外見 | 相応の背(185cm)と常に気楽そうな笑みを浮べており 更に筋肉質な身体と白髪が合わさり信頼を非常に得にくい風貌を持っている 学生服はこちらを着用している 水着などは明るい色が好き、ウェミダァー(モブッぽい声で) 戦いになると身体が滾る為夏でも白い息が出る | 来歴 | 酒場のある街より遥か西方にある山岳国家出身 孤児であり国に居た頃は孤児院で日々気ままに暮らしていた しかし成長をすると共に現れる常人とはかけ離れた能力 身体の変化と共に孤児院の院長により自らの生まれを知ったルベウスは 気楽な気質ではあるものの複雑な事情により悩む事となった そして院長が老衰で亡くなった事を転機と考えたルベウスは かつて院長が訪れ大きく価値観を変える事となったこの土地を訪れるのだった そして学園50周年記念を聞き付け面白そうだと入学したのである | 性格 | 内に秘めた怪物の消滅と共に変化が起き以前よりも遥かに落ち着きを持つようになった しかし楽しければそれで良いといった刹那的な思考や不真面目な部分は健在である ただし以前よりも様々を事を学ぶ姿勢を見せており家事なども覚え始めている 更に最大の変化として悲しみ、怒りなどの感情も日頃から見せる事がある | 家族 | 孤児院出身の為血の繋がった両親は持たない ただし親のように思っている院長先生 ルベウスが兄と呼び忌み嫌う『ダイヤ』の名を持つ男 ルベウスが姉と呼び恐れつつも慕う『サファイア』の名を持つ女 更に他にも特殊な関係にあり兄弟と呼ぶ者達が居る | 特技 | 日常的な事に関してはパインケーキ作りが得意 非日常的ならばルビーのパワーストーンに纏わる力を持つ 例えば再生力や身体能力を生み出す異常なまでの生命エネルギーや 常に精神エネルギーに満ち気分を上向きにしたり物事を良い方向に傾けるなど これらは自らに影響を与え続け、更に引き出す事を可能としている 現状能力の理解が深まり相応の効果を他者に影響させられるようになった | 異能 | 『真なる自由』 自他を縛ると判断する物を全て無効化する異能 以前は別の名を持っていたが異能の変質と共に名前も変わった 物質、魔術、概念問わず無効化する効果そのままに自身の肉体を弱体化させる性質が消失している 一定の時間で無効化は切れるが任意で切る事も可能 ただし習熟していない為連射性に若干の難がある | 戦闘設定 | ある程度の格闘技術と吸血鬼やトロルを彷彿とさせる再生力と強靭な身体能力を持つ その為戦闘方法は主に徒手空拳、それも再生を前提とした人の箍の無い物を用いる 相手が岩を壁にすればそれごと抉り取ろうとし、炎を壁にすれば焼かれながら進むなど しかし数多の戦いで成長し自らの特殊な力を用いた搦め手も用いている | 好きな物 | 驚きのある物、興奮を与えてくれる物、人間、読書 | 嫌いな物 | つまらない物、自他を縛ろうとする物 | RP方針 | 基本的に…適当? | 活動時間 | 午後8時〜午前1時半なら大体居る |
何処かの国の過去 †
西方のとある国では時々特殊な力を持つ子供が生まれる事がある
自由に空を飛ぶ者、魔を打ち払う力を持つ者、生物の範疇を越えた生命力を持つ者など…
理由としてはかつて人がまだ神に近かった時代の名残などと言われており
遺伝子や魂などの検査からも古い時代の名残だという事が証明されていた
かつて国はそんな子供達を特別な力を持った強力な兵士とすべく集め養成していた
そうして兵士となった者の中でも特に力を持つ者にはその能力に準じた宝石の名が与えられ各地で活躍したという
しかしそうした非道な行いを多岐に渡り行なってきた国は反乱軍により打倒され
新たに平和な国として生まれ変わる事となったのだった
だが兵士として鍛えられその手を汚した者達の中には平和になった世界に順応する事が出来ず
権力の座から追いやられた貴族と共に再び世に争いを撒こうとする者が現れるのだった
その中でも周囲を熱狂させ戦いを勝利に導く能力を持つ『ルビー』の名を持つ男が居た
男はその能力によるカリスマにより瞬く間に組織を拡大しあわや再び戦乱の世にとなりかけたが
同じく兵士として鍛えられ、しかし誰よりも平和を望む『サファイア』の名を持つ男によってその野望は潰える事となった
それから数十年後、平和な国の中で戦争経済による利益を求めある計画を進める者達が現れる
シンセティックストーン、人造宝石計画…
宝石の名を持つ者達の中には指導者たる能力を持つ者も多く
彼らを現代の技術で蘇らせ各国の戦乱の種として利用する悪意に満ちた計画が進められるのであった
しかしその計画もまた既に老齢へと入った『サファイア』の名を持つ老人により頓挫
幾人かのクローンを生み出すに留まり終わるのだった
何処かの国の過去その2 †
(白髪で髭面の逞しい男が自分を見下ろしている、自分は何か彼と会話をしていて…ああそうだ、これは稀に見る夢だ)
(夢なのに酷く体中が痛んで…死なない体の筈なのに自分は死ぬんだと自覚している、眼前の男は強い、不死の自分を殺す程に)
(けれど自分は酷く喜んでいる、恐怖も何も無くて…これほどの『兄弟』と戦えた事が嬉しいんだ)
(なのにいつもこの後の男の言葉で酷く悲しくなってしまう)
(同じぐらい悲しみを湛えた顔で男は言う…私達怪物の時代は終わったんだ…と、その直後に振り下ろされる拳)
(目が覚める、そうだ…此処は…)日焼けしようと思って寝てたんだ…
(鉄橋のアーチの上、風が強い分暑い日には丁度いいと寝ていたのだ)
…また嫌な夢見たな(風でバサバサと靡く髪を手で撫でる)
俺は…やっぱり俺なのかな…(夏の宝石のように青い空を見上げて)
サーフ先生…
何処かの国の過去その3 †
『聞け!全ての兵士よ!』
(新しい夢を見る、整然と並ぶ屈強な兵士達の前で自分が演説をする夢だ)
(何か思う事が出来るとこうして自分視点の夢を見る、まるで辿るべき道筋を示すように)
(夢の中の自分は今の自分より遥かに強い力を持つ、生命力と情熱を伝播させる力は声にすら乗り聞く者の心を震えさせる)
『戦争は既に終わった、人民は軍拡を続けるこの国を悪しきモノとし革命を起こしたのだ』
『これによりこの国は平和への道を目指す事だろう…』
(平和になる、実に結構じゃないか、人間らしく生きられるって事だ)
(けれど夢の中の自分はそうは思わないらしい、声に怒りが満ちている…そもそもの考え方が違うのか)
『いずれは先人が生み出した近隣諸国との軋轢を贖罪を持って乗り越えるかも知れない』
『だが!その平和な世界に我らの居場所は無い!銃をこの手に持たされ!そうあるしか無くなった我らを!』
『この国は受入れはしないだろう…』
『平和が与える安寧では我らを癒す事は出来ないからだ』
(怒りに満ちた情熱を与え、突如ソレを切り、今度は負の情熱を伝播させる…兵士達に動揺が走る)
(感情の操作によりその言葉通りに思わされているからだ)
『時代は移りゆく、時代と共に価値観も変わる』
『私達はその価値観に於いて古きモノでしかないのだ…』
『だが私たちは何を残した?親から子へ生命の情報を受け継がせるが如く新しい時代に何かを残せたか?』
『いいや何も残せてはいない…故に我らは消えてはならない、認めてはならない』
(その自身の言葉に酷く胸が締め付けられる、時折夢の中の自分と感情が重なる事がある、今回はこの時だ)
(この男は欲している、自分が、『兄弟』達が生きる意味を、生きた証を)
(この男は『人間らしく』過去と明日を望んでいるのだ)
『私達の手で歴史に刻むのだ、記憶を、存在を』
『例え時代に抗う事になろうとも…そう在るならば在り続けよう』
『我らには力がある!革命という力をも上回る力が!!!』
『自らが望むがままにあれ『兄弟』達よ!』
(そこで夢は途切れた、それと共に酷く胸が疼く…暴れたい、食いたい、眠りたい、知りたい、犯したい、殺したい、笑いたい…いつもの通りだ)
(乱雑なそれらを頭を振り僅かに追いだすと考える、自分は一体何を示したいのか…)
洋上都市へと来る前 †
(学園の屋上でぼうと物思いに耽る、時々こうして落ち着いてモノを考えられる時がある、すると孤児院の頃を思い出して…)
『ルベウス、君はいつも悲しそうにしているね…』
(そう語りかけ自分の頭を撫でる院長先生、自分はこの手が大好きだ、撫でられるととても落ち着く)
(猫を見て近づかない自分にそう言ったのは覚えている、けれどあの時自分は笑顔だった筈だ)
(なのに何故院長先生はそんな事を言ったのだろう?そんな事をふと思い出す)
『君の力は君をとても不幸にしてしまうかも知れない、いやもう既になのか…』
『けれど諦めないで欲しい、その力はきっと正しい事に使える、君の意思の下に』
(ひどく申し訳無さそうに、悲しそうに言いながら俺の頭を撫で続ける院長先生)
(そうだ、そうしたら俺は何故か泣きだしてしまったんだ、先生に撫でられている間だけ泣けた)
『私の親友は間違えてしまった、私も…一人で抱えるのが怖くて彼女に縋ってしまった』
『けれどそう在るようにされてしまった私達と君達は違う』
『どんなに辛くても前を見て、自分が進みたい道を選ぶんだ…』
(そう言って今の自分よりも力強く感じるような温かい抱擁をしてくれた)
(でも何故自分は猫を見ていたんだろう…本当は触りたいのに)
(そこまで至り思い出す、ああそうだ…もっとずっと前に猫を撫でようとしたんだ)
(撫でようとして…力を間違えた)
(間違えてから撫でなくなったんだ…そう思った所で眼下に猫耳の少女を見つける)
(ああそうだ、丁度退屈になった所だし今日もまたあの子の頭を撫でて笑おう)
(あの頃と違って間違える事は無くなったから)
洋上都市へと来るほんの少し前 †
『もしも君に異能が目覚めたら…それは分岐点となる、鐘の音をよく聞くといい』
(学園へと赴く前日、いつも何処を歩いているのか孤児院にほぼ居ない長兄が偶々帰ってきてこう言ってきた)
(送り出すための言葉なんて掛けない人間だとは思っていたがソレ以上のワケの分からない言葉だ)
『私は完結してしまっている、行く意味など無いが…しかし君は違う』
『僅かだが可能性がある…、だから目覚めたらよく考えるんだ、君が何かを』
(その言葉に腹が立つ、眼前に居る男か女かも分からない見た目の男によってどれだけ自分が泥を舐めたか)
(この男のイジメのせいで自分が何かも分からなくなりかけている点は非常に大きいと常々思っている)
『フッ怒っても無駄だよ、その時になればきっと思い出す』
『友達を沢山作る事だ、それもまた必要な事だから』
『だがあの鐘には近づき過ぎるなよルベウス…私でも見通し切れない』
(その時はうるせーバカとだけ返して部屋から追い出したっけ、しかし現実に自分は異能に目覚めた)
(あの男は意味の分からない事ばかり言うが予言めいているというか無意味な事は言わない、だからこそ気になる)
(こんな不便な異能が目覚めた理由は…デメリットさえ無ければ悪くは無いのに)
何処かの国の過去その4 †
(また夢を見る、今度は何処かの薄暗い建物の中だ、自分は誰かと話していて…)
『どうしても付いて来てくれんのか、兄弟…』
(灰色がかった髪を持つ屈強な男に語りかける、その声は悲しみに満ちていて)
(だが自分が持つ精神操作の力は一切込められていない、兄弟と呼ぶ男には通じはしないから)
(いや通じたとしても使わない、それだけこの男を認めているからだ)
『これからこの国は確実に平和へと歩み出す…間違い無くな、今の皇帝はかつての愚帝とは違う』
『その手を汚しても尚全てを抱えうる…、あれを真の王と呼ぶのだろう』
『だが我らは救えんぞ、私達は戦争が生み出した忌み子…平和の中では生きられん』
(皇帝を評価はしている、しかし戦い続けるよう鍛えられた自分達が生きられる場は無い)
(故に真実心の底から語りかける、この男を平和などで腐らせてはならないと)
「…そうだろうね、少なくとも私もそう信じている」
「だからこそ私はあの方に付いて行くと決めた」
(その言葉に自分は酷く腹を立てる、例外を除けば宝石の名を持つ兵士でただ一人自分と比肩しうる男)
(コランダムの名を持つこの男が何故このような事をと)
『分かっている筈だ兄弟!この国は我らを必ず切り捨てる!いや切り捨てずとも飼い殺すだろう!』
『民にとって英雄は皇帝一人でいいのだ!それは皇帝にとっても!』
『何の価値も認められずに、いやさ歴史の汚点として在り続ける気か!?』
(自分達は望まれてこうなった筈だ、こうなる事を望んだ訳ではなくとも)
(ならば今更否定されてたまるか、今度はこちらが望む番だと)
(そう叫んでも眼前の男は悲しげに顔を横に振り)
「争いなどというモノは誰かが耐えて終わらせなければならないんだ」
「コレ以上手を汚さずに済むならば私は受け入れるさ」
「君だって望んでいたはずだ、力無き民草が戦わずに済む事を」
(今よりもずっと若く、まだ戦場に出る前の自分の言葉を返される)
(そうだ、確かにこの国が少しでも傷つかずに済むようかつては思っていた…)
『だがその民草に否定され葬られる事など望んではいない』
『私は私の敵を滅ぼす、そうも言っていた筈だ…』
『その敵が他国から民へと変わった…それだけだ』
(自らを否定するのならば否定するモノを否定してやろう、そう本気で思っての言葉だ)
(その言葉に眼前の男の表情は変わらないが…空気が一瞬にして冷え切る)
「…カルブンクルス」
(自分の名を呟かれただけで首を掻き切られたかのような冷たさが首に走る)
(だが笑みが浮かぶ、そうだ…これ程の殺気、やはり『兄弟』は『兄弟』なのだ)
(故に揺さぶりをかける)
『サーフよ…『兄弟』である私を殺すか?』
(そう返した瞬間サーフと呼ばれた男の顔があからさまに苦々しい顔になる)
(それを見てまだ猶予はある、よく考えろ…そう呟いて自分は部屋を後にした)
(それがサーフと呼んだ男と肩を並べた最後の時、次に出会う時は…戦いの場だった)
(目が覚める、此処は…自分の部屋だ、相変わらず気分で拾ってきたよく分からない物の山だ)
(何を考えてこんなモノを持ってきたんだろう?と自分でも思う)
(だが今はそれよりも…)最近は特に嫌な夢を見るね…
…悲しい事があったからかな(忘れる為にやはり頭をバサバサと振った)
何処かの国の遠い遠い過去 †
(とても、とても悲しい事があった日の夜、夢を見た)
(それは…普段とは全く違う夢、見た事の無い世界、見た事の無い人物の夢)
(自分は…いや自分なのか?違う、自分は傍らに立っている、玉座に座る男の傍らに)
(だが自分は誰でもない、誰もいない所に立っている…誰かの夢でもなくただ見ているだけなのだ)
(こういう第三者視点の夢こそ普通の夢なのだろう、なのに…これも何処か普通の夢ではなかった)
『来たか、ようこそ…君が来る事は分かっていたよ、間違いなく、ね…』
(白髪の男は誰もいない玉座で一人寛ぎながらそう語る、誰に?まさか自分に?)
『ああそうだ君にだよ、アンスラックス君?ルベウス君の方がいいかな?』
(衝撃が走る、この男は…確かに語りかけてきている、いや夢ならばそれも…だが、これは…?)
『疑問も結構だが横顔ばかり見てないで正面に立ってくれないか?目が疲れるし横顔に自信が無いんだ』
(そう言って玉座の男は笑う、立つ…動けるのか?そう考えながら歩こうとすれば確かに歩けた)
(正面から男を見る、白髪の髪、灰色の瞳、逞しい身体…そして時代を感じさせる白い長衣)
(似ている、誰に一番似ているか、とは言い切れないが…自分達兄弟に)
『だろうね、君達にはすまない事をした…許して欲しいとは言わない、私のエゴなんだ』
『血を蒔いた…そして力は根差した、後は彼らが増え全ての力を得れば私は役目から暫し降りられる』
(言っている意味が分からない、いや…まさか…院長先生が話してくれた昔話を思い出す、遠い遠い昔の話を)
『正解、フフフ分かっていても嬉しいなぁ!幾千年経っても人は語り継げるんだ』
『素晴らしいとは思わないかな?精々100年の命が確かに次に残していくんだ』
(なら、ならこいつは…こいつは…そうだ…似ている筈だ…!)
『そう、私が君達の始まりだ…初めまして宝石の名を持つ子孫よ、会えて本当に嬉しい』
(その瞬間頭が沸騰する、こいつが…!こいつのせいで…!俺は…!)
(そうして怒れば眼前の男は悲しげに微笑む、やはりその表情は似ている…自分の大事な人に、だから怒りも冷めてきて)
『うん…すまない、けれど分かってしまったんだ、そうしたら疲れてしまった…』
『自分が居なくても世界は続く』
『 と全く等しく作られたのにあの時は何故彼が居なくなったのか分からなくて』
『結局…私も理解して私を等しく作った と同じ道を選んでしまう』
(その言葉を聞いて急に胸が痛くなる、同じく作られたから…同じく生きた…)
(そう思うと始まりの男はゆっくりと顔を横に振り)
『私は、ね、けれどルベウス君は違う、運命というのは案外あやふやなんだ』
『君には確かに分岐点が存在する、ああこれはお兄さんも言っていたね?』
(本当に?あるのか?俺が掴み取りたい未来が?選択肢が?)
『勿論だ、私にも近い力はあれどもっと素晴らしい力が君達にはある』
『この玉座を目指さない限りそれは必ず君の力で在り続ける、自分の望む道を選びたまえ』
『君達が…羨ましいよ、私は一人で完結してしまっているからなぁ…変われないんだ』
(そう呟いて自分を見る顔が…正視し続けられなかった、自分が時々人に見せる顔にとても似ていたから)
『この会話は君の記憶には殆ど残らない、血にとってもあまりに古い事だからね』
『けれど君の一助になる事を願う…ルビーが君に健やかな未来を与えん事を』
(男はにこやかにゆっくりと手を振る、その手がまるで…眠りを誘導するようで)
(起きれば家、…何の夢を見ていたのだったか)
んんー久々に普通の夢…普通の夢だったのかな?兎も角記憶に残らない夢だ
でも…なんだろ、妙に嬉しいような…まっいつもの事か
何処かの国の過去その5 †
(ああ…これは何度目の夢だろう、いや…これは本当に夢なんだろうか、今日の夢は…)
(何処までも心が近い、鮮烈に刻まれた記憶のように)
(赤と白に光り輝く拳と拳が交差する、火花のように飛び散る光)
(そして光が石床に降りれば石の隙間から艶やかな色とりどりの生命が芽吹く)
(どれほどの激闘があったのだろうか、恐らく基地と思われる場所は完全に崩壊しその青空を仰げる)
(遺跡と化した地で争うは白髪の男と灰色の髪持つ男)
(その光景はあまりに荘厳で、まるで神話の時代の光景にも思えるようなそれは確かに現代で起きた事)
『アァーーーーハッハッハ!楽しいなぁ兄弟!!!そうは思わんか!?』
(叫ぶと共に石床を全力で踏みしめる、だが砕けはしない…)
(戦いの果てこの地に満ちた過剰な生命力が全ての物質を不滅へと変えているから)
(故に地に力の逃げない技の威力は通常の場で行われる物の比ではない)
(そしてその技量と合わさった拳は世界にすら悲鳴を上げさせる)
(必打の業、卓越しすぎた武術は時と空間を凌駕し当てたという結果のみを相対する男へと与える)
(胸への打撃、完全に直撃だが…その衝撃はまるで何も無い空間を弾いたかのように男の後方へ散る)
(これもまた人の業、卓越しすぎた武術は空間と物理を従える、「当たった」のに「当たっていない」)
『フッフッフ…流石に揺れんなぁ、中々のようだ、エメラダを殺し磨いた安定の力は!』
『それともアゲイトとの戦いか?奴も貴様と同じ力を持っていたな』
(その言葉に反応するように灰色の髪を持つ男は動く、だがそれは怒りによるものではなく…)
(こちらが言葉の為に発した呼吸の吸い際を狙っての事だ)
(手を手刀の形にして腕を捻り放つ眼前の男、それはこちらも読んでいた)
(それを防ぐべくこの身の生命力をただ無法図に撒き散らす)
(紅い壁のように男に迫るそれは生命ならば触れれば溶け、再生すらさせずに蒸発させる圧倒的な生命熱量だ)
(だが灰色の髪持つ男の手が触れれば壁は拡散し霧消する、悪しきものよ去れと言うかのように)
『ほほぉ…ラズワルドの力も役に立ったらしいな』
『清浄なる世界を保つ力とやらも随分成長しているようじゃあないか!』
(余裕の笑みで眼前の男を見る…男の手刀が届きかけているが何の事は無い、恐れる理由など何処にも無いからだ)
(何故ならば…運命は味方する、自分が望む限り全ての物事は成功する)
(この男の技量もまた人の域を既に超え自分と対等にあるが、運命が味方する以上避けられる確率は5分ではない…確実だ)
(そう思っていた直後に走る胸の激痛、熱い物が喉からこみ上げ吐き出す)
(理解不能の事態だ、当たる筈が無い、運命そのものが味方しているというのに何故この結果を招く?)
『馬鹿な…私は確かに避け…』
(両腕で胸に突き刺さる腕を両断するべく交差させ振り下ろすが瞬時に男は後退しそれを避ける)
(そう、今のも有り得ない…当たる筈なのだ、いや…先程の全ての攻撃もそうだ、当たらなければおかしい)
(まさか、とありえない想像をする、だがその可能性しか考えられない)
『まさか…サーフ…!貴様アルマさえ殺したのか…!?』
(アルマ、金剛石の名を持つ最強の兵士、かつて自分達の上司だった男)
(彼もまた自分達には与しなかった、今は何処にいるのかも分からないが…それが最善と言える程の怪物だ)
(運命を切り開くという神の手を否定する究極の力、けして砕けぬ不死の肉体、そして全てを凌駕する王者たる力)
(それを殺し奪いでもしなければ自分に味方する運命など切り開ける筈が無い)
(そう問うた所で初めて眼前の男は口を開く)
「ああ…殺した、いや殺させたのか…彼もまた我らは在るべきではないと信じていたから」
「だがこの力は彼のモノではない、…私達が元々持っている力だ」
(その言葉が理解できない、何が?どういう事だ?時折同じ力を持つ者達は居ても全員が持っている力など無い)
「…平和を喰らい続ける事でしか生き永らえる事の出来なくなった君も…かつては持っていたんだよカルブンクルス」
「これは…」
(既に胸の傷の再生は終えているがこの攻撃は不味い、理解は出来ないがこれ以上食らってはならない)
(そう本能が叫べば即座に攻撃に移る、自分に距離など関係無い、両の腕を交互に放ち当てる)
(当て続ける、しかし全てが同じ軌道を描くサーフの拳に弾き飛ばされる)
『ならば何だ!?その力は…!運命を切り開く力など…あの男の血にしか流れてはいない筈だ!!!』
(大きく踏み込み全身全霊の力を以って一打を打ち込む、それに対し鏡合わせの様に合わせてくるサーフ)
『何なんだと言うのだ!!!』
(一際大きな光が散らばり周囲一面に花が咲き誇る、殺しあう空間でありながらその光景はあまりに美しい)
(そして…打ち負けたのはこちらだ、圧倒的な衝撃により腕が咲き散らされる)
(再生を始めているが今までの物と比べて治癒が明らかに遅い、痛みもまた酷く)
(理解不能な事態と苦痛に顔を歪めれば…始まりから今の今まで悲しみに満ちた瞳を向けていたサーフは呟く)
(「これは人間の力だ」、と…)
(…目が覚める、地面の冷たさと共に顔面の酷い痛みに顔を顰める)
(眠っていた?いや…違う、正確にはレジェムによって再び「ぶん殴られ」て気絶していたのだ)
(星々の瞬きを見て白い息を吐き出しながらああ…と呟く、何故自分が「人間」の瞳を酷く恐れるのか分かった)
(「人間」の瞳というのは誰も彼も似ているのだ)
(希望の灯を灯そうと、別れの悲しみを灯そうと…前へ進もうとするその意思だけは常に瞳に灯っている)
(それが怪物を打ち砕くのだ、誰かを犠牲にすればそれだけ脚は重くなり、いつからか歩みを止めた怪物を)
(怪物は永遠にそこに在るんじゃない、そこにしか居られないんだ)
ぬ…ぐぐぐ…
(折れた鼻を戻そうとし痛みで踏ん切りがつかないのを見たレジェムが笑って手を貸してくれる、地獄のような激痛だ)
(そして悶絶の後のた打ち回りながら考える、自分の瞳は同じモノを灯せるのかと)
何処かの国の過去その6 †
(夢とは記憶を整理している時に見るのだという)
(ならば今見ているこれは一体どういう記憶なのだろう)
(凄まじい音が響く中自分は誰かに手を伸ばしている)
(けれど目の前は真っ暗だ、何故手を伸ばしているのかすら分からない)
『早く手を取れ!歩けないのなら俺がお前を背負う!』
(ああそうか誰かを救おうとしているんだ、けれどやはり目の前は真っ暗で)
『…どうした?早く!ああクソ…音が近付いている!間に合わなくなるぞ!』
(手を伸ばしている相手は生きている筈だ、小さいながらも声が聞こえている)
(なのに何故手を取らないのだろう…)
『何故手を取らないんだ!?』
(そして視界は開ける)
(そこにあったのは恐怖に歪んだ顔)
(頭を失おうと平然と生き、思考し、語りかける怪物へと向ける瞳)
『………!!』
(直後に爆発音が響き再び視界が闇へと変わる)
(その時何処かで音がした)
(何か硬いものが僅かに欠ける音が)
(次に視界が開けた時は何処かの基地)
(奪取した所なのだろうか、色々と慌しく機材を設置したりしている)
(その中で自分達を見てひそひそと会話をしている兵士達がいる)
(自分達基準で話している為聞こえていないと思っているのだろう)
(だが自分達は人間基準では無い、そのため聞こえている…)
(あんな怪物達と共に戦っていて大丈夫なのか、と)
(だが自分はさして気にしてはいないようだ、望まれた事なのだからと)
『まあ仕方ないさ、こんな状況じゃそういう風に見えたりもする』
『俺達はすべき事をしてるだけなんだから胸を張ろうじゃないか』
(そう言って笑って仲間の肩を叩こうとすれば息を呑んだ)
(否定しきれぬ事への苦悩に仲間が僅かに顔を歪めていたからだ)
(その顔にそれ以上の言葉は掛けられないのか肩を叩くだけで終える)
(更に光景は変わり野営地とでも言うような基地)
(ここから自分と夢の中の自分の距離が近くなる)
(周囲を見れば自分の服も仲間の服も随分と変わっている、制服と言えるモノですらない者もいる)
(周りの会話からして政府軍から反乱軍へと自分は鞍替えしたらしい)
(そこへ馴染みの深い顔が現れる、随分と若いがサーフだ)
(穏やかな笑みを浮かべる『兄弟』に自分は手を差し出し硬い握手を交わす)
「よく来てくれたねカルブンクルス、皆ともまた会えて何よりだ」
(そう言って『兄弟』達に穏やかな笑みを向けるその様子につい破顔する)
『変わらんなぁお前は、私の方が先に戦場に出た分どうなるかと思ったが』
(そう告げるとサーフは悲しげに苦笑を返して首を横に振る)
「変わったさ、随分とね…君も」
『私?私は変わらんよ、なあ?』
(肩を竦めて『兄弟』達を見れば皆苦笑したり笑ったりで和気藹々としている)
(けれどその時見逃さなかったモノがある、それを見る他の人間達の視線…)
(おぞましいモノを見る時特有の恐怖と嫌悪が混じった視線が)
「さあ来てくれ、この国をより良いモノにする為に」
(そう言ってサーフは先だって司令部へ歩く、その背を見て確かに以前より逞しくなったなどと感慨深く思い)
(同時に…僅かな疑問も生まれる、本当にこの選択が自分達にとって正しいのかと)
(何処に居ようとも自分達に向けられる視線は変わらないのだから)
(そして…次の場面に移るかと思ったその時記憶が目まぐるしく駆け巡る)
(見るなと言うように早送りをしているかのようだ)
(けれどその中でも幾つもの視線を感じる、その全てがこちらを否定する視線で)
(まるでハンマーで頭を叩かれたかのような衝撃と共に目が覚めた)
うっぷ…また物凄く胸がムカムカする…
今まで見た夢の中で一番かも…
(冬の冷たい空気を何度も吸い胸のムカツキを抑えて)
(ふと窓の外を見れば雪、雪遊びでもして気分転換でもしようと考えた)
何処かの国の過去、そして今 †
『いつだってお前が正しかったよサーフ』
『手を取り合って、皆で笑って、平和に暮らす、素晴らしい考えさ』
『でもなあ…お前は強すぎたんだ、それは強く優しい『人間』の理屈だ』
『私も、お前も、あいつ等ももうこの世は地獄で、死んでも地獄で、天国ヘは行けない』
『そしてそんな風になってしまえば誰かに手を差し出す事も出来やしない…』
『弱い奴はそこで諦めてしまう、足が重くなってどうにもなくなってしまう』
『這い蹲って、動けなくなって、いつしか人じゃなくなる』
『だから私はそうなってしまった『兄弟』の手を取り…歩かせた』
『私が歪んでいた事は私自身分かっていたからな、碌な道を歩かせていなかっただろう』
『間違っているコトぐらい分かっているさサーフ、ああそうだとも』
『エメラダの実家は牛飼いだったな?恋愛関係の力があるからな、交配なんかじゃ滅法強い』
『カルサイトは人を許す心と問題を解決する力があるからな、法関係に向いてたろう』
『シトリンは商売の力を持ってた、それに周りを明るくするからきっといい商人になった筈だ』
『だが…だがな、私達はその道が分かっていてもその使い方が出来ないんだ』
『頭の中が戦争で一杯になってしまって覚えようとしても覚えられないんだ』
『そして使い方を間違えて向けられる…あの視線を』
『許して欲しいとは言わないし思ってもいない、けど忘れるな』
『世の中には歩けなくなってしまった奴が幾らでもいる』
『だから私はそんな奴らの手を引っ張って歩かせて、少しでもより良い地獄を生きて欲しかった』
『…分かってるよ、泣くな、お前がどれだけ心を痛めて『兄弟』達を殺したか知ってる』
『ああまったく、男の涙なんて気色悪いものが最後に肌に感じたものか』
『けどまあ…どうせ行くのも地獄だからな、そう気にする事も無い』
『お前はゆっくり来い、どうせお前の事だから贖罪の為に長生きをするのだろうが』
『俺達と違う答えを出せたお前なら少しは…この世が地獄以外の何かに見えるだろう』
『…楽しい一時をありがとう、じゃあ…またな『兄弟』』
(命を絶たれ、魂すら消え去る前に虚ろなる瞳だけでそれを伝える)
(既に言葉を出す程の力も無いからだ、だが…長年戦ってきた戦友なら少しは伝わるだろう)
(それが戦鬼が最後に遺した意思)
(人が歩みを止め怪物になるのはきっと、この世が地獄に見えてしまったから)
これを見たのならけして歩みを止めてはならない
もしも悩める時あらば彼の者達を思い出し進め
多分、まあ、恐らく…地獄の様な光景を超えた先には…
花が満ちているだろうから
(────そう声がして、自分が誰かの横を通り過ぎた気がした)
Q.なんであの人よく足元に花咲かせてんの?シャロなの?
A.下俯いてる人の手引いてるからそいつらの見る光景を綺麗なものにするため
Q.なんで花?乙女なの?
A.植物は戦わないし花は綺麗だし化け物と呼んだりしないから
Q.ナイーブ?
A.超
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