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それから。 †黄金暦251年。
長く不在だったミハイロフ家の当主の座に、緑の髪の末娘がおさまる事となりました。 北の雪国の王宮では盛大なパーティが連日催され、国内外から沢山の人がお祝いに来ます。 外国から来たどこそこの王族、貴族、紹介されるたびに緑の娘は笑顔で挨拶。 国内から来た王族、貴族には夫になったユーリを紹介してやっぱり笑顔。 いつの間にかユーリはどこぞの貴族の嫡男という事になっていたり。お膳立てはばっちりでした。 兄や姉や、もしかしたら両親が、色々手を回してくれたのかもしれません。 偶然にも彼はこの国の一番古い王様にそっくりだったので皆が彼を歓迎してくれました。 そしてお祝いも終わり、当主は最初の務めを果たします。 ミハイロフ家当主の最初の務め、それは北の雪国を守る結界に魔力を注ぎ、自分と繋いで安定させる事。 沢山の古い時代から生きる魔法使い達や、王様、貴族に見守られる中、儀式を行うのです。 お城の地下の大神殿に、気が遠くなるくらいに大きな魔法陣がありました。 国を守るためにミハイロフの魔法使い達が何百年もかけて創りあげたもの。 沢山の魔法使いが魔法陣の隅に座り、その真ん中に緑の髪の少女が降り立ち、歌うように呪文を紡ぎます。 白く艶のあるローブをなびかせて両手を広げ、どこか遠い異国を思わせる金の装飾品をきらきらと揺らし。 呪文は遠い昔の神様の言葉。 とてもとても古いから、その言葉の意味はもう神様しか知りません。 「恋の歌のようだね」お祝いに訪れた年寄りの竜の化身が呟きます。 緑の髪は星のような銀色に染まり 少女の持つ魔法の杖の、虹色の大きな宝石に菫の色の炎が灯り その光が魔法陣を満たしていって………… 少女の足元から緑の芝生が絨毯の様に広がっていきます。 それを追いかけるように青い小さな花が緑の上に咲き誇り、 目の前の小さな芽がみるみるうちに大きな樹に育っていく様は、泉が湧き出るかのようで。 樹はお城の高さよりも高くて、とてもとても大きくて。 それを見て「あれは、若い世界樹だよ」と誰かがつぶやきます。 その上は洞窟のはずなのに光り輝く星達と、虹色の月。 太古の空はこんな風だったと、昔読んだ絵本に描いてあったことを少女は思い出しました。 樹に生い茂る葉が揺れてさざなみのような音がやさしく響き……少女の前には枝に吊り下げられた花ブランコが現れて 二人用のそのブランコの上には青い花の花冠。 それを見ると少女の胸は締め付けられるように苦しくなって……でも嫌ではないのです。 同じくらいあたたかい気持ちも心を満たしてくれたから。 それは少女の良く知る感情。 誰かを想う、たった一人の人を想う、切ない気持ち。 恋心。 その向こうから黒衣の人間がやってきます。 お城の古い謁見の間に飾ってある絵にそっくりな黒髪の青年です。 両手いっぱいに花冠に使われているものと同じ青い花を持っていて、 この花冠は彼が作ったものなんだと少女は思いました。 ……この恋心もまた、彼へのものなのだとも。 すべては魔法が見せている幻。誰かの懐かしい記憶のような……。 花冠に手を伸ばすと、触れたところから光の花びらが溢れ出し 樹や星空も皆飲み込んで消えていきました。 ひらひら舞う光の花びらの、最後のひとつを少女は両手で受け止めて…… …………そして世界が元に戻り、少女の目の前には…………幻のはずの黒衣の青年。 ………………………そこから先の、ちゃんとした記録はありません。 ただ神殿内で大きな事故があり、緑の髪の少女は死んだと伝えられました。 「魔法陣が暴走して、闇が溢れて少女を飲み込んだのだ」 その場にいた誰かが言います。 「いいや、あれは暴走ではなく、我らの知らない”何か“が少女を連れ去ったのだ」 その場にいた遠いエルフの国の古い魔法使いが言いました。 沢山の証言が集められて、 「最も古き王が少女を気に入り、迎えに来たのだよ」 その場にいた黒い竜の化身が言った言葉が最後に記録されました。 本当は何が起こっていたのかは、誰にもわかりません。 ただひとつ、少女はもうこの世のものではなくなっているだろうと、それは皆が口をそろえて言いました。 闇が銀色の髪になった少女の胸を貫き、沢山の血が溢れているのを見たからです。 無邪気に笑う子供のようだった新しい当主の死に、誰もが悲しみ、落胆しました。 ただ魔法陣にはしっかりと魔力が宿ったあとだったのが唯一の救いです。 これで数百年は魔法陣の守りが働き、人々が自然災害に苦しむことはないのですから。 悲しむそぶりをさっぱり見せないのは、北の雪国を守る黒い竜。 緑の娘は彼のお気に入りだったという噂だったのに。 黒い竜は大混乱のお城の中、もう使われていない古い謁見の間で そこに飾られている最も古い王の肖像を眺め、静かに微笑むのでした。 ……隣には、困った顔であうあう言う鬼の子がひとり。 国中が大騒ぎの中、出港する船が一隻。 遠い国へ美術品を届けるための貨物船です。 その甲板の上で、緑の髪の少女が、薄い栗色の青年の手を引っ張って船尾へと走ります。 「ああもうだいぶ遠い…さよなら、故郷。愛しい人達。またいつか」 北の雪国に手を振りながら寂しそうに呟いた少女。 隣で肩を抱く青年に、にっこり無邪気な笑顔を向けて 「……ねっユーリ、これからどこへ行こうか?」 見た目よりも少し幼い声が、どこまでも青い空に響くのでした。 迷いの森 †ユーリとジーニ専用コメ欄なの。(二人の相談欄へ/相談ページへ直行) &br; &size( ){ }; &ruby( ){ }; \/ '''' &COLOR(#00984f){ジーニ}; &new{now?};
相談しようそうしよう †ユーリとジーニ専用コメ欄なの。(二人のコメ欄へ/コメントページへ直行) &br; &size( ){ }; &ruby( ){ }; \/ '''' &COLOR(#00984f){ジーニ}; &new{now?}; ミハイロフ家の魔力のない末娘 †
絵 †描いてもらったやつ!自分で描いたのはろだで「あうぽよ」か「***」か「ジーニ」か「四女」で検索すると出てくるよ! ??? †
ペット †こめあうあう † |