名簿/510533

  • 終幕

    • （カラン、と　瓦礫が落ちる。）
      （爆発の中心地…、少女の足元は激しい魔力の爆発に綺麗にえぐり取られている）
      （威力こそはあったものの、やはり少女一人分の魔力では老人一人を巻き込む程度が限界であったらしい。）
      （激しい爆風によって、多少風景は変わったが…）

      （そして少女は忘れていた。いまこの老人は『セイバー』のクラスだ。）
      （抗魔力が高い相手に、魔力による爆発がどれだけ効くものか…）

      （しかしそれを確かめる術は少女にはもう無い。視界が暗く、今自分が立っているのか、座っているのかすらわからない。）
      （相手を仕留めたのか、仕留め損ねたのか…自分のサーヴァントはちゃんと逃げられただろうか）

      （左手を失い、胸の中心に見通しの良い風穴を開けた少女はその場に崩れ落ちる。）
      • （その音がエオに聞こえたかは、定かではないが。）
        （エオの傍らに、足音が響き。）
        （その姿がエオに見えたかは、定かではないが。）
        （ぼろぼろになったエオの姿を、キャスターが見下ろしていた。）

        エオ。

      • （声に反応するように、僅かに右手が動く。）
        （もはや光の灯っていない瞳が声の主を探すように彷徨った。）

        キャスター…？

        …まだいたの、はやくだれかと契約しないと
        （消えちゃうわよ、と蚊の鳴くような声で呟く。合間、咳き込みながら黒い血を吐き出し）
        （それが余計にもう生命が長くないことを象徴していた。）

        私うまくやれたかしら…

        ……ごめん、ちょっと…ちょっとだけ、もう少しだけ近くにいて

        （右手を明後日の方向へ伸ばそうとするが、最早それもままならない）
        （死にたくない、という言葉は使いたくない。けれどやはり、死にたくなかった。） -- エオ
      • うん。…少なくとも、もうここには、あいつらはいない。

        （どうしてこんなことをしたと、言いたかったが。エオの覚悟を汚すことになるような気がして、声にすることはできなかった。）

        動かないで。

        （もう、手遅れだろうけれど。これ以上、苦しませてやりたくはない。）

      • ありがと…

        （詰まりきった息を吐こうとするが、何かが絡まって上手く吐き出せない。）

        ……ごめん、もう少し、好きにさせてあげればよかった
        史楼のところではもうちょっと幸せに、できれば優勝して、どうかな…難しいかな

        （史楼だし、と笑おうとしたが上手い表情が作れたかもう定かで無い。）


        さいごにもう一個だけ、貴方の真名…
        （長い間ペアを組んでいたというのに、そんなことも聞いていなかった。）
        ……いまさら、そんなこと聞いてもしょうがないのにね　本当に最期まで、ばかね　私 -- エオ

      • しょうがないことないさ。

        （エオに合わせて、キャスターも、無理に笑顔を作ってみせた。）

        エオ。生まれ変わったら、また会おう。
        それまで、覚えておいて。
        僕の名前は、リヒャルト。リヒャルト・ミュラー。
        ありがとう。君と過ごした日々は、本当に楽しかった。

      • （少女の耳にその声は果たして届いていたのか）

        （最後の最後に、歳相応の笑顔を浮かべて…それを見るに、きっと届いたのだろう）
        （私もよ、と声にならない声で呟いて、それで本当に最後）

        （瞳から完全に灯火は完全に消え去った。）
        （これで、夢見がちだった一人のホムンクルスの聖杯戦争は終わり。）
        （魔力の供給が絶たれ、マスターを失ったサーヴァントも宛がなければ何れ消え去る。）
        （残ったのは瓦礫の山だけ） -- エオ
  • 決戦
    • おじいさん、ひとつ、昔話を聞いていかないかい。
      哀れなモルモットの話さ。
      • 間合いが詰まるまでの間でよければ聞こうじゃないか
        （ゆっくりと……否、警戒して間合いをつめながら、黒騎士は嘯く） -- 黒騎士のセイバー
      • そのモルモットはね、踊ることを宿命付けられていたんだ。
        そして、踊り続けないと、殺されてしまうんだ。踊らない、ただのモルモットに、価値はないからね。
        でも、不幸なことに、そのモルモットは、踊ることが嫌いだったんだ
        それでも、そのモルモットは踊り続けた。死にたくはなかったから。
        どんなに辛くても、それを表に出してはいけなかった。使い物にならないと思われたら、お終いだから。
        それから、ずっとそうしていたら、モルモットに、不思議なことが起こったんだ。
        踊りがとても上手になって。そしていつの間にか、笑顔で踊ることができるようになっていたんだ。

        （突如。先ほどまで老人を向けていた刃の切っ先が、キャスター自身へと向き直り）
        （キャスター自身を突き刺した…否、キャスターに取り込まれたのだ。）
        （キャスターの身体が赤く染まり、髪が、毛羽立ち逆立った。）
        （そして…口元には、笑みが浮かんでいた。）

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        ねえお爺さん。見てみたくないかい。そのモルモットの踊りを。
      • （膨れ上がる紅に、盾を構え、一歩前に出る）
        （剣を携え、さらに前に出る）
        （しかし、切りかかれない）
        （切りかかるタイミングを掴み切れない）
        （ただキャスターの独白を聞きながら、間合いを詰める事しか出来ない）
        （刃を自らに突き刺すその仕草。何か有るのは分かる、だが反応はできない）
        （黒騎士の表情はフルフェイスヘルムに遮られ、伺うことは叶わない）
        （だが、それでも、恐らく同じように……黒騎士もまた、笑っていたのだろう）

        出来れば御勘弁願いたいところだが……そうもいかないのだろう？

        （返答と共に疾駆し、剣を振るう）
        （キャスターの台詞を遮るように、首ごと薙ぎ払う一撃をまずは加える） -- 黒騎士のセイバー

      • （キャスターの首筋目掛けて振るわれた刃は、何か、棒状のものによって、その動きを遮られた。）
        （黒騎士の手元に残った感触、手応えは─）
        （骨。人の硬骨のものだった。キャスターは、自ら手首を差し出して、黒騎士の刃を遮ったのだ。）

        あはっ、やる気だね。

        （キャスターは、そのまま剣撃と逆向きに腕をふるい、邪魔になった中途半端な腕を引きちぎった。）
        （そして勢いのまま、刃の下をくぐり、壁を蹴り上げる。宙を舞うキャスターの身体。）
        （ひねりを加えて空中で姿勢を変え、回転の力を脚にこめ、反撃を試みる。狙うは後頭部、まともに喰らえば、昏倒は間逃れないはず。）
      • 勿論、私はそのために来た

        （サーヴァント戦ともなれば、四肢を削ぎ落とすのは基本戦略の一つ）
        （躊躇無くそれをするのは手足が無くなったところで仔細無いという証拠……ともすれば、必要なのは術理よりも膂力）
        （限られた状況を十全に利用するキャスターを見てつい、フルフェイスの奥で歓喜に頬を歪める）
        （だが、見蕩れるばかりではない。即座に身を翻し、左手のカイトシールドを構え、受ける）

        やるじゃないか

        （びりびりとカイトシールドごしに伝わる衝撃に冷や汗をたらしながらも踏み込み、シールドバッシュ）
        （セイバーとなったのなら膂力は問題にならない。重戦車の突貫を思わせるエネルギーをもって踏み込み、キャスターにぶちかましを見舞う） -- 黒騎士のセイバー
      • （着地、反転、攻撃。キャスターは、弾き飛ばされながら、次の攻撃のルーチンを考えた。しかし、キャスターの足元に地面の感覚が帰ってきた時には、黒騎士の盾が眼前に迫っていた。）
        （ぶちまかしを真正面から受け止めてしまい、吹き飛ばされ、煉瓦塀に埋もれるキャスター。）
        （しかし。立ち上がったキャスターの姿に、目立ったダメージは残っていなかった。）
        （それどころか、斬り飛ばしたはずの腕までもが元通りになっている。）

        そっちこそ。それでよく、好戦的でないなんて言えたもんだ。
      • ははは、戦争なら切り札は隠しておくものだろう？
        （キャスターが立ち上がると同時に、砂煙の向こうから黒騎士が飛び込み、斬撃を見舞う）
        （踏み込み、一撃見舞いながらも、切り飛ばした腕の腕が既に再生しているをみれば……笑みが漏れる）
        （予想通りの事態とはいえ、いざ目前でそれをされれば笑う他ない） -- 黒騎士のセイバー

      • （鉄をこすりあわせたような音。手元を見れば、光の刃が黒騎士の剣を受け止めていた。）
        （斬撃を受け止めた赤い光の刃の奥に、笑ったままのキャスターの口元が見える。）

        本当に嘘つき。キャスターじゃなかったの。
      • キャスターさ
        昔無茶をしすぎたせいで魔術もないのに『キャスターでしか』呼び出してもらえない可哀想なキャスターだよ
        お陰でこんな七面倒臭い事をしなければならない
        少しは同情してくれるかね？
        （鍔迫りあいになったと見るや、即座に力を入れて壁に押し付けるように押し込む）
        （そのまま光の刃ごと押し切ってやろうと、一切の躊躇なく。即座に）
        （黒騎士の鉄剣越しに光の刃が僅かに鎧に触れるが、切っ先程度では傷もつかない）
        （明らかに対魔力を帯びている。セイバーの特徴そのものだ）
        （同時に全身から放たれた紅の魔力は殺意の暴風となって吹き荒れ、質量を持ってキャスターに襲い掛かる） -- 黒騎士のセイバー

      • （キャスターは大きく行きを吸い込むと、声に乗せて魔力を解き放った。）
        （行き場を失い、相殺された魔力が弾け飛び、突風が巻き起こる。）

        僕は、あんたに同盟を持ちかけられた時、嬉しかった。
        戦いを避けようとする人が、いることが。もしかしたら、戦いを、忘れられるかもしれないことが。
        でも、それも全部、こうして戦うための布石だったわけだ。

        全部、嘘だったわけだ。

        （キャスターの長い髪が、風に乗って巻きあげられる。）

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        楽しいかよ。
        そんなに戦うことが楽しいのかよ。
      • むっ！？

        （巻き上げられた魔力をそのまま叩き付けられ、突風となったそれは一薙ぎで黒騎士を弾き飛ばし、重力などまるで無視して壁に叩きつける）
        （対魔力すら貫き、純粋な質量と化した風は黒騎士を何度も殴打し、損傷を与える）
        （慟哭を受けながらも立ち上がり、なお黒騎士は笑う）
        （薄く、薄く笑う）
        （薄く笑って、一歩踏み出す）

        なるほど、君のその疑問は全く正しい

        戦わずに済めばいいとは思ったよ
        戦わずに済ますはずの布石を置いたつもりだったよ
        だが、結果はこの有様だ

        戦うのは楽しいか？
        そう『全て』に問いたくなる君の気持ちを、私は主観的に理解しよう

        （泣き笑いを浮かべ、髪を振り乱すキャスター『だったもの』を見て、笑う）
        （フルプレートの彼方で、黒騎士が笑う）
        （否）
        （嗤う）

        では、解答しよう

        （深紅の魔力が巻き上がり、右手の剣に……鉄の剣に絡みつき、吹き上がる）
        （刀身がブレ、往復する）
        （さながら、霞の如く）
        （剣を握る黒騎士は、嗤って答える）

        私は楽しい

        戦うことも、戦わないことも、喋ることも、喋らないことも、出会うことも、出会わないことも……私は楽しくてしょうがない

        君と同じだよ
        基本的なところは同じさ
        違うところがあるとすれば……
        君は自動的
        私は自主的というだけだ

        故に戦争に参加した以上……その末路もまた同じだ

        （カイトシールドを前に構え、それに刀身を隠すように剣を構える）
        （サーヴァント戦において、余りに無意味な工夫。余りに無意味な間合いの取り合い(情報戦)）

        （だが、黒騎士の笑みは止まらない）
        非業すら楽しもうではないか
        それが宿業であるというのなら……尚更に

        （間合いを詰める、黒騎士がじりじりと、魔力の中心にいるキャスターに向かう -- 黒騎士のセイバー
      • （緊迫の中。突如。キャスターと黒騎士の間に、少女が躍り出る。）
        （一瞬の硬直。そして、令呪による戦闘状態の強制的な解除。）

        エオ！！！！！！

        （キャスターが身を乗り出すより早く、少女は次の行動に出た。）
        （まばゆい光が、キャスターの眼前に広がる。）
      • （黒騎士に深紅の魔力が喰らい付き、キャスターにいざ踏み込もうとした次の刹那）
        （それは……少女は、躍り出して来た）
        バカな、最期の命だぞ？
        それもサーヴァントの……道具の為に使い捨てるつもりか
        まぁ、そういうことなら……ありがたく頂くがね
        （吐き捨て、黒騎士は少女に剣を振るう）
        さらばだエオ君、手間が省けたよ。ありがとう
        （宝具による奥儀の発動を急遽キャンセルし、構えを解いて最速で剣を振るえば……銀の軌跡は確かにエオの小さな身体を捉え、朱の残滓で中空と地面を彩る）
        （サーヴァントの攻撃に、子供が耐えられるはずがない）
        （一撃でそれは確かにエオの身体を捉え、いとも容易く切り裂く）
        （フルフェイスの奥で、黒騎士は目を細める）
        （目を細め、浮かべた会心の笑みが……）
        ……ちぃいいい！
        （――歪む）
        （確かに黒騎士は切り裂いた。確かにその剣はそれを切り捨てた）
        （そう、黒騎士は、確かに切り飛ばしたのだ……エオが前に付き出した、小さな『腕』を）
        くっ！　間合いが詰まったか……この土壇場で！！
        （黒騎士が今まで戦ってきた相手は、勝つことが前提の相手）
        （自殺志願者。それも子供の自殺志願者の相手など、多くこなしているわけもない）
        （経験と知識を裏打ちする老人のサーヴァント）

        （そうであるが故に……知識も経験もない事態には……咄嗟の対応が遅れる）

        そこまで読んでのことか……！

        （腕と共に切り裂かれた銀髪を振り乱し、なおも間合いを詰めるエオ）
        （黒騎士は刃を返す。エオはただ走る）
        （いずれも同時。刹那の間が分ける命運）

        （だが、真に刹那の間できまるというのなら）
        （その差を分けるのは……覚悟の差）

        （紙一重、エオの左肩の表面をごっそりと黒騎士が削り取ったそのとき）
        （すでに、エオの身体は、）

        バカな……！

        （黒騎士の、懐の内に）

        主！！　まだだ、まだこっちも最後の……！

        （しかし、その声は、最後まで形にはならず）

        （路地裏に突如生まれた旭日の彼方に……消えた）

        -- 黒騎士のセイバー
    • エオちゃん久しぶりだね。ひとつ、話をしよう。
      君や、君を取り巻く全てを含めた、これからの話をさ。
      どうせ、手を出せるような領域ではないからさ。あっちは。（サーヴァント同士の戦闘風景を見ながら） -- リジェン

      • （放心したような表情のまま、声のする方へ顔を向ける。）
        （いつぞやの怪しげな男がそこには立っていた。ああ、そういえばあのサーヴァントのマスターはこいつだったか…と）
        ……話をするような気分じゃない…っていっても…
        ひかないんでしょう…
        （火蓋を切って落とされた戦い、誰が招いた事態かといえば自分だ。）
        （目をそらしたくて仕方ない、しかし目をそらした所で戦いは止まらない。） -- エオ

      • （小さく肩を竦め、以前会ったときより小さくなったように見えるその少女に視線を向けずに笑う）
        まあね。だってこれは戦争だからさ。君にもその覚悟があったんだろ？
        うちのキャスターから聞いたよ。君がどういう存在で、どういう生命を持っていたかをね。
        だから、先に潰させてもらった。多分卑怯とは言わないだろうからね。

        でさ、一つお願いがあるんだけど。
        （交戦中の互いのキャスターを見ながら、エオという少女に向けて言う）
        ――聖杯戦争を、降りてくれないかな、エオちゃん。あのキャスターに、令呪で消滅とか命じてさ。……傷つかず、平和に還してあげない？ -- リジェン
      • …言えるわけないじゃない…卑怯だなんて…
        （むしろ、真っ先に警戒して一つだけでもトランクを保護しておくべきだったのだ。）
        （本当に何から何まで、掌の上。乗せられたが最後自分で悪い方向へ転がっていくのだから実に馬鹿らしい。）

        （想像以上の無力感にこのまま消えてしまいたくなる。そんな玩具の中のからっぽに悪魔の囁きが滑りこむ）

        （何を馬鹿な、と普段ならはねつける筈の囁きは、今の弱々しい自分では完璧に払いのけることが出来ず）
        （残滓が脳にこびりつく。）
        （残滓をふるい落とすため、拒絶の言葉を発しようと開いた口は…）

        （紅く染まった自らのサーヴァントの姿を見て、暫く閉じるという事を忘れられた。）
        （普段戦いを厭っていた言葉が、そして悲しそうに見える表情が頭に浮かび）
        （降り積もった後悔が道を閉ざしていく。そんな中、リジェンの囁きが拓いた道は…活路にも思えた。）

        （今、自分が彼に出来る最大の贈り物はこの戦いの舞台から下ろすことではないのか？）
        -- エオ
      • （ああ。綺麗な化け物だな、あれは、と内心で口笛を吹く）
        （少女を守る為に化生に身を落とす少年というのは、それだけで中々に絵になる）
        （それに剣を突き刺すのは正義ではなく悪を身に湛えた騎士であるというのも皮肉が利いている）

        （言葉の返ってこないエオには視線を向けず、謳うように呟く）
        見てよ。彼はさ、君の従者としてああいう姿になってるんだろ。
        君の呼びかけに応えて、君の願いを叶えるために尽力してる。
        あんな姿に堕ちてまで、必死にさ。……作り物の生命である、君のためにね。

        もう一度言うよ。……聖杯戦争、降りなよ。
        君みたいな作り物の生命が、人間様の願いを踏みつける権利、あると思ってるの？
        前は君が人間だと思ってたから話し合いで解決してもいいかなと思ってたんだけど、今は説得する気にもならなくて、殺してあげようと思って来たんだ。
        ……つけあがるなよ。人間の形に似せて作られたただの化け物の分際でさ？

        （表情は変わらず、ただ確かな殺意を以ってエオという少女に向けて、男は呟いた） -- リジェン

      • （残滓は張り付いたそこからじわじわ染みこんで、領土を広げていく。）
        （震える手が令呪へ…、胸の中心へ向かい）
        （それからその手が止まった。急に趣の変わった言葉のせいだ。）
        （憎しみ…というより、殺意すら含んだその声に、我に返ったように腕を下ろす。）

        ……どうして？
        確かに私は造り物よ、だとしても…意志がある以上、願いを持って…それを踏みつけられる可能性がある以上
        平等に願いを押しのけて、叶える権利だってあるはずじゃない…

        どうして…？なんでそんな事を言うの…？
        どうしてただ諦めの気持ちで降りさせてくれないの…？！

        （降りろというだけない、未来へのささやかな希望すら踏みつけるような言葉に思わず縋るように叫ぶ。）

        私だって好きで造られたんじゃない！人間が勝手に造って勝手に意志を持たせたのよ！

        （駄々をこねるように首を振る。緩んだ袋の口から、またいくつか人工宝石が落ちて地面を跳ねた。）
        私達にだって意志があるし…願いだってある、夢だって…
        （叫ぶ内に、少しずつ思い出す。）
        （何故自分はこんな戦いへ？） -- エオ

      • （口の端を持ち上げて笑う）平等？　権利？　良く言うよね。生命一つで願いを叶えようとしてる俺達に向かってさ。
        死んでも生き返るなんてアドバンテージを、しかも存分に利用してここまで来たのは君だろ？
        ただの人間より優れていることを隠しもしない化け物を、どうして人間だと思うことが出来る。
        君と手を取り合って生きている人間全てに平等に死という不幸が降り注いだ時、平気で立っていられる君を、俺達はどう思えばいいのかな？

        （小さく肩を竦め、呆れたように呟く）
        俺は少なくとも、人の形をしているから人だと思うつもりはないよ。俺が見たいのは本質だけだからな。
        俺は、枠や形で他人を判断しない。何故か昔からそういう癖みたいなものがあってね。だからこそ、人の心や欲求が透けて見えるのかもしれない。
        だからこそ、君が人の姿に擬態しているだけで人間扱いして貰えると思うことに苛立つのさ。
        （悪魔と何度も呼ばれた男は、喜悦や苛立ちを隠そうともせずにそう呟く）

        （顔を手で覆い、真紅の瞳で欲望を隠さずにキャスター同士の戦いを見ながら、懐疑的に肩を竦める）
        ……本当に、あるのかい？
        人間が勝手に造った君に、人間が勝手に持たせた意志に、君だけの願いなんてものがさ。
        君の意志が存在する証明として、君が心から願う聖杯への願いなんてものを、造り物の君が謳えるのかな？ -- リジェン
      • 知らない、そんなこと私だって好きでもって造られたんじゃない、人間がそうやって造ったんじゃない…！！
        好きでこんな姿してるんじゃないわ、どうせなら化け物そのものの姿で造れば良かったのよ…！！
        しょうがないじゃない、そうやって産まれた以上、そうやっていかないと
        （足元がぐらつく、ぐらついて揺らいだ視界の先に色を失った人工宝石が映る。）
        （あれはいつ死んだ自分だ？）
        （目が覚める前か、目が覚めた後か？この街にくる道中か？それともこの街に来てからか？）
        （逃げるように彷徨わせた視線は、自分サーヴァントで止まる。）
        （ゴミのように引き千切られた腕が転がった。）

        （込み上げてくる物を抑えられず、手で口を塞ぐ。）
        （よろめくように後ずさって、崩れるようにその場に膝をついて、呻くような声を上げながら胃液を吐き出した。）
        （後から後からこみ上げてきて、抑えきれない嘔吐を何度も繰り返して）

        （肩を震わせながら少女は首を振る。）
        …もうやめて
        ごめんなさい、私が悪かったから…

        私には……もう聖杯にかける願いなんて無い… -- エオ

      • （表情に浮かぶのは僅かな失望と嘲り）
        （床で嘔吐する少女に、その時初めて目を向けて、苦笑を零した）
        可哀想にね。哀れなもんだよ。君は間違いなくホムンクルスという名の被害者だ。
        でもさ……被害者だからって、他人を加害して許されるだなんて思うなよ、君は可哀想だけど、可哀想なだけだ。
        悲しむ演技も上手だね、精巧に作られたことが、君の悲劇だね。……どちらにしろ、俺は君を可哀想だとは思ってあげられないけど。

        （地面にえづくエオのすぐそばまで歩いて行く。靴裏で吐瀉物が跳ねた）
        （小さいその姿に、胃が僅かに蠕動する。やはり腹など満たしてくるべきではなかった）
        （首筋を掴んで、静かに持ち上げる。少しだけ首が締まるが、十分に会話は出来るように、優しく）

        （人間は問う。欲望でその問いを投げる）
        ……尋ねよう、エオちゃん。（背後で戦うキャスターという名の少年も含めて、その問いは呟かれる）

        ――君は……君達は、『人間』かな？ -- リジェン
      • （ずる、と頭が持ち上げられる。）
        （靴底が跳ねた胃液が顔にかかり、どこかで冷静に気持ち悪いな、と思う。）
        （小さく咳き込んで、右手が小さく藻掻いた。）

        ごめんなさい…

        （口から出たのは、いっそう目の前の男の失望を誘う言葉。）
        （しかしそれは決して、この男に、そしてあの老人に許しを請う言葉ではない。）

        ごめんねキャスター
        私が最初からしっかりしてれば、そんなこと想いさせなくてすんだのに

        （魔力の繋がりから伝わる、キャスターの慟哭）
        （手前勝手に呼び出されて、やりたくもない戦いを強いられて、挙句マスターはこのザマだ）

        そうね、私って本当に可哀想。
        私自分が可哀想だって知ってたわ、この可哀想って武器すごく強いの　だから手を離したくなかった
        …でも本当に可哀想なのはそんなマスターに使われるキャスターと
        こんな私でも死んだら胸を痛めるどっかの馬鹿達だわ

        （ここに来て、ようやく「可哀想な自分」を手放した。）
        （男の言うとおり、自分の何が可哀想なものか。）
        （何度だって生き返ってきた、生き返れるというチャンスに甘えて散々に無駄に生命を散らした。）
        （そんな化け物この上ない動きをしながら人の幸せに憧れるなんて、なんたる傲慢）
        （人として認めろと駄々をこねるだなんて、なんという恥さらし）

        …あの子は『人間』だわ
        私が化け物にしてる、それだけの人間よ

        （締まる喉に、もう一度咳き込み震える右手を上げる。）
        （人差し指を目の前の男の顔に向けて）
        私が、人間かどうかは…貴方が一番良く知ってるでしょ…

        （化け物よ、今はまだ。そんな呟きに応えるように右手に握りこんだ人工宝石が煌めく。）
        （ガンド撃ち…ホムンクルスの自分の身では、豆鉄砲ほどの威力もない。）
        （しかしそれでも目眩まし程度にはなる、一瞬だけでも良い。自由になる隙がほしい。）
        （自分には最後の令呪を使ってやらないといけないことがある） -- エオ

      • （サーヴァントが人間だと言うホムンクルスに、嗤う）
        （木偶が人の形をしたものを人と呼び、人間が人の形をしたものを木偶と呼ぶ）
        （サーヴァントという過去の英霊の魂を御座に収めただけの形骸に感傷を抱くのは、自身が形骸そのものだからだろうか）
        （だとしたら、それは、弱者が弱者と身を寄せ合うようなもので……内心に、昏い笑いが灯る）

        知ってるよ。
        そして、漸く自覚したか、化け物。
        人間はさ。人間を殺すのには躊躇するときもあるけど……人間じゃないものを殺すときは、残酷になれるもんなんだよ。
        （そして漸く。この相手は自分の存在を認めて、俺の『敵』となった）

        胸を張って言おう――死ね、化け物。

        （人の形に似せられて造った、哀れな傀儡。その傀儡が、自分が持ち合わせていない感傷を持ち合わせていること）
        （化け物と蔑んだ化け物より、さらに化け物である我が身を自覚して、指先に力が籠もる）
        （細首に手を掛け、その一度味わった感触を再び楽しもうと握りしめようとした瞬間）

        （こちらに向けられた指先から魔術が放たれる）

        （姉妹の生命すら利用する化け物の覚悟が、何の力も持たない人間の非力さの隙間に滑り込み、如実な効果を齎す）
        （意識の外側から来る魔術の行使に、殺意と苛立ちが指先に爪を立てさせ、薄い皮膚に紅い跡を残す。だが拘束が緩み、エオの身体が地面へと解き放つ） -- リジェン

      • 　───　最後の令呪を以って命じる　

        （躊躇いが無いわけではなかった。これで繋がりは消えてしまうのだな、と思うと寂しさはある。）

        　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　…もう、自由になって良いよ

        （最後の令呪が光の粒子となって消えた。２人の間にあった主従の関係はそれを以って、解消される。）

        　─　最後の最後まで、振り回してごめんね
        　─　キャスター、史楼とかならきっと貴方と再契約してくれると思うから　ちょっと魔力は厳しいかもだけど
        　─　ごめんね、ありがとう、それから…逃げて

        （令呪が行使される直前、最後にそんな念話を残して）

        （少女は地面を蹴った。呼ばれても居ない戦場へ躍り出る。）
        （『セイバー』に飛びつくようにして）

        化け物の敵は、いつだって人間だわ

        （呟いた。結局、史楼に絆された時点で自分は負けていたのだろう。あとは長いロスタイムがあっただけの話。）
        （全身に魔力のラインが走り、核である人工宝石が激しい光を放つ。）
        （魔力を核に逆流させて起こす、いわば自爆攻撃。）
        （何かが砕けるような炸裂音と共に、周囲一帯を激しい光が覆った。） -- エオ
  • 裏通り
    • （人気のない裏通り）
      （その一角。少し開けた広場をエオが通ったとき、不意に背後から気配を感じた）
      （その気配は躊躇無く、エオに向かって長剣を突き出して来る）
      （狙いは首筋……一発で首を切り落として、絶命と同時に声を奪うという算段が見て取れる）
      • （いつものような一人歩き、見慣れた町並み。ただひとつ違うのは今人を待っているということ。）
        （待ち人はいつ現れるのか見当もつかず、果たして今日は徒労に終わるか…という瞬間、僅かに胸がざわついた）
        （考えるよりも体が動くほうが早い。）

        （切断され哀れな姿になった帽子と、紫色の髪の毛がパッと舞って地面へ落ちる。）
        （咄嗟に倒れこむようにして、無様に地面へ平伏したが…しかしその判断は正解だったようだ。）

        そ、っちから来てくれるとは思わなかった…！

        （全力で地面を押して、跳ねるように飛び起きる。）
        （今の動作で既に息が切れていて、自分の体の小ささを呪いながら…しかし、それでも逃げずに声を出したのは）
        （自分にわずかでも気配を感じさせたのだ、話す気はあるだろう…という希望があっての事） -- エオ
      • やはり気配を完全に殺すのは不可能か……
        （前に出ながら、また剣を振り下ろそうとするが、少しばかり間合いがたりない）
        （もう一歩つめなければ確殺は望めないだろう）
        （そうすると最悪、先日のような自害……いや、それ以上の策を打たれる可能性がある）
        （自爆などで巻き込まれるのは面白くない）
        （そう思い至り、キャスターは笑って情報を一つわたす）
        エオ君、悪いがそこで大人しくしていてくれないかね
        できれば楽に死なせてあげたいんだ、『君の他の姉妹』のように苦しめたくない -- 眉雪のキャスター

      • （成る程、希望など無いというわけか…と溜息を付く）
        （キャスターが居ない状態で、果たしてきちんと発動するか甚だ疑問ではあるが）

        （ケープの下、腰に括っていた袋に指を差し入れ指先で石に触れる。）
        （既に何色か判断することすら危うい、その人工宝石は今まで死んだ自分たちの心臓のようなもの）
        （死ぬ度に出来うる限り、回収してきた。）
        （慎ましい魔力が蓄えられている、一つ一つは雀の涙ほどでも量が集まれば力になる。）
        （…決して、このような事態に備えていたわけではない。）
        （ただ自分が幸せになる時、少しでも今までの自分にそれを分け与えたい…というような少女の涙ぐましいいじらしさだ。）

        （躊躇いが無いわけではない、しかし背に腹は変えられない。）

        （この「今までの自分の心臓」に蓄えられた魔力を全部使って、魔力回路に魔力を逆流させる。）

        （向かい合う少女の頬に光の線が走り、ﾊﾟﾁﾊﾟﾁという音を立て始め）
        （…どの程度の威力が出るものか、ビル三棟程度は破壊出来るだろうからいかなサーヴァントといえど無傷では居られないだろう）
        （そこを次の自分が……）

        …姉妹？

        （老人の言葉に、思考が中断された。）
        （不吉なラインを体中に走らせ、魔力を滾らせたまま少女が言葉を鸚鵡返しする） -- エオ
      • （当たりらしい）
        （薄くにやりと微笑んで、もう一歩間合いを詰める）
        （まだ足りない）
        （もう一歩、確実に殺すために間合いをつめる）
        そうだ、悪いが『先手』を打たせて貰ったよ
        もう、君の予備を期待しないほうがいい
        君には既に一度策で負けているからね
        策で勝てないのならしようがない、次は腕力というわけだ
        安直で悪いがね
        （凶兆を思わせる魔力回路のラインを見て再び微笑みながら、剣を振り下ろす） -- 眉雪のキャスター

      • （嘘だ）
        （そんなものは、自分にスペアがいると知っているから出たハッタリだ、騙されるな）

        （詰められた間合いの分引き離そうと、一歩後ずさる。）

        （少なくともこの短い期間で、７つのスペア全てが見つかって処分されるなんて有り得ない）
        （誤魔化されるな、死ぬのは慣れているじゃないか）
        （あんなに死んだはずだ、躊躇うな）

        （自分に言い聞かせる。しかし、何度言い聞かせてもその言葉は自分に染み込まない。）

        （震える指先から、人工宝石が滑り落ちる。）
        （カツン、と床を跳ねて遊ぶそれに一瞬気を取られ足がもつれた）

        （小さな悲鳴を上げて尻もちを突く。）

        　──　ああ、殺される

        （歪む視界、今ならまだ間に合う。あんな偽りの言葉に惑わされず、ここで魔力回路を暴走させて）
        （でももし嘘じゃなかったら？自分はここで死んでそれで終わり、マスターを失ったキャスターも何が何やらわからない内に消えていなくなる）
        （けれどもし暴走させなくたって、もう）

        （何が失敗だったかといえば、単身ここへ出向いたことか）
        （それともスペアの存在をべらべら口にしたことか、この老人と巡りあったことか）
        （はたまた、史楼に絆されたせいか）

        （嘘かもしれない、でも嘘じゃなければ死ぬ、死んだら二度と目を覚まさない、今まで殺してきた「自分」の犠牲も全て無駄になる。）

        （少女の迷いを表すように、肌に走るラインが乱れる。）

        キャ…
        （祈るように、体を縮こまらせる。丁度胸の中心へ収束したラインは令呪の一角を輝かせ）

        ごめんなさ、ごめんなさい…！！助けて、キャスター……！

        （あまりに無様な少女の叫びに令呪が反応し、最初の令呪の効果が打ち消される。）
        （少女の命が絶たれる寸前、願いは通じたかどうか） -- エオ
      • こんなことだろうと思った。

        （路地の影、深い闇の中から、赤い稲光が走り、空間を切り裂いた。）
        （弾き飛ばされる、老人の剣。老人が稲光の源をたどると、そこには、金髪翠瞳の少年、エオのキャスターの姿があった。）

        物騒なものを持ってるね、おじいさん。
      • （打ちおろした剣が、弾き飛ばされ、老人も同時に退く）
        （二の手はうてない。だが、ここまではいい）
        （深く、老人は微笑む）
        そうだ、それでいい、やっと手札をきってくれたねエオ君……それに、久しぶりだねキャスター君
        私の玩具なんて、君ほど物騒ではないと思うけどね

        （あのサーヴァントに単独行動がついている可能性なども考慮すれば、ここで共に始末することまでは想定の範囲内だ）
        （故に……躊躇わない）
        （躊躇わず、主に打診をする）

        主、ＢＥＴさせろ

        『剣』を寄越せ -- 眉雪のキャスター

      • （老人の背後、肩を竦めて令呪に指を添える）
        （薄く笑い、肩を竦めて確認するように言う）……BETするからには、元くらいは取れよ、傀儡。
        半端は許さんぞ、今ここで、確実に潰しておくことは最低条件だ。

        ……令呪を以って我が傀儡に命ず。――キャスター。

        （令呪が、光り輝く）

        ――　一時的に、『セイバー』として顕現せよ。

        （残り二画の令呪の一画が削れ、真紅の魔力が渦となって目の前のキャスターへと流れこむ） -- リジェン

      • ごめん、キャスターごめん…
        私ダメだった…ごめんなさい…
        （身勝手に振り回した自分のサーヴァントへ何度も謝罪の言葉を口にする。）
        （それは決して、自分が不甲斐ないせいで…というだけではない、自分は令呪を使って助けを乞うた。）

        （その願いは鎖より重く、目の前の敵を打ち倒せとサーヴァントを戦いへと縛り付ける。）
        （気遣ったつもりだった、戦いを厭うのなら自分が何とかしようと思ったのも本当だ。）
        （結局、全て裏目に出た。あまりに不甲斐ない、あまりに情けない）

        ごめんなさい…！
        -- エオ
      • 謝んないでよ。
        （目の前にあるのは、無力な少女の姿。）
        （そういえば何度か、見たことがあった。エオの瞳に、幼い子どものような光が宿るのを。きっと、これがエオの本当の姿。）
        （自分をもののように扱い、気丈に振る舞ったあれは、この姿を隠す、殻のようなものだったのだろう。）
        （ならば僕も、覚悟を決めるときだ。）



        おじいさん、あんたは、話がわかる人だと思っていたんだけど。
        エオ、下がってて。

        （キャスターの周りに、無数の赤い発光体が現れた。）
        （発光体は、刃へと姿を変え、切っ先を眼前の老人へと向ける。宣戦布告だ。）
      • （刃の切っ先が老人に向けられると同時に、老人の姿が深紅の光に包まれ……）
        （光が晴れると同時に……それが顕現する）

        （重厚な黒のフルプレートにその身を包み、カイトシールドと長剣を携えた黒騎士が）

        （セイバーとしての全盛期を写すならば……それ以上などあるはずもない）
        （鉄の金鳴りを響かせながら、黒騎士は笑う）

        話が分かるからこそ、今始末するしかないのだよ
        君達は、危険過ぎるからね

        （宣戦布告を受けるように一歩踏み出し、黒騎士は構える） -- 黒騎士のセイバー
  • 殺害2、解体1、焼却2、水葬1、行方不明1
    • （以上、今、哀れなホムンクルスのストックが尽きるに至るまでの経緯である。）
      （順を追って説明して行こう。）
      （殺害。これは、一人の隙をついて。あるいは、キャスターと交戦したサーヴァントが。明らかに、我が身を犠牲にマスターだけを狙って得た戦果である。）
      （解体。そのトランクは運悪く、解体される廃屋に置き去りにされていて。重機によって粉微塵に粉砕された。）
      （焼却。そのトランクは運悪く、火付けに狙われた燃油小屋の中。一足早い火葬に見舞われ、もしくは巻き藁に紛れて燃やされた）
      （水葬。そのトランクは運悪く、船倉の中に隠されていて。船が沈んで魚の餌に。）
      （行方不明。そのトランクは運悪く、人攫いに攫われて、隠し場所には何もなく）
      • （誰かしらの意図を感じるだろうか。何かしらの暗躍を信じるだろうか。）
        （確かなのは、あなたは殺されるところを何人にも見られていて。）
        （そして、聖杯戦争において明確な宣戦を、ある一組に対して行ったということだ）
  • 　
  • 　
  • 　　
  • （大通り。特に往来が多い通り角のカフェで、老人が馴れ馴れしく手を振ってくる）
    （いかにも低俗なゴシップ誌片手にひらひらと）
    やぁ、エオ君
    カレーパーティ以来だが、まぁ元気そうだね。戦況はどうかな？ -- 眉雪のキャスター
    • （どうにも調子の出ない毎日だ。それもこれも先日の出来事のせいなのは明白で、取り敢えず思考が落ち着くまでは一人で居たいものだが）
      （呼ばれて思わず振り向いてしまったから仕方ない。自分の耳を恨みながら、小さく片手を上げる）
      …これといって、誰かを倒すこともしてないし
      見ての通り倒されても居ないわよ…っていうかお爺さんまだ生きてたんだ…
      強いのか弱いのか分からないわね…　そもそも本当にサーヴァントなの…？サーヴァントと名乗る傾奇者じゃないの…？ -- エオ
      • その可能性は一概に否定できないな
        もしかしたら私はマスターかもしれんし、そのどちらでもないかもしれない
        ともすれば、邪悪なマスターやサーヴァントに操られているただの優しいおじいちゃんかもしれない
        私がそれを自覚していないという可能性すらある
        疑い始めたら斯様にきりがない、真実とは難しいものだねぇ
        それはそうと戦果はお互いに無しか
        それは寂しいな
        じゃあ、せめてお茶をしようじゃないか
        座りたまえ、今日も奢るよ
        （そういって、目前に空いている席を勧める） -- 眉雪のキャスター
      • そう、じゃあ（遠慮無く、と椅子に座るなりメニューを広げて）
        （ここから、ここまで　というような雑な注文の仕方をする。それからメニューを閉じて）史楼みたいなあまちゃんには思えないし
        狙いが何なのかさっぱりわからないけど考えるだけ無駄だわ、せめて財布だけでも殺していく

        邪悪なサーヴァントだったり何かいやらしい裏があればそれはそれでありがたいんだけどね…
        大手を振って殺してスッキリできるもの
        世の中って上手くいかないわ、絵本のような勧善懲悪なんて本当にあるのかしら
        …あれば聖杯だなんて物もそもそも存在しないかもしれないけれども -- エオ
      • え、いや、そんなまた雑な……あ、店員さんちょ、ちょっと！
        （しかし以前すでに一度通された事がある注文なので、店員側も流れ作業的にいってしまう）
        （しぶしぶと財布を引き換えにわたして「それで払えるぶんだけ……」と呟いてから向き直る）

        ……なかなかの戦略といっておこう
        そして勧善懲悪かどうかはともかくとしてだ
        正義が必ず勝つことは間違いないので安心したまえ
        いつの時代も勝てば官軍だ
        聖杯戦争でもそれは変わらない
        だから、エオ君も安心して他のマスターやサーヴァントを薙ぎ払いたまえ
        ……ま、言われずとも覚悟はできていると思うがね -- 眉雪のキャスター
      • （注文が届くまでの間、暇なのか脚をぶらぶらと揺らしながら）そうね、確かに言われるまでもないわ
        でも私が言ってるのはそういうことじゃなくて……
        （そこまで言って、口を開いたまま動きを止める。言ってどうする、という思いもあり）
        （しかしここまで言ってしまった手前、黙り込んだ所で不自然か）

        ……お爺さんはあれよね、どうみても主人公とかヒーローっていう顔じゃないわよね
        胡散臭すぎるし
        かといって悪かと言われると…それも何か違う気がするし…そういう曖昧さが嫌なのよ
        ハッキリ正義は正義、悪は悪で単純であれば誰も悩まなくて済むのに世の中ってうまくいかない
        悪を倒してめでたしめでたしだなんて話現実では殆ど無いじゃない
        違う正しさ同士がそれぞれぶつかり合って散っていくっていうのがすごく…面倒くさい -- エオ
      • （そう少女に問われれば、老人はまさに『曖昧』に微笑み、運ばれてきたレタスサンドを一口たべてから語り出す）

        そう、何が正しいのか判断するのは面倒くさいことだ
        故に……人は勝者のみを正義とする
        殴りつけて死んだほうが悪と結果で判断することで『曖昧』なことを『単純』にしようとしている
        現実の話でそんなことがないからこそ、創作ではせめて『望むように』しようとする
        現実は難しい
        しかし、だからこそ楽しい
        私のように主人公でもヒーローでもない顔をした爺ですら主人公にもヒーローにもなりえる

        現に、私の話の主人公は常に主観たる私だしな、ははははは

        面倒な現実は嫌いかい？　エオ君
        （またレタスサンドを齧り、遅れてやってきた紅茶をのみながら問う） -- 眉雪のキャスター
      • ヒーローかどうかはともかく、まあそうね主人公は主人公ね…
        だってお爺さんなる気なんて無いじゃない、ヒーローにだなんて（紅茶に砂糖を一つ落としながら）
        成り得る為の傲慢さとか熱さとか足りなく見えるし
        （果たして若い頃は違ったのだろうか、と白頭を眺めながら考える。）
        （サーヴァントとして呼び出されるくらいだから、それなりには名を上げた人物だろうが、しかしこうして話していてもさっぱり想像がつかない）

        全盛期の姿がそれなんでしょう、なら直前までなんやかんや巻き込まれてさぞ熱い後悔とか意志とか願いがあっても良さそうじゃない
        それをこうまで隠し通されると不気味の一言だわ…

        好きなわけないじゃない…面倒な出来事を好むのはいつだって無責任な読者だけよ
        （以前別れた少年の姿を思い出し、陰る表情を隠すように紅茶に口を付ける）
        （自分が手を下すこと無く脱落者が出た、という事態は喜ぶべきことの筈なのに手放しで喜べない）
        （あるいは、彼の人となりを知らなければ無邪気に喜ぶことも出来ただろうが）
        例えば聖杯に世界中の人の幸せなんて願ったとても矛盾が生じてしまうのよね…
        どんな形で叶えられるかもわかったものじゃないし -- エオ
      • 何をいうか、サーヴァントは皆須らく英霊(ヒーロー)だよ
        （紅い瞳を薄く細め、笑う）
        望む望まざるに関わらず……英雄(人殺し)になった連中がサーヴァントだ
        勿論私だってそうだし、君のサーヴァントだってそうだ

        私たちは皆、数え切れないほど人の願いや希望を踏み躙ってきた……立派な人殺し(ヒーロー)なのさ
        だからこそ……あらゆる『想い』を越えて、此処に居る

        （楽しそうに紅茶を啜り、残りのレタスサンドを飲み込む）

        どうかな
        ドの過ぎた面倒でなければ、人間は無意識にそれを求めると私は思うがね
        誰だって程ほどの面倒(難易度)を常に求めている
        達成感を手軽に味わえる程度のものなら尚いい
        だからこそ……そんな『願望器』の矛盾に気付きながらも誰も降りようとはしない
        それが本物かどうかすらわからないのにね -- 眉雪のキャスター
      • …私にはヒーローに慣れなかった心残りの成れの果てみたいに見えるわ
        『想い』を超えることが出来なかったからここにいるサーヴァントが殆どじゃないの？
        人の願いや希望を踏み躙ることが出来ずに…もしくは踏み躙ったその時点で諦めてしまった人っていうか
        （ティースプーンで紅茶をかき混ぜながら、ぼんやりと）
        （あまり気に留めていなかった自分のサーヴァントの事を考える。）
        （それから、あのブレイズとかいう男とライダーの事を考えて）

        ……そういえばお爺さんも聖杯にかける願いはないのだっけ…
        貴方の願いは聖杯では叶えられないものなの？
        …それとも聖杯を目指す過程で叶えられるもの？
        例えば…最後の２人に史楼と貴方がなったとして、その時どんな顔をして向き合うの？
        （あるいは自分はどんな顔をして向き合うのだろう）
        （並べられていく皿の上のデザートをフォークで突っつく。） -- エオ
      • 心残りがあるからこそ、死んでまで人殺しを続ける英霊(ヒーロー)なのさ
        まぁでもそうだね、かつてなれなかったから、今なっているっていう奴も確かにいるだろうね
        かつて踏み越えられず、諦めてしまったばかりに……聖杯の準備する次なんていう甘言に惑わされ、此処に『堕ちた』という輩は一定数いるんじゃないかな
        中々の諧謔じゃないかエオ君
        君には詩作と政の才がある
        （紅茶を飲み干してからおかわりを頼み、ついでにまたレタスサンドを追加で頼む）
        （気に入っているらしい）

        願いが無いわけではないが……まぁ、二の次とは思っているね
        聖杯戦争において、サーヴァントはただの道具でしかない
        道具を振るう主の願いが優先だ
        最悪私の願いなんて令呪一つで捻じ曲げられてしまうのだしな
        嘘か真かはしらんが、かつてどこかであった聖杯戦争では、優勝者が願いをかなえようとしたサーヴァントに令呪を使って聖杯を破壊させたことまであるそうだよ

        そんな前例の噂が嘘でも本当でも平気で出てくるような時点で、そういう可能性は十二分にあるということだ
        なら、私は願いも主も信用しない
        それだけのことさ

        そして……はははは、史楼君が最後に残るなら、か
        それは傑作かつ好都合だな
        私はむしろそれがいいな。楽勝だろうからね
        戦わずに済ますことすら出来そうだ、私はそれを望むよ
        （朗らかに、それでいてとても楽しそうに笑って、チーズケーキにフォークを差し入れて口に運ぶ）

        まぁ、それに彼も戦争に出た以上、覚悟はしているだろうさ
        なら、そこで躊躇うことはお互いにしないと思うよ
        したら私は笑うだけだ -- 眉雪のキャスター
      • （ゆったりとした仕草でトルテにフォークを刺して、気怠そうに口に運ぶ）
        褒められたと思って良いのかしらそれ
        ………美味しいの？レタスサンド…もっと色々挟まっていたほうが良くない…？

        （ならいったい何を拠り所にこの舞台を進んでいるのか）
        （願いもマスターも信頼しない、というのなら余程自分自身を信頼しているのか…だとしたら）
        （それを失いつつある身としては羨ましい限りだ）
        …その姿になるまでによっぽど色々なものを見てきたのでしょうね
        多くのものを見てその老獪さを身につけた上での振る舞いだとしたら…やっぱり私にはまだ経験が足りないわ

        どうかしら、覚悟なんて出来ているのかしら
        覚悟なんて決まらないまま守りたいものだけ多くなって、両手いっぱい広げたまま駄々こねてるだけに見えるわ
        誰もがある程度何かを諦めながら生きてるのに、何もかもを諦めないだなんて傲慢極まりないと思う

        貴方が史楼に随分くっついて回ってるのって、御しやすそうだから？
        それとも息子でもいてそれに似てる？
        （冗談めかしていいながら、ようやく一つ目の皿を片付ける） -- エオ
      • そう思ってくれると嬉しいな、私は君と喋るのが楽しい
        機会があれば一度主にしてみたいほどだ
        （レタスだけだからいいのさ、といいながら、まだ手をつけていないレタスサンドを一つ皿ごとわたす）

        少しばかり、見たくないものを見てきただけさ

        （乾いた笑いを漏らして、ソーサーにカップを置く）
        （僅かに揺れる紅茶の波間に、歪んだ老人の顔が映る）

        史楼君について回る理由か
        御しやすそうだから、というのは確実にある
        だけどまぁ、もっと単純な話さ

        彼は見ていて、面白いのさ
        幻を幻と理解したまま手を伸ばし、誤魔化しを誤魔化しと認めたまま胸に抱える
        その在り方は余りに若く……余りに脆い
        見ていると、老人はついついちょっかいを出したくなってしまうのだよ

        私の息子はあそこまで可愛気がなかったせいもあってね

        エオ君だって、彼とたまに一緒ににいるのはそうだからじゃないのかい？
        楽だろう。彼と一緒にいるのは -- 眉雪のキャスター
      • お断りだわ…今のキャスターですら手に余ってるのに、貴方なんて余計に手に負えない…
        （不味いということは無いだろうが、果たして本当に美味しいのかと齧ったサンドイッチは）
        （なるほど、確かに重さが無くするする食べれる…ような気がする。とはいえそう何皿も食べたいとは思わないが）

        （つまりこの聖杯戦争を平素とした顔で渡り歩けるほどの光景を、生前は日常的に目にしていたということか）
        戦争かあるいは権力争いか…何を見たにせよ
        今まで見てきたそれに比べれば、私達がしているこの争奪戦はとても可愛らしく見える？
        競争者同士が一同に集って平和に食事会なんてするぐらいですものね

        （あの時の光景を思い出し頬を緩め、しかしすぐに元に戻す）
        …楽…かしら、どちらかというと苦しいような気もするわ
        私は絶対にああいう風になれないもの、私は私が幸せになることだけで精一杯
        他の人の事なんて…ましてや、敵の事情なんて知ったことではないわ

        ……というような思考をひっくり返そうとしてくるから、苦しい…というより嫌
        面白がって突っついてる内に足元からひっくり返されても知らないわよ、あるいはそれが望みなのかもしれないけどね
        -- エオ
      • 案外、そういう手に負えないと思う物の方が慣れるとクセになるものだぞ？
        まぁ、前向きに検討してくれたまえ
        （テーブルに置かれた追加のレタスサンドを食べながら、嘯く）

        まぁ可愛らしいというか、面白いね
        真面目に勝ちたいマスターもサーヴァントも少ないのだろうなということがどことなくわかってね
        誰も彼もなぁなぁでやっている
        戦略的に動いているとは到底おもえない
        形振り構わず叶えたい願いがあるのなら……もっと手段は選ばないでやるべきだ
        その上で定石を守り、利を重視し、ただ願いを叶える事だけに傾倒するのが本来の聖杯戦争のはずだ
        だが、そういう様子は今回の大半の参加者にはない

        裏返せば……「手段を選ぼうと思える程度」の願いしかないということさ

        必死じゃあないんだよ、みんな
        そういうところから鑑みるに私は……みんな願いを叶えるためではなく……「ここまでやっても叶わなかった」という言い訳欲しさにやっているのではないかと思っているね
        そういう理由なら、この御遊戯のような戦争の有り方も十分に納得できる

        史楼君に触れてほだされている君を見ていても、そう思えるよ
        ああ、勘違いしないでくれ、責めているわけじゃあない
        私はそんな君達すら好きなんだ、見ていて愛おしいとすら思う
        足元からひっくり返してくれるというのなら、確かにその手腕を見てみたくもある
        実際上手い手だからね
        彼は無自覚にも今他所が手を出す理由を潰しているんだ、それこそ定石に則ってね
        そういうところも含めて興味深いし……君との関係も興味深く思っているよ

        なぁ、エオ君。実際君はどうなんだい？

        君も、勝つより『負ける理由』が欲しい手合いではないのかい？ -- 眉雪のキャスター

      • …そうね、思ったよりスペアが減らない辺りから見ても随分穏健派が多いなとは思ってたわ
        （よもや話し合いを求めてきたり、自分が救われる方法を探してやる、と申し出てきたり）
        （ましてやマスター達を集めて食事会など開くような人間達がこれほど多いのは予想外で）
        （積極的に戦うつもりは無かったが、これほど何事も無くここまで生存出来るとは実に穏やかこの上ない）
        （…言い訳になるが、もっと熾烈なまさに戦争の名に相応しい熾烈さであったなら、自分はもっとやりやすかっただろう。）

        …………随分色々考えてるじゃない、とんだ昼行灯ね
        私は本気で聖杯を狙っているし、そのためなら何でもする……と言いたいけど
        この有り様だとそう強くも言えないのがムカつくわ
        （湧き上がった苛立ちを押し込むように、すっかり溶けかけたパフェを口に放り込んで）

        理由なんてあってもなくても負けなんて許されないのよ、今までの私のためにもこれからの私のためにも
        随分人を観察して推測するのがお上手ね、以前はさぞ有名な思想家か何かかしら？
        やっぱり貴方が一番油断ならない相手だわ -- エオ
      • 色々？　とんでもない
        ちょっと真面目に考えれば誰でも分かることさ、君にだって分かっている
        現にだからこそ……君はこうやって私と食事をしているのじゃないのかい？
        今、この局面、この盤面においては……情報を集めることが肝要だと分かっているからこそ私からこんなにも見事に『情報』を引き出している
        （チーズケーキの最後の一切れを口に放り込み、紅茶で口を湿らせながらゆっくりと続ける）
        私にとっても、君がいまのところは最も油断ならず、そして最も好ましい相手の1人だね

        だからこそ、ついつい楽しくて色々喋ってしまう

        なぁ、エオ君
        何でもする覚悟が君にはあるのだよな？
        なら……少し頼まれてはみてくれないかい？ -- 眉雪のキャスター

      • （更にもう一口、と開いた口をそのままに視線を老人へ）
        （先の話を考えるに、どう考えても聞いた時点で自分の負けのようにも思える。）
        （そもそも、同じ卓についてこうして話し込んでしまった時点で負けか）
        （ここに持ってくることが狙いだとしたなら本当に狸だ、と苦々しい表情をつくり）

        …話だけは聞いてあげるわ
        承諾するかどうかは別問題よ -- エオ
      • それは嬉しいな
        聞いてくれるのなら……きっと承諾してくれると思ったからね
        （いうなり、老人は懐からメモ張を取り出し、エオに差し出す）
        （中に書かれているのは……）

        今、私が握っている情報の全てだ

        真面目にやるつもりがあるのなら……きっと有効活用してくれると私は信じているよ
        そう、例えば……敵がよく出没するポイントや拠点……特にマスターの情報をね？
        君は身体のスペアがあるのだろう
        なら、本当に手段を選ばないのなら……いいたい事はわかるね？
        （にやにやと、微笑む。それはもう楽しそうに） -- 眉雪のキャスター

      • この…
        （タヌキジジイ、と叫びそうになるのを何とか堪えた。）
        （それは余計に相手を喜ばせるだけ…いや、今も十分に喜ばせている。）
        （こちらの誘導に乗るようにしてある程度の情報を与えながら、のらりくらりと退路を塞がれた。）
        （情報が嘘かもしれない…、しかし嘘だとしても自分には十分な替えの体が残っている。）
        （命を無駄に出来る、ということは罠に嵌められたとしても然程の問題ではないということだ。） （敵から情けを受けれるか、というような言い訳は真剣に優勝を狙っていると言った手前言えない。）

        （そして受け取ってしまえば、動かざるをえない）
        （少し前の自分なら、ありがたく受け取って有効活用していたかもしれない）
        （しかし少し前の自分にこのサーヴァントがこうして情報を渡していたか、と考えると…そうは思えない）

        （石になったように動かない右手を、ぎこちなく上げて）

        …手段を選ばない、というならそうね…
        まず貴方を動き辛くすることが先決かな、と思えてきた

        （上がった右手に握られているのは、綺麗に磨かれた銀のバターナイフ）
        （一緒に運ばれてきたホットケーキはすっかり冷めてしまっている。）

        （不意に少女が勢い良くテーブルへと突っ伏した、乗りに乗った皿達が押し合いへし合い、やかましい音を立てる。）

        （すわ、何事か…と周囲の視線が集まり、やがてざわめきが広がっていく）

        （突っ伏した少女の下、テーブルクロスに毒々しい程に赤い染みが広がっていった。）
        （ゆるりと顔を上げた少女の首から生えて光るバターナイフ。）
        （自分で自分の首を刺した、と理解できるのは対面している人物か…あるいはやり取りを注目していたものぐらいだろう）

        貴方残念ね、もうここのレタスサンド食べれないかも
        （負け惜しみじみて言ったつもりだが、言葉になったかどうか。）
        （傷口から呼吸音を漏らしながら、震える脚で椅子を立つ。「どうして？」と言いたげな無垢な少女の表情を作って）
        （２，３歩後ずさり右手でバターナイフを引き抜こうとして、しかし思った以上に深く刺さったソレは抜けず）
        （半端に開いた隙間から、大量の血液を噴き出して石畳を汚しながら…その場に倒れこんだ。）
        （倒れこんでなお、血の勢いは止まらず少女の体の震えは一層大きくなりそう遠くないうちにその生命が失われるという ことが素人目にもわかる） -- エオ
      • （何か言い掛けてやめた幼女をみてほくそ笑み、残りのレタスサンドを食べる）
        （既に詰みだ。聡明なこの少女にはそれが分かっている）
        （だからこそ、あとは結果を待つだけ）
        （どのような意図であれ「YES」と答える少女の返答を待つのみ）

        （そのはずだった）
        （しかし）

        （少女が取った選択肢は……YESでもNOでもない）

        （意味深な言葉を呟くと同時に、決して鋭利とはいえないはずのバターナイフを……速度だけを乗せて無理矢理突き刺す暴挙）
        （血の泡を吹き出しながらも口元だけでこちらを嘲り、見事に作られた表情で悲劇を演出する）

        （やられた。止める暇もなかった）

        まさか文字通りテーブルごとひっくり返すとはね……見事だ

        （少女の返り血を浴びて呟きながらも、咄嗟にしゃがみこみながらテーブルを転がして遮蔽をとり、顔を隠しつつ自らの主にテレパシー……サーヴァントが標準装備している魔力路の接続……それを利用して連絡を取る）
        （緊急事態である）

        主、すまん、しくじった

        『「槍」をくれ』

        -- 眉雪のキャスター


      • （カフェから遠い地で、サーヴァントからのコード要請が来て、魔術師は読んでいた本から顔を上げる）
        嗚呼。そうか。
        それほどの相手が、もういたか。

        （魔術師は自分の工房で従者の危機を知り、薄く笑みを零した）
        （読んでいた本を閉じ、立ち上がり、両手を広げる）

        いいよ、お前が望むなら。ここが切り時かもしれんからな。
        だから俺は、躊躇わず、俺達が切れるカードの３枚の内の一枚を切ってやろう。
        状況が切迫しているならお前の前にいる人間が誰か、状況がどうかなんて問わないが、後でちゃんと聞かせろよ、キャスター。

        俺は、そういう面白いイレギュラーは、大歓迎だからさ。

        （言いながら）
        （右手を持ち上げ、自分の顔を覆った）

        ……令呪を以って我が傀儡に命ず。――キャスター。

        （令呪が、光り輝く）
        （いつか切るはずだった切り札を、今ここで、ここでこそ使う）
        （それだけのことを必要とする状況が、嬉しくて、嬉しくて、仕方がないといった喜悦を顔に滲ませながら、創作者は笑声と共に言う）

        ――　一時的に、『ランサー』として顕現せよ。

        （三画ある内の令呪の一画が落ち、魔力が従者へと流れこむ――） -- リジェン
      • （遥か遠方。ここからいい加減離れたアジトから流れこむ令呪の魔力……深紅に可視化されたそれがキャスターの内側から染み出し、身を包みこんだ次の刹那）

        後で嫌と言うほど聞かせてやるわ、楽しみにしていろ主
        私は今、『楽しませて』もらう

        （皮肉気に微笑み、テーブルの影から立ち上がる影は……紅瞳を持った、黒髪の青年）
        （悠々と笑う眉雪の老人の姿ではない。爛々と輝く紅瞳を持ち、濡羽色の髪を振るその青年の顔は生気に満ち、皺一つすらない）
        （ランサーとして顕現したのだから当然だ。文字通りそのクラスの『全盛期』の姿として、それは現れたのだ）
        （意識は朦朧としているだろうが、まだ僅かに息があるエオに近づき、その小さな身体を足蹴にする）
        （こちらを振り向けないように）
        ……見事だったよ、お陰で逃げる暇すらなかった
        逃げれば私が下手人と伝えるようなものだ……そこまで読んで『ああ』した君は本当に恐ろしい
        故に……切り札を切らせて貰ったよ
        敬意をもってね
        （いうなり、右手を振りぬけば、そこに握られていたのは……ただの鉄の剣）
        （何の変哲もない）

        『一振りの鉄の剣(アイゼン)』

        はははははははは！！！　見事だ、見事だよエオ君！！！
        故に私は！！　この『ランサー』は！！
        畏敬を！　敬意を！　そして礼儀をもって……ここで殺意の何たるかをみせよう
        （大笑し、大声でそういえば、すでに往来の目はこちらに向いている）
        （これでいい。これでもうすでに）

        （『少女と共にいた老人が犯人ではないこと』が周囲に伝わった）

        （深く、深く、口元を吊り上げてエオの髪を掴み、身を屈め、耳元で囁く）

        デモンストレーションが必要だ
        悪いが、楽に死なせてやれんぞ

        （いうなり、まずは鉄剣を首にあてがい）
        （躊躇無く、それでいて浅く引く）
        （首に刺さっていたバターナイフが宙を舞い、血の軌跡が引かれ、傷口が広がる）
        （一瞬、無理矢理気道が確保されるが、いずれにせよ致命傷だ。苦しむ時間が少し長くなっただけである)
        （だが、その少しが大事なのだ）

        どうだね、君にとって都合がいい……熾烈で、凄惨で、苛烈な戦争になったろう？
        もっと喜ぶといい

        （続けて、指を一本ずつ、剣先をつきいれて潰しながら『縦』に切っていく）
        （切り飛ばしてはそれで終わりだ。なら増やしてやったほうがよりおぞましい体の変化をその身で感じられる）
        （顔は傷つけない）
        （『エオ』という少女の顔がより鮮明にわかったほうがいい）
        （そうすれば、……『死』が知れた彼女だって動きづらくなる）
        （そう打算を『ランサー』はうちながら、次はエオの胸元に剣先を向け……こつりと当たる違和感に眉を顰める）
        （面倒ではあったが、剣を一振りし、衣服をはだけさせれば……丁度鎖骨の下あたりに埋まっているのは、如何にも意味ありげな大きな赤い石）
        （個人を特定できる特徴なら、尚更傷つけないほうがいいだろうと判断したランサーは、その石を避け、機械的に胸下から股まで剣閃を走らせる）
        （小さな幼女の身体が衝撃で痙攣し、激痛に反応するように背をくねらせれば、口元から血の泡を吐きながら……『中身』を露にする）
        （皮を剥いだだけだ。『中身』には一切傷をつけていない）

        思ったより綺麗じゃないか、『腹黒』だと思っていたんだが……こっちも見事なものだね

        （正中線を沿うように現れた鮮血の割れ目の奥には、未だ働きを失って居ない『中身』の数々が見え隠れしている）
        （次は少し引きずりだすか。そうまたなんでもないようにおもった次の刹那）
        ん？
        （数人の自警団と思しき男達が取り押さえるために乱入してくる）
        （幼女の凄惨な解体ショーを目の当たりにして男たちは小さな悲鳴をあげるが、それでも『ランサー』は笑うばかり）
        （笑ったまま、エオの身体に突き刺していた刃……粘性の高い血の滴でまだ繋がったままのそれを引き抜き）
        ああ……間が悪いねぇ、君達
        今は時間がない。祈る間も与えてはやれんよ
        （躊躇無く、自警団の男達に剣先を突きいれていく）
        （脚を抉り、腕を潰し、それでも殺しはしない）
        （『目撃者』となってもらう必要があるためできるだけ苦痛を与えたまま、生かす）
        （そうなると自然出来上がるのは鉄剣による刺突で歪に四肢を切り落とされた達磨の集団である）
        （幼女の開きの回りに自警団『だった』ものたちが悶絶し、悲鳴をあげながら転がる有様となった）
        この『ランサー』をとめるには、少しばかり荷が重かったようだね
        そこで見ていたまえ
        （つづけて、エオが息絶えるまでの短い間、細かい解体を続ける）
        （万一でも立ち上がらぬように膝に剣先をねじこんで潰し、開放骨折させ、）
        （どれだけ機能しているのかもわからない『中身』の数々を広げ、）
        （最後の仕上げに四肢を切り飛ばしてお供と『御揃い』にして出来上がり）
        （そして、ついでとばかりに投げ槍を魔力によって実体化させ……従業員達が避難している店に向かって放り投げる）
        （爆音を伴って店は崩落し、少なくとも今日、『老人』を間近で見た目撃者達が残らず消えた）
        （返り血を浴び、酸鼻な光景をそのまま味わうように目を細めてから……『ランサー』は手についた血を舐め取り、笑う）

        まぁ、こんなところかね
        ここのレタスサンドは確かにもう食えなくなってしまったな

        （野次馬と逃げ惑う人々で往来はごった返し、後続の自警組織が現れた頃……丁度こときれたエオをみて、ランサーは小さく微笑んだ）

        ま、いずれにせよだ……『ご協力』ありがとう、エオ君
        これで、君を殺したのはどこぞの老人ではなく……この『ランサー』となった

        （そう呟くと同時に、後続の自警組織にむかって駆け出し、逃走経路上にいる者たちの脚や腕に剣先を突き込みながら……走りぬける……その青年の相貌を晒したまま、一目散に）

        （大勢の死者を出した謎の通り魔殺人事件）
        （その下手人は『ランサー』を名乗る黒髪紅瞳の青年ということになり……指名手配にまで掛けられる事になったが……）
        （その捜査線上に……『キャスター』と名乗る、老人の名がでることは、ついに一度もなかったという） -- 黒髪紅瞳のランサー
  • あっ！！ エオ！いいところで会った！ちょっとこれ持つの手伝ってくれ！
    (街中で声を掛けるのは、見知った男に良くにた少年、声も幼く 背も低い)
    (両手に大きな紙袋下げて、重そうに歩いているのは縮んだ史楼) -- 史楼
    • （知らぬ少年に話しかけられ、訝しげに眉間に皺を寄せる。随分なれなれしいな…と同時に、誰かに似てるな…と考え）
      …私と貴方どこかであったことあったかしら？助けを求めるのは構わないけど随分気安くない？
      （紙袋をよこせ、と右手を出して）……お兄さんとかいる？ -- エオ
      • いやいやいや！ちょっとまてよ！わかるだろ！？確かにがっつり縮んだけどさ！オレだよオレ！！史楼！
        (冷たい反応が返ってきて一瞬 冷や汗が垂れるが、でも荷物は持ってくれるんだな、と安堵して紙袋を渡す)
        この姿だと能力が使えなくてさ、困ってたんだよ… マジ助かるよ、サンキュー！ -- 史楼
      • は…？
        （まじまじと、視線の合わせやすくなった顔を見る。言われてみれば確かに面影があるような　ないような…）
        …‥なんか凄い自然にこの姿だと〜とか言ってるけど、貴方ってそっちが元の姿なの…なんかの魔法…？
        っていうか　そうやすやすと敵に自分の情報を公開するなってアレほど言ってるでしょ蹴るわよ！（とはいえ今片足上げるとそのままひっくり返りそうだ、大人しく荷物を抱えて）
        サーヴァントにでもいかせれば良いのに買い出しだなんて　セイバーだなんて強い当たりサーヴァントじゃない　単独行動させても多少は平気でしょ -- エオ
      • エオじゃなかったら言わねーよ！なんつーか元の姿じゃねーんだけど… 熱量使い切ると反動で縮んじゃうんだよ
        まあ幸い… エオが気がつかなかったくらいだから他のヤツにもバレないって、大丈夫大丈夫。

        それにしても、縮んだ方がなんつーか、エオとは喋りやすくていいな、目線的に。まだだいぶオレの方がでかいけどな！
        (努めて、明るく話題を振りながら、歩く。) -- 史楼
      • それだけ信頼してもらえていると寝首をかきやすくて有難いわ（わかりにくくはあるが、恐らく冗談であろう平坦な口調で）

        そうね、私も声が近いと聞き取りやすくて良いわ…みんなちょっと大きすぎるんじゃない？人間みんな同じようにカロリー消費したら縮んでしまえば良いのに
        （明るい声を聞きながら、果たして彼が声の通りに明るい心持ちなのか…と考える）
        …この間の、カレー美味しかったわ　ありがとう
        また皆でああいう風に集まれたら良いなって思うの、私すきやき…とか食べてみたい -- エオ
      • (ぴたりと一瞬、歩みを止めるが 何事も無かったかのようにまた歩き出して)
        ああ、そうだな… またあんな風に集まって、食卓を囲めたら幸せだろうな。
        すき焼きか、いいね。聞いた話だと場所によって、牛の肉だったり鳥の肉だったりするらしいぜ。
        (オレはマユルさんの話題が出るのを恐れて、少しだけ話を逸らしてしまった)

        なあ、おかしなことを言うけどさ、エオ… お前 何かあったらすぐに言えよ
        どこに居ても駆けつけるし、絶対力になるからさ…
        (破けそうなくらいに、紙袋を握り締めるが 今はその力も無く。) -- 史楼
      • ……鳥の肉はあんまりワクワク感がないわね…牛が良いわ、高いやつ
        たまにお肉屋さんとかいくと誰が買うの？みたいな値段のやつ売ってるじゃない、人のお金であれを食べたいわ…
        （空々しい返答をしながら、見上げるようにして　しかし史楼が縮んでいた為、想定した場所に顔がなかったのでやや視点を下げて）

        ……力になるって、具体的に何をしてくれるの？
        貴方お人好しだし隙が多いし、ただでさえ危ないんだから人のことに首突っ込む暇あったら自分のことだけ考えなさいよ
        みんなそうしてる
        …貴方って嘘が下手よね、もう皆で集まることなんて出来ないんでしょ
        知ってる、あんなの儚い夢だったことも全部知ってるわ
        いつか覚める夢で、遅いか早いかの違いだったのよ -- エオ
      • 自分のことを考えたら、自動的にお前等のことも考えなきゃいけねーんだよオレは！
        具体的にねえ… それこそ荷物を持ったり…！あっいや今は持って貰ってるけどさ。
        相談に乗ったり…！…襲われてる時に、助けたり。そりゃできることは多くねえけどさ…

        あとな…！夢なんかじゃねーよ… あの時、あの空間、あの幸せは確かにあった…
        確かにもう、同じようにはできないかもしれないけど…
        だからって、目が覚めれば無くなってしまうような そんな夢じゃなかった

        それに、思い出も幸せも、上書きするもんじゃなくて 増やしてくもんだろ
        だからさ、やろうぜ すき焼き、同じにならなくても。
        明日だっていいし、この戦争が終わって… 平和になった時でもさ。 -- 史楼
      • 私は
        …私は自分の願いを叶えたい、貴方だって叶えたい願いがあるでしょ
        （言葉を最後まで聞かずに、断ち切るように声を上げる）
        貴方の中に天秤があるとして、片方に貴方の願いを乗せて…もう片方に、その幸せな空間を乗せてどっちが傾く？
        何れ選ばなきゃいけなくなった時、そんな虚しい幸せ集めて傷つくのは自分じゃないの？
        （むしろ自分自身を窘めるように言葉を続ける。既に自分は傷ついている）
        （固いと思っていた決心はしかし、砂の上に立っていたらしいことに気付き始めている。）
        まだ私貴方を殺せるわ、聖杯をつかめる時になったら…きっと迷うかもしれないけど、まだ殺せる
        貴方その時黙って殺されてくれるの？私の願いの…幸せの為に自分の願いを犠牲にしてくれる？ -- エオ
      • (目的地はもう近い、エオを追い越すようにズイと前にでて、立ちはだかるが 急いだわけではなく)
        いーーや！オレはお前の為にもぜーーーったい殺されてやらねーよ！つーか死にたくねーし！
        お前の願いを叶える為に、お前が幸せになる為なら、オレは手伝ってやるよ！でも殺されるのは絶対やだね！
        だって… そんなの絶対 お前は不幸になるだろ…ッッ！！
        (エオが何か言おうとしても、今度は史楼が言葉をさえぎって)
        エオ・ルレイアが聖杯を得るために、オレを殺すっていうなら、オレは絶対に負けられねえ！
        絶対に、お前は不幸せになんかしてたまるかよ！
        (だんだん、と子供のように地面を踏みつけた) -- 史楼
      • ………貴方メチャクチャな事言ってる。
        （ジト目で呆れたように地団駄踏む史楼を見て、ため息をつく）
        ならないわ、幸せになるために聖杯を望んでいるんだもの　不幸になんてならない
        そりゃ…確かに、その時は辛いかもしれないけど聖杯さえ手に入れば私は幸せになれるの

        …貴方が大人しく棄権してくれれば、何も問題ないんだけれどそういうわけにも行かないんでしょう
        （手に持った荷物を史楼に押し付ける、重量感）

        でも貴方はそれで良いんだと思う
        そのままだとダメだけど、そのままで良いうちはそのままで良いと思う
        それで救われる人も…多少はいるんじゃない

        （私は違うから勘違いしないで、と念押しして家まであと少し…というところで荷運びを放棄し少女はさっさと人混みに紛れていってしまった） -- エオ
      • あ〜〜〜っっもう！！わからず屋がよぉ〜〜！！
        (ムチャクチャなことを言ったのにも関わらず、伝わらなかったことにムシャクシャとして)
        (そんなことをボヤきながら、地面に荷物を落とし、頭を掻き毟る。色々と耐え切れなかったのだ。)
        (散らばった荷物と、現状を省みて 大きなため息を一つだけつくことを自分に許して) はぁ〜〜〜っ
        (エオが置いていった自分の荷物と、落とした荷物を拾い上げ、ふらふらと どうにか帰っていったのだった。) -- 史楼
  • （街中でエオを見かけて話しかけて）よう、エオ。（無表情にただ事実を伝えると言う感じの語調で）
    マユルが死んだよ。オレは聖杯戦争を降りる。……みんなですき焼き食べるって約束、果たせなくて悪かったな。
    （それじゃと手を挙げて立ち去ろうとして） -- アドニス
    • （淡々とただ、事実だけを告げて立ち去ろうとする少年にしばしぽかんと口を開けて）
      （それを喜ぶべきだというのに、両手を上げて喜べない自分に戸惑い一瞬動きが遅れる、しかしその背中が消える前にようやく我に返った）
      待ちなさいよ！
      …どこいくのよ、どこ帰るつもりなの？人との約束勝手に破って…貴方どこに帰るのよ…！ -- エオ
      • （呼び止められると振り返り、空虚な―――凡そ感情というものが見えない顔で喋り出す）
        帰る場所なんてない。オレの帰る場所はマユルがいてくれたからあったようなもんだ。
        それを失ったんだ……どうしていいのかなんて、オレにもわかんねぇよ。 -- アドニス
      • 失ったって…（サーヴァントを失ったマスター…というよりは、家族を失ったその表情に二の句が告げなくなる）
        （しかしこのまま見送ってしまえば本当に、二度と会えないのだろうと）
        （あの日はしゃいだ時の風景が頭の片隅でチラついて）…そんなの、私にだってわかんないけど…！
        あの頭あったかい史楼とか…寄る辺なんていくらでもあるじゃない…　どうして良いかわからないならあのお人好しでも利用してやればいいでしょ…！
        私の家……は家とも呼べないからアレだけど…とにかく…やめなさいよそんな表情… -- エオ
      • ……ああ、そうだな………こんな顔に張り付いたような表情、マユルは絶対叱るぜ…
        （エオの隣で空を見上げて）でも、わからない。マユルはオレのせいで死んでしまった。
        どんな顔をすればいいのか、わかんねぇよ……史楼にこれ以上迷惑はかけられない。お前にもだ。 -- アドニス
      • 迷惑だなんて誰が言ったの？史楼？それとも私？私そんなこと言った覚え無いわ
        私希望を見せておいてそれを奪われる方がよっぽど迷惑よ、また皆で集まるって言ったじゃない　私…
        （楽しみにしていた…と口に出しかけ、なんて馬鹿げたことをと言葉を止めた。こうなることは覚悟していた筈なのにどうしていまさら泣き言を）
        ……そうやってそんな顔でどっか言っちゃったら、あの甘い男泣くわよ　間違いなく
        そしたらその後ろから私がアイツの背中刺すんだから、良いの？！ -- エオ
      • ………エオ。（くしゃり、と表情を歪めると涙が滲んで）
        お前、良い奴だな……………（そう言うと近くのベンチに座って）
        （道行く人々を眺める）…なんかの本で読んだよ。幸せはほんの数種類しかないが、不幸は人それぞれでたくさん種類があるって。
        お前にはお前の悲しみがあるんだろう？　もう……オレなんかに構うな。大切な人を自分のせいで死なせた、オレなんかには。 -- アドニス
      • 命令なんてしないでよ、私は私の意志で貴方に構うのよ！
        （言いたいと思う言葉は、喉のほんのすぐそこまで出かかってしかし口に出来ない）
        （「聖杯と向かい合うための姿勢」だなんて偉そうに自分が吐いた言葉が詰まって、上手く舌が回らない）
        （理屈と感情の間に溜まったものを上手く発露出来なくて、地団駄踏むようにして）…なんでよ！
        私は、私はそうじゃないけど…でもきっと史楼にとっては貴方って大切な人よ、友達とか…そういうのでしょ…！私だってちょっとは大事だし…
        そんな顔で大切な思い出まで殺すようなことしないでよ…せめて貴方を大事だと思う誰かに救われてよ… -- エオ
      • ……史楼は友達だ……お前も、話していて楽しかったよ……
        （ベンチに座ったまま）…今のオレは不誠実だ……お前にも、史楼にも…
        友達に何か応えることもせず、一方的に立ち去ろうとしている………
        でもわからないんだ。マユルが何で最後に笑ったのか。今でも夢に見る……オレを助けた瞬間に見せたマユルの笑顔を。
        そして……（涙が地面に落ちた）マユルの表情から力が抜けた…マユルの抜け殻が忘れられないんだよ…… -- アドニス
      • （自分には何の言葉もかけることが出来ない、自分には彼に慰めの言葉を吐く資格が無い）
        （踏み躙ってでも幸せになる、と吐いたこの口で、どうして彼に慰めの言葉を掛けることが出来るだろう）
        （自分の吐いた言葉がいまさら詰まって窒息しそうで、金魚のように口をパクパクさせて）
        （自分も泣いてしまいそうなのに、涙が出ない）
        ……馬鹿げてるかもしれないけど、私何度も死んだことあるわ
        その時笑って死ぬのは、次の私に何かを「託す」時よ　きっと次の私が成し遂げてくれるって信じてるから笑って死ぬの
        だからきっと…貴方のサーヴァント…じゃない、マユルもきっと貴方を信じてる

        無駄にしないであげてよ…　マユルの思いも…他の誰かが貴方を大事にする気持ちも…
        私には貴方を止める権利が無い、貴方のことを心配する権利だってない　でも他の人にはあるから…だからお願いだから、会ってあげて
        ………今とてもつらくてきっとこれが悲しい気持ちなのに、涙が出ないの　私は貴方が心配よ
        それは本当になのに貴方の為に泣けないの　…だから、貴方の為に怒ったり泣いたりしてくれる人に私の代わりに泣いて貰って… -- エオ
      • エオが………？　何度も、死…………（顔を上げて少女の顔を見る）
        マユルも……オレのことを信じているから、笑って死んだのか？　そんなの…そんなこと…
        うっ……（少女の言葉を聞くと、ベンチに座ったまま声を殺して泣き始めた）
        （涙が出てくる間は、自分は死んでいない。そう実感しながら、オレは泣いた）
        （しばらくして、立ち上がる）…悪かったな、エオ……お前の意思を無駄にはしない。
        （手の甲で目元を擦って涙を拭い）オレは聖杯戦争に参加する資格を失った。多分、もうお前と会うこともないと思う。
        それでも……オレは言うよ…（弱々しくだが、笑って）またな、エオ。いつか、どこかで。
        （背を向けると雑踏の中へと消えていく）
        （少年の魂は、確かに救われたのに。残った涙の跡はどこまでも悲しい） -- アドニス
  • （午前中、まだ昼前に。その姿を見つけて声をかけた。どことなく避けざる負えなかった心ではなく）
    （その姿を見て、こちらから歩み寄って声をかけた……2人で）
    少し、話したい -- ブレイズ
    • （声をかけたマスターの傍らに立ち、エオの姿をじっと見つめる）
      （以前のような迷いで曇った瞳はもうそこにはなく。ただ真っ直ぐに、エオを見つめるだけ）

      …別に戦おうとか、どうこうしようとか。そんなんじゃないからさ。取りあえず…改めて話がしたいだけだよ -- ライダー
      • （二人の様子をじっと見比べながら、なるほど以前あったときと状況が変わったらしい…と悟り頷く）
        あなた達に戦う気がないというのなら、私も戦う理由はないわね
        ここでつったって立ち話というのも何だし、どこかで座って話しましょう
        （貴方のマスターがお金を出してくれるんでしょう？と手頃なカフェテリアを探して歩き出す） -- エオ
      • （頷き、エオについて行き……カフェテリアにつけば席について）
        （注文も適当に済ませると告げた）
        改めて言おう、エオ。自由になることを願うのは間違っていない。でも君が、自分の命だけじゃない。
        誰かの命を犠牲にして戦うのなら俺はそれを止める。例え作られた命でも、その命は生きている。
        例え仮初でも……生きているなら。他の人を犠牲にして生きて、生き続けて本当の自由。未来が手に入るわけがない。
        そこに待っているのは自由じゃない、新たな束縛だ。心を縛る闇が出来上がるだけだ…… -- ブレイズ
      • 私にはまだ願いなんてない。願いを持つ貴方の前に立ちふさがるなんて、烏滸がましい、って貴方は言うかもしれない
        でもね。私思ったの。……私とあなたは、きっと対等な所にいるんだって
        ……私も、今のこの限られた命で精いっぱい生きたいと思ってる
        聖杯戦争の中でしか生きられないっていうんなら、私と貴方の条件は対等の筈。だから…私が貴方に遠慮する必要なんてない

        （己の願いは未だ見つからず。ただ前を向き、歩みを進めるしか自分には出来ない）
        （下を向かず、未来を見る。終わりは決まっているとしても、前を向かなければ生きているなんて言えない）
        （そもそも願いなんてものは歩む先にしか無いものだ。だから―）

        私は、もう逃げない。前を向いた先に貴方が居るんなら。マスターが貴方を止めたいというのなら
        私は…マスターの為に。貴方の為に。そして何より、私自身が前に進むために―
        貴方を、止める -- ライダー
      • （チェアに腰掛けて、紅茶とケーキセットを注文する。それから一息ついて世間話を挟む間もなく言われた言葉にただ頷き）
        貴方って物語のヒーローみたいね、いうことが綺麗で真っ直ぐでキラキラしてて何一つ間違ってない、全く正しいわ
        ……でもそれって私に届かない

        お腹の空いて死にそうな人に働いて真っ当にお金を稼いでご飯を買うべきだって力説してるみたいな正しさ
        新たな束縛？心を縛る闇？そうね、そういうのもあるかもしれない
        でもそれでも構わないわ、生きてさえいればその束縛も闇すらも苦ではないと思える幸せが手に入るんですもの

        （それから、ライダーへ向き直る）
        そしてそれも分かってる、貴方が私と争うというなら私も躊躇わない
        貴方は限られた命の中で精一杯生きれば良いわ、私はその先を目指して生きるから
        貴方が満足して消えた後私は人の命を踏みにじった後悔に苛まれるでしょうけれど、それでも生きていればきっと人を愛するし友人だってつくる
        たまには喧嘩もするかもしれないけれど、人並みに温かい家庭を持つわ
        だから貴方なんかに、止められない -- エオ
      • 違う！俺はそんなことを言いたいんじゃない！お腹が空いて死にそうなら、自分のできることをして助けようと思うだろう？
        俺は君がこんな戦いをしなくても、生きれるように、手伝いたいんだ。
        人を殺せば……犠牲にすれば、それは絶対返ってくる。君が生きようとする意志と同じように
        誰かの生きようとする意志を砕いて飲めばそれは果てしない憎悪になる！
        憎悪が追って、刃を振り上げてくる未来に幸せなんて言えるのか！ -- ブレイズ
      • （熱を持ってエオを説得せんとするマスターと対照的に、エオの言葉を聞いて心中が冷えていくのが分かった）
        （この子は「生きたことがない」）
        （この子は「幸せを知らない」）
        （故に―）

        …貴方は、「生きている」ということを知らないんだね
        生きていれば。ただ自由があればそれだけで未来は全て上手く行くと思ってる
        そう思って色んな不安や恐怖から逃げてるだけなんだね

        ―生きてるだけで幸せになれるなんて、誰が保障してくれるの？
        囚われの身から自由になって、幸せになったとして。それが奪われないって、どうして貴方は言い切れるの？

        （ブレイズの真っ直ぐすぎる言葉に。そして自分の言葉に「未来への希望」だけを押し出して反論するエオを見据える）

        ―でも、仕方ないよね。貴方は「生きる幸せ」を知らないと同時にさ。「生きる不幸」も知らないんだから
        「未来にある不幸」を真っ直ぐ見つめる勇気が無いのなら、それこそこの聖杯戦争の中だけで生きてた方が…きっとあなたは幸せになれるんだろうね -- ライダー
      • なら他の聖杯参加者を全員貴方の力で幸せにしてあげて、最後に私の目の前で死んでくれる？
        聖杯を壊したいんでしょ、私がかわりにやってあげるわ
        （到底頷かれる筈もない、子どもじみた言葉を口にして運ばれてきた紅茶に口をつける）
        （彼の言葉は本当にまっすぐで輝いている、しかし少女の淀みきった沼の中には届かない）
        （沼の中で少女はひっそりと息を潜めている）

        幸せよ
        そう言い切れるだけの覚悟も無いのに、こんな血なまぐさい戦争参加するわけないじゃない

        そしてそうね、生きているということなんて知らないわ
        恐怖や不安から逃げる自由もなかったわ
        実験動物さながら産まれた瞬間考えうる限りの方法で殺されるだけの人生だったわ、今までの私
        聖杯戦争が始まって初めて、自分の脚で地面に立って生きるという選択肢を選ぶことが出来たんだもの
        貴方の言葉はもっともよ、賢いのね

        保証がないと幸せになれないの？不安や恐怖から逃げる事ができるのは幸せではないの？

        こうして紅茶をのんでケーキを食べることは幸せではないの？
        本を読むというこういは幸せでないの？日常が続くということは幸せではないの？

        貴方の幸せの基準点はきっととても高いのね、私はまだそこまで理解出来ない
        「生きる幸せ」も「生きる不幸」も知らないのならきっと私には「知る幸福」と「知る不幸」があるのね
        新しいことを知れるということは幸福ね、こんな私を哀れんでも良いわ、もはや価値はないと興味を失ってくれればなお良いわ
        私と貴方達、きっと分かり合えない、その再確認作業だったわね -- エオ
      • （同時に、いや続いて出たライダーの言葉に驚く。変化を、いや自分が伝えたことだったが）
        （彼女自身が考えてだした、見て、答えた。その言葉がある。それはうれしくあり……そして、それでも目の前の少女に響かないことを悲しく）
        それは違う。それは結局、命を犠牲にすることじゃないか。命が惜しいとか、そういうことじゃない
        犠牲の山の上に、君がいることになるということは……そんなことじゃないんだ。覚悟が無ければ表せない幸せなんて、幸せじゃない。
        憐れむことも、興味を失うことも……見捨てることもしない。
        君が君自身の幸せを諦めないように……俺も君自身の、本当の幸せを諦めない。
        今は分かり合えなくても、きっと分かり合えると信じている。君が幸せを望むなら、知るのなら……必ず
        （そして代金を少し多めに置いて、席を引きエオに言葉を残す）
        また会おう。 -- ブレイズ
      • ―保証が無くて幸せになれると思ってるから、不幸を知らない子供だね、って言ったんだよ
        貴方の境遇を憐れむつもりも、見捨てるつもりも無い。実験動物扱いなんて私だってされてるからね

        （エオの拒絶の言葉に淡々と言葉を返し、ブレイズに続いて立ち上がり背を向けて歩き出し―）

        自由な未来があるだけじゃ、何も手に入らないよ？
        貴方が望むありきたりな幸せも、家族もね
        だってそうでしょ？
        どこにでも行ける自由な未来を手に入れて、それで幸せになれるなら―

        ―どうして私は幸せになれなかったの？

        （そんな言葉を残し、ブレイズの後を小走りで追う。かつん、かつん、と義足の音を響かせながら） -- ライダー

      • そんなの、貴方が満たされることを知らない欲深かさんだったからでしょう
        欲に食われた獣が人に説教しようだなんて、100年早いんじゃない
        （捨て台詞を投げて2人を見送る）
        （その表情は平素そのもので、傷ついた様子も揺らいだ様子もない）
        （けれど濁りきった沼には確かに波紋が生じ…その波紋がどこへどう影響するのか）

        （それは今はまだ、わからない。少女は綺麗に頼んだケーキを平らげると静かにその場を去っていった。） -- エオ
  • （午後の街中、突然に降りだした雨に追われ、花屋の軒先に避難すると、そこに小さな先客がいた）
    ……ひどい、雨だな
    （無言でいるのも気まずく、何気なく声をかける） -- ラセン
    • （買い出し帰りに突然降られ、頭のてっぺんから足の先まで濡れネズミになりながらぶすくれている）
      （庭に飾るようであろう陶器で出来た小人の上に腰掛けて、やまない雨をただ眺めていたが声を掛けられれば顔をそちらへ向けた）
      どんなに技術が発達しても天気予報だけは当たらないわね、お互い不運も良いところだわ
      （見た目によらず随分ませた話し方をする少女は大きくため息を付いて）
      どうせお迎えが来るんでしょ？まあそれまで待ってれば良いじゃない、悪くないものよ降ってる雨をただ見てるのも -- エオ
      • （見た目に反して大人びた口調に、内心少しだけ驚くが、そういう子もいるだろうと理解する）
        残念だけど迎えは無いよ――一人歩きだから
        （正確には、姿を見せない従者が傍に控えているのだが、ここで言及する必要は無い）
        君は、ここで待ってるのか？
        （濡れた外套を畳みながら、問う） -- ラセン
      • （帽子から滴る水滴を鬱陶しそうに指で払いながら）
        …待ってるわよ、雨が止むのを
        迎えなんて気の利いたもの来ないもの、家族居ないし

        残念ね、もう少し早くくれば賑やかで可愛い女の子が居て貴方も退屈しなかったのでしょうけど
        （お母さんが迎えに来て一緒に帰っていったわ、とタイルに落ちて砕ける雨粒を眺めながら呟く）
        生憎、年頃の子供みたいに楽しい話が出来るタイプでもないのよね私…おすすめのスイーツの話でもする？
      • …そうか、悪いこと聞いたな
        （失敗した、と思った。てっきり両親が迎えにくるものと思い込んでいた）
        …小さい子にそこまで気を使わせるつもりは無いよ、おすすめスイーツの話ならできないことも無いけど
        馬車停留所前の喫茶店に入ったことは？
        （話題を変えた方がいいだろう、そう思った） -- ラセン
      • 別に悪いことなんて聞かれたつもりは無いけど、何？家族がいないのって悪いこと？
        （ぷいと顔を背け、濡れた髪を片手で絞り）…まあそうね、いる人からしたら居ない人なんて信じられないところあるのかしら
        羨ましい限りだわ
        （顔をそむけたまま、置物に腰掛けて浮いた足をゆらゆらさせていたが、興味のそそられる話題だったのか再び顔をそちらへ向ける）
        ……そこはまだノーチェックだったかも、美味しいの？
        （先ほどと違い、好奇心に目を輝かせながら尋ねる。この辺りは歳相応に子供らしいようだ）
      • （耳が痛い、富裕な家で不自由なく育っただけに、少女の言葉が胸に刺さる）
        （結局のところ、世間知らずなのだろう、自分は）
        ――ああ、一度レアチーズケーキを食べたが、お勧めだ
        連れの頼んだチョコレートムースも大層好評だったよ、目抜き通りのシュークリーム屋台も悪くない
        （なるべく興味をそそるように、気持ち多めに情感を込めつつ。故国にいた頃、病床の妹に外の話を聞かせてやったように）
        君の方のおすすめは？ -- ラセン
      • ふぅん、レアチーズ…フルーツソースの類はちゃんとかかってる？私、レアチーズにはベリーのソースって決めてるの
        それもたっぷりかかってるのが良いわ、チョコレートムース…それも悪くないけど
        （話を聞きながら、見た目や味を想像して小さく唇を舐める。先ほどまでの不機嫌はどこへいったのか）
        （すっかり機嫌をなおしたようで…というより、不機嫌であったことを忘れたようで）
        生クリームだけのシュークリームも悪くないけど、やっぱりカスタードと同じくらいの塩梅で入ってるのが好きね
        丁度、馬鹿に目立つ青い看板の薬屋わかるかしら　あの通りのカフェで出してるシュークリームがそんな感じでね
        でもあの店ならシュークリームよりエクレアだわ、紅茶と一緒に食べると本当に

        （美味しい、の辺りまで言ってからハッと我に返ったように動きを止める）
        （はしゃぎすぎた、咳払いをして）…貴方随分人を乗せるのが上手いのね、手馴れてるわ -- エオ
      • （当然。と答え、少女のおすすめスイーツを耳に入れる）
        へぇ、あの辺りの店には入ったことが無いな、今度行ってみるよ

        （取り繕う様子に、ふっと微かに微笑みを漏らし）
        別にそういうわけじゃないけど―――君ぐらいの歳の妹がいてね……体が弱くて外に出られないから、よく話を聞かせてやってたんだ
        （遠く彼方の空を見上げる、いつしか雨は降り止んでいて）
        …上がったな

        ひとりで―――
        （一人で帰れるか？と訪ねようとして、自分の立場を思い出す）
        （いつ何時襲われるかわからない人間が一緒にいては、かえって危険だろう） -- ラセン
      • …そう、それは……
        （ご愁傷様、というのも違うし…何と言ったものか少し悩んで）…早く元気になると良いわね、医療だって進歩してるし
        きっとそのうち治るわ
        貴方のように面倒見の良いお兄さんがいるのだから尚更、治らなかったらそれこそ神様なんて居ないじゃない
        （見上げて微笑み、丁度差し込んだ日の光に気付く）
        （座っていた置物からぴょんと飛び降りると、まだ湿っているケープを重そうに翻しながら）
        ご心配なく、見た目より私しっかりしてるわ
        貴方のように立派な家族の居ない私は一人で頑張って生きていかないといけないのよ、同情してくれて良いわ

        （冗談めかして言って笑いながら、濡れた地面を跳ねるように歩く）
        それじゃあね、また縁があったら -- エオ
      • （少女の言葉に、小さく「ありがとう」と返した）

        そうか…じゃあ、気をつけて
        （自虐的なジョークに、微妙な顔で答え）
        ああ、縁があったら、また
        （片手を挙げて、少女の背を見送る）

        「――楽しそうだったな、お前があんな顔で話すところを初めて見たぞ」
        （傍らから、姿なき騎士の声）
        …うるさい、さっさと戻るぞ
        （ふい、と顔を背け、外套を広げ羽織りながら歩き出す）
        （石畳の水たまりに、雲の合間から顔を出した陽光が反射して煌めいていた） -- ラセン
  • 　
  • 　
  • 　
  • 『お邪魔しまーーす！！』 -- 史楼
    • (オレは先日の記憶を辿りに、なんというか… 年季の入った建物へ来ていた。
      覚え違いでなければ 確かこの辺にいると思うのだが…)

      おーい、エオ居るかー？話があんだけどーー！
      (バカでかい声で呼んでみる、しかし声を張っただけでパラパラとホコリが落ちてくるこの廃屋はやっぱりダメなんじゃ…？) -- 史楼
      • （声が反響して、しかし返事は帰ってこない）
        （拠点を変えたか、はたまた欺かれたか…という辺りで、けたたましい足音が玄関へ向かって響いてきた）

        （ずんずん大きく両手を振ってやってくる、いつぞや見た小生意気な少女。少女はやってくるなり振りかぶって）
        そう何度も呼ばなくても聞こえるのよ！！！！
        （芋を投げた。）
        貴方私を陥れようとしてる？！誰か敵に見つかったらどうするの！？新しい拠点提供してくれるの！？メガネ割るわよ！？

      • (中々出てこないのをいいことに、何度も何度も大声で呼んで、自分の存在をアピールしてみるが
        現れないので、諦めて帰ろうとしたところに…)

        ぎゃあ！？

        (芋を投げつけられた。)

        (デジャブを感じる。)
        (何でこの幼児はこんなに手癖が悪いんだろう。好かれてるとは思ってないが、酷くないか？)
        イヤだってインターホンとかねえだろどうせ！？連絡手段もねーんだからしょうがなくねえか！？あとメガネはやめろッ！ -- 史楼
      • そりゃ無いわよ、無いけどないなら無いなりに…あるじゃない
        （具体的に、と突っ込まれると少女にも浮かばないので、やや目を背ける）
        （床にコロコロ落ちて転がる芋を拾い上げてポケットに仕舞う、これはこれで大事な食料だ）

        早速襲撃に来た…わけでも無いみたいだし、何？
        …ところでお兄さんサーヴァントは？まさか居ない…？またひとりで…？令呪を？丸出しで？？
        やっぱりメガネ割られたい？？？ -- エオ
      • (無いんじゃん。)

        どうしてそんな乱暴なんだよ！？
        だからメガネはやめろって！お前ら裸眼のヤツにはわかんねえかもしれねえけどさ、無いとめちゃくちゃ困るんだぞ！？

        (一通り脅しには抵抗して、息継ぎをする。)
        今度さ、オレがカレー作って、食べようっていう…そんな小さな食事会をしようと思うんだけど、来ないか？
        心配ならサーヴァントも連れてきていい。ついでに言うとオレのサーヴァントはセイバーだし、オレも陣地作成できねえから罠は無い。 -- 史楼
      • 私が投げたジャガイモでお兄さんが死ぬことはないわね、だから良いわね
        痛くなければ覚えないなら痛くしなければいけない、そうね？
        （ポケットに手を突っ込んでじゃがいもをもう一度投げるぞ？という素振りを見せつつ）

        （眉間にものすごい皺を刻んだ）
        は？
        （何を言っているのかよくわからない…という顔をして考えこんで）
        （暫く考え込んだあと、顔をあげて史楼を見て…やっぱりよくわからない、という顔をする）
        ………貴方は馬鹿なの…？
        もし私に物凄い悪意があったら一網打尽じゃないの…？そういうの考えないの…？ -- エオ

      • 悪意あんの！？やべえ… そこまでは考えてなかったな… そん時は聞かなかったことにしてくれるか…？
        (真面目な顔をして言うが、もちろん冗談で かけひきなんかでも無く、ただ会話を楽しむように言う。)

        じゃ、敵情視察のつもりでもいいからさ。どうだ？
        あ… カレーのこだわりがあるなら台所で手伝ってくれてもいいからな？そっちのほうがオレも助かるしな、ははは！

        いってええ！？

        (だから何で芋を投げる。)
        (ジャガイモ農家の人に謝れ。) -- 史楼
      • （最後、床をコロコロ転がって戻ってきた芋を拾い上げながら、表情は困惑のまま）
        …本当に意味わかんない…、脳天気にも程があるんじゃない？私達潰し合う敵同士よ

        ………手伝うかどうかは別として、ご飯は…考えておくわ

        何れ戦うかもしれないし、セイバーということなら私のサーヴァントとの相性も悪いから突破口とか見つかるかもしれないし
        …打算があって行く…かもしれないんだから、その辺勘違いしないで
        他の脳天気なマスターとは違うんだから
        （言えば言うほど、我ながら言い訳がましく聞こえる）
        （ぷいと顔をそむけながら、しかしそれもどうにも子供っぽく見えるように思え）

        （とりあえずやっぱり芋を投げた。） -- エオ
      • ああ、それでいい… よ ぎゃあ！やめろってだから！もしかしたら知らないかもしれないけど芋って硬いし痛いからな！？
        (子供らしいしぐさに、微笑みそうになるが こっち丁度油断して筋肉を弛緩させたところに芋が飛んでくる。いてえよ！)

        じゃあ、詳しい日程はまた、知らせるな！それまで元気でいろよ！
        (歳に合わぬ、子供っぽい笑顔で喜んで 帰っていった) -- 史楼
      • （それを最後まで困惑しっぱなしの顔で見送りながら）
        …何あれ、意味分かんない……
        どうする、キャスター…（などと珍しく自分のサーヴァントに意見を求め、すっかりかわいそうなことになった芋を拾ってのたのたねぐらへと戻っていった）
  • （往来の真ん中、人通りがそこそこにある町の中でエオの後ろから胸の令呪を隠そうともしない男が声を掛ける）
    ああ、いたいた、君。えっと……名前、いや、名前聞いてなかったな。
    そこの帽子を被った君だよ。聖杯参加者のさ。
    マスターなんだろ？　ちょっと話しない？　聖杯戦争のマスター同士さ？
    （周囲を急ぎ歩く人達に二人を気にする者はいないが、男はそこそこ大きな声で少女に向かって朗らかに言う） -- リジェン
    • （丸出しの令呪を見て、実に嫌なものを見る顔をする）
      （こういう真似を平気でする人間は頭がおかしいか、聖杯素人か、頭がおかしい）
      そして見るからにこの開襟男は頭がおかしい、そもそもシャツのボタンを二つしか止めていない男がまともであるはずがない。

      …貴方の言っていることは全くもって正しいし、いかにも私はマスターだけど
      レディをお茶に誘うからにはもちろん貴方がお金を支払ってくれるのよね？私ケーキが美味しいお店をしっているの
      （ケープを翻して、相手の返答を待たずに歩き出す）
      • （不意打ちに腰を折って笑い）出てるから。心の声漏れてるから。すっげえ正直者だな君。普通変人に変人って言うか？
        ああ、いいよ。ただそんなに長話にはならないかもしれないから、店までに会話が終わったらごめんな。
        その時はケーキは一人で食べて帰ってね。（もし食欲があればだけどね、と内心で思い）

        何故知ってるの？　とか言うかと思ったら意外と男らしいね。そんなに可愛いのに。
        とある情報筋にさ、君が「『願い』を持たないマスター」だって聞いてさ。少し話を聞いてみたくなったんだよ。
        その噂って、本当なのかな？（等間隔の後ろを保ちながら、少女の後頭部に向けて言う） -- リジェン
      • 良く口の回る男だわ、口の回る男って好きじゃないのよね　そういう男って詐欺師かナンパ師かどっちにしろろくなものじゃないもの
        …そう、そのとある情報筋に伝えておいて、今度はお前のマスターの財布を殺してやるって。
        （いつぞやのサーヴァントと名乗る老人を思い出し、眉間に深い皺を刻む）
        本当よ、私の目的は聖杯戦争で優勝すること…優勝すれば自動的に私の願いは叶うから別に聖杯の力なんてどうでもいいの
        …あなた達とは価値観が違うでしょうから、言っても伝わらないかもしれないけど
        （妙にこの男相手には警戒心が働く、正直に言えば苦手なタイプだ。とはいえ自分から言い出してしまった手前、逃げ出すわけにもいかない）
        （早く目的の場所につかないものか、と自然早足になる。）
      • （やはり肩を竦めて笑う。そりゃバレるよな、と内心で独りごち。――それがカマ掛けであるなら中々の女狐だなと思う）
        お手柔らかに。とはいうもののアレの財布の管理をしてるのも俺だから、少なくともアレよりは持ってるよ。
        いや？　理解出来るよ。俺も願いらしい願い持ってないからさ。目的は別のところにあるのさ。
        だからこそ、君に興味をもったんだけどね。もしかして俺と同類だったら運命の糸だなーとか思っちゃってさ。

        早速だけど聞いていいかな。一番聞きたいことなんだけど。
        その君の目的の為に、他の人の目的を潰していくことになるわけだけどさ。
        それでもその目的っていうのは達成しないといけないものなのかな？　その目的って、命より大事な物って感じ？
        （やはり軽佻浮薄にポケットに手を突っ込んだまま後ろから尋ねる。相手が早足になっても急いだりはしない）
        （遠ざかれば声を大きく尋ねればいいだけ。声が届かなくなるほど離れたら、それはそれでいいと思っていた） -- リジェン

      • すごく簡単に言うと、私は監督が居ないまま脚本を渡されて舞台に放り出された役者みたいなものよ
        劇が終わるまで自由になれないの、聖杯戦争の優勝という形でしか幕は閉じない。

        （居心地が悪い、居心地が悪い、酷く居心地が悪い）
        （この男からは嫌な匂いがする。踊らされるな、と自分自身に言い聞かせる。）
        （最初から令呪を見せて近づいてきた、その上友好的だ、そして口が回る…とくれば）
        （つまり「何か面白い物を見せてみろよ」ということだろう。）
        （そして少しでも隙があればそこを突いてくるのだ、評論家とは少し違う、観客よりももう少し近い）
        （脚本家気取り、というのが近いのだろうか…とかく、「造られた者」の自分とは相性が悪い。）

        …聖杯戦争で優勝しない限り私は自由になれないの、悪い奴もいたものでそういう風な魔法がかかってるの。
        自由の尊さってあなた達にはわからないでしょうけど
        ……貴方って見るからに自由だものね、格好もそうだし…願いがないのに聖杯戦争に参加した？
        欲もないのに命を掛けられる人間がいるものですか、貴方は一体何が見たいの？ -- エオ

      • んー、正直に言えばさ。参加したかったから参加したかったんだよ。面白そうじゃない、願いを掛けて戦うなんてさ。
        君や俺は違うかもしれないけど、人が命をかけて叶えたい希望や欲望が、参加者から優勝者を引いた数だけ潰えるんだよ？
        そんな理不尽ってないよな。そんな悲劇ってないよ。君が覚悟を持って参加しているこの舞台は、悲劇の舞台なのさ。

        （脚本を渡されて舞台に放り出された役者か、と内心で反芻する）
        （脚本も持たないまま立っているゼロという少女と引きあわせたらさぞかし戸惑うだろうなと思う。そんな酷いこと、自分はしないけれど）

        だからせめて、その脱落する人たちに、夢が潰えるだけの、希望が折れるだけの理由を、納得をとは思ってるかな。
        でも正直なところ、多分楽しいからっていうのが一番正しいのかもしれない。ごめんね、大した目的じゃなくて。

        でさ。
        （背後で、片手で顔を覆う。指の隙間から真紅の瞳で、エオの姿を覗き見る）
        一つ、更に尋ねるよ？　――そんなクソみたいな台本だったらさ、『舞台を降りたい』とは思わないの？
        配役を演じ切るだけが、君にとっての『唯一の自由』って、誰が決めたの？　君にその脚本を渡した存在をさ――君自身が殺すって方法は、絶対に、考える余地もなく、完全に無理なわけかな？ -- リジェン
      • それを一番間近で観戦したかったのかしら、悪趣味極まりないわね
        人生生きていれば楽しいことはいくつでもあるでしょうに…よっぽど前の人生に退屈していたの？

        （嫌味ったらしく言ってみるが、チクリとでも刺さる気がしない）

        …そんなの、私を造った人だわ
        そもそも私が目を覚ました時、私を作った人…と言うか国、が瓦礫の山になっていたから

        そりゃ探せば生き残りくらいはいるかもしれないけど…そんな危険な橋を渡るより、確実な方法を取るのが賢いというものでしょう？
        私、人の夢や希望を踏みにじることに然程躊躇は無いから

        望んで参加したのでしょう？踏みにじる覚悟があって参加したのなら、踏みにじられる覚悟だってあるはずだわ
        …その覚悟もなく参加したのなら、その甘さごと踏みにじられても当然だわ。

        人の願いを踏みにじるのがいや、だなんて寝言言えるその根性が私　気に入らないのよ
        （吐き捨てるように言ってから、口を噤んだ。喋りすぎだ。） -- エオ

      • 成る程、道理だ。これ以上ないほどの正論で、ぐうの音も出ないな、それは。だよね、踏み躙られる覚悟もなしにそんな都合のいい話に乗ってくる方が悪いよね。
        誰も彼もハッピーエンドを想像してんだぜ、笑うよな。願いが叶うという美談の横には、必ず願いが叶わなかったという醜談が添えてあるのにな。
        大事な人を生き返す？　どんなに努力して、どんなに願っても母親を病気で失った孤児を前に言えるかってな？
        失った物を取り戻す？　死ぬほど考えて、死ぬほどの時間費やしても取り戻せなかった百万人の前で、それを掲げてみろってな。
        その点では俺も君と同じ考えだよ。クソみたいな美談や夢物語を持ち込む奴なんか、一人残らず皆死ねばいい、って思ってるよ。

        もう一つだけ聞いていいかな。これが最後にしとくよ。
        君が優勝したらさ、本当に君って自由になるの？
        その条件って、確実に守られるものなのかな？　条件を敷いたのって、その台本を与えてくれた人じゃないのかい？
        その人達は、そのルールは、確実に君を守って、保証してくれる物なのかな？ -- リジェン


      • ……なるわよ、間違いなく。
        それだけはもう、他の何が嘘だろうと、確実に。

        （青い空を見て青いと言うように、白い雲を見て白いと言うように）
        （確信を持った表情で言い切る。とはいえ、背中を向けているのでその表情は見えないだろうが）
        -- エオ

      • （――後ろを歩く青年の表情は、何一つ変わらなかった。とはいえ、背中を向けているのでその表情は見えないだろうが）
        （だからもしそれが正面に立っていたとしても、彼女は気付けなかったかもしれない。その表情の裏に隠された感情を）

        （必死で噛み殺す。それは、純粋で、純然なる「殺意」。目の前の少女を殺し、バラし、穢し、貶めてやりたいという真っ黒な欲望）
        （倫理も論理も踏み躙り、道理も理屈も放棄して、ただその細頸を両手でへし折り、気道を塞ぎ、滅茶苦茶に蹂躙してやりたいという、獣のような欲望）
        （辱め、犯し、貫き、泣かせ、暴き、この崇高たる存在を地面に叩き落としたいという、地を這う獣しか持たないドロドロの欲を、内側で必死に噛み殺していた）
        （ポケットから手を出し、その欲に身を任せてしまえれば、どれだけ気持いいかを夢想し、小さく深呼吸をする）

        ……じゃあ、俺はそれを願ってるよ。
        君が、その願いの未来にたどり着くのをさ。

        （それは、必死に取り繕った嘘のように明るい言葉で、思わず拍子抜けするような普通の台詞だった）

        いやー……すげーわ。見た目じゃ分かんないもんだな。
        もうそろそろ店つかない？　俺結構君のこと好きになれそうだから、好きなだけ奢っちゃうよ？

        （朗らかに、笑顔で後ろから声を掛ける） -- リジェン
      • （悔しいからメニューの上から下まで頼んでやろうか、と思ったが食欲が沸かない。）
        （せっかくだから財布にチリひとつ残さない程度に破産させてやろうと思ったが、対面にこの男がいると思うとどうにもダメだ。）
        （何が好きになれそうだ、このペテン師が、と心の中でツバを吐きながら）

        ……お店の場所、忘れちゃったみたい
        残念だわ、人のお金で好きだなけ甘いものを食べれるチャンスだったのにね
        （嘘吐き同士の化かし合いはもうウンザリだ、と振り返る）
        また今度ね、怪しいお兄さん
        ……出来ればもう二度と会いたくないわ、本当に　もう二度と
        （最後の言葉だけは真面目な表情で、微笑みから逃げるように人混みに紛れ）

        （誰か覗かせるものか、と舌を出しながら去っていった） -- エオ
  • （その夜は、星の囁きが聞こえそうなほどに、煌く美しい星空の夜だった）
    （エオが眠りにつくと、そんな美しい星空の下……広大な砂漠の広がる空間の夢へと誘われた）
    （目の前には、美しい扉が一枚、砂漠に　板の様に立っていた）
    （けれど、不思議な事に……手をかけて、ドアを開けは　別の空間への入り口となっていて）
    　
    　
    （扉の向こうは――……アリスのお茶会を思わせる様な）
    （森の真ん中にはテーブルと、貴方を招く為の椅子が）
    （テーブルの上には、紅茶とスコーンやケーキが一つづつと、メインはマカロンなのか）
    （マカロンのティーパーティが用意されている）
    （その奥で、純白の衣装に身を包んだ少女が、貴方を待ちわびていたかのように座っていた） -- メルセフォーネ
    • （なにここ…、と呟いて、広がる砂漠を見渡す。敵のサーヴァントの精神攻撃か…とも思ったが）
      （しかし、この空間はなにやら妙に心が安らぐ。）
      （安らぐからこそ、危うい…ということもあるのだが。）
      （さも開けてくれ、と言わんばかりに存在しているドアを開けば……）

      （女子力溢れる空間だった。圧倒的な女子力。）
      （色とりどりのマカロン、見たことの無い上等品のテーブルクロスに、ひと目で良いものだとわかるティーカップ）
      （一体何事だ、とぽかんとして…しかしあるからには食べて良いんだろう？と歩き出そうとして）

      ……罠？

      （純真を形にしたような少女の姿に気づき、足を止めた）

      …ふっ、この程度のお菓子で私を誘い出したつもりなの…？随分美味しそうじゃない…！ -- エオ
      • （広大な砂漠は、時折優しく風が吹き、エオを撫でる）
        （よく見れば、砂の下に花と果物が所々埋もれている……優しい空間。罠は感じない）
        （もし、それが存在するとすれば、目の前の扉が怪しく佇むばかり）
        　
        （扉を開けた先は――……）
        （贅を凝らしたマカロンを中心とする、お茶菓子がテーブルの上に並べられる）
        （純白で穢れの無い、上品なクロスに銀の食器を中心に、ティーカップにも白磁に淡い水色でレース模様が描かれている）
        （淹れたての、最高級のダージリン……それもキャッスルトンのものの香りがする）
        （それは、まるで貴方を招いてお茶の準備を整えて居たかのように）
        　
        （罠かと問われれば、目の前の少女は首を左右に小さく振った）……いいえ
        罠では無いわ、もし――……不安であれば、貴方が選んだ菓子を、半分に割り　私が先にそれを口にしたのを見届けた上で
        貴方が食べる事も、構わないわ
        　
        （無垢な瞳で、自分の前に現れた、可憐な少女の瞳を見つめる）
        （癒しの力を持つせいか……その瞳を見るだけで、心が柔らかく癒される気がする）
        　
        イエスでもあり、ノーでもあるわ……
        誘い出した、というよりは……貴方と私の夢が繋がってこの空間が出来あがったのだから
        それは、私と貴方の運命の歯車が合わさった合図、因縁の繋がりの証しだから
        ……けれど、私は貴方とお話がしたいのは事実――……
        同時に、束の間であっても、願わくば……一時でも幸せな時を共有したい事も　私の願いの表れ -- メルセフォーネ
      • （暫し黙り込んだあと、おもむろにマカロンを口に放る。一口だ。）
        （むっしむっしとそれを咀嚼しながら、椅子に腰掛けると紅茶で一気に流しこむ。）
        （雰囲気に飲まれまい、とするように次のマカロンを手にとって）

        …味はまあまあじゃない

        （憎まれ口を叩くものの、食べる手が止まらない辺りに正直な感想が伺える）
        （見つめられる瞳を見つめ返すことが出来ない、否。見つめ返してはいけない、と思う）
        （本能的に、彼女を危険だと感じた。）
        （心の内側を暴かれるような危機感、暴かれるというのは少女にとって何より恐ろしい事。）

        …私とわざわざお話したい、というのだから貴方もマスターなのでしょう？
        何のお話をする？好きなスイーツのお話？好きな子のお話？
        それとも貴方のサーヴァントの自慢話でも聞いてあげようかしら？

        （ふんぞり返るように椅子に座って紅茶を飲む。）
        （絆されるな、少なくともここでは。覗きこまれてはいけない、心の内側を） -- エオ
      • （黙っているが、マカロンを口にしている様子を見ると、安心した）
        （このまま、黙って扉の外へと出られてしまう可能性もあったのだから――……）
        （聖杯の、言わば敵同士なのだから、こうして警戒されるのは可笑しくない）
        （寧ろ、憎まれ口を叩きながらも食べ続ける姿を見れば、お気に召した事が分かり、微笑んだ）
        　
        ……そう、ありがとう
        　
        （見つめ返される彼女の瞳からは、警戒心が見てとれる）
        （此方を恐れている事は、何となく伝わった）
        　
        察しが良いわね、その通り……そして、貴方で６人目のマスターでもあるわ
        生憎、私は流行のお菓子にも詳しくなく、好きな子も居ないわ……
        ……サーヴァントの自慢話は長くなりそうだから、今日の所は止めるわね？
        　
        （ふんぞり返る少女を真っすぐ見つめて、問う）
        私が貴方に尋ねたいのは……何故、貴方が聖杯に、参加しているか
        貴方は、何を望み　何を欲し　何を得たいの……？ -- メルセフォーネ
      • …長くなるほどサーヴァントと仲が良いのは良いことね
        さぞ素敵なサーヴァントなんでしょうね
        （いつまでたっても憎まれ口のやまない自分のサーヴァントを思い出して、うんざりしたように首を振る）

        （それから、問いかけに眉を顰めた）
        （実にこの空間は居心地が悪い。隠し事を許さないようなこの空気が）
        （無垢なようでいて、心の奥まで見透かそうとする目の前の少女の視線が）
        私は…
        （暫しの沈黙。何かを思い出すように、また何かを押し込めるように黙りこんで）

        …私はただ自由が欲しいだけよ
        私は聖杯の為だけに造られた人形、聖杯戦争が続く限り私に自由はない
        だから、私はこの聖杯戦争を勝ち抜いて自由な身の上になるの
        望みはそれだけ、聖杯にかける願いなんてサーヴァントにでもくれてやるわ
        （どうでもいいもの、と　そこまでいって紅茶を飲み干す。）
        （相変わらず目線は少女へと向かない。） -- エオ
      • 私もそう思うわ……今、とても幸せだと感じている
        （つい、サーヴァントの話を出されれば、頬が緩んでしまう）
        （対照的に、うんざりしたように首を振る少女は、一体どんなサーヴァントを持つのか、興味を持ちながら）
        　
        （願いの話を出せば、眉を顰められた――……きっと、それ（願い）は）
        （目の前の彼女にとって、触れられたくない事だったのでしょう）
        （暫しの沈黙を待ち、何かを思い出す様に……或いは何かを押し込めるように黙る、少女を見つめて）
        （静かに静かに切り出すのを待つ）
        　
        ……自由？
        聖杯の為だけに造られた……？　どういう事？
        続く限り自由はない？……それは、誰か貴方を作った人が願い事を欲する為に、貴方を聖杯へと参加させたのではなくて？
        ただ、純粋に　聖杯戦争の為だけに、造られたの？（それは――……どういう目的があって？）
        そして『もし』この戦いに勝ち続けたら……　その時は本当に貴方は自由になれるの……？
        　
        （切り出された話に、同じく眉を顰めて質問を返してしまう）
        （彼女が質問をされるのを、好まないのをわかりつつも）
        （幾つもの『何故？』が気になってしまう）
        （目線の向かない少女を、見つめながら……問い尋ねてしまう）
        聖杯で『自由が欲しい』と、願わないの……？ -- メルセフォーネ
      • 私は国家の一大プロジェクトとして造られた人形、だけれども国が何を願って私を作ったのかまではさっぱりだわ
        そもそも私が聖杯戦争の始まりを察知して起きた頃には、もう滅びてたしね　国。

        （自分の頭に指を当ててぐりぐりと回す）造られたからにはここも弄られてるの
        聖杯戦争が始まったら置きて、サーヴァントを呼んで、勝ち残る。
        そういう行動パターン。ここから少しでも外れると私死んでしまうのよね。
        （死んでも代わりは幾らでもあるから問題ないけど、と呟いてから苦々しい顔をする。）
        （何度死んでも問題ない、というアドバンテージを初対面のマスターに軽々しく打ち明けてしまった）

        （まあ、何れはバレることだろう、と気を取り直す。）
        そうね、聖杯戦争に優勝する…ここまでが私の規定されたパターンだから。
        リアルタイムに私を監視する人間が居ない以上、ここまでクリアすれば私は自由よ

        （幾分、落ち着いた様子でようやっと目線を合わせる。）
        （短い足を無理して組んで、余裕の出た表情を見せ）…自由は自分の手で勝ち取るものよ
        聖杯に願って手に入れた自由に何の意味があるの？
        優勝さえしてしまえば私は自由だもの、その先ダンスを習おうと詩を唄おうと、歌手としてデビューしようと自由だわ
        だから聖杯に自由なんて願わないわ、私の目的はただ優勝するだけ -- エオ
      • 国の一大プロジェクト……？（目を見開いて、驚きを隠せない）
        ……そう、国も今は……無いのね……
        　
        （指をぐりぐりと回す頭へと視線を向ける）頭も？
        そう、つまり貴方は、聖杯が始まったら起きて、勝ち残る事をプログラムされて居るという事ね？
        （話を聞きながら、洗脳か……と、感じながら）
        （その後に続く『死んでも代わりは幾らでもあるから問題ない』との言葉に胸を痛めて顔を伏せる）……誰かが死んだらその代わりなんて、本当にありはしないのに……
        （何度死んでも問題ない、という事実が……あまりにも惨すぎて、顔を両手で覆う）……酷い
        　
        ……そう
        （気を取り直す少女とは対照的に、彼女に頭を弄られてまで、定められた運命を知れば、沈んだ声で）
        聖杯に優勝する、までが規定されたパターン……か
        　
        （落ち着いた少女とは裏腹に、気分の沈んだ表情を見せる）
        ……自由は自分の手で勝ち取るもの……確かにその通りかもしれないし
        貴方が優勝すれば自由なのは、わかった……　でも
        どうしても……私にはまだ疑問が残っている
        　
        ねぇ
        ……貴方はプログラムしてあるって言ったけど、国は滅びてないんでしょ？
        もし――……貴方が負けた時に、聖杯戦争から逸脱した時に
        貴方は自由にはならないの？
        ……それとも、負けた時ってどうなるの……？
        その時は、聖杯の拘束が解けて自由では……ないの？ -- メルセフォーネ
      • 負けたら？
        負けたら次の聖杯戦争までまた眠りにつくだけよ、優勝出来るまでずっと。
        ……とはいえ、もう私を作った人は居ないわけだし次の聖杯戦争では私、完全に死んでしまいそうだけど
        （さらり、とそんなことを言うが）
        （相手の良心に傷跡を残すことを意識した、刺の生えた言葉）
        （自分の境遇が他人から見て同情に値するものだ、と理解した上で武器として使っているいやらしさ）

        （素知らぬ顔で使ってきたが、しかしこの少女に通じるものかどうか）
        ……貴方は？
        人に物を尋ねる時は自分のことも語るのがマナーではない？
        貴方は何の目的でこんな血なまぐさい争いに身を投じたの？
        （先ほどの感想からして、自分のように死んでも変わりがいるわけではないのだろう、と判断した）
        （まして、どうやら感受性も強いらしい）
        人の屍を踏みつけてでも叶えたい願いがあるのでしょう？ -- エオ
      • 負けたらまた眠りについて、優勝できるまで戦うの……？
        （顔を両手に埋めて、伏せる……あぁ、この子は本当に『優勝する為』だけに造られたのか……と）
        （もう、既に目的は分からない　けれど、その為だけにプログラムされてその道から逸れる事は出来ないのか――……）
        （言葉を失う）
        （願いを要らないという理由も、ただ『勝つのが』目的という意味も――……）
        （ただ、目の前の幼い少女に架せられた運命が、あまりにも不憫で、不憫で）
        　
        （良心に傷を残す為であれば、それはメルセフォーネには、とてもとても『効いた』）
        （彼女は、魚座……同情心や慈悲に溢れる性格が強く、感受性、情緒が人一倍強い）
        （だからこそ――……余計に）
        （もし、神が居るのなら、エオに救いを何処かで投じて欲しいと願ってしまう程に……）
        　
        （『……貴方は？』と、問われると涙を拭う）
        （与えられた対価と等しい量を、彼女へと与える番）……ええ、勿論よ
        （頷いて、涙を拭いながら話し始める）貴方からは、願いと生まれて来た理由を十分に聞いた
        私も、願いと自身の過去を語りましょう――……
        少しばかり、長くなってしまうわ……
        ゆっくり、お茶とお菓子を召し上がりながら聞いて頂戴……
        　
        （そして、始めに願いから語り出す）
        私の願いは、きっと……恐らくだけれど『幸せになりたい』という事ではないかと思うの
        願い事は定まっていないけれど、幾つか候補と悩みがあり……揺れている、というのが正しいから、無い訳じゃない
        ――……けれど、それはどれも『幸せになりたい』という心が根底にあると思う、願いだと思うの
        （ぽつり、ぽつりと語り始める――……）
        　
        一つは、私は昔の上司……『宗爛様に会いたい、また彼の手を握りたい』
        二つ目は、それと似ているけれど『過去に戻って、宗爛様が生きて居た頃、戦況が有利だった頃に戻りたい』
        三つ目は、『生きたい』……けれど、私は一人では生きていけない
        けれど、これらは矛盾する事……一つ目と二つ目の願いは『死なないと叶わない』……ここで矛盾を生んでしまっている
        （先に願い事を告げると、お茶を含んで、口を湿らし休憩する……次の過去への話に続ける為に） -- メルセフォーネ
      • （ああ、この少女はどこまでも善良なのだ）
        （カップに口を付けたまま、目を伏せる。） （人を疑うことを知らない、その姿から受ける印象そのままに無垢そのもの）
        （それが羨ましいような…妬ましいような、自分にはただ眩しすぎる。）

        （今更良心が痛むような善良さを持ち合わせているつもりはない。純であるならあるで、利用するだけだ、という腹すらあるが）
        （しかしただ純粋で愚鈍だと侮って踏み込みすぎれば逆にこちらの腹の内を覗き込まれる。）
        （悪意もなしに。…なので、踏み込まない。）
        （欲張って深追いして死ぬのは御免だ）

        …別に同情してもらう気はないわ、哀れだと思ったのなら町中で急に襲いかかったりしないでね
        私も、私のサーヴァントもそう強くないのだから

        …幸せに？
        なりたくない人間なんて居ないでしょうね、誰だって幸せになりたいわ
        ……こうして人の希望や願いや命を踏みにじってなお、幸せになりたい…というほど欲深い人間はそう多くないでしょうけれど

        （ふぅん、と鼻を鳴らす。そのなんとか、という男が彼女にとってどのような存在かは知らないが）
        （戦況が有利だった頃…というからには、戦に携わる何らかの役職についていたのだろう）

        （マカロンを口に放りながら、続きを促す。）
        （質問は多いが、しかし全てを聞いてからしても遅くはないだろう、と。） -- エオ
      • （メルセフォーネは、無垢で純真な少女だった）
        （言われた事を危うい位、そのまま鵜呑みにし、相手を信じる）
        （そして、慈悲深い性質は、聖杯のマスターとしての適性は……相応しくないかのようにも）
        （けれど、故に『敵だから』と相手を痛めつける事もなければ、思いやりがあるのだけれど）
        　
        （エオが腹の底で思う様に、もし利用する気なら簡単に利用する事も出来るだろう）
        （けれど、同時に『悪意が無いから』こそ『無垢に』笑顔でエオへと踏み込もうとするだろう）
        （魚サインの『同情する』『情緒に溢れる』という性質は『他者とくっつこうとする』性質があるから）&br: 　
        （エオの言葉に小さく首を振る）……しない、ううん　する気は無い
        私も、サーヴァントも好戦的ではないし、平和を好む性質だと思うし……何より
        私は無闇矢鱈に人の命を奪うのは好まない……生まれるのは憎しみと傷だけ。争いは醜くて嫌いだから
        （――……最も、聖杯戦争に身を投じていて、こんな甘い事を言っていても戯言にしかならないのでしょうけれど。と、付けたして）
        　
        うん、幸せになりたい
        そう、よね……皆幸せになりたいのは分かっている
        私だけじゃなくて、他の皆の願い事の根本も、付きつめれば『幸せになりたい』という事だとは分かっているわ
        それは、人によって形が違う幸せだけれど……
        　
        （ぽつり――……と、過去について話し始めた）
        『叙事詩』って、知ってる？　……昔の戦乱の時代のお話、歴史書に記録されている戦争
        私は、その時代に大爛帝国と言われる場所で、宗爛様と呼ばれる、帝の血を引く武将の一人の元で、嘗て予言をして、戦乱の世の未来を視ていたの――……時には、天気予報等をしたりして
        私はアルメナの出身だけれど、嘗てそこで捨てられて、居場所も無く途方に暮れていた所に、手を差し伸べてくれたのが宗爛様
        ……以来、私は彼に仕える様になったけれど――……私が長い間、意識不明のまま寝ている間に、有利だった戦況は一期に変わり、不利になっていた
        　
        ――……気付いた時には、周囲は味方兵の死体の山で、食べる物も無く……彼らの血肉を食して、生き伸びたわ
        私は体力も無く、到底着いていけない上に、もう負けるのは誰の目から見ても明らかで、占いをする必要は無くなった
        ……その時に、先に領地へ戻る様に言われて……離れてしまった　――……それを最後に会っては居ない
        　
        有利だった頃の、大爛帝国は豊かで、周囲の人も優しかった……今となってはもっと交流を深めておけばよかったと思う程に
        そこは、私の嘗て幸せだった記憶で、好きな人達で溢れていた……戦乱の世の中だし、悲しい事も会ったけど　それでも幸せだった
        ……あの頃に戻って、宗爛様の手を、もう一度だけでいい……握ってお礼を言いたい
        周囲の、優しかった人達の笑顔だった頃に戻りたい……けれど、過去に戻っても、同じ末路を辿るだけ
        それは望みたくないし……過去には、戻りたくない……　もし、それを叶えられるとしたら『私が死ぬ時』だけ
        　
        ……けれど、私は生きたい……でも私は一人では生きていけない
        支えてくれる人が欲しいけれど……もう、私の周りには誰も残っていない……故に願いは矛盾していてわからない
        （一通り、自分の願いと身の上を話したところで話を切り、お茶を飲む）
        もし、質問があれば……どうぞ。私も『何故？』を幾つか聞いたもの…… -- メルセフォーネ
      • （なるほど、ただの世間知らずな少女だと思っていたがなかなかどうして）
        （つまり「神子」のようなものか。と納得する。人間であるかどうかすら危うい。）
        （ちら、と小耳にはさむ程度に国の名前は聞いたことがある。）
        （しかし歴史書に記されるほど古い戦争、なにゆえ彼女が参加していたのか。）
        （思い出語りを聞きながら、人の血肉を食す…という辺りでほんの少しマカロンを口に運ぶ手を止め）
        （口に入れようとしたソレをソーサーに置く。）
        （さほど繊細なほうでは無かったが、流石にその話の最中に赤いマカロンを喜んで食べれるほど鈍感でもない。）

        じゃあ……一人では生きていけないってどういうこと？
        金銭的な問題？それとも私と同じように命を握られている？
        …それと…あなたは、側にいて支えてくれるサーヴァントを失いたくないからこの戦争を勝ち残り続けるつもり？

        これは一説だけどね、今回呼び出されたサーヴァント全ての魂で満たさないと聖杯は願望機として機能しないかもしれない
        もし貴方が勝者となったとして…貴方は自分のサーヴァントに自分の願いのためにその身を投じろ…と言えるの？
        （自分と意地の悪いことを聞いたものだ、と思う。）
        （きつく閉ざしていた蓋を、悪意なく覗きこもうとしてきた意趣返し…というわけではないが） -- エオ
      • 私が一人で生きていけないのは、簡単な話
        私の能力は、殆どを『占いや魔術』に振り分けられている――日常生活に影響が出る程に
        だから私は占いや魔術には長けていて、そうやって仕える事が出来る半面、地に足は付かず、現実世界の社会では、非常識で感性も違い過ぎ、役立たずであるの
        過剰な程の『一点特化』故の弊害……なの
        金銭的な事を言うと、碌に働く事も難しいしいわ……命は握られていないけれど、誰かに養って貰う形が好ましい
        貴方には都合の良い事を言っている様にしか聞こえないけれど……私の運命図を見ても『誰かの遺産で暮らす』のが好ましく
        また、そうする事で相手の収入も増えたり出世しやすくなる図でもあるの……
        （占いの話だし、何言ってんだコイツとしか思われないでしょうけれど――と思いながら）
        　
        ま、占いの事は置いときましょう――……今は重要じゃない
        ただ、私は『占いや魔術しか出来ない』し、それ以外の事は出来ないから、支えてくれるサーヴァントが居ないと生きていけないのもまた事実
        　
        えっ……？（驚きで、固まれば静かに震える　……それを知らなかったから）
        ……その時は――……きっと、サーヴァントに拒まれなければ……彼と一緒に居る道を選ぶわ
        私は『傍に誰かが居てくれればいい』……今、私が彼と繋がっている手を話す気は無いし、離したくない
        ある意味では『私と繋がっている、この手を決して離さないで欲しい』というのが一番の願いね……貴方と話して気付いた事だけれど
        今、それは叶っている事からも――……勝ち続けなければ、彼の手を離してしまう事に成るから　結局は勝ち続けなければならないわ
        （彼が傍に居てくれるなら、私は願いなんて、要らないわ……と首を横に振る） -- メルセフォーネ
      • （ふぅん、と頬杖を付きながら色々な言葉を飲み込む。)
        （実に都合の良いことに聞こえる。じゃあ、とかなら、とかつなげようとして、しかし止めた。）
        （少女の語る事実にわざわざ難癖をつけて、そこを突くことに一体何の意味があるのか）
        （彼女がそうだ、と語るのならきっとそうなのだろう。）
        （外から見て、上から目線のツッコミをいれることに自分が気持ちよくなる以外の意味は無い）

        つまり聖杯戦争の終結を望まない、ということ？
        ……それはある意味、全てのペアと敵対関係に回る…ということにもなりかねないけど
        （好戦的にせよ、友好的にせよ…サーヴァントと別れたくないから聖杯の獲得を望まない…というのは）
        随分と依存しているのね、サーヴァントに
        でも貴方のサーヴァントもそれを望んでいるの？サーヴァントだって聖杯を使って叶えたい願いがあるから、貴方に協力しているのではないの？
        死んでなお呼び出されて、永遠に貴方の支柱になることを本当に望んでいるの？
        ………とまあその辺りは、あなた達のペアの問題ね
        （少し突っ込みすぎたわ、と置いていたラズベリー味のマカロンを口に放る）
        とりあえず積極的に交戦するつもりはない
        けれど、引くつもりもない…というのは理解したわ
        何れ戦う日は来るでしょうけれど… -- エオ
      • （実に都合の良い事を並べているように聞こえてしまうのはわかる）
        （――……とはいえ解説の詳細を語る所で、延々と自分のホロスコープのお話を解説するだけに成るし、それはとても彼女にとって退屈だろうから）
        　
        出来れば望みたくない――……というのは正しいけれど、それは無理でしょう
        いつかは、必ず誰か１人の優勝者を決める事に成るのは分かっているから、勝ち進むしか願いをかなえる方法は無いのでしょうけれど
        ……だからと言って、正直な話をすると争い事は嫌いだし、巻き込まれたくないし……平穏に生きたいと願っているわ
        だから、自分から戦いを仕掛ける気は無いし、なるべくなら穏便に済ませたいと思っていて火種は避けたい所……
        （頷いて肯定する）ええ、依存しているわ
        ……望んでいるかはわからないし、彼の願いもわからない……それは今後の話しあい次第ね。私も無理には止められないし、そんな権利も無いもの……
        （紅茶を飲んで、ラズベリーと生クリームの挟まれたマカロンを口に運ぶ）
        貴方と戦う事に成るかは不明だけれど……
        なるべくなら戦う事に成らない事を祈りたいわ……
        （彼女の願いと、背景は理解した……私も伝え漏れは無いだろうかと思いつつ）
        他に、何か聞く事や気に成る事は……ある？ -- メルセフォーネ

      • （紅茶でマカロンを押し流し、短い足を組み替えてさて、と考える）
        そうね…とりあえずここで食べたものって現実にはフィードバックされないのよね
        それが若干勿体無いわ、せっかくこれだけ食べたというのに…
        （冗談のような本気のような表情で、隙間の目立つようになった皿を見ながら呟いて）

        私からはそれくらいよ、最後に言うとしたら…積極的に戦いを仕掛けるつもりはないけれど、戦うことになったら容赦しない…
        ぐらいかしら
        私もね、然程戦闘能力がある方ではないわ
        …だけど、あなた達の願いを踏み躙ってでも自分の願いを叶えたい…という覚悟だけは負けないから

        （以上よ、と空になったカップを置いて椅子を立つ） -- エオ
      • ……そうね、ここにあるものは全て夢だから……
        そう？　……不思議ね。女の子って食べ過ぎると気にするのに……（そういうのはないの？と聞きたそうな眼）
        　
        ん……了解よ、私もなるべく戦いは避けたいけれど……戦う事になる時はサーヴァントを信じているわ
        ……踏みにじってでも、自分の願いを叶えたい覚悟がある、強さは羨ましいわ……（苦笑する）
        （揺れる、自身の芯の弱さに自嘲するかのように……）
        また、ね――……いずれ、現実世界でも会う事になるでしょうから――……
        （席を立つエオへと、手を振って見送る――……）
        　
        （気付いた頃には、そんな夢を見た事をはっきりと記憶に残しながら……朝日が差して目を覚ます頃でしょう） -- メルセフォーネ
  • 　
  • 　
  • 　
    • 夕刻
      • （そもそも言い争いの切っ掛けは何だったのか）
        （仮にもサーヴァントでありながら、マスターを小馬鹿にするような態度だったか）
        （マスターの頭を自分の肘掛けか何かと勘違いしているところだったか）
        （ショートケーキを頼んだらいの一番に苺だけかっさらっていかれた事だったか）
        （より分けてみれば些細な事ではあったが、塵が積もって山になりついに爆発した、というった所だろう）

      • （自らのサーヴァント…といっても、何も知らないものから見たら妙に小奇麗な顔をした少年であるが）
        （…に、きゃんきゃん子犬めいた罵声を飛ばすと、すっかり憤慨した様子で歩き出す）
        （ヒステリックな様子のマスターに呆れながら後を追おうとするサーヴァントへキッと視線を向けるとついてこないで！と威嚇し）

      • 良い！？今の私はとても頭に血がのぼっているの
        これ以上私のいうことを聞かないなら令呪をつかうことも吝かじゃないわ！
        頭を冷やしてくるから、その間に貴方は私に言うべき謝罪の言葉を考えておきなさいよね！

      • （白いケープを翻し、肩をいからせながら再び歩き出す）
        （勢い良く言って歩き出したは良いものの、どこへ行くかなどさっぱり決めては居ない）
        （今だ怒り冷めやらぬ、といった表情のまま迷いこんだ路地裏。気がつけばすっかり日も暮れている。）

      • http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst085129.png　

      • （妙に人数も少なくビルの隙間を黒く埋める影が不気味だ）
        ……全部あのキャスターのせいだわ、ほんっと…
        （感じる気味の悪さを誤魔化すように呟いて、きた道を引き返そうと踵を返した）

      • アラァ？
        （振り向けば、ぶつかるんではないかという距離に）
        （背の高い、細いけれど筋肉質な、男か女か…いや男だ、化粧が濃いだけの）
        お嬢ちゃん、お帰りには…早くてよ
        （殺意を隠すことも趣味を隠すことも舌なめずりを止めることもしない悪鬼が、いた）

      • …！　
        （一瞬、少女は呼吸の仕方すら忘れかけた）
        （粘度の高い殺気を、しかもこんな至近距離で浴びたのは産まれて初めてだった）
        「ごめんなさい、私がここに来るのはちょっと早かったみたい」
        （そんないつもならサラリと口から出そうな台詞すら、喉の奥に引っかかったまま出てこない）
        （頭が理解するより先に体が諦めてしまっている。）
        （つまり、自分はここで死ぬのでは？という）

        （確か少女にはこの窮地から助かる為の、絶対的な切り札が一つあった筈だというのにそれすら思い出せないのか）
        （ようやく間抜けに口を開いて、しかし言葉が出てくるより先にきっと少女の命は） -- エオ

      • （長身が折れ曲がって、顔が顔に近づく。そんな、常識的なご挨拶であればどれだけ良かったか。）
        （現実には。逆転して、顔に近づいて、顎と目があう視界が意味するのは。一瞬で首の骨が捻り折られたということ。）
        あなた中々かわいい顔してるから…サービスしちゃう
        （ばきり、折れる音。大事なものが、身体の芯が）
        （ばきりばきり、音が鳴るたび。形が変わる。原始の海に帰るみたいに）
        （ばきりぐちゃり、折れた骨が肉を掻いて皮を貫く。やっと噴き出る血の飛沫）


        （顎から上だけ綺麗に残して、血袋と化したエオの身体が長身の男に吊られている。）
        （男の名は審判(ジャッジメント)。アサシンのサーヴァントにしてザ・グリードの�将勝�）

      • （これは愉快なマジックです、今から３つ数えて指を鳴らせばほら、少女が目を開けてにっこり微笑む）
        （…そんなアナウンスがどこかから聞こえそうなほど見事に現実離れした早業。）
        （綺麗に残されたままの少女の顔は、今だ自分が死んだことをわかっていないかのように目を見開いたまま）
        （冗談みたいな量の血液がじっとりと暗い地面へ赤い絨毯を敷いていく。）
        （ビルの隙間から差し込む月の光に照らされて、てらてらと光る春の盛りの花畑のように色とりどりの臓器。）
        （健気に動き続けていた心臓は、最後の力で一層遠くへ血液を押し出して動きを止めた。）

        （ただ唯一の幸いといえば、きっと苦痛を感じるまもなく死んだだろう、ということぐらい。）
        （夜の一人歩きは気を付けましょう、怖いお化けが出ますよ…そんな教訓のお話はここで終わりを告げ）
        （果たしてそれを誰かが目撃していたとしても、最早物言わぬ少女にそんなことは関係無いのだった。）
    • っ……（気配を感じてライダーを連れ添い飛ぶが如く来れば……そこには無残に悪趣味なオブジェとなった少女が出来上がっていた）
      （異様な死体、邪悪な気配が造りだすグロテスクな供物。こいつは──敵だと全身が、心が訴える）
      （見ず知らずの少女が殺されたことに対する怒りが、業火のような怒りが。そしてそれと同じぐらいの……それ以上の悲しみが令呪を通してサーヴァントを強く呼び出す引力となる）
      ライダー！ -- ブレイズ
      • （ブレイズにとっては見ず知らずであろうとも、彼女にとっては違った）
        （たった一度きり。僅かな時間の会合ではあったが、あの穏やかな時間を共に過ごした少女が今、その人生を終えた）
        （やりたいこともあっただろう。見たい景色もあっただろう。だというのに今、彼女の人生はその幕を閉じ、無意味なものとして生を終えた）
        （否、終わらせられたのだ。望んでも居ないのに。圧倒的な力によって―）

        ―ッッッ！！！！

        （マスターの呼びかけに応えその場で姿を現すのと、その手を振るうのは同時）
        （相手の力量を図る冷静さなど無かった。マスターの激情が令呪を通して全身の血液を焼いている）
        （ライダーと呼ばれたサーヴァントは、その劇場のままに狂気の体現者へと飛び掛かる―） -- ライダー
      • ハァー？なぁにお知り合い？
        （全く面倒そうに。今殺した少女のことなど、微塵も気にせず、邪悪そのものが。）
        じゃ、後始末お願いね
        （ライダーへと投げつける。何を？少女の残骸に決まっている。）
        （その隙に、詰め寄るのはマスター・ブレイズへと。アサシンの気配遮断が、ほんの一瞬の空白を生む）
        アラいい男（ぞろりと。舌を出し、右腕で襟首を掴まんと） -- 《審判》
      • （それはサーヴァントだった。似た気配を、近い空気をこの戦いが始まってから何度も経験してきた）
        （だがこれは違う。彼らよりももっと濃密な死と邪悪な想念が練りあがった本物の怪物、おぞましい何か）
        （だからこそ。その少女だったものが投げられた一瞬の気配の喪失。そこからのばされた自身への死の手を　経験が防いだ）
        っ……！（突発であったが首元から噴きだすように出現した炎がアサシンの手を防ぐ）
        （そのまま飛びすさぶように後ろへ飛ぶ。路地裏の奥まで）
        （それは、自らが意識したよりもずっと離れているとわかるほどの距離を、飛びのいていた）

        ライダー！こいつは別格だ、令呪の使用も考える！
        （どっと冷や汗が溢れて感覚を鋭敏にしていく）
        （激情から、その激情を覚ますかのような冷徹な狂気の腕に撫でられて頭が切り替えられていく）
        （全力で2人が臨まないと勝てない。いや──負けると理解できる -- ブレイズ
      • ―っ！？
        （唐突に投げつけられた「それ」に対しての行動に一瞬迷いが生じた。それ故に、己がマスターへ魔の手が伸びるのを止めることが出来なかった）
        （今は既に命無き肉の塊とはいえ、知らぬ仲ではなかった。故にその肉袋を受け止め、静かに地面に横たえて―）

        …了解。どっちにしろ逃がすつもりは無いし、逃げるつもりもないよ
        （小さな少女の血に塗れ、真紅に染まったローブを脱ぎ捨てて相手を正面に見据える）
        （冷静になるブレイズとは対照的に、此方のギアは上がり続けるばかり。誰が見ても冷静さを失っている―）

        虚空裂く幻影の獣

        （聖杯戦争に於いて、己の宝具は現界まで隠しておくのが定石。だというのにこのサーヴァントは迷うことなくその真名を解放した）
        あんたみたいな奴が、一番嫌い。人の価値を、踏みにじって…っ！！（言葉と共にむき出しになった殺意を<<審判>>へと投げつける）
        （殺意は見えぬ獣の爪となり、<<審判>>の真正面からその顔をへし折りにかかる―） -- ライダー
      • （炎に阻まれて、飛び退かれれば深追いすることもせず。その場に立ち、少女へと向き直る）
        女の子も、嫌いじゃあないんだけどね？せっかくねぇ、いい男なのにねぇ…
        （ぶつぶつと、つぶやく姿は。一歩一歩、近づいてくる）
        女の子の陰に隠れてちゃぁ、モテないわよ
        （その身体を宝具が捕らえたと思われた瞬間。着弾箇所は手のひらに阻まれ、掴まれて。幻想の獣の爪が。骨が折れる。）

        申し遅れましたけど。アタクシグリードの…《審判(ジャッジメント)》っていうのヨ
        随分うちの子らにナメた真似しくさってくれたみたいじゃない？
        （踏み込む。奇妙に開かれた両手の指が、ライダーへと迫る） -- 《審判》

      • （そう。飛んだ先はライダーの後ろ。自ら意識せず頼ったほどの存在）
        （それが目の前のアサシン。グリードの、審判と名乗る者）
        （その存在が自分の前にいるサーヴァントが繰り出した宝具、不可視の力を掴んで）
        （砕いた）

        ──ライダー！掴まれるな！掴まれたら終わりだ！

        （弓を展開し、矢を手に叫ぶ）
        （何の能力かはわからない。だが不可視の力を砕いた）
        （このサーヴァントは、何の力を持つのか）
        （わかることは一つ…サーヴァント同士の相性が悪い）
        （最悪の場合、ライダーの実体化を解くという選択肢を考えなければならないが、それが通用するかもあやしい）
        （地面を蹴り、ビルの壁を蹴り上がる。今できることはサーヴァントに邪魔にならず、サーヴァントの援護をすること）
        （屋上に立てば矢を番え、下に見えるグリードの審判へ向け放つ。その矢、炎を纏う矢となって） -- ブレイズ
      • ―ッ！！
        （マスターの声に反射的に後方へと飛び退き<<審判>>と距離を取る）
        （本来不可視である筈の爪を受け止め、尚且つ砕いた）
        （力の正体は分からないが、近接戦闘に於いて圧倒的な力量差を察することは出来る）
        （己の宝具の性能は決して近接戦闘に長けた物と殴りあえる代物ではない。で、あるのならば―）

        動きを、止めてしまえばいい。近づかせなければァッ！！

        （叫ぶ。二撃、三撃、あらゆる方向から獣の爪が<<審判者>>を狙うも、その全てが触れられただけでいとも容易く砕かれていく）
        （自分一人の攻撃では埒が明かない。となると―）
        これでも、止められるかどうかッ！！
        （屋上から飛来するマスターの放つ炎の一閃と合わせ、袖口から短弓の矢を乱射する）
        （上方と前方は塞いだ）
        これでぇッ！！
        （続けざまに<<審判>>の下方と後方より迫る獣の牙と爪）
        （単発の攻撃では全てが砕かれるのなら、処理しきれぬ量の攻撃を浴びせかければ―） -- ライダー
      • 狩り立てようっていうのかしら
        （敵の主従の連携は見事なものだ。獣相手には十分すぎるくらいに。）
        （袖口からの射撃に意識がむいたほんの隙に、路地の建物。その「鉄骨」を折り砕いて）
        （引き剥がされた外壁が放られて、矢の火線ごと。攻撃範囲を面で潰す！その先に居る、二人めがけて大質量が）
        （そして同時に、下方と後方。振り向きもせず右腕と左足が向いて破砕。）
        罠もあったほうが良かったわねえ
        （圧倒的であった。今までのアサシン・サーヴァントとは明らかに違う実力。審判の名の元に、全身に隆起した筋肉を駆使して狩猟者へと向く姿。 -- 《審判》
      • （コンクリート資材の大質量が放り投げられ、矢も炎の矢ですら弾いていく）
        （魔術原理？否。それは圧倒的な力、異能をこれでもなくと使いこなした戦闘能力）
        （それがサーヴァントとして現出している。これが本当のサーヴァント戦なのだ）
        （質量はビルの屋上部分の縁を抉り、いやおうなく地に引きずり戻された）
        （暴力的な獣がいる場所へ）
        （対策を考える。どうする、どう勝つ？どう倒す？目の前の悪に）
        （相手の異能を考え……そして、無残に殺された少女の遺体に自分の上着を投げて）
        （弓も矢も仕舞い、問うた。自らのサーヴァントに）

        ライダー……撤退することもできる
        正真正銘の、化け物が相手だ
        （ここで死ぬよりは、先に繋げられるということご言外に伝え）
        （加えて、もしやるのであれば最大限叩きつけてからとも臭わせる）
        （野放しにするより、手傷を負わせてと） -- ブレイズ
      • （放り投げられた外壁を獣の一撃で持って粉砕するも、だからと言って状況が好転したわけでもない）
        （砕け、降り注ぐコンクリートの雪の中で獣は傷一つない状態で己との距離を詰めて来る）

        …撤退、しよう。全力でやればどうかは分からないけど、今ここで全力を出すのは多分得策じゃない
        ……時間を稼ぐから。撤退の準備してて（マスターにだけ聞こえる声量で決断を伝える。先ほどまで全身を満たしていた殺意が霧散するほどに、目の前の敵は圧倒的であった）

        （上空に輝く月の光に照らされ、命がけの撤退戦を始めなければならない）
        （逃げ切れるだろうか）
        （いや、逃げ切ってみせる）
        （今この場に「月の光」があるのなら―）

        万象満たす月の煌めき

        （第二の宝具の真名を解放する。それは結界宝具。戦場を照らす月の光を歪め、敵味方の区別なく、月の加護を持たぬもの全てに影響を及ぼす呪い）
        （そして―月の加護を持つ者には、体を、魔術回路を満たす圧倒的な力を与える祝福となる―！）

        触れられなければ、お前なんかッ！！！

        （相手の力を、精神力を、魔力を奪う呪いの中、ライダーの眼前で不可視の獣が咆哮する）
        （不可視の魔力体から放たれた咆哮は、周囲の障害物ごと全てをなぎ倒す音の刃となり<<審判>>へと迫る）

        ブレイズ、逃げようッッ！！！

        （この衝撃波がいかほどの効果を与えるかを確認している暇などない。この結界が効果を及ぼし、衝撃波が敵の気を引いているうちに撤退するしかない）
        （踵を返し、全速力で駆け出す。義足のハンデなど感じさせない獣の如き俊敏性でブレイズの袖を引き、撤退を促した） -- ライダー
      • 内緒話、混ぜてくださらないのかしら…もう
        （粉塵が、火災が路地を包む。遠からず異変に気付くものは出るだろう…もちろん、「聖杯戦争」への異変）
        そろそろ、あなたたちも折砕いて…んん？
        （それは、覚悟を決めた者の動き。踏み込んで捉えるには、一手遅い。敵は、奥の手をひとつ、開放したということだ。）
        ぐぅっ…フッフ、加圧トレーニングね！いいわ！燃えてきた！
        （月の光が獣を縛る！一ランク鈍った動きで、追いすがる月光を引きずるように進む、が）

        （咆哮一閃。直撃である、それを筋肉の鎧で受け切るのにたっぷり十秒）
        …キクわぁ〜って、あら（耳からの出血は、鼓膜へのダメージを物語る。何よりもその雄叫びに心奪われて。）
        （もう、二人の姿は何処にもなかった） -- 《審判》
  • 　
  • 　
  • カフェテラス

    • 相席、構わないかね？
      （突如、影と声が同時に少女に落ちてくる）
      （もし視線を向ければ、そこにいるのは上背のある眉雪の男）
      （にこにこと人懐こい笑みを浮かべて、君を見ている） -- 眉雪のキャスター

      • （その日の少女は、レアチーズケーキにかかっているソースの比重に腹を立てていた。いつもより圧倒的に少ない。これは怠慢ではないのか…と）
        （なのでむっつりした表情のまま顔をあげて、その男を見上げる）
        構わないわ、たまには一人で食事も悪くないものね　ナンパされたのなんて初めてよ
        体目当てかしら、私あまり他の人たちと違って体が丈夫でないの
        乱暴はよしてね -- エオ

      • 私がもう少し若ければ体目当てと答えるところなんだが、生憎と見ての通りのご年配なのでね
        女の子とおしゃべりしたいという慎ましやかな草食系を演出しながらナンパさせてもらうよ
        乱暴も苦手なので安心してくれたまえ
        （そういって隣に腰掛け、同じくレアチーズケーキのセットを頼む）
        この辺りでは余り見ない髪と肌の色だね
        観光かなお嬢さん？ -- 眉雪のキャスター

      • うーん、どうかしら…観光みたいなものかな…？
        （フォークを咥えながら首を傾げる）ここで大きなお祭りがあるって聞いたから参加しに来たの
        お爺様お祭りはお好き？私は大好きよ、その為に生きてきたみたいなところあるもの
        （ペロリとチーズケーキを平らげると、注文を運んできたウェイトレスに「この季節のフルーツパフェ」と声を掛け）
        （空いたテーブルの上、肘をついて椅子の上で脚をぶらぶらさせながら老年の男性を見つめた）
        ……そのお年でチーズケーキはキツくない？もたれたりしないのかしら、見た目と違って意外とお若い？ -- エオ

      • …私もここ、借りるね（言葉を交わす二人の声をかける新たな影一つ)
        （包帯だらけの少女が返事を待たずに椅子に腰かけた）おねーさん、私もチーズケーキ頂戴。３つぐらい頂戴
        （エオが注文をしたウエイトレスに声をかけ）…なんか変な組み合わせだね。女の子と、おじいさん。…歳の割に元気なんだね、おじいさん -- ライダー

      • 気持ちだけはいつまでも十代のつもりだがね
        （運ばれてきたチーズケーキをバクバクと食べながら笑う）
        お祭り……ねぇ、なるほどなるほど
        （何か察したように目を細め、口端を吊り上げる）
        ああ、私もお祭りは大好きさ
        私も……その為にここにいるようなものだからね
        ……む？
        （追加でガトーショコラをこちらも頼むと、突如声が掛かる）
        （そこにいたのは、包帯を幾重にもまいた少女であった）
        （欠損した肢は見るからに痛ましく、瞳に宿る光は弱い。むしろ底に抱えた闇を強く感じさせる）
        （だからこそ……老人は柔らかく微笑む）
        もちろん、私は構わないよ
        両手に花、なんて願ったりかなったりだからね -- 眉雪のキャスター

      • 残念。
        （と、そのとき、両手に花、という言葉を遮るように、店の奥から声が近づいてきた。）
        こっちの小さいのは、今日は僕の連れ。
        （老人と少女の座るテーブルに歩いてくると、エオの帽子の上に肘をついた。あっ、丁度いい高さ。などと戯けていると、ももを思い切り抓られた。）
        この人達は？エオの知り合い？ -- キャスター

      • 言っておくけど逆だからね、貴方が私の連れなのよ！
        （生意気だわ、と頬を膨らませながら首を振って）今始めて会った人達よ
        でもまあ同じお祭りに参加する…という意味では知り合いともいえるのかしら？貴方もそうなんでしょう？
        （お祭り、好き？と痛々しい姿の少女に向かって首を傾げる）
        -- エオ

      • （新たな乱入者にふ、と視線をやりテーブルの中央へと視線を戻す）
        皆…お祭りの参加者なんだね。すごい、意外と簡単に会えるもんだな。やっぱり大きいお祭りだからかな
        （己は特に意識していたわけではないが、こうして此処に祭の参加者たちが集まっている）
        …ね、エオ、で良かったんだっけ。とそこのお兄さんがペアだってのは分かった
        お爺さんの相手は居ないの？
        （ぱく、と運ばれてきたチーズケーキを口に運びつつ） -- ライダー

      • おや、それはすまなかったね
        デートのお邪魔をしてしまったかな？
        （現れた、目が醒めるような美しい金髪の少年に軽く会釈する）
        （そして、2人の少女が口にする『祭り』という単語……そしてその奥にある意味は、最早邪推するまでもない）
        （テーブルにおかれたガトーショコラに舌鼓を打ちながら、質問に答える）
        死ぬほど性格が悪い主がいるよ
        アレも私もどちらかといえば、『祭り』よりも『話』が好きだがね
        なので、今もこうやって楽しく話をしているわけだ
        出来れば、私は今すぐ『お祭り騒ぎ』をするよりは楽しく『会食』したいんだが、君達はどうかな？ -- 眉雪のキャスター

      • ああ、そういうこと。
        （祭り、そして主という言葉に、合点がいった、といった表情で、ぽん、と手を叩いた。）
        君たちで決めなよ。（人差し指をくるりと回して、「君たち」、老人と少女を丸で囲ってみせる。）
        見たところ、二人揃っているのは僕達だけみたいだしね。 -- キャスター

      • 私は…
        （運ばれてきたフルーツパフェを見て目を輝かせる）…そうね、このフルーツパフェが素晴らしいから今はコレを楽しみたいわ
        もう盛り上がってる所は盛り上がってるみたいね、ほら…この間凄かったじゃない
        あの盛り上がり方みたら、ね…
        （先日空に立ち上った光と、ついでに肌で感じた膨大な魔力を思い出してわざとらしく身震いする）
        （あれが、マスターの仕業かサーヴァントの仕業がの判断はつかないものの）
        （正面からぶつかり合うとしたらとりあえず塵一つ残らないな、と苺を口に運びながら）
        …あ、美味しい　やっぱりチーズケーキよりパフェだわ、ソフトクリームと生クリームが同時に楽しめるだなんて凄い発明…

        少なくとも私から積極的にあなた達とぶつかろうという気はないから
        …そちらから来る、というのならやむを得ないけど… -- エオ

      • …私も別にどうこうする気はないよ。私はマスターの指示に従うだけ。指示が無いなら好きにするの
        （興味なさげに応え、一つ目のチーズケーキ完食。二つ目に手を伸ばし）
        やる気がある人たちはもう色々してるみたいだね。うちの相方もそうだよ。そのうち貴方たちのとこにも来ると思う
        その時はー…よろしくね？（じ、と金髪の少年を見て言う。恐らくはこの少年がサーヴァント。自分がぶつかるのであればこの少年になるだろう）
        （自分と同じく大凡戦闘など出来そうにない細腕。彼は一体どのような力を秘めているのか。見定めるような視線を送る）
        （が、すぐに視線を外し）でも、お爺さん変わってるね。祭の参加者なのにお話が好きなんだ。……お爺さんの相方もそうなんでしょ？何でお祭りに…
        （問いかけつつ目線はエオのパフェに）…ね、一口頂戴。それすごいおいしそうなんだけど（卑しさを見せる） -- ライダー

      • では、満場一致で会食続行ということだね
        よければ君もかけたらどうだね？
        ケーキセットくらいだったら奢るよ
        （そう、若い金髪のサーヴァントに席を勧める）
        あの光は私も見ていたけど凄かったねぇ、出来れば近くでは見たくないものだ
        巻き込まれるだろうしね
        （ガトーショコラを食べ終え、紅茶を飲みながらまた包帯少女の問いに答える）
        さぁ？　なんでだろうね。私は主の願いが何かは聞いていないんだ
        どうでもいいからね、そんなことはね -- 眉雪のキャスター

      • 確かにどうでもいいことだ。だよねえ、エオ。
        （老人の言葉にうんうんと頷き、嫌味ったらしいトーンでエオに言葉を投げた。願いなど無いというエオの言葉を、キャスターは信じてはいなかった。）
        あ、僕もそれ、一口頂戴。

      • このパフェは良いものだわ…もう一つ頼むことも吝かではない…
        あなた達時分で頼みなさいよ！このお爺様がせっかくお金を出してくれるっていうんだから！
        （死守するようにパフェの器を自分の方に寄せながら歯を剥いて首を振る）

        あるいは願いなんて無いのかもしれないじゃない…少なくとも私はそうよ
        私の目的はお祭りに参加することで９割は達成されているもの、後は…そうね、優勝カップを手に入れれば満足よ
        副産物は貴方にでもあげるわ…って前から何回も何回も言ってるのに全く信じないわね貴方！
        全く失礼しちゃうわ…
        （もぐもぐとパフェを食べ進めながら息をついて、だから　と続ける）
        あまり乱暴なことはよしてね、私は少なくともあなた達と積極的に敵対するつもりはないし…場合によっては味方になるつもりだってあるんだから
        （あまりに胡散臭いセリフを吐きながら、さて次は何を頼もうか…とメニューに目を落とした） -- エオ
      • む。エオはケチだな…じゃあ私はお爺さんのお言葉に甘える。おねーさーん、パフェ４つください（遠慮を知らぬ行動）
        …二人とも願いが無いの？変なの。…変なマスターって、うちの相方だけじゃなかったんだね
        （このエオという少女も、この老人のマスターも願いが無いという。だというのならば一体何故この戦争に）
        （エオという少女の言い分からは、己が主と同じく聖杯戦争を破壊するというわけでもないように見える）
        （この老人に至ってははぐらかして話をしようともしない。分からない。分からないなら判断はマスターに任せればいい）

        味方に？……ふーん。でもまぁ、願いが本当にないならそれでいいのかな
        （この少女からは少なくとも本当に悪意は感じられない。加えて目的も無いという）
        （で、あるのならばもしかすれば本当に説得で味方に引き入れられるかもしれない）
        大丈夫だよ。少なくとも私はどうこうする気はないし、私の相方も…多分乱暴な手段はとらないから
        こっちのお爺さんもそうだっていうし。お祭りって案外平和なものなのかもしれないねー -- ライダー

      • いや、ちょっとまて私が奢るといったのはそこの金髪君にだけだが？！
        っておい、どっちも何を勝手に……あああ、わかった、わかりましたウェイトレスさん、私が払いますんで……それの分だけお願いします
        （先払いとばかりに財布を生贄にささげる）
        私も君達としばらくは歩調を合わせて生きたいと思っているよ
        このお祭りはバトルロイヤルだ
        ならば、定石は簡単だ……複数で徒党を組んで、強大な個を叩き潰し……しかるのち、徒党を分けてまた争えばいい
        故に私は初期段階において、こちらかしかけるつもりは微塵もない
        信用はしてくれなくてもいい
        利害だけで判断してくれれば、私は満足だ -- 眉雪のキャスター

      • そう。じゃあ今日のところは、お茶会ということで、いいのかな。
        （言うと、椅子を引き、どかっ、と勢い良く腰掛ける。）
        それじゃ、ごちそうになります。
        （合掌し会釈。）
        ただ。次に会うときは、この借りは忘れてもらうよ。
      • そういうことね、始まって真っ先にトゲトゲして潰し合うだなんて得策じゃないわ
        …ということで今度はチョコレートパフェ…と、このモンブランを
        （いえ、やはりショートケーキ…？ええい全部よ全部…とメニューをテーブルに叩きつける）
        （どうやら遠慮をする気はないようだ）
        （仮にも戦争の名を関したこの争いであまりに緊張感のない、このテーブル。）
        （命を捧げても良いと覚悟を決めて参戦している者が見たら、怒りだすかもしれない）

        （和やかに眉雪のキャスターの財布を殺し、別れた後すっかり満たされたお腹を撫でながら）
        あの義足の子とは仲良く出来そうな気がするわ、でもあのお爺様はちょっと胡散臭いわね
        さ、行きましょうキャスター
        おなかも膨らんだことだし後は寝るわよ、寝る子は育つわ
        寝れるときに寝て食べれる時に食べて魔力蓄えておかないとね、いつ戦闘になるかわからないんだし
        （勢いつけて椅子から降りると、流石に食べ過ぎたか少し歩きづらそうに拠点へと戻っていった） -- エオ
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  • a -- 2014-03-21 (金) 00:42:32
Last-modified: 2014-04-12 Sat 01:51:02 JST (3668d)