《 西 側 諸 国 》
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 

統一王朝
 
 
 

200年ほど前、西側に存在した巨大な統一国家。
現在西側にある国は全て、統一王朝崩壊の際に分裂した地方の成れの果てである。
統一王朝に関する記述はそれなりの数が残っているが、
文献が各地に散らばってしまっているため、全容を知る者は多くない。
だいたいの人間は、せいぜい、かつての様子が断片的に描かれている書物を読むことで、
統一王朝の栄華を辛うじて想像することができる程度である。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

竜害
 
 
 

西側の山脈には全長15mを超える巨大な野生のドラゴン達が生息している。
少なくとも統一王朝時代の書物からすでにその存在が確認されており、古くから西側の人々に恐れられてきた。
このドラゴン達は知的な存在ではなく、言葉を喋らず、意思疎通もしない凶暴な猛獣である。
このドラゴン達は時たま気紛れに人里に降りてきて破壊の限りを尽くすが、これを止める手段は存在しない。
一瞬で砦をも溶かすブレスを上空から吐き、バリスタの一撃すらものともしないその竜鱗の前には如何なる抵抗も無意味である。
餌などで制御することも全く不可能であり、飼いならすなど言語道断である。
ドラゴンにであった際に出来る事は、せめて苦しまずに死ねるように祈る程度である。
故に彼らは存在そのものがどうしようもないもの、避けようがないものであるとされており、天災と同じモノであると認知されている。
そのため、ドラゴンによる破壊活動は西側では竜害と呼ばれ、恐れられている。
 
 
 
 

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                    《 グランドドラゴン 》  

 
これは第二次バルトリア大戦の際、アランドロス4世が竜印によって変じた姿である。
あくまで白き竜の似姿でしかないため、翼はなく、本来の竜ほどの膂力もない。
白子状の身体には生気が無く、その胸元は竜印の傷跡が変化してもなお広がり続けている。
それでも、人の世を造作もなく屠るだけの力は十二分に有していた。
 
竜印によって生み出されるモノ、"それはけして竜などでは無い"
各地に伝わる竜の伝承やその爪跡、ウラスエダールの神官の姿などから人々が想像した似姿に過ぎない。
人の数だけ存在する竜への想像、竜印の使用者もまた己の竜を世界に受肉するのである。
しかしその受肉には大きな代償を伴う、使用者の殆どは例外なく己の想像の暴走によってその身を散らし、
奇跡的に身を結んだ者も、わずかな時のうちに崩れ落ちてゆくだろう。
 
 
 
『これは奇跡などでは無い、玉座に繋がれた私の心が、私の中から世界へ羽ばたいた……ただそれだけのことなのだ』
                                    -静王アランドロス四世-

 
 
 
 

共通言語
 
 
 

西側では全国家がある程度共通の言語を用いている。
これは酒場の共通言語と同じものである。
文字に関しては文化が飛び火しているため、
地方毎に違う文字を使っていたりすることはよくある。
意外にも東の大爛帝国も似たような言葉を使っている。
全体的にはまったく同じ言葉だが、地方によっては微妙に発音が違ったり、
独自の単語を交えて使っていたりするのでしっかり聞き取る気がなければ意思疎通はしづらい。
例えるなら方言のようなものである。
意思疎通する気や覚える気があるなら小一時間も聞き取っていれば
ある程度は意思疎通できるが、その気がなければ完全に異国の言語のそれである。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

柱の騎士
 
 
 
 

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西方に王侯貴族が宴を開き、時同じ頃、
中央へと至る大平原では戦の金音が響き渡る……
そこに流れる血の多くは、西の色をしていた。
 

騎士が……戦士が……魔術師が……
無念の想いの中崩れ落ちてゆく……
敗走する兵たちはその死体の山に滅びゆく西の国を見た。
 
 

『 落日の国を目指し東の悪魔が征く……

    彼らを遮るのは虚心の兵、

       ただ国を想い死したる命無き兵…… 』
 

           〜 かなきり声の伝道士の詩より 〜
 
 
 
 
 
 
         《 柱 の 騎 士 》  

 
 
 

そのおぞましい異形が初めて戦場に現れたのは、
黄金暦224年の第一次バルトリア会戦後半の頃である。
帝国軍の進軍により前線にて果てた夥しい数の死体同士が、夥しい数の無念が、
西側のあらゆる魔術と呪術の融合によって死した果て結実したもの。
それがこの「柱の騎士」達である。
バルバランドの不屈の闘志と、死して尚残るエンチャントによる膂力強化。
ローディアの屈強な肉体と、愚直なまでの選民思想と郷土心。
アルメナの神聖魔術とはなばかりのキメラ魔術。
スリュヘイムのゴーレム作成術とネクロマンシー。
彼らの死体、もしくは残骸に死して尚残る魔力の残滓と、
西側特有の魔術汚染の因子が自然と組み合わさり、
誰に手を下されるでもなく自然的に発生したものが彼らである。
今まで隣り合ってはいても、決して交わる事のなかったこれらの技術が
戦場という異常な空間の中で歪に組み合わさり、死という形で顕現したのである。
つまり、平均全長4mにも渡るこの巨大なアンデッドのゴーレムが出来たのは、
最初は全くの偶然でしかなかったのだ。
完全な偶然の産物。それでは帝国軍も出現を予期できるはずもなく、
この装甲兵器さながらのアンデッドのゴーレムには長く苦戦を強いられたという。
 

彼らは個体差があり、ものによって全く違う外見と身体能力を持っているが、
共通していることがいくつかある。
まず、意志が一切ないこと。
中には不幸にも誰かの意志が宿ってしまう個体もあるらしいが、
大半はただの殺戮機械である。
次に、生前敵対していた相手にたいして強い憎悪を抱いていること。
彼らは負の想念でもって死してなお動いている。
そして……たった一つの方法を除いて、一切制御ができないこと。
そのたった一つの方法こそが、後述する柱の王を用いた統制である。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

柱の王
 
 
 
 

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柱の巨人たちの王たるべく人の手で生み出された王の偶像。
様々な金属、数々の秘術により生まれたその柩には、
王の血筋の者が生きたまま埋め込まれた。
 

王国の騎士たちは護るべきものの為に死に、
……そして柱となった。
王は王として生まれたその瞬間から
柱となる定めにあった。
 
 

『 人がそうであるように

      彼らにも導く者が必要なのだろう…… 』

                 〜 成りし貴き血族の者 〜
 
 
 
 
 
 
 
          《 柱 の 王 》  

 
 
 

前述の柱の騎士が東に対して有用であると分かるや否や、
統一連合は形振り構わず死体を捏ね繰りまわし、柱の騎士を量産した。
しかし、量産した果てに彼らは気付く。
いくら個で優れ、いくら強力であろうとも、
ムラがある上に統制のとれない軍隊では結局使いものにならない。
統制し、制御する術が必要である。
 

数々のおぞましい研究と、数々の見るに耐えない実験の果てに、
西側の魔術師たちは一つの事実にたどり着く。
時々現れる少し小さな個体。
その個体の周囲の柱の騎士は、いくらか密集して戦っているという事実に。
そして、その小さな個体には……戦死した貴族の死体が混ざっていた事実に。
 

その事実に気付いたときから、彼らの狂気は暴走した。
そしてその狂気の果てに出来上がったもの……
それが完全に人為的かつ作為的に作り出された、小型の柱の騎士。
柱の王である。
全長2〜3mと少々小振りな大きさのそれは、
貴族や王族を人柱として、生きたまま組み込むことで作り出される生ける屍である。
柱の王は往々にして死して尚意志を持たされる。
柱の騎士達に命令を下すためだ。
柱の騎士達は貴き血筋にして同類である柱の王の命令にだけは忠実に従い、
一個の軍隊として能動的に動いたからである。
 

しかし、柱の王になったが最後。
金属に身体を練りこまれ、脳髄を神聖魔術に犯され、
エンチャントとネクロマンシーにより再生と駆動を強制され続けるその「死後」は、
苦痛と絶望以外の何者でもない。
故に、柱の王となる貴族は少ない。
……そして、仮に志願してなるとしたら、
彼らは例外なく高潔であり、高潔であるが故に苦しむ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


Last-modified: 2012-07-29 Sun 00:50:14 JST (2908d)