名簿/498214

名簿が目に優しくないと感じたら、ここからコメントしてもいい。
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  • (月夜である。月光が廃駅を照らす。そこは打ち棄てられた歩廊)
    (満月を脇に屋根の上、正装をした猫面の影。此処は彼の出立の場所)
    (彼は学園都市の狂人)
    (彼は学園都市の七不思議の一つ)
    (彼は学園都市の《奪われた者》の一人)
    (彼は高貴なる者の義務を捨てし者)
    (彼は友との約束を果たさんとする者)
    (彼はその猫面と正装故に《猫男爵》と呼ばれている)
    今宵の月齢は十四。満月。旅立ちに時は満ちて、私が向かうは何方!
    (ステッキを掲げて高らかに、今宵、彼は閉幕を告げる)
    ―――皆様、今宵もお集まり頂けまして何よりで御座います。
    (自由意志による思い思いの間隔を空け寝転がる猫達に向けて彼が帽子を取って優雅に一礼すれば)
    (それに応える無数の猫目が月光を映し緑に煌めく)
    さて。第七幕の結びはこのようになっておりました。
    彼は親友により救い出され不死者となり、
    不死者となった彼は彼を救った親友を喪う。
    そして約束をしたのです。
    いつか必ず、打たれた楔を打ち払い、
    彼を銀河の果てへと連れて行くと。
    死が二人を別っても。今宵はその後日談でございます。
    それでは、皆様、お楽しみ頂けますよう。
    (夜の帳の銀幕に、複合映写機(シネマトグラフ)は回らない)
    (凪いだ夜。満月が中天に昇るまでの僅かな暇。猫の貴族の声だけが響く) -- 猫男爵 2013-06-07 (金) 01:16:07


    • 友を亡くしてからの私は。
      私に与えられた遙かな時間を、ただ彼との約束を果たすために使いました。
      つまり。不可逆の異能を可逆ならしめるために。

      (その声には、寂寥と感慨とが入り交じる)

      それには永い永い時が必要でした。実に50年の時が。
      私の魔道をもってしても。それだけ永く大掛かりな儀式が必要だったのです。
      ひとつの贄も用いずに、極めて穏便に事を運ぶには。

      (過去を想って、現在を想って、猫は語る)

      魔法の複合映写機(シネマトグラフ)による、過去の追体験。
      これを月相の流転に合わせて繰り返すこと幾百か。
      ついに儀式は終わりを迎えたのです。 -- 猫男爵 2013-06-07 (金) 01:21:09


      • (猫としての最後の時間を使い、述懐する。この都市で過ごした夜を)

        儀式の合間に、私は夜を渡り歩きました。
        猫男爵なる怪異として、学園都市の夜を。
        若者達のいのちの輝きを見つめながら。

        (重ねるように空を仰ぐ。果てなき時間を掛けて生まれては消える星々の瞬く夜空を)

        時には消えてしまうものもありましたが、みずから手を伸ばすことはしませんでした。
        それは私の役目ではなかったから。
        私の両手は、既に友のために塞がれていたからです。
        その意味で私は、高貴なる者の義務を捨ててしまっていたのです。
        ですから、私は男爵と呼ばれる資格はない。些細なことでしょう。
        私はそも猫ですらない哀れな人間、都市に囚われた虜囚にすぎないのですから。

        (両の拳を握り、また開く)

        ですが、両の手が塞がれていたとしても。
        彼らと語らうことは出来ました。
        私はそういうものとして。後輩達にせめてもできることとして。
        それを望む者には。時には私から望んで。
        言葉を交わすことにしたのです。
        都市に生きる彼ら、輝きと。 -- 猫男爵 2013-06-07 (金) 01:23:55


      • (ひとつひとつ、回想する。輝ける者たちとの出会いを)

        輝く銀の腕を以て悪意を打ち払う青年。
        機械の巨人を操り、都市の平穏のため奔走する少女。
        死せる父の無念のために研鑽を続ける女教師。
        来訪者にして異邦猫たる彷徨う黒猫。
        真実を探求し、都市を救わんとする探偵。
        第七教室の、儚く哀しく、されど強かな囚われ人たち。
        幸福を運び与える、青い鳥にならんとするやさしき狩人。
        人を信ずることに迷い、されど手を伸ばしたいと願う白薔薇。

        その誰しもとの出会いが、私は楽しく眩しかった。
        かつて人を導くことを望んだ私には。

        ―――ですが、最早お別れの時です。
        運行時刻は正確に。
        現在時刻は既にその時。
        友との約束を果たす時が来たのです。

        (満月はついに中天に座し、彼の姿を逆光に黒く染めあげる) -- 猫男爵 2013-06-07 (金) 01:27:00


      • それでは皆様、ごきげんよう。

        (優雅に帽子を取って一礼すれば、そこには既に耳はない)
        (猫の面は消え去って、折り目正しい正装に、猫目石のブローチがその胸に輝く)
        (かつて生まれたばかりの学園都市に生き、運命を駆けた青年は)
        (燃える赤毛と黄金色の双眸を持つ、眉目秀麗な青年は)
        (かつてのままの姿で、もっとも輝かしかった頃の姿で、その身に秘められた異能を顕現する)

        ―――我が異能、我が力 カール・クルックシャンクは出立する!
        第三宇宙速度を突破して、無限遠の彼方まで!

        (出現するのは、白煙上げる鉄の塊。一両の黒い蒸気機関車)
        (それこそが彼の異能。かつて特一級災害に認定され、封印された彼の力)
        (物理法則の書き換えにより最高速度は光速を越え、一条の流星と化して果てなき宇宙(そら)を駆ける『夜汽車銀河行(ノクト・トラャノ)』) -- 猫男爵 2013-06-07 (金) 01:30:10


      • では行こう、友よ。
        南十字座から北十字へ、二つの石炭袋を抜ける旅へ。
        銀河を駆ける遙かな旅へ。

        (鉄塊が汽笛をあげる。旅客車の座席に黒い影)
        (乗り込んだ青年が、彼の向かいに座す)
        (二人の影法師は、互いに笑いあったように見えた)

        (猫たちの碧の目が見送る中、『夜汽車銀河行(ノクト・トラャノ)』が駆けてゆく)
        (夜に染まった海が満天の星空を映す中)
        (名残を惜しむように、天と地の星々の間を抜けて)
        (やがて空を染める乳脂の粒を目掛けて昇り、消える)
        (一条の白い蒸気を残して、遙か遠くへ)
        (恐らくは彼が言い残した通り、無限遠の彼方へ) -- 猫男爵 2013-06-07 (金) 01:36:05



      • (その後、学園都市に語られる七不思議、その《猫男爵》の項には、以下の文が付け加えられることとなった)


        「彼の男爵、猫の貴族たる男爵は、彼の友との約束のために、黒き夜汽車に乗って銀河の果てへ旅立った」
        「ゆえに、この都市において誰もその姿を見ることはなくなったのだ」


        (彼がいなくなった後も、学園都市は歴史を刻む。様々な人の想いをのせて)
        (遙かなときの流れの中で、やがて彼のことを語る者もまた、消えてゆくのだろう)


        (その最初のひとりは、ここに)
        (対岸の街、夜空を遡る流星を遠くに見送って、年老いた女は寝台の中で息を引き取る)
        (金と碧の目を閉じて、眠るように安らかに)
        (輝かしかったあの頃を想いながら)



                                                                  ―――Fin. -- 2013-06-07 (金) 01:38:42
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  • (月夜である。月光が廃駅を照らす。そこは打ち棄てられた歩廊)
    (満月を脇に屋根の上、正装をした猫面の影。此処は彼の出立の場所)
    (彼は学園都市の狂人)
    (彼は学園都市の七不思議の一つ)
    (彼は学園都市の《奪われた者》の一人)
    (彼は高貴なる者の義務を捨てし者)
    (彼は友との約束を果たさんとする者)
    (彼はその猫面と正装故に《猫男爵》と呼ばれている)
    今宵の月齢は十四。満月。旅立ちに時は満ちて、私が向かうは何方!
    (ステッキを掲げて高らかに、今宵、彼は閉幕を告げる)
    ―――皆様、今宵もお集まり頂けまして何よりで御座います。
    (自由意志による思い思いの間隔を空け寝転がる猫達に向けて彼が帽子を取って優雅に一礼すれば)
    (それに応える無数の猫目が月光を映し緑に煌めく)
    さて。第七幕の結びはこのようになっておりました。
    彼は親友により救い出され不死者となり、
    不死者となった彼は彼を救った親友を喪う。
    そして約束をしたのです。
    いつか必ず、打たれた楔を打ち払い、
    彼を銀河の果てへと連れて行くと。
    死が二人を別っても。今宵はその後日談でございます。
    それでは、皆様、お楽しみ頂けますよう。
    (夜の帳の銀幕に、複合映写機(シネマトグラフ)は回らない)
    (凪いだ夜。満月が中天に昇るまでの僅かな暇。猫の貴族の声だけが響く) -- 猫男爵 2013-06-07 (金) 01:16:07


    • 友を亡くしてからの私は。
      私に与えられた遙かな時間を、ただ彼との約束を果たすために使いました。
      つまり。不可逆の異能を可逆ならしめるために。

      (その声には、寂寥と感慨とが入り交じる)

      それには永い永い時が必要でした。実に50年の時が。
      私の魔道をもってしても。それだけ永く大掛かりな儀式が必要だったのです。
      ひとつの贄も用いずに、極めて穏便に事を運ぶには。

      (過去を想って、現在を想って、猫は語る)

      魔法の複合映写機(シネマトグラフ)による、過去の追体験。
      これを月相の流転に合わせて繰り返すこと幾百か。
      ついに儀式は終わりを迎えたのです。 -- 猫男爵 2013-06-07 (金) 01:21:09


      • (猫としての最後の時間を使い、述懐する。この都市で過ごした夜を)

        儀式の合間に、私は夜を渡り歩きました。
        猫男爵なる怪異として、学園都市の夜を。
        若者達のいのちの輝きを見つめながら。

        (重ねるように空を仰ぐ。果てなき時間を掛けて生まれては消える星々の瞬く夜空を)

        時には消えてしまうものもありましたが、みずから手を伸ばすことはしませんでした。
        それは私の役目ではなかったから。
        私の両手は、既に友のために塞がれていたからです。
        その意味で私は、高貴なる者の義務を捨ててしまっていたのです。
        ですから、私は男爵と呼ばれる資格はない。些細なことでしょう。
        私はそも猫ですらない哀れな人間、都市に囚われた虜囚にすぎないのですから。

        (両の拳を握り、また開く)

        ですが、両の手が塞がれていたとしても。
        彼らと語らうことは出来ました。
        私はそういうものとして。後輩達にせめてもできることとして。
        それを望む者には。時には私から望んで。
        言葉を交わすことにしたのです。
        都市に生きる彼ら、輝きと。 -- 猫男爵 2013-06-07 (金) 01:23:55


      • (ひとつひとつ、回想する。輝ける者たちとの出会いを)

        輝く銀の腕を以て悪意を打ち払う青年。
        機械の巨人を操り、都市の平穏のため奔走する少女。
        死せる父の無念のために研鑽を続ける女教師。
        来訪者にして異邦猫たる彷徨う黒猫。
        真実を探求し、都市を救わんとする探偵。
        第七教室の、儚く哀しく、されど強かな囚われ人たち。
        幸福を運び与える、青い鳥にならんとするやさしき狩人。
        人を信ずることに迷い、されど手を伸ばしたいと願う白薔薇。

        その誰しもとの出会いが、私は楽しく眩しかった。
        かつて人を導くことを望んだ私には。

        ―――ですが、最早お別れの時です。
        運行時刻は正確に。
        現在時刻は既にその時。
        友との約束を果たす時が来たのです。

        (満月はついに中天に座し、彼の姿を逆光に黒く染めあげる) -- 猫男爵 2013-06-07 (金) 01:27:00


      • それでは皆様、ごきげんよう。

        (優雅に帽子を取って一礼すれば、そこには既に耳はない)
        (猫の面は消え去って、折り目正しい正装に、猫目石のブローチがその胸に輝く)
        (かつて生まれたばかりの学園都市に生き、運命を駆けた青年は)
        (燃える赤毛と黄金色の双眸を持つ、眉目秀麗な青年は)
        (かつてのままの姿で、もっとも輝かしかった頃の姿で、その身に秘められた異能を顕現する)

        ―――我が異能、我が力 カール・クルックシャンクは出立する!
        第三宇宙速度を突破して、無限遠の彼方まで!

        (出現するのは、白煙上げる鉄の塊。一両の黒い蒸気機関車)
        (それこそが彼の異能。かつて特一級災害に認定され、封印された彼の力)
        (物理法則の書き換えにより最高速度は光速を越え、一条の流星と化して果てなき宇宙(そら)を駆ける『夜汽車銀河行(ノクト・トラャノ)』) -- 猫男爵 2013-06-07 (金) 01:30:10


      • では行こう、友よ。
        南十字座から北十字へ、二つの石炭袋を抜ける旅へ。
        銀河を駆ける遙かな旅へ。

        (鉄塊が汽笛をあげる。旅客車の座席に黒い影)
        (乗り込んだ青年が、彼の向かいに座す)
        (二人の影法師は、互いに笑いあったように見えた)

        (猫たちの碧の目が見送る中、『夜汽車銀河行(ノクト・トラャノ)』が駆けてゆく)
        (夜に染まった海が満天の星空を映す中)
        (名残を惜しむように、天と地の星々の間を抜けて)
        (やがて空を染める乳脂の粒を目掛けて昇り、消える)
        (一条の白い蒸気を残して、遙か遠くへ)
        (恐らくは彼が言い残した通り、無限遠の彼方へ) -- 猫男爵 2013-06-07 (金) 01:36:05



      • (その後、学園都市に語られる七不思議、その《猫男爵》の項には、以下の文が付け加えられることとなった)


        「彼の男爵、猫の貴族たる男爵は、彼の友との約束のために、黒き夜汽車に乗って銀河の果てへ旅立った」
        「ゆえに、この都市において誰もその姿を見ることはなくなったのだ」


        (彼がいなくなった後も、学園都市は歴史を刻む。様々な人の想いをのせて)
        (遙かなときの流れの中で、やがて彼のことを語る者もまた、消えてゆくのだろう)


        (その最初のひとりは、ここに)
        (対岸の街、夜空を遡る流星を遠くに見送って、年老いた女は寝台の中で息を引き取る)
        (金と碧の目を閉じて、眠るように安らかに)
        (輝かしかったあの頃を想いながら)



                                                                  ―――Fin. -- 2013-06-07 (金) 01:38:42
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  •  
  • Ma i patti erano chiari:(でも、男同士の約束だ)
  •  
  • (月夜である。月光が噴水を照らす。其処は猫達の集会場)
    (十三夜月を背にして噴水の上、正装をした猫面の影。此処は彼の秘密の庭)
    (彼は学園都市の狂人)
    (彼は学園都市の七不思議の一つ)
    (彼は学園都市の《奪われた者》の一人)
    (彼は高貴なる者の義務を捨てし者)
    (彼はその猫面と正装故に《猫男爵》と呼ばれている)
    今宵の月齢は十二。小望月。待て、しかして希望せよ。彼が司祭となりしは何故!
    (ステッキを掲げて高らかに、今宵も彼は開幕を告げる)
    ―――皆様、今宵もお集まり頂けまして何よりで御座います。
    (自由意志による思い思いの間隔を空け寝転がる猫達に向けて彼が帽子を取って優雅に一礼すれば)
    (それに応える無数の猫目が月光を映し緑に煌めく)
    さて。第六幕の粗筋はこのようになっておりました。
    昔々、今では知命なる学園都市が、幼児から少年になろうかという頃。
    そこにいた二人の青年。無二の親友。彼らの片割れは知るのです。
    欠かせぬ半身に迫る危機を。運命を測る札と、金の髪の乙女によって。
    駆け抜ける友情。彼の若き魂は、果たして友を救いうるのでしょうか。
    されど、ああ、されど―――物語は必ずしも幸福には終わらない。
    死が二人を分かつまで。今宵は第七幕をお届け致します。
    それでは、皆様、お楽しみ頂けますよう。
    (夜の帳の銀幕に、複合映写機(シネマトグラフ)が回り出す―――) -- 猫男爵 2013-06-05 (水) 23:24:24


    • 【第七幕・一】
      気がつくと、私は建物の中に居た。貴族の屋敷を思わせる瀟洒な内装。
      どうやら椅子に座らされ、両手足を拘束されているようで動けない。対面に無人の椅子が一脚。誰かが来るということか。
      椅子の後方に窓がある。目をやれば、煌々と照らす満月が蒼い光を室内に投げかけている。月の満ち欠けからすると、あれから丸一日経っている。

      ―――あれから?
      ―――それは何時からだ?

      頭を振る。霞がかかったように重い。
      それにしても視界が悪く、呼吸がしにくい。何か覆面めいたものを被せられているようだと気付く。
      あまりにも状況が不明瞭なので、私は深呼吸をした。下手に動くより、まずは冷静になることだ。
      幾許もなく、部屋に入ってくる者があった。予想の通り、対面の椅子に座る。
      彼女は狐のように細い眼をした陰のある女性で、鴉の濡れ羽めいた黒髪を腰程まで伸ばしている。
      直接会ったことはなかったが、話に聞いた特徴から誰なのかが知れた。
      積極的に会いたいと思う類の人物ではない。恐らくは、この都市で暮らす誰もが。
      「気がついたかね。カール・クルックシャンク」
      「私からの自己紹介は不要のようだな。公安委員会副執行部長、イザベラ・オブリゲート……『悪進化(イボルヴ)』のイザベラ」
      黒髪の女は愉快げに口元を歪めた。
      「よくご存じだ。流石は第一魔技工……ああ、ああ、そう睨むな。面越しでもその視線は分かる。安心したまえ、説明はくれてやる」
      彼女の声や表情から悪意の片鱗を感じながらも、私は問う。
      「ここは公安の本部だな?」
      「ご明察」
      「では、何故私はここにいる?」
      彼女は一瞬きょとんとして、それから声をあげて笑った。
      「何が可笑しい?」
      「君は何も覚えていないのか?……そうか、昨夜は少々手荒に仕留めてしまったからね。何分君の異能はたいへん恐ろしかったから」
      昨夜。異能。頭が痛む。
      私は新開発区で調査を―――
      遠くから鐘の音が聞こえて―――
      それから―――
      「君の異能のおかげで、新開発区は壊滅だ……まったく、『天啓(オラクル)』の予知は不安定過ぎていけない。
      おめでとう、誇りたまえよ。『解体真書(アナリシス)』による分析結果と、当年策定された新たな基準に基づき、君の異能を特一級学園災害に認定する。第一号だ。
      リミッターの具合はどうかね?」
      私の異能。それがもたらした影響を私は今ようやく思い出し、体に震えが走った。
      それは、これならば封じられてもやむを得まいと思うような、凄まじいものだったから。
      リミッターとは、異能を制限するという装置。多くは装身具の形で。恐らくは、頭に被せられているこれのことか。
      「もう少し快適なものには出来なかったのか?鉄仮面もかくやだ。これでは食事もできまい」
      「まあそう言うな。それは最新型でね。装用者の異能を100%完全に、一分の隙もなく封じて、絶対に外れず壊されない。芸術だよ。
      デザインはいささか悪趣味だが、それもまた結構だ。
      ちなみに、それを作ったのは君も知っている者だよ。彼女がいなければそれは完成しなかった」
      意匠など気にするものか。外れないとしても、それはどうにかして外すだけのことだ。
      そんな些事よりも気にすべきことがある。
      「彼女とは誰だ」
      「入って来たまえ―――キャロライン」
      扉が開き、金髪の淑女が入室する。
      彼女はどこか別人のようだった。違うのは、眼か。
      平素悪戯に輝く左の碧眼が、今は陰鬱な狂気を孕んで揺れている。
      「キャロライン……君が何故!」
      彼女は声を絞り出す。
      「愛していたから」
      「愛していた?」
      「ジョシュアをよ。私、貴方が羨ましかったの」
      彼女は狂気に濡れた虚ろな視線を返す。どうやら佯狂では無さそうだ。
      なにより、私の知る彼女は、少なくとも情愛に狂ったからといって愛する人をも傷つける形で誰かを陥れたりはしない。
      「彼女に何をした」
      「少し弄ってあげただけだよ。我が異能『悪進化(イボルヴ)』は万物のあらゆる特性を引き伸ばす。
      嫉妬心の萌芽があったようだから、育てて咲かせてあげたのさ。薬の力も少し借りたがね。
      些細なことだろう?君の持つような危険な異能を恒久的に封じるためには、
      彼女の異能、彼女の為す行為を任意に取り返しの付かないものにする『破鏡再び照らさず(アンレストラブル)』は必要だ」
      キャロラインの異能が結果を不可逆ならしめるものだとすれば、彼女の為した封印は決して解かれることがない。
      どこまでの絶対性を持つのかは不明だが。それを用いたとすれば、つまり。
      「この面は決して外れないということか」
      「ご明察」
      忌々しい話だ。だが、聞くべきことはまだ聞かねばならない。
      「私はこれからどうなる」
      「その覆面、顔を全て覆っているだろ?さっきも食事が摂れないと言われたが、その必要がない状態にさせてもらう―――冷凍睡眠だ。
      君のそれを適切な形で利用できる日が来るまで保存させてもらうさ。大事なサンプルとして」
      異能を封印するのは納得しよう。だが標本扱いは我慢がならない。その手段もだ。
      「私は人だ。人としての扱いはされないのか。キャロラインにした仕打ちとてそうだ。何故お前は手段を選ばない」
      イザベラはきょとんと心外そうな顔をした。人の心が残っていれば出来ない顔だ。
      それは狂信者の顔だった。殉教者とは呼ぶにはあまりに歪んでいる。
      「私はただ、倫理よりも職務に忠実なだけだよ、カール・クルックシャンク。
      ひとのみちに拘っていても人は救えない。この都市では皆が爆弾を孕んでいる。それもとびきり強力な爆弾を。最悪、この星ごと消してしまうような奴をだ」
      「誰しもが望んで目覚めるものか。人を救うというなら、目覚めた者をも救うことはしないのか」
      何を今更。笑いざま伏した吐息に、そんな言葉が含まれているかのようだった。
      「只人は超えていても、我々は神ではないのさ」
      言葉の後の静謐を、来訪者の到来を告げるノックの音が割る。
      「どうやら迎えが来たようだ。夢の世界へ持たせてやる土産はこんなもので十分だろう―――入れ」
      「邪魔をする。―――我が親友を迎えに上がったよ、副執行部長殿」 -- 2013-06-05 (水) 23:39:55


      • 【第七幕・二】
        ステッキを片手に悠然と部屋に歩み入ってきたのは、黒い礼装の彼。
        私は喜色ばんで叫ぶ。ああ、彼はやはり来てくれた。
        「遅い到着だな!ジョシュア・ボールドウィン、我が親友!」
        「そう誹るな、カール・クルックシャンク……我が親友。随分とまあ、シュールな姿になったな」
        苦々しげに彼を見るのはイザベラだ。蓬髪を振り乱してジョシュアを睨む。
        「貴様……何故とは聞くまい。どうやってここに来た」
        「『夜の王(ドラクル)』は怪力無双、変幻自在、神出鬼没……執行部も人手不足と見えるな、手応えのない者ばかりだ」
        「まさか」
        「この建物に残っているのは君だけさ、イザベラ」
        夜は彼の領土だ。『夜の王(ドラクル)』には絶対の時間。選りすぐられた異能使いが集う執行部さえも相手にならない。
        数多の敵を傷一つ無く、また気付かれることなく排して、彼は今ここにいる。
        「あとは君を処理して、ここの記録をカールに関するものを含めて諸々消せば、彼は晴れて自由の身というわけだ。執行部長殿は長らく不在のようだしね」
        黒髪の女が哄笑する。細い眼を見開いて、情動のままに歪ませる。
        「彼が席を空けているのは、私が信頼されているからだよ、ジョシュア・ボールドウィン。我が『悪進化(イボルヴ)』を舐めるなよ?
        その友情、その自信、一切合切を刈り尽くしてやる」
        ジョシュアは意に介さずといった様子で、私に声をかけた。
        「カール、そろそろいいんじゃないか?」
        首肯して私は立ち上がる。私を拘束していた鎖ががばらりと落ちた。
        「やれやれ、すっかり体が固まってしまった。……魔力は封じられていないようで助かったよ。片手落ちだな、イザベラ?」
        二対一という状況でも、イザベラは笑みを崩さない。それは己の異能への自信ゆえか。
        虚ろな目をしたキャロラインをジョシュアがそっと壁際まで下がらせて、向き直る。
        彼がかつりとステッキを鳴らしたとき、戦いの火蓋が切られた。

        我々がイザベラを前後から挟んだ状況、しかし最初に動いたのは彼女だった。
        「『悪進化(イボルヴ)』。我が肉体は人を超える」
        イザベラは瞬きの間もなくジョシュアに近づく。これは純粋な身体能力だけではない――武術をやっている?
        ごうという腕の一振り。ジョシュアは辛うじて躱したが、余波で壁が吹き飛んだ。破片が宙を舞い、瀟洒な調度を蹂躙する。
        「冗談だろ?」
        「いや、多分こんなものじゃない」
        イザベラが観葉植物を掴んで放り投げると、それは空中で食人植物(マンイーター)のように姿を変えた。
        おぞましい触手と牙を向けるそれを、ジョシュアがステッキに仕込んだ刃を抜いて一刀に斬り伏せる。
        あらゆる特性を引き伸ばす?とんだ嘘吐きだ。これは―――
        「一定のベクトルを定めた上で、進化という概念を付与している?」
        己が悪意によって歪められた進化を他者に齎す異能。恐らく、対象に触れる必要がある。
        そうでなければ、我々は今ごろ手足のない肉塊にでも変えられてしまっている。
        「ご明察だ、カール君」
        私の目と鼻の先で、イザベラが呟く。一触即死のその腕は、しかし私を捉えない。
        「無詠唱の短距離転移、小賢しいな」
        私が姿を現した先、読み切ったように魔力の弾丸が飛来する。
        知覚と反応速度も異常だが、それ以上に込められた魔力の量が尋常では無い。
        しかし、幸いにも術式自体は単純だ。即座に解呪し霧散させる。
        「ヒヤリとしたよ……内性魔力まで増やしているとは。魔力の圧だけで大抵の魔術は弾けるんじゃないか?」
        口振りは軽く、しかし冷や汗混じりに。ジョシュアと視線を合わせて頷き合う。並でない魔術ならどうだ、と。二人同時に詠唱を開始する。
        「小賢しいな」
        イザベラの蹴りが床を抉り、その破片が散弾のように襲い来る。だが、詠唱と術式の展開の手は止めない。
        片手間に、無詠唱で魔術を発動する。『飛翔体の落下』、飛礫の全てが速度を失い墜落する。
        自由落下するそれらが地に着くよりも早く、二人の術式が発動した。
        『共魔術・濡血卵殻』。イザベラの周囲を硬質の外殻が被う。魔術による結界。
        それが結する直前に投げ込まれた破滅の火種が、その内部で破壊の嵐を荒れ狂わせる。
        逃げ場のない破壊力が彼女の肉体を粉微塵に破砕した。
        「やれやれ、人間相手に使うものじゃないな」
        「まったくだ。だが、これだけやれば再生は出来まい」
        結界の内部で、血色の霧が内部で渦を巻いている。血に染まった卵殻が、割れた―――?
        瞬間、部屋を衝撃が襲った。床に亀裂が走る。四条の爪痕。
        その痕跡は鋭利であるが、一拍の後に猛然と溶け出した。強酸、いや猛毒か?
        「大丈夫か」
        どうやらジョシュアに庇われたようだ。『夜の王(ドラクル)』、彼は夜間のみ完全だ。傷一つ付いてはいない。
        「腐食性の猛毒だ。指先からカッターのように飛ばしたらしい」
        「どうやら再生したらしいな」
        ひたりひたりと、歪な人型のシルエットが歩み寄る。機能不明の器官を随所で脈動させながら。
        異形に変形した右腕、黒く染まった剥き出しの筋繊維。昆虫めいた紅い複眼。
        声帯が人語を発せられる形態に留まっていないのか。
        げぎゃげぎゃと共通語のつもりらしい何かを話しながら、しかし我々への殺意だけは明確に伝わってくる。
        彼女の足下、木貼りの床がぐねぐねと蠢く。リミッターが破損して、接触対象に限定されていた異能の影響力が漏出しているのか。
        「最早化物だな。しかもこれでは近づけない。どうする?」
        問いを向けると、ジョシュアは不敵に笑う。
        「まずは足を止めてくれ」
        「わかった」
        足を止めるなら、ただの結界よりも。
        『永久凍結』。極低温、亜絶対零度による封印術式。
        「いくら進化を重ねても、いくら魔力が強くとも、極低温(これ)に対応するには時間がかかるだろう?」
        泥濘の中を歩くよりも遅く、映画のフィルムを一枚一枚流すように、イザベラの動きが鈍る。
        その間に、壁際に駆け寄ったジョシュアが声を掛ける。金の髪の彼女に。右眼に金の瞳を隠した彼女に。
        「キャロライン。君がどれほど我々に尽くしてくれたかを私は知っている。
        黄金瞳を持ちながら、カールに並び立てずに苦しんでいたことも。それを恥じていたことも、私は知っている。
        ひねくれて粘着質で意地の悪い君だが、しかしその奥に澄んだ心を持っているのを、私は知っている。
        私への愛は本物なのだろう?だからこそ、一時的でも『悪進化』の軛を抑え込んで、私に警告しに来たのだろう?
        それでは、私の気持ちは知っているか?―――私も君を愛している。だから力を貸してくれ、キャロライン!」
        ―――黄金瞳は、あらゆる想いを受け止める。
        曇りのない愛も、また。
        金と碧の金銀妖眼(ヘテロクロミア)がジョシュアを見据えて、輝くように笑って。
        二人が放った魔術の光が、凍ったイザベラを灰に変える。
        そして彼女は、元に戻らない。再生しない。
        キャロラインがそう願ったことは、『二度と取り返しがつかない』から。 -- 2013-06-05 (水) 23:53:42


      • 【第七幕・三】
        戦いを終えて、笑いあう。ジョシュアと固い握手を交わす。
        キャロラインの妬けた視線も、どこか柔らかい。
        満月の夜。運命を乗り越えた安堵感が我々を包む。
        「あとは人が来る前に、ここの記録を吹き飛ばすだけだな。ここに来る間に、実行部隊の口は塞いだし」
        「それは私に任せて。私の力なら間違いがないから」
        キャロラインが胸を張っていう。小さく、迷惑かけちゃったし、と付け加えて。
        「後は、そう、事象記録機関(モーダス)の改竄もだ。これは少し厄介だが、これからのことを考えればやっておかなくてはね」
        「それも私にやらせて。黄金瞳があるし、進入だけサポートしてくれればいい。
        ……情報の処理はこれでいいでしょうけど、でも……でも、カールの面は、もう取れない」
        私は頭に手をやる。不可逆の異能によって固定された覆面に。そのデザインは、どうやら猫を模したもので。
        「デザインはこの際置いておこう。食事が摂れない、中が洗えないでは困るね。
        ―――やはり、その必要を無くすしかないかな」
        イザベラが言っていたような意味でなく。私のそれが意味するのは、生体そのものの変質。
        「完全な不死。君と編み上げた僕らの魔道の到達点だ」
        「確かにあれならば。だが、君の『永久凍結』を含めても、方程式の最後の断片(ピース)が足りないだろう?」
        肩を竦めて笑顔を交わす。予定調和の会話。
        「君の異能が最後の断片さ。分析していたんだろ?魔術的に」
        「もちろんだ。帰ったら、すぐにでも準備を始めよう」
        満月に照らされて、穏やかな時間が過ぎてゆく。
        そう、あれは、我々にとっての、最後の時間だったのだ。

        夜明け前。朝の足音が聞こえるなか、記録の改竄を全て終えた我々は工房に集う。
        調度を全て排した部屋。僅かに残った蝋燭が、その一面に描かれた儀礼術式を照らす。
        中央に紅の石を携えた私。ジョシュアとキャロラインが見守るなか、詠唱を開始する。
        それは記述不能な、複雑怪奇な音波だった。
        あらゆる音の要素を以て、真理に迫る想念を紡ぐ。
        半刻余りに及ぶ永い永い詠唱が終わり、紅い光が術式の描線に満ちた。
        それらは還流し、私の肉体へと流れ込む。徐々に、徐々に。
        それには感覚の暴走を伴った。
        灼かれるように熱く、凍てつくように冷たく。
        満たされるように空虚で、奪われるように充実する。
        ―――後には静寂だけが残った。
        鼓動は無く、体温も無い。だが、私は生きている。
        人間でなく、幽鬼でもなく、あるいは精霊に近い存在として。
        生まれ変わった私に、ジョシュアが帽子を放る。黒いシルクハットを。
        「それなら耳も納まるだろう。誕生日おめでとう、カール」
        それを被った私を見て、キャロラインがくすくすと笑う。
        「様になってる。まるで猫の男爵ね」
        「猫男爵か、いいじゃないか。どうせこれからは名前も隠さなければいけないのだし」
        やれやれと、私は肩を竦めた。
        「名前もか。しかし、いろいろと覗かれたり読まれたりしたら厄介だ。情報迷彩もかけておかねば」
        「そう、それだ。廃棄する前に君の異能の解析結果を読んだよ。あれは―――」
        言葉半ばにして、ジョシュアの口から漏れたのは。
        音でなく、血液。
        崩れ落ちるジョシュア。動揺と混乱。キャロラインが何故と叫ぶ。
        私が駆け寄ると、ジョシュアは苦しげに呻く。いいんだ、と。
        「いいんだ、カール。キャロライン。……あの毒だよ。イザベラが最後に放ったやつさ。
        どうやら皮膚から体内に浸透するらしい。一度体内に入れられてしまったら、私にとっては時限爆弾と同じだ」
        体内に潜んだ毒が、夜が明けて異能の効果が切れると同時に、彼を蝕んだのか。
        だとすれば何故、不死の秘法で私を優先したのだ。
        「二人とも、そんな顔をするな。石は一人分しかなかったじゃないか。親友のために命を賭けて……死に様としては、最高だろう」
        私は、恥ずかしいことに泣き出してしまっていた。
        横でへたりこむキャロラインも、きっと同じだ。
        「お話では、死んだのはカムパネルラだったな。……最後に、願いがある」
        彼の手を握り、私は何でも言えと叫ぶ。涙混じりに。
        「……いつか、夢見たように……カール、君と、銀河を。君の異能ならそれが……」
        できる。そこまでは声にならず、唇の動きだけで。
        事切れた彼は、穏やかに笑っていた。

        私は約束する。既に彼には聞こえていないとしても。
        どれほどの時を要しても、絶対に彼の願いを叶えると。 -- 2013-06-06 (木) 00:04:27


      • (過去の記憶の上映は終わる。銀幕は薄明に白く染まりつつある)
        (朧に映る影が喋る。夜会の主が閉幕を告げる)
        これにて、全七幕の上映は終了となります。
        それでは皆様、また近く。

        後日談を語る場で、お会い致しましょう―――

        (影が帽子を取って一礼すれば、この場の全てが掻き消える)
        (まるで全てが一夜の夢だったかのように) -- 猫男爵 2013-06-06 (木) 00:05:21
  •  
  •  
  •  
  • 噂に聞いていた通りの猫男爵ぶりに驚きを禁じ得ないわ……あ
    来月ヴェルさんと同じく随伴します美月です、よろしくおねがいしあます -- 美月 2013-05-28 (火) 08:21:09
    • (分身は、少女にも同じように礼を返す)
      (極めて紳士に、ごく丁寧に。果たして、冒険も無事に済んだようだった) -- 猫男爵 2013-06-05 (水) 23:18:50
  • おお…だんでぃだし…まさに紳士って感じだし… おっとっと、えっと、来月同行のヴェルシーナだし!
    まだまだ子供だけど、精一杯がんばるし! -- ヴェル 2013-05-27 (月) 23:31:16
    • (猫男爵の魔術的分身は、冒険を介して学園外の情報を収集するためのもの)
      (猫部分のカラーリングが違ったり、タイが蝶ネクタイだったり、シルクハットが山高帽だったりと、本人とはいささか様子が異なるが)
      (その挙措は本人同様優雅なもので、挨拶を受けると丁寧に返礼をした) -- 猫男爵 2013-05-27 (月) 23:35:30
      • (紳士的な立ち振舞に感動する子リス)立派なオトナって、なんだかカッコイイし… -- ヴェル 2013-05-27 (月) 23:40:31
      • (憧憬というのは面映ゆい)
        (道を外れなければ、君もいつかはそうなれよう。まずは来月、期待しているよ)
        (分身は、少年に向けてそんな言葉を返したようだ) -- 猫男爵 2013-05-28 (火) 00:01:31
  • その高みから何が見える? 男爵、探しものがあるんだ 力を貸してくれないか? -- リゼット 2013-05-19 (日) 22:46:28
    • (背の高い尖塔の上、奇妙に傾いで立っていた。何の旋律も奏でることなく、ただ静かに)
      月と星と都市が見えるね。あとはそう、復調した芸術家かな。ごきげんよう、リゼット君。(脱帽し、優雅な礼)おかえりなさい、の方が適切かな?
      そして早速、猫の手も借りたいというわけだ。そう、私も快気祝いくらいは贈りたい。一体何をお探しかな? -- 猫男爵 2013-05-19 (日) 23:11:07
      • ああ、ただいま(返礼して)また会えて嬉しいよ男爵 半年もかけて、夜の国から還ってきたんだ あいにく土産の品もないけれど
        今度は猫ではなくて人探しだ 吉岡さんみたいな年長者を探してるんだ それもなるべく年かさの、大先輩がいい 昔話の一つでも聞いてみたくなってね -- リゼット 2013-05-19 (日) 23:24:38
      • 何、君の新作がまだ見れるというだけで、私にとっては十分だ。
        さて……この子供の国に、君の言う大先輩は珍しい。彼の吉岡女史は確かに年長者だが、さて、昔話となると役者が違う。
        似たような年月を経たふるい存在となると……さて、さて(こつり、こつりと地面を叩いて思案する)
        そうだね、そう。普段は決してしないことだが、黄泉路帰りの祝いとしては釣り合うだろう。……君の欲する語り手に、私では不十分かな、リゼット君? -- 猫男爵 2013-05-19 (日) 23:55:13
      • 公文書館に行ってもみたけどダメだった 書庫の扉は分厚くて、過去は醒めない夢に囚われて、ただ朽ちゆくままに任されていた
        男爵、君は…(何者でもいい、生き証人たりえるのであれば)この人工島で行われた、《実験》のことを聞き及んでいるだろうか
        あの鐘を打ち鳴らす試みだ 万人の願いを叶えるという音色を、この学園中に鳴り響かせるための実験だったと聞かされた
        私の祖父は何をした? かつて若かりし日のピュイフォルカは、一体何に加担したというんだ? なぜ彼はああまでも、失意に沈んで―― -- リゼット 2013-05-20 (月) 00:21:42
      • 落ち着きたまえ、リゼット君。凛としている方が君には似合いだ。
        (指を鳴らす。椅子が二脚と机が一つ現われる。向き合って座れるように。塔の上から音もなく降り立つと、リゼットを座らせる。自分も対面の椅子に掛けて)
        さて、私は多くを知っているが、知っていることしか知らない。残念ながらね。
        あの鐘のことも。この世ならざる音響をもたらすという鐘、代償を得て願いを叶えるという、大鐘楼の鐘。
        ―――あの鐘は字義通りの鐘ではない、鐘の形をした何か別のものだと、私はそう聞き及んでいる(古い記憶だが、と続けて)
        その鐘を音色を、学園中に響かせて、果たして何が起こるのか、あるいは起こったのか。
        私ですら、そこまでは分からない。秘密好きな統治会が、あの塔の中で、鐘とともに何をしていたのか、今もしているのか。
        所詮、私は一介の―――(ああ、これ以上はいけない)―――猫に過ぎないから。 -- 猫男爵 2013-05-20 (月) 01:00:55
      • 落ち着いているとも いや、それは落ち着いていない者の台詞だったか(一座を占め、腕組みして)
        「鐘」というのは嘲笑まじりの寓意にすぎないと? けれど、そう呼ばれるからには鳴り響くために在るのだろう
        あの鐘楼の中に入りたがっている友人がいる 止めるべきか、助けるべきか 判断に迷ってもいる
        だって、碌なものがなさそうじゃないか あれは建物というより、墓標の類だ 墓誌すら刻まれていない何かが眠る場所だ
        この学園都市にしても、毎日のように人死にが出ているのに平然としている 狂気じみているとは思わないか?
        昨日までの友人が骸に変わった、そのすぐ隣で談笑できるだなんて 昔からずっとそうだったのか なぜ狂ってしまったんだ、この箱庭は -- リゼット 2013-05-20 (月) 01:21:38
      • そうとも。今は昔ほどの閉鎖世界ではなくなったとはいえ、同じことだ。
        (テーブルの上を撫でると、卓上に一人分の紅茶と菓子。当然、いずれもリゼットの分だ)
        今も昔も、この都市は皆どこか感覚が狂っている。狂わされているのかは知らないが。
        (月を見上げる。あるいは星の動きを、時の流れを)
        この都市では死が隣人として溶け込みそこにある。異能にしてもそう、これそのものが異常であるのに、疑念を抱く者は僅かだ。
        ……墓暴きは碌な目に遭わないのが世の道理だ。普通ならば止めるところだろうが、さて。その友人は何のために入ろうと?
        (//遅くなって申し訳ない、続きは明日でお願いできるだろうか) -- 猫男爵 2013-05-20 (月) 02:03:16
      • //こちらこそ遅くまですみません おやすみなさい… -- #498142 2013-05-20 (月) 02:09:05
      • この学園は希望の方舟として建設された 少なくとも、祖父はそう信じていた 来るべき時代を越えて行くための碩学たちの学び舎だ
        世界中から俊英が集い、古き善きものたちを継ぐ新たな末裔となって…育まれていく揺り籠だったはずだ
        …はじめは不幸な事故だった しかし悲劇は繰り返された 入る人間と出てくる人間の数が合わないんだから、不審がって当然だ
        今も昔も、志半ばにして消息を絶つ生徒は少なくないと聞く そしていつからか、気付いてしまったんだろう
        この人工島は希望の方舟なんかじゃない 希望を喰らって肥え太る怪物だ シャトー・ディフは今も昔も裏切りの城だったんだ
        祖父が生前、語りえたことはそう多くない 私は…彼を、龍樹を無理にでも止めるべきだったんじゃないか? この胸騒ぎは何だ… -- リゼット 2013-05-21 (火) 02:49:13
      • 私もそう思っていたよ。優れた才がこの都市には集っていた。
        実際、ごく初めはいい時代だった。都市で過ごす皆の目に輝きがあった。
        (過ぎし日を想い、夜空を見上げる。表情は読めないが、声音に哀しみがある)
        歪みが表出しだしたのはいつからだったか。……シャトー・ディフ。湾上に浮かぶ孤島の牢獄か。
        だとすれば、差し詰めここは囚人を使った実験場というわけだ。趣味の悪いことだ。
        ……君のいう友とはあの子か。あの子は不思議な雰囲気を持っている。あるいは、いや……新しい玩具を与えるだけかもしれない。
        その胸騒ぎは、君が彼のことを信じ切れていない証かな。何にせよ、行動するなら早いほうがいいだろう。
        あの子は既に、警備委員会の者を一人……大事には至らなかったようだし、追手が掛かってもいないようでもあるが。 -- 猫男爵 2013-05-22 (水) 01:19:04
      • 辛いことを思い出させてしまった様だ(まなざしを伏せて)…重ねて聞きたい、今のシャトー・ディフに
        巌窟の王の暮らしたこの城に、もはや《司祭》はいないのか? 運命に抗い、死してなお望みを捨てなかった彼は
        …さもなければ、囚人は無力だ 可能性すら与えられない 死して後、再生を果たさずしてデッドエンドが待っている
        私の不信は今に始まったことじゃない どうすれば人を信じられる? どうすれば恐れを捨てられる?
        この愚かな後輩に…教えてくれないか、男爵(膝の上にのぼってきた黒猫を抱き、その背を優しく撫でて) -- リゼット 2013-05-22 (水) 03:10:46
      • 《司祭》など誰しもがなれよう。可能性は己で掴み取ることすら出来る。要は意志の問題だ。
        童女の如く盲目でもない君が人を信じるに必要なのはおそらく、他者に向き合いよく知ることだ。
        そうして信じられるか否かを判断するわけだが、それを為す己を信じられていないことには不可能だ。
        リゼット君。君は自分自身を信じられているだろうか?(リゼットを見上げる黒猫の瞳が、月光を返して緑に輝く) -- 猫男爵 2013-05-22 (水) 22:00:28
      • 人を知れと? 綺麗な部分も汚い部分も、それなりに見てきたつもりだ 知れば知るほどわからなくもなった
        迷いばかりが生まれて消える それでも自分自身のことだけは…信じてきたつもりだよ それしか恃むものがなかったんだから
        (黒猫を放して席を立つ)私は《伯爵》にはなれない 《司祭》の器でもない そんな大げさな運命なんて欲しいとも思わない ただ…
        (薄靄の向こうに浮かぶ光の粒子を仰ぎ見て)人知れず墜ちゆく星があるなら手をのばしたい できるだろうか、偽りだらけの私にも -- リゼット 2013-05-23 (木) 00:56:32
      • 高貴なる者の義務を捨てて久しい道化が言うのも烏滸がましいかもしれないが、人に手を差し伸べる権利は誰しもに与えられていると、私は思う。
        (銀河に揺蕩う星々は、大いなる力に流転しながら輝く。この夜も)
        見過ごすことは出来ないのだろう。であれば、まず君自らの心を偽ることの無いように、己の為すべき所を為すといい。 -- 猫男爵 2013-05-23 (木) 01:25:10
      • ありがとう、男爵 時には昔の話を…とうに忘れてしまっていてもおかしくないほど昔々の思い出話ができたなら
        そういう相手にめぐり会えたなら、それはとても幸せなことだと思う もしかして男爵、君は――
        (二人の兄たちにも会って、言葉を交わす事もあったかもしれない 在りし日の足跡をたどることだって、不可能なことでは…)
        …いや、いい、言わぬが花だ 過去を暴くばかりが能じゃないさ おかげで楽しかった 今度は猫缶(MonPetit)でも持ってこようか?
        (高貴なる猫と居合わせた猫たちに恭しく一礼して、星明りの降る家路につくのだった) -- リゼット 2013-05-23 (木) 02:20:55
      • 昔話は哀しくもあるが、たまには思い出さなければならないね。
        幸福な時を、彼らや彼女らを、己の中で死なせてしまわないように。
        (葛藤を静かに見守り、続く言葉を受け止めた)
        それが君の選択ならば。私も楽しかった、リゼット君。
        はは、私は食べることは出来ないが、この子達が喜ぶだろう。取り合いにならない量を頼むよ
        (冗談めかして笑い、黒い礼服の猫は白い淑女を見送る)おやすみ、リゼット君。よき星の廻りが、君の頭上を照らさんことを。 -- 猫男爵 2013-05-24 (金) 02:00:15
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  • (月夜である。月光が噴水を照らす。其処は猫達の集会場)
    (三日月を背にして噴水の上、正装をした猫面の影。此処は彼の秘密の庭)
    (彼は学園都市の狂人)
    (彼は学園都市の七不思議の一つ)
    (彼は学園都市の《奪われた者》の一人)
    (彼はその猫面と正装故に《猫男爵》と呼ばれている)
    今宵の月齢は二。三日月。金色に輝くクピドの弓で、彼女が狙うは誰!
    (ステッキを掲げて高らかに、今宵も彼は開幕を告げる)
    ―――皆様、今宵もお集まり頂けまして何よりで御座います。
    (自由意志による思い思いの間隔を空け寝転がる猫達に向けて彼が帽子を取って優雅に一礼すれば)
    (それに応える無数の猫目が月光を映し緑に煌めく)
    さて。第五幕の粗筋はこのようになっておりました。
    昔々、今では知命なる学園都市が、幼児から少年になろうかという頃。
    そこにいた二人の青年。無二の親友。彼らの片割れに異能が発現いたしました。
    彼はかの吸血公に擬えて、その力を名付けるに『夜の王(ドラクル)』と。
    新たなる力。彼の若き魂は、その身に宿った奇蹟を如何様に用いるのでしょうか。
    されど、ああ、されど―――奇蹟は必ずしも恩寵ではない。
    彼らに破滅の足音が聞こえ出す。今宵は第六幕をお届け致します。
    それでは、皆様、お楽しみ頂けますよう。
    (夜の帳の銀幕に、複合映写機(シネマトグラフ)が回り出す―――) -- 猫男爵 2013-05-17 (金) 00:02:29
    • 【第六幕・一】
      あの夜から数週間。カールとは事務的に顔を合わせるだけになっていた。
      昔からこのようなことは幾度となくあった。諫める彼の言葉を無視して、強情に我を通してしまうことが。
      そのような不和の度、半身が欠けたような思いがするものだ。
      空白を埋めるように、あるいはこの身の内の情熱を吐き出すように。
      後に落第街と呼ばれる都市の一角、違法経営の酒場の薄暗い店内。
      蝋燭の光を煙草の煙が霞ませる中、私はマフィア気取りの学生達と席を囲んで、酒と賭博と黒い商談に興じている。
      夜の間だけこの身に溢れる全能感に身を委ねて、部活のことなど忘れ去って。
      この身に宿った『夜の王(ドラクル)』の異能をもって、その名の如く王にでもなろうとするかのように。
      いや、実際のところ、『夜の王』は既に私の通り名と化していた。
      落伍者達が集う吹き溜まりの混沌に秩序を与える王の如き存在。
      そのうち自らもそう名乗るようになって、今ではよく嘯いたものだと思う。 -- 2013-05-17 (金) 00:09:56
      • 【第六幕・二】
        ポーカー・ゲームの間隙を縫って、女性が声をかけてくる。
        豪奢な金髪。整った顔立ち。理性的だがどこか意地の悪そうな左の碧眼。
        右眼は髪に隠れて見えないが、私はその奥を知っている。
        「ジョシュア。またこんな所にいるのですね?」
        「君も人のことは言えないな。キャロライン」
        キャロライン・バックランド。我らが第一魔術技工部の導師が一人。
        発足初期からのメンバーの一人であるのだが、魔術の腕はさほど宜しくない。
        彼女は何より粘り強く、交渉事の手腕に長けているから、営業や対外折衝などは彼女の仕事だ。
        彼女がいなければ私たちの部は立ちゆかない。その程度の位置は占めている。

        「いい加減部に戻ってきて下さらないと困ります。新製品の開発も滞っているのですから」
        一般的でない図柄の描かれたトランプを取り出し広げて、彼女は言う。
        「賭をしましょう」
        私を見つめる碧眼が、蝋燭の揺らめく火を映して揺れる。
        「賭?」
        「私が勝ったらこんな生活はやめて、部に戻ってきてもらいます」
        「私が君に勝ったら?」
        彼女は肩を竦める。
        「貴方のやることに、金輪際口出ししません」
        彼女の執拗さは私のよく知るところだ。つまりは、天秤の皿上に載せるに十分釣り合う。
        「勝負にはそのカードを?」
        「はい。このカードはとある異能者の手によるもので、お互いの運命を測るといいます」
        背には三女神のそれを思わせる糸車を模した幾何学模様。
        其処には有無を言わせず真物だと思わせる奇妙な存在感があった。
        「より運命の強い方が勝つというわけだ」
        「ええ。勝負はポーカー。手札は全公開制で純粋に手が強い方が勝ち。ワイルドカードは一枚。お互いが自分の手札を一枚ずつ引く。いかがです?」
        「異論はないよ。シャッフルは君に任せよう」
        このカードが真物であるならば、イカサマの介入する余地は無い。
        運命を操ることは神にしか許されない所行なれば、不正は自らの運命の格を貶めるだけだ。
        故に神ではない我々は、純粋に自らの運に賭けるしかない。
        切り上がった山札がお互いの間に置かれ、キャロラインの瞳が悪戯に細められる。
        「では。貴方からどうぞ」
        私は躊躇いもなく札を捲る。スペードのK。
        「さすがは『夜の王』。引きがお強い」
        艶やかに口元を歪めて、彼女の引いた札はスペードの10。
        「君に負ける私ではないさ――カエサル」
        二枚目を捲った私の札はダイヤのK。
        「既にワンペアですわね。――パラス・アテナ」
        彼女が捲ったのはスペードのQ。知恵と戦略の女神とは実に彼女らしい。
        次に私の元に来たのは、三枚目のK。スートはクラブだ。
        「アレキサンダー。既にスリーカードだな」
        「カール大帝は微笑むかしら」
        スペードのJを表にしながら、彼女は笑う。
        「同じ名前の彼とは、もう随分疎遠なのでしょう?」
        「君の知ったことではないよ、キャロライン。それに、あいつは優し過ぎる―――王の器ではないさ」
        山札より四枚目のカードを捲る。ハートのK。
        「ほら」
        「お見事。ですが」
        彼女の四枚目は、トランプの中でも一際複雑な絵柄、スペードのA。
        これでスペードのKさえ来ればロイヤルフラッシュという手だ。
        最もそれは私が既に引いてしまっている。この私が圧倒的に有利な状況で、彼女はなお不敵に笑ってみせる。
        「ジョーカーが私に微笑めば勝ちですわね」
        その通りだ。ロイヤルフラッシュにはフォアカードでは勝てない。
        だが、私には自信があった。自分が今運命の潮流の先頭に立っているという、根拠の無い自信が。
        「真の王とは、道化師すらも味方につけるものだ。御し切れぬ異物も、腑の内に飲込んで」
        私がジョーカーを引けばファイブカード。彼女の勝ちの目は完全に無くなる。
        躊躇いもなく五枚目を捲る。猫が道化師の格好をして笑っている。ただ一枚のジョーカー。
        「お見事。五枚目を捲るまでもなく私の負けね」
        「ああ。これで君の五月蠅い小言に煩わされなくて済むというわけだ」
        彼女は負けたというのに少しも気にしていない様子で、ごく平静に言葉を繰る。
        「ええ。貴方のやることには口を出しません。ですが、だから」
        彼女の右眼から、それを隠す金髪を貫いて、苛烈な黄金色が私を射る。
        「これから私が話すことを聞いて貴方が如何に動くかは、全て貴方の自由意志に委ねられている。ジョシュア・ボールドウィン」 -- 2013-05-17 (金) 00:19:37
      • 【第六幕・三】
        我々は酒場の個室に移っていた。手早く音声結界を張れば、もう中の会話が漏れることはない。
        調度品といえば古びたテーブルくらいしかない殺風景な部屋に、照明の蝋燭がじりじりと音を立てる。
        「そもそも、おかしいとは思いませんか?」
        蝋燭の立てる弱い音を遮るように、彼女は始めた。
        「貴方がここの王を嘯くほどに派手な動きをしていれば、邪魔だと思って消そうとする者くらいいくらでも湧きそうなものなのに、誰も貴方の命を狙わない」
        「狙っても無駄だとわかっているからだ」
        「いいえ。それは貴方の異能を全く、あるいは一面的にしか知らない人だけ。貴方の夜の王(ドラクル)は、夜の間しか無敵でない。
        つまり、昼の間が無防備だと知られているか、そもそも異能を知らないか、この二つの場合、誰かが貴方を襲うことはある」
        その通りだった。私の異能を、パフォーマンスめいて見せたことはあれ、詳しく説明したことはなかった。
        「貴方は自分の力に溺れ、虚栄心あるいは自尊心のままに動いてきました。しかし、無防備なる貴方が仮にも王と呼ばれるようになったのは」
        彼女は先ほどのカードを私に見せる。勝負の決め手となった道化師の札。
        その道化師は、猫の顔をしており、長靴を履いて笑っていた。
        「―――影で助けがあったおかげです」
        シャルル・ペローの長靴を履いた猫。彼は平民であった主人を甲斐甲斐しく助け、王の娘と結ばせた。
        「で、その助けとは……」
        言いかけた私を遮るように、彼女が言葉を紡ぐ。
        「もうお分かりなのではありませんか?―――貴方の親友。カール・クルックシャンクです」
        私は座り込む。王には優しすぎる?
        彼の優しさに比べ、虚栄の王になろうというこの身の矮小さは何だ。
        居ても立ってもいられず辞去しようとした私を、彼女の言葉が楔打った。
        「会えませんよ。……耳に入っていませんか?新開発区の大規模事故」
        先日起こった新開発区の事故については、私も耳にしていた。
        公式には工事上のミスによるものだと発表されていたが、裏社会の耳敏いものに言わせれば事実は異なるという。
        「確か、事故ではなく異能によるものだとかいったな」
        それはとある異能者が引き起こした結果だというのだ。そしてそれはその破壊痕を見れば明らかだという。
        幅1km、全長5kmに渡り、建造物が一直線に薙ぎ倒されているというのだ。
        大規模な儀式を用いた魔術か大量の爆薬でもなければ、人為的にこれほどの破壊をもたらすことは不可能だった。
        そのどちらもの痕跡が無いが故に、これは異能による仕業であるという話だった。
        「さすが、耳が敏い。ではこの情報はご存じかしら。……既に裏では魔術研究科の学生が一名公安に拘束されている」
        私は背筋が凍りつく思いがした。私の脳が導いた推定は異様で鮮明な現実感が伴っていて、
        既に確信と呼んですらよいもののように思えた。―――それはカールではないのか。
        「私の話はここまで。先も言ったとおり、これを聞いて貴方が如何に動くかは、全て貴方の自由意志に委ねられている。ジョシュア・ボールドウィン」
        私は部屋を飛び出していた。我を忘れて。
        部に呼び戻しにきた私になぜこんな話をするのか、あるいは何故そうも詳しいのかと、
        艶やかに笑う彼女に問い詰めることも出来ずに。
        疑念を確かめるために、私は夜を走った。
        彼の自宅へ向かう。カールはいない。研究室へ向かう。カールはいない。工房へ向かう。カールはいない。
        第一魔術技工部の部員達に、カールの居場所を知らないかと問う。
        すると彼らは皆一様に言うのだ。「昨夜から姿を見かけない。貴方こそ彼を知らないのか」と。 -- 2013-05-17 (金) 00:32:02

      • (過去の記憶の上映は終わる。銀幕は薄明に白く染まりつつある)
        (朧に映る影が喋る。夜会の主が閉幕を告げる)
        第六幕はこれにてお終い。第七幕の上映をご期待下さい。
        それでは皆様、またいつか。お帰りの際は忘れ物などなされませぬよう―――
        (影が帽子を取って一礼すれば、この場の全てが掻き消える)
        (まるで全てが一夜の夢だったかのように) -- 猫男爵 2013-05-17 (金) 00:36:56
    • (緑の目の猫たちに混じって… 今宵も大人しく香箱を組む) -- exp013929.png 2013-05-17 (金) 00:11:19
      • (男爵の一礼でかき消える) -- exp013929.png 2013-05-17 (金) 00:49:35
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  • (夜の公園に現れて、笑顔でそっとタイガーアイのブローチを東屋に置いておく)
    男爵様は物を食べないそうなので、これがバレンタインのプレゼントです
    またどこかで会いましょう、素敵な紳士様(にっこり微笑んで呟き、帰っていく) -- 雑務 2013-05-13 (月) 00:30:48
    • (風雨に汚れた屋根の下、古びた木の卓上に似合わぬ貴石)
      (猫が眺めてにゃあと鳴く傍らで、猫男爵は静かに笑う)
      虎眼石。願望を達成させ、あるいは悪意を打ち祓う―――か。
      女性から贈り物など何時以来かな。ありがとう、親愛なる雑務女史。
      (拾い上げ、身に着ける。白黒二階調の影にひとつ、金色の光が点った) -- 猫男爵 2013-05-13 (月) 01:24:26
  • 一つの書が置かれている
    //良いキャラしておられるので使いたくて使わせていただきました。すみません。シャルノスのパロディをやりたかったのでした。 -- 2013-05-12 (日) 06:58:09
    • (月夜、書物の在るはずのないその場所に、世に在るはずのない書物を見つける)
      (躊躇いもなく拾い上げてその書を読めば、穏やかに数度笑って)
      面白い。誰の手になるかもわからぬ書物だが、これもまた一つの可能性か。
      (書を指の上でくるりと回すと、書物は何処かへ消えてしまった。恐らくは、彼の領地の在るべき所へ)
      //全く予想していませんでした。ありがとうございます! -- 猫男爵 2013-05-13 (月) 01:01:08
  • (夜ごと街を駆ける少年が、彼……彼女と呼ぶべきなのか、それさえもわからないが……に一度も出くわしたことがないのは不思議な話だ)
    (だが今宵はまさにその不思議が当然に変わった夜。新月のなか、星明りだけが街を照らす静かな夜に、少年は彼に出会った)
    ……?(実際に顔を合わせたわけではない。だが、ふと尖塔の頂に降り立った時、不思議な気配を感じて振り返った) -- レジェム? 2013-05-11 (土) 03:41:25
    • (聖夜を待つ十二月の初旬)
      (星灯りに白く浮かぶ高層建造物の屋上で、円筒形の影が処女雪を踏み締めて立つ)
      (やがて聞こえてくるのは悲しげな旋律、鎮魂歌の独唱であった)
      (五分だろうか、十分だろうか。歌い終えると、尖塔の頂きに立つ少年に向けてまずは礼をした)
      ごきげんよう、あるいはご静聴ありがとう、かな。狩人殿。 -- 猫男爵 2013-05-11 (土) 20:51:36
      • (身が硬くなった。自分を狩人と、この初対面であるはずの不思議な覆面の怪人は呼ぶ……いや、人かさえも怪しいが)
        (だがなぜか。今まで聞こえていたレクイエムの旋律は、不思議と敵対心を安らげていた。気づけばそれに耳を傾けて、こうして彼と対峙しているのだから)
        お前……いや、あなたは、誰だ? 今の歌は、誰に向けたものなの?
        (だから、率直に疑問に思ったことを聴いて見ることにした。自分の素性は明かす必要もないのだろう、彼はきっと知っている。その覆面の奥に) -- レジェム? 2013-05-11 (土) 22:28:42
      • 猫男爵と呼ばれております。お見知りおきを(対照的に落ち着き払った様子で、再びの礼)
        消えていった(ともがら)の全てに。また、消え行く輩の全てに。
        聖夜は猫ですらも浮かれるものなれば、哀悼は今のうちに行うがよいでしょう。今宵は静かで寂しい新月です。心もよく映えよく届く
        (其処にあるはずの見えざる月を眺めるように、猫男爵は虚空に顔を向けた) -- 猫男爵 2013-05-11 (土) 22:45:42
      • (つられるように目を向けた。そこには何もない。正しくはあるのだが、この星からは視ることが出来ない)
        猫男爵……あ、聞いたことがある。ずっと昔から、そんな名前の不思議な人がこの街にはいるんだって。
        おとぎ話のたぐいだと思ってたけど……(相手を頭からてっぺんまで眺めた)ほんとにいるんだ、すごいなあ……。
        (謎めいた言葉から汲み取れることは、覆面の表情よりも少ない。ゆえに少年は直截な言葉をわざわざ選ぶ)
        ボクのことを狩人と知っているなら、魔獣のことも知っているんでしょう? あなたは、あいつらのことをどう思ってるの? -- レジェム? 2013-05-11 (土) 23:32:10
      • 人知れず人を食らう単一の獣。……痛ましいことです。この都市でも幾人もが犠牲になっている。
        (彼は彼らのためにも歌っていたのだ。追悼の歌を。魂を慰める歌を)
        此度の獣も手強いようだ。あの子の手になる芸術を、私はもっと見たかった。―――まだ諦めるべきではないのかもしれないが。
        (しかし、彼女のためには歌っていなかった。魂が慰められるべき場所には居ないと思っているから、あるいは思いたかったから)
        あれらは人の世にあってはならない。あるべきではない。
        しかし私は高貴なる者の義務を捨てた身なれば、あれらを討滅する役割は君達に任せなければならない。
        君と(ステッキで指す。狩人を)君の協力者達に。(そして、その背後を)
        よって、しかるに。私は君の思いが知りたい。あれらと戦う君の志が知りたい。
        私は問いに答えた。次は君が私に教えてくれる番だ―――如何かな、レジェム君。
        (猫男爵は、肩書きではなくその名で呼び問いかける。狩人ではなくレジェムと) -- 猫男爵 2013-05-12 (日) 01:17:38
      • (ああ、と思った。やはり彼は……あるいは彼女は、全て知っているのだ)
        (その上で眺めている。この街を。ただしそれは超越者としてのものではない、彼の言うとおり世捨て人めいた……アウトサイダーとしての論理だ)
        (ゆえに、この場で尊ばれるべきは、常識や法(ロウ)ではなく、互いの思いからもたらされる掟のみ)
        (リゼットの名を遠回しに聴いた。悼む歌のなかにその薔薇の輝きはない)
        (ならば、と)
        ボクをその名で呼ばれても、ボクはあなたを猫男爵と呼ぶ以外にすべがないのがほんの少しだけ恨めしいけど……。
        (目を閉じる。ステイシアは許してくれた、誰かを頼ることを)
        (オニキスは教えてくれた。どんな時でも諦めない心を)
        (多くの人が見せてくれた。教えてくれた。……そして、見えてきた気がする。自分の道、信ずるべきものが)
        ボクは、あいつらが―――モノビーストだけでなく―――、誰かを理不尽に苦しめるようなヤツが、イヤだ。
        そいつらが好き勝手してることも、そいつらに誰かが苦しめられることも、イヤだ。
        イヤなものをイヤだと言いたい。ボクはそう思った。だからそうしてきた。
        でも多分それじゃ足りないんだ。ボクが何を「願う」か。何を信じるか……。
        (もう一度目を閉じて、考える。その瞼の裏に蘇ったのは、テイザーに渡された一冊の本)
        青い鳥の物語なんだ。……うん、きっとそうなんだと思う。知ってる? 幸せの青い鳥。
        未来にも過去にも、どこにもいない、けれどそばにいた鳥。……ボクは、その鳥が、いや……。
        青い鳥でありたいんだと思う。誰かを幸せにさせることが出来る、そんな風になりたいんだ。
        悲しいとか、苦しいとか、それを消し去って、防ぐためだけじゃなくて……幸せとか、嬉しいとか、楽しいとか……。
        そういうのを、得たいんだ。誰かに、与えたいんだ。……どうかな、答えになってる? -- レジェム? 2013-05-12 (日) 02:05:17
      • 幸せの青い鳥は思い出の国にも夜の御殿にも贅沢の御殿にも未来の国にも居ない。
        それらは全て夢の中。目を覚ました現実、日常、直ぐ傍にこそ青い鳥はいる。
        君はそれそのものに、つまり、幸福の媒介者になりたいというのだね。
        現実にあって不幸の源を取り除き、他者に幸福を与え、他者より幸福を得、他者と幸福を分かち合う。
        (くるり、ステッキを回す。無意識の挙措、あるいは思考の回転、猫男爵は星々の廻りを見る)
        ―――狩人としては甘いと謂う者も有るでしょう。
        しかし私は、狩人なればこそ、どこまでも人間で有らねばならないと思う。
        君の想いを一個の人間のそれとして見たとき、私は心から祝福したいと思う。
        都市に囚われ、夜に囚われる虜囚の身なれば、少々身に余ることかもしれないが。
        (回したステッキを、ゆっくりと胸に抱く。帽子を脱ぎ、優雅に礼をする。出会った時と同じように)
        君の前途に幸福あれ。
        (それは祝福であり、肯定であり、敬意であった) -- 猫男爵 2013-05-12 (日) 02:41:27
      • (皮肉なことに、今もって少年が対峙する因果となった敵の一つには吸血鬼がある)
        (夜を統べ、影を歩き、血をすするモノ。死して軛を断ち、それゆれに幸福という果実を味わえず、それゆえに妬むもの)
        (それゆえに果実を腐らせ、落とし、そのさまを、果実の末路とそれを味わおうとする者達の負念を味わう下劣な蛭)
        (狩人は、幸福を失うことを常に恐れる。常にその危険を背負う。失うことも、ままある)
        (ましてやそれを生み出す側など。荒唐無稽、怪人の言葉通りに身に余ること……小柄な少年にはとうてい叶えられぬ偉業といえる)
        (されど少年は異形であり。彼を囲繞する者達もいる。不可能では、ないのだ)

        ならばあなたのこれまでが幸せであったことを、ボクは保証するよ。あなたがその面の下に隠してるものが何かはわからないけれど。
        人の幸せを願える人が、幸せをただ一時たりとも味わっていないはずはないもんね(朗らかに言った。視線を空へと、星々へ)
        (ハンチング帽をたぐり、回す。まず半回転、次いでもう一方の手で半回転。頭を巡らす時間は終わりのようだ)
        まずは……空を飛ぶところから初めてみようかな?
        それじゃ、いずれまた。……ありがと、猫の人。ボクはあなたに逢えて良かった。幸せだよ。
        (星の灯でもってようやく分かるくらいにほんのりと頬を赤らめて、照れくさそうにそういえば)
        (鎖を使うこともなく、尖塔から身を踊らせて夜空へ翔んでいく)
        (はたして闇へと消えたその姿を、一陣の心地良い熱風が追いかけた) -- レジェム? 2013-05-12 (日) 03:19:26
      • ありがとう。その言葉からも、君には資格があることが分かる。
        (星々が寒空にどこか暖かく輝く中、柔らかな声音は、どこか去りし日を懐かしむように響いて)
        鳥を名乗るからには空を飛ぶ。面白い。私も猫と名乗るにあたり足音を消したものです。
        こちらこそだ、レジェム君。私も快い時を過ごせたよ。それではまた、星の廻りのよい時に。
        (言葉通り飛んでゆくその背に目を細め―――彼の顔は動かないのでこれは比喩だ―――彼もまた、夜の闇に溶けて消えた) -- 猫男爵 2013-05-13 (月) 00:56:06
  • (深夜。猫の溜まり場となっている公園のブランコに腰掛け、月を見上げて声をかける)
    よう、猫男爵様。よけりゃあちょっと月見酒にでも付き合わないかい?
    酒がダメなら、ミルクもあるぜ? -- 書記 2013-05-10 (金) 20:29:34
    • (書記が声をかけてしばし。不自然で奇妙な夜風とともに、円筒形の影が降り立つ)
      (月明かりに映る相変わらずのつくりものの猫面。シルクハットを優雅に脱いで礼をする)
      ごきげんよう、書記殿。私はこのような身であるからして相伴に預かることは出来ないが、ただの話し相手では不足かな?
      (彼の猫面の口元は、どのように見ても、飲食が可能な構造ではなかった) -- 猫男爵 2013-05-10 (金) 20:48:58
      • (噂で聞いた通りの井出達……そして外見とは裏腹に、堂々としてそれでいて気品を感じさせる見事な立ち居振る舞いについ感嘆の溜息を漏らす)
        いや、十分さ。こっちこそ意地悪いっちまったみたいで悪かった
        噂で物を食った事がないっていうから、ついつい、な?
        (そういって、紙皿を地面において、ミルクを猫たちに振舞う)
        この前はうちの雑務が世話になったな、ああみえて友達少ない奴だからすげぇ嬉しかったみたいだぜ?
        ま、それはともかくだ……今日の俺の用件だけど、多分分かってるよな?(公安による学園事象の監視はそこそこ有名なことだ) -- 書記 2013-05-10 (金) 20:53:30
      • 構わないよ。酒の味など、もう忘れてしまっているしね。
        (差し出されたミルクに猫たちがわらわらと群がっていくのを静かに見つめながら)
        そうか、よかった。年寄りの遊びに付き合わせてしまって退屈ではなかったかと心配したが。
        私もたいへん楽しかったと、伝えてくれたまえ
        (表情こそ動かないが、その声音は感情豊かだ。この言葉に嘘がないと分かる)
        ―――さて。公安委員会による監視の件だね。
        私のような者にも、君たちの耳目が向けられるとは、昔にまして敏いようだ。
        (感慨深げに、くつくつと笑う。監視を知っていて尚、その態度には余裕がある) -- 猫男爵 2013-05-10 (金) 21:13:13
      • ああ、確かに伝えとくぜ、そのうちアイツも来るんじゃねーかな? 男爵様にベタ惚れの様子だからな(しっしっしと笑う)
        (そして、察されればこくりと頷き)
        どこでも男爵様は人気ものってことだ。上の連中も気になってしょうがねーんだろうさ
        ま、俺は個人的には男爵様の監視なんて畏れ多くて出来ないとおもっちゃいるが……それでも仕事は仕事なんでな
        煩わしいかもしれねぇが、向こう一ヶ月は週に何回か世話話につきあってもらうぜ?
        それ以上はしねーっつーか……まぁ、できねぇわ
        了承してもらえると嬉しいな -- 書記 2013-05-10 (金) 21:21:39
      • ははぁ、それは光栄なことだ。(愉しげに笑って)
        今までも熱心な『ファン』が私に貼り付こうとしたことがあったが、あれはどのくらい保ったかな。
        (この学園で過ごしてきた年月を思うかのように、月を見上げて)
        ……その位なら構わないさ。第七室(きみたち)にも立場があるのだろう?
        檻の中の箱庭なれど、そこに幸福があるのなら、私のために壊せはしないさ。 -- 猫男爵 2013-05-10 (金) 21:34:52
      • 流石は男爵様だ、民草の都合も汲んでくださる名君主だぜ(冗談っぽくいって立ち上がり、背伸びする)
        男爵様の事を怖がったりする生徒もいりゃあ、捕縛したがる委員会もいるにはいるが……俺は個人的にはアンタが好きだ
        しばらく歓談できることを光栄に思うよ。握手くらいはいいかな?(そういって笑顔で右手を差し出す) -- 書記 2013-05-10 (金) 21:49:27
      • はは。君主、か。……男爵などと呼ばれているが、所詮はただの虜囚さ。
        監視されるのに、よろしく、というのはおかしいかな、書記殿。
        (右手を差し出し握手をすれば、手袋の布地越しに、強い違和感が感じられるだろう)
        (どこかつくりものめいた感触。その原因はすぐに分かる。体温が感じられないのだ) -- 猫男爵 2013-05-10 (金) 22:02:09
      • いやいや、俺だって監視させて頂いている立場だ
        お互い持ちつ持たれつ
        俺からもよろしく頼むぜ、男爵様(ぎゅっと握手を交わす)
        (体温が感じされないその指先に違和感こそ感じたが……すぐに氷解する)
        (彼ならばそれもまたありえる事だと)
        さて、今日は挨拶だけだ……これくらいで失礼するぜ
        また会おう、男爵様
        良い夜を
        (笑顔でそう呟いて、公園を後にした) -- 書記 2013-05-10 (金) 22:22:52
      • 良い夜を、書記殿(優雅に一礼して見送って)
        公安、か。……彼らも変わったか。昔よりは、ずっと穏やかだ。
        我らが後輩に、どうか変わらぬ幸福を。
        (静かに独りごちると、夜闇に溶けるように姿を消した) -- 猫男爵 2013-05-10 (金) 22:37:56
    • (他の猫に混じって紙皿からミルクをいただく) -- ♪ 名簿/464608 2013-05-10 (金) 21:01:09
      • (飲み過ぎて腹を下さないように、とは、君には無用の心配かな?)
        (存在には気付いていれど、大人しくしていれば特に声をかけることもなく書記との会話に集中する) -- 猫男爵 2013-05-10 (金) 21:16:20
      • (満足するまでミルクを飲んで、また猫だまりに紛れ香箱を組む。集会所にたまたま居合わせただけの猫) -- 名簿/464608 2013-05-10 (金) 21:24:08
  • (以前に猫男爵より教えられた猫のたまり場。そこに一人の少女が現れた。)
    (行動的探偵部部長、レーチェルだ。)
    ……ここに来れば、会えそうなものと思うけれど。(猫男爵、彼の不思議な存在に会わんとやってきたのだ。) -- レーチェル 2013-05-09 (木) 22:49:29
    • (今宵もたまり場は盛況だ。多種多様な猫たちが、彼らの自由意志を以てめいめいに夜の時を過ごしている)
      「誰かお探しかな?レディ」
      (高いような低いような、若者のようでも老人のようでもある声。猫男爵のものではない)
      (レーチェルが足下を見れば、三毛猫が彼女を見上げている。珍しくも雄のようだ。……彼が声の主なのだろうか?) --     2013-05-09 (木) 23:00:30
      • ここまで猫が集まっていると不思議な感じがするね。猫は集団を形成するような動物だったろうか…?
        (猫のための場所と言ったところである。レーチェルはどこか場違いであった。)
        ……? この声は……? まさか、この、猫が?
        (奇妙な声だ。あの猫男爵のものではない。きょろきょろとレーチェルはあたりを見渡した。声を主はいない。声が聞こえたのは自分の足元だったからだ。)
        (目を丸くするが、レーチェルは言葉を続ける)
        《猫男爵》なるものを知らないかい。以前、彼にここを教えてもらったのだけれど -- レーチェル 2013-05-09 (木) 23:08:43
      • 「男爵に会いたいのなら、月に向かって彼を呼んでみるといい」
        「この場所からならきっと声が届く。運が良ければ会えるだろう。……彼の言葉を借りるなら、星の廻りがよければ」
        (月の光を照り返し緑に輝く瞳で猫は語る。今宵は二日月。触れれば切れそうなほどに薄い月。代わりに星の光がよく映える) --     2013-05-09 (木) 23:14:05
      • 月に向かって……? ……まるで、月の猫だ。(幻夢郷よばれる夢の国のおとぎ話を思い出した。月には猫がいるという。)
        ……そうすれば、彼に会えるかもしれないんだね? ……猫男爵、来てくれ。君と話がしたい。
        (声に導かれるままに、月へと向かって言葉を放つ。レーチェルの、猫の者にも似た黄金色に変わってしまった右目に、月の光が映る) -- レーチェル 2013-05-09 (木) 23:22:51
      • (静けさが辺りを包む。二秒。三秒。微風。それは徐々に強まり、目を開けていられないような強風へと)
        (それでも堪えて空を見たなら、月を背中に降り立つ影が見えたろう。そう、彼こそが猫男爵。着地様、帽子を取って優雅に礼をした)
        やあ、お待たせしたね探偵殿。呼び方は、ジェイムズから教わったのかな。
        ご苦労だったね(男爵が三毛猫に向かってそういうと、彼は猫そのものの声で「にゃあ」と鳴いて猫の群れに紛れてしまった)
        それで、私に何かご用かな?黄金瞳の探偵殿。 -- 猫男爵 2013-05-09 (木) 23:52:45
      • く、うぅぅ……!(僅かな風が吹く。それは徐々に強烈なものとなり、目も開けられない状況だ。)
        (しかし真理を探究する探偵の意地か。目を開け続けていると、月を背中に降り立つ影があった。彼の《猫男爵》その人であった。)
        ジェイムズ? もしかして、この三毛猫がそうなのかい……?
        ……本当に、君は何者なんだ。月に向かって呼んだらまるで月から現れたかのように来るなんてね。
        ――そうだ、この「黄金瞳」だ。学園都市2年目のときにね、突如僕の右目に発現したんだ。猫のごとき黄金の瞳がね。
        妖精眼、全てを見通す瞳、そんなふうに異国では言われているらしい。僕以外にも発現者がいるようだ。
        ……猫のような瞳だからね、君から何か話を聞けないかと思って。
        (黄金の瞳が猫男爵を視る。真実を見通すという瞳が) -- レーチェル 2013-05-10 (金) 00:13:01
      • 残念ながら私は月には行ったことがなくてね。月には様々な動物がいるというから一度観光してみたいとは思っているのだが
        (月を見上げるその顔は、相変わらずの無表情。つくりものなのだから当然なのだが。探偵に向き直って)
        さて……黄金瞳の話だね。この学園都市には昔から、そういった瞳を持つ者が現われる。
        それは人に限らない……いや、括り方によっては皆『ひと』か。
        ともかく、いわゆるホモ・サピエンスに限らない。傾向としては猫人にやや多いような気もするが、これはまったく私の個人的感想だ。
        しかし、如何にして発現するか。これは不明だ。遺伝することもあるそうだが、脈絡なく突如として発現することもある。君のようにね。
        (ステッキの金具が月光を反す。レーチェルの黄金瞳に一筋の光)
        黄金瞳が如何様なものであるかは、残念ながら私も明瞭な答えを持たない。
        だがそう、黄金瞳はすべてを見抜くといわれているのは、君の言うとおりだ。
        発現者の多くが得るという、高度な情報処理の能力……例えば物の理解が異常に早く正確になるとか、異常に動体視力がよくなったりとか、
        この力が、あるいは『すべてを見抜く』の正体であるかもしれない。断言は出来ないがね。
        また興味深いのは、黄金瞳が『すべての想いを受け止める』とも言われていることだ。
        ―――この学園都市のすべての想いを、その瞳が受け止めることができるとしたら、君は一体何を為すかね?探偵殿?
        (猫男爵の瞳が探偵を射る。描かれた黒塗りの深淵が) -- 猫男爵 2013-05-10 (金) 00:58:32
      • やはりそうか、この学園には黄金瞳が集うのか……。
        (自分が立てた仮説。この洋上学園都市は黄金瞳を持つものが意図的に集められているのではないかという仮説。それに関して確信に近いものを得る)
        『ひと』?(遠いカダスなる世界では智慧持つ存在はみな『ひと』と呼ばれるのだという。レーチェルが知る話ではないが。)
        人間だけではなく、他の種族にも黄金瞳は生まれ得るということか。そういえば、ルチア君もそうだったな……。
        ――成程! 高度な演算能力を得ることが出来るのか! もしくは、黄金瞳そのものが、演算を代行するのか。
        (『すべてを見抜く』力について聞くと、合点が言ったという様子で言う)
        ……『すべての想いを受け止める』? それは、どういう……。
        (レーチェルが調べた中ではまだ書かれていないことであった。初めて知ることであった。)
        ――この学園都市全ての想いを、この黄金道が受け止めることができるというのなら。
        ――僕は、僕は、成そう。輝きを。あの雷電たる白い彼のように。輝きを護ろう。僕は、学園都市すべての人間を、輝かせて見せる。……正義の味方として!
        (黒塗りの漆黒の瞳をレーチェルは見る。この覆面を黄金瞳を通してみると、何やら奇妙であった。ただの覆面ではない。何かを抑え込んでいるようなものだ。しかしレーチェルにはそれが何かまだ理解することはできなかった。) -- レーチェル 2013-05-10 (金) 01:56:28
      • (決意には、ゆるやかな拍手が贈られた)
        成る程。素晴らしい。やはりその瞳は恐ろしい。
        黄金瞳を持つ者が君のように錚々たる志を持った時、何が起こるのか。素晴らしく楽しみで恐ろしい。
        (そう言って空を見上げる。其処にあるのは二日月。生まれ変わったばかりの、ごくごく若い月)
        気をつけたまえ、探偵殿。
        私が見てきた限りの、帰納的な推論に過ぎないが―――(指を向ける。その黄金瞳に)
        ―――その瞳を持つ者は、往々にして何か巨大な運命に巻き込まれる。
        (指をくるりと回すと、微風、ゆるやかな空気のうねりが、大気に溶けて)ともすれば、君も既に。
        今宵私に出来る最後の助言だ。
        運命を渡るのに、背後に在る『彼』の力はきっと役立つだろう。
        私の識る『彼』とよく似た、私の識らない『彼』の力が。
        (黒の瞳が探偵の背後を視る。見えざる幕を透かすように)
        だが、決して頼り切ってはいけない。君の友は、『彼』だけではないのだから。
        (それは警告であった。どこか深い憂いと哀しみを帯びた声)

        ―――参考になったかな、探偵殿? -- 猫男爵 2013-05-10 (金) 20:40:16
      • おそろしい、だって?
        この、瞳が恐ろしい……?(どういうことだ? と首をかしげる。だが彼の言葉に嘘などは感じられない。きっと、この瞳は、そういう運命を引き寄せる瞳なのだ。)
        (黄金瞳に向けられる指、その瞳に指が映りこむ。猫のような金の瞳に。)
        ――巨大な、運命…‥? 僕が、それに巻き込まれる、のか?
        既に、巻き込まれている、だって……? どういうことなんだ。君は、何故そこまで、知って――
        (レーチェルは問いかけたくなるのを抑えた。今宵はきっと、ここまでなのだ。彼は十分に話してくれた。)
        ……ありがとう、猫男爵。君には聞きたいことが山ほどある。僕の後ろの『彼』について君は知っている。そして、君の知っている『彼』というものも……僕は、聞きたくてしかたがない。
        ……気をつけよう。僕には、そう、友はいるんだ。『彼』以外にも。
        (その憂いと悲しみを帯びた声は強く心に響いた。彼の過去もなにもわからないが、それは強い実感を伴っていた。)

        ――ありがとう、猫男爵。とても、とても、参考になったよ。
        君の話をもっと聞きたいが、それはきっと、無粋というものなのだろう。
        また今度会った時に、何か話を聞かせてくれればうれしいな。
        ――君の言う巨大な運命に僕が既に巻き込まれているのだとしても……
        僕は、その運命にも、打ち勝ってみせよう。この黄金瞳が見せるものが、なんであっても。

        それじゃあ、猫男爵、またね、だ。有意義な夜を、過ごさせてもらったよ。
        (猫たちの集会場から姿を消す。背後に月の光を受けながら――) -- レーチェル 2013-05-10 (金) 23:26:19
      • そう、私は十までを語らない。私は『そういうもの』だからね。許してくれたまえ
        (猫男爵は、あくまで彼が知ることの断片を語る。盲目の羊に方角は示せど道は示さない)
        (彼が果たす高貴なる者の義務は、その程度に過ぎなかった。それが義務であるとも、彼は思っていないかもしれぬ)
        貴女がそうあることを願っているよ。君の運命に勝利と幸福と輩あれ、探偵殿。
        (優雅に一礼して見送ると、彼は再び夜の闇に消えた) -- 猫男爵 2013-05-11 (土) 00:05:58
  • Ma i patti erano chiari:(でも、男同士の約束だ)
  • il coccodrillo a te (ワニは君にあげるかわりに)
  • e tu dovevi dare un gatto nero a me.(君はくれなきゃならなかったんだよね 黒猫を…僕に)
  •  
  •  
  • (新月である。星灯りが噴水を照らす。其処は猫達の集会場)
    (大鐘楼を背にして噴水の上、正装をした猫面の影。此処は彼の秘密の庭)
    (彼は学園都市の狂人)
    (彼は学園都市の七不思議の一つ)
    (彼はその猫面と正装故に《猫男爵》と呼ばれている)
    今宵の月齢は零。朔。新たなる始まり。女王の不在、束縛からの解放、されど後継者は何処!
    (ステッキを掲げて高らかに、今宵も彼は開幕を告げる)
    ―――皆様、今宵もお集まり頂けまして何よりで御座います。
    (自由意志による思い思いの間隔を開け寝転がる猫達に向けて彼が帽子を取って優雅に一礼すれば)
    (それに応える無数の猫目が星灯りを映し緑に煌めく)
    さて。第四幕の粗筋はこのようになっておりました。
    昔々、今では知命なる学園都市が、幼児から少年になろうかという頃。
    そこにいた二人の青年。無二の親友。彼らの奮闘努力によって、
    彼らの部は栄えある大手部活(ビッグ・テン)の一つへと成り上がりました。
    新しい春。彼らは揃って研究科へと進学し、これからも仲睦まじく学園生活を送るのでしょうか。
    されど、ああ、されど―――蜜月は別離までの猶予に過ぎない。
    如何にして彼らは引き裂かれるに至ったか、今宵はその序曲、第五幕をお届け致します。
    それでは、皆様、お楽しみ頂けますよう。
    (夜の帳の銀幕に、複合映写機(シネマトグラフ)が回り出す―――) -- 猫男爵 2013-05-02 (木) 00:57:16
    • 【第五幕・一】
      ここは洋上の人工島。新設されてほど浅い学園都市だ。
      ここでは都市の全てが学生により運営される。
      多くの商業活動は部活という形で。全ての行政は委員会という形で。
      初年度はどこも手探りで、生徒達の顔にも疲労が滲んでいたようだが、もうどこも軌道に乗ったようでもある。
      賑わう学生街。桜並木が鮮やかに揺れる中、私と親友は、学舎へ向かって歩んでいる。
      互いに折り目正しい制服姿。二人とも貴族の出身で、竹馬の友という奴だ。
      若い好奇心を持て余して、揃って親に無理をいってここへ進学した―――もう5年目になる。
      「ところでカール。我が部の次の製品の話だが」
      「気が早いねジョシュア。この間、『三分間飛行石』を売り出したばかりじゃないか。好調だろ?」
      ジョシュアというのが私の名前だ。ジョシュア・ボールドウィン。
      対するカール、カール・クルックシャンクが我が親友。
      我々はこの学園都市では名が知られている。魔術系部活最大手、第一魔術技工部の栄えある部長とその片腕として。
      貴族というだけでは明日の食事にも困るこの時代にあって、我々は既にかなりの富を手にしていた。
      学内通貨ではあるが、外のそれと替えることなど幾らでも出来る。
      それもこれも二人で力を合わせた結果であり、過去現在未来に渡って、我々はパートナーだと私は信じている。 -- 2013-05-02 (木) 01:20:53
      • 【第五幕・二】
        授業の隙間。行き付けのカフェテリア。
        美人で愛嬌のよい小栗鼠のような女の子が現在の看板娘だ。
        どうやら身持ちは堅いらしく、彼女を落とせたという話はついぞ聞かない。
        そのような店の、衝立に遮られた、落ち着く暗さの隅の席が我々の定席だった。
        芳しい香りのコーヒーを啜りながら、我々は次の授業までの間を潰す。
        「ところでカール。異能(アート)の話を知っているか」
        我が赤毛の親友は、怪訝そうな顔で返答する。
        「芸術にでも目覚めたのか、ジョシュア?たしかに美術科の作品展は見事なものが多かったが」
        「そうではないよ、カール。この学園都市に現われた奇蹟の話さ」
        「奇蹟か。思えば君はロマンチストだったね。覚えているかい、昔二人で『銀河鉄道の夜』の戯画を見たとき……」
        「やめてくれよ。恥ずかしくなるじゃないか」
        私はつい赤面する。ついジョシュアとカールという名前の我々をジョバンニとカムパネルラに重ねて、
        『いつか二人で銀河を旅しよう』などと稚気じみた夢を語っていたら、
        カムパネルラが死んだシーンで号泣してしまったことがあるのだ―――随分幼いころの話だが。
        「で、突然目覚める不思議なチカラがどうかしたかい?」
        肩を竦めてカールが聞いてくる。それに対して私は声を潜めてこう返す。
        「やれやれ、意地が悪いな、カール。その異能だがね……どうやら僕も目覚めたようなんだ」
        「ジョシュア。その話は『後でゆっくり』しよう……。異能(それ)に関しては近ごろ公安がきな臭い動きをしているって話もある。
        万が一のことがあると困るからね」
        その声の真剣さが私には心地よかった。やはり私の親友は彼しかいないと、そう思わせてくれる。
        「わかったよ、カール。では、授業の後でゆっくり」
        「ああ。ところで、次の授業は何だったかな」
        「サンジェルマン師の応用魔導技術論」
        「―――やれやれ、終わる頃には脳味噌が疲れ切ってるな」 -- 2013-05-02 (木) 01:31:01
      • 【第五幕・三】
        夜。後に落第街と呼ばれる都市の一角。地下室。其処は我々しか知らない、我々だけの秘密の部屋。
        第一魔術技工部、別名『結社』が導師達の工房。蝋燭の光が二つの影を石壁に映す。
        『後でゆっくり』というのは、夜にこの場所で落ち合うことの符牒であった。
        「それで、異能というのはどういうものなんだい、ジョシュア。見せてくれたまえよ」
        「ああ、それなんだが……もう発動している」
        友が驚くのも無理はない。私の異能は外見的には何らの変化も齎さない。そこで私は続ける。
        「君が最近作った魔術があったろう。私に掛けてみてくれ」
        「『永久凍結』のことか?あれは解呪が厄介だし、第一まだ鼠でしか試していないじゃないか。危険だ」
        「いいから平気だ。その位では『どうせ死なない』。―――それに、自信はあるんだろ?」
        笑みを見せ、カールは詠唱を始める。『永久凍結』は対象を極低温によって封印する術式だ。
        彼の腕だ。掛け損じることなどないし、口では厄介といいながら解呪も容易にやってのけるだろう。
        詠唱が終わると彼の手から青い光が放たれて、私の胸を直撃する。それだけだ。何事も起こらない。
        封印凍結どころか髪の毛に霜の一つすら付いていない私を、目を丸くして友が見ている。
        「驚いたな」
        私は鼻の頭を擦りながら言葉を返す。無意識に声を上擦らせながら。
        「だろ?僕の異能―――名前はまだ無いが―――は、夜の間だけ僕を……陳腐な表現だが、超人にするのさ」
        「超人とは、稚気じみているね。童心を忘れないのは大切なことだが、さて、どう超人なのかな。並の魔術は効かないようだが」
        「試した限り……大砲だろうと、魔術だろうと、他の異能だろうと、何一つ僕を傷つけられなかった。身体能力も人間以上だ。岩だって砕ける」
        「君の得意な変身魔術と合わせて『怪力無双、変幻自在、神出鬼没』というわけだ。これで血まで吸ったらまるきり吸血鬼だな」
        『吸血鬼』。この言葉に私は胸を躍らせてしまった。
        「ではこの異能を『夜の王(ドラクル)』と呼ぼう。折角得た力だ。何か面白いことをしたいね」
        カールが咎めるような目付きでこちらを見る。私はそれが少し気に入らなかった。後に続く言葉はもっと。
        「やめておいた方がいい、ジョシュア。賢明な君なら公安の厄介さと、奴らの背後にいる統治会の底知れ無さは理解しているはずだ」
        「怯えすぎだよ、カール。何も風紀を乱すようなことをしようってんじゃない。大丈夫さ」
        何があろうと、友の諫言というものには耳を貸すべきだ。
        私がこれを理解するのは、もう少し先のことになる。 -- 2013-05-02 (木) 01:57:51
      • (過去の記憶の上映は終わる。銀幕は薄明に白く染まりつつある)
        (朧に映る影が喋る。夜会の主が閉幕を告げる)
        第五幕はこれにてお終い。第六幕の上映をご期待下さい。
        それでは皆様、またいつか。お帰りの際は忘れ物などなされませぬよう―――
        (影が帽子を取って一礼すれば、この場の全てが掻き消える)
        (まるで全てが一夜の夢だったかのように) -- 猫男爵 2013-05-02 (木) 01:58:52
    • (香箱を組んで大人しく) -- 名簿/464608 2013-05-02 (木) 01:21:08
      • (男爵の一礼でかき消えた) -- 名簿/464608 2013-05-02 (木) 02:01:31
  •  
  •  
  • >猫男爵はたまに猫と語らっているところを目撃される。
    語らおうか(夜道。黒猫) -- 名簿/464608 2013-04-30 (火) 01:00:08
    • (この夜は高い塔の上でバイオリンに興じていた。曲目は『猫踏んじゃった』、それはもう、一心不乱に)
      (眼下。にゃあと鳴かぬ珍客に気付いて降りてくる、音もなく)人の言葉を解す猫とは珍しい。何処から参られましたかな。
      ……ああ、申し遅れました。私、猫男爵と呼ばれております(帽子を取り礼をする。優雅に、恭しく、弾いていたはずのバイオリンは既に何処かへ消え去って) -- 猫男爵 2013-04-30 (火) 01:28:29
      • 名乗り返したいところだけど、僕には名前が無いんだ。好きに呼んでくれると嬉しいかな(ト、トッと塔を登る。その外壁を)
        いい曲だよね。僕も大好きだ
        邪魔をするつもりはなかったけど…月夜だもの。猫は猫に挨拶しないとね -- 名簿/464608 2013-04-30 (火) 01:35:00
      • (降りてきた猫、登る猫。逆転する立ち位置。法則は無く。それでよいのだ。彼らは猫であるから)
        では、黒猫殿とお呼びしましょう。名を付けるのは人の仕事であって猫の仕事では無いからして。
        そう。心の騒ぐよい月夜です。つい昂ぶってしまうほどに。故に曲を弾いておりました。
        踏みたくも踏まれたくもありませんが、こんな夜には似合いでしょう(月光は鮮やかなれどどこか不穏な、凍るような一月の夜である) -- 猫男爵 2013-04-30 (火) 01:45:57
      • (塔の中ほどの張り出し窓に「ぺたん」を腹を付けて) ニンゲンも、昂ぶるのかな。このあいだ、あっちのほうで酷くあらぶるニンゲンを見たんだ
        (赤い瞳を向けるのは夜を知らぬ落第街) このあたりじゃ、よくあることなのかい?(これまであまり見かけなかった猫が… 新参の猫が古参に尋ねる)
        (黒猫殿。と呼ばれて、どこか嬉しげにゴロゴロといいながら) -- 名簿/464608 2013-04-30 (火) 01:57:36
      • さて。仮に昂ぶったとして、それだけで人を襲いはしますまい。
        怪異蔓延るこの都市とはいえ、異常な事ではあるでしょう(まるで見てきたかのように、ごく冷静に)
        原因は、異能か、薬か……はて、さて。猫族の平穏が脅かされねばよいのですが -- 猫男爵 2013-04-30 (火) 02:13:56
      • 僕はほら、好奇心で死んじゃうタイプだからさ(クキ♪と空気が漏れるような音を立てて猫が笑った。…ように見えたかもしれない)
        「あれ」は、異能を作リ出す薬なのかな? 元からある異能を強める薬なのかな?(男爵の訳知り顔に、つらつらと続ける)
        友達が、あれに興味津々なんだよね(ごろり、張り出し窓のうえでころがる) -- 名簿/464608 2013-04-30 (火) 02:23:01
      • (目の前にも怪異がひとつ。さりとて猫面は動じもせず、笑いもせず)猫というのは概してそういうものです。個体差はあれどね。
        さて、はて。(こつり。石畳を叩く)前者だとすれば、これは異なことです。
        『如何にして人は異能に目覚めるのか』という、この都市にあって最難の命題に挑戦し―――解に指をかけた者がいるということになる。
        故に、私は後者だと見ておりますが、さりとて、現実は小説より奇なるもの。
        暴かれた先の真実が前者であっても、私は面白いと思いますよ、黒猫殿。 -- 猫男爵 2013-04-30 (火) 02:37:56
      • (ごろごろと気の向くままに転がっているようでいて… 耳はきっちりと男爵のほうを向いている) …なるほど、ね
        ますます、興味が湧いちゃったな(ゴロゴロと、のどを鳴らす音) 挨拶は欠かさずするべきだね。やっぱり(満足げ)
        (ひらり、身を躍らせる。塔の壁面を蹴り、シュタッと男爵の足下へ) ありがとう。男爵
        またこんな月の夜に会いたいものだね(そうしてヒラリと、宵闇の中へ身を躍らせる。溶けて、消える) -- 名簿/464608 2013-04-30 (火) 02:44:19
      • ご満足いただけたようで何より。とはいえ、一介の猫の稚拙な感想です。あまり当てになされませぬよう。
        ……ええ、怪奇なる黒猫殿。よい夜を(見送ると、もうひとつ、石畳を叩く。次の瞬間、そこには闇だけが残されていた) -- 猫男爵 2013-04-30 (火) 02:58:21
  •  
  •  
  • Volevo un gatto nero, nero, nero,(僕は黒い猫、黒い猫、黒い猫が欲しかったんだ)
  • mi hai dato un gatto bianco(君が僕にくれたのは白い猫)
  • ed io non ci sto più!(やになっちゃうよ、我慢できない!)
  • …う、うわぁぁ!?猫のお化けだー!? -- イルミア 2013-04-22 (月) 23:10:29
    • (この夜は街路樹の上で、『黒猫のタンゴ』の原曲『Volevo un gatto nero』を流暢なイタリア語で歌っていた)
      (驚いた声を聞けばバリトンボイスの発声をやめて、音もなく地面に降りてくる)
      (帽子を取って優雅に一礼)ごきげんよう、お嬢さん。(そうしてずいっと一歩顔を近づけて)
      お嬢さんは(おもむろに外したシルクハットに手を突っ込み)黒猫と(生きた黒猫を取り出し肩へ)白猫では(生きた白猫を取り出し肩へ)
      どちらがお好みかな?(両肩に一匹ずつ猫をぶら下げた姿は、さながら猫のケルベロスといった風情。両肩の猫が啼く) -- 猫男爵 2013-04-23 (火) 00:24:56
      • (自慢の本を胸に抱え、心の底から楽しそうにしている時に聞こえてきた歌に驚くような仕草)
        (自分の声にその歌がやみ何かが着地する音が響けた身体をこわばらせ)
        ……ごきげんよう、私は・・私は……(ごくりつばを飲み込む)
        (まるでおとぎ話の怪談に登場する、それのような選択肢だと思いつつ)
        どちらも好きですよ、そもそも!色で猫を区別するなんてお門違い、猫の魅力はあの、何処までも自分勝手でいて、その自分勝手の中でかわいがれーって言う感情を、真っ先に自分に向けてきたりするところだと思います
        (おいで、と男爵の肩の猫へ手招きをしつっつ、何処か不安気な、警戒を持った瞳は男爵に向けられたままで) -- イルミア 2013-04-23 (火) 00:38:54
      • よいお答えですお嬢さん。黒い猫が欲しかったのに白い猫を渡され臍を曲げるというのはいかにも猫に対する愛情に欠ける。
        その点貴方は猫の魅力をよくお分かりだ。きっと猫がお好きなのでしょう。
        二択に対し両方と答えた者にはその双方が与えられる……お約束です。私は泉の精ではありませんがね。
        (男爵の両の腕を渡って二匹の猫はイルミアの肩へと移っていく)
        しかし貴方のおっしゃるように猫は勝手気儘であるからして貴方の肩から何処に行こうと彼らの自由だ。
        (二匹の猫はイルミアの肩から飛び降りると夜闇の彼方へ消えていく)
        ご挨拶が遅れました。私、猫男爵と呼ばれております。お見知りおきを、お嬢さん(居住まいを正して再び礼をした) -- 猫男爵 2013-04-23 (火) 00:51:28
      • あらまぁ、泉の精霊は嘘を着かない人間にだけ味方をするもの
        私のような相手はきっと嫌われますし、そうでなくて良かったと感謝ですよ?
        おろ、おっ、おぉー…?(肩の上に渡った猫に困惑しつつ、まんざらでもない様子を見せながら)
        あ、これはどうも、私は魔法詠唱学の教師イルミア、猫男爵さんの先生ですよ、ふふん、偉いんですよ?
        (肩から降りて消え去っていく猫を振り返ると、大きく手を振って満面の笑みを見せながら) -- イルミア 2013-04-23 (火) 01:03:04
      • 何、ご婦人なれば多少の嘘は愛嬌の内というものです……(腕の上を転がって、手品のようにハットが戻る)
        これは失礼を、イルミア先生(ミズ・イルミア)。何分とてもお若くあらせられる上私は猫目であるからして、ご容赦を。
        それにしても魔法詠唱学とは興味深い。私も魔術を学ぶ者の端くれであるけれども何分不精なものでこと詠唱となるとつい端折りたくなってしまう。
        よろしければ青空教室ならぬ星空教室の体なれどこの若輩にお一つご教示いただけるだろうか? -- 猫男爵 2013-04-23 (火) 01:19:02
      • ふふ、おとぎ話の精霊は確か女神、私が嘘をついたらきっと彼女も私を断罪しますね?
        (帽子が戻るのを見て、若干驚いた様子を見せたが、軽い拍手を返して納得すると)
        いいえ、ですが外面より私は内面が大事、ふふ…男爵のような紳士に認められれば、私の目的も早そうでして
        …ライ・ボウ!(指先に魔力を集めただけの簡単な詠唱のあと、太陽の如きまぶしい光が街路樹を眩く照らし出し)
        このような感じのつまらない詠唱ですよ、魔力があるなら是非、猫さんもどうです…? -- イルミア 2013-04-23 (火) 01:25:54
      • やあ、今の光は私には眩しすぎるようだ。(大袈裟に袖で目を覆っていた。腕を下げて)
        しかしなかなか簡潔で理に叶っている。エクセレント、ミズ(道化て拍手をしてみせる)
        (そうして促されれば、つくりものの顎に手を当て)ふむ。ライというのがrayから来ているとすれば、これは光を示す詠唱でしょう。
        であれば、そう……ダルク・ボウ(二つの言葉、ひとつひとつを強調するようにゆっくりと唱えれば、街灯が一つ闇に覆われ空間の照度が少しだけ減少する)
        ふむ。面白い。(変わらないというより変わりようのない表情とは裏腹に、その声は楽しげであった) -- 猫男爵 2013-04-23 (火) 01:39:32
      • んふふ、光にまぶしいも何もありません、常に太陽はアナタと共にありますの
        も、もう…そんなに褒められてはいけません、それにずいぶんと考察深い…少し、少し妬いてしまい
        (そこまで言ったあたりで、明かりの消えた街頭を見ると眼を丸くした後)
        本当に、心から妬きそう、私と父が一生懸命切り開いた、詠唱なのに、すぐ使いこなされて
        でも、惜しいですね…ダルク、ではなくダラクが正しい発音、今のでは未完成ですよ
        ふふーん、面白いと思うなら…私、こう見えても先生ですし、是非私の授業で色々と覚えて、発展させてくださいませんか、猫男爵さん
        (ペコり、と意地悪く相手の名前を呼びながら頭を下げると、満足そうな顔で)
        あぁ、私が思っていた以上に素敵な人で嬉しかったです、この興奮を抱いたままちょっと、もう少し研究してきますので、コレで失礼しますね……! -- イルミア 2013-04-23 (火) 01:54:59
      • おや。少々誤魔化したのがバレてしまいました(そう戯けてみせて)
        だがそう、私は学舎の灯りの似合わぬ猫です。このような星空の下であれば喜んで。
        ではお別れの前に、貴重な興趣を味わわせて頂けたお礼をひとつ……
        ……何、教諭の学には釣り合うべくもない、先ほどもお見せしたような手品の類に過ぎません。
        それでは1・2・3(ワン・ツー・スリー)……(声に合わせて三度ステッキの先で石畳を鳴らすと、男爵の姿がかき消える)
        (イルミアが顔をあげれば、猫男爵は月を背にして建物の上)それでは、ミズ、夜道にお気をつけて。(影絵の体で一礼すると、ふわりと跳躍して夜の街の何処かへと消えていった) -- 猫男爵 2013-04-23 (火) 02:04:16
  • ……猫だ。(調査のために夜の学生街を歩いていた時の事である。その奇妙な姿が目に入り、思わず声に出してしまった。)
    猫の……人? -- レーチェル 2013-04-21 (日) 14:43:17
    • (学園へと至る桜並木の一本に、新聞を逆さに読みながら、ひどく不安になるバランスで直立している黒い影)
      櫻の樹の下には死体が埋まっている。そうであるなら、この桜並木は墓標の列ではないか。
      そしてそれは我らが学園へと続いているのだ―――などと怖がらせてみよう。
      今宵の私はそういう気分であった。ごきげんよう、お嬢さん(優雅に帽子を取って一礼する) -- 猫男爵 2013-04-21 (日) 17:19:38
      • ――そうか、君が彼の《猫男爵》殿か。噂には聞いていたけれど、実在するなんてね。
        初めまして、猫男爵。僕はレーチェル・ダイオジェネス、行動的探偵部部長だ。
        ハハ、なるほど面白い。それでは学園は死への道というのかい。
        (こちらも一礼し、猫男爵と相対する。新聞を逆さによみ、奇怪な立ち方をしている。素性も何もわからない。レーチェルは抜け目なく彼を観察していた) -- レーチェル 2013-04-21 (日) 17:50:57
      • そう、私は猫男爵と呼ばれている。よろしく、探偵殿。
        (月明かりに照らされる彼の顔はあからさまに作り物で、仕立ての良い正装と不気味な不調和を起こしている)
        さて。そういうこともあるだろうし、そうでないこともあるだろう。
        あくまで仮説、あるいは妄想、狂人の唱える頓狂なポエムと受け取ってもらっても構わない。探偵殿はいかがかな? -- 猫男爵 2013-04-21 (日) 21:14:45
      • (あからさまな作り物の顔。フェイクだ。その顔と仕立ての良いスーツはどこか不気味であった、)
        まるで禅のようなことを言うんだな……。いいや、僕は詩は読まない。才能がないからね。君のような不気味な詩は特にね。
        僕はとある少女から今依頼を受けていてね……猫を探しているんだ。だけど君は、猫じゃないね、猫男爵。
        僕はこの学園都市の謎を明かしたいと思っている……猫男爵、君は何者なんだい? 随分昔から、君はここにいるようだけれど。 -- レーチェル 2013-04-21 (日) 22:05:28
      • いいや私は猫であるよ。しかしその少女の主観、あるいは多くの人間達の主観からは猫という区分けに入れて貰えないだけさ。
        猫探しか。今年はよく猫を探している子に出会うね。(新聞の次の頁を捲る。やはり逆さで、記事は英語で綴られている)
        学園都市の謎は(ステッキで頭上を示して)瞬く星々の如くに多くある。その中で私の存在は一等星だろうか二等星だろうか。
        しかし星を掴まえることは容易ではない……直ぐ其処に手が届くようであってもね。わかるかい?
        (レーチェルに見える逆さの記事は、どこかの国の天文台がなにか些細な宇宙的発見をしたというニュースだ) -- 猫男爵 2013-04-21 (日) 22:17:46
      • 猫を探している子……?(よもや自分の依頼人のことかとの考えが頭をよぎる)
        ……つまり、だ。星のように、近くに見えて遠いもの。学園都市の謎を解くというのはとても難しい……そういうことかい?
        だが、僕はそれでも謎を追おう。「輝き」を護るためにも。
        (星から目を落とすと、新聞記事が目に入った。天文台が何か宇宙的発見をしたという記事だ。星の関係からわざわざこれを見せているのか? といぶかしがる) -- レーチェル 2013-04-21 (日) 22:48:56
      • 私も含めてね。(新聞記事はすぐに他国の政治家のどうでもいいスキャンダルのそれに移り変わった)
        深淵を覗けば深淵もこちらを覗くし、藪を突けば蛇も出よう。蛇は猫でも厄介だ。くれぐれも気を付けたまえ、探偵殿。
        (新聞を折り畳んで仕舞うと、月を見上げた)さて。猫の時間はこれからだが、お若いお嬢さんが出歩いてよい時間は終わりに近いのではないかな? -- 猫男爵 2013-04-21 (日) 22:56:15
      • ――成程。君の謎を解くにはとても骨が折れそうだ。
        (小さくそう言う)
        その言葉、肝に銘じておくとするよ、猫男爵殿。深淵を覗くものはまた深淵に覗かれている。僕がその謎の餌食になる可能性もある。
        だけど、僕は戦う。謎を解こう。それが「輝き」を護ることになるのだから。
        ふふ、御心配をありがとう、男爵。僕は少女らしくないから、僕の時間はまだこれから、といいたいところだけど……今回は、君の言葉に従っておこう。
        猫男爵、また会おう。君の謎は、きっと面白いものだからね。(そういうと止めていた脚を再びすすめ、去って行った。) -- レーチェル 2013-04-21 (日) 23:07:10
      • そういう星が廻ってきたなら。お気をつけて、探偵殿。(そういって一礼をして見送り)
        ……さて。派手な料理が陳腐な味をさせることもある……
        ともあれ(くるくるとバトンのようにステッキを回して)散歩の時間だ。(こつんと枝を叩くと、そこにはもう誰も居ない) -- 猫男爵 2013-04-21 (日) 23:17:18
  • まぁーてぇ〜猫男爵〜!
    (ピリピリーと警笛を鳴らし、キャタピラは地面を揺らし、パトライトは後ろ姿を照らす 浮かび上がるのは猫男爵、超かっこいい)
    今日という今日はこのデプスクロウラー・ソルジアント・ハウンズローの名にかけて!お縄にしてやる! -- 副隊長 2013-04-20 (土) 20:52:36
    • (それは猫男爵がピンク・パンサーのテーマを口ずさみながら優雅に裏路地の塀の上を散歩していたときのことだ)
      やや、また君かね副隊長殿。(ステッキを携えた筒状のシルエットを背にして)
      この間縁石に躓いて転んだ故障はもうよろしいのかな?(ステッキでコツコツと塀を叩きながら) -- 猫男爵 2013-04-20 (土) 21:14:59
      • お陰様でこないだやっと修理完了だこの猫!猫まみれ!(貧弱な語彙から繰り出された罵倒語である)
        それもこれもきさまが裏路地ばっかり逃げるからであってなー!(自分悪くない、とそっぽを向きつつも銃口はしっかり向けて) -- 副隊長 2013-04-20 (土) 21:30:10
      • 猫まみれ。(鸚鵡返しに口に出して一拍の後、愉快げに笑い声をあげた)
        やれやれ。この素敵な古塀に弾痕をつけるつもりかね?壊してしまっては賠償も只ではないだろうに。
        ……そもそも副隊長殿、私への罪状は一体何であったろうか? -- 猫男爵 2013-04-20 (土) 21:40:30
      • 今日という今日は手錠をかけて猫たたき売りに…むむ?罪状?
        えーっと…(ぺらぺらとクリップボードをめくる ハッチから顔を出して両手すら離しても、DCの自動バランサーは立っていることくらい余裕だ)
        夜間外出、門限破り、あと保健室衛生部からの要請だ!捕まえて丸洗いしてやるって言ってたな -- 副隊長 2013-04-20 (土) 21:53:02
      • ああ、私ほど清潔な猫がどこにいよう!それに副隊長殿、猫は夜にこそ、何にも囚われず出歩くものだ。
        私に猫を辞めさせることなどいかな権力を用いても不可能なこと!断固抗議を示させていただくよ副隊長殿! -- 猫男爵 2013-04-20 (土) 22:07:11
      • やはり貴様には実力行使しか無いと思っていたぞ…!(クリップボードを席の後ろに放り捨てるとぺろりと舌なめずりをして)
        覚悟ー!(容赦無い暴徒鎮圧用実弾が唸りを上げて、先日もめっちゃ戒められた器物損壊の始末書追加を確定させる)

        おのれー何処に行った!猫男爵…!
        数分後、もうもうとした硝煙と壁だった粉塵に阻まれ、見事に猫男爵を取り逃がした副隊長の姿があったという -- 副隊長 2013-04-20 (土) 22:14:04
      • (その夜、埃一つ無い猫男爵の姿が街のあちこちで目撃されたという) -- 猫男爵 2013-04-20 (土) 22:17:36
  • !!(二度見して固まる) -- リゼット 2013-04-20 (土) 20:51:09
    • ごきげんよう、薔薇のお嬢さん(シルクハットを外していい声でお辞儀する。街灯の上から)
      今宵はよい月だね。つい誘われてしまった -- 猫男爵 2013-04-20 (土) 21:10:09
      • 見つけた、猫だ!(地上から見上げると月を背にしてるように見えて超かっこよかった)
        探してたんだよ猫、ぜんぜんいないものだからちょっと諦めてかけてたんだけど…すごいな、学園の猫はしゃべるんだ しかも紳士だ! -- リゼット 2013-04-20 (土) 21:13:20
      • 成る程。(ふわりと街灯の上から落下して、音もなく着地)
        猫を探して私に行き着くとは、お嬢さんなかなかよい星の廻りをお持ちだ。
        しかし私は確かに猫であるが君の探している猫とは四つ足で歩く猫ではないかね? -- 猫男爵 2013-04-20 (土) 21:19:32
      • 猫を名乗るからには猫なんだろう その身のこなしどう見ても猫だ! 疑いをさしはさむ余地もない
        今までそういう猫しか見てこなかったし、猫獣人の話も知識としてしか知らなかったんだ 世界は広いな…
        何て呼べばいいんだろう いい声してるけど年上なのかな…私はリゼット=ラシェル・ピュイフォルカ、美術科の新入生だ、よろしく -- リゼット 2013-04-20 (土) 21:27:54
      • (くつくつと笑って)そう私は猫だ。猫男爵と呼ばれている。よろしく、リゼットくん。
        (改めて一礼。年齢に関しての疑問には特に答えることはしない)
        美術科の学生は実に面白いものを作る。私は彼らの作品を見るのが好きでね……君の可能性にも期待したいものだ。
        私との出会いが、何らかの貢献になればいいが -- 猫男爵 2013-04-20 (土) 21:34:22
      • 猫にも王侯貴族がいたのか 大発見だ(自然に返礼して)男爵さまなら好都合、ほかの猫がどこにいるか知らないかな
        美術科の仕事が好きならうちの部にくるといい 望みの品を一点かぎりで作ってるんだ 使ってこそ映える用の美というのもあるんだよ男爵
        きれいな生物、かわいい生物、恐ろしい生物、変わった生物…実物に出会うだけで何かが生まれる そういう取材も兼ねててね -- リゼット 2013-04-20 (土) 21:50:39
      • 成る程。では、そう、また月の良き日に出向かせていただこう。殻を破りつつある雛を拝みに。
        さて、猫達の居場所ということだが……リゼット君は実によい星の廻りをお持ちだ。それに関してこの都市に私より詳しい者などいないと断言できよう。
        (つい、とステッキを路地の奥に向けて)ここから突き当たりを右に。50歩ほど入った左手の暗がりの奥、下り階段を抜けると、猫達の集う噴水がある。
        しかしこの都市の夜道は決して安全とは言い切れない。今から行くのなら、お気をつけて。 -- 猫男爵 2013-04-20 (土) 22:00:43
      • いいことを聞いた!(自分の声に驚いた様な顔をしてトーンを落とし)でもせっかくの集会場だ、場を乱さないようにしないと
        風紀の手を煩わせるのは本望じゃない 土地勘もないし慎重に行ってみよう ありがとう男爵、いい夜を!(別れを告げ、ステッキの差した方へ) -- リゼット 2013-04-20 (土) 22:07:37
      • 良い夜を、お嬢さん。(優雅に一礼して見送って)……さて。
        (くるりと回したステッキで、かつかつと石畳を鳴らすと、塀の上に一匹の三毛猫が現われた)
        お嬢さんのエスコートを頼むよ、ジェイムズ。もてなしてあげてくれ(ジェイムズと呼ばれた三毛猫はひとつ啼くととことこと歩いて夜闇に消えた) -- 猫男爵 2013-04-20 (土) 22:16:21
  • 猫人の人久しぶりに見たな…あ、最初の冒険お疲れ様でした…キャットさん? 猫男爵さん? -- フォス 2013-04-20 (土) 20:48:42
    • やあ。(作り物めいた無表情の猫頭が口を動かさずに答える)
      猫男爵と呼ばれている。よろしく、『銀の腕』のフォス君(シルクハットを取って優雅に一礼した) -- 猫男爵 2013-04-20 (土) 21:07:44
      • (自分の故郷にも猫人はいたのだが。どうにも雰囲気が違ったので若干戸惑い)
        猫男爵さんですね。よろしく…って、え。なんでその名前を…!?(驚きと恥ずかしさが半々であろうか。思わず聞いてしまう) -- フォス 2013-04-20 (土) 21:15:05
      • (猫部分の質感は一様でどうにも毛が生えているようには見えない。どいうよりどう見てもラバーだ)
        私は猫であるから。(答えになっていない答えを堂々と)
        異能(アート)は学園都市の奇蹟であるが、必ずしも恩寵では無い。気を付けたまえ。 -- 猫男爵 2013-04-20 (土) 21:25:39
      • …?(何か。微妙な違和感を感じる。猫っぽいのに猫っぽくない…違和感を持ちつつしかし気づけなかったのは)
        猫だからですか…(なぜかそれで納得させてしまった、猫男爵の纏う雰囲気であろう)
        学園都市の奇跡…だけど恩寵ではない。危険なもの…という事ですか? -- フォス 2013-04-20 (土) 21:37:29
      • (猫男爵は夜行性であるからして、つまり暗かったからという理由付けが適当であろう)
        そうだね。それは時に非道く危険なものにもなりうる。例え使い手が善良な人間であっても凶運を運んでくることすら……
        フォスくん。『総会』には気を付けたまえ。 -- 猫男爵 2013-04-20 (土) 21:46:32
      • 使い手に関わらず不幸になったりすることもある…ですか。俺の場合は異能に助けられたくらいですけど…(異能とはそもそも何か? その疑問が僅かに彼の中に芽生える)
        …はい? 『総会』…? 初めて聞きましたけど(怪訝そうに聞き返す) -- フォス 2013-04-20 (土) 21:54:35
      • さて……私は特に人生や運命といったことに関しては一から十まで示さぬ主義だ。
        だが君が風紀警察に身を置くのなら、いつか必ず出会うことになるだろうう。
        (いつの間にか塀の上に立っている)残念だが時間だよフォス君。月が私を呼ぶのでね。 -- 猫男爵 2013-04-20 (土) 22:10:49
      • …風紀警察に身を置くなら…
        (なぜそこまで知られていたのだろう。運命とか大仰な言葉も自分に似合うものでは…と考えているうちに)
        …いつの間に!?(これ以上問いただしても無駄なことくらいには少年にも分かったのだろう)
        分かりました。それじゃ今日はもう行きます、色々ありがとうございました(今までの会話を助言の類と取ったのだろう、その礼を言って去っていく) -- フォス 2013-04-20 (土) 22:15:26
      • よい学園生活を、フォス君。(夜に溶けるように消えた後、月を見上げて独りごちる)
        さて、若き芽が無事育つことを祈るとしよう -- 猫男爵 2013-04-20 (土) 22:22:57
  • なにこれこわい -- 2013-04-20 (土) 00:47:45
    • にゃんとワンダフル。
      ――初々しき新入生からそういって貰えることを毎年期待しているのだが、それは今年も叶わなそうだね。 -- 猫男爵 2013-04-20 (土) 01:17:46

Last-modified: 2013-06-07 Fri 01:38:42 JST (3977d)