあう小さな手。触れ合った魂の感触が、彼の思いを伝えてくれる)
        (故郷を追われ人として求めたもの、それを叶えられず、歪み、それでも生きていた一人の男の生き様)
        (少年は、彼なのだ。彼自身が抱いていた人としての彼そのものなのだと、共鳴するように理解する)
        (少年と瞳を合わせ、こくり、と一つ頷く)
        (手に持った縄は一人では押し留めるのが精一杯だったが、皆が力を弱めてくれた今ならば)
        (一人でない、二人である今ならば)
        …皆が頑張ってくれた。グレイさん、チェル。イェチンししょー。スフェン。
        団子屋さんに、経蓮、そして虎彦に…おじさん。皆のおかげで…私はまだこうして立ってる。
        (そうすれば、ふわりと、どこからか鮮血の色をした小さな珠が舞い降りて、二人の重ねた手の上に止まった)
        ああ…ごめん忘れてた。あんたもだね。…今はなんて呼べば分からないけど、ありがとう。私の最初の友達。
        (微笑み、縄に力を込める。それは、ずず、と引き摺られ、縄には抵抗するような力が働いていた)
        (頭上に大きな赤黒い珠がいつの間にか現れている)
        (赤き月の如く浮かぶそれは朶鬼の魂、放置すればまた力を喰らい、取り戻すだろうがそうはいかない)
        (ぐい、と更に力を込める。添えられた手に少年の、力強い彼の力を感じる。鮮血の珠も、微力ながら力を貸してくれている)
        ─────どっせぇぇぇえええええいいいいい!!!!!!!!!
        (全てを、今まで生きてきた全てを込めて引っ張り、ぶん投げる。狙いはあの男)
        (甘いのが好きで皮肉屋でビビリ屋でそれでいて偉そうで、その癖どこか人寂しげで口が割と悪くて白づくめの妙な格好をした)
        (かけがえのない、あの男だ)
        -- 2016-09-04 (日) 23:02:31
      • (少女の紡ぐ人の名の数々 それを愛おしむような言葉の囁き それを少年は一種憧憬の念を込めて見つめた)
        (そして、ああだからこそと、少年はふっと頑なな表情を緩めた)
        私はかつて全ての存在に救いを求め、しかし誰一人として救う者は現れず、忌み者に蝕まれる我が身に絶望しました
        そこで諦めてしまったのが私の最大の過ち 救いはその後も現れていたのに、私は今更何をと全てをはねのけた
        だが貴方は違う もはや手遅れだった私とは違う 貴方を救おうと多くの者が手を差し伸べ、そして貴方はその手を受け入れた
        …だから、幸せになって下さい 救われた貴方が幸せになることで、報われなかった私の人生も救われるのですから

        だから必ず、必ずが元にもどしてやるからな



        (何かが自分に向かってくる 男の意識は瞬時に戻り、歓喜の声をあげて封儀の言葉を唱えた)
        (黒いモヤを最大限にまで膨れさせ、忌み者を包み込むように受け取り一瞬にしてその身に取り込む)
        (鬼の最期の断末魔も何もかも全てを飲み込み、やがてそこには風にそよぐ花の音だけが静かに漂いだした)

        (男はゆるりと顔を上げた 達成感と虚無感に満ちた表情で中天の月を仰ぎ、そしてそれを見た)
        ああ
        門が見える…
        (倒れる少女をそのままに、ゆらりゆらりと夢遊病のように男はその場を離れた)
        封ぜし白の者が一人、封儀を行い帰ってまいりました…
        (目の前に見える木製の門 かつての故郷の門がそこに見える 男は赤い花の中をふらふらとした足取りでその門を目指す)
        開けてくださいませ
        (か細い声で男は言う)
        開けてくださいませ
        (縋るように懇願する男は声をかけ続け)

        (まず、左足が崩れ去った)

        (どさりと音を立て男は倒れる もはや立つことも叶わぬ男は這いずるように左腕で身体を支え、門に向かって手を伸ばし)
        (その左腕も砂のように崩れ去った)
        ふ…ふふふふ はははは……
        (男の口から静かに笑い声が漏れだしていく)
        (判っていた 最初から判っていたのだ)
        (あの門は絶対に開かない)
        (男は笑い、笑い、笑い)
        (そして最後に、ただの泣き声に変わった) -- 落蘇 2016-09-04 (日) 23:22:20
      • (魂としての意識が途切れる直前、少女は少年の…彼の言葉をしかと聞いた)
        (それは男の後悔。そして男の決意。胸に強く染み入る言葉に、確かに頷き、少年の手を取る)
        …それでも、貴方の手を、最後に取ることができて…良かったと思う。
        私はもう幸せだよ。こうして、貴方と手を繋ぐことが…出来たんだから。
        (懐かしい、本当に懐かしいあの男の声がする。もはやそれは少年が発したものか彼が発したものか分からないけれど…)
        ……おっそいんだよ(帰ってきた。感極まるように呟いて、少女の意識は引き上げられた)

        (そして気付いた時には、夜空を見上げていた。空に見えるは半分の月。その半身を欠けさせた、無慈悲に冷たい光を注ぐ月)
        (紅い花を寝床に仰向けに倒れていた少女は、笑い声をその耳に捕らえる)
        (それは悲しい、悲しい笑い声。そちらを見れば、もはや人の姿を殆ど残さぬ男の姿があり)
        ……くっ…!(まともに動かぬ手足に活を入れ、引き摺りながら向かう)
        (笑い声が泣き声に変わったのを聞けば、悔しそうに歯噛みするも、決して止まらず)
        兄さん…!兄さん!(紅い紅い華を潰しながら男の元へたどり着けば、頭を抱え、呼びかける)
        (彼をひとりぼっちで、あの少年の日のままに死なせる訳にはいかないと、必死に、強く、強く)
        (その自分の身など省みぬ少女の姿は、少女自身も気づかぬまま、肌は白く、額の角はなく、手に伸びる爪はなく)
        (かつて左半身を覆っていた紋様は、一欠片さえ、残っていなかった)
        -- 2016-09-04 (日) 23:51:33
      • (残された無残な身体を支える少女の声を、どこか遠くで耳にしていた 痛みはないが徐々に崩壊していくのを感じながら、意識は霞のように朦朧としていく)
        (だがその言葉を聞いて安心している自分がいた ああ戻ったんだな良かったと、清々しい気持ちでその事実を喜んだ)
        (もはや故郷への未練はすでに無く、ようやく初めて純粋な気持ちで、少女に、世界に向き合えた)
        (濃紺の天を纏う上弦の月、それに照らされる少女の泣きそうな顔 それら全てを男はただただ綺麗だと思った)
        (思えば沢山のものに迷惑をかけた 自分の我欲の為に知らない内に傷つけたものもあっただろう その全てに謝罪したいが崩壊の時間はそれを待ってはくれない)
        (声を出そうとするも声帯に力がこもらない)
        (待ってくれ まだ待ってくれ まだ言いたいことがあるんだ 一言だけでいいそれだけでいいから)
        (手足のない身体を震わせ、必死の思いで少女に顔を向ける 少女がどんな顔をしているのか、今はもうぼやけたようにしか認識できない)
        (だが目の前にいる事に、男は心から安堵した 最期の最後たとえ朧げであろうと少女の顔を見ながら逝ける事に、男は心から幸せに感じる事が出来たのだ)
        ああ……緋乃
        (半ば無理やり声帯を震わせ、小さくかすれる声で落蘇は少女の名を口にし)

        生き

        (そして全てが崩れ去り、後には土に塗れ汚れきったまだ温もりのある白装束のみが残された)
        (千の忌み者をその身に封じ、全てを滅したことにより、男の望みはこうしてめでたく成就されたのである) -- 落蘇 2016-09-05 (月) 00:02:05
      • (汚れた白い布越しに伝わってくる体温はどんどんと失われていく。一刻一刻と命の残り火が消えていくのが分かる)
        (それでも少女は呼び続ける。そうすれば彼の視線がこちらへ向き、どこか晴れたような表情で見つめ、唇が何かを伝えたげに震える)
        (彼が何か言おうとしている。彼が何か口にしようとしている)
        (口を閉じ、絶対に聞き逃してはならぬと耳を澄ます)
        (聞こえるは彼岸花が微かに揺れる音のみ。それさえも邪魔だと彼に顔を近づけ、彼の全てを感じ取ろうとする)
        (聞かせてくれ、これで耳が聞こえなくなっても構わない。彼の残す言葉を聞かせてくれ)
        (かつて抱き締められた時に聞いた彼の鼓動は、もはや殆ど感じない)
        (失われていく。失われていく。しかし耐える、両目ともが黒くなったその瞳に涙が溢れ出すが、堪える)
        (涙など流す力があるのならば、その僅かな力さえも今は彼に捧げよう)
        (最後の、その瞬間まで、全身で彼を感じ取る。絶対に、絶対に彼を一人では逝かせない、と)

        (そして少女は、初めて己の名を喚ぶ小さな小さな彼の声をしかと聞き取った)
        (続く言葉は、言葉にならず、しかし確かにその続きを少女は受け取った)
        (瞬間、堪えていた涙が溢れ、どうしようもなく流れ落ちる。彼の最後の言葉を深く深く胸に刻み)

        ……落蘇。私は…生きるよ。

        (ごそり、と少女を救った男は灰になり崩れ去った。崩れ去って、しまった)
        (その白装束に残る僅かな温もりを逃すまいと強く強く少女は抱き締め、身を折り滂沱の涙を流す)
        (背を震わせ噛み殺した嗚咽が、静かに、静かに朱の海へ響いていく)
        (人となった少女は、人として生きた男をいつまでもいつまでも、月下の元、抱き締め続けていた)
        -- 2016-09-05 (月) 00:36:19
  • -- 2016-08-30 (火) 21:57:28
  • -- 2016-08-30 (火) 21:57:24
  • -- 2016-08-30 (火) 21:57:15
  • (それは、よく知った声。煙草と酒で焼けた、低く響きだらしがない…でも不思議と落ち着く、そんな声)
    ……おじさん!(振り向けばそこには師の姿。髪が白くなっているが、飽きるほど見たその姿)
    (記憶にあるより、どこかくたびれた印象を受けるが、それでもその姿を見れば、はぁ、と息をつき肩の力が抜ける)
    (今は思い通りに動けるとはいえ、知らぬ間にどうしても身体が強張っていたのを、それで自分でも知った。しかし)
    え゛っ…。い、いや積もる話は確かに色々とあるけれどー…ほ、ほら虎彦結構ヤバげだし、手当しなくちゃ、だし?
    (めったに見たことのない師のその表情に先ほどとは別の意味で緊張して目を逸らす。虎彦はそっと地面に置いた。ごめん虎彦)
    (あの顔は危い。取っておきの黄金歴時代の酒瓶をうっかり割った時に見たのと一緒だ)
    -- 2016-08-29 (月) 21:53:11
    • …だろうな、性格が簡単に直るんだったら人間苦労なんぞしねぇからな…(溜息をつくように、しかし笑顔で)
      あぁ、ちゃんと見てた。良い技だ…ついに成し遂げたな、お前も…(そこには幾分かの誇らしさも含んだ声で)
      …おっとと…あれだけ無茶しやがったのに、安心した顔で気絶しやがって…(なるべく傷に触らぬように、抱きかかえ)
      ん?あぁ、そりゃまずはこいつだ…大丈夫、外には治療できるのを連れて来てるからな…説教はその後だ(ジロリと見てから立ち去り、すぐ戻り)
      (そしてボロボロの緋乃の前に座り)…ま、やっちまった謝罪はいつでもできる。後でも聞ける…が、そのためにも挽回はしねぇといけねぇのは分かるな?
      …んじゃ、お前にとってこの状況での挽回は何になると思う?(タバコの煙を吐き、試すように聞き) -- リカルド 2016-08-29 (月) 22:23:53
      • (睨まれてびくぅ、とし長時間コースだこれ…って顔になりつつ、虎彦を連れて行く師を見送り胸を撫で下ろす)
        (いくら頑丈とはいえ生きてる方が奇跡的な無謀な特攻をした後だ、だがこの男に任せておけば、という安心感がある)
        (そうして座り込んでいる少女の前に、視線を合わせるように姿勢を低くする師。その目は…よく知っている。いつだって見た、弟子を試す目だ)
        ……私が…鬼に負けないこと。こいつを野放しにせず…頑張ってこの身体に抑え切ること(その目を見返し…凛として応えたが)
        ………出来れば、私がこいつを倒す!なんて言いたいんだけどね。他の誰でもない…私がやっちゃったことだし(そう言う少女の声は少し力無く)
        でも…絶対に逃しはしない。それが私に出来る…精一杯の挽回かな(表情には疲労の色が強く濃く見える。しかし、リカルドの瞳を見つめる少女の瞳は…折れていない)
        -- 2016-08-29 (月) 22:41:12
      • (緋乃がいう言葉を最後まで、黙って緋乃の瞳を見ながら聞き届け)
        …よし、何も間違っちゃいねぇな…安心した…それと、その物言い…まさしく俺の弟子二号だ(ニヤリと笑い)
        よし、未だに自分が倒すだの、構わないでくれっつったら…容赦しねぇところだったがな?
        …なら、後はなんとかするだけだ…おおよそ、大体の見当もついてる…師匠として、馬鹿な弟子の尻ぬぐいもしてやらねぇとな
        ま…俺の今の、出来る範囲内、だがな…(半分白髪になってる頭をボリボリとかき、両手に剣を持ち立ち上がり) -- リカルド 2016-08-29 (月) 23:05:15
      • ふふ、私は弟子ではあるけどおじさんのじゃないからね?そこんところ宜しく(笑いながら軽口を返す。死地にあってなお、笑みを作った兄弟子のように)
        …皆に、いっぱい、元気を貰ったよ。私だけだったら…冬は越えられなかったと思う(鬼の中で感じた朧気な意識、しかし確かに残る彼ら、彼女らの記憶)
        それなのに…私が、なんて口が裂けても言えないからね。なら、私は私に出来ることを、皆を信じて…やるだけ(口元を引き締め…強く思いを込めて、呟く)
        …?(剣を持ちゆらりと立つ師を、見上げれば…)……っっ!(とくん、と弱々し気に、しかし紛うこと無く鬼の心臓が鼓動を打つ。護りの術が弱まっているのだ)
        ……!(一瞬、口元が言葉を形作ろうとする。「逃げて」と。だが…、少女はそれを飲み込む。つい先程、言ったばかりではないか)
        (信じる、と)
        …や、久しぶりの、稽古、だね。鈍ってるからさ…厳しく、行っちゃって、よ(にやりと笑う。その不敵な笑みは師が浮かべるものととても良く似て)
        (意識を失い項垂れるその瞬間まで、…少女はか細く、それでも雄々しく立つ師の姿を見つめていた)
        -- 2016-08-29 (月) 23:26:08
      • つれねぇ事言ってくれるじゃねぇか…俺のたった二人しかいねぇ弟子だってのに(肩を竦めるように、普段の会話のように)
        そうだろ?お前には好かれる才能がある、それを今後も大事にしろ。お前の武の才能よりも、大事なものだ…まぁ、心配はいらんと思うがな
        …んな顔すんな、俺を誰だと思ってる…虎彦と緋乃の師匠だった男、といずれ呼ばれる男だぞ?(薄氷だのジャッカルだのより、それを誇らしげに)
        厳しくだぁ?…残念だが、俺ももう年なんでな…一撃だけだ…(最後まで軽口で、しかし安心させるような笑みのままで言ってのけ)
        (そして緋乃が意識を失った途端)…おい、こそ泥鬼…早く起きやがれ、てめぇにはでっけぇ貸しがあるんでな…(完璧に冷めた、そして怒りのこもった声で) -- リカルド 2016-08-29 (月) 23:35:27
      • (項垂れたまま、がらりと少女の身体から放たれる気配が変わる。気を読み取るリカルドならばそれは顕著に分かるだろう)
        (途端に溢れだす瘴気。結界越しでは感じられなかったであろう濃密なそれは、弱まってはいるものの並の魔物でないことはすぐに分かる)
        (根本から断たれていた左腕がまるで逆回しのように肉が盛り上がり、元通りの腕を形作る。続き右腕、腹の傷も同じく再生し)
        (そうして、ようやく少女が…いや鬼が顔をあげた。その視線から放たれるは強烈な殺意)
        (ゆっくりと立ち上がる。胸についた二つの傷はまだ癒えていない。つまりは鬼にも余力は殆ど無い)
        (身体が万全であれば、直ぐにでも飛びかかったろうが…鬼は油断無く男を睨みながら、思考する)
        (ここに来ての更なる消耗は避けたい。効率良く、目の前の障害を取り除き、この場を脱し回復をしなければならない)
        (忌々しいが…ならば、取れる手が一つ、ある)
        (この人間の身の内で、否応無しに知った…効率の良い、やり方)
        (鬼は手の平から黒血を伸ばし、ひゅん、と振り抜く。空気を切り硬質化したそれは刀)
        (幾度も形成した刃とは違い…リカルドなら気付くだろう、その長さ、太さ、厚さは少女が持っていた剛刀と同じ物)
        (そして…構える。この二年間で、それこそ男があくびが出るであろうほど見た、構えを)
        (それは異形が行う、剣の構え。虎彦のそれによく似た青眼の構え)
        (鬼気の消費を出来るだけ抑え…かつ効率よく"人を殺す"ための人の業を、鬼が操る)
        -- 2016-08-29 (月) 23:56:59
      • そうそう、そうでなくっちゃな…流石に両手なしの相手に剣ってのは恰好がつかねぇ…
        (その威容、そして瘴気の濃さにも笑ってのけるのはただの強がりではなく、かつてより恐ろしいモノと戦ったから)
        さて、鬼退治と参りますかね…ん?(ゆっくりと半身の構えを取り始めたところで眉を顰め)
        なるほどなるほど、ちったぁ頭を働かせるじゃねぇか…弱ぇなりにな?(その構え、飽きるほど見慣れたもので)
        だが、悪くはねぇ…そう、弱いものが取る手段としては上等だ…俺みてぇにな?(自分もまた、記憶があるのなら見慣れた構えであり)
        さぁ来いよ…てめぇには勿体ねぇが…1本稽古してやるからよ(右手の剣を前に構え、指先を招くように動かし) -- リカルド 2016-08-30 (火) 00:12:33
      • (その構えには理がある。鬼のままに、獣の如くに力を振るっていた時とは違い、目立った隙もない)
        (人が人を殺すために長年磨き上げてきた業。鬼自身が練り上げたものではないが、同じ身体、同じ経験を鬼は持っている)
        (ぴたり、と寸毫の振れなく男の正中線を捉える黒刀の切っ先。延長線上には男の喉元があり、威だけで切り裂かんと放たれる瘴気)
        (ならばその業も、偽りなれど真に迫り、そして)
        ███▓█─███▓███─████████▓█─▓████───ッッ!!!
        (裂帛の気合ならぬ裂帛の咆哮。振り上げる腕の切れ、前進する体運び、踏み込まれる足)
        (そのどれもが一流の剣士が持つ業の冴えを見せる。ましてや)
        (飛び込む後ろ足にて蹴られた大地が後方に吹き飛ばされるほどの蹴り足が唸る)
        (振り下ろされる黒刀の先端は雲を引き、音速を突破したことをその速さを目に捕らえられる者は知るだろう)
        (振るわれるは人の業。用いるは人外魔境。かくして放たれるは修羅の剣)
        (少女のものとは比較にならぬ羅刹さえも真っ二つにする神速の斬り落としが男へと迫る)
        -- 2016-08-30 (火) 00:33:13
      • (弟子のような構え、確かに見事ではある、模倣したにしては上出来とも言え)
        (さらに言えば圧倒的な瘴気、あるいは殺気とでもいうべきだろうか…並であれば指すら動かせぬだろう…が)
        …お似合いだぜ?てめぇには…借り物の体に、借り物の技でな(それすらも嘲笑し、嗤って見せ)
        (男は知っている、何の技を用いずに、ただ己の力を無造作に行使する。本来ただの獣にそれ以上に圧倒してくる事を)
        (男は知っている、今構えている構え、そして繰り出されるであろう太刀筋には鋭さはあっても…弟子のように、柔らかさを持ち合わせてない事も)
        なら、最後に見ていきやがれ…死にかけの男の技をな(飛び込もうとする足の動き、その時点で既に体は動いており)
        (体を反らすようにしながら右手の剣は受け流すように、無論受け流せる訳はなく、無残に押しつぶされ、右手は剣ごと砕かれ)
        (だが、それでいい…元より「使い物になってなかった右手」なんぞ、捨てるつもり。むしろ利用する気だった)
        (鬼は知らなかっただろうか、かつて弟子たちに見せた動き。上段からの一撃を枯れ葉のように避けた動きを)
        (それを再度、無傷ではなく右手が巻き込まれるようにしながら、しかしそれすらも味方につけたのだ)
        …返して貰うぞ、俺の自慢の弟子をな…死の剣・迅雷(体が回転しながら左の剣がトンと軽く左胸を突く、その直後左手にため込まれてた剣気が稲妻のように走り)
        (鬼の心臓を一瞬で射貫き、その一閃が回転し始める。それはリカルドが弟子たちの前で始めて見せた、そして最後に使った彼の技の奥義だった) -- リカルド 2016-08-30 (火) 00:52:31
      • (鬼は選択を誤った。身の保身に走り、効率など求める小賢しい考えに縋ったのが全ての過ちだった)
        (獣のままに暴虐を振るい押し切れば、弱った身の男一人、傷を負おうが仕留めることはできたかもしれない)
        (如何に速く、如何に強く、如何に鋭くあろうと、それは結局力づくの業…そしてただの模倣)
        (剛を持って豪を成す、真正面から受ければどんな物でさえ二つに分かたれたであろう鬼の剣は、ひらり舞う男の身体捉えること叶わず)
        (黒刀が音の壁を越え、衝撃波が弾ける。だがどんなに速くとも寸前で見切り、居ないものを切ることなど出来ない)
        (しかし右手は取った。いや"取らされた")
        (鬼の振り下ろしの強さが、そのまま右手に伝わり、回転する独楽のようになった男へと力を与え)
        (その力を、自分自身の物とは比べ物にならぬ強い力をそれでも制御しきり、操り、自らの剣へと伝える)
        (それは男が文字通り身を削り磨き上げた…己以上の異形に打ち勝ち、倒すための業)
        (偽物の業ではとても及ばぬ、正真正銘の…本物の業だった)
        (全ては刹那のこと。鬼の研ぎ澄まされた感覚にも、あらゆる流れを掌握したその剣には反応などできず)
        (貫かれる左胸。そこから走る剣炎が体内で竜巻のように荒ぶり全てを粉微塵にせんと荒れ狂う)
        (先に付けられた二つの傷を更に抉り開くように巻き込み広がる左胸の孔。それは心の臓を半分ほども削り)
        ▓████─██████─▓─████───!!(咆哮が上がる。それは体内をずたずたにされる痛みに思わず上げた叫び)
        (すなわちそれは、敗北の咆哮であった)

        (よろ、と、鬼の身体がよろける。だらだらと黒血が溢れる左胸を抑え、二歩、三歩と後退する)
        (落ちた血を操る余裕さえもない。今は身体の維持だけを再優先にしなければ力を霧散させてしまう危険性さえある)
        (もはや憎々しげな視線はそこにはない。そこに僅かに…ほんの僅かにだが浮かぶのは恐怖の色)
        (全てを壊し喰らい尽くすはずの鬼が……今まで浮かべたことのなかった恐怖の表情だった)
        -- 2016-08-30 (火) 01:25:31
      • (回転させられながら、それでも落ち葉のようにふわりと舞い、地面に着地をし)
        …あ゛ー痛ぇ…全く、無茶はいてぇもんだな…なぁ?(自分も激痛だが、その何倍もの痛みを襲ってる相手に)
        知らなかったか?…父親ってのはな、娘のためになると身を投げ出せるもんらしいぞ?…父親じゃ、ねぇけどな(カラカラと笑い)
        …さて、てめぇはそれ治せると思うか?そう簡単には無理だろうなぁ…何せ、捻じられた傷なんざそう簡単に解けねぇからな
        最後のトドメは…(鬼に向かって左手を振り上げ) …俺じゃねぇんだよなぁ…(だらんと下げ)
        いるんだろ…呪術師の兄ちゃんよ、出番だぜ…(酷い有様の右手をぶらつかせ、ゆっくりと近くの岩にもたれ) -- リカルド 2016-08-30 (火) 01:39:48
      • (リカルドの言葉通り、先ほど見る間に両腕を生やした鬼の再生力は胸に空いた穴には働いていない)
        (桶をひっくり返したかのような駄々と流れる黒血も、少しずつ量を減らしてはいるがなかなか止まる様子はない)
        (それでも、恐怖の色を滲ませながら鬼はだからこそ冷静さを取り戻し、男も決して少なくない傷を負っていることを観察する)
        (ここは不格好であろうと、滑稽であろうと、形振り回ってなどいられぬ)
        (だん、と地を蹴り、無様に背を向け鬼は走りだす)
        (しかしその足に存分に振るっていた溢るる剛力など無く速度も常人より早い程度)
        (石もて追われる側と成り果てた少女の形をした追儺の鬼は、闇夜の中、山の奥へと消えていった)
        -- 2016-08-30 (火) 02:06:28
  • (青年は一人、立っていた 山の中腹、瘴気満ち足る結界の前) 目には見えないけど、…こう、ある、と判るのが凄いな、決壊の強さも、瘴気の濃さも…
    (腰には大小、羽織袴姿 境界で佇み、ゆっくりと息を吸い込めば) …応っ!! (山に響き渡るような気合一声 鬼呼ぶ声) -- 虎彦 2016-08-28 (日) 12:42:31
    • (青年の力強い呼声は山へとこだまとなり響き、反射する。それを聞きつける命あるものはもはやこの山には居ない、が)
      (一つだけ、一つだけそれに応える物がこの山に居る。それは命を喰らうもの、それは腹を空かせた魔性の存在)
      (少し離れた枯れた森から、ばきばきと枯れた木が折れる音がする。それはどんどん近くなり、気付けば青年の目前に)
      (現れるは青年のよく知る…だが確実に違う、赤黒い肌を持ち、黒い角を左額に生やし、鬼と化した少女の姿)
      (その左腕は前腕部から切り取られ、貫かれた腹と左胸は焼けただれ息が上がっているものの、その目は爛々と輝いており)
      …っ、虎彦!?虎彦までこんな所に…っ!(しかし声だけはかつて知る少女の物が、するりと滑るように放たれた)
      -- 2016-08-28 (日) 13:50:05
      • 凄い重い気配だな、探らなくても読み取れる …噂では、すでに何人も挑んだと聞くけれど (暗い闇山の一点から目を外さず、一人呟き、)
        (そして、現れたその異様に眉を寄せる 異形にではない) 随分と痛そうだ、大丈夫かい、緋乃 (少女の声が出る前に、その名前を呼ぶ 眼前に立つそれに構えないのは、師の力量を信じているが故)
        ああ、久しぶり、緋乃 (驚く声を聞けば、子供の時のままの穏やかな笑顔で) こんな所、と言うけれど 妹弟子の住まいに兄弟子が尋ねておかしい事はないだろう?
        お腹は減っていないかい、その怪我はー…鬼の力があるお蔭で、保っている感じかな 寝る時には温かくしてる? (いつも通りの様子で尋ねて) …意識が無いと聞いたけれど、今は…? -- 虎彦 2016-08-28 (日) 16:09:02
      • あ…うんおかしくはないけど…いやっ…そういうことじゃなくてっ…、お腹は減ってるし痛くはないけどっ…えっとっ…!
        (いつものように、稽古で顔を合わせた時のように語りかけてくる兄弟子、それにほんの僅か喜びを滲ませるも)
        (続く少女の声は焦燥の色が濃く)ちょっと前に…皆が鬼を弱らせてくれたから、少しだけ…私は私で居られてる…。
        けど…そこの結界からこっち来ちゃ駄目だからね?鬼もその先に手が出ないのは分かってるから今は大人しくしてるみたいだから…。
        (その言葉通りに、表情こそ少女の物だが、その手は黒い爪を鉤爪のように構え、少しでも油断あれば青年を抉らんとしている)
        (傷付いた鬼は…欲しているのだ。自らを癒すための鮮血と、新鮮な肉を)
        -- 2016-08-28 (日) 16:32:37
      • だろう? (慌てる様子を見ながらちょっとだけ笑って見せる そして、羽織の袂から笹の葉で包んだ握り飯を取り出して)
        お腹に穴が開いてるんじゃあ、食べても零れるかな…うーむ、でもまあ、ないよりはマシだろう (ぽん、と手の中で軽く包みを跳ねさせ、一声かけてから緋乃に放って渡した)
        そうか、皆が…師匠や老師、それに、ササキさん達も君に会いに来たと聞くよ すまないね、兄弟子が後発になってしまって (頭を掻いて眉を下げてから、小さく頷き)
        本当は、緋乃が起きていなかったら起こすために色々考えていたのだけれど その為なら、結界の中に入って鬼と手を合わせてみようと思っていたのだけれど …驚いたよ、嬉しい驚きだ
        … … (表情と違い殺意をみなぎらせる姿勢を眺めてから、穏やかな声で) 動念法師と会ったよ、緋乃 とても心配していた …君はもう会えたかい? -- 虎彦 2016-08-28 (日) 16:41:44
      • (投げ渡された握り飯を黒い爪の伸びた手が中空で奪い去るように取り、そのまま頬張る。完全な空きっ腹よりはましと判断した鬼と)
        んっ、んっ…、ぷはぁっ…おいしい…(兄弟子の手ずからの土産を無駄にはせんとした少女の奇妙な二人羽織。久方ぶりのまともな飯を食えば僅かに微笑みも浮かび)
        うん…皆に色々迷惑かけちゃって…虎彦も、ごめんね。心配かけちゃったかな(と、少し申し訳無さそうな表情を浮かべていたが…)
        …えっ!?なんで虎彦があいつの名前っ、って会った!?えっえっ、生きてたのあいつっ!?マジでっ!?
        (少女にとっては懐かしい、十年ぶりに聞くその名、そして知る由もない事実に驚きの声をあげる)
        -- 2016-08-28 (日) 16:54:55
      • うん、良かった 具も、前に緋乃が好きだって言ってたのを思い出して入れておいたよ …水筒にみそ汁も入れて来たけど、流石に飲めないかな? なあ、鬼よ、食われてやるわけにはいかないが、食わせてやる事は出来るぞ
        (少女を眺めながらもう一つの荒魂に声を投げる) …元々は仲良くやっていたんだ、そうなっても、利害一致すれば動いてくれるものなんだね ゆっくりお食べ、喉に詰まるよ
        ああ、心配した 師匠も、老師も、緋乃の友達も、勿論僕も …でも、迷惑じゃない、迷惑ならこうして会いに来ない (厳しい声から、すぐに穏やかな声に戻り、だろう?と首を傾げて返す) だから、そこは気にしないで良いんだよ、緋乃
        うん? ああ、会ったよ 物を借りて、一緒に荒れ寺の墓石を立て直して、お経も上げて貰った 良い人かどうかは分からないけれど、君を心配していたように見えたよ …まだ会えていないのは、闘う術がないからなのか、もう一枚何かあるのか…
        (人相を思い出しながらそれを伝え、) その袈裟も、法師からもらったんだってね 少し、話を聞いたよ -- 虎彦 2016-08-28 (日) 17:09:20
      • (しかし当たり前だが…ただの握り飯では焼け石に水どころか鬼にとっては霞を吸ったにも等しく、傷が僅かにでも癒えることはなく)
        (それが鬼に取って苛立ちを覚えさせる。瑞々しい美味そうな肉があるというのに、手を出せず、このような無駄な物さえ喰おうとすることになるとは、と)
        …ごめん、ありがとう(その穏やかな声に安心する。どこまでも真っ直ぐ、そして頼れる兄弟子の言葉は、じわりと少女の心に染み入り)
        (伝わった人相を古ぼけてしまった記憶を合わせれば、それは確かに十数年前に一夜を共に過ごした男のもので)
        ……そっか。あいつ…生きてたんだ。うん、大分ボロボロになっちゃったけど…この服はあいつに貰ったんだよ。生きて…こんな、西の果てまで…。
        (繕うことさえ出来ず、一季節を山の中で過ごし、幾度かの戦いを繰り広げた僧服は色々な箇所に穴があき、もはやボロ布を纏っているに等しい)
        (その事実に胸が暖かくなる思いだったが…苛立ちを感じ始めた鬼は、少女が希望を得て、力をつけることを恐れだす)
        んっ…(どくん、と傷付いた心臓が跳ね、瘴気が身体から溢れだす。鬼が力を強め、少女を抑えこもうとしているのだ)
        -- 2016-08-28 (日) 17:30:39
      • (鬼の苛立ちを知ってか知らずか、青年はもう一歩結界に近づく 爪先がかかる寸前) 鬼よ、すまないね 兎でも狩ってこようかと思ったが、流石に緋乃の口に生肉を与えるのははばかられてね
        うん、謝るよりも、お礼の方が皆喜ぶ よく頑張ってるね、偉いよ、緋乃 (労わり、微笑んで見せる 時間や余裕の有無は分からないけれど、あえて、いつも通りに)
        うん、そうか …そうだよ、緋乃に会いに来たんだと思う 何年も会えていなくても、こうして、緋乃が危ない時に、ちゃんと来てくれたんだ …君を心配してくれる人が、ほら、また一人増えた
        (そして、会話の途中に始まる異変を見れば、) 緋乃、教えてくれるかい …君は、 (真っ直ぐに目を見て、問うのは) 君は、鬼をどうしたい? …鬼と、どうなりたい 君の意志を、口にするんだ -- 虎彦 2016-08-28 (日) 17:57:16
      • (どくり、どくりと鼓動がするたびに瘴気はだんだんと強まり、それに比例して少女の意識が薄まり出す)
        (それでも、兄弟子の言葉は…言い聞かせるようにゆっくりと、しかし力強く響くその声はしっかりと少女に届き)
        …わた、しは…私は、こい、つを倒したい。倒して、私は…私を取り戻して…生きる……そして…皆に、また、会うんだ…!
        (途切れ途切れになりながらも、強い意志を込めて言葉にする。それは己への誓いでもある。…鬼との戦いに打ち勝ち、生きるための)
        (そして、その言葉を最後に…鬼が完全に支配する身体となった少女の身体から、表情が消えた。いや、それは今や青年を忌々しげに見つめていた)
        -- 2016-08-28 (日) 18:10:41
      • … そうか (静かな声が少女の耳に届いた後、夜闇には既に、一人と一匹 対峙するその黒い表情を真正面に見つめる青年)
        少しお休み、緋乃 また目が覚めた時に、ゆっくり話をしよう …さて、次は君だ、鬼よ (見つめたまま呼び、息を吐き) …うちの妹弟子は、君を倒したいと言った 共に生きる、ではなく、倒すと
        ならば、悪いが鬼よ、僕はその意を汲む 君がどういう望みを持つかは判らないが、緋乃は大事な可愛い妹分だ (鬼の眼前でゆっくりと荷を下ろし、そして、脇差の鯉口を斬る)
        さあ、そう仁王立ちしていないで、数歩引いてくれ 結界に入れて貰おう (口の端を上げる 緋乃に見せた事のない、) 僕と言う獲物を、檻に入れてやろう (餌とも思えぬ、物騒な笑み) -- 虎彦 2016-08-28 (日) 18:50:23
      • (虎彦の肉食獣めいた獰猛な笑みを見れば、鬼もにやりと笑う。それは肉を喰らう獣の笑み。青年が浮かべたものと同質の笑み)
        (もはや少女の意志など欠片も見せぬ鬼が数歩…いや大きく下がり、枯れた森へと。そして枯死した木の幹を無事な右手でめきり、と掴めば)
        (自らの胴体の数倍程もあるそれをごそり、と根っこから引き抜き、虎彦が結界へと踏み込む瞬間を見計らい)
        (めきめきと幹が軋む音を響かせながら大上段から大木を剣と成し、大きく振りかぶって打ち落とす)
        (もし青年が結界の外へと退こうとそれごと叩き潰す、結界など関係のない豪放なる一撃が頭上から迫る)
        -- 2016-08-28 (日) 19:05:26
      • こりゃあ剛力だ ササキさんと良い勝負が出来そうだ (既に一戦交えたとも知らず、木を引っこ抜く姿を眺める)
        (青年の足取りは常時と変わらず 一歩、二歩) 出鱈目なリーチだ 退いても届くか (はあ、と感心したような息とともに大上段の木を眺め)
        (そして、一振りで青年の姿は木に消える 潰されたように、枯れ枝の茂みに消える …しかし、それでは終わらぬ 鬼の手に感触が無い 遅れて、声)
        生木であれば、こうも切りやすくはなかっただろうけれど (ばらり、と幹から広がった枝葉が落ちる その中心に、堂々と立つ青年の姿 振り下ろされる幹から身をかわし、切り払ったのだ)
        (脇差をゆっくりと鞘に納め、とんと鬼が握る幹の上に飛び乗る) いざや (一声かけて真っ直ぐに、結界を駆け抜け鬼に続く木の一本橋を駆ける!) -- 虎彦 2016-08-28 (日) 19:24:25
      • (幹からすんでの所に身を引き、枝にも巻き込まれる事無く雄々しく立つ青年を見て鬼が笑みを深める)
        (良いだろう、土に塗れ、潰れた肉を喰う羽目にならなかったのを良しとしておこう)
        (振り下ろした大木を持つ手に力を込め、ぐい、と引き上げれば、その上を駆ける虎彦の身体が宙に浮く)
        (それと同時に切断された左腕から人間のものではあり得ぬ闇夜よりも深い黒い黒い血がずるり、と溢れ)
        (飛ぶ。体を自由に出来ぬであろう宙空にある身体を狙い、左腕から伸びた黒血が硬質化し刃と化し、黒き太刀となり)
        (刃が奔る。股下から頭頂へ、青年の身体を真っ二つにし、夜空に朱の華咲かそうと)
        -- 2016-08-28 (日) 19:38:28
      • っと、これは…っ (宙に浮く身体 体勢を崩す姿は見せないが、しかし、無防備を晒す) 腕が伸びた、いや、血を扱うのかっ!
        (息を吸う 鋭く走る血の刃を見下ろしながら、腰を捻り、) いいいやっ! (気合一閃、抜き払うは太刀 音もさせずにそれは、月影を反射して紫電尾を引く)
        (真下から襲う刃に打ち当てる抜き打ち 中空ゆえに威力は無いが、) 凍てつけ、『みずち』 (静かな声の後、鬼の左腕に異変 冷たい…)
        (それは魔術 刀が纏う冷気が目覚め、血を凍らせて砕く! 続いて、冷気が刃を伝い、襲いかかった!!) -- 虎彦 2016-08-28 (日) 19:51:37
      • (裂帛の気合と共に放たれた太刀、それは能う事無く黒太刀へと叩きつけられ、そして瞬間的に冷却され)
        (ぱきぃん、と乾いた音を立て黒太刀が砕ける。その破片はきらきらと月光を受け煌めき、あまつさえ腕を伝う)
        (チッ、と鬼は舌打ちをすれば迷いもなく右手の爪で左手を根本からずばん、と切り落とし、左腕を完全に捨てる)
        (交差する二人の影、上から叩き落とされた鬼が一瞬先に地面に落ち、左腕から溢れた血が腕を形成し…更に血が左右二本の仮腕を作り上げる)
        (鬼面六臂と化した鬼は、左側の三本の仮腕を振り上げ突進。春の陽気の中に冷気を纏い立つ太刀を警戒)
        (一本の仮腕を右から太刀へと直接抑えこむために叩きつけ、もう一本の腕を陽動の手刀とし頭へ打ち下ろし)
        (残る本命の一本を胴体を背まで一気に貫くべく気勢を込めて突きこまんとする)
        -- 2016-08-28 (日) 20:10:28
      • こらこら、今はお前の腕でもあるが、元は緋乃の腕だ あまり粗末に扱うな (振るった刀の重さで身を翻しながら、交差する青年 枯草の朽ちた土を踏み)
        何とも、阿修羅…って鬼を倒す側だろうに、罰当たりな鬼だ うん? 鬼だから罰当たりで良いのかな? (左右の腕を見れば、そんな暢気な事を言いながら、太刀の血を払うように振るい)
        (地響きが立つほどの勢いの突進を見れば、僅かに息を吸う しかし、右手の刀は、鬼の眼前で納める 鬼を警戒させた武器を、使わぬ)
        (太刀の間合いで鬼が振るった腕を掠めるように避けて身をかわし、左手が掴む脇差の柄、帯から鞘のまま抜き上げ、脳天に叩き下ろされる手刀を受け流す)
        ここ、だ…っ! (放たれる突き がら空きの胴を狙ったそれを、見開いた眼で見つめ、そして、身を捻る 突き腕が青年の胴を滑り、刃物のような鋭さで抉る、が、僅かに手応え 鎖帷子!)
        ぐう、ううっ! (一撃で弾け千切れる鎖帷子 しかし、胴はまだ、抉れるも健在! すれ違いながら左手に握った脇差に両手を添えれば、)
        うぉおおっ! (剣気を纏った一撃を、鬼の後頭部に撃ち落とす 普通の魔物、生き物であれば、昏倒するような狙い澄ました急所への一撃だが…!) -- 虎彦 2016-08-28 (日) 20:41:40
      • (殺った。そう思った。鍛え込まれたとはいえ、ただの肉の壁ならかするだけでも深く抉り、臓腑を散らす)
        (しかし着物の影には硬い感触。仕込まれた鎖帷子に左の仮碗は滑り、勢い余り体ごと深く踏み込んでしまう)
        (そして落ちる研ぎ澄ましたような気炎纏う刃の一撃、それは、体勢を崩した鬼へと確かに打撃を与えただろう)
        (それが、鬼の右側から落ちた一撃、だったなら)
        (全ては刹那のこと、いなされ流れた左の仮腕はもちろん、右の腕を回すにも遠く体勢が悪い)
        (しかし、首を回すだけであれば、大きく伸びるかつての少女に無い左額の角であれば…間に合う)
        (ぐり、と左側へ振り向くようにして黒角を合わせれば、がきん、と硬質な者同士が打ち合う硬い音が走る)
        (角は欠け、大きく刀傷を負ったものの、そのまま、振り払うように左腕を振るい、僅かに間を取る。打ち合った鬼の額に汗が滲む)
        (この武芸者も、この男も、安々と肉にはならぬ一廉の戦士。獲物として考えるは愚策、と)
        ███▓█─▓████─██████─▓─████───!!(緊張と共に一声の咆哮を上げれば、左右二本の仮腕から黒太刀を生やす)
        (そうして、ぐん、と踏み込み空気を切り裂いて四つの黒刃が青年を囲むように放たれる)
        (元の両腕は身体の前で交差し重ね合わさっており…それは青年を敵として認めた鬼が守りを固めた証拠だ)
        -- 2016-08-28 (日) 21:05:55
      • これはっ は、鬼の魂を差し出すか! (ぎし、と互いの筋が、獲物が軋む音 鬼の剛力に一瞬でも拮抗する、練り上げた人の膂力であるが)
        真正面では (振るわれる左腕を寸で避け、僅かに血を散らす腹を撫でる 皮と筋の痛みで済んでいる、破れていない) …分が、悪いかっ
        …どうした、鬼よ、人の様に焦りが見えるぞ 獲物ではないと認めたか? (帯に脇差を差しなおしながら、それでも軽口を叩いて煽る 15の頃と違う堂々とした振る舞いは、緋乃が見たなら驚くだろう)
        (そして、鬼の咆哮 びりびりと頬が震える錯覚を、奥歯を噛み締めて堪える は、と笑いを漏らし、脚の震えを自覚する 怖れと畏れである、しかしそれでも、左腰の刀を撫でれば落ち着いた)
        師匠や老師にもまだ見せていない技だ、緋乃、少し起きて見ていると良い 中々、面白いぞ! (意識はないだろうが、あえてそう、明るい声で言い放てば、青年は地を蹴って駆け出す!)
        (一歩二歩、掠める下段の左右を飛び避けて) く、うううおおおおおっ!! (それは飛燕の居合切り、左腰から伸びた紫電が走り、鬼の左刀を受け、止める!)
        (そして、避け切れない最後の右一刀、鬼の目に、黒刀が青年の肩に埋まる未来が見えた瞬間である) ギィンッ! (それが弾かれる 青年が振るっていない場所に生まれたのは、確かに、剣閃)
        虚映抜刀 …とでも名付けようかな、師匠にも名前を付けろと言われたし (五体満足のまま、青年は冷や汗流れる顔で笑ってみせる 自分が振るった剣閃と真逆の場所に剣気を放つ、青年のオリジナル)
        お前の4刀には劣るが、一驚だろう? (そこから更に踏み込めば、両腕で身を護る鬼に向けて、放つ袈裟切り、一刀二撃!) -- 虎彦 2016-08-28 (日) 21:58:45
      • (一刀は言うに及ばず、二刀は折り込み済み、三刀もこの男なら凌ぐだろう、しかし四刀は、神ならぬ人の身にて受け切るには不可能だろう)
        (それが鬼の見込みであった。万が一、死の四刀を受けたとしても、少なくない傷を負うに違いない)
        (ならばそれを残る両手で迎え撃ち、ゆるりと止めを刺すだけだ、と鬼は目論んでいた)
        (しかし、刮目して見よ。三日どころか一季節を越え顔を合わせる事なかった男子は、凄まじき成長を見せる)
        (その鋭き剣気、青年の呼び声に鬼の身の内で少女は感じた、確かに奔るその才気を)
        (一刀たりともまともに浴びることなかった青年を忌々しげな視線で睨もうとするも、そんな余裕はない)
        (目にも留まらぬ程素早く、かつ流水の如く流れるように続けて放たれる一刀、長く、長く積み重ねられた鍛錬の結晶)
        (二連撃、ではない、同時に奔る実体の刃と、水面に映る月のように、だが確かな威力を持ち放たれる虚ろの刃)
        (それに守りを固める両手を切り裂かれ、仮腕である左手は虚刃にて落ち、肉の身である右腕もぼとり、と落ちる)
        (口惜しや。口惜しや。死地にあって笑みを保ち、その身そのものが陽であると言いたげな青年に鬼は腕を犠牲にして二歩、三歩と後退する)
        (悔しいが腕と腹はともかく、心の臓を穿った傷は未だ重く、あらゆるを焼き尽くす黒炎を喚ぶのは難しい)
        (で、あれば。如何に剣の妙を持てど、腕は二本、刃も二本。今の限界ぎりぎりを持って一気に潰す)
        ███▓▓▓─███▓█─▓████─████████▓─▓─██████───!!!!
        (鬼が、高く高く吼える。両手から溢れる黒血、いや、貫かられた腹から、左胸からもどぶどぶと溢れだす大量の血が次々と鬼に纏われ)
        (四本どころではない、数えきれぬ程の黒腕がその背から生え、人の物ならぬ長さで伸び)
        (黒き光輪となって背負われたその一本一本が剛力を備え、握りこまれた手々は決して衆生を救うものではなく)
        (衆生を尽く叩き潰さんと、黒き千手と化した鬼が体ごと突き進み、ぼ、と濃密な拳の弾幕を放った)
        -- 2016-08-28 (日) 22:32:42
      • 緋乃、見たかい これも人の技だ 鬼の剛力にも克ち合う、人が練り上げてきた物だっ (駆けながら、鬼の中にある少女に声を投げる)
        膂力で負け、速度で負け、それでもこうして、種族の強弱を乗り越えて立ち合える なれば、生まれ持った優劣の無い心の強さは、尚更だ …強く心を持て、緋乃! 僕は、僕達は、君の帰りを待っている!!
        (気勢を燃え上がらせる青年は、鬼が下がった歩数の倍近づいて、声を張る) 頑張っているのも分かる、だけど、もう少しだけ踏み止まってくれ…っ (1撃でもまともに喰らえば終わってしまう緊張の中凌いだ、青年の精神と体力は削れている)
        (そこに、鬼の咆哮と共に生み出された黒腕の威容に、か弱い骨身しか持たない人間は身震いするけれど) …大丈夫だよ、緋乃 何とかなる (口の端で笑えば、心は折れず、脚は前へ!!)
        (圧し潰す黒波の様な暴虐に身を晒しながら、それでも、2撃に1撃、凌ぎ、堪え、弾かれそうになりながら、退かず 頬が弾け、肩が潰れても、目の光を止まず 左腕がひしゃげ、脇腹が裂けても、なお、前に進む!)
        (ひしゃげた左手を振るい、何かを、投げた それは、) 動念法師、より、賜った…身代わりの、珠 (口の中がぐしゃぐしゃになって、発音もままならない舌で、それでも、眠る緋乃に届けと声を放ち)
        (その珠を持ちながら、なぜ、頭陀襤褸になってまで己に使わぬか それは…) 唯、斬れば、緋乃の身体が、死ぬかもしれない …身体を斬らず、剣気だけを通すには…これしか!
        宝珠よ! 『緋乃を護れ!』 (そう叫び、珠を鬼に投げつけて、殴られてひしゃげた脚で踏み込む 折れた、が、それでも尚、血を零しながら叫ぶ!)
        うぉおおおおお!!! (守り抜いた右腕に握った脇差に力を込めれば、師に授かった剣気を込めて、全霊を込めた、一刀 鬼と緋乃の心を断ち分けんと!) -- 虎彦 2016-08-28 (日) 23:04:45
      • (黒拳が走る。青年の頬を打ちぐしゃりと音を立てる。黒拳が走る。その腹に突き刺さり肉と肉が打ち合う音を立てる)
        (黒拳が走る。決して引かず前へと突き進む足へ、だが止める事はできず。黒拳が走る。逞しい胸板を激しく打つも鼓動は止まらず)
        (黒拳が走る。筋肉の発達した肩で弾け、筋が切れた音がする。黒拳が走る。何かを持った左腕を砕くも…その手の平に握った希望は落ちず)
        (それは迷いの中にあれど昼夜を問わず、決して途切れず粛々と鍛え上げ続けられてきた青年の力)
        (折れることあれど、なおそれを糧とし更に太く強く硬く、己の心を鍛え上げ続けてきた青年の意志)
        (人が、人であり、弱く脆いものだからこそ勝ち得た…青年の馬鹿が付くほどの真っ直ぐさ)
        (だからこそ、倒すことが出来ない。ただの強い力では、叩き潰すことなどできない)
        (それが分からない鬼は黒拳を打ち出しながら強く歯噛みする)
        (何故だ、人間などとっくに何度も死ぬような暴虐の嵐を浴びて何故この男は倒れない、と)
        (だから、青年が弱々しげに放った丸い茶けた珠など、取るに足るようなものだとは思わなかった)
        (異形の思考は、この時恐れていたのだ。人の、人の持ちえる強い意志を一刻も早く潰さんと)
        (ぶあ、とその瞬間、珠が長年の歳月をかけて込められた法力を開放する。それが示す術は護りの術)
        (対象は…鬼の身の内の少女。さすれば法力は、少女を能う事無く護る。それはつまり、鬼の力からも)
        (びた、と動きが止まる鬼。そして深々と鬼の胸へ吸い込まれゆく迸る気炎を放つ青年の刃)
        (法力によって少女の体内で僅かだが、異物として認識され浮かび上がった鬼の核へそれは正確に突き刺さり…)
        (次の瞬間、千手の如く折り重なった黒腕は、その全てがばしゃり、と元の黒血に還り大地へと落ちる)
        (そして、ぼろぼろになった、兄弟子の顔を…両の瞳が見つめ)
        ……虎彦は…強いね(少女の顔で、脇差しに貫かれながらも…彼の妹弟子が、嬉しそうに呟いた)
        -- 2016-08-28 (日) 23:38:27
      • (賭けであった 鬼と緋乃が本当に別の存在であるのか 他者に使う事が出来るのか、そもそも、これが本物であるのか 全て、不確定要素しかなかった)
        (分けられなければ、緋乃を殺すことになる 相手に使えなければ満身創痍のまま犬死するところ、本物でなければただ餌になるだけであった)
        …違うよ、緋乃 …強いんじゃなくって… (こちらも、笑う ボロボロの酷い顔で、それでも、目を見て) …兄は、妹の前では、良い格好したいのさ
        (脇差をゆっくりと抜き、地面に突き立てる 二度、荒い息を吐いて、天を見上げれば) 緋乃、 (もう一度名前を呼び、目を見れば) 大丈夫、何とかなる (強く、それだけを言って)
        (そして、膝から崩れ落ちた) -- 虎彦 2016-08-29 (月) 00:05:31
      • ……兄弟なんて居なかったから…私にはよくわからないけど…(死んでいないのがおかしいくらいの重症を負い、それでも笑う兄弟子を見つめ)
        んっ(と残った右腕を使い脇差しを抜く。手足は思い通りに動き、痛みは感じない。虎彦の使ってくれた数珠が正しく機能しているのかもしれない)
        …それでも分かるよ。虎彦みたいなのは…馬鹿兄貴、って言うんだ、絶対にさ(倒れこんだ虎彦へとしゃがみ込み…)
        あはは、虎彦が言うと…なんだか本当にそう思えてくるね(彼の身体が傷まぬよう、優しく抱きしめた)
        -- 2016-08-29 (月) 00:11:35
      • いかんなぁ…兄と妹の恋愛なんて、俺は認めるつもりはねぇんだが?(激闘の後、お互い傷だらけの二人に響く声)
        (それは二人とも見知ったものであり、あるいは久方ぶりに聞いた声かもしれず)
        …んで、全くどいつもこいつも無茶やりまくりやがって…誰にそんな無茶を教わりやがった?俺は教えてねぇぞ?
        (タバコを銜えいつも通り、白髪に関しては緋乃は初めて見るだろうが、そんな様子で結界内に散歩するように入ってきたのは二人の師匠である男で)
        ま、後は任せとけ…怪我もなんとかしてやる、だから安心して見とけ(満身創痍の虎彦の頭をぽんと叩き)
        んで…弟子二号…おめぇには色々と話しがあるんだがなぁ?(ビキィッと怒り全開の顔で) -- リカルド 2016-08-29 (月) 00:21:29
      • あー…師匠… …はは、えっと、僕は、もう、この性格は治らないんじゃないかなって、思ってます… (いつも通りの口調で、いつも通りのお小言を食らえば、へにゃ、と情けない笑みを浮かべ)
        でも、師匠にも見せてない、師匠に教えて貰ってから考えた技、できましたよ… あとは、緋乃に、聞いて…下さ… (いつもの稽古の時のような会話をしようとして、しかし、師匠に頭を撫でられれば、ほっとした様子で目を閉じ)
        緋乃、 (師匠の怒り声を聞けば、) …頑張って、色々と うん… (もう大丈夫だ、と、赤子の様な無条件の安心を胸に、青年は意識を手放し、昏倒したのだった) -- 虎彦 2016-08-29 (月) 00:27:01
  • (濃くなっていく瘴気を道標に山頂を目指す面々。更に木々が少なくなり、岩が転がる山頂付近へ差し掛かれば)
    (今までとは違う種類の異様な光景に気付くだろう。辺りは地面が所々陥没し、自然に折れたのではない折れた木がぽつぽつと生えている)
    (それは鬼の八つ当たり。徐々に追い込まれ、今まさに追い詰められつつある鬼の苛立ちの現れだ)
    (荒れた地を横目に山頂へとたどり着けば、雲ひとつない夜空に、広がる星空と半分だけの月)
    (視線を下ろせば切り立った崖のような山頂が天を突かんと反り返っているその前に、見渡す限り荒れ放題の荒れ野が広がり)
    (その中央に立つ、既に獣達を散らされているのを知っている鬼…冒険者だった少女は、毒々しい赤黒い肌で相貌を釣り上げ)
    (共に飯を食べ、共に笑ったかつての友たちへ、敵意を溢れんばかりに宿した目で睨みつける)
    (両目ともが赤黒く染まったその目には情など欠片もなく、ただただ発せられるは悪しき憎悪のみ)
    ███▓▓▓─███▓█─▓████─████████▓─▓─██████───!!!!
    (耳をつんざくような言葉にならぬ咆哮を浴びせかけ、その鋭く伸びる黒い爪を肉を引き裂かんと広げた)
    -- 2016-08-27 (土) 22:16:11
    • 血を媒介に獣やらを生み出せる力を持っている…いや…カタチだけでござるかな
      (似て非なる力を持つが故に抵抗なく受け入れ、山頂の方へ…瘴気が濃くなるにつれ不思議と力が溢れるようで)
      そこかしこがボコボコになっているでござるなァ、結界の辺りで穴を掘ってみようなどとしていない所を見ると知性は低いか…
      (その存在にまだ出会っていないため、会話程度は出来るのではと…考えていたが、この様子を見るにそれは敵わないだろうと諦めつつあった)
      (やがて…少女であった鬼の存在を確認)あれが…今の緋乃殿でござるか
      (まるで単なる魔獣の如き様相に説得を諦める、ともすれば鬼は鬼で救えぬものかと考えていたが…”コレ”は救うに足りえぬ別物だ)
      ふはははは!(着物の上半身をはだけさせると真っ直ぐに向かい、手四つからの単純な力比べへと…)
      (瘴気によりこちらも、完全な正気とは言い難いのかもしれない) -- ササキ 2016-08-27 (土) 22:28:51
      • (ササキが団子を練っているだけとはとても思えぬ引き締まった体躯を露わにすればそちらへ向けて突進)
        (がっぷり四つにがしり、と手を組み合わせればぎりぎりと尋常でない力でその両手を押し込めようとする)
        (しかし鬼は知らぬが少女は知っている。その体躯は戦いのためではなく、団子のためのもの)
        (皆を笑顔にし喜ばせる甘味を作るための、ただの団子ではない、鬼団子を作りあげる…信念が形作る筋肉、だからこそ、強い)
        (最初こそ瘴気を激しく発しながらササキの体躯を押し込め、傾かせていたものの、徐々に押し返され、今度は鬼が背を折る事になる)
        (間に挟まれれば鋼鉄さえも紙のごとく千切られるであろう二つの鬼の力が、押し合い、潰し合い、鬩ぎ合う)
        (超常の力を発揮する二人の足元の地面は踏ん張りに負けてひび割れ、更に荒れていく)
        (そして、鬼の瘴気が目を瞑り眠っているかのような鬼と呼応し目覚めさせてしまったのか、ササキの力はどんどんと増し)
        (押し負けつつあるその事実に驚愕し怒りを燃え上がらせるも、敵は一人ではないと獣の理性が警告する)
        (以前の戦いで、グレイの力に固執した余りに、大きな打撃を追った経験が今の状況を目の前のもう一人の鬼へ捕らわれていると教える)
        ▓████─██████─▓─████───!!
        (叫び、折れた姿勢を利用して、反り投げの形でササキを放り投げる。凄まじい体重が鬼へと伸し掛るもそれそのものは鬼にとっては大したものではない)
        (むしろ、投げ飛ばされササキが叩きつけられた大岩がばかり、と割れたことがその威力と重さを物語っていた)
        -- 2016-08-27 (土) 23:52:26
      • (生まれ持った性質と団子を作るために繰り返し続けられた動作、戦闘のために培われた物ではないが宿るパワーの純粋量は相当なものではあった)
        (だからこそ組んでからの力押しだけであればよほどの事が無ければ負ける事はないだろうなどと甘く見ていたというのもまた事実である)
        (陽の鬼として真に目覚めていない今だからこそ、瘴気により陰の鬼としての部分が肥大がし力を増している…このままへし折ってしまえばいいのだろう)
        (手加減は無用…死にさえしなければ、手足を引き千切ったりしなければ、おおよその傷を治したりは後からどうにでもなる筈だ)
        !?
        (不意に、抵抗が消え失せる…背骨をへし折った?否、続く衝撃から少女の形をした鬼によって投げ飛ばされたことを把握する)
        ―かはぁ…っ(痛みはない、しかし圧迫により肺の中の呼気が一度に吐き出されてしまう…一時の呼吸が生み出す”間”) -- ササキ 2016-08-28 (日) 00:07:53
      • …ん…もしかしてササキさん滅ぼす気満々!?…それはそれで困るんだよね、妹に泣かれる…
        (息を吐きつつどうしたものかと思案して取り敢えず背の大剣を抜き放ち)
        キョーレンは助ける気なんだよな?…最悪、俺がササキさんを止めなきゃならなくなるかもしれんのでその時はよろしく…
        …本来、俺もあっち側なんだけどなぁ(頭を掻いた後に目を据えて己が内で心を定める「緋乃に憑りつく鬼の身を斬る」と)
        フッッッ…(!呼気を鋭く掃き出し地を蹴り距離を詰め黒鬼へ斬りかかる) -- グレイ 2016-08-28 (日) 00:09:18
      • 当たり前だ。それと、さる御坊の手を借りることができている。封じる当てはある。(短く言うその姿が――ブレた。いや、人間の網膜に残像を残す勢いで瞬時に鬼の間合いへと踏み込んだのだ。詰めた距離は実に8mを超える。相手を投げ飛ばす時に相手に意識を向けないモノはいない。すべてはササキが作ってくれた、一呼吸の"間"のうちである。)
        鳴神抜刀流・一閃!(抜き打ちの一閃がざっくりと鬼の皮膚を深く切り裂く。これは下準備に過ぎない。返す刀が深々と鬼の肉体奥深くまで突き立って――その刀が、発光する)
        鳴神抜刀流・閃涛!(その光は魔を滅すべき霊気の光である。突き立てた刃を通じて、霊力を直接鬼の胎内に流し込んでいるのだ。) -- キョーレン 2016-08-28 (日) 00:19:26
      • (ササキが叩きつけられたのを見送れば、その後のササキには視線をくれず、手の平を上に上げる)
        (その手からはじわり、と黒い血が滲み出し塊となってふわ、と宙に浮き、硬質化。黒い槍となって浮かび)
        (割れた岩へと空気を割いて黒槍が飛び迫る。自然岩など障子紙の如く突き破るそれがササキへと飛来し)
        (しかしこの場に現れた冒険者達はササキがその力で作った隙を見逃すような者達ではなかった)
        (瞬間、まるで先程から居たかのように視界の端に現れた灰色の外套の男)
        (その剣閃鋭く、とっさに腕へと巡らせた血を硬質化したが、黒化した左手は刃に触れた瞬間に"失われ"切り落とされ)
        (ほぼ同時にその剣閃の真逆から煌めく刃が迫る。黒コートの剣士はもっと離れた場所に居たはずだ、いつの間に、こんな所に?)
        (そんな思いを巡らせるのも一瞬の内、雷鳴のごとく研ぎ澄まされた閃光は腹を裂き、その黒々とした体内を曝け出し)
        ███▓▓─███▓█─ッッ!(咆哮。しかしそれは怒りによる雄叫びではない。込められていたのは痛みによる慟哭)
        (腹へと突き刺さり背まで抜け、魔なる存在に支配された身体を焼く、輝く刀を強引に体ごと下がり引き抜いた)
        (ある種、鬼に取っても馴染み深い武器である二振りの日本刀が、鬼へと手痛い打撃を与える)
        (簡単には再生出来ぬ腕、ぶすぶすと煙を上げる腹を抱えながら唸り、もはや狂乱に近い表情になって黒血を撒き散らし)
        (無差別に辺りへと放たれた魔弾を盾に、冒険者達から距離を取る)
        -- 2016-08-28 (日) 00:34:30
      • はぁー…すうぅー…(大きく息を吐き、息吹で呼吸を整えてから視線をグレイに向け、答えるように)
        滅ぼす気はござらぬよ、ただ背骨をへし折るくらいで鬼は死なぬでござるからな…封じるために弱らせるなら多少ムチャしても大丈夫でござろう
        (改めて鬼の方を向けば…間違に迫る黒槍、やはりどこまで行っても本質が「戦う者」ではないがために招かれた油断の末に…切磋に守ろうと伸ばした手ごと腹部を易々と貫かれてしまう)
        …ゴボッ
        (黒槍は体を突き抜け腹部に風穴を…破れた胃の辺りから逆流してきた血が口から溢れる、その色は…赤だ、対峙する鬼とは異なり人のそれに近い色をしている)
        (腹部、そして手からも溢れる血を眺めるとうすら笑いを浮かべ首輪を回す…飛翔の力から別の力へ…)
        血液操作はそちらだけの専売特許ではござらぬよ!
        (黒血の魔弾を打ち消すように手の平の穴から真紅の弾丸を撃ち出す、血小板を硬化させそれが血液であったとは思えぬ硬度の弾幕を張り、距離を縮めようと) -- ササキ 2016-08-28 (日) 00:47:16
      • (黒血がこびり付いた刀を振り払い逃げ出す鬼に向きなおる)
        逃がす訳にもいかんのだが…(もう一人の鬼の様子を気にしつつ)
        鬼の方はいいんだけどね。ヒノさん、助けなきゃならないんで…(そこが難しい所なんだがと眉を寄せた所に)
        (魔弾の雨が降り注ぐ)チッッッ!(短く舌打ちをしつつ魔弾を刀で切り払い霧散させる)
        依然見た技…二度目は無い…(視界の端で団子屋が刺し貫かれたのを見つつも、此方も降り注ぐ魔弾を斬り続けるためにその場を動けないでいた) -- グレイ 2016-08-28 (日) 00:57:05
      • やはりある程度の戦術は使えるようだな。(ササキを投げ飛ばし、そして今またダメージを受けた牽制の血弾を飛ばす鬼の姿を見てこちらも構える)
        鳴神抜刀流・紫電!(ある程度の溜めを作って振り抜いた刀の軌跡を追うように霊気の刃が中空に形成され、そしてそれが高速で前方に飛んでいく。血弾から己が身を護る盾として機能させつつ、追いすがる。) -- キョーレン 2016-08-28 (日) 01:05:52
      • (小石を払うが如くグレイに次々と打ち消される魔弾。それを憎々しげに見ながら鬼は低く唸る)
        (失われ痛みさえ感じぬ左腕、焼けるような…いやまさに焼かれた腹を抱え、その相貌は文字通り鬼の如く歪み)
        (おのれ。おのれ。我は喰らうもの、断じて狩られるものではない)
        (しかし、事実目の前の冒険者達は正しき意志を持ち鍛え上げられた技と力を持って自らを追い込んでいる)
        (口惜しいが、認めねばなるまい。このままでは滅ぼされるのは我だ)
        (力を、この弱く強い者達を砕き壊する力を)
        (腹の傷からどぷりどぷりと、黒き血が勢い良く溢れだしてくる。それは少女の体格からすればあり得ない量が)
        (黒血は硬質化しながら岩のようになり鬼の身体に纏わり付き、更にそこへと重ねて黒岩が鎧われる)
        (みるみるうちに鬼の身体は黒岩によって膨れ上がり、高さ二十尺ほどの頑強な肉体を造り上げる)
        (そしてその身体に帯のように奔る黒血。それはかつて少女の纏っていた紋様のように岩の身体の表面へと定着する)
        (目をつぶり、浮かび上がるように胸に現れた鬼の顔、それが、か、と目を見開けば)
        ███▓▓▓─███▓███─█████████▓██████▓███▓─█████───!!!!
        (ぼ、と紋様から黒い黒い炎があがる。それは存在を浸す炎、世界を舐め取り、虚無へと還す火)
        (黒岩によって作り上げられた肉体から黒い炎が燃え上がり、空間が存在を否定され、陽炎のように揺らめく)
        (…そして、壊世を齎す鬼神が立ち、その身の内の内で、少女がゆるり、と在らぬ身体を身じろがせた)
        (その表面にササキの放った真紅の血弾が着弾し、ばちばちと音を立て…しかしその弾も黒岩を僅かに穿ち、黒い炎に絡め取られ消えて)
        (続く経蓮が放った霊気の刃は鬼の身体を形成する岩を幾つか割り、どろりとした黒血へと還す)
        (霊術による効果が高いことはそれを見ても分かるだろう。しかし先ほどとは桁違いの質量がそれをかすり傷にしか至らせない)
        (丸太のような片手を振り上げ…迫るササキ、経蓮の前方の大地に打ち下ろす。さすればまるで爆弾が爆発したかのような衝撃波がそこから生まれた)
        -- 2016-08-28 (日) 01:10:56
      • (血弾はダメージを与えるためのモノではなかったが、それでも巨大な鬼神の黒炎に消し飛ばされるのを見て多少の戸惑いを見せる)
        これはまあ何とも巨大な…巨体に巨体で挑む方法もあるでござるが…!
        (効果は薄いと見て血弾を撃つのはやめ…血を別のモノに廻す、走りつつも流れ滴る血の量は夥しいまでに増え、真紅の血溜まりからは人型が次々と生まれてくる)
        (…それらの人型は無数のササキとなり、巨大な鬼神が眼前に巻き起こした衝撃波へと次々に突っ込んでいく!)
        (直接投げ飛ばされればどうしようもなかったが、無数に増えたササキたちはその質量をもってして衝撃波を正面突破…流される血が増えればそれはまた、新しいササキを産む)
        そちらが黒い炎ならこちらは白い炎でござるよ!
        (足元に迫る無数の人影が一斉に白い炎に包まれる、生命力や存在力を脅かす黒い炎と対を成すように、己の寿命を生命力や存在力へと変換する命の炎)
        (炎同士が打ち消し合う中、次々と巨体へ張り付いて行き…)
        あー…ん(ぞぶり、と歯型が付く…そうだ、喰らう者であるはずの鬼にこの鬼は食らいついているのだ、一つ一つの歯型はさほど大きくはないが…その数は全身を包み込む程度には増えている)
        (一人、喰らいついていないササキが振り向いて)張り付いている分身にかまわずやれーっ! -- ササキ 2016-08-28 (日) 01:41:05
      • 不味ッ!(魔弾の雨が止んだ直後に叩きつけられた衝撃波。迫るそれに対し刀を打ち込む)
        (自身に触れる直前に二つに割れた衝撃波。しかしその直後に鈍い音がして日本刀が根元から圧し折れ)
        (そして僅かに斬り損ねた衝撃を受けて後方へと灰色の姿が弾け飛んだ)
        (無数の大木を折りつつ地面に叩きつけられながらも手をついてその場から立ち上がる男の額から血が流れだしその顔を朱に染めてゆく)
        大きく来たね…(命懸けの戦いに臨むに対し常に変わらず浮かべるシニカルな笑みをそのままに)
        (背中に刺した魔物用の武器、大剣を抜き放ち。追いすがる様に再び彼の敵との距離を詰め)
        シィィィィアッッッ!!(気合い一閃、大剣での横薙ぎを振るう。文字通り付いている者など気にした様子は一切ない) -- グレイ 2016-08-28 (日) 02:12:58
      • うわ。(黒い血がどんどんと硬質化していく。纏いに纏った鬼の身体が肥大化していく。圧倒的な質量は、相性が悪いとはいえ生半な霊気では些細な傷しかつけられないだろう)
        誰だったかね、全て物事は可能な限り単純に、なんてのたまった学者先生は、っとォ!(続けて襲い来る衝撃波、キョーレンは高々と跳躍することでこれを回避。飛行能力を持たない人間にとって、機動が大幅に制限される跳躍は通常なら悪手だ。通常ならば。)
        鳴神抜刀流・巻雲!(鞭状に霊気の刃が伸びる。一直線に飛翔するそれが黒い瘴気の鎧に突き立った。) -- キョーレン 2016-08-28 (日) 02:32:38
      • (見る間に一目では数えることも困難な人数に増え衝撃波を乗り越えてきたササキに、戸惑い腕を振るう)
        (幾人かのササキをそれで吹き飛ばし、元の紅い血へと変えるも有象無象と増えるそれらに敢え無く身体に張り付かれることを許してしまう)
        (巨体を構成する黒岩を覆う黒い炎、しかしそれをササキが抑えこみ、全身を燃やす白い炎と絡み合い、勢いを消していく)
        (更には黒岩に次々と噛みつかれ岩がその分、削れる。それに怒りを増した鬼は両腕を高く掲げ、そこにも纏わり付く分身に構わず)
        (ごおん、と自らの巨体へと両腕を打ち付けた。とてつもない衝撃が生まれ、身を包む岩が幾つも割れたが分身を粗方引き剥がすことには成功する)
        (そうして、片手を振り上げ黒炎を強く燃え上がらせ引き剥がした分身たちへと腕を振るう)
        (それは身に纏っていたものとは比べ物にならぬほど燃え盛り放射状に広がり分身たちを飲み込む)
        (しかしその振るった腕をくぐり抜けるようにして灰色の外套の男がゆらりと迫る)
        (大剣を用いてなお、刀での振り抜きに勝ると劣らぬ一閃は巨体の右脇腹を薙ぎ切り)
        (そこに張り付いていたササキの分身ごと、その周囲の黒岩をごっそりと滅し、かき消した)
        (伸ばされた内部の少女の右腕が見えるほどに抉れた巨体は、ぐらりと体勢を崩すもそのまま腕を振るい、灰色の外套の背を狙おうとするが)
        (そこに闇を切り裂き光り輝く線状に伸びる幾つもの刃。それが鬼の身体へと絡みつき、ぎり、と動きを止める)
        (もがけばもがくほどに刃は身体へと突き刺さり、そのたびに黒岩が幾つも黒血と還り煙を上げて掻き消え)
        ███▓▓▓─███▓█─▓████─████████▓─▓─██████───!!!!
        (鬼が吼える。少女の身体ではなく、巨岩となった鬼の身体がその全身を震わせて怒りという感情を振動に変えて吼える)
        (残った分身を覆うほど全身からごうごうと黒い炎が燃え上がり、その岩の体の口に当たる部分に炎が収束していく)
        (そうして周囲をなぎ払うように、何重もの炎を束ね、黒い光と化したそれが、放たれる)
        (それは勢い余り山頂へと突き刺さり、天を突くようであった剣峰はその一撃で掻き消えて)
        -- 2016-08-28 (日) 02:43:21
      • (耐久力こそ差異があるものの、自分とほぼ同等の能力を持つはずの分身が次々に消し飛ばされていく、もしも自分も張り付いていたら…)
        (恐怖を覚えなければいけないような場面であるにもかかわらず、瘴気に当てられたかどうしても、笑みが浮かんでしまう)
        (だが山の一部を消し飛ばすとなれば真正面から受け止めるわけにもいかない、流石に消滅してしまえば…治癒は出来ないだろう、あらかじめ用意をしていけば別だが)
        黒い炎はかくして黒い光へと…光にはやはり、光でござろうなあ(首輪を弄り血液操作から光の操作へと)
        (空に向けて手をかざす、収束するのは日光ではなく…月光、単純な熱量を求める日光とは異なり魔力に富む月光から生み出されるのは魔を撃ち滅ぼす浄化の光)
        外殻をどれだけ剥がせるかはわからんでござるがトドメは任せたでござるよ!ディスパイア・レイ!
        (収束された月光の光弾は流星群のごとく、鬼の体へ目がけ無数に降りそそいで) -- ササキ 2016-08-28 (日) 03:00:29
      • (地を揺るがす程の咆哮を響かせた黒鬼から放たれた光と化した黒炎)
        (迫るそれに対し、灰色の男がする事は何時でも変わらない。すなわち「斬る」事)
        (山の一角を蒸発させるほどのそれに対し)イィィィヤッッッ!!(こちらも叫びをあげて剣を斬り込む)
        グッッ…!ツアァァァ!!(斬りつけた大剣から伝播した熱が大剣の柄を持つ男の手を焦がし、煙を立ち昇らせる)
        …ハァッ!ハァッ!(彼自身を狙ったものでは無く周囲を薙ぎ払っただけの物だったがそれでも受けきった灰色の男は、普段流さぬ汗を流し疲労の色を見せていた)
        (攻撃の前に僅かに認めた少女の生身の腕を思い出し眉間に深い皺を寄せ、炭化した手で再び大剣を握りなおす)
        …斬る(短く、決意の言葉を口にして地を蹴り跳躍する。巨大化した黒鬼の頭上よりもさらに高く)
        (頂点から下降へ、灰色のロングコートが広がり月光の流星群に照らされ宙を滑空する姿は魔鳥の如く)
        (光を跳ね返し流星群と共に振り下ろされた大剣が黒鬼の頭頂から股間までを一気に切裂く) -- グレイ 2016-08-28 (日) 03:14:07
      • おいおい……!!(黒い光線の発射準備の時、彼の身体は未だ空中に在った。さすがにそのまま受ければひとたまりもない、こちとらただの人間なのだ)
        (幸いまだ巻雲の先端は鬼の身体に突き立ったまま。大きく腕を振って引き寄せながら反動で回転し、射線上から逃れる。途中で霊気の鞭刃を消したなら、炎の危険域に飛び込むことはない。)
        (空中で納刀。イエロースミスの力が刀に充填されていく。装備しているキョーレンの霊気リソースも増幅されている。弓を引き絞るように抜き放った刀をいっぱいに引いて、)
        鳴神抜刀流、帯気!(突き出す。長く伸びた霊気の刃の行く末は、ササキによって穴を穿たれグレイによって切り裂かれたむき出しの鬼の肉体、その内部。心の臓。退魔の力そのものの塊が、鬼の身体の内部を穿ち進んでいく。) -- キョーレン 2016-08-28 (日) 03:26:34
      • (その黒き口腔から放たれた虚無へと還す光は、さながら闇を切り裂く深淵となりて放たれた)
        (しかしそれも、グレイの全霊を込めた斬撃とぶつかり合い灰色の剣士を消滅させること無く逸らされる)
        (それこそは滅殺の業が虚無と打ち勝った瞬間。そしてそれでも、剣士は倒れることなく、立っている)
        (そうして、空が輝く。真昼の空のように)
        (煌めくは月光。降り落ちるは流星。天を埋め尽くし降り注いだそれは黒き巨岩を打ち抜き瓦解させていく)
        (鎧われていた黒炎も冷たく光り、魔を祓う光弾を焼き尽くすには至らず、消し飛ばされ千切れ消えゆく)
        (そして天から降り注いだのは月光のみに在らず。魔を断ち切る銀光が、一直線に巨体を唐竹割りに断ち切り)
        (黒の巨体が左右へと割れる中を尋常ならぬ鞘の力により何倍も増幅させた退魔の刃が一直線に突き進む)
        (それは黒岩の守りを失った鬼の左胸へと、吸い込まれるように)
        (貫く。鬼の力の核、心の臓を命の煌きを見せる刃が)
        (ばつん、と何かが弾けたような音がした)
        (力を使い果たしたのか、見上げるようであった黒岩の巨体は左右に落ちつつどろりどろりと一つ一つ血に戻り、虚空へと掻き消えていく)
        (それは加速度的に進んでいき、少女の体がどさり、と落ち、大地へと転がる)
        (そして、一呼吸の間、付したままだった少女の身体が右腕を張り持ち上がり膝立ちとなる)
        (そうして辺りを見回したその表情は…憤怒に濡れる鬼のものではなく、彼らの知る少女のものであり)
        …み、んな、…皆が頑張ってくれてたの、分かったよ。…私なんかのために…ごめん、ね。
        (疲弊し、傷負ったその姿を見て、少女は悔しそうな表情を作る)
        (しかし、しかし彼らが求めてくれたのは、彼らが力を尽くしてくれたのはそのためではないだろうと)
        でも…でも、あり、がとう。来てくれて、嬉しかった(無理矢理に力を尽くし…笑う。まだ少女はここに居ると、皆のおかげで戦えるのだと)
        (それは少女の笑み。…少女の友であった者たちがよく知る人間の笑み)
        (だが、その笑みを浮かべながらも、じわじわと黒き血を滲ませながら身体を修復しつつある鬼の身体が、少女の時間が残り少ないことを教えている)
        (少女の意志に反し、残る力を全て両足に込め大きく、大きく飛び逃れる鬼。それでも)
        また…!また会おうね!絶対に!(声だけは、月光の注ぐその荒れ地に響く声だけは残り続けた)
        -- 2016-08-28 (日) 03:46:08
  • (空には月。半分の月が仄かに辺りを照らし、夜目が効かずとも視界には困らぬ程度に周囲を浮かび上がらせている)
    (温かい春の陽気が辺りを包む山の中腹、獣道のような山道が続くそこは、ある一点を境目にして様相を変えており)
    (それは不可視の結界、仙道を歩みし神仙が縁を用いて張った彼方と此方を区切る境界線)
    (それそのものを感じ取れなくとも一見すれば分かるだろう、その結界の外は枯れ木こそちらほらと見えるものの新芽を芽吹き始めており)
    (その内は未だ季節が止まったままかのように木々は枯れ、茶けた枯葉をつけているのみ。草葉が青く茂っていたとしても、それは異形の物)
    (ある種…結界の内側は未だ時が止まっているのだ。それは鬼が目覚めた、その時から)
    (縁を用いて作られた結界は、その身に異形の血を持つ者には若干の抵抗を覚えさせるが、身を弾くほどではない)
    (それよりも内に充ちる瘴気に、違和感を覚えるだろう。それは隙あらば身を浸し、犯そうとにじり寄ってくる)
    (しかし…その瘴気に覚えがある者は、気付くかもしれない。それが、以前よりも弱くなっていることに)
    -- 2016-08-27 (土) 20:03:41
    • (其の地へ脚を踏み入れるのは二度目。しかし隔てる結界の前に立つ少女の腕には前回よりもみすぼらしいハルバード)
      (幾許かも保たぬうちに砕けるであろうそれを、丸腰よりはと…両手に残る包帯は肘近くまで頑丈に巻き付かれ、素手も想定しての装い)
      (若干の苦手な感じのする境目のあちら側へ踏み出すと、後には戻れない。踏み込む前に、他の人へ目配せを)…準備は宜しいですか。 -- チェル 2016-08-27 (土) 20:35:54
      • (結界による境目なのだろう、こちら側とあちら側では随分と様相が異なる)
        (普通の感覚ならば死の山ともいうべきエリアを忌避するのだろうが、何か愉しそうに感じている自分が居る)
        (台風や嵐を控えた子供のような心境に近いのだろうか、見た目に準備らしい準備はしていない普段通りの姿でいて)
        …問題はござらぬよ、緋乃殿はこの奥に…? -- ササキ 2016-08-27 (土) 20:42:17
      • (右手を開け閉めして力の入り具合を確かめる)宜しいも宜しくないも、避けられん仕事だ
        (彼のやっているハンターという職業上、標的から逃げる事も放置する事も出来ない。だからこその返事)
        随分と間を開けてしまった。が、未だこの場所に留まる辺り、他の人間が何事かしたようだね…
        (境界線の辺りに手をかざし)結界が張ってある…斬ってもいいが、どうやらこのままの方が都合がよさそうだな
        準備は問題ない。ササキさんもそれでよろしいか? -- グレイ 2016-08-27 (土) 20:50:01
      • (辺りを闇に濡らした山を進めば、生き物の鳴き声は愚か気配もせず、その山が殆ど死んでいることが分かる)
        (かつてはこの山も少ないながらも草木茂り、それを食み生きる動物がおり、木を切り出す木こりも居たが、それを知る者は少ない)
        (冒険者達が細く獣道のような山道を歩んでいくほどに、弱いながらも徐々に濃くなっていく瘴気。それは鬼へと近づいている証)
        (そして鬼が支配する領域を踏み躙り、敵対するという証でもある)
        (夜闇に包まれた死にかけの森の奥から異様な気配が発せられている。それは冒険者達を中心として包囲するように迫り)
        (視認出来るほどにその気配が近づけば…がさり、と枯れ草を鳴らして現れたのは黒い黒い塊)
        (だが、直に動くそれが犬を形どっていることが分かる。ただし…普通の犬が子供に思える程の大型犬)
        (続けて枯れ枝を伝って来る物がある。見れば今にもぶら下がる枝が折れそうな程の大きさの黒猿)
        (それらが冒険者達を瞳に当たる場所で睨めば、空から羽ばたき降りてくるのは空を黒く切り取ったかのような黒い鳥)
        (尾羽根の形で、それが雉であることが分かる。しかしそれも…雉ではあり得ぬ大きさの怪鳥ではあるが)
        (それら黒き獣たちが、続々と枯れ木の影から、岩の上から、低い唸り声を上げて現れる)
        (その数、十数体。冒険者達を完全に囲い込めば…どの獣が発したものか、一声咆哮を上げて襲いかかってきた)
        -- 2016-08-27 (土) 20:51:54
      • (同意を得れば、首の後にチリチリとした違和感を覚えながら抵抗のある境目を超えて、歩く。よりは足速に駆けるように。)
        (邪魔になる朽木はいっそのことと蹴り倒して台にして跳び。)
        …………(枝の上から見え迫り来る其の黒い塊に)……あれって緋乃さんのお友達でしょうかね?
        (二人を巻き添えにせぬようにと、ハルバードは使わず脚で応戦し。容易く犬らしき物の破片を散らす)) -- チェル 2016-08-27 (土) 21:06:48
      • (結界はそのままにしておくべきだろう…鬼そのものである身で抵抗を感じつつも通過し、瘴気満ちるエリアへと侵入する)
        (死の山とも言うべき場所だが不思議と心地が良い…ともすれば下界よりもなお心地の良い場所であるような気分だ、まるで母の元に居る様な…)
        (月明かりの下で愉悦に似たえもいわれぬ感情が沸き上がり、自然と口角が吊り上がりつつある)おお、いかんいかん…
        (口元を手で押さえていると現れる黒き獣たち、異形と変わった動物なのかそれとも単なる魔の塊か)
        おや、以前は出なかったでござるか…さて体や妖気の一部から産み出たモノかもしれんでござるなあ、生物を作り変えるようであれば…困りものでござるが
        (飛翔の術、鳥らしきモノよりも高く飛び…直上からの自重による質量爆弾で打ち落としていく) -- ササキ 2016-08-27 (土) 21:12:53
      • (空を覆う不吉な影が形と音をなして襲い掛かってくる)
        (この瘴気の影響か、はたまた黒い鬼の所業か判断はつかないが、それを認めた男が深く息を吐く)
        やれやれ…獣の相手をしに来たわけでは無いのだが…仕方が無いか(右手で頭を掻きつつ左手を灰色のロングコートの中へ差し入れる)
        (戻されたその手に黒鉄色の大型拳銃、続く銃火は戦いの合図。相対する獣に負けず劣らずの凶暴な咆哮を上げて空飛ぶ凶鳥達へと鉛球が飛来する) -- グレイ 2016-08-27 (土) 21:15:30
      • 鳴神抜刀流・叢雨!(突如として響く声は、チェル・ササキ・グレイ、そのいずれのものでもない。それは瘴気の化生による包囲の外側から響いていた。)
        (当然、その声によって励起された霊気刃が雨のごとく降り注いできた源も、包囲の外にある。退魔の力を秘めた霊気刃は、闇が凝ったような獣たちにはよく効くだろう。包囲の内側に意識が向いているであろう分、奇襲として機能する。)
        ……俺だけ遅れてしまったようだと気付いたときにはどうしようかと思ったが、こうなってはケガの功名と言っていいかもな?(抜き身の打刀を右手に携えたコートの青年は、そう言って精悍に笑って見せた。) -- キョーレン 2016-08-27 (土) 21:26:54
      • (ドレスから伸びる白く豊満な足へと食いつかんとチェルと大口を開けて突進する黒犬)
        (しかしその食いっ気にカウンターを貰い、頭を横から激しく蹴り込まれ、その首が吹き飛ぶ)
        (首であったものは飛沫となり、それは大地へと、枯れ木へとびしゃりと張り付き、消える)
        (チェルとグレイならば気付くだろう、その液体が以前見た黒い血と同じであることに)
        (落ちるだけとも言えるササキの行動は、しかしその体重を武器として用いれば砲弾と化して鳥達を落とし、黒い水たまりへ変え)
        (だが、次々と直下へ体当たりを仕掛けるササキへここが狙い所と群がろうとした鳥へ銃撃が炸裂)
        (その50口径弾は闇夜に黒い血の花火をあげ、その出元を潰さんと銃撃の射線を逆になぞるように嘴を先端とした弾丸と化して突き進む)
        (黒猿たちはそれに呼応するように、チェルへと腕を振るい、黒犬達もササキの着地の隙を狙わんと集まっていったが…)
        (突然、高く響く凛々しい声。それとまったく同時に幾つも幾つも降り注ぐ鉄の刃ならぬ刃)
        (三人へ群がろうとしていた黒い獣達はその刃に貫かれ、裂かれ、破られ、煙を上げながら尽く黒き血と戻り、地に落ちる)
        (獣を一網打尽としたその場には、消えゆく黒血だけが残り…山頂へと続く山道にはもはや障害はなかった)
        -- 2016-08-27 (土) 21:35:20
      • あっぶ……あぶ……(すれすれの所で刃の雨あられを避けていた少女。近接のままやっていたら刃で自身も少なからずダメージを受けそうで怖かった)
        ……経蓮さん中々強い技をお持ちに……(脚に着いた黒いそれを微かに匂い、兄へと視線を向けて)
        …あ、緋乃さんにおみやげ忘れましたね。(そして山頂へと視線を向けた) -- チェル 2016-08-27 (土) 21:49:45
      • キョーレン殿は美味しい所を持っていくでござるなあ…しかし、これは一体
        (黒い水たまりのような物に姿を変えた獣たち、後に残った液体は一体なんだろうか?)
        (指先で少しだけ触れ、ぺろりと舐めてみる)ふむ…血…のような味…生物を異形化させた訳ではなさそうでござるな
        みやげは…お茶会のお誘いでもしてはいかがでござるかな、季節柄花見でもよい… -- ササキ 2016-08-27 (土) 21:52:47
      • (目の前で瞬時に切り払われた獣達を見て、新たな援軍の正体を知る)
        …主役は遅れてやってくる。ぐらい言ってもいいよ?(遅れてやってきた戦友に対しシニカルに笑って皮肉を言いつつ)
        (中折れ式の拳銃をブレイクオープンする。勢いで飛び出た6発の薬莢が月夜に照らされつつ、辺りに散る)
        この獣達はヒノさん…いや黒い鬼の力で出現したものだろう…となれば
        (静かな光を宿した紫水晶色の瞳で辺りを見回しつつ新たな銃弾を拳銃に込め)
        さて…これだけのメンツに獣達だけじゃ少し役者不足…そろそろメイン格の登場を願おうか
        (手を振って拳銃のリロードを終える) -- グレイ 2016-08-27 (土) 21:58:14
      • HAHAHA、冗談を言うなグレイ。この程度は露払い程度の役目だ、持っていったとて主役なぞとてもとても名乗れない。(鞘に納める。それはこの武芸者にとって戦を納めることを意味しない。いわばこれは、グレイが拳銃に弾を込めるのと同じ戦に向けた備えである。)
        お、いいなあ花見。ここ数年花見に行けておらん。是非一緒にいきたいものだ。その時には動念師も誘いたいものだな。(軽口をたたきながらその物腰に一切の油断はない。霊気を目に集中させ、油断なくあたりを警戒している。) -- キョーレン 2016-08-27 (土) 22:13:41
  • -- 2016-08-24 (水) 21:22:23
  • -- 2016-08-24 (水) 21:22:20
  • -- 2016-08-24 (水) 21:22:16
  • (気配は無く、気の流れも無く、天地でさえもそれに影が在る事さえも気付かない)
    (陰と陽の境を歩き続ける何かは神仙の作りし結界に焼かれる事も無く通り過ぎる)
    (「ソレ」に気付ける物が在るとすれば正しく神仙の感覚か気狂いと思われる程に研ぎ澄まされた直感のみであろう)
    (その技を「圏境」という、天地合一を果たした武の粋に在る者だけが辿り着く境地だ)
    (「ソレ」はまるで此処に在る事を示すかのように息を吐く、口より出たのは瘴気…魔の者だ)
    おうおうおう、正に恐るべきは神仙の術よ…山を一つ覆いよるとはな -- ??? 2016-08-22 (月) 21:16:03
    • (何者にも悟られず、感じられず、見られぬ武の極地。世界そのものと体を同一化することにより、境界を無きが如くするりと抜ける)
      (ある種仙道の到達点の一つであるそれを事も無げに行い現れるは魔にあって拳を究めし者)
      (そして…その武息によって撒き散らされるは山に漂うものとは似て非なる禍々しき瘴気)
      (漂う瘴気は"新鮮"なその瘴気に負け、侵食され、辺りから消えていく)
      (そしてそれは、山に巣くうもう一つの魔をむくりと目覚めさせ)
      ███▓▓▓─███▓███─█████████▓██████▓─█████───!!!!
      (雄叫びが響く。正体の知れぬ外敵への警戒、そして、威圧を兼ねた咆哮)
      (男の前方に広がる枯死した木が墓標のように林立する死んだ森からからそれは高々と)
      -- 2016-08-22 (月) 21:29:32
      • (遠くに離れたこの位置でさえもその咆哮は威容を感じさせる、覇気ある振動に耐え切れず枝を落とす木々を見ればやれやれと)
        虎子を得るに踏み込んだのが鬼の住まいとあっては冗談にもなるまいが…ま、これも縁かな
        (死した地にて老いた鬼はその姿を隠す事も無く森へと踏み込んでいく…)
        (何時の間にかその両手には短い剣が握られていた、剣と呼ぶ程には長くは無く短剣と呼ぶ程にも薄くは無い独特な剣だ)
        朶鬼よ!古き鬼よ!そらまたもや不敬なりし者が踏み込んだぞ!それも鬼よ!呵々!
        (木々が白ずんだ死の世界で鬼は盛大に挑発をする…それ相応にその身には気が満ち満ちていた) -- スフェン 2016-08-22 (月) 21:49:43
      • (意気揚々とした声が老鬼から放たれれば、鬼もその身から溢れる瘴気を隠すことなく)
        (どこからか飛んできたのかどすり、と獣の如く四足で枯葉の充ちる地面に落ち、下方からじとりを老鬼を睨めつける)
        (姿をひと目見、鬼は直感した。目の前に有るは深淵の魔、それもそんじょそこらのものではないと)
        (そしてその魔族が纏わせる芳しき瘴気が直感を確信に変える。しばらく前にも二つ嗅いだその香りは、血をすする鬼のモノ)
        (しかも今香るそれはその色をなお濃く、鮮烈でさえあり…鬼は、口角をにまりと上げ、歓喜に酔う)
        (これなるは天上の美酒。少々古ぼけているがそれもまた味。その分能く能く熟成されていることは間違いあるまい)
        (老鬼を睨み地に立つ四足に力を込める。しかし油断はならぬ、食い気に逸れば先に我を食い千切った二本の牙のように、此の者の牙が奔るであろうと)
        -- 2016-08-22 (月) 22:05:30
      • (眼前に黒き獣が現れればその血の色を持つ瞳が爛と光る)
        (内なる鬼はまさかコレほどであったかと、やはり鬼たるこの魔の瞳も歓喜に歪む)
        いやいやお主は実に分かりやすいな鬼よ、それなるは正に鬼の…いいや男の本分とでも言おうか
        そう示されては儂も滾るがすまんな?此度は器の方に用がある
        (そう告げれば老いた鬼は構えを取る、フッと足元の枯葉が舞えば馬鹿正直に鬼の眼前に)
        (逆手と順手に持たれた剣が左右より人外の膂力と共にひらりと揺らめく、狙いは特には無く全身を隈なく僅かずつ傷つける目算だ) -- スフェン 2016-08-22 (月) 22:23:31
      • (構えを取っていたのは見ていた。枯れ葉が僅か舞い散ったのももちろん見ていた。そして老鬼の瞳が、己の色と似た色に染まったのも)
        (どのように迫ろうと、間合いに入った瞬間。その身を引き裂き叩き潰す算段であった。そこへ…真っ直ぐ、ただ真っ直ぐと老鬼が迫る)
        (しかし、自然に、極々自然に、風が吹いたが如く機を図り空を滑りその身を靡かせた老鬼にはそのような試みは児戯に等しく)
        ▓─███ッ!(気づいた時には鎌鼬の旋風に捕らわれたように全身から吹き出す黒い血)
        (傷は浅いが恐るべきはその武の達者。牙の鋭さたるや軽妙にて苛烈)
        (攻め切られれば危ないと傷に構わず剣を振るったスフェンの技の途切れ目へとまさに獣と化して四肢の力を解き放ち跳びかかり)
        (一本一本が必殺の鋭さを持つ爪を鉤爪と化し、ごう、と振るう。巻き込まれれば即座に肉屑と成す暴の嵐が吹き荒れる)
        -- 2016-08-22 (月) 22:40:23
      • (鬼と鬼の争い、全てが刹那の時の中で隙間を見つけ本能的に最善手を打つこの者は正しく獣だ)
        (その獣の意思を、本能を余す所無く読み取る為にその赤い水面の如き瞳は朶鬼の瞳と重ね続ける)
        (故にこそその行動は同調したかの如く同時、襲いかかる爪の下を滑り、陽の気により生み出した雷を纏った剣を朶鬼の腹に置き土産としていく)
        (しかし同時では余りに遅かった、左肩は抉れ巻き起こる鎌鼬により腕に切り傷が付いている)
        流石、少なくとも枯波と同格以上かとは見ていたが単純な力は遥かに上回りよるか
        ところで聞くがどうだ?懐かしくは感じんか緋乃よ
        (鬼であるが故に動かぬ筈の左腕を動かしてその腹を指差す) -- スフェン 2016-08-22 (月) 23:01:37
      • (爪に肉を切り裂く得も言われぬ感触。そしてまた全く同時に襲い来る腹部への脅威)
        (しかし朶鬼は笑わない。死の恍惚に酔いしれることもない)
        (老鬼の言葉に、ころり、と鬼の中の少女が揺れる)
        (朧気な意識で少女は思う。かつての記憶をぼやりと思い起こす。そう、あの桃園での一幕を)
        (…あの子とは違う。あの子は自分が滅ぶ事にも喜んでいたけど…こいつにあるのは他を滅ぼし喰う事だけ)
        (それに…あの子は…こいつより…)
        (朶鬼は腹からも流れていた黒血が牙を形作り剣を食い止めんとしたが、老鬼の峻烈なる打ち込みを止めるには僅か及ばず)
        (…自分の身体の扱いが、上手かった)
        (かつて少女の振るった剛刀をがちりと止め得た童子の顎。そして今、腹を切り裂かれ、その傷を雷でぶずぶずと焦がす鬼)
        (その光景は、似て非なり。少女が記憶を揺さぶられれば鬼はほんの僅か…一瞬だけ動きを止めるも…)
        ████─█▓─███▓███─███─█████████──!!
        (鬼は咆哮を上げ、それを抑えこみ、ぎり、と歯を軋ませ怒りに染まりつつあり、その四肢には怒りに呼応するように力が篭もる)
        -- 2016-08-22 (月) 23:26:51
      • (その鬼の内より行われるさざ波のような少女の思考を老鬼はつぶさに見つめ続ける)
        (それは余計に鬼を苛立たせる事だろう、だがそれで構わぬ…目的の為にはなるべく鬼が前面に出なければ)
        (何事があったかは分からぬが主導権が逆転してから随分日が経っているのはこの地を見れば明白、されども未だ少女は消えておらず)
        ああ…それでも尚在るかね、いやいやまったく
        (朶鬼の力が膨れ上がる毎に大気がビリビリと震える、しかし老鬼の瞳は先程とは打って変わり涼やかだ)
        すまんな神なりし鬼よ、お主が枯波の様に神になるべき者が何らかが原因で鬼となったのか…
        それとも世の負としてそう在るべきなのかは与り知らぬ、だがやはり儂は強き人が好ましい
        (残った剣が氷に包まれれば怒れる鬼へと投げつける、それもまたとある少年の似姿)
        (同時に剣と並走し獣を目指す…それは尋常ならざる速度だが先程までのこの男とは打って変わりまるで隙だらけだ)
        (それもその筈この老鬼の目的はただ一つ、眼前の鬼の素っ首に噛みつき血を喰らう、それだけだ) -- スフェン 2016-08-22 (月) 23:46:05
      • (日の光を受け煌めく氷の剣、それにまたも少女の魂が揺らぐも、怒りに身を任せる鬼には蚊の鳴き声の如し)
        (怒気に震える全身の傷からは黒い雨のような多数の黒血が浮かび上がり、全周囲に魔弾となりて弾き出され、剣を撃ち落とし周りの木々へと穴を穿つ)
        (しかしこの老鬼は止まらぬだろう、自分の身を省みぬその疾走はこの程度で止まるような走りではない)
        (ならば、と鬼は自らも前へ、左手の指を揃え剣と成し、二つの魔が互いを食い合うべく人外の膂力を用い急速に接近)
        (じゃ、とその瞬間伸びる左剣。それは瞬きも許されぬ一合の間にも紛うこと無くスフェンの腹へと吸い込まれ行き)
        ████─█▓─███▓███─███─█████████──!!
        (その瞬間、咆哮。二つの影が重なりあう周囲の枯れ木から、撃ち込まれた黒血が長く長く、細長く張られた糸の如く伸び更に硬質化)
        (生半可な防御などいとも容易く切り裂く黒糸の結界が完成し、それが呼び声に応じて二人へに向けて一気に収縮)
        (狭まる黒糸の間隔。それはその糸の鋭さを知らねば半球状の黒い大きな繭が紡がれていると思っても仕方ないだろう)
        (しかしそれは朶鬼にとってはただの血なれど老鬼には触れれば切れる致死の繭。あらゆる方向から襲い来る髪の毛のような黒糸が一点へと収束する)
        -- 2016-08-23 (火) 00:03:49
      • (老鬼の身に穴が穿たれていく、それは出来の悪い抽象絵の如く顔に、体に、手に、足に)
        (しかし鬼の予想通りに男は止まらぬ、ヒトで無き身にとってはいずれ塞がる穴でしかない)
        (流石に腹に空いた大穴程ともなれば困る事もあるが…だが今は実に好都合、穴は鬼の腕を強烈に締め付ける)
        (そしてその手を朶鬼の両手に掛ければ古い映画の如く吸血鬼は少女の血を喰らう)
        (例えそれが瘴気に塗れた物であろうとも血である以上、それを喰らったという事実こそが吸血鬼には必要なのだ)

        (直後朶鬼はその変化を目にする事となる)
        (まず初めに起こったのは腹を貫いた腕を締め付ける力が抑えこむのではなく千切らんとする程の物へと変化している事)
        (次に体中に空いている筈の穴が既に塞がっている事、そして男の体が盛り上がり…)
        (燃える様な赤い髪、血の如き赤い瞳、一時も安らぎを求めぬ戦士の若き顔、妥協など欠片も無い逞しき肉体)
        (何よりも尋常ではない陽の気と陰の気を全身という全身から迸らせていた)
        墳ッ!(その場で行われる震脚、陽の気交じるそれは迫り来る死の糸達を衝撃波めいて強烈に打ち据える) -- スフェン 2016-08-23 (火) 00:31:53
      • (腹を貫く感触。肘の手前までずぶりと埋め込まれたそれは決して老鬼をその場から逃さぬ杭)
        (白木の杭とはいかぬのが口惜しいが、続く糸が老鬼を微塵の新鮮な挽肉へと変えてくれよう)
        (だが、鬼は自らの過ちを知る)
        (捕らわれたのは老鬼ではなく鬼。喰われるのはスフェンではなく朶鬼)
        (糸が収束する僅かな時間、その間に…肌が赤黒く染まりながらも年頃の少女らしい柔らかで繊細な曲線を描く首筋へと)
        (二本の鋭き牙が伸びる紅い紅い口腔が口付けるようにそっと埋められ、つ、とそこから一筋の黒血が滴り落ちる)
        (瞬間、腹を貫いていた左手からばきり、と骨の折れた音が響く)
        (だがそんなことは些細な問題。大きな、とてつもなく大きな問題はその身体から発せられる膨大な気)
        (そこに太極は成れり。魔の身にて合一を成し得、身の内に天地を成す)
        (衝撃。大地を踏みしめたその足は地へと打ち下ろされる天の槌)
        (爆発的な気の圧力、その力に黒血は負け吹き飛び、文字通り糸でしかないそれは虚空へと消え)
        (そしてそれに鬼も腕を引き抜かれながら吹き飛ばされ、太い枯れ木へとその五体を打ちつけられ、ばきばきと派手な音を立て木が折れる)

        (全身を苛む気の爆風の余波、激しい痛み。それに歯を軋ませながらも怒りは更に燃え上がる)
        (捕食者としての本能が、自らが捕食されたことへの怒りを烈火のように焚き上げる。このままでは、"喰われる"、と)
        (力を、もっと…力を!)
        (あらゆるを破壊し喰う者として在る鬼が、鬼神の魂が、少女の内で音を震わさぬ咆哮を上げ)
        (半ば蒸発していた全身の黒血が、ひとりでにどくどくとその勢いを増し、それが少女の身体の表面を蠢くように這いまわる)
        (それは、手足の隅々に及び、幾何学的な紋様をいつの間にか形どっている)
        (かつての少女の姿を知るものなら思うだろう、その紋様は、少女の左半身を覆っていた紋様と酷似していることに)
        (紋様が、蠢くのをやめ…身体に定着すれば、そこから、ぼ、と炎が湧き出る)
        (それは黒き炎。身体の内を収まりきらぬ鬼神の力を顕し世界を燃やし尽くす壊世の力)
        (全てを壊し破する鬼が、妖しの炎纏い、ゆらりと立ち上がった)
        -- 2016-08-23 (火) 01:11:42
      • (はち切れんばかりの筋肉により所々窮屈となった男はその上着を脱ぎ捨てて)
        おうおう漸く本性を現してくれたな鬼よ、いやさ破壊神とでも呼ぶべきか?
        呵呵々!どうした!笑えい!!!望む限りの力を振るう事が鬼の喜びで在ろう!
        (血気に逸る修羅の如き笑みのままに悠々と歩み征く、両義に満ちた足は踏みしめた枯葉を青々とした新芽へと蘇らせそして朽ち行かせる)
        (寄ればまずは見、今まではまるで方向性が無かった力はこうして纏まり破界の炎を纏っている)
        (紋様を見やれば成る程かつての緋乃と酷似、ならばあの少女はよく力を引き出していたという訳だ)
        (それは一歩一歩コレが外へと歩みを進めていく事に他ならなかったのだろうが)
        ならば儂らにも責はあろうなぁ、役得役得…では征くぞ
        (次に行うは拳による見、拳に纏うは陽気の炎、一見水の方が向いていそうだが陰気では相性は正しくあるまいと)
        (手の出先が読めぬよう陽炎の様に体が揺れると自らが焼ける事厭わずヒトが七孔噴血する威力で右鎖骨と左脇腹の経絡を打とうとする)
        (目的は中丹田以外の丹田と経絡が未だ正常に機能しているかを知る為だ、少なくとも中丹田は容易く分かる程気に満ちている) -- スフェン 2016-08-23 (火) 21:16:32
      • (一つの小宇宙を内包した老鬼…いや見目逞く到達した拳士は一歩ごとに命を鼓舞し、そして衰退させ歩み来る)
        (震脚の衝撃によって大量に舞った枯葉は鬼神と化した鬼へも幾つか舞い降り、黒い炎がその枯葉に触れれば)
        (こう、と音もなく、そして熱もなく葉は黒炎に舐め取られ霧散した。僅かの灰さえ残さず、"消失"したのだ)
        (それは世界を浸す炎、存在そのものを燃やす虚無の炎。ある種存在の固まりである拳士がその拳を鬼へと振るえば)
        (どずん、ととてつもなく重い物がとてつもなく重い何かを打ったような重厚な激震)
        (ぶあ、とその余波で辺りに舞っていた枯葉は全て砕け散り、吹き飛んで)
        (鬼が、口角を上げる)
        (しかして拳士の拳は鬼の経絡を正確に打ち、その威力や周辺の黒炎を吹き飛ばし大きく鬼が身を曲げるも)
        (上丹田と中丹田を繋ぐ紋様が炎の勢い増しごう、と炎を走らせる。この一撃、先のままでは消し飛んでいたであろう)
        (中丹田と下丹田を繋ぐ紋様がまた勢いを増し炎をゆらりと蠢かせる。消耗など考えぬ、我はどこまでも喰う側であるが故に)
        (神は気を呼び、気は精を呼び。かくして外部増設経絡としても成った紋様をぐるりぐるりと強烈な鬼気と黒炎が巡る)
        (鬼は嗤う。僅か感謝の念まで覚える。ここまで力を引き出せたのは"お前"のおかげだと)
        (確かに拳士の一撃は打撃を与えた、だがそれ以上に湧き上がる歓喜の力に鬼は嗤う)
        (そして、試し振りをするかのように無造作に拳士へと右の拳を振り被り、振り下ろす)
        (その拳に込められた力たるや、七孔を通り越し、撫でるだけでも人を血霧と血餅へと容易に変えうるもの)
        -- 2016-08-23 (火) 21:51:55
      • (鬼より奮われる至上の暴威をしかし男は避ける事は無く交差した腕で受け止める)
        (その顔にもやはり笑み、だが無尽蔵に力を吐き出す鬼とは違い馬鹿げた規模の質量と硬気功により強引に受け止めたに過ぎない)
        (ミシミシという嫌な音を腕から響かせているこちらの方が遥かに分は悪いのだ、故にその笑みが意図する所は別に在った)
        (何よりも避けず至近距離に在る事にその意図は在るのだ)
        嬉しかろうなあ、力という奴は持てば持つだけ心震えるものよ
        儂も千年振りのこの境地に否が応でも昂ぶりおるわ、出来れば打ち合いへし合い打ち殺し合いたい所だが…
        (息を吐き息を吸う、失った物は即座に取り戻され交差を解けば鬼の腕を弾く)
        すまんな、此度はそれを狂わせに来た
        (男の姿が突如消える、この地に訪れた時に行われていた天地合一が再び行われたのだ)
        (しかし男が離れていないのは今の朶鬼ならば直ぐに気付くだろう) -- スフェン 2016-08-23 (火) 22:20:17
      • (拳士が地がそのまま落ちたが如き拳を受け止めれば、二人の立った大地がぼこり、とすり鉢状に凹み)
        (割れた大地に巻き込まれ周囲の枯れ木が何本も根本から折れ、ばきばきと激しい音を立てて倒れていく)
        (拳士の笑み、それが意味することになど鬼は気付けない)
        (かつて振るったに近しい力に酔い溺れる鬼はその笑みをただの虚勢と取る)
        (大きく笑みを形取る口を開ける。男と違い全てが鋭利に伸びるその牙は血を啜るためのものではなく肉を噛み取るもの)
        (腕を弾かれながらも、それも当然と鬼に動揺はない。むしろ、そうでなくては)
        (肉は、噛みごたえがあるほど美味く食えるのだから)
        (しかしそれも拳士が世界へ溶け消え越境を果たせば少々の迷いが生じる)
        (完全にその姿を失いはしなかったものの、朧気にしかその位置は分からない)
        (だが、問題はない。拳士は何処ぞへと逃げた訳ではない。赤き髪の偉丈夫は逃げなどしないだろう。なら)
        (世界を、壊せばいい)
        (左拳へ黒き炎が集まっていく。燃え盛る黒き拳と化した左拳を何も目視せぬまま、その場で振り上げ)
        (███▓███、と世界が割れる音がした)
        (何もない空を確かに拳で殴りつけ、そこからはまるで空間に孔が開いたように虚無が生まれた)
        (周囲の風景が罅割れ、その罅は左拳を中心として放射状にじわりと広がっていく)
        (さあ、男が左側へ居れば吉、右側へ居れば凶。もし何処にも居なければ大凶だ)
        -- 2016-08-23 (火) 22:43:53
      • (その三択の賭けはしかし成立しなかった、何故ならば男は最初から何処にも移動していなかったのだ)
        (男が欲していたのは鬼に僅かに生まれた迷い、その刹那の時間)
        (太極に至りし身ですら練らねばならぬ程の莫大な気を用意しなければならぬが故に)
        (次に鬼の視界に現れた時には罅割れゆく虚無に寄り添う様に鬼へと半身で飛び込む拳士の姿)
        (両手の人差し指と中指を立て剣指を結べば右手からは火が、左手からは水が溢れだし)
        我が手を剣とし我が気を火水とし我が身を符として劾鬼法と成す

        付くも不肖付かるるも不肖…一時の夢ぞかし、生は難の池水つもりて淵と為る
        鬼神に横道無し、人間に疑ひ無し、教化に付かざるに依りて時を切てすゆるなり
        下の二つへも推してする…

        フンッ!劾鬼!二象鬼隔!(剣指を鏡写しのままに朶鬼の額と腹部を猛烈な勢いで突く、常人であればそのままに絶命する威力だ)
        (しかしこれは打ち殺すつもりの技でもなければこれで相手が死ぬなどとも思っていない)
        (それらの呪文も剣、火、水、符を用いた技も全ては鬼を弱らせ祓う術)
        (鬼を祓う術の反動か先程までの若さは見る見る内に消え去り男は白ばみ痩せ衰えていく) -- スフェン 2016-08-23 (火) 22:57:00
      • (再び現れた拳士は正面。すなわちそれは大吉か。もちろん…拳士に取ってのだが)
        (いかな超越の技を用いれど、相手の真正面に居座り身じろぎもせぬその豪放な胆力)
        (そしてその間の時を稼げるだけの磨き上げた己の技への揺るがぬ信頼)
        (鬼は、それを見抜けなかった。人を見ず、相手をただ敵と肉として見た鬼には目前の男が見えなかった)
        (見えるはずもなかった)
        (世界へ鎚を打ち込む先のそれは鬼にとっても容易ではない。行えば当然それだけの反動がある)
        (すなわちそれは目前で朗々とまるで詩の如き詠唱を唱え上げ)
        (凄まじき気の奔流を全て両の手に込めた拳士へ二の打を打てぬほどに)

        (鬼の上丹田、下丹田へと一毫のズレも無く正確無比な一打が突き刺さった)
        (それは先ほどの打撃に比べれば物理的な威力はさほど無く、辺りの空気を震わすこともない)
        (しかし、しかしその二本の神剣が脈動する鬼気の要を貫けば、全身の紋様は瞬時に弾け辺りへと撒き散らされ)
        (千々にちぎれた黒炎は辺りの枯れ木や枯葉を僅か消滅させ全て消え去ってしまう)
        (まるで雷に打たれた人間の如く、身体を大きく一つ跳ね振るえさせその場に仰向けに崩れ落ちる鬼)
        (その鬼から放たれる鬼気は鬼としての経絡を断たれ、見る影もない弱さとなっている)
        (そして、拳士の術の冴えを示すようにその瞳に宿っていた吹き荒れるような破壊衝動と暴食の意志は薄まり…)
        ……あ、れ?スフェン、じゃん(その口から漏れるのは…弱々し気な…少女の声)
        ああ……ごめんね。まさか、スフェンにも…世話になっちゃったのか、私。
        (スフェンの様子を見れば、全てを察したのか申し訳なさそうな声を上げる)
        -- 2016-08-23 (火) 23:28:55
      • (鬼の口より自らの名が出てくれば一仕事を終えたと大きく息を吐く)
        良い、これなるは道理ではなきただの節介よ…何よりただの時間稼ぎに過ぎぬ
        その鬼は儂の思うていたよりも遥かに生半なものではないからな、直ぐにでも盛り返しその身を奪おう
        (だが、と付け加える)今こうして儂と話している緋乃よ、己が在る事をよくよく考え強く保つのだ
        さすれば次に来る者達は更にお主を救い出そう、呵々ッ見目麗しく生まれて良かったなお主
        (そこまで言うと何処からともなく桃を取り出す、死地に於いてそこから溢れる生命力は異質な程だ)
        (それを少女へと投げ渡し)仙桃だ、喰らえば鬼も癒されようがお主も癒やされよう…取り分を多めに取りたければ己の意思で喰らう事
        …童子よりの贈り物だ(そこまで言えば…脱ぎ捨てた上着を拾い上げると共に鬼の姿は消えていた) -- スフェン 2016-08-24 (水) 00:03:51
      • (ひび割れた空間の孔は奇妙な音にならぬ音を上げ、世界の修復力によって徐々にその虚無を埋めていく)
        (仰向けに空を見上げた少女は、その空の青さ、感じる空気の暖かさに、ふう、と一息をつき)
        ……もう冬が、終わりそうなんだね(本当に、本当に久しぶりに空を見た気がする。これもスフェンのおかげか)
        それでも…こうやって私が私としてまた空を見れるなんて…ありがとう(薄く微笑み、礼を老鬼へと述べたが)
        あは、見目麗しいなんて…こんな時に冗談とか、案外冗談好きなんだね(笑いさえ出てくる、例え数分後にはそれが消え去ろうとも)
        …あの子、が。……あの子にも…ありがとう、って、言っといて、ね(今の自分にはそれさえも必死に腕を上げ、仙桃を受け取り)
        ………これで、まだ、もう少し頑張れるよ、腹が減っては、ってね…(拳を突き上げ、拳極めた老鬼を見送り…)
        (震える腕を叱咤し、仙桃へがぶりと噛みつく。それは至上の甘露、合わせて数カ月ぶりの食事)
        (涙が出そうになる。しかしそれは駄目だ。戦いはまだ、終わってはいない。と、歯を食いしばり二口目を食らう)
        (冬の気配を残し春へと移り行く季節に、あの日のスフェンを、童子を、そしてその二人へと共に立ち向かった少年を思い出し)
        (私も…負けてられないよ、ね)
        (少女は束の間の休息を、独り、静かに味わっていた)
        -- 2016-08-24 (水) 00:25:15
  •   -- 2016-08-20 (土) 20:12:40
  •   -- 2016-08-20 (土) 20:12:38
  •   -- 2016-08-20 (土) 20:12:35
  • (力有る者…いや無き者だとしても注意力があるならばその山中を上がればそこで違和感に気付くに違いない)
    (山中は冬場にしても木は枯れ、草が萎びていたが、山の中腹へ差し掛かれば明らかにある一線を境目として山の様相が違う箇所がある)
    (その境界より先は山の荒れ方も酷く、目を凝らせば所々が瘴気の影響で歪んで見えるが、その境界より手前は荒れてはいてもただの山なのだ)
    (もし…周囲の枯れ木に劣らぬほど、枯れたような半白髪の男がその境界を超えれば、薄くはなったとは言え漂う瘴気に更にその存在を強く知ることができる)
    (ただし…その先は囚われた鬼の領域。そこへ身を投じることは死を招くことをまた瘴気は教えるだろう)
    -- 2016-08-18 (木) 22:48:58
    • やれやれ…イェチンや弟子一号から伝え聞いてたよりもすげぇ事になってやがんなぁ…(白髪の方の頭をボリボリと)
      (緋乃がいる山までやってきたものの、明らかに通常とは違う様相であり、その境界までようやくたどり着き)
      まったく…登山なんざしたくはなかったんだが…後で色々と説教してやらねぇと、な(試しに手を入れ、中との違いを確かめ)
      …ま、これくらいならなんとかなるか(そして全身を入れ辺りを見渡し) -- リカルド 2016-08-18 (木) 23:40:34
      • (瘴気はある種朶鬼の映し身の一つでもある。感覚器であり、四肢であり…そして消化器でもある)
        (以前のように色濃く強く、眼にもの覆わんものであれば抵抗力の落ちた男を侵し浸し食らわんとしたのだろうが…)
        (仙道により弱められたそれにはそこまでの力は無く。しかし感覚器としての力を残す瘴気が、人を…獲物が結界の内に入ったことを鬼に知らせ)
        (ある枯れ木の上で悪戯に時をやり過ごしていた鬼は、にまり、と独り口角を上げ、姿を消す)
        (そして一直線に、姿を隠そうともせず、ざざ、と木々の枝を激しく揺らしながら木々の上を駆け"そこ"を目指す)
        (なんでもいい、肉を、生きた肉を、血の滴る肉を食わせろと)
        -- 2016-08-18 (木) 23:54:02
      • さてと…(剣の鞘を地面に突き立て、目を閉じて精神を集中させ)
        (空気の流れ、地面の振動、気の流れ、体に感じるもの全てを総動員して把握しようとしたが)
        …やっべ…(隠す気もなく真正面から怒涛の如く突っ込んでくる気配にすぐに気づき)
        (鬼の手が触れようか、という寸前でバックステップで辛くも結界の外へと逃れ)…全く、俺みたいなのでも喰いてぇとは。なかなかの悪食だな、お前さんは -- リカルド 2016-08-19 (金) 00:07:26
      • (見つけた、見つけた。やせっぽっちの男、年若いとは言えず、身奇麗でもないが…肉は肉だ)
        (木の上から男を視認すれば一目散に飛びかかる。その勢いに枯れた枝はばきりと折れ、伸ばした爪は男の鼻先へと迫ったが)
        (食欲に捕らわれた鬼は気づかなかった。男が立つは結界の一歩手前)
        (何かがあれば直に逃げる心積もりだったのだろう、その行動は迅速であり…まんまと釣られたことに)
        ███▓█─▓████─██████─▓─████───!!
        (鬼が吠え、苛立ち混じりに目に見えぬ境界を打つ。リカルドの目前で、よく見覚えがある…しかし赤黒い肌の、黒い爪の長く伸びた拳が轟音を立てめきゃり、と潰れる)
        (そうして黒い血が吹き出し、びしゃりと境界に墨を溢したように撒き散らされ…数瞬の後、煙を立てて消えた)
        -- 2016-08-19 (金) 00:19:19
      • …久しぶり、と言うべきなのかね…(目の前に現れたのは、ほんのこないだまでよく見た姿でもあり)
        (しかし一方で見た事もない肌の色、そして爪を生やして、何より表情が、オーラが全く違い)
        おいおい、そんな乱暴に扱わねぇでくれるか?…それは、俺の弟子の体なんでな?(顔をしかめ、咎めるような口ぶりで)
        (しかしそれ以上に憤りを感じているのは、剣を握る手が血を流しそうなほどであることから、本来の緋乃であれば分かったはずだが) -- リカルド 2016-08-19 (金) 00:44:14
      • (一つ、境界を打った後は鬼は長く伸びた牙のような八重歯をぎりぎりと軋ませながら一歩引き、忌々しげにリカルドを見つめている)
        (口惜しや、口惜しや。獣の思考しか持たぬ鬼であれど、この結界を突破するのに、ただの男一人。しかも不味そうな肉が見合わぬことは直に理解できる)
        (それでも…この苛立ちなんとしたものかと、鬼は更に一歩引き、棒立ちとなり思考に沈み…)
        [ん…?オイオイ…おっさん無茶すんじゃねェよ。…おっさんこそしばらくぶりに見りゃ…貧相だったのが一層貧相になってんじゃねェか。身体、大事に扱えっての]
        (かつて言葉を交わしたこともある鬼面が代わりに浮かび上がる。その視線はあまりにも強く握りしめ過ぎて赤く鬱血する拳をみやり)
        -- 2016-08-19 (金) 00:55:34
      • …全く、イェチン様様だな…結界がなけりゃ、どうなってたかだ…(そうだったら流石にこんなに近寄れなかったので)
        悔しいか?あぁ、てめぇが悔しいように俺も負けねぇ…いや勝ってるくらい悔しいんだがな?(出来れば己の手でなんとかしてやりたいとも思うが)
        (今の自分の手、そして寿命なき体であっては、おそらく単独でどうにか出来るものではないというのは流石に理解しており)
        …ん?なんだ、お前さんか…久しいな?その状態でも話せるってのは有り難いもんだが… …どうにかならねぇか?それ(もちろん今の緋乃の状態のことで)
        俺の事はいいんだよ、元々棺桶に片足突っ込んでるようなもんだったしな?差し出して解放されるなら差し出しても惜しくはねぇくらいだぞ -- リカルド 2016-08-19 (金) 01:00:19
      • (境界を打った鬼の手は既に逆戻しのように治り、傷は跡形も無くなくなっている)
        (鬼面が言葉を語るも、鬼はそれを取るに足らぬと判断したのかただそこに立っているのみ)
        […逆に聞くがな。どうにかなると思うか?出来りゃそもそもこいつをこんなことにしてねェよ…]
        (呆れたように言う。しかしそれはリカルドのみならず無力な己自身にも向けられた言葉だ)
        […やめとけ](しかし続く言葉は強く、一息に斬るように否定を紡ぎ)[理由は二つあるが…]
        [まず…おっさんの身体を差し出した所で食われるのが精々だ、もし、仮に、仮にだが]
        [こいつを封印ごと移せるような神に等しい術があったとしても…今度はおっさんがこの餓鬼みてェになるだけだし、な](悔し気に、そう言い)
        [そして、もう一つは…](鬼面は、その時だけはどこか楽しそうな声を作り…)
        [この餓鬼なら言うだろうからな、そんな煙草臭い身体提供してる余裕があるなら、その分働いてツケを返して!とな]
        (言って、くくっ、と笑い声さえ漏らした)
        -- 2016-08-19 (金) 01:19:19
      • …そうか、お前さんには思いつかねぇか…ま、それは本心からの言葉なんだろうな…(なぜかそう信じる事が出来)
        (そして理由の一つ目を説明されれば)まぁ、そりゃそうなるわな。もちろんそれが分かってねぇ訳じゃねぇぞ?
        …そこらへんは、この街なら探せばあるかもしれねぇが…今の所手段も分かってねぇんだから、やる気はねぇさ
        言ってくれるもんだな、弟子二号は…確かに言いそうではあるな?(ようやく、肩を竦めるようにだが笑い)
        だが、だからってあきらめるほど往生際が悪い訳じゃねぇんでな…弟子二号の体を取返し、そいつをどうにかする
        …なに、俺だけじゃ何にも出来ねぇし思いつきもしねぇが…こう見えても、知り合いは多くてな?(ニヤリと) -- リカルド 2016-08-19 (金) 01:26:11
      • [今の俺ァ…いや、元からか…結局、こうやって喋ることしかできねェからな…]
        (だが、だからこそ伝えられることが…あるかもしれないと、鬼面は考えを巡らせる)
        [もし可能性があるなら…鬼を弱らせ、封印の術をかけられるようにすればいい]
        (白い装束を着た呪術師が思い起こされる、が、あの男は、己も…少女さえも邪魔だと言い切った)
        […それだけで、済むならば、だがな…](あの無機質な言葉に…不吉な予感を覚えて言う)
        [確かにおっさんはしぶとそうだがよ…無理はするな。ま…](しかし、口ぶりとは別に、少し安心したような声で)
        [おっさんがそう言うと、どうにかなりそうな気がしちまう気も…するんだがよ](へっ、と笑いながら、そう言い)
        -- 2016-08-19 (金) 01:44:04
      • つまりは、緋乃に取り付いてた鬼はお前さんじゃなかったって事か…結局は何者なのかは分からねぇが
        弱らせる、か…あの呪術師の兄ちゃんが言ってたように、とりあえずそっちの方向でやるしかねぇって事かね…
        ん?それだけで?…なんだ、まだ何か障害でもあんのか?いざ弱らせたら緋乃がダメになるとかだったら行動に移せねぇんだが?(困った顔で)
        俺は何回無茶するなっつわれるんだろうなぁ…まぁ、こんな頭になっちまったから自業自得でもあるが
        …なに、俺が仕損じたのは人生で一度だけだからな?途中に色々と失敗はあっても、だ(カラカラと笑い) -- リカルド 2016-08-19 (金) 21:44:42
      • [何者か分からねェっていう意味じゃ俺自身が何者やらっつー話だな…もはやどうでいいことだが]
        [今のこの身体を動かしてるのが…正真正銘の鬼だからよ](そんなことを自虐めいて言って)
        [いや…おっさんなら多分問題ねェよ。忘れてくれ](この男は正真正銘少女を救うことのみしか考えてないことは直にわかる)
        (しかしあの呪術師は…恐らくその逆。鬼を封することしか考えていないだろう…であるならば、少女が障害となり得る、と)
        [へっ、そいつァ頼もしいもんだな。この餓鬼も散々おっさんには小言言われてたからな、本当は自分で言いてェだろう]
        [俺にゃ大したことはできねェが…もう望むのはそれを叶えてやることくれェだ。……頼むぜ、師匠さんよ]
        (その言葉はもし鬼面に頭があれば下げているだろうと思えるほどに殊勝な響きを持ってリカルドへ。…祈りさえ込めて)
        -- 2016-08-19 (金) 22:08:44
      • それなのにこうして喋れるってのがどうも不思議でなぁ…いや、怪しんではねぇんだがな(これが悪人だとは到底思えずに)
        俺なら、か…(思い浮かぶはやはり呪術師、あれは回りがどうなろうと、周りにどう思われようと、事を成し遂げようとする、それは自分もよく知った姿でもあるだけに)
        なぁに、俺だけならお手上げだったかもしれねぇが…この街なら…いや、緋乃には積み重ねてきたものがある
        それが、緋乃を助けてくれるって訳だ…俺は、その場を整えるだけ…簡単だろ?任せとけ…(会話を終えると、背中を向けて帰ろうとするが)
        …あぁ、そうそう。弟子二号…頑張れよ、きっと取り返してやるからな(自分では意識もしてないだろうが、優しい声で語りかけるとそのまま立ち去り) -- リカルド 2016-08-19 (金) 22:19:03
  • 行方不明と言うでござるが一体なんかあったんでござるかなあ、おーい緋乃どのー? -- ササキ 2016-08-18 (木) 22:00:01
    • (ササキが覚えのある荒れ寺へと踏み入れれば、そこにうず高く瓦礫の山となって積もるは堂の残滓)
      (分かるならばその側にかつて彼が作ったロココ調の石灯籠の残骸…そして無残にも大破してしまっているハイエースを目撃できるだろう)
      -- 2016-08-18 (木) 22:05:57
      • 寺が吹っ飛んでござる…一体何が…(ロココ調の事はすっかり忘れていたため変な石灯籠があるな…と見逃してしまった)
        おおっ、ハイエースが壊れてござる!はて…堂に突っ込んで大破した…とも思えんような壊れ方でござるが
        多少の事故でどこかに入院しているとも思えんでござるしなあ、人でも轢いてしまったでござろうか… -- ササキ 2016-08-18 (木) 22:12:45
      • …まぁ似たようなもんではあるな。事故っつー意味合いじゃあよ。幸運にもまだ人は食っちゃいねェが(すぅ、と音もなくササキの後ろに現れる五分刈りの男)
        ササキ…だな。…ったくこの街には驚かされるぜ。堂々と仙人だの鬼だのが闊歩してやがる…(その片手には常は持たぬ数珠を既に持ち、僅か警戒心を漲らせ)
        -- 動念 2016-08-18 (木) 22:17:35
      • むう…?緋乃殿…?(もしやTSでもして戻れなくなったかと疑うが…続く言葉に別人であると納得する)
        ふうむ、緋乃殿ではないようでござるが…どちらさんでござろうかな?(数珠を持っているのを見れば)坊さんでござるか…(相手に合わせるスタイルでこちらも数珠を手に、黄金歴時代の鬼が所持していた古い品である) -- ササキ 2016-08-18 (木) 22:20:54
      • 俺は動念…。流れの坊主だ。お前のこたァあの餓鬼の事を調べてる時に調べさせてもらってる。………数珠まで持つかよ(はぁ、とため息をついて、手を立て短く祈る)
        …いや、すまねェな。知ってはいたんだが鬼やらにはどうにも職業柄な…。お前さんみてェな鬼ばっかなら俺も商売上がったりで万々歳なんだがなぁ(そうして、ようやく警戒を解いた風に)
        -- 動念 2016-08-18 (木) 22:26:55
      • 坊主を流れでやるもんなんでござるか…ロボ坊主といい坊主関係は妙なやつが多いでござるなあ…ああ、これは知り合いから授かった骨董品でござるよ、別に神や仏を呼び出したりはせんでござる
        ふうむ…いくらか鬼を見てきた…と言う事でござるか、拙者などはおおよそ、母親くらいしかまともに見たことはなかったでござるからなあ…緋乃殿はハーフみたいなもんでござったし
        さてや、あの餓鬼とは緋乃殿の事でござるかな? -- ササキ 2016-08-18 (木) 22:31:29
      • …どっかに寺を構えてなんてのは俺の性分じゃなくてな。つーかよ、普通の鬼はな、数珠なぞ手に入れても持ち歩きゃしねェもんなんだよ(びしっ、とササキの数珠を指し)
        俺も大概東国で鬼を見てきたが、お前みてェなのは始めて見たよ。人と和する鬼は数少ないながらもいたが、店を持った上に繁盛してるなんて聞いたこともねェ。
        (やれやれと頭を掻きながら、しかし口元はそれも悪くないと笑みを浮かべ)…そうだ。奴はその鬼を抑えきれず真の鬼となった。その結果が…これだ(と瓦礫の山を眼で示し)
        -- 動念 2016-08-18 (木) 22:39:59
      • 全国行脚でござるか…お遍路さんと言う奴でござるな(違う)えっ…?拙者の母はいつも数珠持ってたでござるが…不動明王とか呼んで風呂の火をつけさせてたでござるし…この数珠も黄金歴時代の鬼の遺品…らしいでござるからなあ(そう言われても…と頭をかく)
        むしろ地獄の獄卒とかやってるならみんな数珠の一つや二つ持ってるもんでござらぬ?
        こちらの国では種族が多種多様でござるからなあ、鬼…と言ったらオーガのような暴れん坊も居るでござるがまあ…亜人の一種程度でござろう
        ほほう…抑えきれず、抑えてはいたんでござるか…刺青と話をするような、何か共存関係みたいに見えとったでござるが… -- ササキ 2016-08-18 (木) 22:47:17
      • オイオイオイどんだけスケールでけェんだ俺のお遍路。既に世界半周近くしてんだぞ…?もう半周歩かせるのか…?
        ……風呂にお呼び奉るレベルじゃねェ……まァ仏さん達も割と気軽に現れたりするからな…よっぽどの気紛れだが…。
        そういう鬼共はある種役人だが…大体現世に現れてる鬼は仏法の庇護下にはねェ。信心あらたかな鬼がもし居るならそりゃぁ元が信心深かっただけよ。
        ……そうだったら、良かったんだがな。奴と話してた鬼は本当の鬼じゃなかったんだよ。俺も思い違いをしてたがな…(それに早く気づいていれば、と無念の相を作り)
        -- 動念 2016-08-18 (木) 23:00:15
      • 折角半周したなら全周してもいいんでござらぬ?そうすると区切りも良いでござろう…
        真言を唱えると該当する神仏がやってきて使役するとか聞いたでござるなあ…薬師如来だけはもう呼べないとかなんとか…
        あの世じゃ役人でござるがこっちじゃアウトローばっかりだったのでござるか!なるほど…仕事をサボったら上司も庇護してくれぬとそう言う…(それっぽい例え)
        ほう…本当の鬼じゃなかった…?刺青が動いていたのは何か別の存在だった、と言う事でござるか -- ササキ 2016-08-18 (木) 23:04:00
      • 気軽に言ってくれる…!それも悪くねェかもしれんが…まあどちらにしろ、まずはあのごんたくれの餓鬼をどうにかしてからだな。
        ふむ…となれば応身の一部か。とはいえ普通はそのお力の一部を借りるのが精々だが…ん?薬師仏だけ?治病を司る仏だが…なんだ余程殺生を行なったか。
        どうだかな。地獄に居る鬼と現世の鬼じゃ性質がそもそも違う。幅広い意味で言うならこっちの悪魔にも元からの悪魔と堕天した天使やらが居るようにな。
        …そういうことだ。あいつはな、鬼じゃなく…あいつの唯一のダチだった。本人も、刺青…鬼面も認めようとはしねェだろうがな(と溜息をついて)
        -- 動念 2016-08-18 (木) 23:18:45
      • ワハハ、ここまでどれだけの時間がかかったかはわからんでござるがなあ…ふむ、どうにかする…どうしようとしてるんでござろうか
        数珠玉一つ一つがそれぞれの神仏に対応していたとか…誰かに薬師如来はくれてやったそうでござる…ああ、まあ和の国の人食い鬼でござったそうだから人は相当殺してるんでござらぬ?酒呑童子、と言うそうな
        エルフや天使そのものも悪魔に分類する者たちも居るくらいでござるからカテゴリ分けは難しいのでござるなあ…オーガも鬼の一種と言うがあれは恥性を持っているのかも妖しいでござるし…
        唯一とは面妖な、友人Aくらいの気持ちではおったんでござるがなあ、だとすると別の鬼が出てきて体を乗っ取ったと? -- ササキ 2016-08-18 (木) 23:29:38
      • 救い出す。…そのためにも色々と動いているところだ。幸い手助けしてくれる酔狂も居たようだしな。
        …俺の数珠と少し似ているな。俺のァ後から術を込めて使う使い捨てだが…。…酒呑だと?そんな大妖がどうして(さて己の知る鬼と同じ者かと首を捻り)
        言ってしまえば遥か昔、一説には体躯大きく、肌白い西の者を自分たちと違うとだけで鬼と呼んだとも聞く。見る物が見れば…俺でさえも鬼に見えるかもしれん。
        …確かにこっちに来てからは違うな(と友と名乗る鬼に、ふ、と優しげな笑みを一つ浮かべ)東国からここに来るまで…その間のだ。友らしき者は幾人か居たようだが…全て骸となった。
        そういうことだ。あいつは二つの厄介者を身体に飼ってたことになるな。…片方は厄介者では済まなかったという話になってしまうが。
        -- 動念 2016-08-18 (木) 23:43:27
      • 救い出す、でござるか…退治だなんだと言う訳ではないのであればまあ良いでござるなあ、どうにか方法でもあるんでござろうか?
        もしかしたら同じような宗派の物だったのやも…戦利品と言ってたでござるからなあ…一度退治してその肉を食ったら自分が鬼になっていたとか、それ以降二代目として暴れて…
        自分が退治されそうになったのでこちらに来た、と言ってござったなあ…ともすれば母もまた元人間の鬼と言う事でござるよ(ただし、どんな人間だったかの記憶は失われている)
        見間違いもひっくるめて全部鬼、と言う事でござるか…まあ、わからんものはみんな鬼だ!説はわからんものはみんな悪魔だ!とも同じでござろうなあ
        ほう、らしきものが全員死んだでござるか…その非常に厄介なものにやられて、と言う事でござるかな?
        さて母と比べて随分と格の落ちる鬼の拙者が躯の仲間入りをするや否や、でござるなあ -- ササキ 2016-08-18 (木) 23:52:19
      • これでも俺は法力にちっとばかし覚えがあってな。鬼を弱らせれば再度封印することも恐らくは可能だ。
        …ただな、俺は正面切った荒事は滅法苦手だ。だからこの街の酒場に依頼やらを出させてもらった(そう言えば片眉を上げてササキを見やる。さて荒事や得手とするのだろうかと)
        いかん。それはいかんぞ。妖かしの肉喰らうはそれと同じになることを受け入れるのと似たようなものだ。…伝説の更に伝説に聞くあの酒呑であるならば…人など飲み込まれたのも納得できるが。
        ある意味、だが…そういうものもいた。……一つ、言えることはどれもそれはあいつが望んでいなかったということだ。そして、それは…お前も同じだ。
        命が尊いと思うなら…(と視線を鬼の巣くう山へ向け)あの山には近づくな。それでも近づくというのなら…お前の母上には及ばぬが俺の術を授けることもできるが。
        -- 動念 2016-08-19 (金) 00:06:07
      • 弱らせればよいと…なるほどなるほど、至極単純でござるなあ、わかりやすくて良い
        ほうほう…依頼にと、なれば…ああ…その、殺さぬようにと記しておいた方が良いでござるな…(鬼になった緋乃がどれほどのものか想像できないので、オーバーキルされないかと心配して)
        食ったらいかんのでござるか!なんで食ったかは知らんでござるがまあ手遅れでござるなあ、今では肉欲…食事と性的な意味の両方で厄介な御仁でござるよ…うん(何か黄昏る表情で)
        望まないと言う事は死ぬ事を、でござろうか…それとも友人となる事を、でござろうか?
        さて…まあ今日の所は帰るとするでござるが、弱らせるだけならここからでも十分…3000m級程度までの山なら拙者でも消し飛ばす事は出来るでござるよ
        太陽の光をこう…ぎゅっと集めて…地上で炸裂させれば金属が瞬時に蒸発する焦熱地獄で山の一つや二つ…が、それでは緋乃殿の肉体も消し飛びそうでござるからなあ…
        丁度いい頃合いの何かを含む必要でもあるでござるなあ、さてや、それでは拙者はひとまずこれで(大規模殲滅を得手とするが通常戦闘となるとあまり…なのであった) -- ササキ 2016-08-19 (金) 00:16:12
      • ……確かにその通りだな。弱らせるのはいいが、それが上手く行ったとして弱らせ過ぎて餓鬼もろとも殺されてはたまらん(頷いた後、酒場の依頼書に一文が追記されたとか)
        古来より相手を食うってことはその力を取り込むってことだ…が、普通に考えてヤバそうな奴の肉を食うな、っつーことだ…。毒だったらどうすんだ(こっちは呆れた表情で)
        死を、だ。俺ァ人づてに情報を集めただけだがな…そんな情報の切れっ端からでも流石にあいつの思いは読めた。…表にはそう出さんがな(見守る立場だったからこそ、分かることもある、と思い)
        ………なぁ、やっぱお前さん鬼っつーより角生えただけの妖怪か何かじゃねェか…?確かにそれなら弱らせは出来るだろうが…できれば、やめといてくれ(と苦笑し)
        あいつごと殺すんじゃ…あの餓鬼が大嫌いだったクソ真面目な坊主たちと一緒になっちまうからな…ああ、それじゃあな(複雑な表情で、懐から煙草を取り出し紫煙を燻らせながら…不思議な鬼を見送った)
        -- 動念 2016-08-19 (金) 02:05:24
  • -- 2016-08-18 (木) 21:43:34
  • -- 2016-08-18 (木) 21:43:31
  • -- 2016-08-18 (木) 21:43:28
  • 何とも、随分と荒らしたものだね…(荒れ寺は荒れ山に、その瓦礫の上に立つ着物の青年は頭を掻いて)
    暴走したとは聞いたが、いや、内包していたものがどれほどの物だったかが窺い知れるというものだ…よい、しょ
    (横倒しになっていた墓石を一つ押し上げて立たせる 皹入ったそれを手で軽く払って小さく拝んでから、月夜に黒々と影を立てる山々を見回した)
    (そのうちの一つに視線を止めれば、目を細め) あの山に、鬼が住まう、か -- 虎彦 2016-08-16 (火) 21:25:47
    • (冬の乾き澄んだ空気がその視界に明瞭にその山を映す。他の山と比べても明らかに木の量が少なく季節とは言え枯れ果てた山を)
      赤羽根…虎彦か(突然、空気が語った。いや、その声は確かに人が放ったもの、しかしその数瞬前までに人の姿は周囲にあっただろうか)
      …ああ、スマンね。どうにも盗み見盗み聞きが癖になってらァ。ともあれ今ァあの山は鬼の住処っつーよりゃ鬼の檻ってとこだな。
      (続く言葉と共に、同じように山を見ながらしゃがみ込んで両巻煙草をぷかりと吸う五分刈り頭の壮年の男性の姿を虎彦は認めるだろう)
      (それは煙草まで吸いながら虎彦程の使い手が何も気づかぬには近すぎる距離、隠形術をその身に纏っていた坊主が、がりがりと頭を掻きながらボヤくように)
      -- 2016-08-16 (火) 21:57:09
      • 冬の山にしても、荒涼としている、あれではまるで、自分がここにいる、見つけてくれと言わんばかりじゃあないか…鬼の所業か、緋乃の意志か…
        … (一瞬、手の甲が柄に滑り、半身をそちらに向ける しかし、鞘内を刃が走らなかったのは、その男に殺気が無かったからだ) ご存知のようで、御坊 この寺に住職が居られたとは、とんと聞きませんでしたが
        (自然な形で鞘に手を置いたまま、身体を向ける、顔は鬼の山に向けて) 檻…何をご存じなのですか、彼女の何かを、ご存じで? -- 虎彦 2016-08-16 (火) 22:07:29
      • 無礼は許せ、性分でな(両巻煙草を地面に捨てて、足でぐいと踏みにじり火を消せば、鞘にかかった片手を横目に見ながらのそりと立ち上がり)
        …あそこにゃ結界が張られた。とびっきりの強力な奴が。お前も知ってるだろうこの街の道場の主に。それに囚われ…鬼はあの山で待っている。餓鬼が…緋乃が力尽きるのを。
        (山を見つめたまま、険しい表情を作り)……奴ァ今でもあそこで一人で戦ってんだよ、地獄の釜の蓋を必死にちっぽけな身体で抑えてな。
        -- 2016-08-16 (火) 22:20:32
      • 驚きはしましたが、責める事など 僕の方こそ、失礼を …緋乃が押さえているという鬼が出て来たのかと
        …老師の結界… それは、鬼も歯噛みする事でしょうね 破格の力だ、鬼の力では手が出ないでしょうね…少なくとも、緋乃が抑えてくれている間は
        (そう付け加え、眉根に力を籠める 闇山を睨む様に、姿が見えぬ妹弟子を慮る様に) …僕の知る緋乃は、強い子です …一人で頑張ろうとしてしまう程に
        (呟き、左手を鞘から離せば、男に目を向け、その場で膝をつく 座礼) 御坊、貴方はあの子の何かをご存じなのでしょう 僕の知らない緋乃の事を、教えてはくれませんか? -- 虎彦 2016-08-16 (火) 22:33:20
      • そもそもが神仙なんてのが人の世に普通に混じってんのが何かの冗談みてェなもんだからな…。それと出会えたこと、それが奴の天運とも言えるか。
        (そして、この青年にも。眉間に皺を寄せる虎彦を見て、目を細める。妹弟子を想うその姿に…少女は良い縁を持てたと)
        オイオイ、やめろやめろ!俺ァそんな立派なモンじゃねェ!(と、地面に直接膝を付いた虎彦に少し慌てて手を振り)
        …ったく、実際面付き合わせてみりゃァ想像以上の男だなオイ。さぞやあの餓鬼も見習う所は多かったろうよ…(やれやれと頭を掻き)
        (そして坊主は静かに語った。少女に憑いた鬼の物語を。遥か東国の地にて鬼を宿し、逃避行の果て、この地へと僅かな望みを賭けて至った少女の物語を)
        ……俺が始めて見たあいつはな、まるで本当の餓鬼か何かだと思ったくれェだった。それがいっちょ前にここで"人間"やれてたのは…お前らのおかげなんだろうな。
        -- 動念 2016-08-16 (火) 22:49:45
      • 鬼を身に宿した少女が歩く街ですから、それ位は珍しくも無いのでは? (混ぜっ返すように言った表情はまだどこか子供っぽいが)
        (座礼から上げた顔は、真っ直ぐに男を見る 強い目で見つめ、小さく首を振り) 少なくとも、僕よりはきっと、緋乃の事をご存知だ …普段の緋乃ではなく、あの子が頑張って押さえつけてきた緋乃の事を
        想像以上…? (疑問を持つが、いったん話を黙って聞き、そして、ゆっくりと息を吐き出す) …僕のお蔭じゃなく、緋乃自身の心根がそうさせたんですよ、きっと あの子は強くて、優しい子だから
        (話を聞く間、じっと座したままだったが、男に促され立ち上がれば、) 僕の名前もご存知のようでしたし、貴方は一体? -- 虎彦 2016-08-16 (火) 22:58:43
      • へっ、ちげェねぇな(無邪気に言うその姿を見て、少年の面影を感じながら笑って言い)
        ああ、あいつの周辺のこたァしばらく前から調べてたからな…とはいえままあることだが…情報で知ると見るとは違ェもんだ、とな。
        (噂通りの堅物ではあったが、とそれは口にせず)っと、また無礼だったか(と、くつくつ笑い)俺は動念っつー流れの坊主よ。
        奴に十年前…あの僧服をやった。ただそれだけの男だ。…そして今はあの餓鬼を救済したいだけの、な(後半の言葉はどこかそっぽを向いて、柄でもないという風に)
        -- 動念 2016-08-16 (火) 23:14:37
      • 周辺の事は、ね…さっきの隠形、察しきれませんでしたから、相当な手練れとお見受けしております まったく、鍛えても鍛えても上が居るなあ、この界隈は
        (呆れたような口調ながらも、どこか楽しそうに意欲を燃やす青年は、何か頭に浮かべた動念に、どうしました?と首を傾げる 変な察しの良さがあった)
        動念法師、僕の事は虎彦と …緋乃の僧服の… …成程、なら、僕は貴方の敵ではありません …緋乃を大事に思ってくれている方なら 僕も、あの子を助けたい 僕はあの子にも救われたから (そっぽを向く動念、真っ直ぐに言う虎彦) -- 虎彦 2016-08-16 (火) 23:22:28
      • 俺ァそれしか得手がねェだけよ。今ならお前がその鞘を一発振るうだけで俺ァ地面と接吻するハメになるぜ?(くつくつと笑いながらそんなことを言い)
        (そうして真っ直ぐに前を見て言い切る虎彦に、どこか眩しそうにしながら、がりがりと五分刈りの頭を掻いて目を逸らす)
        ……そんな大したモンじゃねェよ。あの餓鬼の窮状にも十年間気づかなかったただの呑んだくれさ(それでも、一夜の時は坊主の脳裏からは消えることはなく)
        だが、虎彦がそう言ってくれるなら…助かる(そう言い、頭を下げる)俺は荒事はてんで駄目でな。それを補助してやることならできるが…。
        -- 動念 2016-08-16 (火) 23:38:11
      • でも、その気になれば僕から逃げる事は容易い それに何より御坊の強みは、僕に鞘を振るわせようと思わせ無くした所です (穏やかに目を細める)
        大したものじゃない、ですか… 十年前にあの子が変わるきっかけになっただけでも大したものだと思いますけど (そう言ってから、こちらも頭を下げて返し)
        じゃあ、大した者になりましょう、御坊 緋乃を助けて、胸を張って (強く頷いた 大人になっても図抜けた真っ直ぐさは失っていない)
        補助、と言うと…? 正直、僕は多分、今の緋乃と対峙しても真正面から切り結ぶしかできないんです 魔法はまだ入門レベル、剣気は修行中 …補助があるならば、甘えたいところです (ハッキリと弱音を見せる) -- 虎彦 2016-08-17 (水) 21:53:51
      • (目を細めた虎彦に片眉をぴくりと上げる。その反応自体が青年の語る言葉を肯定している。確かに虎彦が剣を振るえば男は地面に倒れ伏すだろう)
        (しかしその一合。それさえあればその一合を引き換えにして男は命を確実に守り遁走せしめる。それが男の"戦い方"なのだから)
        …やれやれ、そう言うお前が大したモンだぜ。いいんだよ、俺ァ管巻いて地べたを這いずり回ってりゃな。…そのついでに死ななくていい命が一つ増えりゃ、儲けモンってもんだ。
        (青年の芯の太さ、真っ直ぐさ、それに当てられ苦笑を浮かべながら)…ああ、そうやって言い切れちまうのがお前の強さなんだろうな。固くも在り、柔くも有る。いい男になるぜ。
        (呟けば、虎彦の鞘を見つめる男、その男の片手には、ふ、といつの間にか数珠が絡みつき、りぃん、と鈴のような音が響く)
        隻手音声…未生善令生(男が静かに抑揚無く唱えれば、男の回りに浮かぶ拳大ほどの半透明な珠。幾つも円輪上に並ぶそれはまるで数珠のように)
        こういうの、とかだな。軽くかけた程度だが…今なら一発じゃ倒れねェぜ?(そうして、くい、と数珠を持った手を手招くようにする。すなわち、ヤってみろ、だ)
        -- 動念 2016-08-17 (水) 22:18:17
      • 打ち勝つも逃げ遂せるも、一つ、命を守る手であれば、貴賤は無い 御坊に逃げられる、と自分で認めるのは戦士としての未熟の証ですが (師匠と老師に叱られる、と肩をすくめて)
        硬く叩きあげてくれる人と、柔軟に溶かしてくれる人、二人が僕の師なので そう評してくれるのは、弟子として面映ゆくもあり、嬉しくもあり 有難うございます、御坊
        とは言え、早く良い男になりたいものですよ 好きな人には中々振り向いてもらえないものでして (軽口を叩きながら、一歩離れる 動念の動きを見守る目はすでに剣士の目に切り替わり)
        一発では、ですか 成程 (つらりと涼しげな音を立てて抜き払う脇差 御免、と一声かけてから、まずは一撃、大上段から力を込めて!) -- 虎彦 2016-08-17 (水) 22:43:38
      • 礼なんて要らねェよ、言うならその師匠達に言ってやりな(そう言いつつ、懐から今度はゆっくりと両巻の煙草を取り出す)
        焦るな焦るな、焦るだけ身は縮こまり飛ぶ足は鈍るぞ。…女ァなんてあっちから振り向かせるモンなんだしよ(マッチに火を付け、煙草に近づけ一息)
        (打ち込みの前にわざわざ一声をかけたことにまた苦笑を浮かべつつも、それがこの青年なのだと男にも分かりかけてきた)
        (そんなことを思いつつ、真っ直ぐに切り落とされんとする刃に対し、男はぷかり、と紫煙を吐きつつ白昼煌めくその一刀を見やる)
        (瞬間。鈴が激しく打ち鳴らされたような音が辺りへ響く。それと同時に男の回りの珠が三つ、大きくひび割れ…宙に溶けていく)
        …ほう、流石だな。ただの一刀で三つか。並の剣士じゃ一つ割るのが精々なんだがな(などと言いつつ、じりり、と微かな焼ける音を立て煙草を吸う男は髪の毛一本たりとも切れていない)
        -- 動念 2016-08-17 (水) 22:58:53
      • お二人には稽古の前後に気持ちは伝えていますから (さらっとそんな事を言う大人の顔と、) …振り向かせる、かあ… (悩む子供の顔だった)
        (そして剣閃 動かぬ男を見ても、しっかりと振り切るその刀 初めて会う相手だが、何かしらかの力量は感じ取れていたから)
        (音 手の中握る柄の内に軽い感覚 水晶のような球が弾けて消えれば、露を払うように一度刀を振るって鞘に納める) 成程、自動防御 …いや、一定量の威力を身代わりに壊れるのか…
        成程、これなら逃げの一手が更に広く掴めますね (男の隠しだねを見せて貰えば、世界は広い、と好奇心旺盛な顔で) …これで威力を受け止めて、…ふむ (何か思いついたように首をひねり)
        …御坊、この数珠の弾を一つ、僕に譲ってはいただけませんか? -- 虎彦 2016-08-17 (水) 23:13:25
      • (ふう、と細く長く紫煙を吐きつつ、先ほどの剣閃、鞘に収められる脇差しを見て思う。迷いのない清冽な太刀筋だと)
        (良い師が付いている。少女がこの街でやっていけたのも恐らくは彼の師が良い影響を与えていたに違いないと)
        言われるまでもねェ。元よりあの餓鬼を助けようなんて酔狂にはくれてやるつもりだった(言えば数珠の紐を解き、年季の入った焦茶色の主玉を一つ外し)
        (それを口元に近づけ一つ口の中だけで何事か呟けば、ひょいと投げ渡す)使う時はそれを持って念じろ。そうすればさっきと同じような珠がお前を守ってくれる。
        …長年俺が込めたありがた〜い法力が篭ってるから無駄遣いするなよ?(と、好奇心に染まったと見られる表情に苦笑しつつ一応釘を刺すように)
        必要であれば他の術を込めてやることもできるが…(どうする?と視線だけで問いかけて)
        -- 動念 2016-08-17 (水) 23:28:35
      • それなら、そのご好意を頂戴します でも、酔狂じゃあないですよ、緋乃を助けたいと思う友人は、きっと、必ず、沢山いますから 数珠玉が足りなくなっちゃいますよ
        (そう言って笑いながら、両手でしっかりとその球を受け取り、懐にしまう ポン、と胸元を叩き) 確かに 守りの玉、お預かりしました 無駄には使いませんよ、…まあ、使わずに済むのが一番なのですけど
        (そして、視線を向けられれば少し考えて) ああ、もしお力を借りられるなら、お願いしようかな 術ではありませんが、必要な事 (そう言ってから、襷がけに袖を縛り上げて)
        墓石を起こすの、手伝ってください 緋乃の事は緋乃の事ですけど、それはそれ このままにはしておけませんし、お経の一つでもあげていただきたいですし
        (ぐるっと見回した荒れた寺、薙ぎ倒された墓石) 頑張りましょうっ、御坊っ (ふんすっ、と気合を込める青年なのだった) -- 虎彦 2016-08-17 (水) 23:48:33
      • (虎彦が袖を捲りあげれば一体何を?と片眉を上げ、訝しげな表情を作るが、続いた言葉に鳩が豆鉄砲を食ったような顔となる)
        ……これを?俺が?お前と?(見渡せば遠くのものはまだしも、堂に近い物は完全に薙ぎ倒されている。その数数十では効かず、下手をすれば三桁に達するだろう)
        …………(はぁぁぁー、と根本まで吸った煙草の煙を、盛大なため息と共に吐き出す。本当に、本当に聞くと見るとでは大違いだと)
        あれよ、お前よ、坊主向いてるぜ。…マジで(そして煙草の吸殻をその辺に捨てようとして…きらきらとした眼で気合を入れる虎彦をちらりと横目で見、揉み消して懐にしまい)
        (がりがりと頭を掻きながら、肉体労働は向いてねェんだよ、とうんざりとした顔で青年に続き…日が暮れるまで墓石を起こす二人の姿がそこにはあったという)
        -- 動念 2016-08-18 (木) 00:06:49
  •   -- 2016-08-16 (火) 01:25:28
  •   -- 2016-08-16 (火) 01:25:23
  •   -- 2016-08-16 (火) 01:25:22
  • ゴン ゴン ゴン(どこからか聞こえる丑の刻の音。崩れ落ちた廃寺にわけいるものが居る)
    ……(女は無言のままあたりを睥睨し、地を叩く。 気脈、ここには陰の気が地下の奥深くを通り、流れている。この寺はその脈の、瘤の上に建てられている。)
    ……(女は気脈の向こう。夜の闇に立ち上がる山へと目を向けた。 気脈はそこへ続いている。鬼のいるならばそこだ。女は駆けた。
    常人では目で追うことすらかなわぬ。 正確に、地脈の上の踏みしだきながら、その山の麓へと踏み入れた。) -- イェチン 2016-08-15 (月) 21:28:24
    • (山に漂うは尋常ならざる濃度の陰の気。常人ならば一息呼吸をするだけで心身を害しえるそれが山中には満ちている)
      (しかし人にて人に在らず、人の理を超え地となるに至った彼の仙道にはそのようなもの、それこそ霞と大差あるまい)
      (それを示すように…いや、それ以上に。超常の視界には微かに黒々とした靄のように見える瘴気は、傍目にはただの幼い少女に見える彼女に近づけず)
      (遠巻くようにその周囲を漂うばかり。その女が地脈を追えば、それは山の中腹への道となり流れ行くのが感じ取れるだろう)
      -- 2016-08-15 (月) 21:36:44
      • むぅ…この辺りの諸神は何をしている…この有様では草木もまともに育たぬだろうに。(季節は冬、陰の気の最も栄、種子の閉じる時期
        気の流れにそって、山中へと足を踏み入れる。立ち枯れした樹木の中にあって、なおも抵抗するかのように生きる一本の気に手を添えた)
        強い木だ… 少し私に力を貸しなさい。(女は木に自らの血をもって呪を書いた一枚の布切れを取り出し、木に貼り付ける。
        釘をさしたわけでもなく、布は木に容易に張り付き、離れない。その布は「朶鬼」ならばよく知っているはずのもの、別れ際に彼女自身がイェチンに渡したハンカチだ)
        ・・・臨兵鬥者皆陣列前行(九字の言葉をつぶやき、そしてさらに詞を重ねる)
        今年今月今日今時、当仙、葉青の敬いまつる。天地の諸御神たちに平けくおたひにいさふべしと申す。事別け、詔たまわく 穢れ悪しき疫鬼の所々村村にかくりかくられるをば、千里の外 四方のほとり
        遠く遠くへとその住処と定めたまひ…五兵をもちて追走り、刑殺かむぞと聞き食ふと詔たまふ。
        (それは祓いの言葉、女はこの山に満ちる瘴気をまるごど勧進せしめんと謀った。鬼をここから出さぬために。) -- イェチン 2016-08-15 (月) 22:01:40
      • (山に踏み込んだのが、もし、ただの人ならば鬼は気にも止めなかったであろう。迷い込み山に上がってくればよし、ただの肉として喰らうのみ)
        (瘴気に惑い苦しみ山を離れるのもよし、相手にするまでもない。我がすべきは身の内の脆弱な人の魂が力尽きるのを待つのみと)
        (だが、鬼はそれを無視することなど到底出来なかった。出来るはずもなかった)
        (それは地上の太陽の如く、陽の気を燦々と身に纏い自分の物となったはずの領域を浸し来る)
        (最大級の警戒を発し、益々山中を満たす瘴気を濃くさせながら、既に枯れてしまった一本の木にひととびに飛び上がり、先端からその方向を睥睨する)
        (さすれば鬼の千里眼に捕らえられたは赤き衣を纏う女の姿。地に通じ天に通じ極みへと達した者)
        (か、と目を見開き、忌むべき敵の姿を見れば…その女は見覚えのある布切れを木に張り何かをしている。それは少女の内に居た頃、少女が女へと贈ったもの)
        (女が何をしているかは分からない、分からないが。本能が告げる。邪なる者の内から湧き上がる脈動が告げる。あれは…危険だと)
        -- 2016-08-15 (月) 22:20:20
      • 見ているな鬼よ……私を、見ているな。鬼やらい(一際大きな声を発し、手にしていた棍棒で傍らの木を打った。奇妙なトの字をした棍棒、トンファー。傷と血痕に塗れたそれは山全体に音を響かせた)
        よし、よし、吉。お前はもはやどこにもいけん、時期にこの地に満ちる陰気も薄れていくだろう。朶鬼ォォォ!!(女は鬼がかつて名乗った名を呼んだ) -- イェチン 2016-08-15 (月) 22:30:10
      • (湧き上がる危機感に混じって、その独特な棍棒を赤黒い瞳に止めた時、ゆらり、と鬼の身の内の少女が僅か鼓動する)
        (しかし総毛立ち、滅すべき敵を見定めた鬼はそのような些事を気にもとめはしない。だが棍棒は遥か遠く、如何な鬼の膂力を用いても振り上げられた後)
        (かくして、峠に乾いた音が響き渡り、山中に潜む鬼を追儺の鬼にせしめんとした女の試みは成就する)
        █▓▓▓─██▓▓▓─██▓██▓▓▓─██▓████▓█!!
        (女が打った木を境界として、此方と彼方が分かたれる。急速に木の向こう側の瘴気が消えたのが鬼の肌に感じられる)
        (その時、鬼が吠えた。女の呼び声に反応したか、閉じ込められたことを悟ったかは分からない。しかしその声は怒りの色濃く)
        (山に響き渡った祓えの音声をかき消すかのごとくそれは響き…次の瞬間、木の先端から弾丸のように飛び落ちる。それが向かうは女、赤の衣へと)
        -- 2016-08-15 (月) 22:52:53
      • (朶鬼が飛び来た時、すでにイェチンは結界の外に体を置いていた。圧倒的な隔絶。僅かな距離を置いて両者は対峙する。
        陰と陽、両者は対極のうちにあった)……鬼となったものを見るのはお前で二度目だ。一度目は私の父…私は父を救うことはできなかった。だが、二度目はそうならん……。必ずお前は連れ戻される。 -- イェチン 2016-08-15 (月) 23:00:13
      • (轟音。地を跳ねる獣と化した鬼は、結界なぞ知らぬと突進し、無造作に境界へと拳を殴りつける)
        (しかし、万象に通ずる仙道が行なった術は不動の壁の如し。辺りの空気を震わせながらもびくともしない)
        (あまつさえ、境界へ触れた拳は奇妙に陽炎のように揺らめいてぶすぶすと煙を立て焼かれている)
        (その様子は、日の元に出られぬ生き物が、強過ぎる太陽光に焼かれるように)
        -- 2016-08-15 (月) 23:08:48
      • やめておけ鬼よ、お前がどうあがこうとこれを破ることは出来ぬ。身をいたずらに汚すばかりだぞ!
        鬼よ、聞け。なにゆえにお前はその体を喰らう?なぜ禍を起こして世を乱し荒ぶるのか。
        お前のしていることは理を曲げる事、陰の強すぎればやがては陽に溶け消える、わからぬことではあるまい! -- イェチン 2016-08-15 (月) 23:18:11
      • (女が鬼へ語りかける間にも、鬼は焼けた拳を繰り返し繰り返し打ち付けている。そのたびに枯れかけの木々は揺れ、乾いた葉々が落ちる)
        (幾度も幾度も打ち付ける間に、拳は完全に潰れ、もはや腕を丸太の如く殴りつけて、ようやく鬼は止まる)
        (何故喰らう?我は喰らう者だからだ。何故乱す?我は壊せし者だからだ)
        (その問は空に何故空であるかを問うに等しく、言葉の意味こそ朧気に掴めど"そういう"存在である鬼は意に介せず、ただひたすらに壁を睨む)
        -- 2016-08-15 (月) 23:31:27
      • 愚かな、お前にも本当は役目のあったものだろうに……(結界、それは目には見えぬ微かな皮膜のようなもの、しかしそれはいかなるものより強固な隔たりである。
        強力な陰気を纏う鬼と、皮膜一枚を隔てて顔を突き合わせた。その目には怒りはなく、厳しさもなく、慈しむようなものだった。)良いか鬼よ、天理を踏まえぬ牛頭怨霊よ。
        じきにお前を連れ戻すものが現れる、必ずだ。もしそれが叶わぬのならば…私がお前を滅するだろう。せいぜいそこで足掻がいい。
        (これにて呪はなった。徐々に夜の明けるのを感じ、女は鬼に背を向け山を降りてい行くのだった。)
        臨兵鬥者皆陣列前行…(すり足、左、右、左、右 右、左、右、左 兎歩と呼ばれる独特の歩法で山を清め、去っていった) -- イェチン 2016-08-15 (月) 23:49:02
      • (通常の結界であれば力づくで破ることももしや叶ったかもしれない)
        (しかしこの結界は少女に未だ引き摺られる鬼にとって間接的ながらも縁を結ばれ侵し難く屹立する)
        (恨めしげに木に貼り付けられたハンカチと、女の持つトンファーを忌々しげに見ながら、鬼は思考する)
        (少なくとも、そう少なくともただの膂力ではこれは破れぬ。もし力を注ぎ込み破れたとしてもその消耗は筆舌に尽くし難ろう)
        (ましてや今、当の結界を張った主が居る状況ではそれは自殺行為。怒りに登る頭を抑えながら鬼は鬼なりの理性を巡らせる)
        (今は、今は見逃してやる)
        (元より全ては時間の問題。時が経ちこの肉の身が弾け飛んだその後は縁も切れる。その時は厭うこと無く力を振るおう)
        (そしてその暁には、絶対に、絶対にそのちっぽけな体を咬み尽くし咀嚼して飲むこと無く地に吐き捨ててやる)
        (そうして、奇妙な足取りで去る女の背を常人ならば眼力だけで殺せるような殺気を込めて睨みながら、鬼は山の奥へとゆらり消えていった)
        -- 2016-08-16 (火) 00:03:51
  •   -- 2016-08-14 (日) 22:41:06
  •   -- 2016-08-14 (日) 22:41:02
  •   -- 2016-08-14 (日) 22:40:58
  • ……おいおいおい。(キョーレンは友人を訪ねて荒れ寺を尋ねていた。冒険で多めに報酬が入ったので、食事にでも行こうと誘うつもりだったのだ。だが今彼は正確には、荒れ寺だったがれきの山を尋ねていた。)
    どういうことだ、これは。緋乃、緋乃! いないのか!(がれきの山に変じているとはいえ、部品部品の残骸を見ればそれがもともと緋乃がいた荒れ寺だということくらいは分かる。トラブルに巻き込まれたかと、大声で友人の名を呼ばわる) -- キョーレン 2016-08-14 (日) 16:24:02
    • (かつては刺青を半身に彩った少女が暮らしていた荒れ寺、そこは今は見るも無残な光景と化している)
      (男のあげる声は虚空へと消え、いつもならばひょっこりと現れる少女の痕跡は跡形も無い。しかし、その呼び声は、違うものを呼ぶ)
      んん…お前は…経蓮つったか。あの餓鬼はここにゃ居ねェよ。…まだギリギリ、この世にゃ居るが、な。
      (物陰から、ふらりと着崩した僧服の男が現れる。五分刈りの頭をがりがりと掻きながら、あくびさえ上げつつ)
      -- 動念 2016-08-14 (日) 16:32:15
      • ……!(現れた気配に振り向くが、着崩した僧形の男と見るとまずは合掌して礼をする。)
        しかり、霧景・経蓮だ。色々と聞き捨てならないのだが……まず、御坊はどちらさまだろうか。俺のことは存じておられるようだが……? -- キョーレン 2016-08-14 (日) 17:13:04
      • (片眉をあげて経蓮が礼をしたのを見れば、幾分雑な返礼を返す。それはむしろ経蓮の方が丁寧な礼であったくらいに)
        俺は動念っつー流れの坊主だ。あの餓鬼…緋乃を追ってこんな西のくんだりまでえっちらおっちら来たただの節介焼きよ(そう言い、くつくつと笑いながら)
        …お前のことは知ってるよ。刀を使う、退魔師の一族。闘技場でもそれなりに暴れてたみてェだしな、調べるのは苦じゃなかったぜ。なかなかの腕前みてェだな?(そして、鋭い視線を経蓮に走らせ)
        -- 動念 2016-08-14 (日) 17:23:28
      • なるほど、緋乃の知り合いだったか。(一つ頷いて納得した様子)
        ああ。友との手合わせも、魔物と斬り結ぶことも、この国に来てだいぶ行った。鍛錬も欠かしていない。誇れる腕ではあるつもりだが……。(真正面からその視線を受け止め)
        本題に入らせていただきたい。緋乃に何があった。ギリギリこの世にいるとはどういうことか、動念師。 -- キョーレン 2016-08-14 (日) 18:00:50
      • (全く臆せず見返してくる視線に、にやりと口元を歪ませる。己の腕を頼み、信念に真っ直ぐないい目だ、と)
        あの餓鬼はな…身体に飼ってた鬼を開放しようとしていた。…俺もな、遠くから見てただけだったが、それが出来るならそれでいいと思ってた。
        緋乃と、人と語り合えるようになった鬼なら、きっと外に出たとしても上手くやってけるってな…。
        (思い出すようにし、どこか安心したような口ぶりで坊主は言う。共に少女と冒険に幾度か出ていた経蓮なら)
        (少女が鬼面と話していたのを聞いていたかもしれず、その事を言っていることに気付いたかもしれない、しかし坊主は苦念の表情を形作り)
        でもな、そりゃァ勘違いだった。あいつは野放しにしちゃいけねェものを放とうとして失敗しちまったんだよ。そして…そのしっぺ返しを食らってる。
        あの餓鬼はな、今でも戦ってんだ。鬼に支配されちまった体の中で、ちっぽけな餓鬼の力一つで、消えちまいそうになりながら必死にな。
        -- 動念 2016-08-14 (日) 18:22:36
      • 鬼……ああ、俺も知っている。あの入れ墨として封じられていたやつだな。話しているのも見た。
        解放……しようとして、失敗したのか。それで、その鬼が今緋乃の身体を乗っ取って、そして緋乃は今魂の奥底に閉じ込められている……。
        ギリギリ、というのはそういう意味か。彼女の魂が消えてしまいそうな、今はその瀬戸際ということか。(ギリ、と歯が鳴る。彼女の苦痛を思うと、いたたまれない)
        動念師に伺いたい。緋乃を助けられる可能性を。師の言った通り、こう見えて退魔の一族だ。何かやりようはないだろうか。 -- キョーレン 2016-08-14 (日) 18:50:22
      • (歯を噛み、悔しげな面持ちになる経蓮を見て、思う。あの少女は…緋乃はこの西の果てに良い友を得られたのだと)
        …ああ、今はまだ耐えてるが、このまま放置しとけば餓鬼の魂は鬼に飲み込まれちまうだろうよ。ばくりとな。
        だから…その前に鬼を封じる。それだけがあのションベンたれを助ける唯一の方法だ(ぐ、と握りこぶしを作る。それは己を確かめるように)
        悔しいが…俺にゃ封じる術があっても、今の強大な鬼のままじゃ無理だ。もっと弱らせられれば…そうすれば…あるいは。
        (そうして、坊主はまた、先ほどと同じ鋭い視線を経蓮に走らせる。しかし今度は瞳には期待の色があり)
        お前さんに頼みたい。魔を退ける者として、刃振るう剣士として…そして、あいつの友として。鬼を斬ってはくれねェか。
        (何処か粗雑な振る舞いだった坊主が、背を正し、静かに頭を下げる。それは少女の友に対する深い礼だった)
        -- 動念 2016-08-14 (日) 19:09:53
      • あるのか、封じる術が!(勢い込んで尋ねる。……退魔の一族とはいえ彼は武芸に寄って修行を積んでいる。術関連の人間を呼ぶには時間がかかりすぎる。)
        もちろんだ、動念師。鬼を斬るのは俺の本業であり、そしてそれで俺の友達を助けることができる。俺にできることならば、何でもさせてもらおう。(手を合わせ、動念に先ほどよりも深く丁寧に礼を返した。彼は信用に足る人物だ。) -- キョーレン 2016-08-14 (日) 19:32:56
      • …ありがとうよ。奴に変わって感謝する(そして頭を上げれば勢い込む経蓮に苦笑して。こういう所はあの餓鬼のダチらしいわ、などと心中考えながら頼もしく思い)
        これでもそれなりの腕でな、並の化生や魔物なら封じるくらいは訳がねェが…相手は冗談にしても並たァ言えねぇ奴だからな…。
        それによ、なんの因果か滅する方の術は使えねェことはねえが不得手でな…俺としちゃドバァと派手にやりてぇんだが(などと自嘲気味に言い)
        ああ、試しにちっとこっち来てみ。何も…するが(と冗談めいた笑みを浮かべ懐から深い焦げ茶色の数珠を取り出し、経蓮を手招く)
        -- 2016-08-14 (日) 19:47:40
      • いやいや、それだけでも十分だ。……どうにも俺は術関連そのものがどうも苦手でな。だから術に精通した人が協力してくれるのは、俺としてもとてもありがたい。
        なんだろうな……何も、するのか。(ツッコミめいた笑みを浮かべながら、その動念の示したところまで静かに歩いてくる) -- キョーレン 2016-08-14 (日) 20:04:57
      • (数珠を片手に絡めながら胸の前に立て、直ぐ手の届くところまで近づいた経蓮の目の前で、ぶつぶつと口元で何事かを唱える坊主)
        (経蓮にもし聞き覚えがあるのなら、それは御経の一部だということに気付くだろう)
        (そして、坊主が拝むように立てた手から、りぃん、と持ちもしない鈴が鳴るような音が響く)
        隻手音声…已生善令増長(最後に一つ、強く呟けば、仄かに手が光り纏い、その手でとん、と経蓮の胸を軽く叩く)
        (さすれば経蓮は知るだろう。その四肢五体に力が漲るのを。さすれば経蓮は感じるだろう、体内の経脈を巡る気の流れが強さを増したのを)
        …とまあ、こんなところだ。今のはお前の力を一時的に強める術をかけた。直接触れねェと使えんが、こういう術も手助けにかけてやれる。
        だが…胸張って言うことじゃまったくねェが武の心得は俺ァさっぱりだ。足手纏いになる可能性も高いからその辺は期待するなよ?(などと笑いながら言う)
        -- 動念 2016-08-14 (日) 20:23:41
      • これは……!(動念の読経の声が終る。身体の活力が、読経の前と後で段違いに違う。)
        なるほど、こういう法術も使えるのか……心強い限りだ。 -- キョーレン 2016-08-14 (日) 20:44:20
      • へっ、コレしか脳がねェだけよ。お前以外にも酒場にも依頼は出してるが、鬼が俺の術が効くくらい弱まれば…恐らく封印できるだろう。
        …しかし、気をつけろよ。危ねぇと思ったらすぐに逃げろ。あの餓鬼も…ダチを殺したいとは思っちゃいねェだろうからな。
        (そうして、鬼が棲む近くの山の場所、己が街に滞在している宿の場所を教えながら、ぽん、と法力の籠らないただの手で背中を叩く)
        頼むぜ、…退魔士さんよ(そうして、五分刈りの坊主頭をがりがりとかきながら…にやりと笑った)
        -- 動念 2016-08-14 (日) 20:51:51
  •   -- 2016-08-14 (日) 02:32:18
  •   -- 2016-08-14 (日) 02:32:15
  •   -- 2016-08-14 (日) 02:32:09
  • (時は昼過ぎ、既に日は高く昇り、瘴気漂う山にも等しく弱いながらも冬の日差しが降り注いでいる)
    (しかし山道を征く者は知るだろう。辺りは通常の視界にはどこか薄暗く、モヤが掛かったように見える)
    (それは濃すぎる瘴気が風景さえも僅かに捻じ曲げているからに他ならない)
    (あまつさえ、気付けば冬の寒さにも強いはずの足元の草が萎びている中に、目に留まる物がある)
    (そこには今まで決して見たことのない草花がこの瘴気の中伸び、混じっているのが分かるだろう)
    (それは草を煎じ薬とする白き装束を纏う男でさえも知らぬ未知の草。異界に伸びる、人界には無い草)
    (もはや、山は人の在るべき場所では無くなりかけている)
    (そう思い知らせるようなその光景を横目に道をゆけば…瘴気が強まるのを感じるだろう)
    (そちらへ足を運べば迎えるのは大きな川、ざあざあと魚のおらぬ水の流れだけが時の流れがあることを知らせ)
    (川の中央の大きな岩、そこに彼の訪ねる少女の姿がある。変わり果てた…その姿が)
    -- 2016-08-13 (土) 21:14:10
    • (冬の日は嫌いだった 出来れば外にも出たくない しかし男はこの冬の山へと足を運んだ)
      (下からじわじわと這い上がってくるのは何も冬の寒さだけではない それに混じり、いやそれ以上の瘴気がまずは足からと這いずってくる)
      (男はそれを気にも止めない様に縋り付く蹴り飛ばす勢いでズンズンと山を登っていく)
      (これほど寒いのにこの山には雪も積もっていないのかとふと思考する 初雪が遅い地域なのか、それともそれも瘴気のせいなのか)
      (むき出しの地面からは異形の植物がでたらめな方向に伸びている 自由気ままというよりも、苦しみ喘いだ歪みのような伸び方だ)
      (以前の自分ならば、この山に入ることも出来なかっただろう だが今の自分は違う 前の自分はもういない)
      (少女の姿を見つけると、男はその場に足を止め、まずは様子を伺った) -- 落蘇 2016-08-13 (土) 21:23:55
      • (落蘇の視界に入る少女の肌は赤黒く、額からは黒い黒い角が生え、彼のよく知る少女のものではないことが直ぐに分かる)
        (しかし、異形の姿の少女は岩の上で片膝を立て座った状態のまま俯き、岩と一体化したかのようにぴくりとも動かない)
        (見ればその左腕はだらりと脇に下げられ、肘の半ばから失われており、その切断面は僅かに黒い液体が蠢いている)
        [……?…術師の兄ちゃんか…?ふう…運が良かったな](そうすれば、その左胸から…男の耳に幾度か覚えのある声がしただろう)
        -- 2016-08-13 (土) 21:35:01
      • (鬼憑きの症状はいぜん見かけたことがある 肌は変色し角は生え顔つきは変わり恐ろしいほどの膂力を持っていた)
        (膂力は以前のままでも、肌の変色と額の角から進行具合が伺える)
        随分な姿だな さっそく誰かにやられたか
        (男はその傷口をさして気にもとめずに、視線は声が聴こえる胸元に一点集中した しかし警戒は怠らない 視線は胸元に集中しながらも警戒はそれの全身に向けられている)
        (力のある鬼ならば再生も可能だ 油断させて瞬時に再生された腕で自分を切り刻むことも可能だろう 現にあの蠢く黒がそうではないのあるかもしれない) -- 落蘇 2016-08-13 (土) 21:43:20
      • (白装束の男の声が届くも、少女…鬼は反応を示さない。俯いたまま、ただその左手の黒い液体のみが蠢き続ける)
        [ああ…ご明察。兄ちゃんは知ってたか、グレイって剣士の兄ちゃんと、その妹にな。妙な得体の知れねぇ業によ]
        [おかげで鬼…ククッ、俺が鬼なんて言うハメになるたァな](そうして以前と同じように左胸に浮かんだ鬼面は自嘲気味に笑い)
        [……朶鬼は手痛くやられて傷を治すのに集中してら。どうにも治し辛い傷らしくてな。…ただし川より先に近づくんじゃねェ]
        [傍に寄ったり何か手出しすりゃコイツはすぐにでも目覚めて兄ちゃんの喉笛を噛み千切りに行くぜ](声色は真剣に。警告の意をしかと込めて)
        -- 2016-08-13 (土) 21:56:49
      • (この『鬼』の言葉を聞いたのも随分久しぶりだ 何十年も前に聞いたような久しい感じを受けた)
        誰がやったかは知らん 私の知ったことではない その鬼はそんな簡単にやられる訳もないからな
        ああそうだ…あれが鬼だった 本当の鬼だったんだ そしてお前は鬼なんかじゃない
        (疲れを振り払うように首を横に振る)あんな禍々しい気を持ちながら、そんな親しめるような言葉で話せるものか
        どんなに言葉を取り繕ってもどんな声色で話そうとしても、内面からでるものは隠し切れない ましてや鬼なんかその最もだ
        (あはははははと長い長い笑い声を上げる しかしおかしくて笑っている笑い声では決してない)
        鬼でも人でもない者よ 楽しかったか? 人間の真似事は (挑発じみた声のみ相手にかける それ以外は何もしない いつものように袖口に符を忍ばせることもしなければ、護り刀を握ることもない) -- 落蘇 2016-08-13 (土) 22:09:37
      • (以前から微かに感じていた違和感、それは封印を解くことにより決定的となり、確信へと変わっていた)
        […そうさ俺ァ鬼じゃねェ。もちろん人間でもありゃしねェ、どっちつかずの中途半端、なんにも出来無い半端モンよ]
        (かつての鬼面であれば落蘇の言葉に反発し、嘲笑を投げかけていただろう、しかし今は力無く呟くのみ)
        (しかし、落蘇が挑発するように笑い、貶すように声を放てば…まなじりは釣り上がり、怒りの面を成し)
        [るっせェ!ああ俺が愚かだったさ、この身体から出て自由になれる、そんなことを思っちまった俺が馬鹿だったさ!]
        [自分のこともきっちり分かってねェ、人間でもねェ化物でもねェその身を抱え込んでいながら愚かにもな!]
        […だがな、まだ俺には何も出来無い訳じゃねぇ、俺が表に出れる時なら…鬼の目を盗める時なら…]
        [テメェみてえな馬鹿に…こっちへ来んなって言ってやることくれぇは出来る。…だからよ、大人しく…帰れ]
        -- 2016-08-13 (土) 22:26:54
      • (思えば違和感は最初からあった しかし自分は全ての現象を知っているわけではない だからこそこれは鬼では無いと断言は出来なかったのだ)
        (しかしもう今になってはどうでもいい こいつは少女が生み出したもの 鬼と融合しているからこそ出来た奇跡の産物と言っていいだろう)
        (だがなんと皮肉な奇跡だろうか)
        鬼の封印が完全に解かれればお前はそのまま自然消滅していたと言うわけだ いや核となったものに吸収されて終わりかな? どちらにしろお前は消える ただそれだけの存在だ
        それを私は哀れとは思わない 思う気持ちなどとうにない 嘆くも悔やむも勝手にすればいい
        私はお前らを封じる そうなってしまってはもはやまとめて封じる方が手っ取り早く確実だ 淡い期待を込めて救済を充填に置いたやり方など探す時間もどうせないのだろう?
        …あいつもまだ残っているはずだ あいつの魂に通じる精霊はまだ感じられる 霧散している訳ではないのだろう だがそれも時間の問題だろうな
        (言葉は淡々と状況を確認する しかし声色はあまりにも無機質で人間味を帯びていない 布から覗く目もまるで人形のように輝きが消えている)
        (人らしさを捨て去ったような男は、鬼面の忠告も無視し、一歩、二歩と近づいていく) -- 落蘇 2016-08-13 (土) 22:41:47
      • [ああ、俺ァどうせ冗談みてえな存在だ、今はまだどうにか居座っちゃいるが何が起こるにしろ長くはねぇだろうさ]
        [でもなぁ…カカッ!俺にゃ悔みも嘆きも無ェ、ましてやテメェに哀れまれるなんて真っ平ごめんだ、そんなん犬の糞でも食った方がマシってもんだ!]
        [封じられるなら封じてみろ、お前にやれるもんならやってみろ、デケェ口叩いて出来ねェとは言わさねぇぞ!]
        (落蘇と話すうち鬼面はいつもの調子を取り戻していくも、落蘇が無造作に川べりに近寄ってくれば、少し慌て)
        [マジでやるつもりか…!クソッ、どうなっても知らねえぞ!やるなら左側から攻めろ、今のコイツは左目も良く見えちゃいねェ!]
        (叫び吐き捨てるようにに鬼面が言う。しかし、その言葉には…ほんの少し、目の前の男ならやってくれるのではないかと、そんな思いが滲み)
        -- 2016-08-13 (土) 23:04:33
      • (憐れむ必要もない 嘆く必要もない 何も必要はないのだ この存在に対してはもう何も)
        (意図しているのかいないのか、男は奇面の声や狼狽えにも耳をかさず、川の水で足元が濡れそうになるほど近づき、改めてその姿を見る)
        (俯き続け、ともすれば寝ているように見えるその姿に冗談交じりかそのままの意味か、男は無機質な声を張り上げて少女に語りかける)
        私の声を聞くが良い 貴様を封じる者の声をその御霊に刻むがいい!
        世を害する忌み者よ 大人しく我が術を受け、未来永劫消え失せよ!
        (男は奇面に、鬼に、そして少女に届くように響かせた その声に一切の躊躇もない 男はもとより最初から全てを封じるつもりでやってきたのだ) -- 落蘇 2016-08-13 (土) 23:18:14
      • (足を止めぬ落蘇の姿に鬼面は困惑と僅かな期待を持ちそれを見る。そして落ち着けば落蘇の口ぶりに違和感を覚える)
        (言葉こそ以前のようだが、その声は平坦で、固く。…あれは本当に同じ人間なのかと、一瞬だけ疑問の念を浮かべ、静かに沈む)
        (そうして、白装束の男は侵さざるべき領域を侵そうとする。川へと迫ったことにより、鬼の身体がゆっくりと起き上がる)
        (骸のごとくゆらりと立ち上がり、男へと向き直る鬼。しかしその瞳は虚ろ、その中に男を捉えているかも定かではない)
        (今はまだ、気配に自動的に反応しただけだ。後一歩、川の中に後一歩踏み込めば…)
        (そうして、朗々と川面に響く術師の声)
        (それは岩の上に立つ身に確かに届き、鬼がその声を敵対すべき者の声と、自らを滅ぼさんする物の声と認識するより、早く)
        (聞き慣れたその声に…忘れるはずもないその声に…少女の心が、ふるり、と一つ震え)
        ……術師の兄さん……?なん、で…ここ、に…?
        (ともすれば、川音に紛れそうなほど小さい声で、しかし確かに少女が一つ、呟いた)
        -- 2016-08-13 (土) 23:35:55
      • (まるで幻影が如くその姿は立ち上がる その気配や仕草に以前の面影は感じられない)
        (少女もまた人ならざるものになっていくのか、さして気にもとめず男はその姿を目で追いその姿全てに警戒する)
        (今にも消え去りそうなか細い声を逃すものかと受け取り、やはり無機質な声を張り上げる) 何故だと? 愚問だな 私の職業を忘れたとは言わせぬぞ
        しかし…お前は良いモノをその身に飼っていたな 先程までそいつと話していたが、お前よりはしっかりしているようだ
        今も他の者の身を案じ、忠言を持って踏みとどまらせている あいつはお前と実によく似ている…まあそれも当然ではあるのだろうがな
        -- 落蘇 2016-08-13 (土) 23:49:40
      • (ゆらり、ゆらりと左右に揺れる鬼の身体。ギリギリのラインで鬼はまだ目覚めていない)
        (それは碗に目一杯に注いだ水のよう。表面張力で溢れる限界に既に水は達している。あと一つでそれは弾け…落蘇へと襲いかかる)
        ……鬼を…封じに…来たんだね…。でも…逃げ、て…。あいつも…言ってたでしょ。…あいつは、私、私はあいつだった…。
        兄さんに……迷惑はかけられないよ…。こいつが寝てる内に…早く、私…私達は…まだ、大丈夫、だか、ら、さ。
        (そうして何かに耐えているような表情を僅かに作り…少女の瞳が、今は赤黒く染まった右の瞳が己のよく知る男の姿を捉え、見る)
        ……案外…わた…し……強い、んだよ?(その姿に…無理矢理、強引に作ったのがありありと分かる薄い笑みを向けて)
        -- 2016-08-14 (日) 00:06:14
      • (少女はいま、重大な重しを背負って生きている 今の身体はもう少女の物でもなく、それに縋り付く切れ端のようなものだろう)
        (切れ端の封印を切れ端の魂が繋いで耐え忍んでいる そんな所だろうか 苦しむ少女を前に男はそれでも表情を変えず判断していく)
        …それでもお前たちは二人だった お前が生み出したものであろうとなんであろうとな だからお前は私のように孤独に苛まれること無く生きられた
        他者を求めて彷徨い狂う事なく今日まで生きられたんだろう
        (それはいつもの男ならば、健気に振る舞う少女に対しそのまま慰めと取れるような言葉であった)
        (一人ではないという事がどれほどの励みになるかを知っている男から出たその言葉は、どこまでも平坦で無感情極まりなかったが)
        あいつは最初からお前の絶対的な味方だった お前が求めれば必ず応えてくれる存在だった 今もそれは変わりない どんな事があろうとあいつはお前の味方であろう

        そしてお前らは私の敵だ

        (瞬間、男の右袖口から黒い何かが弾けるように飛び出す それは丸太のように太く、鞭のようにしなやかに曲がり、槍のように鋭く少女の頭を穿つ様に向かっていく)
        (お前に用はない さっさと死んでその封印を解除し、鬼を出現させてくれ)
        (お前は邪魔だ この場で死んでいい どうせ鬼を封印すればもろとも死んでしまうのだ 後でも先でもどちらでも変わりはない)
        (男が出現させた黒い槍のような物が、耐え続ける哀れな少女を頭ごと躊躇なく吹き飛ばすはずだった)

        (はずだったのだ)

        (男はそれを自身の意思で止めた 少女に死が迫り、確信を帯びた時にはっきりと自覚してしまった)
        (また殺すのか)
        (私がこの手で殺すのか)
        (それだけを思った それだけしか思わなかった それが男の記憶であり、男を押し留めたのだった) -- 落蘇 2016-08-14 (日) 00:40:49
      • (ぎりぎり、と軋む音がする。それは少女にだけにしか聞こえない、音ならぬ音)
        (封印の手綱を握りしめ離さぬ人の魂が、その綱に逆に自らの魂も縛られ、鬼の力の圧力に捻じりあげられ身を軋ませる音)
        (少しづつ、少しずつ自らが崩壊していく音を聞く。もはや魂だけの存在となったのに、痛みだけが鮮明に感じられる)
        (そんな中、白装束の男が感情の全く無い、無機質な、機械的でさえある声で酷薄な宣告を、死の宣告を放つ)

        ……だったら… (しかし、少女は目を離さない。少女の右の瞳は男から離れない)
        …私は (その瞳は真摯に男を貫き、僅か細くなるそれは…自然な微笑みを作っていて)
        兄さんの、味方だよ。

        (少女は動けない。今の少女に出来るのは精々が声を発するのみ。男が放った奇妙な黒い鋭い何かに鬼の身体は動かない)
        (少女は動かない。今の少女に出来るのは男を信じることのみ。男を信じただその身を、魂だけの身を捧げるが如く任すのみ)
        (かくして黒槍は…少女にたどり着く事無く途端に捻れたように穂先を逸らし、その身体が立つ岩を僅か砕くのみに留まり)
        █▓▓▓─██▓█─▓█▓█▓████▓█─▓███▓!!!
        (とうとうその攻撃に鬼が気付き、高く高く響く咆哮を上げる)
        (明確な危機そのものに再生行動を中断。即座に左手を修復しようとしていた黒血が形を変え、空中に浮かび上がる)
        (ぱきぱきと、硬質な音を立てる其れは奇しくも槍の如く引き伸ばされ。まるで逆廻しのように男へと空気を切り裂いて放たれる)
        -- 2016-08-14 (日) 01:24:04
      • (はっと男は我に返った 自分が何を思い何をしたのか脳裏にこびりついて剥がれない)
        (それを覆うように触れてくるのは、少女のか細い声一つ とても小さな小さなそのこの声が、男を愕然とした表情にさせた)
        (視線が交じり合う 少女の右目と自分の左目 少女の瞳はまるで母のように暖かく父のように厳しく、逸らすことも許されない力強さを感じた)
        (こんな状況なのに、男は遠い昔を思い出す)
        (どうして自分は一人だったのだろう)
        (どうしてあの時、この少女が隣にいてくれなかったのだろう)

        (思考を切り裂くような爆発じみた咆哮が辺りを揺らし、明確な死の意思がこちらへ向かってくる)
        (男はそれを呆然とした面持ちで見つめる)
        (やめてくれ もういらない いらないんだそういうのは)
        (必要だったのはあの時だけ 今更そんなもの貰ってももう何の役にも立たない)
        (あの日、人である身を捨て去ってしまった今、そんなモノはもう必要ない)

        (男は布越しに口を開き、自身もまた声高く咆哮した いつものような封儀の為の呪言ではなく、ましてや人の声ですらも無かった)
        (右の袖から今度は岩のような固まりが溢れ出てくる それは途切れること無くあっという間に、男と少女の目の前に巨大な岩の壁を作り上げた)
        (槍はそれを容赦無く穿ち突き進む 男は更に壁を厚くして侵攻を抑える)
        (どれほどの時間が立ったのか、槍の動きが完全に止まったのを機に、壁はガラガラと音を立て崩れ去り、粉塵を舞い散らして消え去った)
        (その向こう側にいるはずだった男の姿は、今はどこにもなかった) -- 落蘇 2016-08-14 (日) 01:46:53
  •   -- 2016-08-13 (土) 02:41:03
  •   -- 2016-08-13 (土) 02:40:59
  •   -- 2016-08-13 (土) 02:40:56
  • (依頼書に記載された地図、それに従い山へ踏み込めば、濃密な瘴気が辺りを漂い、支配しているのが分かるだろう)
    (辺りの木々は既に葉を散らしているが、それは自然の理により冬を迎え落葉したからではない)
    (不自然の極み、理から外れる者、世界に罅を入れ、尽くを食いつくさんとする何か)
    (その邪気に浸され抗うこと叶わず静かに腐れゆき、命を貪られているから)
    (今はその光景もこの山に留まっているが、鬼が完全に解き放たれればこの地をも覆い尽くす)
    (つまりは、地獄の釜が開くのだ)
    (動念と名乗る坊主はそう語った。それを止めてくれと、そして、絞り出すようにしてもう一つ…少女を救ってやってくれと)
    (かくして二人の目の前に広がるは魔境の山野。時は夜。異界と化した山を三日月が冷たく照らしていた)
    -- 2016-08-11 (木) 21:13:06
    • (瘴気に覆われた山野の中で動く影がふたつ、月に照らされ姿が見える)
      (うち一つは灰色の外套にその身を包み、背に大剣を飾った一人の男)
      (鼻を鳴らし、辺りを窺うように周囲を見回すその姿に、闇夜を行く危うげさはどこにもない) -- グレイ 2016-08-11 (木) 21:20:04
      • (側に控えるもう一つの人影は、大振りなハルバードを布で多い、片手に持つ、あまりに山に不釣合いな恰好をしたドレススカートの少女)
        (足運びには迷い無く、一定の距離を保ち従い歩く) -- チェル 2016-08-11 (木) 21:26:16
      • (月の灯りが仄かに辺りを照らし出しているものの、辺りは闇に落ち込んでいる)
        (しかし二人の狩人はそれに迷うこと無く獣道にも等しい細い山道を進む)
        (その道を進めば分かるだろう、登れば登るほど、瘴気は深く、濃くなっていくことが)
        (周囲の木々は既に半ば枯れ、夜であろうと普通なら聞こえる生き物の声は無い)
        (静寂が充ちる死んだ森を抜ければ…ふいに視界が開ける)
        (その先にあるのは、まるで荒野のような広い岩場)
        (そして、大小様々な岩の一つに腰掛け、月を見上げる少女の姿だった)
        (しかし、その姿は二人の知る少女と似て非なる何か)
        (何よりも、ねっとりと絡みつく泥のように深まる瘴気は…その小さな身体から発せられていた)
        -- 2016-08-11 (木) 21:36:54
      • (月を見上げ何かに思いを馳せるかのように見える少女、しかしその姿はグレイが知っている普段の彼女とはやはり違う)
        見つけた…(その姿を認め、短くそれだけを口にして歩を進め近づいてゆく。後に付いてくる者の様子を伺うそぶりすらない)
        (彼の関心はそれよりも今目の前にいる者の動向だからだ) -- グレイ 2016-08-11 (木) 21:44:46
      • (あまりの無音に少し、耳を触る。無音過ぎて敏感なのか、落ち着かないよう)
        (岩に座る姿が、まさに探していた人影で)
        (それに歩み寄る兄の背中は…)
        (少女はあまりに異質で、兄はそれを狩るもので)
        ――――――緋乃さんっ!!(一瞬の焦りが、名を叫んだ) -- チェル 2016-08-11 (木) 21:52:39
      • (灰色の外套の男、ドレススカートの少女に気付き、顔を向ける)
        (二人を睨むその眼は知己の友人を見るものでは決して無く、獲物を見る肉食獣の瞳)
        (釣り上がる口元は、来訪を喜ぶものではなく、肉を食む事が出来る喜びの笑顔)
        (そしてもっとも違うのは…その左額に伸びる黒い黒い角)
        (鬼と堕ちた少女は、腰掛けていた自らの身長の倍ほどもある岩からすとん、と降り)
        (その時、淡く青みがかった白髪の少女のよく通る声が、静寂を打ち破り山へと響く)
        (声は確かに届いた。そして、ほんの一瞬、注視しなければ分からぬ程の一瞬、鬼は動きを止め…)
        ███▓▓─███▓█─▓███─████████▓─▓─████───!!
        (吼えた。返答は、声ならぬ咆哮が応え、辺りにびりびりと振動さえ響かせて)
        (そして、鬼は岩に指を突き立てるようにして掴み、がごん、とまるで小石を持つかのように持ち上げる)
        (それをまずは手近な…油断なく間を詰めるグレイへと投げ放つ。大質量の岩石が致死の礫となって迫る)
        -- 2016-08-11 (木) 22:02:49
      • (目測数tは下らぬであろう岩石が、細腕の少女の手によってまるで子供同士のお遊びの様に投げかけられた)
        (常人なら驚きの余り身じろぎも出来ず無残に潰されてゆくだろう。しかし、彼は目の前の少女の力を知っている)
        (彼女が宿す鬼の力を。そして何より、今はその鬼の力に彼女が支配されている事も)
        (背からはえる大剣の柄へとグレイの手は伸び、続けて月光の輝きをひいて大剣が抜き放たれる)
        (岩石に対し大剣で向かう無謀さよりも、それによって音も無く二つに分かたれ地面に落ちた岩石の真ん中に表情も変えず立つ男の姿に人は僥倖する)
        (月光に照らし出された彼の表情は微塵の感情の揺らめきも表さず、相対する少女に冷たい視線を投げかけている)
        (しかし、その状態のまま彼は静かに口を開く)…チェル、これが答えだ。お前はどうする…(妹に対するにあまりに冷たい声で質問を投げかけた) -- グレイ 2016-08-11 (木) 22:19:29
      • (あの時確かに、動きが揺らいだ。切り落とされた大岩の衝撃にも、兄にも目もくれず、瞬きせずに彼女を少女の赤い眼が眼が見据える)
        (兄の心配は元より無く。最初から、少女は友のために此処に足を踏み入れた)
        ……まだ早計じゃないかなとは。(ハルバードの布地を外す、鍛錬用とは違う、重さも斧刃の厚さも通常の人間には扱えぬ代物)
        私は緋乃さんを……友達を殺しにきた心計はない……まだ、答えは出てない。 (そう、兄へと言い放つ) -- チェル 2016-08-11 (木) 22:38:09
      • (真っ二つにされ落ちた岩を見て、朶鬼はますますその口角を上げる)
        (生きのいい、実に生きのいい獲物だと。その血はさぞ甘かろう、その肉はさぞ旨かろう)
        (そうしてゆっくりと、二人に向かって無造作に歩き出す)
        (味付けを考えねばならない、この肉を彩るソースは怒りか悲しみか…それとも恐怖を煮詰めてとろりとさせようか)
        (げらげらげらと下卑た声を上げて、少女だったものは嗤い、歩み…飛んだ)
        (風を切り迫るはドレススカートの少女。こちらの肉も実に肉付きが良く美味そうだ)
        (しかし…この肉は危険だ、下拵えは手早く済ませねば)
        (本能的な危機感に迫られ、チェルへ迫る朶鬼、何故かは分からない、分からないがそうすべきだと)
        (着地点はグレイとチェルの手前。なおチェルに寄る位置、そこの地面へ尋常ならざる怪力を持って拳を振るい一撃を加える)
        (ぼこん、と辺りの地面が隆起し、細かな岩の破片が爆発的に飛び散る。これに躊躇えばすぐさま追撃を行おうと)
        -- 2016-08-11 (木) 22:52:15
      • 悠長な話だ。それで罪の無いものが死ぬ(大剣をひと振り構え直す)
        (しかし、その目前を過ぎ、地面へ拳を打ち付けた鬼の力により岩の破片が凶器と化して自身へ向かってくる)
        (無数の岩礫に対し大剣を目前で旋回させる。何時もの日本刀ではない、背丈ほどもある全金属製の大剣は)
        (重さ耐久力重視の代物。所謂―魔物用のそれを易々と片手で操り、迫りくる礫をそのまま弾いて除ける)
        (自身の心配はない。それよりも寧ろ)チェル!(警戒と危機感の混じった声を発し視線を飛ばす) -- グレイ 2016-08-11 (木) 23:03:17
      • (少女の足が半歩、後ろに下がる。はために見れば躊躇とも取れるその動きでハルバードを構える)
        (破片に躊躇することも、戸惑うことも無く。肌に無数の赤が刻まれるが気にもとめず、大ぶりは破片は右の拳で砕き落とし)
        緋乃さんっ!!!(避けるどころか着地地点へと駆け出す) -- チェル 2016-08-11 (木) 23:18:32
      • (爆発にも等しい力が弾けたその場所へチェルの声が響く。自ら死地へと踏み込んできた肉へにまりと嗤い)
        (その怪力を振るおうとしたが、腕が、動かないことに鬼は気付く)
        (それどころか、足も動かず…その瞬間、鬼は左胸を締め付けるような僅かな痛みに気付き)
        ……チェ…ル…?(口が、一つの言葉を紡いだ。それは消え入りそうな…しかし少女本来の声)
        (そして、いまやそこまでも赤黒く染まった右の瞳がチェルを静かに見つめたが)
        ▓█─▓█──! (耳をつんざく咆哮がそれをかき消す、そして鬼の指から長く伸びた黒い爪、それらを揃えて黒き剣と成す)
        (鉄さえ安々と切り裂きうるその刃を振るい白き肌に血化粧を纏わせんと袈裟懸けに鬼の腕が奔る)
        (危険、危険だ。この肉……いや、女は…危険だと、僅かながらも焦燥感にかられ)
        (その背はチェルに完全に気を取られており、グレイを見てはない。ある種この場で一番危険な男を…見ていない)
        -- 2016-08-11 (木) 23:31:07
      • …止まった?(今度こそ彼の目にも分かる形で鬼の異変が行動となって表れる)
        (攻撃を躊躇い妹の名を口にした)なるほど…間違っているのはどうやら俺の方か…
        (僅かに眉を寄せ自身の過ちを認めるも)しかし、この状態で元に戻せるか…(その難しさを理解する男はさらに眉に深い皺を刻む)
        (しかし、それを諦めるほど)俺の妹は素直じゃないか…(そう言って静かに笑った)
        チェル!…ヒノさんではなく、鬼だけを斬れ!お前も俺と同じ血が流れているならやってやれん事はない!
        どうやらここは俺のステージじゃない!お前の場所だ!集中しろ!彼女の内に居る者だけ斬ると念じて斬れ! -- グレイ 2016-08-11 (木) 23:46:31
      • (間合い、仕方ないのかと左手に持つハルバードを横薙ぎにふるおうとして)
        ……緋乃さんっ!聞こえますか緋乃さんっ!!!(聞こえた声に再度呼びかけ)
        (咆哮。空に赤い華が咲く。とっさに後方に飛び退くも右腕の肉が、鉤落とされた華)
        んっ………はぁ…(距離を開けた場所で息を吐く)難しい事言うなぁ……(やったことないよソレ。と少女は内心苦笑した)
        頑張ります、よ……(でなきゃ兄が【滅ぼして】しまうかもしれないから)
        (幸い利き腕は左、まだ戦れる。右腕を赤に染めて、力を込めるとなお、溢れ滴り落ちる雫も気にはならない。ハルバードの斧刃を下にして、斜めに構え)
        …ツェペシュ家当主。カウェント・ロッソ・ツェペシュが次女、チェル・アルバストゥル・ツェペシュ。推して、参ります。 -- チェル 2016-08-12 (金) 00:16:32
      • 期待はしてるさ…(妹の緊張感のなさに笑いつつもその性格故に自身が見えないものが見えるのだろうと納得し)
        …ツェペシュ家嫡子。マーキス・グリスパーダ・ツェペシュ
        及ばずながら、ヒノさんを助けるために尽力しよう…柄じゃないがね
        (自嘲気味に笑って大剣の切っ先を相手に向けた変形の右八双の構えを取る) -- グレイ 2016-08-12 (金) 00:20:00
      • (女の声が響くたび…いや、女が名を呼ぶたびに鬼の中で脈動めいた何かが暴れる)
        (爪の先にこびりついた血の香り、それはとても甘く芳しく、今直ぐにでもそれを舐め味わいたいのに)
        (…煩い)
        █▓▓▓─███▓█─▓███████▓!!!
        (距離を取り、声にならぬ雄叫びを上げてそれを強引に抑えこむ。二人の名乗り、それさえもかき消さんと)
        (もはや完全に鬼の笑みは消えている。二人がただの肉ではないと分かっている)
        (そうして、鬼は止めた。目の前の肉を獲物とすることを。そうして鬼は止めた。目の前の二人を味わおうとすることを)
        ("これ"は敵だ、潰さねばならぬ敵だ。四肢をもいで臓腑を引き出し、頭を微塵に引き裂いてくれようと)
        (めきり、めきりと一歩ごとに更にその膂力を高め、爪の先ならず両手を黒化し、二本の黒剣と化し)
        (二人を前にして、しかと赤黒いその瞳で見定め、ゆっくり、ゆっくりと歩き出した)
        -- 2016-08-12 (金) 00:36:22
      • ……緋乃さん、美味しいお店、見つけたんですよ(内なるものだけを斬ると念じろと兄は言った。黒剣を見据え、隙を狙う)
        全部終わったら、行きましょうね(右腕の出血は増え。ボコンと足元が、凹む。何か過剰な質量が掛かったのか)
        (姿が消えるのは一瞬。次に気がつくのは少し離れた斜め背後で。振り上げられる斧刃)
        ………しょっ…!!!(まとわりつく空気、瘴気、地面、何もかもを巻き込むほどに強く、下段からの上へ袈裟斬りが斬られた地面ごと衝撃刃となって襲い来る -- チェル 2016-08-12 (金) 01:03:12
      • 人に害をなすものは滅びゆくのが運命…
        しかし、ヒノさん…君は人として生きる者は年老いて死にゆくべき者らしい
        (告げるやその姿が消え鬼―緋乃の前面に移動しチェルの動きに呼応するように地面を蹴る)
        (正面から旋風の様に疾走し大剣が光の様に閃く。瞬く銀光一閃は上からの袈裟切り、妹の背後からの一撃と交差する様に) -- グレイ 2016-08-12 (金) 01:13:03
      • (チェルの柔らかな言葉、言い聞かせるようなその言葉にどくりと心の臓が跳ねるが、ぎり、と歯噛みして抑え)
        (その一瞬、僅かな隙を突いた少女の目にも留まらぬ瞬地。一瞬前とは比べ物にならぬ動きにドレススカートの姿を見失う)
        (だが鬼にはそれに驚いている暇などありはしなかった、即座に、まるで最初からそう決めていたかのように前方から風となり灰色の外套が迫る)
        (一糸乱れぬその連携に刹那の時、ほんの僅かな迷いが生じ、守勢へと回らざるを得なくなる)
        (それでも、背後から大地を削り迫る刃の如き衝撃へ振り向かぬままに右の腕を叩きつけ)
        (前から迫る月光を弾き仄かに煌めく銀光へ左の腕を振り上げて叩きつけ)
        (同時に、ばきん、と硬質な何かが砕かれる激しい音が夜の闇に響く)
        (かくして鋼鉄を凌駕したはずの腕は狩人の兄妹によって、右は細かに砕け、左は大きな刀傷を負い)
        (そこから人の物ではありえぬタールのような黒い黒い血が大量に流れ出す)
        ███▓█─ッッ! (続く咆哮は怒りの色濃く、叫ぶと共に両腕から流れる黒き血があろうことか重力に逆らい宙に舞う)
        (そして、一瞬、ぴたりと縫い付けられたように宙にその血の雫が固定され…)
        (弾ける。それは魔弾となりて二人の元へ散弾銃の如く撃ち込まれ。流れ弾で安々と周囲の岩を砕きながら)
        -- 2016-08-12 (金) 22:37:02
      • ((振り上げた斧刃、柄を軸に右手で回し、追撃に供え逆手に持つ。)
        (砕けた腕の破片を、両の腕を、溢れ出る血流を見、少し眉をひそめて。加減が要らないのかな、この硬さはと思う)
        …………っ!?(次撃へ、移ろうとして足先を変え。先程よりも耳を刺激する咆哮へ悪寒が奔る)
        ……まさっ…(中に浮く雫、それを弾く技を見たことがあるけどまさか、と)
        (次の瞬間、とっさに頭をかばうように両腕を交差させた少女、は安々と黒弾に無数に撃ち抜かれた。周囲の岩片と共に血が舞う) -- チェル 2016-08-12 (金) 22:59:58
      • (一撃に手ごたえを感じてもなお動きを止めない鬼の様)
        チッッ!!(短く舌打ちをしつつその場を離れるも雨の様に降り注ぐ攻撃を避けきれずにその身に受ける)
        (身を裂き、どころか貫通して地面にまで穴をあける魔弾の威力よ。灰色の男の体に無数の穴が開きそこから血潮がじくじくとあふれてゆく)
        (立ち尽くした身が僅かに揺らぎ、ふらつく) -- グレイ 2016-08-12 (金) 23:03:19
      • (魔弾に穿たれ、動きを止める二人、その間にも黒き血は生き物のように蠢きぐじゅりぐじゅりと形を変える)
        (砕けた右腕から流れ出る血は長く伸びる黒き鞭となり、肩慣らしに一つ打ち振るえばそれだけで大地に亀裂を穿つ)
        (裂けた左腕から流れ出る血はぱきぱきと硬質な音を立て固まり、爪とは比較にならない鋭さを秘めた黒剣となる)
        (ぐらりと揺れた灰色の男を目ざとく捕らえた鬼は、その場からチェルへ右手を振るい、長く伸びた黒き鞭が空気を切り裂き打ち下ろされ)
        (その行く末を見届ける事無く男へと破壊的な踏み込みを行いただの一歩で直近へと接近)
        (あらゆるを力づくで真っ二つに出来るような膂力を込めて大上段から大きく振りかぶった切り落としを放つ)
        -- 2016-08-12 (金) 23:16:13
      • (弾かれた岩片がぶつかり、交差した腕が解け、容赦なき黒鞭が打ち下ろされる)
        (打ち下ろされた場所は大地を抉り、赤い飛沫を舞わせ、歪な音を響かせる)
        ギチ……(歯を噛み締め、斧刃で鞭を受け止め)
        ………っの、緋乃さんのばっかぢから………!!(刃の曲線を利用して、滑るように直下を転がりぬけ出す) -- チェル 2016-08-12 (金) 23:34:32
      • (倒れ伏しかねない程の傷を負った男に無慈悲な一撃を与えようと黒い鬼が迫りくる)
        (天を仰いだまま、虚無の表情を浮かべる灰色の男。その体躯があわや二つに分断されるかと思われた時)
        (その口元に深い笑みが刻まれそこから鋭い乱杭歯が覗く。顔が戻り視線がハッキリと鬼を見つめ、手に握られた大剣を掲げ黒剣を迎え撃つ)
        (強大な質量同士が高速で激突すればそういう音を出すだろう。まさしく、その通りの音を出してぶつかり合った二つの剣)
        (受けた男の身は僅かに背が縮む。いや、潰れたのではなく、踏みしめていた地面がすり鉢状に陥没している。その結果だ)
        (しかし、それほどの衝撃を受けて平然としている男の身は)かかったね…(両の腕が膨れ、受けた状態から五分の状態へ。相手が引けばそのまま押し斬る体勢へ)
        (鍔迫り合いを挑み、鬼相手に力で対抗するその者もまた人外魔境の身)スマートではないが、俺がやったのでは意味はないからな
        (彼は名乗ったのだ、自分の家名を吸血鬼の真祖たる名を。彼は人ではない。そしてそれに同行している者も) -- グレイ 2016-08-12 (金) 23:49:04
      • (右手から重い手応えが伝わる。鞭自身の威力により斧刃によって受け止められた箇所から切断され、その先の血は形を崩し霧散した)
        (その感触に、女にとって鞭は致命の打撃にならなかったようだが、それはいい。足止めになれば充分だ)
        (場に濃厚になりつつある赤き血の香りに思わず舌舐めずりをする。強くなるその血の芳香に混じるは常の人間の物とは違う魔の香り)
        (それもただの魔の香りではない、極上品のものだと、それを口にした時の事を思い恍惚に酔いしれそうになるが…)
        (鬼からは、そんな思考の余裕など、掻き消えた)
        (どんなものであろうと、豆腐のごとく切り裂くだけの力を加えた。どんなものであろうと、飴細工の如く砕ける力を加えた)
        (しかし、しかし、鬼は見た。灰色の男は、月光を浴び青白い月の光の中その三日月のごとく割れた紅い笑みを)
        (白く白く、己と同じ血を啜る牙…いや、違う。鬼には分からずとも、身の内の少女は知っている。少女だけは知っている)
        (彼は、人間、魔を討ち、人を助く、人間だと)
        (途轍もない剛力に拮抗する剛力、膨れ上がった両手は確かに鬼の尋常ならざる力を…寧ろ押し返す)
        (歯噛みする、有り得ない、あってはならない。全てを叩き潰す己の腕に、潰せぬものなどあってはならない)
        (右手を戻し、残る黒き血を黒剣と化す。そして、がちりと超常的な力押し合う刃競り合いに加え両腕で灰色の男を押し込もうとする)
        (べごん、と更に、大地が窪む音がする。頭に血が登った鬼は目の前の男を潰すこと、それのみに力を注ぎ始める)
        -- 2016-08-13 (土) 00:07:30
      • (緋乃が、兄にのみ注力した時。それは大きな隙を生じさせ)
        (全身、赤に染まらない場所が無い少女は、目の前の小さな背中に、躊躇すること無く全力で)
        (周りの空気ごと全て巻き込みハルバードを振り下ろす。狙うは左半身、角の在る方へ。外したとしても広場周囲の樹木がなぎ倒される程の威力)
        (当たる当たらぬに関わらず。振り下ろし切った時、ハルバードは歪な音を立てて砕け散る) -- チェル 2016-08-13 (土) 00:29:52
      • (灰色のコートを朱に染めた男が口を開き言葉を紡ぐ)…言ったよな。人に仇名すなら滅ぼすと。忘れたとは言わせんぞ鬼よ
        他所の国からやってきて我が物顔でこの街でデカい顔するんじゃあない。ここにはここのルールがある
        お前はそれを破った…ここから先、心安らかに居れると思うなよ(チェルの行動を目の端で捉えつつ冷たく告げる) -- グレイ 2016-08-13 (土) 00:33:25
      • (全身を血に染めながら、不敵に語る男に苛つきは高まる。何が何でも潰さねばと、更なる力を込めようとした…その時)
        (竜巻が迫ったのを赤黒い肌に感じた。荒れ狂う嵐が近づいてくる。尽くを吹き飛ばす暴風が)
        (ドレススカートがひらめく。真紅の衣裳を身に纏い、まだらに赤く染まった蒼き白髪をたなびかせ、戦乙女の如く)
        (気付くのが遅かった。あと一瞬早ければ、いや、気付いたとしても鬼の力を受け止める目の前の男がただでは済ませなかったろう)
        (それでも必死に身を捩り、左腕の黒剣を盾と化し、咄嗟に構えた、が)
        (赤き豪風の嵐の前には、まさに戸を立てたが如く)
        (爆音。鬼の身がはじけ飛ぶ。左腕は根本から根こそぎ無くなり、左半身に大小様々な裂傷が刻まれる)
        (岩場をまるで水切りの石のようにはね飛ぶ鬼、大きな岩にぶち当たり、全身から噴き出る黒血が墨をぶち撒けたように岩に広がる)
        (そして、ぼとり、と岩から落ち、口から血を吐きながら鬼は歯噛みする。捕食するべきは我だ、食うべきは我だ、断じて狩られる獲物ではないと)
        (烈火に燃える怒りに塗れながら左腕を再生しようとする…が、出来無い。本来ならばこの程度、鬼気を消費するもののすぐに治せる)
        (しかし、切断面は黒い血を流すばかり。そればかりか肉が土塊のようにぼろりと崩れ始める)
        (それはかつて荒れ寺の亡霊を葬ったグレイの技。恐らくは滅びの概念そのものを斬るという行動に込めた彼らの血が成せる業)
        (幾千年の時を経て経験したことのない攻撃…痛みさえ感じず、ただただごっそりと"失われた"ことだけが分かる)
        (それに気付いた時…始めて、鬼が…下がった。相貌を釣り上がらせがりがりと怒りに歯を軋ませながらも…足は一歩、後ろへ)
        -- 2016-08-13 (土) 00:54:25
      • (ハルバードが衝撃に耐え切れず、粉々に砕け散った。クレーターの中央で少女の掌は強く握り込められ、指が食い込み血を滴らせる)
        ……っはぁ(無意識に、武器を失った手はホルスターへ。銃を引き抜き構える…しかし全力を出し、震える腕は照準を定め切れない)
        (多量の血を吐きながらも立ち上がる人影に、一つ安堵。よかった、まだ緋乃さんは生きてたと。視線の隅で、巻き込んだであろう兄を探す) -- チェル 2016-08-13 (土) 01:16:13
      • (鬼諸共チェルの一撃で弾き飛ばされ吹き飛びボールのように宙を舞う)
        (地面に打ち付けられつつも左手で勢いを殺し事の結果を見やる)
        (鬼の傷は…どうやら致命傷とはいかないまでもかなりの深手を負わせたと分かる)
        ならば…(追撃を加えんとその身を起こそうとするが、膝が笑い立つことができない自分を知る)
        (チェルの振るった一撃は正しく発揮され鬼に深手を負わせた。そしてその余波を貰った自分もまた)
        …加減を知らん奴だ(と、妹を評するが、それも栓無き事。それでも何とか気合いを入れて身を起こす) -- グレイ 2016-08-13 (土) 01:19:36
      • (相当の痛手を食らったが、目前の二人もまたかなりのダメージを負っていることは一目瞭然)
        (深追いをする必要はない、どちらにしろ時を置けば封印は解けることは自明だ)
        (二人の様子を伺いじり、じり、と下がる。その時左脇腹からどぶり、と大きな血の塊が落ち、僅か身を傾ぎ)
        …チェル…グレ…イさん……(その時、朶鬼の束縛が弱まったのか、身の内の少女が、ふ、と表に浮き上がり、身体を朱に染めた二人を見る)
        …ごめ…ん…ね……(一瞬、呆けたようにした後…、悔しげな表情を作り、ひとつ、言葉を漏らし項垂れる)
        (そして、また顔を上げた時には…その表情は鬼面の如く怒りに塗れたもの)
        █▓▓▓─██▓█─▓██████▓!!!
        (極上の美酒を逃した怒り、その身を傷つけられた怒り、何よりも…狩られる物とされた怒りを全て咆哮に変えて鬼は吼える)
        (そうして、ひとしきり叫んだ後、全力で飛び背後に跳ねて…山の奥深くへと消えていった)
        -- 2016-08-13 (土) 01:37:21
      • ――――緋乃さん(肌震わす程の憤怒の咆哮、そして風圧。それを残して去った彼女の方角を見やる)
        (兄には見えぬように目元をぐしりと拭う。それは垂れてきた血か、はたまた別のものか)
        ……ごめん、マー君生きてる?(そして兄の元へ、助け起こしに歩いて行った) -- チェル 2016-08-13 (土) 01:59:00
      • …逃がすか!!(背を向けて敗走に移る鬼を逃がさんとばかりに足を踏み出そうとするが、その足が蹈鞴を踏む)
        クソッ…!(酷く重い自分の足取りに罵り声を浴びせかけ落胆の息を吐いた)
        今から追えん事も無いが…(そういって妹の方に視線を移す。武器すら無くした妹を放っておくわけにもいかず)
        口惜しいがしばらく間を開けなければ無理か…(そう言って朱に染まったコートを払って血糊を弾き飛ばす)
        (体に無数に開いていたはずの傷口は既に塞がっており、新たに血を噴出しているのは先ほどの妹の一撃によるものだけだ)
        大丈夫だ(短く返答して。鬼の血なのか大剣に黒くへばり付いた体液を一振りして地面に振り落とし、背に納めてから妹の元へと歩きだす)
        (最後に見せた緋乃の言葉をよぎらせ、焦れる思いを抑えつつ帰路へと付く) -- グレイ 2016-08-13 (土) 02:04:37
  •   -- 2016-08-09 (火) 23:52:53
  •   -- 2016-08-09 (火) 23:52:50
  •   -- 2016-08-09 (火) 23:52:46
  • 山中に現れた鬼の討伐依頼
    東国からやってきた流れの坊主からの依頼だ。
    ある街から少し離れた北東にしばらく行った山に鬼が現れたそうだ。
    オーガじゃねぇぞ、何やら東国の鬼らしい。
    今のところ街への被害は無いが坊主が言うには時間の問題だとよ。
    報酬はかなり出すそうだが危険度は高く怪我なしで済むとは思わない方がいいらしい。
    望むなら依頼者の坊主…動念っつー男だが、そいつがサポートもするそうだ。
    詳しい事情やらも教えてくれるそうだから知りたければ聞くといい。
    期間:無し
    最大参加人数:無し
    難易度:1〜3人・◆◇◇◇◇ 4〜6人・◆◆◇◇◇
    ※退魔の力、聖なる力、それに類似する力を持つものは難易度が軽減される -- 2016-08-07 (日) 22:01:49
  •   -- 2016-08-07 (日) 22:01:30
  •   -- 2016-08-07 (日) 22:01:27
  •   -- 2016-08-07 (日) 22:01:23
  • (夜更け過ぎ、もともと静かな荒れ寺が更に息を潜め、音を無くす時)
    (堂の真ん中に陣取って、我流の趺坐を行なっていた少女が瞳を閉じ瞑想をしている)
    (呼吸は細く、長く、時に太く、短く、時に溜めるように、時に開放するように)
    (もう一人の師が授けた内功はかつてなく高まっている)
    (経脈を流れる内息は一糸乱れぬ清流の如く、しかし激流の力強さを兼ね備え)
    (凄腕の術師の張った結界が十全に活きているのが分かる、彼の仕事は完璧だ)
    (それによりお互いを繋げ重ねあわせ無限の輪とするあの感覚にほぼ近い物が得られている)
    (機は、成った)
    -- 緋乃 2016-08-07 (日) 21:40:33
    • (小鉢を捧げ持つように組まれたその手にあるのは玄妙なる複雑さを備えた文様走る魔石)
      (ラプラスの眼。かつて惨劇を幾度と無く引き起こしたとされる神の怒りを引き起こす悪魔の石)
      (それを剣とし己の身の内へと振るい挑む覚悟を呼吸を操りながらじわじわと固めていく)
      (その最中、ふと、思い出す)
      (色んなことがあった。色んな人と出会った。それを一つずつ、思い起こしていく)
      (長い旅の果て、あの日見た青空の行き着いた先、そこで見て、聞き、触れ、感じたことを)
      (それらの思い出一つ一つが力になっていくような気がする)
      (きっと一人ではここまで来れなかっただろう、それら全てに感謝して瞳を開ける)
      (この街に来て…皆と出会えて…本当に良かった)
      (魔石にありったけを練り込んだ魔力を注ぐ。対象は己の内に潜む鬼を縛る封印)
      (解くは遙かなる時を経て鬼を抑え続けた古き封)
      (光が広がる。熱を持たない何処か生命力そのものを燃やし尽くすような光が)
      (それは堂を包み込み、更には収まりきらず、荒れ寺を地上の星の如く照らしだしていった)
      -- 緋乃 2016-08-07 (日) 21:40:49
      • (悪魔の石が放つ膨大な光の中、少女は歯を食いしばり魔石へと力を注ぎ込む)
        (分かる、結界の作用もあり、己の内がよく見える)
        (それはかつての儀式でも見た光景。己の内的宇宙が見せる景色)
        (己の全身の経脈に走り揺らめく太い縄のような力の大本である大きな赤黒い珠)
        (一瞬、一瞬のたびにその珠に掛かっていた淡い水色の網が解れていくのが分かる)
        …いける!(確信めいた呟きを漏らす、封印は着実に解けている)
        (繰り返した内功の修行、道場にて授けられた術、その感覚がまだ余力さえあることを教えてくれる)
        [アホゥ!油断するな!](鬼の顔が叫ぶ、まだ解術は始まったばかり、気を緩めるような状況ではない)
        分かってるって…!(慎重に、かつ正確に。集中を欠いて練り上げる力が霧散しては元も子もない)
        (そうして、封印が半分以上剥がれ、赤黒い珠が殆ど露出し始めた時、鬼の顔が訝しげな表情となる)
        [力が湧き上がってくる…だが…これは…](何かを考えこむようにして、呆然と呟き)
        …え?なに?…はっきり言ってよ、こっち余裕ないんだから…!(対する少女は叫ぶように)
        (もはや目を開けてさえも何も見えぬ膨大な光の渦の中、圧力さえも伴い出した光はごうごうと風切り音を奏で出す)
        (封が剥がれていくたびに、体内の鬼の力が加速度的に高まるのも感じる。…ここまでは予想通りだ)
        (封印を完全に解くと同時に、鬼と意を合わせこれを体外へ出さねばならない。でなければ己の身など弾け飛んでしまうだろう)
        -- 緋乃 2016-08-07 (日) 21:41:09
      • あと…少し…!(もはや頼れる感覚は己の内を見る操気の感覚のみ。嵐の中で丸裸にされているような気分だが決して力は緩めない)
        (封印の網目が崩れていく、残るは大黒柱となる一本の荒縄とそこから枝分かれるような横糸のみ)
        (内功は大分消費したものの、まだ空になった訳ではない。もう一人の師に感謝しながら足りぬ分を補うべく内息を整える)
        (横糸が飴でできたが如く細かな糸になり、解けて消えゆく、そうして、残るは水色の光放つ荒縄となり)
        (その時、ふと、以前の儀式の時少しだけ見えた紅い小さな珠がその横にまた見えた。それは…どこか震えるように振動していて)
        […待て餓鬼!](鬼が叫ぶ。その声は鋭く、風に負けず耳に届き)
        [そいつは…俺じゃねぇ!](声が大きく響いた、その瞬間、紅い珠が打ち震えるように鳴動する)
        (少女は愚かだった。何故己に鬼の力が使えたのに、己と語る鬼の顔は一切使えぬのか考えようとしなかった)
        (鬼は愚かだった。少女に封じられる以前の記憶が朧気であり、どこか他人事のようにしか思い出せなかったことを不思議にも思わなかった)
        !?(紅い珠の鳴動を感じ取り、その言葉を直感的に理解する、してしまう)
        (少女が十数年の間共に過ごしたこいつは…唯一の隣人だったこいつは…鬼ではなかったのだと)
        (反射的に解術への魔力供給を停止、封印の術式分解は止まったものの、既に起動し存分に稼働状態となっていた魔石は止まらない)
        (愚かさの代償は、すぐに訪れる)
        (ほぼ封印の解けた真なる鬼はぶるりと一つ震え、その莫大な鬼気をじわりと少女の体内で広げ始める)
        (魔力の供給元を強制的に断たれてしまったラプラスの眼は、その行き場のない渇望を外部の空間へと狙い定める)
        (そうして、星のごとく輝いていた光は一瞬にて消え辺りは闇に包まれ…少女の戦いは、終わった)
        -- 2016-08-07 (日) 21:41:24



      • (数刻の後、そこには崩れた荒れ寺の瓦礫が埋もれるようにあり)
        (動く物の姿は…どこにもなかった)
        -- 緋乃 2016-08-07 (日) 21:41:53

Last-modified: 2016-10-02 Sun 23:30:30 JST (2763d)